説明

ポリスルホン系重合体、これを含む高分子電解質膜、これを含む膜−電極接合体、これを採用した燃料電池、及び前記重合体の製造方法

【課題】新たな構造を有するポリスルホン系重合体と、前記重合体を含む高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を含む膜−電極接合体と、前記高分子電解質膜を含む燃料電池、および、前記ポリスルホン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の[化1]で示す反復単位を含むことを特徴とする。[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスルホン系重合体、これを含む高分子電解質膜、これを含む膜−電極接合体、これを採用した燃料電池、及び前記重合体の製造方法に係り、より詳しくは、新たな構造のポリスルホン系重合体、これを含む高分子電解質膜、これを含む膜−電極接合体、これを採用した燃料電池、及び前記重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の種類によって高分子電解質型燃料電池(PEMFC:polymer electrolyte membrane fuel cell)、燐酸燃料電池(PAFC:phosphoric acid fuel cell)、溶融炭酸塩燃料電池(MCFC:molten carbonate fuel cell)、固体酸化物燃料電池(SOFC:solid oxide fuel cell)などに区分され、使用される電解質の種類によって燃料電池の作動温度及び構成部品の材質などが異なる。
その中でも、高分子電解質型燃料電池(PEMFC:polymer electrolyte membrane fuel cell)は、他の燃料電池に比べて出力が優れており、作動温度が低く、応答特性が速い。
【0003】
燃料電池は、電気が発生する発電部、改質装置、燃料タンク、及び燃料ポンプなどから構成される。発電部は、燃料電池の本体を形成し、燃料ポンプは、燃料タンク内の燃料を改質装置に供給する。改質装置を通して水素ガスが発生し、ポンプによって発電部に燃料が供給されて、電気化学反応によって電気エネルギーが発生する。発電部は、アノード、カソード、及び高分子電解質膜からなる膜・電極接合体(membrane electrode assembly、MEA)から構成される。
また、燃料電池は、アノードに燃料が供給される方式によって燃料直接供給型または内部改質型に区分され、燃料直接供給型としては、直接メタノール燃料電池(DMFC:direct methanol fuel cell)が代表的である。
【0004】
直接メタノール燃料電池も電解質として高分子電解質膜を使用するので、直接メタノール燃料電池も高分子電解質型燃料電池に属する。
直接メタノール燃料電池は、燃料としてメタノールを使用するため、水素改質装置などを使用せず、低温で作動するため、システムを簡単かつコンパクトに構成することができ、小型機器及び携帯用機器の電源として適している。
直接メタノール燃料電池で電気が発生する原理は次の通りである。即ち、アノード電極にメタノールが供給されて、メタノールが電極触媒の酸化反応によって水素イオン、電子、及び二酸化炭素(CO)に分解され、水素イオンは高分子電解質膜を通してカソードに移動し、電子は外部回路を通してカソードに移動する。カソードでは、空気中から流入した酸素、外部回路を通して移動した電子、及び膜を通して移動した水素イオンが反応して水が生成される。前記電気化学反応は、下記の反応式1で示す。
<反応式1>
アノード:CHOH+HO→CO+6H+6e
カソード:3/2O+6H+6e→3H
全体反応:CHOH+3/2O→CO+2H
【0005】
高分子電解質型燃料電池の電解質膜としては、陽イオン交換能力がある機能性水素イオン交換膜が使用される。商業的には、スルホン酸基を含む水素イオン交換膜が主に使用される。スルホン酸基は、酸度が非常に大きく、C−S結合が酸化条件でも安定しているためである。スルホン酸基が存在する水素イオン交換膜で水素イオンの伝導度を高く維持するためには、水分子が共に存在しなければならない。水分子の存在時に、電解質膜に存在するスルホン酸基がスルホン酸塩陰イオン及び水素イオンに解離し、硫酸溶液電解質におけると同様、水素イオン濃度の傾きまたは電場によって水素イオンが移動する。水素イオンの伝導度は、高分子電解質膜に含まれているスルホン酸基の数、高分子電解質膜の構造、及び高分子電解質膜の内部に含まれている水の量などによって影響を受ける。
【0006】
従来の代表的な高分子電解質型燃料電池の電解質膜は、Nafion膜、Aciplex膜、Flemion膜、またはDow膜などのフッ素系高分子電解質膜である。フッ素系高分子電解質膜は、100℃以上の高温で水素イオンの伝導度が低下し、燃料ガスの透過度も高く、値段も高い。また、水素イオンの伝導度が高くなるのに伴って高分子電解質膜の水透過度が高くなるが、これによって燃料(例えば、メタノール)の透過度も増加する。したがって、高いイオンの伝導度及び低い燃料透過度を同時に確保するのは難しい。したがって、製造費用が安価であると共に水素イオンの伝導度が高く、燃料に対する透過度は低い高分子電解質膜が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−100268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新たな構造を有するポリスルホン系重合体と、前記重合体を含む高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を含む膜−電極接合体と、前記高分子電解質膜を含む燃料電池、および、前記ポリスルホン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の[化1]で示す反復単位を含むことを特徴とする。
[化1]

