説明

ポリケイ酸ベースの複合材料およびその調製法

【課題】 生理学的に重要な複数の無機質成分および有機質成分を含み、改善された機械的性質を有するポリケイ酸ベースの複合材料を提供する。
【解決手段】 複合材料が、ポリケイ酸と、0.01〜20重量%の有機ポリマーと、15重量%よりも大きい割合の少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、選択的に、用途特有の添加物とを所定比で含むよう構成する。この複合材料は、移植または注入できる。複合材料の組成から生ずる性質にもとづき、ヒトの医学的用途および獣医学的用途において、骨代用のためおよび/または骨再生のため複合材料を使用できる。更に、この材料は、傷の治療目的のため、使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の成分として、有機ポリマーと、少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、選択的に、用途特有の添加物とを含み、分散体、ペースト、粉体、顆粒、層または圧密成形体(コンパクト)の形で存在する、ポリケイ酸ベースの複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の複合材料について、ヒトの医学的分野および獣医学的分野において、特に、代用骨材料または骨再生材料としての使用時または整形外科学用、外傷学用および歯科用インプラントとしての使用時に、既に、用途または潜在的用途分野が存在する。
【0003】
各成分に関連する性質が関連して作用すると云うことが、複合材料の本性と云える。この組合せ効果にもとづき、例えば、生理学的条件下で、複合材料の無機成分および有機成分を、それぞれ、無機代謝生成物および有機代謝生成物として生成させるか利用することが可能となる。
【0004】
これに関連して知られている複合材料は、ポリケイ酸と、少なくとも1つのリン酸カルシウム相とからなるか、少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、無機ポリマーとからなる。即ち、DE10003824A1には、特に、ノズルを介してファイバ状に成形される多孔質二酸化ケイ素・リン酸カルシウム・複合体を含む代用骨材料が請求されている。
【0005】
特に化学成分として二酸化ケイ素およびリン酸カルシウムを含む複合材は、バイオガラス、バイオ活性ガラス、バイオセラミックおよびバイオ活性セラミックなる名称でも記載されている。即ち、WO9317976,WO9404657,WO9514127およびWO9636368には、上記成分を含み、代用骨材料としてまたは骨組織合成のための型板として使用することを意図した材料が記載されている。
【0006】
このような複合材の構造化のため、セラミック繊維およびポリマー繊維の導入が提案されている(US5468544)。更に、上記の複合材構造に、生物学的活性分子を組込み、制御された状態で遊離させることもできる(US5874109)。
【0007】
更に、US6416774には、成分として二酸化ケイ素および生物学的に活性な成分を含むナノ多孔質リン酸カルシウム粒子からなる材料が記載されている。
【0008】
リン酸カルシウム相と生理学的に重要な有機ポリマーとからなる複合材料を形成するため、多様な組成物およびその調製の可能性が記載された。DE68928975T2には、リン酸カルシウム相と、タンニン誘導体と、コラーゲン化合物とを含む複合材がクレームされている。
【0009】
DE4132331C2には、リン酸カルシウム相以外に水溶性ポリマーを含むリン酸カルシウム・セメント粉体が記載されている。リン酸カルシウム粉体と多糖類との組合せは、DE69809158T2に記載されている。
【0010】
リン酸カルシウム相以外に、例えば、ポリ(グリコール−コ(co)−乳酸)の形の硬化性マトリックスと、他の有機成分と、生体細胞とを含む代用骨材料は、DE19956503A1に開示されている。製造された代用骨材料は、組合せた複数の噴射または複数のチャンバによる補完噴射からなる多重噴射において調製される。
【0011】
3つの成分を含む骨合成複合材料は、WO9911296に記載されている。この場合、成分は、バイオセラミックまたはバイオガラス、生物学的に分解可能なポリマーおよび生物学的に分解可能なポリマーマトリックスからなる。
【0012】
