説明

ポリケチドシンターゼを使用するバイオ燃料の生成

本発明は、カルボン酸またはラクトンを合成可能な非天然ポリケチドシンターゼ(PKS)、およびそのようなカルボン酸またはラクトンを含む組成物を提供する。カルボン酸もしくはラクトン、またはその誘導体はバイオ燃料として有用である。本発明は、そのようなPKSをコードする組換え核酸またはベクター、およびそのような組換え核酸またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本発明は、そのようなPKSを使用してそのようなカルボン酸またはラクトンを生成する方法も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2008年4月29日出願の米国仮特許出願第61/048,817号の優先権を主張する。
【0002】
政府支援の表明
本明細書で記載および特許請求されている本発明は、一部は米国エネルギー省が契約第DE-AC02-05CH11231号に基づいて供給した基金を利用して行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は一般に、ポリケチドシンターゼを使用するバイオ燃料生成に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
石油由来燃料は、100年超にわたって主要なエネルギー源となっている。しかし、石油は、何百万年もかけて自然界において形成されてきたものであり、再生可能エネルギー源ではない。代替燃料の著しい量の研究が数十年にわたって進行中である。この分野では、エタノールはガソリン代替物として集中的に研究されており、輸送燃料としてのエタノールの使用は近年増加している(Gray et al., Curr Opin Chem Biol 2006, 10:141(非特許文献1))。しかし、燃料としてのエタノールの効率は依然として論議中である(Pimentel, Natural Resources Research 2005, 14:65(非特許文献2); Farrell et al., Science 2006, 311:506(非特許文献3))。生合成により生成可能なエタノール以外のいくつかの潜在的な代替燃料分子を設計すること、および合成生物学を使用する標的燃料分子の生成増大のための生合成経路を開発することに対する関心が存在する。
【0005】
本発明は、ポリケチドシンターゼ(PKS)を使用する、再生可能燃料源となり得るカルボン酸およびラクトンの生合成を包含する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gray et al., Curr Opin Chem Biol 2006, 10:141
【非特許文献2】Pimentel, Natural Resources Research 2005, 14:65
【非特許文献3】Farrell et al., Science 2006, 311:506
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリケチドシンターゼ(PKS)により生成されるカルボン酸またはラクトンを提供する。そのようなカルボン酸またはラクトンは、1個もしくは複数のケチド単位、あるいは2個、3個、4個、5個もしくは6個またはそれ以上のケチド単位のポリケチドであり得る。カルボン酸は1個または複数のメチルおよび/またはエチル官能基を含む。ラクトンは、1個または複数のメチルおよび/またはエチル官能基を含む偶数員のラクトン環である。
【0008】
本発明は、以下の化学構造を有するカルボン酸を提供する:

式中、R1はHまたは-CH3であり; R2はH、-CH3または-CH2CH3であり; R3はH、-CH3または-CH2CH3であり; あるいはR2およびR3は各々Hであり、R1はH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。本発明のいくつかの態様では、R1はHまたは-CH3であり; R2はH、-CH3または-CH2CH3であり; R3はH、-CH3または-CH2CH3である。本発明の他の態様では、R2およびR3は各々Hであり、R1はH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。本発明の特定の態様では、R2およびR3は各々Hであり、R1は-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。
【0009】
本発明は、以下の化学構造を有するラクトンを提供する:

式中、R4はHまたは-CH3であり; R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり; mは1、3、5、7または9であり; 但し、mが1である場合、R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり、mが3、5、7または9である場合、R4はHまたは-CH3であり、R5およびR6は各々Hである。
【0010】
本発明は、カルボン酸またはラクトンを合成可能なポリケチドシンターゼ(PKS)を提供する。そのようなカルボン酸またはラクトンは、本発明のカルボン酸およびラクトンを含む。そのようなカルボン酸またはラクトンは、表1および2に記載のカルボン酸、ならびに表3〜7に記載のラクトンを含む。
【0011】
本発明は、本発明のポリケチドシンターゼ(PKS)をコードする組換え核酸を提供する。本発明は、本発明の組換え核酸を含むベクターまたは発現ベクターも提供する。本発明は、本発明の組換え核酸および/またはPKSのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
本発明は、表1および2に記載のカルボン酸などのカルボン酸を生成する方法であって、本発明の宿主細胞を与える段階、および好適な培地中で該宿主細胞を培養することでカルボン酸を生成する段階を含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞および/または培地から前記カルボン酸を単離する段階をさらに含み得る。本方法は、単離されたカルボン酸とアルコールとを反応させてエステルを生成する段階をさらに含み得る。
【0013】
本発明は、化合物1〜53からなる群より選択されるカルボン酸などのカルボン酸を生成する方法であって、本発明の宿主細胞を与える段階、および好適な培地中で該宿主細胞を培養することでカルボン酸を生成する段階を含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞および/または培地から前記カルボン酸を単離する段階をさらに含み得る。本方法は、単離されたカルボン酸とアルコールとを反応させてエステルを生成する段階をさらに含み得る。
【0014】
本発明は、表3〜7に記載のラクトンなどのラクトンを生成する方法であって、本発明の宿主細胞を与える段階、および好適な培地中で該宿主細胞を培養することでラクトンを生成する段階を含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞および/または培地から前記ラクトンを単離する段階をさらに含み得る。
【0015】
本発明は、カルボン酸もしくはラクトンをそれから生成した宿主細胞、および/または培地から単離された、カルボン酸もしくはラクトン、またはカルボン酸から誘導されるエステル、ならびに、宿主細胞および/または培地の微量の残渣および/または混入物を含む、組成物を提供する。
【0016】
本発明のカルボン酸もしくはラクトン、またはその誘導体はバイオ燃料として有用である。
【0017】
上記の局面および他の局面は、添付の図面との組み合わせで読んだ場合に、例示的態様の以下の説明から、当業者には容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】使用するモジュールの種類、およびポリケチド鎖に対する組み入れに利用する対応する前駆体を示す。ローディングモジュールをS1およびS2と称する。残りの化合物は、エクステンダーモジュールA〜Jを使用する成長ポリケチド鎖に組み入れられる構造を表す。破線は、クライゼン縮合を通じて形成されるC-C結合を示し、結合の右側の原子および破線の左側のC原子は、使用するモジュールにより決定される構造を表す。R基は、モジュールにより決定される組み入れの前に存在するアシル鎖を表す。略語: ave、エバーメクチン; ery、エリスロマイシン; FK、アスコマイシン(FK520); LM、ローディングモジュール; Mod、モジュール; nys、ニスタチン; olm、オリゴマイシン; pik、ピクロマイシン; srm、スピラマイシン、tyl、タイロシン。産生される構造、およびこの提案で使用されるモジュールを青色で強調する。
【図2】6〜13個の炭素原子を含む還元短鎖および中鎖ポリケチド(脂肪酸)を示す。
【図3】イズメノリド(Izumenolide)の構造を示す。番号1〜6は、モジュール1〜6が導入する原子をそれぞれ示す。
【図4】脂肪酸からのラクトンのチオエステラーゼ指向性形成を示す。
【図5】pik PKSのドメイン組織化、および各縮合(および還元)サイクルの終わりの提案される中間体の構造を示す。線状ポリペプチド(Pik AI〜AIV)を開矢印として示し、モジュールを図示し、ドメインを球として示す。色コーディングは、新生ポリケチド鎖のセグメントがプログラミングに使用するモジュールおよびドメインに対応していることを示す。略語: ACP、アシル担体タンパク質; AT、アシルトランスフェラーゼ; DH、デヒドラターゼ; ER、エノイルレダクターゼ; KR、β-ケトレダクターゼ; KS、β-ケトアシル-ACPシンターゼ; KSQ; 縮合活性を欠いているが脱炭酸活性を維持するKSドメイン; TE、チオエステラーゼ。
【図6】ラクトン化合物26、27、29および30を合成するための例示的PKSを示す。
【図7】ラクトン化合物32、35、37および38を合成するための例示的PKSを示す。
【図8】化合物51、52および53を合成するための例示的PKSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明が、記載される特定の態様に限定されるわけではなく、したがって当然変動し得るということを理解すべきである。本明細書で使用する用語法が、特定の態様のみを記載するためのものであり、限定を意図するものではなく、これは本発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみにより限定されるためであるということも理解すべきである。
【0020】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈上別途明確な断りがない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されるということが理解される。規定範囲内の任意の規定値または介在値とその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値との間の各々のより小さい範囲も、本発明内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立して、その範囲に含まれ得るかまたはその範囲から除かれ得るものであり、そのより小さい範囲に限界のうち一方が含まれるか、いずれも含まれないかまたはいずれも含まれる各範囲も、本発明内に包含されるものであり、規定範囲内の任意の具体的に除かれる限界に従属する。規定範囲が限界のうち一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のうち一方または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0021】
別途定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施および試験に使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物がそれに関連して引用される方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「and」および「the」は、文脈上別途明確な断りがない限り複数の参照対象を含むということに留意しなければならない。したがって、例えば「カルボン酸」に対する言及は複数のそのようなカルボン酸などを含む。
【0023】
本明細書および後続の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語に言及する。
【0024】
「発現ベクター」または「ベクター」という用語は、形質導入、形質転換、形質移入、伝染、電気穿孔、抱合などを含むがそれに限定されない任意の好適な方法により宿主細胞に導入されることで、細胞にとって天然なもの以外の、または細胞にとって天然には存在しない様式での核酸および/またはタンパク質を細胞に発現させることができる、化合物および/または組成物を意味する。「発現ベクター」は、宿主細胞が発現する核酸(通常はRNAまたはDNA)の配列を含む。任意的には、発現ベクターは、ウイルス、リポソーム、タンパク質コーティングなどの、宿主細胞に対する核酸の流入を実現することを支援する材料も含む。本発明における使用が想定される発現ベクターとしては、核酸配列を任意の好ましいまたは所要の操作エレメントと共にそれに挿入可能なものが挙げられる。さらに、発現ベクターは、宿主細胞内に移動されかつその中で複製されることが可能なものでなければならない。好ましい発現ベクターはプラスミドであり、特に、十分に文献記載されておりかつ核酸配列の転写に好ましいかまたは必要な操作エレメントを含む制限酵素部位を有するものである。そのようなプラスミドおよび他の発現ベクターは当業者に周知である。
【0025】
「単離された」という用語は、それをその天然状態で通常は伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を意味する。
【0026】
本明細書で使用する「核酸配列」、「核酸の配列」という用語およびその変形は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、プリンまたはピリミジン塩基のN-配糖体である任意の他の種類のポリヌクレオチド、および非ヌクレオチド主鎖を含む他のポリマーであって、但しDNAおよびRNAに見られるように、塩基対形成および塩基スタッキングを可能にする構成で核酸塩基を含むポリマーに属するものとする。
【0027】
「操作可能に連結されている」という用語は、核酸発現調節配列(プロモーターなどの)と第2の核酸配列との間の機能的連結を意味し、発現調節配列は、第2の配列に対応して核酸の転写を指向させる。
【0028】
本発明のこれらのおよび他の目的、利点および特徴は、より十分に以下に記載される本発明の詳細を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【0029】
カルボン酸(脂肪酸)
本発明は、1個または複数のメチルおよび/またはエチル官能基を含むカルボン酸であって、PKSにより生成されるカルボン酸を提供する。
【0030】
本発明は、以下の化学構造を有するカルボン酸を提供する:

式中、R1はHまたは-CH3であり; R2はH、-CH3または-CH2CH3であり; R3はH、-CH3または-CH2CH3であり; あるいはR2およびR3は各々Hであり、R1はH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。本発明のいくつかの態様では、R1はHまたは-CH3であり; R2はH、-CH3または-CH2CH3であり; R3はH、-CH3または-CH2CH3である。本発明の他の態様では、R2およびR3は各々Hであり、R1はH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。本発明の特定の態様では、R2およびR3は各々Hであり、R1は-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。本発明は、表1および2ならびに図8に示す化学構造を有するカルボン酸を提供する。
【0031】
ラクトン
本発明は、1個または複数のメチルおよび/またはエチル官能基を含む偶数員のラクトン環を有するラクトンであって、PKSにより生成されるラクトンを提供する。
【0032】
本発明は、以下の化学構造を有するラクトンを提供する:

式中、R4はHまたは-CH3であり; R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり; mは1、3、5、7または9であり; 但し、mが1である場合、R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり、mが3、5、7または9である場合、R4はHまたは-CH3であり、R5およびR6は各々Hである。本発明は、表3〜7に示す化学構造を有するラクトンを提供する。
【0033】
本発明は、以下の化学構造を有する6員のラクトンを提供する:

式中、R1はHまたは-CH3であり; R2およびR3は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3である。本発明は、表3に示す化学構造を有する6員のラクトンを提供する。
【0034】
本発明は、以下の化学構造を有する8員のラクトンを提供する:

式中、RはHまたは-CH3である。本発明は、表4に示す化学構造を有する8員のラクトンを提供する。
【0035】
本発明は、以下の化学構造を有する10員のラクトンを提供する:

式中、RはHまたは-CH3である。本発明は、表5に示す化学構造を有する10員のラクトンを提供する。
【0036】
本発明は、以下の化学構造を有する12員のラクトンを提供する:

式中、RはHまたは-CH3である。本発明は、表6に示す化学構造を有する12員のラクトンを提供する。
【0037】
本発明は、以下の化学構造を有する14員のラクトンを提供する:

式中、RはHまたは-CH3である。本発明は、表7に示す化学構造を有する14員のラクトンを提供する。
【0038】
ポリケチドシンターゼ(PKS)
本発明は、カルボン酸またはラクトンを合成可能なポリケチドシンターゼ(PKS)を提供する。そのようなカルボン酸またはラクトンは、本発明のカルボン酸およびラクトンを含む。そのようなカルボン酸またはラクトンは、表1および2に記載のカルボン酸、ならびに化合物51〜53、ならびに表3〜7に記載のラクトンを含む。本発明の具体的な各カルボン酸またはラクトンを合成するために十分なPKSモジュールは表1〜7に記載されている。PKSは天然ではない。いくつかの態様では、PKSは、自然界においてこの組み合わせでは見られない天然モジュールの組み合わせを含むハイブリッドPKSである。
【0039】
PKSは宿主細胞中に位置し得るか、または単離もしくは精製可能である。PKSはカルボン酸またはラクトンをインビボで(宿主細胞中で)またはインビトロで(細胞抽出物中、またはすべての必要な化学成分もしくは出発原料が与えられる場所で)合成することができる。本発明は、これらのインビボまたはインビトロの手段のいずれかを使用する、カルボン酸またはラクトンを生成する方法を提供する。例えば、モジュールS1 (srm LM)、D (nys Mod5またはolm Mod3)およびD (nys Mod5またはolm Mod3)(表1および図1を参照)を含むPKSを使用して、カルボン酸化合物1を合成することができる。例えば、モジュールS1 (srm LM)、B (ave Mod4またはave Mod5)およびD (nys Mod5またはolm Mod3)(表3および図1を参照)を含むPKSを使用して、ラクトン化合物26を合成することができる。
【0040】
このプロジェクトの目標は、I型モジュラーポリケチドシンターゼ(PKS)を使用していくつかの選択された短鎖および中鎖脂肪酸(またはそれらの対応するラクトン)を生成することである。これらの分子は、バイオ燃料への変換用の出発原料として使用可能である。一般に、化学構造における多様性を有する短鎖および中鎖ポリケチドをモジュラーPKSから産生することができるが、バイオ燃料に変換される最良の化合物は、最も還元度が高いものである。したがって、高度に還元されている分子のみがこの提案において考慮される。二重結合またはケト基を含む化合物は記載されない。単一の水酸基を含む化合物はラクトンを形成することができ、したがってそれらは考察される。
【0041】
ポリケチドは、短鎖脂肪酸(CoAの形態での)からなるアシル単位の脱炭酸クライゼン縮合を経由して、ポリケチドシンターゼにより生成される。スターターとしてのアセチルCoAおよびエクステンダー単位としてのマロニルCoAを利用する、脂肪酸シンターゼとは異なり、PKSは、その一部が立体特異的メチルまたはエチル側鎖を含むいくつかの異なるスターター(例えばアセチルCoA、プロピオニルCoA)およびエクステンダーを利用することができる。この提案において、記載される化合物中のメチルまたはエチル側鎖のキラリティーは考慮されない。さらに、PKSは、縮合により形成される3-カルボニルを必ずしも還元するわけではないが、それを未還元(ケトン)、部分還元(ヒドロキシル、2,3-エン)または完全還元(3-メチレン)のいずれかの状態にし得る。α-炭素およびβ-カルボニルの構造(およびキラリティー)は、特定の各段階での成長鎖の合成において使用するPKSのモジュールにより決定される。図1は、可能な範囲の構造を生じさせるために使用する各種モジュール、および新生アシル(ポリケチド)鎖に組み入れるために各モジュールが利用する前駆体を示す。
【0042】
鎖長は行われる縮合の数により決定され、縮合の数は使用するモジュールの数により決定される。全鎖長は、ローディングモジュールが決定するスターターを使用し、典型的には2個(S1)または3個(S2)の炭素原子をアシル鎖の全長に対して提供する。各エクステンダーモジュールは2個の炭素を主鎖に提供するが、さらなる炭素を側鎖として提供することもできる。したがって、単一の縮合により、最小4個の炭素原子(モジュールS1およびD)〜最大7個の炭素原子(モジュールS2およびJ)を有する分子が得られる可能性がある。2回の縮合により、使用するモジュールに応じて6〜11個の炭素、但し6個または7個の炭素主鎖を含む分子が産生される。同様に、3回の縮合により8〜14個の炭素主鎖を有する分子が得られる。
【0043】
還元レベルも、使用するモジュールにより決定される。一般に、より還元度の高い分子が望ましい場合、モジュールD、J、またはH基からのモジュールを使用すべきである。ラクトンの形成を可能にするために内側においてヒドロキシルが望ましい場合、B基またはF基からのモジュールを使用すべきである。PKSチオエステラーゼドメイン(例えばeryTE)が末端外部モジュールのすぐ下流に置かれる場合、ラクトン形成が生じる。
【0044】
バイオ燃料に対する関心により、還元脂肪酸を生成するPKSモジュールの使用が促される(図1、モジュールS1、S2、B、D、F、HおよびJを参照)。6〜13個の炭素原子から構成される24種のそのような完全還元脂肪酸を図示する。化合物1〜6、8〜10、12〜16および18〜20は、ローディングモジュールおよび2つのエクステンダーモジュールからトリケチドとして産生される。それらは表1に記載のように生成される。残りの分子は、ローディングドメインおよび3つ以上のエクステンダーモジュールを使用する。それらは、ミクロモノスポラ・チャルセア(Micromonospora chalcea)亜種イズメンシス(izumensis)から単離される還元ポリケチドであるイズメノリド(図3、化合物25)の合成に関与するIze PKSからのモジュールを使用して生成することができる。
【0045】
(表1)還元トリケチド脂肪酸の合成用のモジュール
モジュールを図1に記載する。

【0046】
表2に概説するように、ローディングモジュールS1またはS2とIze PKSのモジュール2〜5(所望の分子のサイズに応じて)とを組み合わせることで、化合物7、11、17、21、23および24を作製することができる。Izeモジュール2〜6は、モジュールDと類似しているが、安定した形態で共存しかつ相同組換えを経ないよう互いに十分に異なるということが予測されている。
【0047】
(表2)短鎖および中鎖非分岐脂肪酸の生成

【0048】
図4に示すように、末端カルボニル官能基の位置に対するヒドロキシル基の戦略的設置により、偶数個の環原子(最小6個)を含むラクトンをPKSから生成することができる。構築されたPKS中の末端モジュールに対して3'位にTE(チオエステラーゼ)ドメインが置かれる場合、ラクトンが細胞内に形成される。ラクトン環のサイズはヒドロキシルおよびカルボニルの相対位置により決定される。表3〜7に記載のラクトンを生成可能なPKSはいずれも、PKS中の末端モジュールに対して3'位に置かれるTE(チオエステラーゼ)ドメインをさらに含む。
【0049】
多くのさらなる化合物を6員のラクトンとして作製することができるが、本発明者らは化合物26〜37の形成のみを考慮する。表3に概説するように、これらはローディングドメインおよび2つのモジュールの集合を通じて生じる。モジュール1は、ラクトン形成に必要なヒドロキシルの生成を可能にするケトレダクターゼドメインを含む。32を生成する代替的方法は、スピノシンPKSの天然ローディングドメインおよび最初の2つのモジュールを使用することである。
【0050】
(表3)6員のラクトン環の生成

【0051】
スターターモジュール(S1またはS2)および3つ以上の連続したエクステンダーモジュールの集合により、8個以上の原子を含むラクトン(38〜45)を作製することができる。表4〜7に記載のように、Ize PKSからのモジュール1および下流の隣接するモジュールをローディングドメインS1またはS2と共に使用して、これらの分子を作製することができる。
【0052】
(表4)8員のラクトン環の生成

