説明

ポリゴンミラースキャナモータ

【課題】ポリゴンミラースキャナモータにおいて、間欠運転時の起動電流により、駆動ICが異常に高温となることを解決し、信頼性を高めることを目的とする。
【解決手段】駆動IC13の側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面13bと駆動IC底面13cとの高さが略0.1mm以下であり、かつ、前記駆動ICの放熱板13aに対向したはんだランド15には、はんだランド15中心から外方向に延びたレジスト帯16が設けられることにより、はんだつけ作業時に駆動ICの底面の放熱板13aと金属基板14との間のはんだ材料12からガスが発生しても、レジスト帯16を通ってガスが外周部に排出されるため、ボイドの発生を防止することが出来る。また、駆動ICの底面の放熱板13aと金属基板14とのはんだ量が確保でき、過渡熱抵抗の増加を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザビームプリンタなどに用いられ、レーザ光のスキャニングに利用されるポリゴンミラースキャナモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル複写機では、高速化と高精細化の要求が高まってきている。この、高速化と高精細化のためには、レーザ光のスキャンを高速化する必要があり、ポリゴンミラースキャナモータの高速回転化が求められる。この高速回転のために、モータ駆動電流が大きくなり、この駆動電流を制御する駆動ICの発熱対策が課題となる。
【0003】
さらに、省電力化の要求により、モータの使用状態は連続回転から、間欠運転が重要となっており、起動時の起動電流による駆動ICの発熱対策が求められている。
【0004】
また、ポリゴンミラースキャナモータが収容されているレーザスキャナユニットは、小型化や軽量化による樹脂化が進み、熱がこもり易く、駆動IC周辺の温度が上昇し、信頼性を著しく低下する場合がある。また、上記のような問題を解決するため、レーザスキャナユニットを金属ケースにしたり、近傍に冷却ファンを設けると、非常にコストアップとなる。
【0005】
近年、放熱板を底面に有した駆動ICを、金属基板にはんだ実装し、駆動ICで発生する熱を、この金属基板から放出する構成が一般に知られている。この構成は、簡易に、熱を放出できるので、良好である。しかし、駆動ICの放熱板と金属基板の間のはんだ部に気泡が発生すると、放熱効果が著しく低下するという問題があった。
【0006】
このような問題に対して、駆動IC及び駆動ICをはんだ実装する金属基板に、アルミニウム合金等の放熱フィンを設けることが開示されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図4に従来のポリゴンミラースキャナモータの構造を示す。図4において、1は回転軸で、ポリゴンミラー2とロータマグネット3とロータフレーム4とが固定されるロータボス5が焼きバメ等の方法で固定され、ロータ組立を構成している。ロータマグネット3と磁路を構成する磁性体を積層したステータコア6と、ロータマグネット3と対向して磁気トルクを発生するステータ巻線7と、回転軸1を軸支する軸受8が固定される金属基板9と、ステータ巻線7に流れる電流を制御する駆動IC10が金属基板9に実装され、ステータ組立を構成している。ここで、駆動IC10の底面に設けた放熱板10aと金属基板9がはんだ12実装され、さらに、金属基板9の裏面にアルミニウム合金からなる放熱フィン11が取付られ、駆動IC10で発生する熱を、金属基板9を介し、放熱フィン11から放出する構成となっている。
【特許文献1】特開平6−230306号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成では、熱伝導率の良いアルミニウム合金からなる放熱フィン11はコスト高となり、取付工数もかかる。また、ポリゴンミラースキャナモータに要求される間欠運転での信頼性を高めるためには、起動時の急激な熱対策である過渡熱抵抗の低減が必要となる。過渡熱抵抗は、駆動IC10と金属基板9間の熱抵抗が支配的であり、放熱フィン11の効果が少ないという課題があった。
【0009】
さらに、駆動IC10の底面の放熱板10aと金属基板9との間のはんだ実装状態について配慮されていないため、はんだ実装作業時にこの放熱板10aと金属基板9のランドとの間にあるクリームはんだ材料12に含まれる揮発成分のガスにより、このはんだ部分にガス溜りのボイドが発生する。また、揮発成分がガス化することにより、駆動IC10の底面の放熱板10aと金属基板9の間のはんだ量が減少し、さらに、ボイドが発生する。
このボイドにより過渡熱抵抗が高くなるため、間欠運転時の起動電流により駆動IC10が異常に高温となり、ポリゴンミラースキャナモータの信頼性が悪化するという課題があった。
【0010】