Zhaoらは、Biomaterials 2002,23(15),3227〜34に、ヒドロキシルアパタイト顆粒をキトサン・ゼラチン・混合物中に分布させた3次元有機網状体の調製を記載している。
【0013】
CN1338315の場合、リン酸塩およびカルシウムを含む溶液および水酸化ナトリウム(溶液)をコラーゲンの酸性溶液中に滴下し、プロセス終了時に、遠心分離によって生成物を分離し、粉砕する。CN1337271の場合、順序を変更する。この場合、カルシウムイオン溶液を酸性コラーゲン溶液中に投与し、次いで、リン酸塩溶液を一滴ずつ滴下し、次いで、水酸化ナトリウムによってpH値を調節する。
【0014】
市販されている製品であるノイコル(NeuColl)社のコラグラフト・ストリップ(Collagraft Strip)は、ヒドロキシルアパタイト(65%)およびリン酸三カルシウム(35%)からなる組成物および高純度コラーゲン・タイプlをベースとする。記載されたこの材料は、自己生成骨と比較して観察して、肯定的に評価された(アドレスhttp://www.neucoll.comでの同社パンフレット)。
【0015】
Bonfieldらは、温度およびpH値と関連させたリン酸カルシウム・コラーゲン系の状態図を記載している(Bioceramics,Vol.16,Barbosa et al編集、Trans Tech Publications Ltd. Uetikon−Zuerich,2003,p593〜596)。
【0016】
一般に、上述の複合材料は、同時の混合操作または時間的にずらした混合操作によって生成される。これとは異なり、WO02/59395A2には、対応する成分および前駆体を含む電解質からなる成分、即ち、リン酸カルシウムおよびキトサンの電気化学的析出がクレームされている。
【0017】
Scharnweberらは、DE10029520A1において、生体に模倣して形成される骨類似の積層体を調製している。この場合、石灰化コラーゲンマトリックスが層状に構成される。コラーゲン溶液中に浸積することによって、有機層を被覆し、次いで、電気化学的に支援したプロセスによって、リン酸カルシウム相を析出させる。
【0018】
次いで、更に、注入可能性の目的のために、バイオ活性ガラスをポリマーサスペンジョンに移行させることについても言及する(WO0030561)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述のすべての方法の欠点として、下記の本質的点を挙げることができる。
【0020】
1.使用可能な複合材料は、単に、2つのベース材料、即ち、リン酸カルシウム(またはバイオガラスの他の成分)と組合せた二酸化ケイ素あるいは生物学的に適合するポリマーと組合せたリン酸カルシウム、から形成できるに過ぎない。
【0021】
2.バイオガラスおよび類似の材料をベースとする複合材料は、15%未満の(P2O5としての)リン酸塩を含むに過ぎない。
【0022】
3.複合体の機械的性質は、主成分によって決定される。即ち、二酸化ケイ素およびリン酸カルシウムの組合せの場合、複合体の弾性特性は、殆ど得られない。さらに、低温で形成された材料は脆弱であり、他方、高温で形成された材料は、大きい硬さを特徴とすると云える。
【0023】
4.一般に、複合体の調製時または後処理時に適用される、材料の物理化学的形態構成のために必ず必要な温度(500−1200℃)によっては、有機ポリマー、特に、バイオ有機ポリマーの直接的組込は不可能である。
【0024】
従って、本発明の課題は、生理学的に重要な複数の無機質成分および有機質成分を含み、改善された機械的性質を有するポリケイ酸ベースの複合材料を提供することにある。
【0025】
複合材料の構成形態は、十分に多様であるべきであり、流動形態、ペースト形態および固形物形態を含む。本質的提示形態として、複合材料によって代用骨物質、骨形成材料および骨セメントを構成できるべきである。
【0026】
複合材料は、物質的組成および表面構造とは無関係に、インプラント表面の被覆にも利用できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