【0053】
(表5)10員のラクトン環の生成

【0054】
(表6)12員のラクトン環の生成

【0055】
(表7)14員のラクトン環の生成

【0056】
ポリケチドシンターゼ(PKS)は、ポリケチドを生成するクライゼン縮合反応において短鎖脂肪酸アシルCoAを使用する。スターターとしてのアセチルCoAおよびエクステンダー単位としてのマロニルCoAを利用し、かつ新生アシル鎖を生成するために単一のモジュールを反復的に使用する、脂肪酸シンターゼとは異なり、PKSは、単一段階の鎖成長を各々触媒する別々のモジュールから構成される。モジュールは組成が互いに異なり得るため、全般的には、その一部が立体特異的メチル(またはエチル)側鎖を含むいくつかの異なるスターター(例えばアセチルCoA、プロピオニルCoA)およびエクステンダーを組み入れることができる。さらに、PKSモジュールは、縮合により形成される3-カルボニルを必ずしも還元するわけではないが、それを未還元(ケトン)、部分還元(ヒドロキシル、2,3-エン)または完全還元(3-メチレン)のいずれかの状態にし得る。多くのポリケチドシンターゼは、ポリケチド合成用のスターターとしてマロニルCoAまたは[S]-2-メチルマロニルCoAを使用する。そのような場合、通常、末端カルボキシル基は、PKSの対応するローディングドメインのN-末端に存在するデカルボキシラーゼドメインにより除去される。要約すれば、α-炭素およびβ-カルボニルの構造(およびキラリティー)は、特定の各段階での成長鎖の合成において使用するPKSのモジュールにより決定される。合成におけるモジュールの使用と、生成されるポリケチドの構造との間に対応があるため、ポリケチドシンターゼの選択および遺伝子操作により、所望の構造の化合物を生成する合成をプログラムすることが可能である。図1は、対象となる範囲の化合物を生じさせるための、各種モジュール、および対応する新生アシル(ポリケチド)鎖に組み入れるために各モジュールが利用する前駆体を示す。図1は各モジュール用のPKS源も示す。各PKS源は当業者に周知であり、容易に入手可能である。さらに、図1で教示する各モジュールについて、使用可能な他のPKSからの他のモジュールが存在し得る。
【0057】
すべてのエクステンダーモジュールは、エクステンダーと成長ポリケチド鎖との間の脱炭酸縮合段階を実行する、β-アシルACPシンターゼ(一般にケトシンターゼまたはKSと呼ぶ)ドメインと、成長アシル鎖を保有しかつβ-カルボニルの還元用の同族還元ドメインに対してそれを提示する、アシル担体タンパク質(ACP)ドメインとを保有する。モジュールは組成が互いに異なり得るため、その一部が立体特異的側鎖(例えばメチル、エチル、プロピレン)を含むいくつかの異なるスターターおよびエクステンダー単位を組み入れることができる。各モジュールのアシルトランスフェラーゼ(AT)ドメインは、組み入れられるエクステンダー単位(例えばマロニルCoA、メチルマロニルCoAなど)を決定する。さらに、図1に示すように、PKSモジュールは、縮合により形成されるβ-カルボニルを必ずしも還元するわけではないが、それを未還元(ケトン)、部分還元(ヒドロキシル、2,3-エン)または完全還元(3-メチレン)のいずれかの状態にし得る。ケトレダクターゼ(KR)ドメインはケトンをOH官能基に還元し(立体特異的に)、デヒドラターゼ(DH)ドメインはαおよびβ炭素から水を除去してα,βトランス二重結合にし、エノイルレダクターゼ(ER)ドメインはこの二重結合をβ-メチレン中心に還元し、したがって、β-カルボニルの還元状態は、対応するモジュール内の機能還元ドメインの存在により決定される。それほど一般的ではないが、モジュールがさらなるC-メチル化ドメイン(エポチロンと同様にさらなるα-メチル側鎖を与える)を含むことがわかっている。したがって、PKSの構成は、組み入れられるスターターおよびエクステンダーアシル単位の選択、各縮合段階での還元の程度、および鎖に付加される単位の総数を決定する。自然界に見られるポリケチドの構造の多種多様性は、PKSの組成の多様性に起因する。抗生物質ピクロマイシンのアグリコン成分(ナルボノリド(narbonolide))のPKS指向性合成を図5に示す。pik PKSは6つのモジュールを使用し(ローディングドメインはモジュール1のN-末端にある)、ローディングドメインならびにモジュール1、3、4、5および6は前駆体[S]-2-メチルマロニルCoAを使用し、モジュール2はマロニルCoAを使用する。(しかし、組み入れ後に、未だ完全には理解されていないプロセスを通じて、側鎖のうち3つが反転する。)各縮合サイクル後の様々な還元度は、各モジュールにおける対応する還元ドメインの存在により決定される。PKSの生成物の環状の性質は、ACP6における末端チオエステル結合上で第1の縮合サイクル後に産生されるOHの、TEドメインが触媒する求核攻撃が理由である。したがって、ポリケチドナルボノリドの構造はpik PKSによりプログラムされる。
【0058】
ポリケチドシンターゼの操作
本発明は、本発明のポリケチドシンターゼ(PKS)をコードする組換え核酸を提供する。組換え核酸は二本鎖もしくは一本鎖DNAまたはRNAであり得る。組換え核酸は本発明のPKSのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードすることができる。組換え核酸は、好適な宿主細胞中でORFを転写するためのプロモーター配列も含み得る。組換え核酸は、組換え核酸が宿主細胞中で安定して複製されるために十分な配列も含み得る。組換え核酸は、宿主細胞中での安定した維持が可能なレプリコンであり得る。いくつかの態様では、レプリコンはプラスミドである。本発明は、本発明の組換え核酸を含むベクターまたは発現ベクターも提供する。
【0059】
種々の組換えベクターを本発明の局面の実践において利用できることは、当業者には明らかであろう。本明細書で使用する「ベクター」とは、発現または複製のいずれかのために組換え核酸を細胞に導入するために使用するポリヌクレオチドエレメントを意味する。そのような媒体の選択および使用は当技術分野において日常的である。「発現ベクター」は、プロモーター領域などの制御配列と操作可能に連結されているDNAを発現可能なベクターを含む。したがって、発現ベクターとは、適切な宿主細胞に導入される時点でクローン化DNAを発現させる、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNA構築物を意味する。適切な発現ベクターは当業者に周知であり、真核細胞および/もしくは原核細胞中で複製可能なもの、ならびにエピソームのままであるもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるものが挙げられる。
【0060】
コード配列の発現を適切な宿主中で行うことができるようにして、得られるコード配列に操作可能に連結されている調節配列を含むように、ベクターを選択することができる。好適な調節配列としては、真核および原核宿主細胞において機能するものが挙げられる。派生PKSをコードするPKS遺伝子を得るために使用されるクローニングベクターが、コード化ヌクレオチド配列に操作可能に連結されている発現用の調節配列を欠いている場合、このヌクレオチド配列を適切な発現ベクターに挿入する。これは個々に行うか、または宿主ベクターに挿入可能な単離されたコード化ヌクレオチド配列のプールを使用して行うことができ、得られたベクターは宿主細胞に形質転換または形質移入され、得られた細胞は個々のコロニーにプレーティングされる。各種微生物の単一の細胞培養用の好適な調節配列は当技術分野で周知である。酵母中での発現用の調節系は広範に利用可能であり、日常的に使用されている。調節エレメントとしては、オペレーター配列を任意的に含むプロモーター、および、リボソーム結合部位などの宿主の性質に依存する他のエレメントが挙げられる。原核宿主に特に有用なプロモーターとしては、I型または芳香族(II型)PKS遺伝子クラスターからのものを含む、ポリケチドを二次代謝物として生成させるPKS遺伝子クラスターからのものが挙げられる。例としてはactプロモーター、tcmプロモーター、スピラマイシンプロモーターなどがある。しかし、ガラクトース、ラクトース(lac)およびマルトースなどの糖代謝酵素に由来するものなどの他の細菌プロモーターも有用である。さらなる例としては、トリプトファン(trp)、β-ラクタマーゼ(bla)、バクテリオファージλPL、およびT5などの生合成酵素に由来するプロモーターが挙げられる。さらに、tacプロモーター(米国特許第4,551,433号; 参照により本明細書に組み入れられる)などの合成プロモーターを使用できる。
【0061】
