説明

ポリヌクレオチドの経皮送達システム

本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用システム、或いはその使用方法に関する。本発明は、特に、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物と併用して、被験者の皮膚にマイクロチャネルを作製する装置を含むシステムであって、そのマイクロチャネルを通じてそのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが生物中に送達され得るシステムに関する。本発明のシステム及び方法は、それらのポリヌクレオチドによってコードされている目的タンパク質の発現を実現し、したがって、免疫化及び遺伝子療法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物と併用して、被験者の皮膚にマイクロチャネルを作製する装置を含むシステムであって、作製されたマイクロチャネルを通じてそのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが皮膚中に送達されるシステムに関する。本発明のシステム及び方法は、被験者の皮膚における目的タンパク質の発現を実現し、免疫化及び遺伝子療法において有用である。
【背景技術】
【0002】
患者の細胞中への生物活性のあるポリペプチドの直接導入は、有意な治療効果を有し得る。しかし、この手法にはいくつかの欠点もある。特に、ポリペプチドに対する生物学的応答を起こすのに十分な投与量での、潜在的な毒性のリスクが、主要な問題である。ポリペプチドの臨床的効果は、標的組織中に存在するプロテアーゼによる分解に通常起因する、比較的短いin vivo半減期によっても制限されている。さらに、ある組織中に注入されたポリペプチドは、通常、注入先の組織に対して有意な治療効果をもたらす前に血液循環に入る。
【0003】
これらの理由から、遺伝子療法は、癌、遺伝病、免疫疾患、心血管疾患、ウイルス感染を含めて様々な疾患又は臨床状態のための、また、臨床移植における、潜在的に最終的な治療として構想されている。
【0004】
欠陥遺伝子の修復を狙いとする臨床試験が、癌を治療するために現在提案されている。すなわち、肺癌並びに頭部及び頸部の癌において、例えば、p53の欠陥を修復するための臨床試験は、p53遺伝子のトランスダクション及び発現並びにアポトーシスの証拠を矛盾なく示した(Moon他、Clin.Cancer Res.9:5055〜5067頁)。同様に、アデノシンデアミナーゼ遺伝子で処置した重症複合型免疫不全症(SCID)患者は、防御免疫をもたらす有意な免疫再構築を示した(Engel他、(2003年)Curr.Opin.Mol.Ther.5:503〜507頁)。
【0005】
さらに、望ましくない遺伝子に対して標的化したアンチセンスオリゴヌクレオチド又は阻害RNA(例えば、siRNA、miRNA、RNAi)を用いてそれらの遺伝子をサイレンシングすることも、様々な疾患の治療に対して多くの希望を与える。例えば、多数の増殖因子の過剰発現は癌の発達と相関関係があることが発見された。このような増殖因子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドが、癌の増殖を改善するのに有用であることが示されている(Hirai他、(2003年)J.Gene Med.5:951〜957頁)。
【0006】
しかし、遺伝子療法をさらに改善できることは明らかである。有望な手段としては、改良した遺伝子送達システム、免疫原の設計及び抗血管新生遺伝子療法、干渉RNAの設計、並びに遺伝子療法の補助使用が挙げられる。
【0007】
Zewert他の米国特許第5,749,847号は、生物中にヌクレオチドを送達するための方法を開示する。この方法は、ヌクレオチドを含有する組成物を生物の表皮に適用するステップと、次いで組成物の少なくとも一部が表皮を通過するように表皮をエレクトロポレーションし、その結果、生物にヌクレオチドを送達するステップとを含む。
【0008】
Hofmannの米国特許第6,009,345号は、エレクトロポレーション及びイオン浸透法を組み合わせた、薬物又は遺伝子を経皮送達するための装置及び方法を提供する。エレクトロポレーションが角質層を通過する新しい経路を形成するのに対し、イオン浸透法は、これらの経路を通ってその下に存在する組織中へと薬物又は遺伝子を輸送するのに必要な推進力を与える。
【0009】
Eppsteinの米国特許第6,527,716号は、生物中に核酸を送達する方法であって、熱伝導成分の使用によって生体膜をアブレーションし、それによって膜の選択した領域に孔をあけるステップと、その選択された領域に電磁場を適用するステップと、次いで、電磁場が生物中への核酸の流入を活発に誘導する条件下で、その選択した領域を核酸と接触させるステップとを含む方法を開示する。すなわち、米国特許第6,527,716号による、生体膜のアブレーション及び微小孔の形成は、生体膜と接触して保持される熱成分を使用し、この熱成分は、エネルギーを吸収するとき、生体膜の熱アブレーションを引き起こし、核酸は電磁場により追いやられて生物中へ送達される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリヌクレオチドを送達するための推進力の供給を必要としない、ポリヌクレオチドを皮内又は経皮送達するための効率的な装置及び方法の必要性が未達成のまま残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用の有効なシステムに関する。本発明はさらに、皮膚の角質層をアブレーションし、前処理されたその皮膚にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを皮内又は経皮送達するためのシステム及び方法にも関する。これらのシステム及び方法は、それらのポリヌクレオチドによってコードされている目的タンパク質の発現を実現し、したがって、免疫化及び遺伝子療法において有用である。このシステム及び方法は、それらのポリヌクレオチドによってコードされている目的タンパク質の発現を実現し、したがって、免疫化及び遺伝子療法において非常に有用である。
【0012】
本発明の装置による被験者の皮膚のある領域におけるマイクロチャネルの作製、及びそれに続く、ポリヌクレオチドを含む組成物の処理された皮膚への適用が、そのポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの発現を実現することを以下に開示する。ポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達、及びそのポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの発現は、ポリヌクレオチドを適用する前だけでなく後にマイクロチャネルが作製される場合にも増強される。或いは、ポリヌクレオチドを含む組成物を被験者の皮膚のある領域に適用し、続いて被験者の皮膚の前記領域にマイクロチャネルを作製することによっても、ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの発現は実現される。
【0013】
さらに、本発明の装置によって作製されるマイクロチャネルの直径が数ミクロン〜数十ミクロンの範囲であることも開示される。この範囲の大きさにより、大型のポリヌクレオチドがマイクロチャネルを通して輸送され、生物中に送達されることが可能となる。被験者の皮膚に作製されるマイクロチャネルの深さは、特に、装置の電極の長さに応じて変わる。すなわち、長さ100ミクロンの電極によって作製されたマイクロチャネルは角質層を越えてその下にある真皮まで貫通するのに対し、長さ50ミクロンの電極によって作製されたマイクロチャネルは、もっぱら表皮中に存在する。本発明の装置を用いて皮膚中に作製したマイクロチャネルは、電磁場が全くない状況でポリヌクレオチドの促進された流入を実現するのに十分な大きさである。
【0014】
角質層中に作製されたマイクロチャネルを通して、ポリヌクレオチドをその下の組織中へ輸送すると、そのポリヌクレオチドにコードされている目的タンパク質が発現されることを以下に開示する。本発明の装置の利点は、親水性マイクロチャネルの形成にあり、この親水性マイクロチャネルが親水性ポリヌクレオチドの輸送を可能にすることが理解されるべきである。したがって、本発明は、ポリヌクレオチドの送達及び発現を促進するためにリポソームの使用を必要としない。本発明によれば、目的タンパク質の発現は、「裸の」ポリヌクレオチド(脂質と複合されていない、又はリポソームに入れて提供されない)を用いて成功裡に実現される。さらに、本発明は、脂質と複合されたポリヌクレオチドを用いても有用である。
【0015】
一態様によれば、本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用の方法であって、(a)被験者の皮膚のある領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップと、(b)有効成分として治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び製薬上許容される担体を含む薬剤組成物を、少なくとも1つのマイクロチャネルが存在するその領域に適用するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用の方法は、(a)被験者の皮膚のある領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップと、(b)有効成分として治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び製薬上許容される担体を含む薬剤組成物を、少なくとも1つのマイクロチャネルが存在するその領域に適用するステップと、(c)被験者の皮膚の前記領域に複数のマイクロチャネルを作製し、それによってオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するステップとを含む。
【0017】
