説明

ポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体

【課題】外観、表面硬度、耐傷付性及び耐薬品性に優れ、サニタリー用途に好適に用いることが出来る熱可塑性樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】
(A1)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂99〜50重量部、(A2)熱可塑性樹脂0〜50重量部及び(A3)エポキシ樹脂0〜20重量部の合計100重量部に対して、(A4)無機充填剤を0〜150重量部配合する樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部を(B)1液又は2液硬化型樹脂組成物を塗膜状に付着させ、硬化させる、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観、表面硬度、耐傷付性及び耐薬品性に優れ、サニタリー用途に好適に用いることが出来るポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す。)樹脂成形体及び、該成形体からなるサニタリー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面ボール、手洗ボールやカウンターなどサニタリー部品には重くて脆い陶器に代わり、不飽和ポリエステルやアクリル系の熱硬化性樹脂にガラス繊維などを配合した繊維補強熱硬化性樹脂が多く使用されてきた。これらの熱硬化性樹脂製品は、プレス成形、注型成型などの成型方法によって製造されている。
しかし、熱硬化性樹脂製品は、硬化しているため、リサイクルの可能性はほとんどなく、現状で埋め立てによる廃棄処理が主な処理法である。しかも、その廃棄の際には成形品のボリュームをコンパクトにするのが困難で、廃棄処理法の点で大きな問題を生じている。
このため、熱硬化性樹脂製品に代わる、熱可塑性樹脂製品が注目されつつある。要求特性としては、成形品が良外観であり、機械的特性に優れることはもとより、表面硬度、耐傷付性、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性などの厳しい性能が要求される。
【0003】
従来、ポリエステル樹脂にガラス繊維等の充填材を配合した材料は、機械的特性、寸法安定性及び耐薬品性等に優れるため、熱硬化性樹脂に代わる材料として検討がなされてきた。中でも、強化PTT樹脂組成物は、機械的特性、寸法安定性、耐薬品性はもとより、外観や表面硬度において特に優れ、また高濃度に充填材を添加できるという特性を持つ。
しかし、成形品の表面外観や表面傷付性に対する要求特性はさらに高まっており、従来の強化PTT樹脂組成物では、要求特性を依然満足していない。
例えば、特許文献1には、PTT樹脂と無機充填材からなる樹脂組成物に関して、無機充填材のグラフト量を規定した特許が開示されている。
さらに、特許文献2には、成形品外観を向上させる目的で、PTT樹脂とガラス繊維以外の無機フィラ−からなる樹脂組成物が開示されている。
確かに、PTT樹脂と無機充填剤の組み合わせは、優れた外観を示すが、成形品表面の波打ちが大きく、表面平滑性を満足しない問題がある。また、耐傷付性に関しても、要求特性を満足しない。
【0004】
【特許文献1】WO2002/090435号公報
【特許文献2】特開2002/228324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は外観、表面硬度、耐傷付性及び耐薬品性に優れ、サニタリー用途に好適に用いることが出来る熱可塑性樹脂成形体、及び該成形体からなるサニタリー製品、具体的には洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンターなど浴室、洗面所、トイレ、台所で使用される製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するため、PTT樹脂を含む樹脂組成物からなる成形体表面に、硬化性樹脂組成物を付着させることにより、機械特性、耐薬品性及び表面硬度を保持したまま、外観、及び耐傷付性が大幅に改善されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
1.(A1)ポリトリメチレンテレフタレートが20〜100重量部である(X)樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に(B)硬化性樹脂組成物からなる塗膜が付着している、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
2.(X)樹脂組成物が、(A1)ポリトリメチレンテレフタレートと(A2)熱可塑性樹脂と(A3)エポキシ樹脂と(A4)無機充填剤を含む樹脂組成物であって、(A1)成分100〜20重量部、(A2)成分0〜80重量部及び(A3)成分0〜20重量部の合計100重量部に対して、(A4)成分が25〜150重量部である、1.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【0007】
3.(A1)+(A2)の100重量部に対して、(A2)熱可塑性樹脂が1〜80重量部である、2.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
4.(A1)+(A2)+(A3)の100重量部に対して、(A3)エポキシ樹脂が0.05〜20重量部である、2.または3.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
5.(B)成分の膜厚が1〜200μmである、1.〜4.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
6.ポリトリメチレンテレフタレート成形体の塗膜表面の鉛筆硬度がH以上である、1.〜5.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【0008】
7.(B)成分が紫外線硬化型アクリル樹脂を含む、1.〜6.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
8.(B)成分が2液系アクリルウレタン樹脂を含む、1.〜6.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