上記の式で、
Xは単一結合またはArであり、前記Arは置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
a+b=5、c+d=5であり、a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、
e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、
、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
nは重合度であって、10乃至10,000である。
【0010】
前記重合体が下記の[化2]で示す反復単位をさらに含む共重合体であることを特徴とする。
[化2]

上記の式で、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
mは重合度であって、10乃至10,000である。
【0011】
前記重合体が下記の[化3]で示す反復単位を含む共重合体であることを特徴とする。
[化3]

上記の式で、
X、M、M、R、R、R、R、a、b、c、d、e、fは請求項1に定義されたものと同一であり、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
p及びqはモル比率であり、p+q=1、0<p<1、0<q<1であり、
rは重合度であって、10乃至10,000である。
【0012】
置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基が下記の化学式のうちの一つで示されることを特徴とする。
[化1a]

[化1b]

上記の式で、
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は互いに独立して水素、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
前記Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【0013】
前記重合体が下記の[化4]で示す反復単位を含む共重合体であることを特徴とする。
[化4]

上記の式で、
X、M、M、a、及びcは請求項1に定義されたものと同一であり、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
p及びqはモル比率であり、p+q=1であり、0<p<1、0<q<1であり、
rは重合度であって、10乃至10,000である。
【0014】
前記ArまたはArが下記の化学式のうちの一つで示す炭素数6乃至20のアリレン基であることを特徴とする。
[化4a]

[化4b]

[化4c]

[化4d]

上記の式で、
Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【0015】
前記p及びqの比が1:9乃至9:1であることを特徴とする。
【0016】
前記重合体の質量平均分子量が1,000乃至500,000であることを特徴とする。
【0017】
前記重合体がランダム共重合体またはブロック共重合体であることを特徴とする。
【0018】
高分子電解質膜は、請求項1乃至9のうちのいずれか一つによる共重合体を含むことを特徴とする。
【0019】
前記電解質膜は、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリウレタン、及び分枝型スルホン化ポリスルホンケトン共重合体からなる群より選択される一つ以上の高分子をさらに含むことを特徴とする。
【0020】
前記電解質膜は、シリコン酸化物(SiO)、チタニウム酸化物(TiO)、無機燐酸、スルホン化されたシリコン酸化物(Sulfonated SiO)、スルホン化されたジルコニウム酸化物(Sulfonated ZrO)、及びスルホン化されたジルコニウム燐酸塩(Sulfonated ZrP)からなる群より選択される一つ以上の無機物をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
前記電解質膜は、多孔性支持体をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする膜−電極接合体。
【0023】
請求項10に記載の高分子電解質膜を採用したことを特徴とする燃料電池。
【0024】
前記燃料電池は、直接メタノール燃料電池であることを特徴とする。
【0025】
前記燃料電池は、車両用燃料電池であることを特徴とする。
【0026】
ポリスルホン系共重合体の製造方法であって、[化5]乃至[化7]で示す化合物を反応させて下記の[化8]で示す化合物を製造する段階、及び、
下記の[化8]で示す化合物をスルホン化させて[化3]で示す化合物を製造する段階、を含むことを特徴とする。
[化3]

[化5]

[化6]

[化7]

[化8]

上記の式で、
Xは単一結合またはArであり、
前記Ar、Ar、及びArが置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、
b及びdは互いに独立して1乃至4の整数であり、
a+b=5、c+d=5であり、
e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、
、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は互いに独立して水素、ハロゲン原子、−SOM(Mは水素またはアルカリ金属)、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
前記Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の燃料電池によれば、新たなポリスルホン系重合体を含む高分子電解質膜が採用されたため水素イオンの伝導度、気体の透過度などの特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施様態による直接メタノール燃料電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施例によるポリスルホン系重合体、これを含む高分子電解質膜、これを含む膜−電極接合体、これを採用した燃料電池、及び前記重合体の製造方法についてより詳しく説明する。
本発明の一実施例によるポリスルホン系重合体は、[化1]で示す反復単位を含む:
[化1]

