説明

ポリスチレン系樹脂積層発泡シートとその製造方法及びポリスチレン系樹脂積層発泡容器

【課題】容器に成形した際に、バブルの発生を低減でき、かつ容器内面のポリオレフィン系樹脂層の光沢度を低減させたポリスチレン系樹脂積層発泡シートと容器の提供。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と、接着層(3)と、厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを順に積層してなり、
前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が500gf以上であるとともに、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との接着強度が650gf以上であり、
かつ前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側の表面の光沢度が75%GL以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ入り即席麺などの食品容器などに好適なポリスチレン系樹脂積層発泡シートに関し、特に、容器に成形した際に、バブルの発生を低減でき、かつ容器内面のポリオレフィン系樹脂層の光沢度を低減させたポリスチレン系樹脂積層発泡シートとその製造方法及び該シートを熱成形して得られたポリスチレン系樹脂積層発泡容器(以下、容器と略記する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートは、表面が美しく、軽量でありながら強度があり、成形加工性に優れ、安価であるほか、疎水性に富み、衛生的で、保温・断熱性に優れているため、皿状、カップ状、丼状に成形され、各種の食品包装材や簡易容器として広く使用されている。その成形は、特定の一次厚さを有するポリスチレン系樹脂発泡シートを加熱し、樹脂を軟化させつつ発泡シートに含まれるブタンなどの発泡剤の作用によって発泡させて厚さを増加させ(これを二次発泡と呼ぶ)、プレス成形、真空成形、マッチモールド成形等の方法で所定の容器形状に連続成形される。
これらの容器は主にインスタントラーメンに代表されるカップ入り即席麺に使用されているが、これらの容器内部には、乾麺の他、各種包装袋に充填、密封した具材のパックが入っている。これらの具材は、包装袋に入れずにそのまま容器に入れると、乾燥された具材が湿気を吸って品質低下を招き、保存期間が短くなったり、具材そのものが痛む恐れがあり、防湿性をより向上させる必要があった。ポリスチレン系樹脂発泡容器の防湿性を向上させるためには、容器内面にポリオレフィン系樹脂フィルムが積層された積層シートを用いて容器を成形する事が考えられる。
従来、ポリスチレン系樹脂発泡シートとポリオレフィン系樹脂フィルムとを積層してなる積層発泡シート及び該シートを熱成形して得られた容器に関して、例えば、特許文献1〜3に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、断熱性に富んだ発泡ポリスチレン層と耐熱性に富んだ発泡ポリプロピレン層とを積層した発泡樹脂からなる食品容器であって、発泡ポリスチレン層の内側に発泡ポリプロピレン層を積層して容器壁が構成されてなることを特徴とする発泡ポリプロピレン積層容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、発泡ポリスチレンから成る基材層の片側または両側に、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体を含有する接着層を介してポリエチレンテレフタレート(PET)から成る表面層を一体に積層した多層樹脂シートを、上記ポリエチレンテレフタレートから成る表面層が容器内側に配置されるように成形されて成ることを特徴とする食品容器が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリスチレン系樹脂発泡シート(A)の少なくとも一方の表面に、厚さ25〜200μmのポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(B)を積層し、更に一方の該ポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(B)の表面に、厚さ10〜100μmのポリオレフィン系非発泡フィルム(C)を積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、ポリオレフィン系非発泡フィルム(C)面が内側となるように成形した、スチレンダイマーおよびスチレントリマーのヘプタン溶出量が100ppb以下となることを特徴とする容器が開示されている。
【特許文献1】特開2000−190939号公報
【特許文献2】特開2001−2134号公報
【特許文献3】特開2003−53911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に開示された従来技術は、発泡ポリスチレンシートと発泡ポリプロピレンシートとの積層材であるが、これら異種シート間の接着は、例えば、特許文献2の段落番号0009〜0010にも記載されているように、接着性に難点があり、この積層材を熱成形して容器を製造する際に、ポリスチレンシートとポリプロピレンシート間で「バブル」と呼ばれる浮きが発生してしまい、美麗な容器を得ることができないという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示された従来技術は、接着層を介してPETフィルムを積層しているが、一般的なPETフィルムは、ポリスチレンとの溶融軟化温度の相違が大きく、成形の際に亀裂が入ったり、ポリスチレン発泡層がオーバーヒートしてしまうなどの問題があった。そのため低融点の特殊なPETフィルムを使用しなければならず、コスト面で大きな問題があった。
【0008】
特許文献3に開示された従来技術は、内面となるポリオレフィン樹脂フィルムを積層することで、突き刺しやクラックに対するオリゴマー溶出を減少させているが、接着方法についての検討がなされておらず、接着性に難点があり、成形時にポリスチレン層との樹脂フィルムとの間にバブルが発生し、見栄えの良い製品が得られにくかった。
特に、スチレンダイマー、スチレントリマーを含む低分子量成分の少ない発泡シートやフィルムを用いた場合、接着性がより低下してしまい、上記現象が顕著になってしまう問題があった。
【0009】
また、これらの従来技術にあっては、積層発泡シートを熱成形して得られた容器の内面の光沢度が高くなりすぎ、容器の内面検査時等で誤作動を生じたり、光沢が油分付着のように見えてしまい印象が悪いという問題があった。