9.ポリトリメチレンテレフタレート成形体の塗膜表面のバーコル硬度が30以上である、1.〜8.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
10.成形体がサニタリー製品である、1.〜9.のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
11.サニタリー製品が洗面カウンター、キッチンカウンター、トイレカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、キャビネット天板のいずれかである、10.に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明における(A1)ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略称することがある。)とは、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを用いたポリエステルポリマーを示している。本発明においてトリメチレングリコールとしては、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。それらの中でも安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0010】
このほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、酸成分として、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸等;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;ε―オキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシジカルボン酸を一部用いて共重合することができる。また、グリコール成分として、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール
、ジエチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ハイドロキノンなどを一部用いて共重合することができる。
【0011】
共重合する場合の共重合成分の量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常酸成分の20モル%以下、あるいはグリコール成分の20モル%以下であることが好ましい。
また、上述のポリエステル成分に分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の、三官能または四官能のエステル形成能を持つ酸、またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの三官能または四官能のエステル形成能を持つアルコールを共重合してもよい。その場合にそれらは全ジカルボン酸成分の1.0モル%以下、好ましくは、0.5モル%以下、さらに好ましくは、0.3モル%以下であってもよい。
【0012】
本発明のPTTには、これら共重合成分を2種類以上組み合わせて使用する場合も含む。
本発明に用いられるPTTの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、特開昭51−140992号公報、特開平5−262862号公報、特開平8−311177号公報等に記載されている方法によって製造することができる。一例として、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体(例えばジメチルエステル、モノメチルエステル等の低級アルキルエステル)とトリメチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを、触媒の存在下、好適な温度・時間で加熱反応させ、更に得られるテレフタル酸のグリコールエステルを触媒の存在下、好適な温度・時間で所望の重合度まで重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられるPTTの極限粘度[η]は0.40dl/g〜1.50dl/gであることが成形体の機械特性の面から好ましく、[η]が0.60dl/g〜1.40dl/gであることがより好ましい。さらに成形体の靭性、耐薬品性の観点から[η]が0.80dl/g〜1.30dl/gであることが最も好ましい。
PTTの極限粘度[η]については、オストワルド粘度計を用い、35℃、o-クロロフェノール中にPTTを、溶質(PTT)/溶液=1.00g/dlになるように溶解させ、該溶液を用いて比粘度ηspを測定し、下記式により求めることができる。
[η]=0.713×ηsp/C+0.1086
C=1.00g/dl
【0014】
また、本発明のPTTには必要に応じて、各種の添加剤、例えば、pH調整剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、艶消し剤などを共重合、または混合する場合も含む。
本発明の(A1)PTTの配合量は、(X)樹脂組成物100重量部に対して、20〜100重量部であり、表面硬度、塗膜との密着性の観点から30〜85重量部配合することがさらに好ましく、40〜70重量部配合することが最も好ましい。
【0015】
本発明の(A2)熱可塑性樹脂とは、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エチレン/プロピレン/非共役ジエン樹脂、エチレン/アクリル酸エチル樹脂、エチレン/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸樹脂、スチレン樹脂、AS樹脂、及びABS樹脂あるいはこれら熱可塑性樹脂の2種以上
の混合物が挙げられる。
【0016】
中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂が好ましく、特に機械的特性の観点からポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂(以下、PCと省略することもある)は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有するものである。