上記の式で、
Xは単一結合またはArであり、Arは置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、M及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり;a+b=5、c+d=5であり、a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、nは重合度であって、10乃至10,000である。
【0030】
前記重合体に含まれているスルホン酸基は、側鎖の一末端に連結されるのが望ましい。スルホン酸基が重合体の側鎖の一末端に連結されることにより、主鎖から離隔して比較的自由に動くことができる。側鎖に連結されたスルホン酸基は、重合体内で界面活性剤の役割を果たすことができる。したがって、側鎖末端のスルホン酸基は、マイセル(micell)のようなイオンチャンネルを形成するのが容易であり、スルホン酸基が側鎖に連結された位置を調節することによってイオンチャンネルの大きさも調節することができる。結果的に、ポリスルホン系重合体は、イオンチャンネルに含まれている水の量を容易に調節することができ、高い水素イオンの伝導度を有する。
【0031】
従来の一般的なポリスルホン系重合体は、スルホン酸基が主鎖に直接連結されていたため、重合体内でスルホン酸基の含有量が高くなると、重合体そのものが水に溶解するようになって電解質膜の機能を果たすことができない恐れがあるため、スルホン酸基の含有量に限界があった。したがって、スルホン酸基が主鎖のみに連結された従来の一般的なポリスルホン系共重合体は、高い水素イオンの伝導度を有するのが難しく、メタノールの主鎖を通して透過が容易である。
また、重合体でスルホン酸基が主鎖から離隔して存在するため、共重合体で親水部及び疎水部が分離され、疎水部の主鎖を経由するメタノールの透過がさらに抑制される恐れがある。また、スルホン酸基が主鎖に存在せずに側鎖に存在することによって、ポリスルホン系重合体そのものの柔軟性が向上し、熱安定性、酸化/還元反応に対する安定性も向上する。
【0032】
本明細書において、「置換」とは、別の定義がない限り、ハロゲン基、炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、またはこれらが組み合わせられた置換基に置換されたものを意味する。
炭素数6乃至20のアリレン基は、芳香族環システムを有する1価の作用基であって、2つ以上の環システムを含むことができ、2つ以上の環システムは、互いに結合または融合された形態で存在することができる。例えば、2つ以上の環システムが単一結合によって連結された形態で存在する。
【0033】
アルキル基は、炭素及び水素のみからなり、炭素が単一結合によってのみ連結された1価の炭化水素作用基である。例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などである。
アルケニル基は、鎖内に1つ以上の炭素−炭素の二重結合を含む1価の炭化水素作用基である。例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
アルキニル基は、炭素鎖内に1つ以上の炭素−炭素の三重結合を含む1価の炭化水素作用基である。
シクロアルキル基は、炭素鎖が環を形成するアルキル基である。例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
ヘテロアリール基は、アリール基のうちの一つ以上の炭素がN、O、S、及びPからなる群より選択された一つ以上に置換された作用基である。
【0034】
本発明の他の一実施例によれば、重合体が下記の[化2]で示す反復単位をさらに含む共重合体であるのが望ましい。
[化2]

上記の式で、Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、mは重合度であって、10乃至10,000である。
【0035】
本発明のまた他の一実施例によれば、重合体が[化3]で示す反復単位を含む共重合体であるのが望ましい。
[化3]

上記の式で、X、M、M、R、R、R、R、a、b、c、d、e、fは前記で定義されたものと同一であり、Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、p及びqはモル比率であり、p+q=1、0<p<1、0<q<1であり、rは重合度であって、10乃至10,000である。
【0036】
本発明のまた他の一実施例によれば、重合体で、置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基が下記の化学式のうちの一つで示すものであるのが望ましい:
[化1a]

[化1b]

上記の式で、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は互いに独立して水素、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり;前記Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【0037】
本発明のまた他の一実施例によれば、重合体で、[化1a]及び[化1b]で示すアリレン基が置換基として−SOM(Mは水素またはアルカリ金属)をさらに含むことができる。一般に、アリレン基にはスルホン酸塩基が含まれないが、用途に応じて必要な場合にはアリレン基にスルホン酸塩基が1つ以上置換される。
【0038】
本発明のまた他の一実施例によれば、重合体が[化4]で示す反復単位を含む共重合体であるのが望ましい:
[化4]

上記の式で、X、M、M、a、及びcは請求項1に定義されたものと同一であり、Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、p及びqはモル比率であり、p+q=1であり、0<p<1、0<q<1であり、rは重合度であって、10乃至10,000である。
【0039】
本発明のまた他の一実施例によれば、[化4]で示す反復単位を含む共重合体で、重合度rは20乃至100であるのが望ましい。重合度の範囲が本発明の目的達成に適している。
本発明のまた他の一実施例によれば、重合体で、ArまたはArが下記の化学式のうちの一つで示す炭素数6乃至20のアリレン基であるのが望ましい。
[化4a]

[化4b]

[化4c]

[化4d]