特に有用な調節配列は、それ自体または好適な制御系と共に、栄養菌糸体において成長期から定常期への移行中に発現を活性化するものであるということに留意されたい。これらの種類の例示的調節配列、ベクターおよび宿主細胞としては、PCT公開第WO 96/40968号に記載の修飾ストレプトマイセス・セリカラー(S. coelicolor)CH999およびベクター、ならびにストレプトマイセス・リビダンス(S. lividans)の同様の菌株が挙げられる。いずれも参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,672,491号; 第5,830,750号; 第5,843,718号; および第6,177,262号を参照。宿主細胞の成長に対してPKS配列の発現の制御を可能にする他の制御配列も望ましいことがある。制御配列は当業者に公知であり、例としては、制御化合物の存在を含む化学的または物理的刺激に応答して遺伝子の発現を開始または停止させるものが挙げられる。他の種類の制御エレメント、例えばエンハンサー配列もベクター中に存在し得る。
【0062】
選択可能なマーカーも組換え発現ベクターに含まれ得る。形質転換細胞系の選択に有用な種々のマーカーであって、細胞を適切な選択培地中で成長させる際にその発現が形質転換細胞に選択可能な表現型を与える遺伝子を一般に含むマーカーは公知である。そのようなマーカーとしては例えば、プラスミドに抗生物質耐性または抗生物質感受性を与える遺伝子が挙げられる。
【0063】
各種PKS核酸配列もしくはヌクレオチド配列またはそのような配列の混合物を1つまたは複数の組換えベクターに、個々のカセットとして、別の調節エレメントと共にまたは単一のプロモーターの調節下で、クローニングすることができる。PKSサブユニットまたは成分は、他のPKSサブユニットの容易な削除および挿入を可能にするフランキング制限酵素部位を含み得る。そのような制限酵素部位の設計は当業者に公知であり、部位指向性変異誘発およびPCRなどの先に記載の技術を使用して達成することができる。本発明の組換えベクターを好適な宿主に導入するための方法は当業者に公知であり、典型的にはCaCl2、または二価カチオンなどの他の作用物質の使用、リポフェクション、DMSO、プロトプラスト形質転換、抱合、および電気穿孔が挙げられる。
【0064】
検査した30種を超えるPKSについて、生合成におけるモジュールの使用と生成されるポリケチドの構造との間の対応は、PKSのタンパク質配列と対応する遺伝子のDNA配列との両方のレベルで完全に理解される。ポリケチド構造に対するモジュールのプログラミングは配列決定により同定することができる。所望のモジュールに対応するDNA配列をクローニング(または合成)し、完全に機能する単位としてそれらを大腸菌(E. Coli)(B. A. Pfeifer, S. J. Admiraal, H. Gramajo, D. E. Cane, C. Khosla, Science 291, 1790 (2001); 参照により本明細書に組み入れられる)およびストレプトマイセス(Streptomyces)(C. M. Kao, L. Katz, C. Khosla, Science 265, 509 (1994); 参照により本明細書に組み入れられる)などの異種宿主、そうでなければ非ポリケチド生成宿主に移動させることが可能である。ポリケチド生合成に使用されるさらなる遺伝子も同定された。ポリケチド生成宿主に一般に存在する、ACPドメインの4-ホスホパンテテイン補助因子を移動させるホスホパンテテイン:タンパク質トランスフェラーゼ(PPTアーゼ)を決定する遺伝子が、大腸菌および他の宿主にクローニングされた(K. J. Weissman, H. Hong, M. Oliynyk, A. P. Siskos, P. F. Leadlay, Chembiochem 5, 116 (2004); 参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、メチルマロニルCoAおよびエチルマロニルCoAなどの前駆体の生成用の遺伝子も同定され、異種宿主にクローニングされた。単一のPKSの遺伝子操作、または2つ以上の源からのモジュールから構成されるハイブリッドPKSの構築のいずれかにより所望の構造の化合物を生成するためにポリケチド生合成を再プログラムすることも可能である(K. J. Weissman, H. Hong, M. Oliynyk, A. P. Siskos, P. F. Leadlay, Chembiochem 5, 116 (2004); 参照により本明細書に組み入れられる)。
【0065】
本発明のPKSを作製するためにモジュラーPKS遺伝子を操作するための組換え方法は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,672,491号; 第5,843,718号; 第5,830,750号; 第5,712,146号; および第6,303,342号; ならびにPCT公開第WO 98/49315号および第WO 97/02358号に記載されている。ポリケチドの構造を操作して新規ポリケチドを生成できることを実証するために、いくつかの遺伝子操作戦略が各種PKSと共に使用された(上記で参考文献として挙げた特許公開、ならびにHutchinson, 1998, Curr Opin Microbiol. 1:319-329およびBaltz, 1998, Trends Microbiol. 6:76-83を参照; 参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの態様では、機能PKSタンパク質中にポリペプチドの集合体を指向させるポリペプチド間リンカーを有するポリペプチド上に、ハイブリッドPKSの成分が配置されており、したがってPKSは、天然PKSで観察されるものと同一の、ポリペプチド内のモジュールの配置を有する必要がない。好適な、ポリペプチドを連結するポリペプチド間リンカー、およびポリペプチド内のモジュールを連結するポリペプチド内リンカーは、参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO 00/47724号に記載されている。
【0066】
解明された多数のポリケチド経路は、表1〜7に示す本発明のこれらのカルボン酸およびラクトン、ならびに化合物51〜53を生成するための多数の異なるオプションを与える。生成物は大きさおよび官能基が大きく異なり得るが、いずれも実質的に同一の生合成の戦略を使用する。非同族酵素パートナー間の正確な界面はケースバイケースで決定される。対象となるタンパク質からのACP-リンカー-KSおよびACP-リンカー-TE領域を整列させて、ハイブリッドシンターゼの最も分裂的でない融合点を検査する。遺伝子の「瘢痕」の組み入れを排除するために、遺伝子構築は、配列および核酸連結と無関係なクローニング(SLIC)を使用する。
【0067】
本発明のPKSの作製に使用可能なPKS配列の源の、限定ではなく例示のための部分的リストは、アンブルチシン(Ambruticin)(米国特許第7,332,576号); エバーメクチン(米国特許第5,252,474号; MacNeil et al., 1993, Industrial Microorganisms: Basic and Applied Molecular Genetics, Baltz, Hegeman, & Skatrud, eds. (ASM), pp. 245-256; MacNeil et al., 1992, Gene 115: 119-25); カンジシジン(FRO008)(Hu et al., 1994, Mol. Microbiol. 14: 163-72); エポチロン(米国特許第6,303,342号); エリスロマイシン(WO 93/13663号; 米国特許第5,824,513号; Donadio et al., 1991, Science 252:675-79; Cortes et al., 1990, Nature 348:176-8); FK506 (Motamedi et al., 1998, Eur. J. Biochem. 256:528-34; Motamedi et al., 1997, Eur. J. Biochem. 244:74-80); FK520またはアスコマイシン(米国特許第6,503,737号; Nielsen et al., 1991, Biochem. 30:5789-96も参照); ジェランゴリド(Jerangolid)(米国特許第7,285,405号); レプトマイシン(米国特許7,288,396号); ロバスタチン(米国特許第5,744,350号); ネマデクチン(Nemadectin)(MacNeil et al., 1993, 前掲論文); ニッダマイシン(Niddamycin)(Kakavas et al., 1997, J. Bacteriol. 179:7515-22); オレアンドマイシン(Swan et al., 1994, Mol. Gen. Genet. 242:358-62; 米国特許第6,388,099号; Olano et al., 1998, Mol. Gen. Genet. 