−(O−Ar−O−CO)− (1)
(式中、Arは、二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、 ビフェニレン、ピリジレンや、下記式(2)で表される基が挙げられる。)
−Ar−Y−Ar− (2)
(式中、Ar及びArはそれぞれアリーレン基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表す。Yはアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0017】
また、下記式(3)で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有している場合も含む。
−Ar−Z−Ar− (3)
(式中Ar、Arは式(2)と同じ。Zは単なる結合または−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CO−、−CONR−等の二価の基である。ただし、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基である。)
【0018】
これら二価の芳香族残基の具体例としては下記式(4)で表されるもの等が挙げられる。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各Rはそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各Rはそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
【0019】
これら二価の芳香族残基の中でも、下記式(5)で表される基が好ましい一例である。
【化2】

【0020】
特に、上記の式(5)で表される基をArとする繰り返し単位を85モル%以上(ポリカーボネート中の全モノマー単位を基準として)含むポリカーボネートが特に好ましい。
また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の芳香族残基を共重合成分として含有している場合も含む。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール性水酸基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。これらの中で、フェノール性水酸基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が末端構造として好ましい。フェノール性水酸基末端の全末端基数に対する割合は、特に限定されないが、よりすぐれた色調や機械的物性を得る観点からは、フェノール性水酸基末端の割合が全末端基数の20%以上であることが好ましく、20〜80%の範囲にあることが更に好ましい。フェノール性水酸基末端の割合が全末端基数の80%を超えると、組成物の溶融時の熱安定性が若干低下する傾向にある。フェノール性水酸基末端の割合は、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法(UV法もしくはIR法)で求めることができる。
【0021】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、一般に耐衝撃性の観点から5000以上、また熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性の観点から200000以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10000〜60000であり、さらに好ましくは15000〜40000であり、特に好ましくは18000〜30000である。
重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
PC=0.3591MPS1.0388
(式中、MPCはポリカーボネートの重量平均分子量、MPSはポリスチレンの重量平均分子量である。)
【0022】
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂は、公知の方法で製造したものを使用することができる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法で製造することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法〔特開平1−158033号公報(米国特許第4,948,871号明細書に対応)、特開平1−271426号公報、特開平3−68627号公報(米国特許第5,204,377号明細書に対応)〕等の方法により製造されたものが用いられる。
【0023】
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂があげられる。本発明では異なる構造や分子量の2種以上の異なるポリカーボネートを組み合わせて使用することも可能である。
さらに、(A1)ポリトリメチレンテレフタレートと(A2)ポリカーボネートは、両者の混練温度における溶融粘度が近いことが望ましい。また剪断速度100sec−1におけるそれぞれの溶融粘度(単位;poise)をμ(A1)及びμ(A2)で表した場合、次の条件を満たすことが望ましい。
|μ(A1)−μ(A2)|≦18,000(poise)
この溶融粘度差は、(A1)ポリトリメチレンテレフタレートの(A2)ポリカーボネートに対する相溶化を進め、樹脂組成物の成形性および物性を発揮させるために望ましい範囲である。
【0024】
ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリアルキレンテレフタレートとしては、例えば、テレフタル酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール成分とから得られるポリアルキレンテレフタレート樹脂が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂は単独で用いることもできるし、2種以上の混合物を用いることもできる。中でも、特にポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂は大型成形性及び厚肉成形性の観点からより好ましく用いられる。