上記の式で、Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【0040】
本発明のまた他の一実施例によれば、[化3]または[化4]で示す共重合体で、p及びqの比が1:9乃至9:1であるのが望ましい。p及びqの比率が本発明の目的達成に適合している。
本発明のまた他の一実施例によれば、[化1]乃至[化4]で示す重合体の質量平均分子量が1,000乃至500,000であるのが望ましく、より望ましくは1,000乃至100,000である。質量平均分子量の範囲が本発明の目的達成に適している。
【0041】
本発明のまた他の一実施例によれば、[化2]乃至[化4]で示す共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体である。望ましくは、共重合体はブロック共重合体である。ブロック共重合体が電解質膜としての用途により適している。
本発明のまた他の一実施例によれば、ポリスルホン系重合体を含む高分子電解質膜が提供される。高分子電解質膜は、[化1]乃至[化4]のうちのいずれか一つのポリスルホン系重合体を含むことによって、メタノール透過度が低くて水素イオンの伝導度が高い。そして、含水率特性も優れている。
【0042】
また、前記重合体を含む高分子電解質膜は、一般にポリ(アリレンエーテル)系重合体が有する熱的安定性、化学的安定性を有することができ、加工が容易であり、吸湿率も小さいので、熱可塑性高分子、膜弾性体などとして利用可能であり、スルホン酸基を含んでいるので、低い水分含有量でも高い水素イオン伝導度を有し、水分に長時間露出されても電解質膜特性の変化がなく、高い寸法安定性を現わすので、高分子電解質膜としての性能に優れており、燃料電池または2次電池などに適している。
【0043】
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜の水素イオンの伝導度は、相対湿度100%及び25℃で0.5×10−3S/cm以上であるのが望ましく、より望ましくは1×10−3S/cm以上であり、最も望ましくは3×10−3S/cm乃至200×10−3S/cmである。
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜のメタノール透過度は、相対湿度100%及び25℃で20×10−7cm/s以下であるのが望ましく、より望ましくは10×10−7cm/s以下であり、最も望ましくは8×10−7cm/s乃至0.01×10−7cm/sである。
【0044】
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜は、ポリイミド、ポリエーテルケトン、[化1]乃至[化4]の重合体を除くポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリウレタン、分枝型スルホン化ポリスルホンケトン共重合体、またはこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0045】
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜は、無機物としてシリコン酸化物(SiO)、チタニウム酸化物(TiO)、無機燐酸、スルホン化されたシリコン酸化物(Sulfonated SiO)、スルホン化されたジルコニウム酸化物(Sulfonated ZrO)、スルホン化されたジルコニウム燐酸塩(Sulfonated ZrP)、またはこれらの混合物をさらに含むことができる。このような無機物を含むことによって、無機物が水素イオン及びメタノールが透過するチャンネルの障壁の役割を果たして、高分子電解質膜の燃料透過度を減少させることができる。
【0046】
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜は、多孔性支持体をさらに含むことができる。多孔性支持体を含むことによって、高分子電解質膜の引張強度を向上させることができる。多孔性支持体は、例えば、多孔性ポリエチレンのような多孔性ポリオレフィン、多孔性テフロン(登録商標)、多孔性ポリイミドなどが挙げられる。
本発明のまた他の一実施例によれば、高分子電解質膜を含む膜−電極接合体及び燃料電池が提供される。膜−電極接合体は、カソード、アノード、及びこれらの間に介在する本発明の一実施例による高分子電解質膜を含む。また、燃料電池は、本発明の一実施例による高分子電解質膜を含む膜−電極接合体の両面に各々付着された分離板をさらに含む。分離板に、改質装置、燃料タンク、燃料ポンプなどが必要に応じて選択的に付加できる。また、燃料電池は、膜電極接合体を複数個含むことができる。
【0047】
カソード及びアノードは、ガス拡散層及び触媒層から構成される。触媒層は、水素の酸化及び酸素の還元反応を促進させる金属触媒を含む。触媒層は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、及び白金−M合金(MはGa、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZn)からなる群より選択された一つ以上を含むのが望ましい。特に、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−ルテニウム合金、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、白金−コバルト合金、白金−ニッケル合金、またはこれらの混合物を含むのが望ましい。