すなわち、発泡シートとポリオレフィンフィルムとを接着させる場合、高温度で接着させると樹脂の軟化が促進され、熱ロール直後の冷却ロールにおいて、ポリオレフィンフィルム表面の平滑性がより高められることで、ポリオレフィンフィルム側の表面の光沢度が増してしまう。この積層シートを熱成形して得られた容器は、容器内面側のポリオレフィン層の表面の光沢度が高くなり、近年主流である照明を当ててCCDカメラで容器等の対象物を検査する装置等にかけると、乱反射による誤作動を起こしてしまう問題があった。また、消費者が容器内面を目視した際に、容器内面の光沢が高いと、油分が付着しているように見えてしまい、製品の印象が悪くなってしまう問題があった。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、容器に成形した際に、バブルの発生を低減でき、かつ容器内面のポリオレフィン系樹脂層の光沢度を低減させたポリスチレン系樹脂積層発泡シート、及び該シートを熱成形して得られた容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と、接着層(3)と、厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを順に積層してなり、
前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が500gf以上であるとともに、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との接着強度が650gf以上であり、
かつ前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側の表面の光沢度が75%GL以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)を提供する。
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(6)が積層されていることが好ましい。
【0013】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)がポリプロピレン系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0014】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、前記接着層(3)が、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤から選択される接着剤からなることが好ましい。
【0015】
また本発明は、前述した本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、その内側が前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)となるように熱成形することによって得られた容器を提供する。
【0016】
本発明の容器において、容器内面の光沢度が65%GL以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の容器において、容器の透湿度が630g/m・30日以下であることが好ましい。
【0018】
また本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを接着層(3)を介して接着してなるポリオレフィン系樹脂積層フィルム(7)とを用意し、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(7)の前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)側を重ね合わせた状態で、ロール温度が180〜210℃の範囲の熱ロールを通して前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とを接着させ、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)を得ることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法を提供する。
【0019】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法において、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)として、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(6)が積層されてなるフィルム積層発泡シート(8)を用いることが好ましい。
【0020】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法において、前記熱ロールを通して前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とを接着させた直後に、ロール温度が40℃以下の冷却ロールを通してポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)を冷却することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)は、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と、接着層(3)と、厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを順に積層してなり、ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が500gf以上であるとともに、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)とポリスチレン系樹脂フィルム(2)との接着強度が650gf以上であり、かつポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側の表面の光沢度が75%GL以下であるものなので、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)とポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が高くなり、積層発泡シートを熱成形して容器を製造する際、得られた容器にバブルが発生することがなくなり、見栄えがよく美麗な容器を製造することができる。
また、ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側の表面の光沢度が75%GL以下であるので、このポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側が内側となるように熱成形して得られた容器は、近年主流である照明を当ててCCDカメラで検査する装置等により、乱反射による誤作動を起こし難くなり、また容器内側の光沢が減少し、油分付着のように見えてしまう不具合を防止できる。
【0022】
本発明の容器は、前述した本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、その内側が前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)となるように熱成形することによって得られたものなので、防湿性に優れ、各層間の剥離が生じ難い容器となる。
また、ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と容器内面側のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が高くなり、容器内面側にバブルが発生することがなくなり、見栄えがよく美麗な容器を提供できる。