ヒトのインプラントまたは獣医学的インプラントの表面層としてのまたは改善された機械的性質を有する代用骨または骨再生材料としてのポリケイ酸ベースの複合材料を調製すると云う本課題は、本発明にもとづき、複合材料が、ポリケイ酸と、有機ポリマーと、少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、選択的に、用途特有の添加物とを所定比で含むことによって、解決される。15重量%よりも多量なリン酸カルシウム材料の含量は、複合体の物理的、化学的安定性の本質的増大に有効であると云うことが判明している。有機ポリマーは、その化学的構造およびこれに関連する性質に依存して、他の複合体成分および適用(ないし使用)上の要求に関連して、0.01−20重量%の範囲にある。
【0028】
この場合、ポリケイ酸は、単独でまたは組合せて使用できる各種の生成源から形成できる。1つとして、通常は酸性ないし中性pH条件下で行われる無機シリケートの縮合(ないし重合;Kondensation)が可能であり、この場合、ポリケイ酸マトリックスは、成分的に、他の金属酸化物(例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウムまたはこれらの前駆体)を含むことができる。テトラアルコキシシランまたはオルガノアルコキシシランは、同じく、ポリケイ酸および対応するその誘導体の形成のための出発材料として使用することができる。他の生成源は、固体の球形または非晶質のナノないしミクロシリケート粒子から得ることができ、複合体形成に必要な化学的官能性は、粒子表面の性質によって得られる。調製および適用(使用)に関連する理由から、使用する粒径が10nm−10μmの範囲にあれば好ましい。
【0029】
有機ポリマーを添加すれば、複合材料の弾性のポジティブな変化が誘起される。調製された複合体は、圧縮(圧力に対して)弾性的であり、従って、脆弱ではなくなる。この場合、天然、合成または半合成ポリマーが、有機ポリマーとしての役割を果たすことができる。上記の有機ポリマーは、自然にまたは合成的に加えられた反応基ないし官能基、シークェンス(Sequenzen)またはサブ構造(Substructuren)を含むことができるホモポリマーまたはコポリマーの形でまたはポリマー混合物(ブレンド)としても使用できる。
【0030】
適用(使用)技術的観点から、複合体成分としてのバイオポリマーの使用が、好ましい役割を果たす。これは、特に、タンパク質、多糖類、それらのフラグメントおよび誘導体、例えば、セルロース、ラミナラン(Laminaran)、デンプンまたはこれらの成分、即ち、アミロースおよびアミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、プルラン、イヌリン、キトサン、キサンタン、アルギン酸、それらの塩およびエステル、アラビアゴム、コンドロイチン、ヘパーリンおよびケラタンならびにこれらから誘導した硫酸塩、ヒアルロン酸およびテイコ酸ならびにこれらから誘導したエステル、天然の形または改質された形のコラーゲンおよびゼラチンに関する。
【0031】
しかしながら、同じく、すべての関与媒体と十分な適合性を有する合成ポリマーも使用できる。これは、その単一の使用およびバイオポリマーとの組合せに関する。このような合成ポリマーは、特に、下記の化合物種類、即ち、ポリアミン、ポリイミン、ポリオール及びそれらのエーテルおよびエステル、ポリカルボン酸及びその誘導体(例えば、エステルおよびアミド)から得られる。しかしながら、基本的に、他のポリビニル化合物、ポリエーテル、ポリエステル、ポリケトンまたはポリスルホンも、複合体成分として考えられる。
【0032】
特に、有機ポリマーの水中または選択した反応媒体中における溶解性、膨潤性または分散性が、複合材料中の%割合(0.01重量%−20重量%)を決定する。
【0033】
複合材料の主成分は、ポリケイ酸以外に、一般に、少なくとも1つのリン酸カルシウム相である。このリン酸カルシウム相は、結晶の形または非晶質の形で前調製して反応媒体に添加できるか、或いはカルシウムを含む成分およびリン酸塩を含む成分を中性又はアルカリ性条件の下に統合してin situ(インシトゥ)で調製する。リン酸カルシウム相は、更なる調製プロセス中、その形態を保持し、かくして、最終製品に、対応する気孔率が与えられる。リン酸カルシウム相として、ヒドロキシルアパタイト、a−リン酸三カルシウム、b−リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム・2水加物、ペンタリン酸オクタカルシウムまたは対応する混合相または混合物を使用できる。