【0025】
本発明の(A2)熱可組性樹脂の含有量は、(A1)+(A2)を100重量部とした場合、外観及び大型成形性の観点から、1〜80重量部であることが好ましく、2〜60重量部がより好ましく、3〜40重量部が最も好ましい。
本発明の(A3)エポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上持つ熱硬化性の化合物を示す。具体的には、ビルフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるいわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックや線状高分子量クレゾールノボラックをグリシジル化した多官能エポキシであるノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシなどが挙げられる。
【0026】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、耐薬品と樹脂への分散の観点からエポキシ当量150〜280(/eq.)のノボラック型エポキシ樹脂、またはエポキシ当量600〜3000(/eq.)のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。より好ましくはエポキシ当量180〜250(/eq.)で分子量1000〜6000のノボラック型エポキシ樹脂、またはエポキシ当量600〜3000(/eq.)で分子量1200〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
本発明の(A3)エポキシ樹脂の配合量は、(A1)+(A2)+(A3)を100重量部とした場合、大型成形性、塗膜密着性の観点から、0.05〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましく、0.3〜5重量部であることが最も好ましい。
【0027】
本発明の(A4)無機充填剤としては、目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の無機充填剤が用いられる。
繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、テトラポット型酸化亜鉛、ゾノトライト、硫酸マグネシウムウィスカー、ウォラストナイト、針状ベーマイト、セピオライト、アタバルジャイトさらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維状物などの無機質繊維状物質があげられる。特に代表的な繊維状無機充填剤はガラス繊維およびウォラストナイトである。なおポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。
【0028】
一方、粉粒状無機充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、クレー、硅藻土のごとき硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナのごとき金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのごとき金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのごとき金属の硫酸塩、その他、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
又、板状無機充填剤としてはタルク、マイカ、セリサイト、板状ベーマイト、カオリン、焼成カオリン、ベントナイト、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0029】
本発明の無機充填剤は、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、焼成カオリン、硫酸バリウム、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー及びテトラポット型酸化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの無機充填剤が好ましい。特に、表面硬度の観点からは、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーが最も好ましく用いられる。
これらの無機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。繊維状無機充填剤と粒状及び/又は板状無機充填剤の併用は、外観、機械的強度及び寸法精度等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
【0030】
また、本発明に用いられる繊維状無機充填剤の平均繊維長(以下、Lともいう)、平均繊維径(以下、dともいう)、アスペクト比(以下、L/dともいう)については特に限定されない。ガラス繊維の場合、平均繊維長(L)が50〜10000μm、平均繊維径(d)が5〜30μm、アスペクト比(L/d)が10〜1000であることが高い機械的特性を発現するという観点から最も好ましい。また炭素繊維は、平均繊維長(L)が100〜750μm、平均繊維径(d)が、3〜30μm、アスペクト比(L/d)が10〜100であるものが好ましく用いられる。さらに、ウォラストナイトは、平均繊維径は、3〜30μm、平均繊維長が10〜500μm、前記アスペクト比(L/d)が3〜100のものが好ましく用いられる。その他のタルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカーは平均粒径が0.1〜100μmのものが最も好ましく用いられる。
【0031】
本発明の(A4)無機充填剤の添加量としては、(A1)成分+(A2)成分+(A3)成分100重量部に対して、剛性及び成形品外観の観点から25〜150重量部が好ましく、50〜100重量部が最も好ましい。
これらの無機充填剤は、特に表面処理を施したものが好ましく用いられる。表面処理としては公知のカップリング剤やフィルム形成剤を用いて行う。好ましく用いられるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤が挙げられる。これ等の化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。