259:299-308); オリゴマイシン(Omura, S., Ikeda, H., Ishikawa, J., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:12215-12220); ペデリン(Pederin)(PCT公開第WO 2003/044186号); ピクロマイシン(Xue et al., 2000, Gene 245:203-211); ピマリシン(PCT公開第WO 2000/077222号); プラテノリド(Platenolide)(欧州特許出願第791,656号); ラパマイシン(Schwecke et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7839-43); Aparicio et al., 1996, Gene 169:9-16); リファマイシン(August et al., 1998, Chemistry & Biology, 5: 69-79); ソラフェン(米国特許第5,716,849号; Schupp et al., 1995, J. Bacteriology 177: 3673-79); スピラマイシン(米国特許第5,098,837号); タイロシン(EP 0 791,655号; Kuhstoss et al., 1996, Gene 183:231-36; 米国特許第5,876,991号)を含む。さらなる好適なPKSコード配列は、当業者が容易に入手可能であるか、または、未だ発見および特徴づけされていないが当業者が入手可能であろう(例えばGenBankを参照することで)。引用される参考文献の各々は参照により本明細書に具体的かつ個々に組み入れられる。
【0068】
複合ポリケチドは、細菌(主に放線菌ファミリー; 例えばストレプトマイセスのメンバー)、真菌および植物において合成される天然物の大きいクラスを含む。ポリケチドは、抗生物質(例えばエリスロマイシン、タイロシン)、抗真菌薬(例えばニスタチン)、抗がん剤(例えばエポチロン)、免疫抑制薬(例えばラパマイシン)などの多数の臨床的に重要な薬物のアグリコン成分を形成する。これらの化合物は、それらの構造またはそれらの作用様式のいずれも互いに似ていないが、ポリケチドシンターゼと称する酵素の群が行うそれらの生合成について共通の基礎を共有する。
【0069】
ローディングモジュールおよび最大2つのエクステンダーモジュールの集合を大腸菌中で行うことができる。アセチルCoAおよびマロニルCoAを前駆体として必要とする化合物を大腸菌宿主中で作製することができる。モジュールは、種々のストレプトマイセス宿主(例えばストレプトマイセス・セリカラー)に導入可能なベクターにクローニングすることもできる。
【0070】
プロピオネート(メチルマロネート)前駆体を必要とする化合物を、これらの前駆体の十分な供給を示す種々のストレプトマイセス宿主中で作製することができる。あるいは、大腸菌にプロピオネートを供給することができ、酵素メチルマロニルCoAムターゼを、ビタミンB12を組み入れるよう操作された大腸菌宿主中にクローニングすることもできる。
【0071】
それらの合成にモジュールJを必要とする化合物は、エチル側鎖を含み、2-エチルマロニルCoAを前駆体として使用する。ブチレートの異性化によりマロン酸エチルを生成する。この経路において酵素をコードしてこの前駆体を生成する遺伝子を、好適な大腸菌にクローニングすることができる。エチルマロニルCoAを生成する数多くのストレプトマイセスが存在し、その一部はPKS遺伝子(例えばストレプトマイセス・フラディエ(Streptomyces fradiae)のクローニングおよび発現に好適である。
【0072】
それらの合成に3つ以上のモジュールを必要とする分子の生合成に必要な構築物を生成するために大腸菌を使用することはおそらく賢明ではない。3つのモジュールは15kb以上を含むと考えられる。イズメノリドPKSは、これらの化合物の合成、および宿主ミクロモノスポラ・チャルセア亜種イズメンシスの染色体中でのインサイチューのPKSの操作のためには良好な選択である。
【0073】
宿主細胞
本発明は、本発明の組換え核酸および/またはPKSのいずれかを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は遺伝的に修飾された宿主細胞であり得る。宿主細胞は、培養する際に、化合物1〜53のものを含むがそれに限定されない、本発明のカルボン酸またはラクトンのいずれかを生成可能である。いくつかの態様では、宿主細胞は、培養する際に、表1および2に記載のカルボン酸、ならびに表3〜7に記載のラクトンを生成可能である。宿主細胞は真核細胞または原核細胞であり得る。
【0074】
本発明の宿主細胞は、異種核酸が宿主細胞に導入されているという点で遺伝的に修飾されており、したがって、遺伝的に修飾された宿主細胞は自然界において生じない。好適な宿主細胞は、カルボン酸またはラクトンの生合成が可能なPKSをコードする核酸構築物を発現可能なものである。PKSをコードする組換え核酸は、宿主細胞中でPKSの発現を生じさせる、異種プロモーターおよび1つまたは複数の調節領域に操作可能に連結されている。
【0075】
核酸の配列により形質転換された後で生存可能なものにとどまる限り、任意の原核または真核宿主細胞を本方法で使用することができる。必ずではないが一般に、宿主微生物は細菌である。細菌宿主細胞の例としては大腸菌(Escherichia)、エンテロバクター(Enterobacter)、アゾトバクター(Azotobacter)、エルウィニア(Erwinia)、バチルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、赤痢菌(Shigella)、根粒菌(Rhizobia)、ビトレオシラ(Vitreoscilla)およびパラコッカス(Paracoccus)の分類クラスに割り当てられる種が挙げられるがそれに限定されない。宿主細胞は、必要な核酸配列の形質導入、引き続くタンパク質(すなわち酵素)の発現、またはメバロネート経路に関連する段階を行うために必要な得られる中間体により悪影響を受けないことが好ましい。例えば、宿主細胞自身の代謝プロセスとメバロネート経路に関与するそれらのプロセスとの間で生じる「クロストーク」(すなわち干渉)が最小限であることが好ましい。好適な原核細胞としては大腸菌、プチダ菌(Pseudomonas putida)またはストレプトマイセス種が挙げられる。
【0076】
好適な真核細胞としては真菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞が挙げられるがそれに限定されない。好適な真核細胞としては、サッカロミセス(Saccharomyces)またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属からのものなどの酵母細胞が挙げられる。サッカロミセス属からの好適な種は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である。シゾサッカロミセス属からの好適な種は分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)である。
【0077】
本発明のPKSを使用してカルボン酸またはラクトンを生成する方法
本発明は、表1および2に記載のカルボン酸ならびに化合物51〜53などの本発明のカルボン酸を生成する方法であって、本発明の宿主細胞を与える段階、および好適な培地中で該宿主細胞を培養することでカルボン酸を生成する段階を含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞および/または培地から前記カルボン酸を単離する段階をさらに含み得る。本方法は、カルボン酸とアルコールとを反応させてエステルを生成する段階をさらに含み得る。
【0078】
宿主細胞および/または培地から前記カルボン酸を単離する段階は、培地のpHを約3.5に減少させる段階、および好適な溶媒を使用して培地からカルボン酸を抽出する段階を含み得る。好適な溶媒としては酢酸エチル、酢酸アミル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。次に、カルボン酸を中性pHで水中に再抽出した後、イオン交換クロマトグラフィー、HPLCなどでさらに精製する。バイオ燃料としての使用のために、この酸をエステルに変換する可能性がある。このことはまた、抽出中のpH調整の必要性を除去すると考えられる。
【0079】
直鎖カルボキシレートを、酸触媒の存在下でアルコールと共に加熱することでエステル化することができる。好適な酸触媒は当業者に周知である。好適な酸触媒は濃硫酸である。エステル化反応はゆっくりでかつ可逆性であり、したがって酸の再形成を防止するためにエステルを一般に留去する。好適なエステル化方法は当業者に周知である。酸RCOOHとアルコールR'OHとの間の反応についての式(式中、RおよびR'は同一でも異なっていてもよい)は以下の通りである。