さらに、容器内側の光沢度が低くなるので、近年主流である照明を当ててCCDカメラで検査する装置等により、乱反射による誤作動を起こし難くなり、確実に検査を行うことができる。また容器内側の光沢が減少し、油分付着のように見えてしまう不具合を防止できる。
【0023】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法は、前述した通り、容器に成形した際に、バブルの発生を低減でき、かつ容器内面のポリオレフィン系樹脂層の光沢度を低減させたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートの一実施形態を示す図であり、この図中、符号1はポリスチレン系樹脂発泡シート、2はポリスチレン系樹脂フィルム、3は接着層、4はポリオレフィン系樹脂フィルム、5はポリスチレン系樹脂積層発泡シート、6はポリスチレン系樹脂非発泡フィルム、7はポリオレフィン系樹脂積層フィルム、8はフィルム積層発泡シートをそれぞれ表している。
【0025】
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5は、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の一方の表面に、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム2と、接着層3と、厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム4とを順に積層してなり、前記ポリスチレン系樹脂フィルム2と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4との接着強度が500gf以上であるとともに、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート1と前記ポリスチレン系樹脂フィルム2との接着強度が650gf以上であり、かつ前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4側の表面の光沢度が75%GL以下であることを特徴としている。
【0026】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート1は、原料のポリスチレン系樹脂を、ブタンなどの発泡剤とともに押出機に供給して溶融混練し、次いで押出発泡することにより得られる。ポリスチレン系樹脂発泡シート1の発泡倍率および平均厚さは特に限定されないが、発泡倍率は1.1〜20倍程度、好ましくは2〜15倍程度であり、平均厚さは0.6〜3.0mm程度、好ましくは1.5mm〜2.5mm程度である。
【0027】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート1の原料樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばスチレン単独重合体、あるいはスチレンを50質量%以上含む共重合体が挙げられる。共重合体としては、例えばスチレン−無水マレイン酸、スチレン−メタクリル酸、スチレン−アクリル酸(アクリル酸エステル等を含む)、スチレン−アクリロニトリル等の共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン等の3元共重合樹脂等が挙げられる。共重合体における共重合成分としては、例えばα−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブタジエン、無水マレイン酸などの各種単量体が挙げられる。前記原料樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)を適宜混合することもできる。また、前記原料樹脂としては、スチレンダイマー、スチレントリマーを含む低分子量成分を低減させた樹脂を使用することが、より低分子量成分の溶出を少なくできるので好ましい。
【0028】
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5は、その強度および印刷性を向上させるために、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム6が積層されている。このポリスチレン系樹脂非発泡フィルム6の原料樹脂としては、前述したポリスチレン系樹脂発泡シート1の原料樹脂と同様のものを使用することができるが、特に、ポリスチレン系樹脂にゴム分を含有させ、脆性改善効果をもたせたハイインパクトポリスチレン系樹脂フィルムが好ましい。また、このポリスチレン系樹脂非発泡フィルム6の原料としては、スチレンダイマー、スチレントリマーを含む低分子量成分を低減させた樹脂を使用することが、より低分子量成分の溶出を少なくできるので好ましい。
【0029】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート1の一方の表面に接着される前記ポリスチレン系樹脂フィルム2は、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の表面に対して熱ロールによる接着を実施した際に、強固に接着され得るポリスチレン系樹脂フィルムが用いられる。このポリスチレン系樹脂フィルム2の原料樹脂としては、前述した前述したポリスチレン系樹脂発泡シート1の原料樹脂と同様のものを使用することができる。このポリスチレン系樹脂フィルム2の厚さは5μm〜24μmの範囲であり、好ましくは10μm〜20μmの範囲である。このポリスチレン系樹脂フィルム2の厚さが5μm未満であると、フィルムの強度が弱くなり積層工程で切断したり、シワが入りやすくなる恐れがある。一方、厚さが24μmを超えると、フィルムの厚みが厚くなり熱ロールで接着する際に熱が伝わりにくく接着性が低下する恐れがある。
【0030】
前記接着剤3としては、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤が好ましく、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤がより好ましい。
【0031】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。このポリオレフィン系樹脂フィルム4の厚さは5μm〜50μmの範囲であり、好ましくは15μm〜35μmの範囲である。このポリオレフィン系樹脂フィルム4の厚さが5μm未満であると、フィルムの強度が弱くなり積層工程で切断したり、シワが入りやすくなる恐れがある。一方、厚さが50μmを超えると、フィルムの厚みが厚くなり熱ロールで接着する際に熱が伝わりにくく接着性が低下する恐れがある。
【0032】
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5において、前記ポリスチレン系樹脂フィルム2と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4との接着強度(以下、層(2)/(4)間接着強度と記す)が500gf以上、好ましくは600gf以上であるとともに、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート1と前記ポリスチレン系樹脂フィルム2との接着強度(以下、層(1)/(2)間接着強度と記す)が650gf以上、好ましくは750gf以上である。