【0032】
シラン系カップリング剤としては、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-α-(アミノエチル)-α-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-α-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-α-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-α-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-4,5ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。
この中でも、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-α-(アミノエチル)-α-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシランおよびエポキシシランが好ましく用いられる。
【0033】
チタン系カップリング剤は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフェイト)チタ
ネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0034】
フィルム形成剤としては、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジクロロブタジエン、1,3-ペンタジエン、シクロオクタジエンなどの不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマーなどの重合体を挙げることが出来る。これらの中でも、エポキシ系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及び、これらの混合物が好ましく用いられる。
【0035】
このようなカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、無機充填材の表面処理を行うには、公知の方法によればよい。例えば、上記カップリング剤及び/又はフィルム形成剤及び有機溶媒からなる溶液又は懸濁液をいわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いてカップリング剤及び/又はフィルム形成剤を塗布する乾式混合、スプレーによりカップリング剤及び/又はフィルム形成剤を塗布するスプレー法、さらには、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法を挙げることができる。また、これらの方法を組み合わせた方法、例えばカップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等も挙げることができる。この中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法及びこれらを組合せた方法が好ましく用いられる。
【0036】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体に用いられる(X)樹脂組成物は、上記の(A1)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、(A2)熱可塑性樹脂、(A3)エポキシ樹脂、(A4)無機充填剤に加え、各種用途及び目的に応じて、その他の成分として、衝撃改良剤、結晶核剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、離型剤、可塑剤、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、蛍光増白剤、艶消し剤及び各種着色剤等を適宜配合することができる。
【0037】
本発明のPTT樹脂成形体に用いられる(X)樹脂組成物は、(A1)ポリトリメチレンテレフタレート、(A2)熱可塑性樹脂、(A3)エポキシ樹脂、(A4)繊維状無機フィラ−やその他の添加剤等を、適切にデザインされたスクリューを有する押出し機を用いて溶融混練して得ることができる。特に、(A1)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A2)熱可塑性樹脂(B)エポキシ樹脂を溶融混錬した後に、(A4)繊維状無機フィラ−を添加するのが好ましく、(A1)成分と(A2)成分と(A3)成分を溶融混練した後に、(A4)繊維状無機フィラ−を2箇所以上から添加するのがさらに好ましい。
【0038】
本発明のPTT樹脂成形体とは、(X)樹脂組成物を、各種成形加工方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形等により成形加工した成形体の少なくとも一部に(B)硬化性樹脂組成物からなる塗膜が付着している、成形体である。(B)
硬化性樹脂組成物を該樹脂成形体に塗膜状に付着させることにより、成形体の機械的強度、表面硬度及び耐薬品性は保持したまま、外観、耐傷付性を大幅に向上させることができる。
【0039】
(B)硬化性樹脂組成物としては、各種塗料硬化物に幅広く使用されている樹脂を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂からなる群から選ばれた1種以上の樹脂を用いることができる。(B)硬化性樹脂組成物は該成形体に塗膜状に何層塗装しても構わないが、成形体に塗装する1層目の塗膜(アンダーコート)としては、密着性の観点から、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましい。また、最表面の塗膜(トップコート)としては、外観、表面硬度、耐薬品性の観点から、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。
【0040】
本発明で用いるアクリル樹脂としては、アクリルポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、電子線硬化型アクリル樹脂、常乾型アクリル樹脂等を用いることができる。アクリル樹脂としては、特にアクリルポリウレタン樹脂及び紫外線硬化型アクリル樹脂が密着性と表面硬度の観点で、好ましい。