【0048】
金属触媒は、一般に担体に支持された状態で使用される。担体は、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素系材料;またはアルミナ、シリカなどの無機微粒子を使用することができる。例えば、触媒を担持する担体は多孔性を有し、表面積の150m/g以上、特に500乃至1200m/gであり、平均粒径が10乃至300nm、特に20乃至100nmである。
ガス拡散層には、炭素紙または炭素布が使用されるが、これに限定されない。ガス拡散層は、燃料電池用電極を支持する役割を果たし、触媒層へ反応ガスを拡散させて、触媒層に反応気体が容易に接近できるようにする役割を果たす。ガス拡散層は、炭素紙や炭素布をポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂によって撥水処理したものを使用するのが望ましい。撥水処理された炭素紙または炭素布は、燃料電池の駆動時に発生する水によってガス拡散効率が低下するのを防止することができる。
【0049】
電極は、ガス拡散層及び触媒層の間にガス拡散効果をより増進させるために、微細多孔層(microporous layer)をさらに含むことができる。微細多孔層は、炭素粉末、カーボンブラック、活性炭素、アセチレンブラックなどの伝導性物質、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダー、及び必要に応じてイオノマーを含む組成物を塗布することによって製造される。
カソード及び/またはアノードは、例えば次のように製造される。まず、触媒粉末、バインダー、及び混合溶媒を混合して触媒スラリーを製造する。触媒粉末は、前述の通りであり、炭素系支持体に担持された金属粒子、または炭素系支持体に担持されていない状態の金属粒子状態であって、白金が特に望ましい。混合溶媒及びバインダーは、当該技術分野で一般に使用されるものであれば特に限定されない。次に、触媒スラリーをコーターを使用してガス拡散層上にコーティングし、乾燥させて、触媒層及びガス拡散層からなるカソード及び/またはアノードを製造する。
【0050】
カソード及びアノードの間に本発明の一実施例による高分子電解質膜を挿入して熱間圧着方法によって圧着すれば、膜−電極接合体が得られる。熱間圧着方法で使用される条件は、例えば、加えられる圧力が500乃至2000psi、温度が50乃至300℃、加圧時間が1乃至60分である。
膜/電極接合体に分離板が付加されて発電部が得られる。分離板は、膜/電極接合体の両面に各々付着され、アノードに付着される分離板がアノード分離板であり、カソードに付着される分離板がカソード分離板である。アノード分離板は、アノードに燃料を供給するための流路を備えており、アノードで発生した電子を外部回路または隣接する単位電池に伝達するための電子伝導体の役割を果たす。カソード分離板は、カソードに酸化剤を供給するための流路を備えており、外部回路または隣接する単位電池から供給された電子をカソードに伝達するための電子伝導体の役割を果たす。次に、発電部に少なくとも一つの改質装置、燃料タンク、燃料ポンプなどを選択的に付加することによって、燃料電池が完成される。
【0051】
本発明のまた他の一実施例によれば、燃料電池は、直接メタノール燃料電池である。直接メタノール燃料電池の概略図を図1に示した。
図1に示す通り、直接メタノール燃料電池は、燃料が供給されるアノード34、酸化剤が供給されるカソード30、及びアノード34及びカソード30の間に位置する電解質膜41を含む。アノード34は、アノード拡散層22及びアノード触媒層33からなり、カソード30は、カソード拡散層32及びカソード触媒層31からなる。
【0052】
アノード拡散層22を通してアノード触媒層33に伝達されたメタノール水溶液は、触媒によって電子、水素イオン、二酸化炭素などに分解される。水素イオンは電解質膜41を通してカソード触媒層31に伝達され、電子は外部回路に伝達され、二酸化炭素は外部に排出される。カソード触媒層31では、電解質膜を通して伝達された水素イオン、外部回路から供給される電子、及びカソード拡散層32を通して供給された空気中の酸素が反応して水が生成される。しかし、本発明の一実施例による重合体を含む高分子電解質膜は、他の全ての形態の燃料電池にも使用可能であるのは自明なことである。
【0053】
本発明のまた他の一実施例によれば、燃料電池は、車両用燃料電池である。したがって、車両は、自動車、トラックなどの運搬用車両、掘削機、フォークリフトなどその他の用途の車両など、全ての用途の車両を含む。燃料電池の構成及び出力などは用途に応じて適切に修正される。例えば、自動車の始動、急発進などには短時間に多量の電流が要求されるので、出力密度が高い燃料電池が望ましい。
本発明のまた他の一実施例によれば、[化1]乃至[化4]で示す(共)重合体は、多様な技術分野に使用され、その分野が限定されない。例えば、(共)重合体は、太陽電池、2次電池、スーパーコンデンサなどの全てのエネルギー保存及び生産装置に使用可能である。また、有機電界発光素子にも使用される。また、共重合体のプロトン伝導性を利用する全ての技術分野に使用できる。
【0054】
本発明のまた他の一実施例は、ポリスルホン系共重合体の製造方法であって、下記の[化5]乃至[化7]で示す化合物を反応させて下記の[化8]で示す化合物を製造する段階、及び下記の[化8]で示す化合物をスルホン化させて[化3]で示す化合物を製造する段階、を含むポリスルホン系共重合体の製造方法である。
【0055】
[化3]