本発明の原理によれば、被験者に投与されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、DNAのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、及びRNAのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなる群から選択される。追加の実施形態によれば、DNAはゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、及び合成DNAから選択され、RNAは、mRNA及び合成RNAから選択され、1本鎖又は2本鎖型である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、ポリペプチド、タンパク質、断片、類似体、又はその融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態によれば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来増殖因子、上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、コロニー刺激因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、骨形成タンパク質、エリスロポエチン、造血増殖因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、抗血管新生タンパク質、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、プラスミノーゲンアクチベーター、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、血管内皮成長因子、インターロイキン、ウイルス抗原、非ウイルス抗原、輸送タンパク質、及び抗体からなる群から選択される、治療用ポリペプチド又は免疫原性ポリペプチドをコードする。
【0019】
追加の実施形態によれば、被験者に投与されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは調節配列に作動可能に連結されており、その結果、前記ポリヌクレオチドは、前記被験者の細胞において発現されることができる。
【0020】
したがって、本発明の方法は、治療用タンパク質の発現が必要とされる補充療法において有利である。本発明の方法は、変異タンパク質又は他の有害なタンパク質の転写及び/又は翻訳が阻止されるアンチセンス療法などのRNAサイレンシングにおいても有利である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、変異タンパク質又は他の有害なタンパク質の転写及び/又は翻訳を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉オリゴヌクレオチド(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リピート配列に関連した(repeat associated)RNA(rasiRNA)、及び当技術分野で公知の他の任意のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。このアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも15個のヌクレオチドを含んでよい。或いは、このアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも21個のヌクレオチドを含んでもよい。追加の実施形態によれば、このオリゴヌクレオチドは2本鎖RNA(dsRNA)オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態によれば、このdsRNAオリゴヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドである。このsiRNAオリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも15個のヌクレオチドを含んでよい。或いは、このsiRNA配列の長さは、少なくとも21個のヌクレオチドを含んでもよい。miRMAは1本鎖RNAであり、ヘアピンループを形成する。他の実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、タンパク質の免疫原性を増大又は顕在化させることができる。
【0022】
追加の実施形態によれば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物は、脂質、ポリカチオン、及びヌクレアーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む。本発明の原理に従う薬剤組成物は、2種以上のオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はその組合せを含んでよい。
【0023】
本発明の方法はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内及び経皮送達を包含することが理解されるべきである。すなわち、本発明の原理に従って作製したマイクロチャネルに隣接した細胞に局所的にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを送達することができ、且つ/或いは血液循環にそれらを経皮的に送達することができる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、被験者の皮膚の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製することは、以下の特許、すなわち、参照によりその内容の全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,148,232号、同第6,597,946号、同第6,611,706号、同第6,711,435号、同第6,708,060号、及び同第6,615,079号で開示される装置を用いて角質層のアブレーションを誘導することによって実施される。しかし、本発明のいくつかの好ましい実施形態は、本明細書において上記に言及した装置による皮膚のアブレーションによって実現される皮内又は経皮送達に関するが、被験者の皮膚にマイクロチャネルを作製するために、当技術分野で公知の実質的に任意の方法を使用してよいことが強調される。
【0025】
追加の実施形態によれば、被験者の皮膚の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップは、
(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加え、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む、装置によって実施される。
【0026】
他の実施形態によれば、この装置の制御ユニットは、電流の流れ又はスパーク発生を制御し、それにより、1つ又は複数の形成されたマイクロチャネルの幅、深さ、及び形状を調節できるように、電極に送達される電気エネルギーの大きさ、頻度、及び/又は持続期間を制御するための回路を含む。好ましくは、電気エネルギーは、高周波である。
【0027】
追加の実施形態によれば、電極アレイを形成する、複数の電極を含む電極カートリッジは、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製するように適合される。好ましくは、電極カートリッジは着脱可能である。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、電極の直径は、30〜150ミクロンの範囲である。いくつかの例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の直径は、40〜100ミクロンの範囲である。他の実施形態によれば、電極の長さは、30〜500ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態によれば、電極の長さは、40〜150ミクロンの範囲である。ある例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の長さは、50ミクロンである。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの経皮送達用の方法であって、(a)本発明の原理に従って、有効成分として治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を、被験者の皮膚のある領域に適用するステップと、(b)本発明の原理に従って、被験者の皮膚のその領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製し、それによってオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するステップとを含む方法を提供する。
【0030】
さらなる態様によれば、本発明は、被験者の皮膚を通してのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するための装置、及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を含む、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用システムであって、その装置が、
(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加え、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む、システムを提供する。
【0031】
他の実施形態によれば、この装置の制御ユニットは、電流の流れ又はスパーク発生を制御し、それにより、1つ又は複数の形成されたマイクロチャネルの幅、深さ、及び形状を調節できるように、電極に送達される電気エネルギーの大きさ、頻度、及び/又は持続期間を制御するための回路を含む。好ましくは、電気エネルギーは、高周波である。
【0032】