層(2)/(4)間接着強度は、ポリスチレン系樹脂フィルム2と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4とを接着剤3によって接着した層間の接着強度であり、また層(1)/(2)間接着強度は、このポリスチレン系樹脂積層発泡シート5製造の際、フィルム積層発泡シート8とポリオレフィン系樹脂積層フィルム7とを重ね合わせて熱ロールを通して接着することによってポリスチレン系樹脂発泡シート1の一方の表面にポリスチレン系樹脂フィルム2が接着した部分の接着強度である。
層(2)/(4)間接着強度が500gfを下回ると、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を熱成形して得られた容器を用いてカップ入り即席麺等の食品等を包装した場合に、消費者がその製品の蓋を剥がした際に層(2)/(4)間が剥離して、容器内面側のポリオレフィン系樹脂フィルム4が剥がれてしまう不具合を生じる可能性がある。
また層(1)/(2)間接着強度が650gfを下回ると、容器を熱成形する際にいわゆるバブルと呼ばれる火ぶくれ状のフィルム浮き(剥離)が生じる可能性がある。
【0033】
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5において、前記ポリオレフィン系樹脂フィルム4側の表面の光沢度は75%GL以下であり、好ましくは70%GL以下である。
この光沢度が75%GLを超えると、このポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を、ポリオレフィン系樹脂フィルム4側が内側になるように成形して容器とした際に、得られた容器の内側の光沢度が高くなって、CCDカメラで検査する装置等により、乱反射による誤作動を起こし易くなり、また容器内側の光沢が油分付着のように見えるため、消費者に不快感を与える恐れがある。
【0034】
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5は、例えば、次のような製造方法により製造することができる。
まず、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム6が積層されてなるフィルム積層発泡シート8と、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム2と厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム4とを接着層3を介して接着してなるポリオレフィン系樹脂積層フィルム7とを用意する。
【0035】
前記フィルム積層発泡シート8のポリスチレン系樹脂発泡シート1は、原料のポリスチレン系樹脂を、公知の押出発泡法により押出し発泡することにより製造することができる。押出発泡法は、所望の密度となるように押出機に原料樹脂、発泡剤およびその他の添加剤を入れ、溶融混練した後、押出機のダイから押し出すことにより行われる。なお、あらかじめ原料樹脂、発泡剤および添加剤を均一に混合したものを、押出機に供給してもよい。また、添加剤は、あらかじめ原料樹脂と同種の樹脂に高濃度に添加した所謂マスターバッチ品であってもよい。
【0036】
本発明の方法において使用される押出機としては、公知のもの、例えば、単軸押出機、二軸押出機が挙げられる。中でも、高圧下での押出安定性や熱劣化が少ないという点で優れている単軸押出機が好ましい。本発明の方法において使用される発泡剤としては、公知のもの、例えば、分解型発泡剤、気体または揮発性の発泡剤が挙げられる。
【0037】
分解型発泡剤としては、例えば炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素化ナトリウム等の無機系分解型発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼンなどのアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテトラミンおよびN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドおよびp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート、クエン酸などが挙げられる。
【0038】
気体の発泡剤としては、例えば窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、tert−ブタン、ジメチルエーテル等が挙げられる。なお、気体とは常温(20℃)、常圧(1気圧)で気体であることを意味する。揮発性の発泡剤としては、例えばエーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、水も発泡剤として使用するこどができる。これらの発泡剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの発泡剤の中でも、n−ブタンおよびi−ブタンが特に好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シート1の気泡サイズを約40μm以下とする場合は、発泡剤として窒素、炭酸ガスあるいは水を使用するのが好ましい。特に、窒素および炭酸ガスは、安価であるという点においても好ましい。発泡剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対して、0.25〜5.0質量部程度である。
【0040】
また、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の製造においては、原料樹脂に気泡調節剤等を添加してもよい。気泡調節剤としては、例えばタルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調節剤の添加量は、原料樹脂100質量部に対して、0.01〜6.0質量部程度である。なお、気泡調節剤が多くなると、気泡膜が熱に弱くなり、押出積層時に気泡膜が破れ、その結果気泡が大きくなることがある。このような気泡の増大を防ぐには、発泡剤として窒素または炭酸ガスを用いることが好ましい。
【0041】
また、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の製造においては、所望により、原料樹脂に紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加してもよい。溶融混練された樹脂は、発泡に適した温度に調節されたダイから押出し発泡され、発泡体が得られる。この発泡体は、直接シート状に、または一旦円筒状に押し出した後、任意のラインで切断することによりシート状にすることができる。
【0042】
ポリスチレン系樹脂発泡シート1を製造するときの押出機バレル温度としては、使用する押出機および原料樹脂の種類等により異なるが、140〜260℃程度が好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡シート1の他方の面にポリスチレン系樹脂非発泡フィルム6を積層するには、発泡シートとフィルムを共押し出しして積層する方法や、加熱ロールや接着剤などを用いて発泡シートにフィルムを積層する方法が挙げられる。