[化5]

[化6]

[化7]

[化8]

【0056】
上記の式で、Xは単一結合またはArであり、Ar、Ar、及びArは置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、M及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、b及びdは互いに独立して1乃至4の整数であり、a+b=5、c+d=5であり、e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、R、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は互いに独立して水素、ハロゲン原子、−SOM(Mは水素またはアルカリ金属)、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【0057】
前記製造方法は、製造及び精製が容易であり、収率が高いので、高分子を安価で大量に製造できて、経済性が非常に高い。また、スルホン化度の調節も容易である。
例えば、[化5]乃至[化6]で示す単量体及び[化7]で示す単量体が親核性置換反応によって[化8]の共重合体を生成する。例えば、[化5]で示す単量体1モルに対して[化6]で示す単量体0.01乃至20モル及び[化7]で示す単量体0.01モル乃至20モルの比率で重合することができる。次に、[化8]で示す共重合体をスルホン化させて[化3]で示す共重合体を得る。

【0058】
スルホン化反応に使用されるスルホン酸系化合物は、濃い硫酸(Conc HSO)、クロロスルホン酸(ClSOH)、発煙黄酸(Fumming SO)、発煙黄酸トリエチルホスフェート塩(SO、TEP)などを使用することができるが、これらに限定されず、スルホン化が可能な化合物を全て使用することができる。
スルホン化反応は0℃〜100℃の温度、例えば、25℃〜50℃で行う。スルホン化反応の条件に応じて[化3]で示す共重合体のスルホン化度を調節することができる。例えば、[化3]で示す共重合体のスルホン化度は0.01乃至0.99である。スルホン化度は重合体に含まれている特定の反復単位の総個数に対するスルホン基が結合された特定の反復単位の個数の比率である。
【0059】
[実施例]
以下、望ましい実施例によって本発明をより詳しく説明する。
(ポリスルホン系重合体の製造)
反応式1の経路に従って下記の実施例1乃至7のポリスルホン系共重合体(化合物500)を製造した。
【0060】
<反応式1>