追加の実施形態によれば、電極アレイを形成する、複数の電極を含む電極カートリッジは、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製するように適合される。好ましくは、電極カートリッジは着脱可能である。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、電極の直径は、30〜150ミクロンの範囲である。いくつかの例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の直径は、40〜100ミクロンの範囲である。他の実施形態によれば、電極の長さは、30〜500ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態によれば、電極の長さは、40〜150ミクロンの範囲である。ある例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の長さは、50ミクロンである。
【0034】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の図面、説明、実施例、及び特許請求の範囲との関連においてより良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、被験者の皮膚のある領域の角質層内に親水性経路を作製する装置、及び少なくとも1種のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を含む、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド用の経皮送達システムを提供する。オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは親水性分子であるため、本発明のシステムは、経皮的な遺伝子療法において特に有用である。
【0036】
ポリヌクレオチドの調製
本明細書では、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」とは、1本鎖又は2本鎖型の、切り離された断片の形態又はより大きな構築物の構成要素としての、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及びその改変型のポリマーを意味する。本発明で使用するポリヌクレオチドには、本発明に従って実施する療法の目的に対する必要に応じて、DNA又はRNAのセンス及びアンチセンスのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが含まれる。DNA又はRNA分子は、相補的DNA(cDNA)、ゲノムDNA、合成DNA、若しくはそのハイブリッド、又はmRNAなどのRNA分子でよい。したがって、本明細書では、「構築物」、「遺伝子構築物」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA分子とRNA分子の双方を意味することが意図されている。「オリゴヌクレオチド」という用語は、長さが50ヌクレオチド以下のポリマーを意味し、「ポリヌクレオチド」という用語は、50ヌクレオチドより長いポリマーを意味する。簡潔のために、ポリヌクレオチドという用語が本明細書を通じて使用され、オリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドの双方を含む。
【0037】
「単離されたポリヌクレオチド」とは、天然の状態においてその横に並んでいる配列から切り離されたポリヌクレオチド部分又は断片、例えば、通常はその断片に隣接している配列、例えば、その断片が天然に存在する場であるゲノムにおいてその断片に隣接した配列から切り離されたDNA断片を意味する。この用語は、通常は核酸、例えばRNA又はDNAに付随する他の成分、又は、通常は細胞中でそれに付随するタンパク質からほぼ精製されたポリヌクレオチドにも適用される。したがって、この用語は、例えば、ベクター、自律複製型のプラスミド若しくはウイルス、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれる組換型DNA、或いは、他の配列から独立した別個の分子(例えば、cDNA、又はPCR若しくは制限酵素消化によって作製されたゲノム若しくはcDNA断片として)として存在する組換型DNAを含む。この用語は、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部分である組換型DNAも含む。
【0038】
「コードする」という用語は、定義済みのヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又は定義済みのアミノ酸配列を有する生物学的プロセス中の他のポリマー及び高分子を合成するための鋳型としての機能を果たす、遺伝子、cDNA、又はmRNAなど、単離されたポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列に固有の特性、並びに、それらに起因する生物学的諸特性を意味する。すなわち、あるポリヌクレオチドに対応するmRNAの転写及び翻訳によって、細胞中であるタンパク質が産生される場合、そのポリヌクレオチドはそのタンパク質をコードしている。
【0039】
本発明で使用するためのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、当技術分野で周知のハイブリダイゼーション法を用いて得ることができる。DNA及びRNA配列は、当技術分野で周知の自動核酸合成装置を用いて合成してもよい。周知のポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の使用が、ポリヌクレオチド混合物を作製するのに特に好ましい。Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、第2章及び4章(Wiley Interscience、1989年)で記載されているプロトコールなど当技術分野で周知の手段によってゲノム核酸を作製してもよい。当技術分野で周知の手段によって、cDNAを合成することができる(例えば、Maniatis他、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Lab、New York、1982年を参照されたい)。
【0040】
遺伝コードの縮重、及びいわゆる「ゆらぎの法則」によって与えられる、コドンの第3位における従来の塩基対に対する例外の許容を考慮すると、複数の核酸が任意の所与のタンパク質をコードし得ることが、当業者には理解されよう。さらに、より多くの核酸又はより少ない核酸を含むポリヌクレオチドは、同一又は等価なタンパク質を生じることができる。したがって、本発明は、あるポリペプチド又はタンパク質をコードするすべてのポリヌクレオチドを包含するものとする。
【0041】
本発明で使用するための好ましいポリヌクレオチドは、治療用又は免疫原性のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はその断片、類似体、及び融合タンパク質をコードし得る。本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を含む。免疫原性のポリペプチドは、体液性応答及び/又は細胞性応答を引き起こすための抗原の役割を果たすことができる。これらのポリヌクレオチドは、抗体をコードすることもできる。なお、「抗体」という用語は、任意のクラスの完全な免疫グロブリン、キメラ抗体、2つ又は複数の抗原特異性を有するハイブリッド抗体、及びハイブリッド断片を含む断片を包含する。このような断片の複合体及びいわゆる抗原結合タンパク質(単鎖抗体)も、「抗体」の意味の範囲に含まれる。これらのコードされた抗体は、例えば、米国特許第4,699,880号に記載されているような抗イディオタイプ抗体(他の抗体に結合する抗体)でもよい。
【0042】
本発明による治療用ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質としては、それだけには限らないが、インスリン;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;インスリン様成長因子−1及びインスリン様成長因子−2;血小板由来増殖因子;上皮成長因子;線維芽細胞増殖因子;神経成長因子;形質転換成長因子;腫瘍壊死因子;カルシトニン;副甲状腺ホルモン;成長ホルモン;骨形成タンパク質;エリスロポエチン;造血増殖因子;黄体形成ホルモン;グルカゴン;グルカゴン様ペプチド−1;VIIIC因子、IX因子、組織因子、フォンウィルブランド因子などの凝固因子;タンパク質Cなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;ウロキナーゼやヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)を含む組織プラスミノーゲンアクチベーターなどのプラスミノーゲンアクチベーター;ボンベシン;トロンビン;エンケファリナーゼ;コラーゲン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;抗血管新生タンパク質(血小板因子4、IP−10など);ホルモン又は増殖因子の受容体;インテグリン;タンパク質A又はD;リウマチ因子;骨(bone)由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、又は6(NT3、NT−4、NT−5、又はNT−6)などの神経栄養因子;CD−3、CD−4、CD−8、CD−19などのCDタンパク質;骨誘導因子;免疫毒素;インターフェロン−α、−β、−γなどのインターフェロン;M−CSF、GM−CSF、G−CSFなどのコロニー刺激因子(CSF);IL−1〜IL−10などのインターロイキン(IL);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えば、AIDSエンベロープの一部分などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;抗体;並びに、その類似体及び断片が天然のポリペプチドの治療活性又は免疫原活性を保持する限りにおいて、その類似体又は断片が挙げられる。
【0043】