治療的観点から、リン酸カルシウム相が、特定の事例において、成分としてアルキレンビスホスホネート・カルシウム塩を含んでいれば目的に適うことが判明している。リン酸カルシウム相は、更に、複合体のポリマー成分との錯体生成のためカルシウム前駆体として有効であり得る。この錯体生成は、更に、成分としてアルキレンビスホスホネート・カルシウム塩を添加することによって増強される。更に、リン酸カルシウム相中には、成分として、他の金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、銀、マグネシウム、亜鉛またはリチウム)を含むことができ、さらにアニオンとしてフッ化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩またはケイ酸塩を含むことができる。
【0034】
複合材料には、基本成分であるポリケイ酸、ポリマーおよびリン酸カルシウム成分に加えて、用途特有の添加物を添加できる。この添加物は、化学的または形態的に改質されたポリケイ酸化合物、有機ポリマーまたはリン酸カルシウム相として使用できる。同じく、
固体のナノないしミクロ粒子またはカプセルの形の添加物も添加できる。バイオ活性物質(例えば、抗生物質、腫瘍抑制剤、ホルモン、成長因子または上記物質種類の組合せ)の直接的添加以外に、バイオ物質をカプセルに封入して使用することもできる。カプセル封入の態様によって、良く知られているように、作用物質の制御された放出を達成できる。
【0035】
複合材料調製の操作技術的変換は、ケイ酸ゾルから調製したゲルに有機ポリマーと、少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、選択的に、用途特有な添加物とを添加するとともに、始まる。ケイ酸ゾルから出発するゲルの調製は、文献に広汎に記載されている(H.Schmidt:“Chemistry of Material Preparation by Sol−Gel−Process”,J.Non−Cryst.Solids 100,51(1988);J:D.F.Ramsay:“Sol−Gel−Processing”,Controlled Particle,Droplett and Bubble Formation,編集者:D.J.Wedlock,Butterwoth−Heinemann Ltd.,Oxford、1994,p1−36)。複合材料の各成分は、その化学的、物理的性質に依存して、順次にまたは組合せて装入できる。すべての成分を装入したならば、混合物の粘度に依存して、各種の撹拌技術(撹拌機構、分散器)によって均一化を行う。以降の形態付与は、同じく、粘度によって決定される。なお水分を含む複合材料は、例えば、注形(ausgiessen)、プレス(auspressen)、噴射または噴霧できる。表面上の改善された付着性は、加湿状態の複合材料を減圧して析出させることによって、達成できる。更に、浸積または噴霧によって、表面に複合材料を被覆できる。この場合、適用は、静止表面に限定されず、回転基材(基板)上にも拡張できる。
【0036】
複合材料の被覆には、荒さ、前処理または前被覆に関係なく、金属表面、天然物表面、合成体表面またはセラミック表面が適する。
【0037】
電気化学的(陰極)析出は、複合材料の全く別の被覆方法を与える。この場合、基本的に、2つの方法がある。1つとしては、調製した成分混合物を用いる(電気化学的に析出させる)か、或いは成分を順次に電気化学的に析出させる。
【0038】
ポリケイ酸誘導体と、適切なリン酸カルシウムと、ポリマーと、択一的に添加する用途特有の添加物との組合せによって、複合材料を、医薬製品と組合せてまたは直接に医薬製品として使用できる。この場合、複合材料は、ベース材料(基材)として、充填物質、沈積材料としてまたは被覆材として直接に使用できる。複合材料は、分散体、ペースト、粉体、顆粒、層の形でまたは圧密な成形体として使用できる。
【0039】
複合材料自体が用途特有の添加物を含むことができると云う可能性にもとづき、この複合材料は、医薬として直接にまたは医薬と組合せて使用できる。
【0040】
本発明にもとづき調製した材料は、移植または注入できる。複合材料の組成から生ずる性質にもとづき、骨代用のためおよび/または骨再生のため複合材料を使用できる。更に、この材料は、傷の治療目的のため、使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下の実施例を参照して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1−ポリケイ酸、ポリマーおよびリン酸カルシウム相をベースとする複合材料の調製:
【0043】
テトラエトキシシラン9mlを、0.1M塩酸3mlおよびエタノール3mlと混合する。加水分解物を(2%乳酸に溶解した)1.5%キトサン溶液3ml中に導入し、かくして、透明な溶液を保持する。次いで、分散器を使用してヒドロキシルアパタイト9gを装入する。50℃における2時間の反応時間後、材料をプレスできる。乾燥は、100℃において行う。材料の気孔率は、70℃である(アルキメデス法にもとづき測定)。ガス吸収による内表面積の測定において、120m2/gの数値が得られる。気孔の44%は、20−80nmの範囲にある。気孔の18%は、径>80nmを有する。
【0044】
実施例2−ポリケイ酸、ポリマーおよび2つのリン酸カルシウム相をベースとする複合材料の調製:
【0045】
アミノプロピルトリメトキシシラン8mlを、0.1M塩酸3mlおよびエタノール3mlと混合する。加水分解終了後、撹拌しながら、ポリケイ酸溶液を(10%乳酸に溶解した)0.5%コラーゲン溶液5ml中に滴下する。次いで、β−リン酸三カルシウム6gおよびヒドロキシルアパタイト12gを順次に導入する。同じく、複合材料を所望の形状とする。50℃における2時間の更なる反応時間後、100℃において複合材料を乾燥する。材料は、138m2/gの内表面積を有する。46%が、20−80nmの粒径範囲を有する。
【0046】
実施例3−ポリケイ酸、ポリ乳酸およびヒドロキシルアパタイトをベースとする複合材料の調製−ポリマー成分10重量%:
【0047】
テトラエトキシシラン13.8mlを、0.1M塩酸4mlおよびエタノール5.5mlおよび水4mlと混合する。ポリ乳酸(ポリ−(D,L−ラクチド、固有粘度=0.16−0.24dl/g,平均分子量2000g/モル)2gおよびヒドロキシルアパタイト14gを均一に混合し、10℃に冷却したポリケイ酸ゾル中に3min以内で分散させる。均一な混合物を50℃に約2時間、保持する。次いで、プレスによって上記混合物を成形する。硬化のため複合材料を室温に24時間、放置し、次いで、100℃において乾燥する。
【0048】
実施例4−ポリケイ酸、ポリ乳酸およびヒドロキシルアパタイトをベースとする複合材料の調製−ポリマー成分20重量%:
【0049】
テトラエトキシシラン13.8mlを、0.1M塩酸4mlおよびエタノール5.5mlおよび水4mlと混合する。ポリ乳酸(ポリ−(D,L−ラクチド、固有粘度=0.16−0.24dl/g,平均分子量2000g/モル)4gおよびヒドロキシルアパタイト12.3gを均一に混合し、10℃に冷却したポリケイ酸ゾル中に3min以内で分散させる。均一な混合物を50℃に約2時間、保持する。次いで、プレスによって上記混合物を成形する。硬化のため複合材料を室温に24時間、放置し、次いで、100℃において乾燥する。
【0050】
実施例5−ポリケイ酸、作用物質含有ポリ乳酸微(ミクロ)粒子およびヒドロキシルアパタイトをベースとする複合材料の調製:
【0051】
テトラエトキシシラン14mlを、0.1M塩酸4mlおよびエタノール5.5mlおよび水4mlと混合する。20%バンコマイシンヒドロクロリドを含む、(ポリ−(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(固有粘度=0.16−0.24dl/g,平均分子量17000g/モル),d=48μmから調製した)ポリ(乳酸−コ(co)−グリコール酸)微(ミクロ)粒子2gおよびおよびヒドロキシルアパタイト14gを均一に混合し、10℃に冷却したポリケイ酸ゾル中に3min分散させる。均一な混合物を50℃に約2時間、保持する。次いで、プレスによって上記混合物を成形する。硬化のため複合材料を室温に24時間、放置し、次いで、100℃において乾燥する。
【0052】
実施例6−ポリケイ酸ナノ粒子の使用による複合材料の調製:
【0053】
コロイド分散状態のポリケイ酸ナノ粒子(SiO234重量%,表面積110−150m2/g)36gを0.1M塩酸14mlと混合し、超音波浴中で10min賦活する。上記溶液をキトサン溶液(2%乳酸に溶解した1.5%溶液)15ml中に導入、撹拌する。次いで、白色の均一な溶液中にヒドロキシルアパタイト11.9gを分散させる。50℃における1時間の培養後、プレスまたは塗布によって複合材料を成形する。100℃において材料を乾燥する。