【0061】
実施例1(x=0.4)
第1段階:親核置換反応
250mLの3口丸底のフラスコにマグネチックスターリングバー、ディーン−スタークトラップ(Dean−stark trap)、及びコンデンサを装着し、窒素雰囲気で1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2ジフェニルエチレン(1,2−bis(4−hydroxyphenyl)−1,2−diphenylethylene、化合物100)8mmol、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェノール(4,4’−hexafluoroisopropylidene)diphenol、化合物200)12mmol、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(4,4’−difluorodiphenylsulfone、化合物300)20mmol、及びジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMAc、70mL)を前記フラスコに投入して完全に溶解させた。前記単量体が完全に溶解した後で炭酸カリウム(24mmol)及びトルエン(50mL)を投入し、120℃で4時間還流させながら水を除去した。水を除去した後、反応器の温度を140℃に上昇させながらトルエンを除去した。トルエンを除去した後、反応温度を165℃まで上昇させた後、約24時間反応させた。反応が終了した後、メタノール/水(1:1v/v)混合物で数回洗浄した後、60℃で24時間真空乾燥させて白い固体生成物(化合物400)を得た。前記化合物400で、収率は91%、X値は0.4であった。
【0062】
第2段階:スルホン化反応
250mLの3口フラスコに滴下パネル、マグネチックスターリングバー、及びコンデンサを装着し、窒素雰囲気で前記第1段階で得られた生成物(化合物400)2.0mmol及びジクロロメタン20mLを添加し、完全に溶解させた。前記化合物400が溶解した溶液を還流させつつ前記溶液にクロロメタン20mL及びクロロスルホン酸4.8mmolの混合溶液を1時間にわたってゆっくりと滴下した。この時、反応温度は常温であり、反応時間は3時間であった。反応が進められるのに伴ってスルホン化された重合体は沈殿した。反応が終わった後、反応溶液を蒸溜水で数回洗浄して、未反応クロロスルホン酸を除去した。次に、前記沈殿物を濾過し、60℃で24時間真空乾燥させた。乾燥された沈殿物を再びジメチルアセトアミドに溶解させて溶液を製造した後、3質量%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、次いで塩酸を添加して、前記溶液のpHを中性に合わせた。その後、前記生成物を濾過し、真空乾燥させて、スルホン化された共重合体(化合物500)を得た。収率は92%、Xは0.4であった。
【0063】
実施例2(x=0.5)
第1段階:親核置換反応
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2ジフェニルエチレン(化合物100)10mmol、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェノール(化合物200)10mmol、及び4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(化合物300)20mmolを使用したことを除いては、実施例1の第1段階と同一な方法で前記化合物400を製造した。前記化合物400で、X値は0.5であり、収率は91%であった。
第2段階:スルホン化反応
前記実施例2の第1段階で得られた生成物を使用したことを除いては、前記実施例1の第2段階と同一な方法で前記化合物500を製造した。前記化合物500で、X値は0.5であり、収率は88%であった。
【0064】
実施例3(x=0.6)
第1段階:親核置換反応
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2ジフェニルエチレン(化合物100)12mmol、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェノール(化合物200)8mmol、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(化合物300)20mmolを使用したことを除いては、実施例1の第1段階と同一な方法で前記化合物400を製造した。前記化合物400で、X値は0.6であり、収率は91%であった。
第2段階:スルホン化反応
前記実施例3の第1段階で得られた生成物を使用したことを除いては、前記実施例1の第2段階と同一な方法で前記化合物500を製造した。前記化合物500で、X値は0.6であり、収率は94%であった。
【0065】
実施例4(x=0.7)
第1段階:親核置換反応
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2ジフェニルエチレン(化合物100)14mmol、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェノール(化合物200)6mmol、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(化合物300)20mmolを使用したことを除いては、実施例1の第1段階と同一な方法で前記化合物400を製造した。前記化合物400で、X値は0.7であり、収率は92%であった。
第2段階:スルホン化反応
前記実施例4の第1段階で得られた生成物を使用したことを除いては、前記実施例1の第2段階と同一な方法で前記化合物500を製造した。前記化合物500で、X値は0.7であり、収率は90%であった。
【0066】
実施例5(x=0.8)
第1段階:親核置換反応
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2ジフェニルエチレン(化合物100)16mmol、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェノール(化合物200)4mmol、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(化合物300)20mmolを使用したことを除いては、実施例1の第1段階と同一な方法で前記化合物400を製造した。前記化合物400で、X値は0.8であり、収率は95%であった。
第2段階:スルホン化反応
前記実施例5の第1段階で得られた生成物を使用したことを除いては、前記実施例1の第2段階と同一な方法で前記化合物500を製造した。前記化合物500で、X値は0.8であり、収率は90%であった。
【0067】
(高分子電解質膜の製造)
実施例6
実施例1で製造されたポリスルホン系共重合体をDMSO(dimethylsulfoxide)に溶解させて、平らなガラス板及び丸いガラス棒を利用してガラス板上に各々キャスティングした後、真空オーブンで150℃で乾燥させて、50μmの厚さの高分子電解質膜を製造した。
実施例7
実施例2で製造されたポリスルホン系共重合体を使用して、実施例6と同一な方法で50μmの厚さの高分子電解質膜を製造した。
実施例8
実施例3で製造されたポリスルホン系共重合体を使用して、実施例6と同一な方法で50μmの厚さの高分子電解質膜を製造した。
実施例9
実施例4で製造されたポリスルホン系共重合体を使用して、実施例6と同一な方法で50μmの厚さの高分子電解質膜を製造した。
実施例10
実施例5で製造されたポリスルホン系共重合体を使用して、実施例6と同一な方法で50μmの厚さの高分子電解質膜を製造した。
【0068】
比較例1
ナフィオン112(Nafion 112、DuPont社)を高分子電解質膜として使用した。ナフィオン112を100℃の1M濃度の硫酸溶液に24時間沈殿させて、スルホン酸塩基の陽イオンをソジウムから水素イオンに交換させた。次に、前記水素化された共重合体を脱イオン水で洗浄した。
【0069】
評価例1:水素イオン伝導度の測定
実施例6乃至10及び比較例1の高分子電解質膜に対して水素イオン伝導度(proton conductivity)を測定した。水素イオン伝導度の測定は、広さ2.54cmの2個の白金電極間に高分子電解質膜を各々介在させた後、電位差測定器(electrochemical impedance spectroscopy(EIS) with IM6ex (Zahner))を利用して30℃で初期抵抗値を測定し、次いで下記の[数1]を使用して水素イオン伝導度を計算した。その結果を下記の[表1]に示した。
[数1]
水素イオン伝導度[S/cm]=(膜の厚さ[cm]/膜面積[cm])× 初期伝導度[S]
【0070】
評価例2:メタノール透過度の測定
2個のセル間に前記実施例6乃至10及び比較例1の高分子電解質膜を各々介在させた後、一つのセルに1Mのメタノール水溶液15mLを注入し、他のセルに蒸溜水15mLを注入した後、蒸溜水が入っているセルから10分当り10μLずつ分取した後、再び10μLの蒸溜水を満たした。セルが高分子電解質膜と隣接する面には微細な孔が存在して、溶媒の移動が可能である。分取した試料をガスクロマトグラフィーでメタノール濃度を測定した。また、時間に伴うメタノール濃度の変化をグラフに作成し、その傾きから[数2]を使用してメタノール透過度を計算した。その結果を下記の[表1]に示した。
[数2]
メタノール透過度[cm/S]=(傾き[ppm/s]×溶液体積×電解質膜の厚さ)/(電解質膜の面積×メタノール濃度)

上記の式で、膜の直径(厚さ0.05μm)3cm、メタノール濃度1mol/L32000ppm)、溶液体積15mL、膜面積7.06cmである。
【0071】
【表1】

[表1]で分かるように、本発明の一実施例によるポリスルホン系重合体を含む実施例6乃至10の高分子電解質膜は、比較例1と類似した水素イオン伝導度を有しつつ、比較例1に比べて著しく低いメタノール透過度を示した。
【符号の説明】
【0072】
22 アノード拡散層
30 カソード
31 カソード触媒層
32 カソード拡散層
33 アノード触媒層
34
アノード
41 電解質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の[化1]で示す反復単位を含むことを特徴とするポリスルホン系重合体。
[化1]