具体的には、
(A)発泡シートとフィルムを合流・積層させてから、ダイから押出す共押出法、
(B)インラインまたはアウトラインで、押出機より押し出されたフィルムを冷却しきらないうちに、直接、発泡シートに積層する方法、
(C)インラインまたはアウトラインで、押出機より押出された樹脂をバインダーとして、フィルム(無地または印刷したものであってもよい)を発泡シートに積層する方法、
(D)フィルム(無地または印刷したものであってもよい)を加熱ロールで加熱しながら、発泡シートに圧着して積層する方法、などが挙げられる。
【0043】
また、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム7を製造するには、ドライラミネート装置を用い、ポリオレフィン系樹脂フィルム4に溶剤系の接着剤を塗布した後に乾燥炉を通して不要な溶剤分を飛ばして接着層3を形成し、この接着層3とポリスチレン系樹脂フィルム2を重ね合わせた状態で圧着することにより、ポリスチレン系樹脂フィルム2とポリオレフィン系樹脂フィルム4とを接着層3を介して接着する方法が好ましい。
【0044】
次に、ポリスチレン系樹脂発泡シート1の一方の表面に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム7のポリスチレン系樹脂フィルム2側を重ね合わせた状態で、ロール温度が180〜210℃の範囲の熱ロールを通し、ポリスチレン系樹脂発泡シート1とポリスチレン系樹脂フィルム2とを接着させ、図1に示す構造のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を製造する。
【0045】
本発明に係る容器は、前述した通り製造されたポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を、その内側がポリオレフィン系樹脂フィルム4となるように熱成形することによって得られる。ポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を熱成形する方法としては、例えば、オーブン(温度230〜300℃)内にて発泡体を軟化させた後、所望の成形型を用い成形時間3〜20秒で加熱成形する方法が挙げられる。
【0046】
本発明に係る容器の形状や寸法は、特に限定されず、例えば、カップ入り即席麺用のカップや丼が挙げられる。
本発明に係る容器は、容器内面の光沢度が65%GL以下であることが好ましい。容器内面の光沢度が65%GLを超えると、CCDカメラで検査する装置等により、乱反射による誤作動を起こし易くなり、また容器内側の光沢が油分付着のように見えるため、消費者に不快感を与える恐れがある。
【0047】
本発明に係る容器は、透湿度が630g/m・30日以下であることが好ましい。透湿度が630g/m・30日以下であれば、容器内への湿度の浸入を効果的に防ぐことができるので、乾燥具材を樹脂フィルム製の内袋に入れることなく直接容器内に充填しても具材の乾燥状態を良好に保つことができる。また、透湿度が630g/m・30日を超えると、乾燥具材の乾燥状態を保つために、具材を樹脂フィルム製の内袋に入れる必要がある。
【0048】
本発明の他の実施形態を記す。
(a)ポリスチレン系樹脂フィルム2とポリオレフィン系樹脂フイルム4の接着強度を測定した際に、剥離区間における極大点と極小点の強度差が100gf以下が好ましい。この強度差が100gf以下であれば、急激な力による剥離作用が発生しても、層間剥離が発生し難くなる。
【0049】
(b)フィルム積層発泡シート8とポリオレフィン系樹脂積層フィルム7とを熱ロールで接着する際に、高温(ロールスピードにもよるが、通常は220℃前後)での接着は好ましくなく、より低温度で接着性を向上させることが好ましい。高温接着の場合、接着性は良くなるが、容器の内面側となるポリオレフィン系樹脂の表面光沢度が高くなり、容器内面のCCDカメラによる検査において、使用する検査装置が乱反射による誤作動を起こす原因となる。十分な接着性と適度な光沢度の両方を満足させるためには、熱ロール温度を180℃〜200℃の範囲とし、熱ロールの直後にシートを冷却することが好ましい。
【0050】
(c)フィルム積層発泡シート8とポリオレフィン系樹脂積層フィルム7とを熱ロールで接着する際に、熱ロール通過後に表面温度25℃〜35℃の金属ロールで冷却することが好ましい。この方法によって、得られるポリスチレン系樹脂積層発泡シート5の過発泡が防止され、またポリオレフィン系樹脂フィルム4の収縮によるシート自体の反りを軽減することができる。
【0051】
(d)容器内面の光沢の下限は特に規定はないが、接着前のポリオレフィン系樹脂フィルム4自身の光沢度が低いことが望ましい。このような観点から、たとえばポリプロピレン系樹脂フィルムでは一般的に延伸フィルム(OPPフイルム)より無延伸フイルム(CPPフイルム)を用いることが好ましい。一般的なCPPフィルムの光沢度は100%GL前後であり、ラミネート条件による光沢度の低下が起こり易い。
【0052】
(e)ポリスチレン系樹脂フィルム2のスチレンダイマー、トリマーの含有量は1400ppm以下であることがより好ましく、また得られた容器のスチレンダイマー、トリマーの溶出値は50ppb以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
(ポリスチレン系樹脂発泡シート1及びフィルム積層発泡シート8の製造方法)
ポリスチレン系樹脂発泡シート1は、押出発泡法によって得られた発泡シートを用いた。
ポリスチレン樹脂(製品名:HRM−52(東洋スチレン社製、MI=2.2)100質量部に対し、発泡剤としてブタンガス(イソブタン/ノルマルブタン=65/35)3.8質量部、気泡調整剤として粉末タルク0.85質量部を含むマスターバッチ品(DSM−1401A(東洋スチレン社製))を使用して、口径115mmφと180mmφの押出機を接続させたタンデム押出機を用い、最高温度260℃に設定された押出機内で原料樹脂を溶融混練させ、その後樹脂温度153℃に冷却調整して、口径170mmのサーキュラーダイ(クリアランス0.6mm)から発泡押出した。
この押出直後に35℃のエアーを内側で0.13m/m、外側で0.30m/mの割合で吹き付け、厚さ2.0mm、倍率9.2倍のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。得られた環状発泡シートは、直径671mmの冷却マンドレルを通過させ、カッターにて2枚のシートに切り裂いてロール状に巻き取ることによってポリスチレン系樹脂発泡シート1を得た。
発泡ガスの置換の為、14日間保管した後、そのポリスチレン系樹脂発泡シート1の表面にハイインパクトポリスチレン樹脂フィルムを積層した。この積層工程は、ハイインパクトポリスチレン樹脂(製品名:E−640N(東洋スチレン社製))を最高温度240℃に設定した120mmφ押出機で溶融し、Tダイよりフィルム状で押出し、冷却しきらないうちに前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に、厚さが100μmになるように重ね、ロールを通して接着させることによって実行し、フィルム積層発泡シートを得た。さらに、該シートを巻き取る直前に、シリコーン塗布装置(ニッカ社製)を使用してシリコーン油を吹き付けて最終的なフィルム積層発泡シート8を得た。