図3は、このボイドにより、放熱板10aと金属基板9の間のはんだ実装面積が減少し、過渡熱抵抗が増加する割合を示している。図3の横軸は、駆動ICの放熱板10aの面積と実際のはんだ実装面積の比である有効はんだ実装割合を示すもので、ボイドの無い状態を有効はんだ実装割合100%とし、放熱板の底面にはんだが無い状態を0%とした。評価実験より、有効はんだ実装割合が50%以上であれば、ボイドの無い理想的な状態に対して、過渡熱抵抗の増加率は10%以下であることが確認できた。さらに、有効はんだ実装割合が50%より低下すると、過渡熱抵抗が急激に増加することもわかる。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、特別な放熱フィンを設けることなく、低コストで、駆動ICの放熱を容易に行うポリゴンミラースキャナモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、金属基板表面にはんだ実装された駆動ICと、この駆動ICの側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面と前記駆動IC底面との高さHが略0.1mm以下であり、かつ、前記駆動ICの放熱板に対向したはんだランドには、中心から外方向に延びたレジスト帯が設けられた構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、回転軸とロータマグネットを有しポリゴンミラーが固定されたロータと、前記ロータマグネットと対向して電磁トルクを発生するステータ巻線と、前記回転軸を軸支する軸受が固定される金属基板と、下面に放熱板を有し前記金属基板表面にはんだ実装された駆動ICとを備え、前記駆動ICの側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面と前記駆動IC底面との高さが略0.1mm以下であり、かつ、前記駆動ICの放熱板に対向したはんだランドには、中心から外方向に延びたレジスト帯が設けられたものであり、はんだ実装時に、駆動ICの底面の放熱板と金属基板のランド間のはんだ材料から、ガスが発生しても、はんだランドの中心から外方向に延びたレジスト帯を通って、ガスが外周部に排出されるため、ボイドの発生を防止することが出来る。
【0014】
また、通常、クリームはんだは、金属基板に0.15mmから0.2mmの厚みで塗布されており、揮発成分がガス化することにより、有効はんだは略50%となる。したがって、この駆動ICの側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面と前記駆動IC底面との高さHを略0.1mm以下とすることによって、駆動ICの底面の放熱板と金属基板のランド間のはんだ量が確保でき、過渡熱抵抗を低減することができるという有利な効果が得られる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記レジスト帯の幅を、前記駆動IC底面の高さHの2倍以上とし、かつ、前記駆動ICの放熱板に対向したはんだランドの有効面積を、前記放熱板
の面積の50%以上としたものであり、クリームはんだ高さに対し、レジスト帯の幅を広くすることにより、はんだに含まれる揮発成分のガスを効率的に外部へ排出できるという効果がある。同時に、有効はんだ実装割合を50%以上とすることにより、過渡熱抵抗の増加を抑えることができるという作用を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明のより具体的な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明のポリゴンミラースキャナモータを示す断面図であり、図1(b)はこの詳細断面図である。図1において1は回転軸で、ポリゴンミラー2とロータマグネット3とロータフレーム4とが固定されるロータボス5が焼きバメにより固定され、ロータ組立を構成している。磁性体を積層したステータコア6と、磁気トルクを発生するステータ巻線7と、回転軸1を軸支する軸受8が固定される金属基板14と、ステータ巻線7に流れる電流を制御する駆動IC13が金属基板14に実装され、ステータ組立を構成している。駆動IC13は底面に放熱板13aを有し、側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面13bと前記駆動IC底面13cとの高さHが略0.1mm以下としている。さらに、駆動IC13の放熱板13aに対向したはんだランド15には、中心から外方向に延びたレジスト帯16が複数本設けられている。
【0018】
一般に、駆動IC13のはんだ実装時には、金属基板14上にクリームはんだ12が0.15mmから0.2mmの厚みで塗布されるが、はんだ実装時には、このクリームはんだの中の揮発成分がガス化し、はんだ量は、略半分となる。そこで、駆動IC13の側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面13bと前記駆動IC底面13cとの高さHが略0.1mm以下であるので、十分なはんだ量を確保できる。