上記の式で、
Xは単一結合またはArであり、前記Arは置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
a+b=5、c+d=5であり、a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、
e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、
、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
nは重合度であって、10乃至10,000である。
【請求項2】
前記重合体が下記の[化2]で示す反復単位をさらに含む共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
[化2]

上記の式で、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
mは重合度であって、10乃至10,000である。
【請求項3】
前記重合体が下記の[化3]で示す反復単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
[化3]

上記の式で、
X、M、M、R、R、R、R、a、b、c、d、e、fは請求項1に定義されたものと同一であり、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
p及びqはモル比率であり、p+q=1、0<p<1、0<q<1であり、
rは重合度であって、10乃至10,000である。
【請求項4】
前記置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基が下記の化学式のうちの一つで示すことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載の重合体。
[化1a]

[化1b]

上記の式で、
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は互いに独立して水素、ハロゲン原子、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
前記Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【請求項5】
前記重合体が下記の[化4]で示す反復単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
[化4]

上記の式で、
X、M、M、a、及びcは請求項1に定義されたものと同一であり、
Ar及びArは互いに独立して置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
p及びqはモル比率であり、p+q=1であり、0<p<1、0<q<1であり、
rは重合度であって、10乃至10,000である。
【請求項6】
前記ArまたはArが下記の化学式のうちの一つで示す炭素数6乃至20のアリレン基であることを特徴とする請求項5に記載の重合体。
[化4a]

[化4b]

【化4c】

【化4d】

上記の式で、
Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。
【請求項7】
前記p及びqの比が1:9乃至9:1であることを特徴とする請求項3に記載の重合体。
【請求項8】
前記重合体の質量平均分子量が1,000乃至500,000であることを特徴とする請求項1に記載の重合体。
【請求項9】
前記重合体がランダム共重合体またはブロック共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の重合体。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一つによる共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項11】
前記電解質膜は、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリウレタン、及び分枝型スルホン化ポリスルホンケトン共重合体からなる群より選択される一つ以上の高分子をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
前記電解質膜は、シリコン酸化物(SiO)、チタニウム酸化物(TiO)、無機燐酸、スルホン化されたシリコン酸化物(Sulfonated SiO)、スルホン化されたジルコニウム酸化物(Sulfonated ZrO)、及びスルホン化されたジルコニウム燐酸塩(Sulfonated ZrP)からなる群より選択される一つ以上の無機物をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
前記電解質膜は、多孔性支持体をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の高分子電解質膜。
【請求項14】
請求項10に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする膜−電極接合体。
【請求項15】
請求項10に記載の高分子電解質膜を採用したことを特徴とする燃料電池。
【請求項16】
前記燃料電池は、直接メタノール燃料電池であることを特徴とする請求項15に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記燃料電池は、車両用燃料電池であることを特徴とする請求項15に記載の燃料電池。
【請求項18】
ポリスルホン系共重合体の製造方法であって、
下記の[化5]乃至[化7]で示す化合物を反応させて[化8]で示す化合物を製造する段階、及び、
下記の[化8]で示す化合物をスルホン化させて[化3]で示す化合物を製造する段階、を含むことを特徴とするポリスルホン系共重合体の製造方法。
[化3]

[化5]

[化6]

[化7]

[化8]

上記の式で、
Xは単一結合またはArであり、
前記Ar、Ar、及びArが置換または非置換された炭素数6乃至20のアリレン基であり、
及びMは互いに独立して水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
a及びcは互いに独立して1乃至5の整数であり、
b及びdは互いに独立して1乃至4の整数であり、
a+b=5、c+d=5であり、
e及びfは互いに独立して0乃至4の整数であり、
、R、R、及びRは互いに独立して炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は互いに独立して水素、ハロゲン原子、−SOM(Mは水素またはアルカリ金属)、炭素数1乃至20の直鎖または分枝型アルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数2乃至20のアルキニル基、炭素数5乃至20のシクロアルキル基、炭素数6乃至20のアリール基、炭素数2乃至20のヘテロアリール基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数1乃至20のアルコキシ基であり、
前記Yは単一結合、S、S(=O)、C(=O)、P(=O)(R17)、またはC(R18)(R19)であり、前記R17、R18、R19は互いに独立してハロゲンに置換または非置換された炭素数1乃至20のアルキル基、またはハロゲンに置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基である。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−248508(P2010−248508A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90552(P2010−90552)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(500013751)東進セミケム株式会社 (72)
【氏名又は名称原語表記】Dongjin Semichem Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】472−2 Gajwa−dong,Seo−ku,Incheon−city 404−250,Korea
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】