【0054】
(ポリオレフィン系樹脂積層フィルム7)
30μm無延伸ポリプロピレンフィルムAT(大阪樹脂化工社製)と、HRM−52(東洋スチレン社製、スチレンダイマー、トリマー含有量1200ppm)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムとを、ポリウレタン系接着剤のTM329(東洋モートン社製)を接着層として接着し、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム7を得た。
【0055】
(ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造)
前記フィルム積層発泡シート8の表面(ポリスチレン系樹脂発泡シート1側の表面)に、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム7のポリスチレン系樹脂フィルム側を重ね合わせ、直径250mmφの1対の熱ロールに通し、熱ロール温度195℃、引き取りスピード9.0m/minの条件で熱ロール加工を施し、その直後に表面温度が25℃の冷却ロールを通過させて冷却し、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を得た。
【0056】
(容器の製造)
前記の通り製造したポリスチレン系樹脂積層発泡シート5を用い、そのポリオレフィン系樹脂フィルムが内側になるように成形を行なった。成形条件は、炉内雰囲気温度160℃、成形時間13〜15秒で加熱した後、直径110mm×深さ60mmの丸型容器製造用の金型を使用して熱成形を行った。
【0057】
前記の通り製造したポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器について、後述する測定方法及び判断基準に従って、接着強度、光沢度、スチレンダイマー・トリマーの溶出量、透湿度、容器の外観、フタ剥離、容器内面の見栄え、の評価及び総合評価の各試験項目について測定及び評価を行った。
【0058】
<接着強度の測定方法>
測定サンプルを幅15mm、長さ200mmに切り出しオリエンテックコーポレーション社製のテンシロンRTM−500を使用して、毎分200mmのスピードで各層の端部を90°の方向に互いに引っ張って剥離することで測定された値で、80mmの剥離区間において、最初と最後の20mmをそれぞれパスし、剥離開始から20mm〜60mmの区間における積分平均荷重(gf)をその測定サンプルの剥離データとした。この方法でシート幅方向に測定サンプル数(N)=5で測定し、その平均値を接着強度(gf)とした。
本実施例にあっては、製造したポリスチレン系樹脂積層発泡シート5の層(1)/(2)間接着強度と層(2)/(4)間接着強度を測定した。また、層(1)/(2)間接着強度あるいは層(2)/(4)間接着強度が非常に高く、剥離せずに層(1)、(2)、(4)のいずれかが破壊された場合は「材料破壊」と表示した。
【0059】
<光沢度の測定方法>
JIS K7105:「プラスチックの光学的特性試験方法」記載の方法により測定した。即ち、ハンディ光沢計 グロスチェッカーIG−320(堀場製作所社製)を用いて60度計(入射角60度)で、測定サンプルの表面(ポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面)を幅方向に5点測定し、その平均値を光沢度とした。
本実施例にあっては、製造したポリスチレン系樹脂積層発泡シート5のポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面の光沢度(シート物性の光沢度)と容器の内面の光沢度(容器物性の光沢度)とをぞれぞれ測定した。
【0060】
<スチレンダイマー・トリマーの溶出量の測定方法>
(1)溶出液の調整
試料容器に溶出溶媒として570mLの再蒸留ヘプタン(溶出に使用したヘプタンをリサイクルするために2回蒸留して繰り返し使用)を入れ、25℃で1時間溶出を行った後、この溶液から100ml分取して全自動濃縮装置(Zymark社製、ターボバップ500)を用いて50℃で1mLまで濃縮し、測定直前に内部標準液(ピレン100μg/mL)を40μL加えてから、n−ヘプタンで2mLにメスアップして試験液とした。
(2)GCMS分析
下記条件にてGCMS分析を行い、クロマトグラムの内でダイマーピーク4本、トリマーピーク6本のピーク面積と内部標準物質のピーク面積にて予め作成したスチレンオリゴマーの検量線により定量した。ダイマー、トリマーの検量線作成は関東化学社製の標準物質を用いて行った。
・GCMS分析条件
装置:GCMS QP5050(島津製作所社製)。
カラム:DB−5(J&W社製)φ0.25mm×30m×膜厚0.25μm。
注入口温度:240℃。
インターフェイス温度:260℃。
キャリアガス:ヘリウム(1.2mL/min)。
試験液注入量:1μL(オートサンプラー使用)。
カラム温度:70℃(1min)〜15℃/min〜260℃(0min)〜10℃/min〜300℃(3.0min)。
【0061】
<透湿度の測定方法>
JIS Z0222記載の方法により測定した。即ち熱成形で得られた直径110mm×深さ60mmの容器に塩化カルシウム50gを入れ、蓋材としては、透湿性の極めて低い、一般的なカップ入り即席麺に使用されているものと同じシーラント剤付きのアルミシール蓋(直径110mm)を用いて加熱圧縮により蓋をして、さらに蓋と容器の接着断面に、漏れ防止の為に溶かしたパラフィンを塗り付け完全密封状態とした。その後40±0.5℃、湿度90±2%の環境下に24時間放置し、その増加質量より透湿度を算出した。透湿度は、測定された数値を1mあたりに30日間で透湿する質量に換算した。
【0062】
<容器の外観評価>
得られた容器の外観を目視で評価した。
○:容器内面にバブルなどの浮き(剥離)がなく良好。
×:容器内面にバブルなどの浮き(剥離)があり不良。
【0063】
<フタ剥離の測定・評価>
熱成形で得られた直径110mm×深さ60mmの容器に、一般的なカップ入り即席麺に使用されているものと同じシーラント剤付きのアルミシール蓋(直径110mm)を用いて加熱圧縮によりフタをし、常温で一日放置した。放置後の容器のフタを手で剥がし、その剥離状態を目視で観察し、次の評価基準に基づいて評価した。
○:フタ−容器間の剥離に異常が見られず良好。
×:容器の一部がフタ側に接着したまま一緒に剥がれ、袋状になり不良。
【0064】
<容器内面の見栄え評価>
得られた容器内面の見栄えを目視で評価した。
○:容器内面に光沢がなく油分が付着しているように見えず良好。
×:容器内面に光沢があり油分が付着しているように見え不良。
【0065】
<総合評価>
前述した各試験項目について基準値又は評価基準を満たすものを○:良好、その1つでも基準値又は評価基準を満たさない場合は×:不良として評価した。
【0066】
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器について、前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器は、層(1)/(2)間接着強度と層(2)/(4)間接着強度が何れも高く、ポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面の光沢度が低くなった。