【0019】
また、はんだ実装時に、駆動IC13の底面の放熱板13aと金属基板のランド15間のはんだ材料から、ガスが発生しても、はんだランド15の中心から外方向に延びたレジスト帯16を通って、ガスが外周部に排出されるので、ボイドの発生を抑止するので、過渡熱抵抗の増加を抑えることができる。
【0020】
(実施の形態2)
図2(a)は本発明の駆動IC13の上面図で、図2(b)は本発明の金属基板14の上面図である。図2において、駆動IC13の底面には、x1×y1の面積を有する放熱板13aが設けられている。この放熱板13aに対向した、金属基板上のはんだランド15は、面積がx2×y2で、中心から外方向に延びたレジスト帯16が2本設けられている。このレジスト帯16の幅w1およびw2は、駆動IC底面の高さHの2倍以上である。さらに、駆動ICの放熱板13aに対向したはんだランド15の有効面積(x2−w1)×(y2−w2)を、前記放熱板13aの面積の50%以上とした。これを、数式で表すと以下のとおりである。
w1≧(2×H)・・・(式1)
w2≧(2×H)・・・(式2)
かつ
(x2−w1)×(y2−w2)≧0.5×(x1×y1)・・・(式3)
となる。
はんだ実装時には、クリームはんだ12の中の揮発成分がガス化し、はんだ量は、略半分となるため、金属基板14上のクリームはんだ12はアウターリード部端面13bと前記駆動IC底面13cとの高さHの略2倍の厚みで塗布される。したがって、レジスト帯16の幅w1、w2をクリームはんだ高さ(2×H)以上にすることにより、発生したガスが、このレジスト帯16に沿って、確実に外部へ排出ができる。同時に、駆動ICの放熱
板13aに対向したはんだランド15の有効面積を50%以上確保することにより、過渡熱抵抗の増加を抑えることができるという作用を有する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係るポリゴンミラースキャナモータは、はんだ実装時に、駆動ICの底面の放熱板と金属基板のランド間のはんだ材料から、ガスが発生しても、はんだランドの中心から外方向に延びたレジスト帯を通って、ガスが外周部に排出されるため、ボイドの発生を防止することが出来るという有利な効果を有し、デジタル複写機、レーザビームプリンタなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるポリゴンミラースキャナモータを示す断面図、(b)本発明の実施の形態1におけるポリゴンミラースキャナモータの詳細説明のための詳細断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態2における駆動ICの詳細上面図、(b)本発明の実施の形態2における金属基板の詳細上面図
【図3】本発明の実施の形態における有効はんだ実装割合と過渡熱抵抗の関係を示すグラフ
【図4】従来のポリゴンミラースキャナモータの断面図
【符号の説明】
【0023】
1 回転軸
2 ポリゴンミラー
3 ロータマグネット
4 ロータフレーム
5 ロータボス
6 ステータコア
7 ステータ巻線
8 軸受
9、14 金属基板
10、13 駆動IC
10a、13a 駆動ICの放熱板
11 放熱フィン
12 クリームはんだ
13b アウターリード部端面
13c 駆動ICの底面
15 放熱板に対向したランド
16 レジスト帯
H アウターリード部端面と駆動IC底面との高さ
w1、w2 レジスト帯の幅
x1、y1 放熱板の幅
x2、y2 はんだランドの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸とロータマグネットを有しポリゴンミラーが固定されたロータボスと、前記ロータマグネットと対向して電磁トルクを発生するステータ巻線と、前記回転軸を軸支する軸受が固定される金属基板と、底面に放熱板を有し前記金属基板表面にはんだ実装された駆動ICとを備え、前記駆動ICの側面より突出しガルウイング形状に形成されたアウターリード部端面と前記駆動IC底面との高さHが略0.1mm以下であり、かつ、前記駆動ICの放熱板に対向したはんだランドには、中心から外方向に延びたレジスト帯が設けられたポリゴンミラースキャナモータ。
【請求項2】
前記レジスト帯の幅は、前記駆動IC底面の高さHの2倍以上であり、かつ、前記駆動ICの放熱板に対向したはんだランドの有効面積は、前記放熱板の面積の50%以上とした請求項1に記載のポリゴンミラースキャナモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−301318(P2006−301318A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123233(P2005−123233)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】