本明細書では、「類似体」という用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が別のアミノ酸によって置換されているペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を意味する。本明細書において先に挙げた天然のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ヌクレオチドに変異を含むように合成によって作製できることを理解されたい。このようなポリヌクレオチドは、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の類似体を生じ、それらペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質類似体が天然のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の治療活性又は免疫原活性を保持する限りにおいて、これらは本発明に包含される。
【0044】
本明細書では、「融合タンパク質」という用語は、少なくとも2種の共有結合したペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はその組合せを含むタンパク質を意味する。融合タンパク質は、例えば、免疫応答を引き出すことができるGM−CSFなど別のポリペプチドの免疫原性を高めることができるポリペプチドを含んでよい。或いは、又はさらに、融合タンパク質は、受容体に対するリガンド結合の特異性を高めるために、その受容体に特異的な抗体を含んでもよい。或いは、又はさらに、融合タンパク質は、その融合タンパク質の検出を改善し、又は発現を高めるために、タグを含んでもよい。
【0045】
本発明は、タンパク質の免疫原性を高めることができるCpGヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを包含する。
【0046】
しかし、目的の治療用及び/又は免疫原性ペプチドをコードする、任意のオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はその混合物を投与する際に使用するために、本発明の方法を適合し得ることが、当業者には理解されよう。したがって、本発明は、いずれかの特定のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを用いた用途に限定されない。
【0047】
本発明のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの生物学的利用能及びハイブリダイゼーションの特性を改善するために、修飾されたヌクレオシド間リン酸骨格を含んでよい。結合は、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリダート、ホスホルアミダート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオアート、又はその組合せからなる群から選択される。
【0048】
追加のヌクレアーゼ結合としては、メチルホスホトリエステルやエチルホスホトリエステルなどのアルキルホスホトリエステル、カルボキシメチルエステルなどのカルボナート、カルバマート、モルホリノカルバマート、3’−チオホルムアセタール、ジアルキル(C〜C)シリルやジフェニルシリルジフェニルシリルなどのシリル、スルファミン酸エステルなどが挙げられる。これらの結合及びそれらをオリゴヌクレオチド中に導入するための方法は、多くの参考文献で説明されており、例えば、一般に、Peyman及びUlmann、Chemical Reviews,90:1543〜584頁(1990年)に総説がある。
【0049】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、遺伝子構築物又は発現ベクターの一部分でもよい。「遺伝子構築物」又は「発現ベクター」という用語は、目的タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含み、被験者の細胞中で発現を指示することができるプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結した開始及び終結シグナルを含む、DNA又はRNA分子を意味する。すなわち、遺伝子構築物又は発現ベクターは、個体の細胞中に存在する場合にそのポリヌクレオチドが発現されるように、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した必要な調節エレメントを有する。
【0050】
DNA分子の遺伝子発現に必要な調節エレメントには、プロモーター、開始コドン、停止コドン、及びポリアデニル化シグナルが含まれる。さらに、エンハンサーも、しばしば遺伝子発現に必要とされる。ポリヌクレオチドが被験者の細胞中で発現され、それにより、目的タンパク質が作製され得るように、これらのエレメントが、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結していることが必要である。
【0051】
開始コドン及び停止コドンは、一般に、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物の一部分であるとみなされている。しかし、これらのエレメントが、そのポリヌクレオチドを投与される被験者において機能を果たすことが必要である。
【0052】
本発明を実施するのに有用なプロモーターの例としては、それだけには限らないが、シミアンウイルス(Simian Virus)40(SV40)由来のプロモーター、マウス乳癌ウイルス(Mouse Mammary Tumor Virus)(MMTV)プロモーター、HIV末端反復配列(LTR)プロモーターなどのヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)、モロニーウイルス(Moloney virus)、ALV、CMV最初期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(CMV)、エプスタインバーウイルス(Epstein Barr Virus)(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子に由来するプロモーター、及びインボルクリン、ケラチン5、及びケラチン14などの組織特異的プロモーターが挙げられる。遺伝子構築物を構築する際にプロモーターを使用するための適切なプロトコールは、当技術分野で周知であり(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、1章、Wiley Interscience、1989年を参照されたい)、本明細書において以下に例示する。
【0053】
本発明を実施するのに有用なポリアデニル化シグナルの例としては、それだけには限らないが、SV40ポリアデニル化シグナル及びLTRポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0054】
DNA発現に必要とされる調節エレメントの他に、他のエレメントを遺伝子構築物中に含めてもよい。このような追加エレメントにはエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、それだけには限らないが、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、並びにCMV、RSV、及びEBVに由来するものなどのウイルスエンハンサーを含む群から選択してよい。
【0055】
遺伝子構築物は、染色体外でその構築物を維持し、細胞中でその構築物の多数のコピーを作製するために、哺乳動物の複製起点とともに提供することができる。例えば、Invitrogen(San Diego、カリフォルニア州)社製のプラスミドpCEP4及びpREP4は、組み込まれずに高コピー数のエピソーム複製をもたらす、エプスタインバーウイルスの複製起点及び核抗原EBNA−1コード領域を有する。他のプラスミドも、遺伝子構築物がポリヌクレオチドにコードされる目的タンパク質を発現する限りにおいて、使用してもよい。或いは、当業者に公知の発現ベクターを、本発明を実施するのに使用してもよい。発現ベクターの例としては、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクター(Berns他、1995年、Ann.N.Y.Acad.Sci.772:95〜104頁)、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター(Fink他、1996年、Ann.Rev.Neurosci.19:265〜287頁)、パッケージングされたアンプリコン(Federoff他、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:1636〜1640頁)、パピローマウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、SV40ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどが挙げられる。
【0056】
機能的な遺伝子構築物となるためには、これらの調節エレメントは、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結していなければならない。したがって、開始コドン及び終止コドンが、目的タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドとインフレームであることが必要である。
【0057】
1つ又は複数の目的のポリヌクレオチド配列を、例えば、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子とともに遺伝子構築物中に挿入することにより、その遺伝子構築物はこの時点で標的特異性となる。好ましい標的化は、その遺伝子構築物を標的とする抗体を用いることによって達成される。当業者なら、過度に実験をすることなく、遺伝子構築物中に挿入されて目的のポリヌクレオチドを含むその遺伝子構築物の標的特異的送達を可能にする特定のポリヌクレオチドについて知っており、又は容易に確認できるであろう。
【0058】