容器の透湿度は375(g/m・30日)であり、基準値以下であった。
容器のスチレンダイマー、トリマーの溶出量は34ppbと低レベルであった。
容器の外観、フタ剥離、容器内面の見栄えの評価についても○:良好であった。
その結果、本実施例の総合評価は○:良好であった。
【0067】
[実施例2]
あらかじめ30μm無延伸ポリプロピレンフィルムE2C(東セロ社製)とHRM−52(東洋スチレン社製)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムをポリウレタン系接着剤のAD393(東洋モートン社製)を接着層として接着したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器は、層(1)/(2)間接着強度と層(2)/(4)間接着強度が何れも高く、ポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面の光沢度が低くなった。
容器の透湿度は612(g/m・30日)であり、基準値以下であった。
容器のスチレンダイマー、トリマーの溶出量は45ppbと低レベルであった。
容器の外観、フタ剥離、容器内面の見栄えの評価についても○:良好であった。
その結果、本実施例の総合評価は○:良好であった。
【0068】
[実施例3]
あらかじめ20μm無延伸ポリプロピレンフィルムAT(大阪樹脂化工社製)とHRM−52(東洋スチレン社製)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムをポリウレタン系接着剤のTM329(東洋モートン社製)を接着層として接着したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器は、層(1)/(2)間接着強度と層(2)/(4)間接着強度が何れも高く、ポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面の光沢度が低くなった。
容器の透湿度は413(g/m・30日)であり、基準値以下であった。
容器のスチレンダイマー、トリマーの溶出量は39ppbと低レベルであった。
容器の外観、フタ剥離、容器内面の見栄えの評価についても○:良好であった。
その結果、本実施例の総合評価は○:良好であった。
【0069】
[実施例4]
あらかじめ30μm無延伸ポリプロピレンフィルムAT(大阪樹脂化工社製)とHRM−26(東洋スチレン社製)(スチレンダイマー、トリマー含有量3750ppm)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムをポリエステル系接着剤のAD585(東洋モートン社製)を接着層として接着したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
本実施例のポリスチレン系樹脂積層発泡シート5及び容器は、層(1)/(2)間接着強度と層(2)/(4)間接着強度が何れも高く、ポリオレフィン系樹脂フィルム側の表面の光沢度が低くなった。
容器の透湿度は395(g/m・30日)であり、基準値以下であった。
容器のスチレンダイマー、トリマーの溶出量は112ppbと低レベルであった。
容器の外観、フタ剥離、容器内面の見栄えの評価についても○:良好であった。
その結果、本実施例の総合評価は○:良好であった。
【0070】
[比較例1]
あらかじめ30μm無延伸ポリプロピレンフィルムAT(大阪樹脂化工社製)とHRM−52(東洋スチレン社製)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムをAD585(東洋モートン社製)を接着層として接着したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、層(1)/(2)間接着強度が865gfであったものの、層(2)/(4)間接着強度が330gfと低く、本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける層(2)/(4)間接着強度の下限値(500gf)以下であった。
また、本例の容器は、容器の外観、容器内面の見栄えの評価は○:良好であったが、フタ剥離の評価は×:不良であった。
得られた容器でスチレンダイマー、トリマーの溶出量を測定したところ53ppbであった。
また透湿度は415(g/m・30日)であった。
得られた容器の一部を切り取り光沢度を測定した結果、55%GLであった。
総合評価としては、層(2)/(4)間接着強度が弱く、フタ剥離の評価においてポリオレフィン系樹脂層部分が袋状に剥がれたことにより、×:不良であった。
【0071】
[比較例2]
あらかじめ30μm無延伸ポリプロピレンフィルムAT(大阪樹脂化工社製)とHRM−52(東洋スチレン社製)を原料とした20μmポリスチレン系樹脂フィルムをポリウレタン系接着剤のA969V(三井化学ポリウレタン社製)を接着層として接着したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、層(1)/(2)間接着強度が788gfであったものの、層(2)/(4)間接着強度が250gfと低く、本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける層(2)/(4)間接着強度の下限値(500gf)以下であった。
また、本例の容器は、容器の外観、容器内面の見栄えの評価は○:良好であったが、フタ剥離の評価は×:不良であった。
得られた容器でスチレンダイマー、トリマーの溶出量を測定したところ53ppbであった。
また透湿度は431(g/m・30日)であった。
得られた容器の一部を切り取り光沢度を測定した結果、43%GLであった。
総合評価としては、層(2)/(4)間接着強度が弱く、フタ剥離の評価においてポリオレフィン系樹脂層部分が袋状に剥がれたことにより、×:不良であった。
【0072】
[比較例3]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムとポリスチレン系樹脂発泡シートとの熱ラミネート条件として、熱ロール温度を220℃にしたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂フィルム側の光沢度が81%GLと高く、本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける光沢度の上限値(75%GL)を超えていた。
また、容器についても内側の光沢度が75%GLと高く、容器内面の見栄えの評価が×:不良であった。
総合評価としては、容器内面の見栄えの評価において、容器内面に光沢があり油分が付着しているように見えることから×:不良であった。
【0073】
[比較例4]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムとポリスチレン系樹脂発泡シートとの熱ラミネート条件として、引き取りスピード12.0m/minにしたこと以外は、実施例1と同様の製造方法でポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、層(1)/(2)間接着強度が377gfと低く、さらに層(2)/(4)間接着強度が測定不能な程度に弱く、いずれも本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける層間接着強度を満たしていなかった。