【0054】
実施例7−ポリケイ酸ミクロ粒子の使用による複合材料の調製:
【0055】
ポリケイ酸ミクロ粒子(無気孔,平坦(plain)、7μmol/gSi−OH,d=1μm)3gを0.1M塩酸8ml中に懸濁させる。超音波浴中における10min賦活後、均一にコンシステンシーが得られるまで、ヒドロキシルアパタイト15gを導入、撹拌する。プレス成形(ausgepresst)した混合物を空気中で24時間乾燥し、次いで、100℃において乾燥する。
【0056】
実施例8−エポキシ官能化ポリケイ酸粒子の使用による複合材料の調製:
【0057】
ポリケイ酸ナノ粒子(無気孔,エポキシ官能化、球形、8μmol/g,d=300nm)1gを、超音波を使用して2%アルギン酸ナトリウム15ml中に懸濁させる。15min後撹拌を行う。次いで、リン酸カルシウム相としてヒドロキシルアパタイト9.5gを導入する。混合物を50℃に1時間、保持し、次いで、所望の形状とする。100℃において複合材料を乾燥する。
【0058】
実施例9−ポリケイ酸、ポリマーおよびリン酸カルシウム相から出発する注入可能な複合材料の調製:
【0059】
注入可能な複合材料の調製のため、テトラエトキシシラン9ml、0.1M塩酸3mlおよびエタノール水3mlからポリケイ酸ゾルを形成する。これに、(2%乳酸に溶解した)1.5%キトサン溶液3mlを滴下によって添加する。ポリケイ酸ゾル・キトサン溶液10mlを、混合カニューレを介して、リン酸二カルシウム・2水加物15.6gと相互に反応させる。かくして形成された複合材料は、SBF緩衝液中に噴射した際、溶解せず、圧縮弾性性質を有する。
【0060】
実施例10−成分の順次の電気化学的析出による複合材料の調製:
【0061】
電気化学的に析出させたリン酸カルシウム相(難溶リン酸カルシウム相および易溶リン酸カルシウム相からなる複合体)上に、pH5.0において、1.5%キトサン溶液から電気化学的にキトサンを析出させる。過剰のゲル状キトサンフィルムを洗い落とす。次いで、ポリケイ酸前駆体として0.1Mケイ酸ナトリウム溶液を使用して、上記キトサン上にケイ酸塩表面を形成する。0.1M塩化カルシウム溶液および1M塩酸を添加して、5−8Vの範囲の電圧において、リン酸カルシウム・キトサン被覆層上にカルシウム含有ポリケイ酸層を形成する。
【0062】
実施例11−添加物として硫酸ゲンタマイシンを含む複合材料の調製:
【0063】
テトラエトキシシラン27mlを0.1M塩酸8mlおよびエタノール10mlと混合する。アルコキシシランの加水分解の終了後、ポリケイ酸溶液を(10%乳酸中の)コラーゲン溶液7.5ml中に滴下によって添加する。溶液中に、撹拌しながらヒドロキシルアパタイト27gおよびβ−リン酸三カルシウム18gを導入する。硫酸ゲンタマイシン2.25gを水4ml中に溶解し、複合材料中に導入、撹拌する。30min後、生成物を型に注入し、130℃において乾燥する。
【0064】
実施例12−添加物として塩化バンコマイシンを含む複合材料の調製:
【0065】
テトラエトキシシラン18mlを0.1M塩酸5mlと混合し、エタノール7mlを添加する。加水分解の終了後、上記溶液を(10%乳酸に溶解した)0.5%コラーゲン溶液5mlに加える。次いで、リン酸カルシウム相に、ヒドロキシルアパタイト(18g)およびβ−リン酸三カルシウム(12g)を導入、撹拌する。塩化水素バンコマイシン1.5gを固形物として添加し、磁気撹拌機によって30min、複合材料を後撹拌する。複合材料を型に注入し、次いで、100℃において乾燥する。
【0066】
実施例13−アルキレンビスホスホネートの添加による複合材料の調製:
【0067】
テトラエトキシシラン18mlを0.1M塩酸5mlと混合し、エタノール7mlを添加する。加水分解の終了後、上記溶液を(10%乳酸に溶解した)0.5%コラーゲン溶液5mlに加える。次いで、リン酸カルシウム相に、ヒドロキシルアパタイト(20g)およびβ−リン酸三カルシウム(10g)を導入、撹拌する。クロドロン酸ナトリウム(ジクロロメチレン・ジホスホン酸・ジナトリウム塩)1.0gを1M塩化カルシウム溶液5mlに加える。次いで、上記サスペンジョンを複合材料に添加する。30minの後撹拌を行う。複合材料を型に注入し、次いで、100℃において乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのインプラントまたは獣医学的インプラントの表面層としてのまたは改善された機械的性質を有する代用骨または骨再生材料としてのポリケイ酸ベースの複合材料であって、該複合材料が、本質的成分として、