初期の研究は、ポリリジンやDEAF−デキストランなどのポリカチオンが、タンパク質並びに1本鎖及び2本鎖ポリヌクレオチドの動物細胞中への取り込みを促進することを示した。例えば、ポリリジンベースのベクターが、遺伝子導入のために大規模に検査された。したがって、本発明は、合成的なDNA送達システムも包含する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の皮膚へのポリヌクレオチドの導入は、「裸の」ポリヌクレオチド配列によってではなく、脂質複合によって達成される。DNA送達を促進するのに使用される脂質は当技術分野で周知であり、例えば、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジミリストイル−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンなどのホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンから選択される。例示的な実施形態では、この脂質は、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパンである。したがって、本発明は、1種又は複数の脂質を含むポリヌクレオチド組成物を包含する。本発明によれば、これらの脂質は、非共有結合的に結合された巨視的構造を有する様々な組成物、例えば、リポソーム、多重層の小胞、単層の小胞、ミセル、及び単一の薄膜を作製するために、いくつかの方法でポリヌクレオチドと混合又は組み合わせてよい。ポリヌクレオチド及び脂質は、様々なモル比で混合することができる。ポリヌクレオチド、脂質、及びポリカチオンの複合体形成のためのプロトコールを本明細書において以下に例示する(実施例7を参照されたい)。しかし、処理された被験者の細胞内でポリヌクレオチドが発現されることができる限りにおいて、当技術分野で公知の他の添加物を本発明の薬剤組成物に加えてもよい。
【0060】
調節配列に作動可能に連結した目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物の導入は、処理された被験者の細胞内での目的タンパク質の発現を引き起こすことを理解されたい。これは、目的タンパク質をコードする遺伝子を被験者の標的細胞中に導入し、それによって、このタンパク質の欠損に関連する疾患の発達を未然に防ぐのに必要なタンパク質の産生をもたらす補充療法で使用することができる。これは、被験者の標的細胞内で変異遺伝子を発現させ、野生型遺伝子をその標的細胞中に導入し、それによって、その変異タンパク質に関連する疾患の発達を未然に防ぐのに必要な野生型タンパク質の産生をもたらす補充療法でも使用することができる。
【0061】
本発明の別の具体的な利点は、アンチセンス療法での使用と考えられる。すなわち、ある特定の疾患が特定の変異したDNA配列の発現に関連している場合、転写又は翻訳レベルでその変異遺伝子の特異的発現を阻害するポリヌクレオチドを使用することができる。この手法は、例えば、アンチセンス核酸でmRNAをマスキングすることによって又はリボザイムでmRNAを切断することによって、特定の変異mRNAの転写又は翻訳を阻止するために、アンチセンス核酸及び/又はリボザイムを利用する。
【0062】
したがって、アンチセンス核酸とは、ある特定のmRNA分子の少なくとも一部分に相補的なDNA又はRNA分子である(Weintraub、ScientificAmerican,262:40頁、1990年)。したがって、細胞中で、アンチセンス核酸は、対応するmRNAとハイブリダイズし、それにより2本鎖分子を形成する。細胞は2本鎖のmRNAを翻訳しないと考えられるため、これらのアンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を阻害する。これまで、それだけには限らないが、p53、ras、fos、及びmycを含めて、いくつかの遺伝子及び癌遺伝子が、アンチセンス核酸による抑制又は下向き調節のために標的とされてきた。
【0063】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに類似した方式で他の1本鎖RNAを特異的に切断する能力を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするポリヌクレオチドの改変により、RNA分子における変異した癌原遺伝子又は腫瘍抑制遺伝子の形成に関連する特定のポリヌクレオチドを認識し、それを切断する分子を設計することが可能である。この手法の主要な利点は、リボザイムが配列特異的であるため、特定の変異配列を有する標的mRNAのみが不活性化されることである。
【0064】
RNAサイレンシングは広く研究されている。2本鎖RNA(dsRNA)、より具体的には低分子干渉RNA(siRNA)が、内在性遺伝子の高度に選択的で配列特異的な阻害物質であることが判明した。したがって、本発明は、2本鎖RNA(dsRNA)、より具体的には低分子干渉RNA(siRNA)を包含する。いくつかの実施形態によれば、siRNA配列は、少なくとも15個のヌクレオチドを含む。他の実施形態によれば、siRNA配列は、少なくとも21個のヌクレオチドを含む。本発明はさらに、変異タンパク質の転写及び/又は翻訳を阻害する、マイクロRNA(miRNA)、リピート配列に関連したRNA(rasiRNA)、及び他の任意の公知のオリゴヌクレオチドも包含する。
【0065】
薬剤組成物
本発明の薬剤組成物は、治療有効量の少なくとも1種の本発明のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む。
【0066】
薬剤組成物は、製薬上許容される担体又は希釈剤もさらに含む。「製薬上許容される」という用語は、連邦又は州政府の規制機関によって承認されていること、或いは、動物、特にヒトで使用するために米国薬局方又は他の一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療物質がいっしょに投与される希釈剤、補助剤、又はビヒクルを意味する。担体とは、薬剤組成物に添加された場合に組成物に適度な硬度又は形を与える、ほぼ不活性な物質である。
【0067】
本明細書では、「製薬上許容される担体」は、水系若しくは非水系の溶液、懸濁液、又は乳濁液でよい。水性担体の例としては、水、生理食塩水及び緩衝媒体、アルコール溶液/水溶液、乳濁液、又は懸濁液が挙げられる。薬剤組成物は、表面への吸着を防止するためのアルブミンなどの添加物、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、安定化剤(例えば、グルコース、ガラクトース、及びスクロースなどの単糖類及び二糖類)、並びに保存剤(例えば、チメロサール、ベンジンアルコール、パラベン、m−クレゾール)を含んでもよい。ポリヌクレオチドの薬剤として許容される塩も、本発明に含まれる。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などが含まれる。製薬上許容される非毒性有機塩基から誘導される塩には、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、塩基性アミノ酸などが含まれる。
【0068】
薬剤組成物は、親水性ポリマーも含んでよい。親水性ポリマーは、本発明のポリヌクレオチドの半減期を延長し、その結果、それらの生物学的利用能を高めることができる。親水性ポリマーの例としては、それだけには限らないが、セルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖類、キチン、キトサン、ジアシル化キチン、アカシアガム、アガロース、カラゲナン、ゼラチン、トラガカントゴム、アルギナート、カラヤガム、ビーガム、ペクチン、ヒアルロン酸、マルトデキストリン、ポリビニルピロリドン、ポリグリコール酸、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアクリラート、及びメタクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0069】
薬剤組成物は、本発明のポリヌクレオチドがヌクレアーゼによって分解されるのを防止するために、少なくとも1種のヌクレアーゼ阻害剤、例えばアウリントリカルボン酸(ATA)をさらに含んでもよい。
【0070】
薬剤組成物は、少なくとも1種のタンパク質又はポリペプチドも含んでよい。例えば、大型T抗原核移行シグナルは、DNAに結合し、細胞の核中へのその輸送を促進するタンパク質である。したがって、本発明によるポリヌクレオチドとDNA輸送を促進することが知られているタンパク質との組合せは本発明に包含される。
【0071】
薬剤組成物は、それだけには限らないが、ポリカチオン及び脂質を含めて、他の成分をさらに含んでもよい。ポリカチオンの例としては、ポリリジン、DEAE−デキストラン、硫酸プロタミンが挙げられる。脂質の例としては、ホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルコリンなどのリン脂質が挙げられる。
【0072】
治療有効量の本発明によるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物の製剤形態は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの安定性の改善を提供すると同時にその生物学的利用能を保持又は改善するように決定される。
【0073】
薬剤組成物は、水性液剤として調製してもよい。或いは、薬剤組成物は、乾燥製剤又は凍結乾燥製剤として調製してもよい。或いは又はさらに、組成物は、当技術分野において公知の医薬用パッチとして調製してもよい(例えば、その内容が、あたかも本明細書で十分に説明されるかのように参照により組み込まれるPCT/IL03/00903及びPCT/IL03100902を参照されたい)。薬剤組成物は、フィルム剤の形態で調製しても、例えば、「カーボポル(Carbopol)(商標)940」及びトリエタノールアミンをゲル化剤として使用することによってゲル剤の形態で調製してもよく、或いは、薬剤組成物は、本発明のポリヌクレオチドの経皮送達を可能にする他の任意の適切な形態で調製してもよい。
【0074】
本発明の方法を用いて被験者に投与する各ポリヌクレオチドの投与量は、所望の応答及び使用するポリヌクレオチドに応じて変動すると考えられる。
【0075】