アクリルポリウレタン樹脂とは、アクリルポリオールに硬化剤を併用して用いるが、硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物を用いる。ポリイソシアネート化合物としては、非黄変型のヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を用いることができる。
紫外線硬化型アクリル樹脂は、アクリル酸エステルモノマー、オリゴマーに光重合開始剤を併用して使用する場合が多く、アクリル酸エステルモノマーとして、単官能性アクリレート、2官能性アクリレート、多官能性アクリレート等が挙げられる。又、オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、共重合系アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ポリウレタン樹脂としては、1液型ポリウレタン樹脂と2液型ポリウレタン樹脂が挙げられるが、表面光沢の観点から、2液型ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。2液型ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを主原料とし、触媒及びその他延長剤、硬化剤等を併用して使用する場合が多い。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等が挙げられる。又、ポリイソシアネート化合物としては、非黄変型のヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
不飽和ポリエステル樹脂としては、ポリオールと多塩基酸との重縮合反応により合成されたものを用いることができる。また、不飽和結合を有するポリオールと多塩基酸、さらにポリオールの不飽和基と共重合可能なモノマーによる重縮合反応とラジカル反応により得られるものを用いることができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールーA型に代表されるグリシジルエーテル型化合物、フタル酸誘導体に代表されるグリシジルエステル型、テトラグリシジルジアミンジフェニルメタン等に代表されるグリシジルアミン型、及び脂環型等を用いることができる。
【0043】
シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
フッ素樹脂化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。
(B)硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、公知の各種塗装方法として、スプレー方式、ディップ方式、スピンコート方式、フロー方式等を使用することができる。中でも、3次元形状成形品において、均一に塗装可能なスプレー方式が好適に用いられる。また、塗装前には、成形品表面をイソプロピルアルコール(IPA)等で脱脂することが好ましい。
【0044】
(B)硬化性樹脂組成物の膜厚としては、外観、硬度、塗膜靭性の観点から1〜200μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、1〜20μmであることが最も好ましい。
又、PTT樹脂成形体における(B)硬化性樹脂組成物を塗装した塗膜表面の鉛筆硬度は、耐傷付性の観点から、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
さらに、該塗装表面のバーコル硬度については、耐傷付性の観点から、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、40以上であることが最も好ましい。
【0045】
本発明のPTT樹脂成形体は、外観が極めて良好であり、剛性、表面硬度、耐薬品性、及び大型成形性に優れるため、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール(洗面器)、手洗ボール(手洗器)、各種流し、トイレカウンター、キャビネット天板など浴室、洗面所、トイレ、台所で使用されるサニタリー製品の構成部材の少なくとも一部に使用することができる。特に、成形体の表面硬度が、バーコル硬度30以上、鉛筆硬度2H以上、より好ましくはバーコル硬度40以上、鉛筆高度3H以上の本発明組成物からなる成形体はこの用途に最適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例になんら限定されるものではない。なお、使用した熱可塑性樹脂およびその配合剤は下記のとおりである。
・PTT1:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂。
極限粘度[η]=0.75(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレート
なお,極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められた。
[η]=lim(1/C)×(ηr−1)[C→0]
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリトリメチレンテレフタレートの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値で相対粘度として定義されるものである。またCは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0047】
(A1)ポリトリメチレンテレフタレート
・PTT2:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=0.89(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレート
・PTT3:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=1.00(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレート
・PTT4:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=1.10(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレート
【0048】
(A2)熱可塑性樹脂
・PC1:ポリカーボネート樹脂;三菱エンジニアリングプラスチックス社製
・PET1:ポリエチレンテレフタレート樹脂;NEH2050、ユニチカ社製
・PBT1:ポリブチレンテレフタレート樹脂;ジュラネックス2002、ウィンテック社製
(A3)エポキシ樹脂
・EP1:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;AER ECN1299、エポキシ当量約230(/eq.)、旭化成エポキシ(株)製、
・EP2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂;AER ECN6097、エポキシ当量約2000(/eq.)、旭化成エポキシ(株)製
【0049】
(A4)無機充填剤
・MF1:ウォラストナイト;NYGLOSS8 アミノシラン処理、NICO社製
・MF2:ウォラストナイト NICO社製 NYGLOSS4 アミノシラン処理
・MF3:ホウ酸アルミニウムウィスカー 四国化成社製 アルボレックス YS3A アミノシラン処理
・MF4:チタン酸カリウムウィスカー 大塚化学社製 ティスモN アミノシラン処理・MF5:酸化亜鉛テトラポッド 松下電器産業社製 パナテトラ WZ−0511 ア
【0050】
ミノシラン処理
・MF6:タルク;MS アミノシラン処理、日本タルク社製
・MF7:セリサイト;GMS アミノシラン処理、キンセイマテック社製
・MF8:炭酸カルシウム;WS−2200、竹原化学社製
・GF1:ガラス繊維;03T−187/PL、日本電気硝子社製
その他添加剤
・C1(核剤):LicomontNaV101、クラリアント社製
・F1(離型剤):LicomontCaV102、クラリアント社製
・P1(熱安定剤):IRGAFOS168、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製
・S1(熱安定剤):IRGANOX1098、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製・S2(熱安定剤):リン酸一Na、太平化学産業社製
【0051】
(B)硬化性樹脂組成物
・B1:紫外線硬化型アクリル樹脂塗料:UVクリアM−35、オリジン電気社製
・B2:2液型アクリルウレタン樹脂塗料:スプラ#011/D10−446(80/20)、ミクニペイント社製
・B3:2液型ウレタン樹脂塗料:NYクリヤー/D05−391(80/10)、ミクニペイント社製
・B4:2液型アクリルウレタン樹脂塗料:プラネットPX−1/ポリハードS(80/20)、オリジン電気社製
・B5:シリコーン樹脂:solGard NP730、日本ダクロシャムロック社製
・B6:ウレタン樹脂:Solgard Primer85B−2、日本ダクロシャムロック社製
【0052】
なお、以下の実施例、比較例において記載した樹脂成形品の物性評価は、以下のように行った。
1.樹脂成形品の作成および諸特性
(1−1)膜厚
(成形条件)
100mm×100mm×2mm厚(100mm×1mmのフィルムゲート)の平板金型を用いて、射出成形を行った。装置は日精樹脂(株)製FN3000を用い、シリンダー温度260℃、金型温度95℃(比較例2のみ60℃)に設定し、射出30秒、冷却20秒の射出成形条件で、成形品(平板)を得た。その際の成形品の充填時間は1.2秒であった。
【0053】
(塗装条件)
・紫外線硬化型アクリル樹脂塗料
上記平板をイソプロパノールに2回浸漬させ脱脂を行い、B1塗料とプラネットシンナー#702を100対60の比率で混合し、スプレーガンにて塗装し、80℃で5分乾燥を行った後、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて、1000mJ/cmの紫外線積算エネルギー量の紫外線を照射して、厚さ10μmの塗膜を形成した。
・2液型アクリルウレタン樹脂塗料1
上記平板をイソプロパノールに2回浸漬させ脱脂を行い、B3塗料と#200級FBシンナーを100対85の比率で混合し、スプレーガンにて塗装を行った。その後5分間、20℃の室温に放置した後、B2塗料と#200級FBシンナーを100対20の比率で混合し、スプレーガンにて塗装を行った。その後、20℃の室温に10分間放置した後、80℃の乾燥機で40分間熱硬化させ、厚さ20μの塗膜を形成した。
【0054】
・2液型アクリルウレタン樹脂塗料2
上記平板をイソプロパノールに2回浸漬させ脱脂を行い、B4塗料とプラネットシンナー#260を100対40の比率で混合し、スプレーガンにて塗装を行った。その後、20℃の室温に10分間放置した後、70℃の乾燥機で30分間熱硬化させ、厚さ15μの塗膜を形成した。
・シリコーン樹脂塗料
上記平板をイソプロパノールに2回浸漬させ脱脂を行い、B6塗料槽にディッピングさせた後、80℃の乾燥機で30分乾燥させた。その後、B5塗料槽でさらにディッピングさせた後、120℃、60分乾燥を行い、厚さ2μmの塗膜を形成した。
上記各種塗装成形片塗膜の膜厚を、膜厚計を用いて測定した。
【0055】
(1−2)塗膜密着性
1mmのクロスカットを行った後、セロハンテープで剥離試験(剥離マス目数/100マス目)を行った。
(1−3)表面外観
<表面グロス(20°)>
堀場製ハンディ光沢計IG320を用いて、JIS−K7150に準じて、上記平板のグロス(20°)を測定した。
◎:グロス≧80、○:80>グロス≧65、△:65>グロス≧50
【0056】
(1−4)表面硬度
<バーコル硬度>
上記平板を用いて、JIS K7060に準じ成形品表面のバーコル硬度を測定した。
<鉛筆硬度>
上記平板を用いて、ISO/DIS15184に準じ成形品表面の鉛筆硬度を測定した。(1−5)耐傷付性
上記平板を用いて、スコッチ・ブライトバスシャイン(住友3M社製)を用いて1kgの荷重をかけて、10往復した際の成形品表面の傷付性を評価した。傷付性評価後の平板を堀場製ハンディ光沢計IG320を用いて、JIS−K7150に準じて、上記平板のグロス(20°)を測定し、傷付性評価前の平板とのグロス(20°)値と比較した。
◎:グロス保持率95%以上、○:グロス保持率80%以上〜95%未満、△:グロス保持率80未満
【0057】
(1−6)耐薬品性