a)0.01−20重量%の割合の有機ポリマーと、
b)15重量%よりも多量の割合の少なくとも1つのリン酸カルシウム相と、
c)選択的に、用途特有の添加物とを含み、
150℃未満の温度における乾燥後に多孔質構造を有することを特徴とする複合材料。
【請求項2】
無機シリケートから縮合によってポリケイ酸マトリックスを調製することを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項3】
テトラアルコキシシランから縮合によってポリケイ酸マトリックスを調製することを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項4】
ポリケイ酸マトリックスが、固形の球形または非晶質のナノないしミクロシリケート粒子からなることを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項5】
ポリケイ酸マトリックスが、固形の球形または非晶質のナノないしミクロシリケート粒子からなり、この場合、該粒子が、好ましくは、10nm−10μmの範囲の径を有することを特徴とする請求項4の複合材料。
【請求項6】
有機残基によるオルガノアルコキシシランの縮合によって、ポリケイ酸マトリックスを改質することを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項7】
ポリケイ酸マトリックスが、成分として、二酸化チタンおよび酸化アルミニウムまたはこれらの前駆体のような他の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項8】
請求項2−7に記載の化合物、材料、前駆体または粒子(複数)の組合せによってポリケイ酸マトリックスを形成することを特徴とする請求項1の複合材料。
【請求項9】
有機ポリマーが、自然起源、合成起源または半合成起源であることを特徴とする請求項1−8の複合材料。
【請求項10】
有機ポリマーが、ホモポリマーまたはコポリマーとしてまたはポリマーブレンドとして存在することを特徴とする請求項1−9の複合材料。
【請求項11】
有機ポリマーが、反応基、官能基、シークエンスまたは置換体によって誘導されていることを特徴とする請求項1−10の複合材料。
【請求項12】
有機ポリマーが、水溶性化合物または水中に分散させ得る化合物であることを特徴とする請求項1−11の複合材料。
【請求項13】
有機ポリマーが、バイオポリマーであることを特徴とする請求項1−12の複合材料。
【請求項14】
バイオポリマーが、ポリアミノ酸、ペプチド、タンパク質、これらのフラグメントおよび誘導体のようなポリアミドであることを特徴とする請求項1−13の複合材料。
【請求項15】
バイオポリマーが、多糖類、そのフラグメントおよび誘導体であることを特徴とする請求項1−14の複合材料。
【請求項16】
有機ポリマーが、好ましくは、ポリアミンまたはポリイミン、ポリオール、対応するエステル、ポリカルボン酸、これらの誘導体の範囲の合成ポリマーまたはポリビニル化合物ベースの合成ポリマーであることを特徴とする請求項1−9の複合材料。
【請求項17】
前調製したまたはインシトゥで調製したリン酸カルシウムをリン酸カルシウム相として使用することを特徴とする請求項1−16の複合材料。
【請求項18】
特に、ヒドロキシルアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、
リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水加物、ペンタリン酸オクタカルシウムまたは対応する混合相または混合物をリン酸カルシウム相として使用することを特徴とする請求項1−17の複合材料。
【請求項19】
リン酸カルシウム相が、成分として、アルキレンビスホスホネート・カルシウム塩を含むことを特徴とする請求項1−18の複合材料。
【請求項20】
リン酸カルシウム相が、成分として、ナトリウム、カリウム、銀、マグネシウム、亜鉛またはリチウムのような他の金属カチオンを含むことを特徴とする請求項1−19の複合材料。
【請求項21】