ポリヌクレオチドの投与量は、治療効果のある発現レベルを実現するように変更してよい。DNA又はRNAの存在、及び発現されたタンパク質の量を確認する手段は、当業者には周知である。このような手段のうちのいくつかを本明細書で以下に提供する実施例において例示する。一般に、それらには、当技術分野で周知の技術に従って実施されるイムノアッセイ(酵素結合免疫吸着測定法など)、PCR法、及び免疫組織学的解析が含まれる。投与されるポリヌクレオチドの投与量は、これらの検出及び定量手段によって与えられる情報に基づいて、また、臨床分野の熟練した医師には公知のin vivoの臨床徴候に基づいて、所望の発現レベルを実現するように調整することができる。
【0076】
ポリヌクレオチドの経皮送達を促進するための装置
本発明のシステムは、ポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するための装置を含む。本発明の原理によれば、この装置は、親水性薬剤組成物が被験者の皮膚を通って身体中へと効率的に送達される通り道となる少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するために使用される。
【0077】
本特許出願の文脈で使用される「マイクロチャネル」という用語は、通常、皮膚の表面から角質層の全て又はかなりの部分を通して伸び、分子がそれを通って拡散することができる経路を意味する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、以下の特許、すなわち、その内容があたかも本明細書で十分に説明されるかのように参照により組み込まれる米国特許第6,148,232号、同第6,597,946号、同第6,611,706号、同第6,711,435号、同第6,708,060号、及び同第6,615,079号で開示されている装置を含めて、角質層のアブレーションを引き起こすことによってマイクロチャネルを作製するための技術を含む。しかし、本発明のいくつかの好ましい実施形態は、前述の装置による皮膚のアブレーションによって実現される経皮送達に関するが、被験者の皮膚にマイクロチャネルを作製するための当技術分野で公知の実質的に任意の方法を使用してよいことが強調される。
【0079】
ある実施形態によれば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するための装置は、(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加えて、通常、電流又は1つ若しくは複数のスパークを生じ、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む。
【0080】
本発明の原理によれば、電極カートリッジは、複数の電極を含み、それによって電極アレイを形成し、このアレイは、電気エネルギーを適用すると、被験者の皮膚内に少なくとも1つのマイクロチャネル、好ましくは複数のマイクロチャネルを作製する。「複数」の電極という用語は、本明細書において2つ以上の電極を意味することを理解されたい。電極カートリッジを搭載した主要ユニットは、本明細書では「ViaDerm(商標)」とも呼ばれる。しかし、一般に、角質層中に作製されたマイクロチャネルの全領域は、電極アレイに覆われる全領域と比較して小さい。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、電極アレイ内の電極の直径は、30〜150ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態によれば、直径は、40〜100ミクロンの範囲である。いくつかの追加の実施形態によれば、電極アレイ内の電極の長さは、30〜500ミクロンの範囲である。他の実施形態によれば、電極の長さは、40〜150ミクロンの範囲である。ある例示的な実施形態では、電極アレイ内の電極の長さは、100ミクロンである。別の例示的な実施形態では、電極アレイ内の電極の長さは、50ミクロンである。
【0082】
他の実施形態によれば、この装置の制御ユニットは、電流の流れ又はスパーク発生を制御し、それにより、1つ又は複数の形成されたマイクロチャネルの幅、深さ、及び形状を調節できるように、電極に送達される電気エネルギーの大きさ、頻度、及び/又は持続期間を制御するための回路を含む。好ましくは、電極に送達される電気エネルギーは、高周波である。
【0083】
現在好ましい実施形態によれば、複数の電極を含む電極カートリッジは、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製する。好ましくは、電極カートリッジは着脱可能である。より好ましくは、電極カートリッジは使用した後に廃棄され、したがって、主要ユニットに簡単に取り付け、その後にその主要ユニットから取り外しできるように設計される。
【0084】
別の実施形態によれば、本発明の装置を被験者の皮膚上に置いている間にかかる圧力が、電極に送達される電気エネルギーを活性化する。このような作用様式により、電極の活性化が皮膚と密接しているときにのみ起こり、マイクロチャネルの望ましい形成を可能にすることが確実となる。
【0085】
本発明によれば、マイクロチャネルは、細胞を加熱することによって角質層をアブレーションするために、皮膚に電流を印加することによって形成することもできる。スパーク発生、スパーク発生の停止、又は特定の電流レベルは、所望の深さが達成され、電流印加を終結すべきであることを示唆するフィードバックの一形態として使用してもよい。これらの応用では、電極は、好ましくは、角質層中での所望の深さであるがそれを超える深さではないマイクロチャネルの形成を容易にするのに役立つカートリッジの中で造形され、且つ、/又はカートリッジ中に支持される。或いは、スパークを発生せずに角質層中にマイクロチャネルを形成させるように、電流を設定することもできる。得られるマイクロチャネルの形状及びサイズは均一である。
【0086】
したがって、本発明によれば、電極は、皮膚と接触して、又は皮膚の近傍、すなわち皮膚から最大約500ミクロンの距離の範囲に維持してよい。別の実施形態によれば、角質層のアブレーションは、約10kHz〜4000kHz、好ましくは約10kHz〜500kHz、より好ましくは100kHzの周波数を有する電流を印加することによって実施される。
【0087】
カートリッジの汚染の機会を最小化するために、カートリッジの取り付け及び取り外しは、使用者が物理的にカートリッジを触らないようにして実施される。好ましくは、カートリッジは滅菌カートリッジホルダー中に密封されており、このホルダーは使用直前に開封され、その結果、主要ユニットがカートリッジの上面と接触するようになって、カートリッジを主要ユニットに固定する仕組みを作動させる。使用者がカートリッジに触ることを必要としない、カートリッジをゆるめ取り出す容易な手段も提供される。
【0088】
ポリヌクレオチドの経皮送達用の方法
本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの経皮送達用の方法であって、被験者の皮膚のある領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップと、治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を、少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚のその領域に適用するステップとを含む方法を提供する。
【0089】
本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの経皮送達用の方法であって、(a)被験者の皮膚のある領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップと、(b)治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を、少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚のその領域に適用するステップと、(c)被験者の皮膚の前記領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製し、それによってポリヌクレオチドの送達を促進するステップとを含む方法もさらに提供する。
【0090】
本発明は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの経皮送達用の方法であって、(a)被験者の皮膚のある領域に治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を適用するステップと、(b)被験者の皮膚のその領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製し、それによってポリヌクレオチドの送達を促進するステップとを含む方法もさらに提供する。
【0091】
本発明の原理によれば、被験者の皮膚のある領域におけるマイクロチャネルの作製及びそれに続くポリヌクレオチド組成物の適用が、それらのマイクロチャネルの周囲又は真下にある細胞又は組織中へのポリペプチドの皮内送達、及びこれらの細胞又は組織における、そのポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの発現を実現することを理解すべきである。さらに、ポリヌクレオチド組成物を適用する前だけでなく後にもマイクロチャネルを作製することが特に有利である。これは、このような条件下でのポリペプチド発現が、ポリヌクレオチド組成物の適用前にのみマイクロチャネルを作製する条件下で実現されるレベルより高いためである。或いは、ポリヌクレオチドを含む組成物を被験者の皮膚のある領域に適用し、続いて皮膚のその領域にマイクロチャネルを作製することも有利である。ポリヌクレオチドを含む組成物の適用は、マイクロチャネルを作製した直後に、又はその後に、例えば、約4〜8時間のラグタイムをおいて行うことができることを理解されたい。さらに、この薬剤組成物は、マイクロチャネルが開いたままである限りにおいて、より長いラグタイムの後でも適用することができる。
【0092】
「治療有効量」という用語は、局所的に適用されたときに、所期の使用期間を通じて、所望の効果をもたらすのに十分なポリヌクレオチドの量を意味する。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリヌクレオチドの経皮送達方法は、そのポリヌクレオチドにコードされる目的タンパク質を被験者の細胞内で発現させ、それによって目的タンパク質を産生しなければならない、補充療法に非常に有用である。