また、本例の容器は、内面にバブルの浮きが発生し、容器の外観評価は×:不良であった。
総合評価としては、層(1)/(2)間接着強度および層(2)/(4)間接着強度が弱く、容器の外観評価において内面にバブルが発生したこと、及びフタ剥離の評価においてポリオレフィン系樹脂層部分が袋状に剥がれたことにより、×:不良であった。
【0074】
[比較例5]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの代わりに、30μmポリスチレン系樹脂フィルムSPH(大石産業社製)を使用し、熱ラミネート条件の熱ロール温度を170℃、引取りスピードを12.0m/minにしたこと以外は、実施例1と同様の製造方法で、ポリオレフィン系樹脂フィルムを有していないポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得、さらに容器を製造した。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器について、実施例1と同様に前述した各試験項目の測定・評価を行い、その結果を表1に記す。
このポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂フィルムを有していないものなので、この積層発泡シートを用いて製造した容器は、透湿度が1027(g/m・30日)と高くなった。
総合評価は、透湿度が悪く、×:不良であった。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に記した結果より、本発明に係る実施例1〜4では、容器に成形した際に、バブルの発生を低減でき、かつ容器内面のポリオレフィン系樹脂層の光沢度を低減させたポリスチレン系樹脂積層発泡シートと容器を提供できることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1…ポリスチレン系樹脂発泡シート、2…ポリスチレン系樹脂フィルム、3…接着層、4…ポリオレフィン系樹脂フィルム、5…ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、6…ポリスチレン系樹脂非発泡フィルム、7…ポリオレフィン系樹脂積層フィルム、8…フィルム積層発泡シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と、接着層(3)と、厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを順に積層してなり、
前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)との接着強度が500gf以上であるとともに、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との接着強度が650gf以上であり、
かつ前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)側の表面の光沢度が75%GL以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(6)が積層されたことを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)がポリプロピレン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
前記接着層(3)が、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤から選択される接着剤からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを、その内側が前記ポリオレフィン系樹脂フィルム(4)となるように熱成形することによって得られたポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項6】
容器内面の光沢度が65%GL以下であることを特徴とする請求項5に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項7】
容器の透湿度が630g/m・30日以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項8】
ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と、厚さが5μm〜24μmの範囲のポリスチレン系樹脂フィルム(2)と厚さが5μm〜50μmの範囲のポリオレフィン系樹脂フィルム(4)とを接着層(3)を介して接着してなるポリオレフィン系樹脂積層フィルム(7)とを用意し、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の一方の表面に、前記ポリオレフィン系樹脂積層フィルム(7)の前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)側を重ね合わせた状態で、ロール温度が180〜210℃の範囲の熱ロールを通して前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とを接着させ、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)を得ることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法。
【請求項9】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)として、前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の他方の表面に、厚さ40μm〜250μmの範囲のポリスチレン系樹脂非発泡フィルム(6)が積層されてなるフィルム積層発泡シート(8)を用いることを特徴とする請求項8に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法。
【請求項10】
前記熱ロールを通して前記ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と前記ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とを接着させた直後に、ロール温度が40℃以下の冷却ロールを通してポリスチレン系樹脂積層発泡シート(5)を冷却することを特徴とする請求項8又は9に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−46951(P2010−46951A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214278(P2008−214278)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】