リン酸カルシウム相が、成分として、フッ化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩またはケイ酸塩のような他のアニオンを含むことを特徴とする請求項1−20の複合材料。
【請求項22】
用途特有の添加物として、化学的または形態的に改質したポリケイ酸化合物、有機ポリマーまたはリン酸カルシウム相を添加することを特徴とする請求項1−21の複合材料。
【請求項23】
用途特有の添加物を固形のナノないしミクロ粒子またはナノないしミクロカプセルの形で添加することを特徴とする請求項22の複合材料。
【請求項24】
用途特有の添加物として、抗生物質、腫瘍抑制剤、ホルモンまたは成長因子のようなバイオ活性物質を単独でまたは組合せて添加することを特徴とする請求項1−23の複合材料。
【請求項25】
バイオ活性物質を、カプセル封入によって保護して且つ制御して遊離させることを特徴とする請求項24の複合材料。
【請求項26】
ポリケイ酸ベースの複合材料の調製法であって、ケイ酸ゾルから調製したゲルに、有機ポリマーと、リン酸カルシウム相と、選択的に、用途特有の添加物とを添加することを特徴とする複合材料調製法。
【請求項27】
調製工程を順次にまたは組合せて行うことを特徴とする請求項26の複合材料調製法。
【請求項28】
撹拌プロセスによって成分を均一に分散させることを特徴とする請求項26の複合材料調製法。
【請求項29】
注形(Ausgiessen)、圧搾(Auspressen)、射出、噴霧または他の方法によって複合材料を成形することを特徴とする請求項26−28の複合材料調製法。
【請求項30】
減圧下で成分(複数)を表面に析着することを特徴とする請求項26−28の複合材料調製法。
【請求項31】
浸漬または噴霧によって成分(複数)を表面に施すことを特徴とする請求項26−28の複合材料調製法。
【請求項32】
回転基板の表面に成分(複数)を被覆することを特徴とする請求項29−31の複合材料調製法。
【請求項33】
表面が、金属表面、天然ポリマー表面および合成ポリマー表面またはセラミック表面であることを特徴とする請求項29−32の複合材料調製法。
【請求項34】
成分(複数)を電気化学的に析出させることを特徴とする請求項26−28の複合材料調製法。
【請求項35】
成分(複数)を順次に析出させることを特徴とする請求項26、27および34の複合材料調製法。
【請求項36】
請求項1−35にもとづき調製した複合材料において、該複合材料を、医療品と組合せてまたは医療品として使用することを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項37】
基材、充填材、保存材料としてまたは積層材として使用することを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項38】
分散体、ペースト、粉体、顆粒、層または圧密成形体の形で使用することを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項39】
該複合材料が、用途特有の添加物としてバイオ活性化合物を含むこと、および/または、医薬品と組合せて使用されることを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項40】
該複合材料が、移植可能または注入可能であることを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項41】
骨置換および/または骨再生のために該複合材料を使用することを特徴とする請求項36の複合材料。
【請求項42】
創傷治癒のために該複合材料を使用することを特徴とする請求項36の複合材料。

【公表番号】特表2007−529253(P2007−529253A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503331(P2007−503331)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051012
【国際公開番号】WO2005/087284
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502274185)ドット ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】