【0094】
本発明の追加の実施形態によれば、ポリヌクレオチドの経皮送達方法は、変異遺伝子が標的細胞内で発現され、その変異遺伝子の発現が疾患を引き起こす場合におけるアンチセンス療法において極めて有用である。すなわち、アンチセンスオリゴヌクレオチドの導入は、変異遺伝子の発現を抑制する。さらに、本発明の方法は、配列特異的なmRNA分解を媒介することが知られている、低分子干渉RNA(siRNA)の経皮送達にも有用である。
【0095】
したがって、本発明の方法は、ポリヌクレオチドの皮内及び経皮送達を包含する。皮内送達が、特にマイクロチャネルに隣接した部位、より具体的には表皮及び真皮内の部位へのポリヌクレオチドの局所的送達を実現するのに対し、経皮送達は、血液循環へのポリヌクレオチド送達を実現する。
【0096】
本発明で開示する方法は、例えば、化学療法、放射線療法、及び外科手術など従来の療法との併用療法において使用できることを理解されたい。
【0097】
以上、本発明を一般的に説明したが、本発明は以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。実施例は、例示のために提供され、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
ヒト全層皮膚における高周波のマイクロチャネルの形態
材料及び方法
組織
ヒト胸部の全層皮膚を、地域の倫理委員会の承認及び患者のインフォームドコンセントを得て、乳房切除術又は乳房縮小術を行って得た。余分な脂肪組織はすべて、鈍的切開によって除去した。MEM(EAGLES)25mM HEPES増殖培地(カタログ番号32360〜026、Invitrogen社、Paisley、イギリス)中に組織を移し、切除後3時間以内に使用した。
【0099】
ViaDermのパラメータ
本実験で使用した「ViaDerm(商標)」装置は、米国特許第6,148,232号及びSintov,I他(J.Control.Release89:311〜320頁、2003年)で開示されているものである。ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;経表皮水分喪失量(TEWL) 対照:8.8g/hm;適用後のTEWL:11.4g/hm
【0100】
電子顕微鏡検査
サンプルを、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶かした2.5%グルタルアルデヒドを用いて室温で1時間固定し、同じ緩衝液中で10分間(5分×2回)洗浄した。これらのサンプルを、4℃で1時間、0.1Mカコジル酸緩衝液に溶かした1%四酸化オスミウムで後固定し、次いで、次のようにエタノール濃度の段階的な系列を用いて脱水した:70%を4℃で10分間;100%を4℃で10分間;100%を4℃で10分間;100%を4℃で10分間。次いで、これらのサンプルを臨界点乾燥機(Samdri780、Maryland、アメリカ)の中に移し、二酸化炭素を用いて12時間乾燥させた。これらのサンプルを金属製サンプル台上に載せ、Edwardスパッターコーターを用いて純金の薄層で被覆した後、PhilipsXL−20走査型電子顕微鏡で検査をした。
【0101】
結果
図1は、ViaDermの適用後に胸部全層皮膚に作製されたチャネルの構造形態を示す。これらのチャネルは、30〜50μmの範囲のチャネルの幅を有する、組織中への深い陥入としてはっきりと現れている。
【0102】
(実施例2)
加熱分離した表皮膜におけるマイクロチャネルの形態
加熱分離したヒト表皮膜における高周波(RF)マイクロチャネルの分布パターン及び大きさを測定した。
【0103】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0104】
ViaDermのパラメータ
ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;経表皮水分喪失量(TEWL) 対照:6.2g/hm;適用後のTEWL 20.6g/hm
【0105】
皮膚の加熱分離
ViaDerm装置の適用に続いて、皮膚の上層(角質層及び分裂可能な表皮)を以下の技術を用いて取り出した。ガラス製容器に入れた蒸留水を60℃に温め、皮膚サンプルを加熱分離に適したサイズに切断した。ピンセットを用いて、その組織を予熱しておいた容器に入れ、55秒後にピンセットでその組織を取り出し、乾燥させた。メスを用いて角質層及び表皮層を通る小さな切り目を入れた。次いで、その組織の真皮をしっかりつかんだ。切り目の部分から、表皮及び角質層膜を真皮層からゆっくりと剥ぎ取った。その膜「皮膚弁」が十分に大きくなった後、膜の残りの部分を、手袋をはめた手で取り除いた。単離された膜を、室温のもと、蒸留水を入れた容器中に入れた。容器中では、膜は広がり水の表面上に浮かび、角質層が上側を向いていた。1枚の金属薄片をその膜の下に入れ、その膜を平らな形態で溶液から取り出した。
【0106】
光学顕微鏡検査
表皮膜を顕微鏡スライドガラス上に載せ、明視野照明下でOlympus IX50顕微鏡を用いて観察した。
【0107】
電子顕微鏡検査
乾燥させた加熱分離膜を金属製サンプル台上に載せ、Edwardスパッターコーターを用いて純金の薄層で被覆した後、PhilipsXL−20走査型電子顕微鏡で検査をした。
【0108】
結果
図2及び図3は、RFマイクロチャネルが、角質層及び分裂可能な表皮を含む加熱分離した表皮膜を完全又は部分的に貫通することを示す。おそらくは分離された膜の厚さのばらつきが原因となって、マイクロチャネルの深さは多様であるが、約50μmのマイクロチャネルの直径は再現性があり、且つ全層皮膚で観察されたマイクロチャネルの大きさ(図1)と一致していた。
【0109】
(実施例3)
加熱分離した表皮膜中のマイクロチャネルを通しての蛍光性ナノ粒子の拡散
ViaDermで処理した、加熱分離した表皮膜を通しての蛍光性ナノ粒子の拡散を実施した。これらの蛍光性ナノ粒子は、非ウイルス性遺伝子療法ベクターと類似した粒子直径を有する。さらに、拡散特性が、使用するパラメータ設定に依存するかどうか、及び皮膚を新鮮な状態で分析すべきか凍結保存の後に分析すべきかを判定することも目的とした。
【0110】
材料及び方法
組織
ヒトの新鮮な全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。さらに、同様に獲得し移した後に−20℃で6週間凍結させておいた皮膚サンプルを室温で解凍した。
【0111】
ViaDermのパラメータ
サンプル1:(新鮮組織)ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.7g/hm;適用後のTEWL 28.2g/hm サンプル2:(新鮮組織)ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:3;TEWL 対照:6.2g/hm;適用後のTEWL 19.2g/hm サンプル3:(凍結組織)ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.5g/hm;適用後のTEWL 9.3g/hm
【0112】
加熱分離
実施例2で説明したようにして加熱分離した表皮膜を調製した。
【0113】
拡散アッセイ
非処理のヒト表皮膜及びViaDermで処理したヒト表皮膜をタイプ1ろ紙(Whatman PLC、Maidstone、ケント州)上に載せ、静置型のフランツ型ガラス拡散セルのドナー区画とレセプター区画の間に置いた。これらの区画をシリコングリースによってシールし、金属クリップで固定してそれらのチャンバーをしっかりと密閉した。正確に較正された体積及び拡散領域を有する各セルのレセプター相をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS;pH7.4;Sigma Chemical社、Poole、イギリス)で満たし、完全な混合を確実にするためにマグネチック回転子を加えた。レセプターのアームにガラス製キャップで蓋をし、サンプルの蒸発を防ぐためにドナーチャンバーをカバーガラスで塞いだ。これらのセルを37℃の一定温度で維持した湯浴中で、マルチポイントマグネチックスターラー上に置き、連続的に攪拌し、32℃の皮膚表面温度を実現した。ドナーチャンバーに試験用調製物を添加する前に、これらのセルを少なくとも30分間平衡化し、表皮膜の完全性を視覚的に検査した。
【0114】
蛍光(FITC)標識したポリスチレンナノスフェア(L−1280;Sigma Chemical社、Poole、イギリス)を拡散セルのドナーチャンバーに添加した。セルのうちの3つにおいて、ViaDermの2回適用により表皮膜を前処理しておいた。ろ紙のみを用いて、ポジティブコントロールセルを調製した。未処理の表皮膜を含む拡散セルを用いてネガティブコントロールを調製した。
【0115】
蛍光性ナノスフェアの懸濁原液、濃度4.5710/μlの10μl/ml希釈液の体積500μlを表皮膜の表面に添加した。16時間後、蛍光分光光度計(BMG Fluostar、Aylesbury、イギリス)により、それぞれ485nm及び520nmに設定した励起波長及び発光波長を用いて分析するために、96ウェルプレートにドナー相を移した。蛍光性ナノ粒子懸濁液の標準的希釈液を用いて検量線を作製した(図4)。
【0116】
透過型電子顕微鏡検査(TEM)
脂質:ポリカチオン:pDNA(LPD)複合体又は蛍光性ナノ粒子の懸濁液15μlを100メッシュのニッケルグリッド上に載せた。3分後、余分な溶液をろ紙で吸い取り、新しくろ過し、30秒間遠心分離した2%酢酸ウラニル水溶液で置き換えた。蒸留水で2回グリッドを洗浄し、乾燥させ、Philips208透過型電子顕微鏡を用いて画像化した。
【0117】
結果