成形品を排水パイプ洗浄剤原液に室温にて2週間浸漬し、取り出し後水で洗浄し乾燥して形品の外観変化を観察した。
○:グロス保持率が80%以上
×:グロス保持率が80%以下
使用洗浄剤:ジョンソン株式会社(製)パイプユニッシュプラス(水酸化ナトリウム3%、次亜塩素酸塩、界面活性剤アルキルアミンオキシド)
【0058】
[実施例1〜12]
PTT1〜PTT4、PC1、PET1、GF1、MF1、EP1、EP2、C1、F1、P1、S1〜S2を下記表1および2に示した配合比でドライブレンドした。そのブレンド物を2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)を用いて溶融混練し、サイドフィーダーから、GF1、MF1を表1に示した配合比で添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度250℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、285℃であった)、押出速度150Kg/Hr(滞留時間1分)、減圧度は0.05MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを120℃で5時間、除湿型乾燥機で乾燥した後、前述の通り、射出成形方法で試験片を作成し、表1の処方に従い、塗装を行った。得られた試験片を用いて、上記測定方法に従って、解析および諸特性の測定を行った。結果を表1および2に示した。
【0059】
[比較例1、3、4]
PTT3〜PTT4、PC1、PET1、GF1、MF1、EP1、C1、F1、P1、S1〜S2を下記表1に示した配合比でドライブレンドした。そのブレンド物を2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)を用いて溶融混練し、サイドフィーダーから、GF1、MF1を表1に示した配合比で添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度250℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、285℃であった)、押出速度150Kg/Hr(滞留時間1分)、減圧度は0.05MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを120℃で5時間、除湿型乾燥機で乾燥した後、上記に示す射出成形方法で試験片を作成し、上記測定方法に従って、解析および諸特性の測定を行った。結果を表1に示した。
【0060】
[比較例2、5、6]
PBT1を前述の通り、射出成形方法で試験片を作成し、表1〜2の処方に従い、塗装を行った。得られた試験片を用いて、上記測定方法に従って、解析および諸特性の測定を行った。結果を表1〜2に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体は、外観、表面硬度、耐傷付性及び耐薬品性に優れる。かかる樹脂成形体からなる洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンター、キャビネット天板などの製品は優れた性能を持ち、浴室、洗面所、トイレ、台所で好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)ポリトリメチレンテレフタレートを含む(X)樹脂組成物からなる成形体の少なくとも一部に(B)硬化性樹脂組成物からなる塗膜が付着している、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項2】
(X)樹脂組成物が、(A1)ポリトリメチレンテレフタレートと(A2)熱可塑性樹脂と(A3)エポキシ樹脂と(A4)無機充填剤を含む樹脂組成物であって、(A1)成分100〜20重量部、(A2)成分0〜80重量部及び(A3)成分0〜20重量部の合計100重量部に対して、(A4)成分が25〜150重量部である、請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項3】
(A1)+(A2)の100重量部に対して、(A2)熱可塑性樹脂が1〜80重量部である、請求項2に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項4】
(A1)+(A2)+(A3)の100重量部に対して、(A3)エポキシ樹脂が0.05〜20重量部である、請求項2または3に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項5】
(B)成分の膜厚が1〜200μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項6】
ポリトリメチレンテレフタレート成形体の塗膜表面の鉛筆硬度がH以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項7】
(B)成分が紫外線硬化型アクリル樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項8】
(B)成分が2液系アクリルウレタン樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項9】
ポリトリメチレンテレフタレート成形体の塗膜表面のバーコル硬度が30以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項10】
成形体がサニタリー製品である、請求項1〜9のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。
【請求項11】
サニタリー製品が洗面カウンター、キッチンカウンター、トイレカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、キャビネット天板のいずれかである、請求項10に記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂成形体。

【公開番号】特開2006−290951(P2006−290951A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110585(P2005−110585)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】