【0080】
本発明は、表3〜7に記載のラクトンなどの本発明のラクトンを生成する方法であって、本発明の宿主細胞を与える段階、および好適な培地中で該宿主細胞を培養することでラクトンを生成する段階を含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞および/または培地から前記ラクトンを単離する段階をさらに含み得る。
【0081】
一般に、ラクトンは細胞から周囲の培地に排出される。宿主細胞および/または培地から前記ラクトンを単離する段階は、好適な溶媒を使用して中性pHで培地からラクトンを抽出する段階、および溶媒相を乾燥させることでラクトンを濃縮する段階を含み得る。好適な溶媒としては酢酸エチル、酢酸アミル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。ラクトンは逆相クロマトグラフィー、HPLCなどでさらに精製可能である。
【0082】
本方法は、宿主細胞から単離されたエステルおよび/もしくはラクトンまたはその混合物を含む可燃性組成物を酸化または燃焼してエネルギーを得る段階をさらに含み得る。いくつかの態様では、酸化または燃焼段階は完了しているかまたは実質的に完了している。いくつかの態様では、得られるエネルギーは熱エネルギーおよび/または増加した圧力である。いくつかの態様では、酸化または燃焼段階はエンジン中で行われる。エンジンは、内燃エンジン、外燃エンジン、ジェットエンジン、炉、ボイラーなどの、エネルギーを得るために燃料を酸化または燃焼する任意のエンジンであり得る。
【0083】
種々の、PKS遺伝子の異種発現のための方法、ならびにこれらの遺伝子の発現およびポリケチドの生成に好適な宿主細胞は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,843,718号; 第5,830,750号および第6,262,340号; WO 01/31035号、WO 01/27306号およびWO 02/068613号; ならびに米国特許出願公開第20020192767号および第20020045220号に例えば記載されている。
【0084】
本発明は、カルボン酸もしくはラクトンをそれから生成した宿主細胞、および/または培地から単離された、カルボン酸もしくはラクトン、またはカルボン酸から誘導されるエステル、ならびに、宿主細胞および/または培地の微量の残渣および/または混入物を含む、組成物を提供する。
【0085】
カルボン酸またはラクトンを単離することは、カルボン酸またはラクトンをそれから生成した、宿主細胞および/または培地ならびにその一部の少なくとも一部または全部を、カルボン酸またはラクトンから分離することを包含する。単離されたカルボン酸またはラクトンは、宿主細胞および/または培地ならびにその一部の少なくとも一部または全部から形成される不純物を含まないかまたは実質的に含まないことがある。単離されたカルボン酸またはラクトンがこれらの不純物を実質的に含まないのは、その不純物の量および特性が燃焼反応中の燃料などの燃料としての組成物の使用に干渉しない場合である。具体的には、これらの宿主細胞は、自然界においてカルボン酸またはラクトンを生成しない細胞である。
【0086】
本発明は、単離されたエステルまたはラクトンおよび細胞成分を含む可燃性組成物であって、細胞成分が組成物の燃焼に実質的に干渉しない可燃性組成物も提供する。細胞成分は全細胞またはその一部を含む。細胞成分は、エステルがそれから誘導されるカルボン酸、またはラクトンを生成した、宿主細胞に由来する。
【0087】
本発明のエステルまたはラクトンは、石油由来燃料、エタノールなどの代替物として使用可能な、化学的エネルギー源としての燃料として有用である。また、本発明のカルボン酸またはラクトンは、再生可能燃料としての使用のための各種アルカン、アルコールおよびエステルの合成に有用である。さらに、カルボン酸またはラクトンは、治療薬、またはカカオバター等価物などの高価値油の合成における前駆体でもあり得る。カルボン酸またはラクトンは、治療関連の用途を有するエイコサノイドまたは関連分子のクラスの生成にも有用である。
【0088】
可燃性組成物は、バイオ燃料、化石燃料などの、酸化または燃焼可能な1つもしくは複数の炭化水素またはその混合物をさらに含み得る。
【0089】
ここまで本発明を説明してきたが、限定ではなく例示によって本発明を説明するために以下の実施例を提示する。
【実施例】
【0090】
実施例1
6員のラクトンを生成するためのPKSのクローニングスキーム
以下に記載の方法を使用して、本発明の6員のラクトンを生成することができる。
【0091】
既に特徴づけた経路からのローディングドメイン(LD)および第1のエクステンションモジュールを、第1のエクステンダーを飽和させかつ次の所望のエクステンダー単位を組み入れるモジュールに結びつける。エリスロマイシン生合成経路からのチオエステラーゼ(TE)は、6員のラクトンの環化に相当に長けていることがわかっている。したがって、このTEを使用して、これら初期生成物のすべてを環化する。このアプローチにより、非天然のモジュール間接合部の数が構築物1つ当たり2に限定される。これらのうち1つ(TEの付加)は十分に文献記載されており、当業者に周知である。
【0092】
経路は以下の通りである。ストレプトマイセス・アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)からのスピラマイシンクラスター(ストレプトマイセス・カエレスティス(Streptomyces caelestis)からのニッダマイシン経路もこの目的に役立つ)をアセテートスターターおよび1つのアセテートエクステンションに使用する。ストレプトマイセス・ビキニエンシス(Streptomyces bikiniensis)からのカルコマイシン(chalcomycin)経路を使用して、アセテートを負荷しかつプロピオネートを延長する。サッカラポリスポラ・スピノサ(Saccharapolyspora spinosa)からのスピノサド(spinosad)経路を使用して、プロピオネートスターターおよびアセテートエクステンションを組み入れる。ストレプトマイセス・フラディエからのタイロシン経路を使用して、プロピオネートにより開始および延長する。ストレプトマイセス・ノールセイ(S. noursei)からのニスタチン経路は、さらなるアセテートを組み入れかつ以前のエクステンションのカルボニルを飽和させる手段を与える。サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)からのエリスロマイシン経路は、プロピオネートエクステンション、および最後から2番目のカルボニルの還元、ならびにすべての構築物において使用されるチオエステラーゼを与える。
【0093】
全米の培養物保存機関から以下の菌株を得ることができる: ストレプトマイセス・アンボファシエンスATCC 23877、ストレプトマイセス・カエレスティスNRRL-2821、ストレプトマイセス・ビキニエンシスNRRL2737、サッカラポリスポラ・スピノサNRRL18538および18823、ストレプトマイセス・フラディエATCC 19609、ストレプトマイセス・ノールセイATCC 11455、ならびにサッカロポリスポラ・エリスラエアATCC 11635。
【0094】
初期遺伝子構築物を、大腸菌の2つのベクターおよびストレプトマイセス・セリカラーの2つのベクター中に構築する。具体的には、これらは大腸菌のpPRO18(プロピオネート誘導性)およびpET28 (IPTG誘導性)、ならびにストレプトマイセス・セリカラーのpOJ446(細胞質型)およびpSET152(組み込み型)である。ErmE*およびTetプロモーターをストレプトマイセス構築物中で使用して、恒常的発現および誘導発現をそれぞれ調査する。大腸菌は本質的ビルディングブロックマロン酸メチルを生成しないため、BAP1株を宿主として使用する。あるいは、スクシニルCoAをマロン酸メチルに変換可能なプラスミドに基づく系も使用できる。
【0095】
すべての構築物は、ビルディングブロックマロニルCoAおよび/またはメチルマロニルCoAを所望の生成物に変換するために必要な段階のすべてを触媒可能な単一のタンパク質を生成するように設計されている。図6および7に示す生合成スキームでは、これは構築物1つ当たり2つの非天然相互作用を必要とする。いずれの場合でも、これらは第1のエクステンションモジュールと第2のエクステンションモジュールとの間に、また第2のエクステンションモジュールとチオエステラーゼとの間に存在する。記載される構築物では、ローディングドメイン、第1のエクステンションモジュール、および(大部分の場合)第2のエクステンションモジュールからのケトシンターゼドメインは、いずれも単一の経路に由来する。例外は、スピノサド経路からのローディングドメインおよび第1のエクステンションを含む構築物である。これら2つのモジュールは単一の酵素として存在する。したがって、タンパク質-タンパク質相互作用の問題を回避するために、リンカーペプチドを導入して、この酵素を標的複合体の下流部分に融合させる。
【0096】
本発明をその具体的な態様を参照して説明してきたが、様々な変更を行うことができること、および本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく等価物を置き換えることができることを、当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの段階を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの修正を行うことができる。すべてのそのような修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内であるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造を有するカルボン酸を含む組成物:

式中、R1はHまたは-CH3であり; R2はH、-CH3または-CH2CH3であり; R3はH、-CH3または-CH2CH3であり; あるいはR2およびR3は各々Hであり、R1はH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nは1〜6の整数である。
【請求項2】
R1がHまたは-CH3であり; R2がH、-CH3または-CH2CH3であり; R3がH、-CH3または-CH2CH3である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
R2およびR3が各々Hであり、R1がH、-CH3または-(CH2)nCH3であり、式中、nが1〜6の整数である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
R2およびR3が各々Hであり、R1が-(CH2)nCH3であり、式中、nが1〜6の整数である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
カルボン酸が表1および2に開示される任意のカルボン酸である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
以下の化学構造を有するラクトンを含む組成物:

式中、R4はHまたは-CH3であり; R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり; mは1、3、5、7または9であり; 但し、mが1である場合、R5およびR6は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3であり、mが3、5、7または9である場合、R4はHまたは-CH3であり、R5およびR6は各々Hである。
【請求項7】
mが1であり、R5およびR6が各々独立してH、-CH3または-CH2CH3である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
mが3、5、7または9であり、R4がHまたは-CH3であり、R5およびR6が各々Hである、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
ラクトンが表3〜7に開示される任意のラクトンである、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
ラクトンが以下の化学構造を有する6員のラクトンである、請求項7記載の組成物:

式中、R1はHまたは-CH3であり; R2およびR3は各々独立してH、-CH3または-CH2CH3である。
【請求項11】
ラクトンが以下の化学構造を有する8員のラクトンである、請求項8記載の組成物:

式中、RはHまたは-CH3である。
【請求項12】
ラクトンが以下の化学構造を有する10員のラクトンである、請求項8記載の組成物:

式中、RはHまたは-CH3である。
【請求項13】
ラクトンが以下の化学構造を有する12員のラクトンである、請求項8記載の組成物:

式中、RはHまたは-CH3である。
【請求項14】
ラクトンが以下の化学構造を有する14員のラクトンである、請求項8記載の組成物:

式中、RはHまたは-CH3である。
【請求項15】
カルボン酸またはラクトンを合成可能な、天然には存在しないポリケチドシンターゼ(PKS)。
【請求項16】
カルボン酸またはラクトンが表1〜7に記載のもの、または化合物1〜53より選択される化合物である、請求項15記載のPKS。
【請求項17】
請求項15記載のポリケチドシンターゼ(PKS)をコードする組換え核酸。
【請求項18】
カルボン酸またはラクトンが表1〜7に記載のもの、または化合物1〜53より選択される化合物である、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
請求項17記載の組換え核酸を含むベクター。
【請求項20】
請求項19記載のベクターを含む宿主細胞であって、好適な条件下で培養する際にカルボン酸またはラクトンを生成可能である宿主細胞。
【請求項21】
(a) 請求項20記載の宿主細胞を与える段階、および
(b) 好適な培地中で該宿主細胞を培養することでカルボン酸を生成する段階
を含む、カルボン酸を生成する方法。
【請求項22】
(c) 宿主細胞および/または培地から前記カルボン酸を単離する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
(d) 単離されたカルボン酸とアルコールとを反応させてエステルを生成する段階をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
(a) 請求項20記載の宿主細胞を与える段階、および
(b) 好適な培地中で該宿主細胞を培養することでラクトンを生成する段階
を含む、ラクトンを生成する方法。
【請求項25】
(c) 宿主細胞および/または培地から前記ラクトンを単離する段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
カルボン酸もしくはラクトンを生成した宿主細胞および/または培地から単離された、カルボン酸もしくはラクトンまたはカルボン酸から誘導されるエステル、ならびに、宿主細胞および/または培地の微量の残渣および/または混入物を含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−519860(P2011−519860A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507617(P2011−507617)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/042132
【国際公開番号】WO2009/134899
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】