図5は、球形の蛍光性ナノ粒子をLPD非ウイルス性遺伝子送達ベクターの拡散モデルとして使用することの理論的根拠を例示する。図6は、ViaDermで処理した表皮膜を通過する蛍光性ナノ粒子の拡散を示す。図6で示されるように、未処理の表皮膜サンプル(対照)は、100nmナノ粒子に対する極めて高いバリヤー機能を示し、16時間のインキュベーション後、添加されたナノ粒子の94.3%がドナー相でなお回収可能であった。ViaDermで処理した表皮膜のすべてが、ナノ粒子に対して高く且つ再現性のある透過性を示し、添加されたナノ粒子の28.5〜30.4%が、RFマイクロチャネルを介してドナー区画を出ていった。このナノ粒子の拡散増大は、特にポジティブコントロール(ろ紙)と比較した場合に注目に値する。ろ紙のサンプルでは、蛍光性ナノ粒子の44.8%がドナー区画になお存在しており、下にあるフィルター担体のバリヤー特性を示した。皮膚サンプルの経表皮水分喪失量(TEWL)のデータは、興味深いものであった。拡散データは、新鮮な組織と凍結組織の双方の皮膚の外層における同程度のレベルの透過を示しているにもかかわらず、新鮮な組織では、ViaDermで処理した場合にTEWLが6.7から28.2g/hmに増加した一方で、先に凍結した組織では、同じパラメータ設定において6.5から9.3g/hmと増加の程度が小さかった。ViaDerm適用後のこのTEWLの増加量の減少は、他の凍結サンプルでも観察されたため、すべての後続の実験では新しく得た未凍結の組織を使用することに決めた。
【0118】
(実施例4)
マイクロチャネルの表面の(en face)可視化
ヒト全層皮膚におけるRFマイクロチャネルの拡散パターンを検出した。
【0119】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0120】
ViaDermパラメータ
図7B:ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:8.1g/hm;適用後のTEWL 18.0g/hm 図7C:ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:9.5g/hm;適用後のTEWL 22.0g/hm 図8:ViaDermのパラメータ設定値:適用1回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.8g/hm;適用後のTEWL 7.6g/hm
【0121】
サンプル調製
37℃で24時間、媒体(MEM(EAGLES)25mM HEPES)中で皮膚をインキュベートした。PBS中で2回洗浄した後、氷上で2時間、0.5%グルタルアルデヒド中で皮膚を固定した。メチレンブルー染色をするために、ViaDermで処理した皮膚の表面に1.5%メチレンブルー溶液5滴を5分間適用した。続いて、過剰な染色をPBSでゆすぎ、組織表面に70%エタノールを塗布した。
【0122】
実体顕微鏡検査
2.0×アタッチメント及びScholt KL1500電子光源を装備したZeiss Stemi 2000C実体顕微鏡を用いて組織を可視化した。
【0123】
光学顕微鏡
Olympus BX50顕微鏡及びScholt KL1500電子光源を用いてメチレンブルーで染色した組織を可視化した。
【0124】
結果
図7B及び図7Cは、ViaDermで処理した皮膚におけるマイクロチャネルの分布を明確に示す。図7で観察されるチャネルの茶色の変色は、チャネル周辺の組織の特性の変化を示唆する。これらのチャネルは、溶液中のメチレンブルーを取り込み保持するチャネルの能力を利用して、可視化することもできる(図8)。
【0125】
(実施例5)
切片化した組織の組織構造
次に、ViaDermで処理したヒト皮膚中に作製されたマイクロチャネルの深さ及び構造形態を試験した。
【0126】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0127】
サンプル調製
ViaDermで処理した皮膚をPBSで洗浄し、氷上で4時間、0.5%グルタルアルデヒド中で固定した。固定した組織をCardice上でOCT包埋剤(RA Lamb社、Eastbourne、イギリス)中に包埋し、Leica CM3050S Cryostatを用いて切片化した。
【0128】
ViaDermパラメータ
パラメータ3:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:3;TEWL 対照:4.0g/hm;適用後のTEWL 30.3g/hm
パラメータ5:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.7g/hm;適用後のTEWL 28.2g/hm
パラメータ6:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:1;TEWL 対照:5.5g/hm;適用後のTEWL 24.8g/hm
パラメータ7:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:2;TEWL 対照:5.2g/hm;適用後のTEWL 28.7g/hm
パラメータ10:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.5g/hm;適用後のTEWL 32.6g/hm
【0129】
組織染色
a)エオジン:接着剤を塗布した「Histobond(登録商標)」顕微鏡スライド(RA Lamb社)上に組織切片を採取し、1%エオジン水溶液(BDH Laboratory Supplies社、Dorset、イギリス)中に5秒浸し、水でゆすぎ、乾燥させた。
b)ヘマトキシリンエオジン染色(H&E):「Histobond(登録商標)」顕微鏡スライド上に組織切片を採取し、ハリスヘマトキシリン溶液(BDH Laboratory Supplies社)中に5分浸し、水でゆすぎ、乾燥させた。上述したようにして、エオジンによる後染色を実施した。
c)トルイジン(Toludine)ブルー:「Histobond(登録商標)」顕微鏡スライド上に組織切片を採取し、1%トルイジンブルー水溶液(TAAB Laboratories Equipment社、Berkshire、イギリス)中に5分浸し、水でゆすぎ、乾燥させた。
【0130】
結果
図9及び図10は、様々なパラメータ設定でViaDermを適用した後にヒト胸部皮膚中に作製されるRFマイクロチャネルの大きさを示す。提示された顕微鏡写真は、観察されたチャネルの全集団の代表である。たいていの場合は、チャネルは、長さが約100μmであり、最も幅の広い径は30〜50μmである。これらのチャネルは、ヒト表皮を通過してその下にある真皮まで貫通している。
【0131】
(実施例6)
マイクロチャネル中への蛍光性ナノ粒子の共局在化
RFマイクロチャネルが100nmの蛍光性ナノ粒子の浸透及び保持を可能にするのに十分なサイズであるかどうかを評価するために、RFマイクロチャネの大きさを測定した。
【0132】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0133】
ViaDermパラメータ
ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.7g/hm;適用後のTEWL 46.0g/hm
【0134】
サンプル調製
ViaDermで処理した皮膚を6ウェルの細胞培養プレートに入れ、1.5mlの培地(MEM(EAGLES)25mM HEPES)中で維持した。蛍光(FITC)標識されたポリスチレンナノスフェア(L−1280;SigmaChemical社、Poole、イギリス)の濃縮(4.5710/μl)原液50μlを、処理された皮膚の表面にピペットで加え、このサンプルを37℃で6時間インキュベートした。6時間後に、さらに2mlの培地を加えて皮膚を浸した。さらに18時間皮膚をインキュベートした。PBS中で2回洗浄した後、氷上で1時間、0.5%グルタルアルデヒド中で皮膚を固定した。固定した組織をCardice上でOCT包埋剤(RA Lamb社)中に包埋し、Leica CM3050S Cryostatを用いて切片化した。
【0135】
染色/可視化
切片を、実施例5で説明したようにしてH&Eで染色して可視化し、或いは、染色せずに青色蛍光下で可視化した(Olympus BX50顕微鏡)。
【0136】
結果
図11は、RFマイクロチャネルが、直径100nmの蛍光性ナノ粒子を取り込み閉じ込めるのに十分な大きさであることを示す。したがって、マイクロチャネルは、非ウイルス性遺伝子療法ベクターなどの高分子及びナノ粒子の送達に適した大きさを有する。インキュベーション期間を通して、チャネルの多くは、表面を再び封じられて、「薬物送達貯蔵所」内部に粒子を囲い込むようである。
【0137】
(実施例7)
マイクロチャネル中への蛍光標識したDNAの共局在化
以下の実験の目的は、RFマイクロチャネルの大きさが、蛍光標識したプラスミドDNAの浸透及び保持を可能にするのに十分な大きさであるかどうかを判定すること、並びに、プラスミドDNAと脂質及びポリカチオンとの複合体形成が、蛍光標識したプラスミドDNAの浸透及び保持に影響を及ぼすかどうかを判定することであった。
【0138】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0139】
ViaDermパラメータ
DNAのみ:ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:7.5g/hm;適用後のTEWL 14.2g/hmLPD:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:5.3g/hm;適用後のTEWL 28.3g/hm
【0140】
サンプル調製
「LabelIT(登録商標)」Nucleic Acid Labeling Kit(Mirus社、Madison、ウィスコンシン州)を用いて、ローダミンフルオロフォアでpEGFP−N1レポータープラスミドを標識することによって、蛍光標識したプラスミドDNAを調製した。ViaDermで処理した皮膚を6ウェルの細胞培養プレートに入れ、1.5mlの培地(MEM(EAGLES)25mM HEPES)中で維持した。50μlの標識したpDNAのみ(2μgのpDNAを含有)、又は硫酸プロタミン(10μg、サケ精子由来、グレードX;Sigma Chemical社、Poole、イギリス)及び1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)リポソーム(15μg:Avanti Polar Lipids社、Alabama、アメリカ)と予め複合体形成させた、蛍光標識されたpDNA(5μg)を含むLPD複合体の懸濁液を、処理された皮膚の表面にピペットで加え、このサンプルを37℃で1時間インキュベートした。1時間後に、さらに2mlの培地を加えて皮膚を浸した。さらに47時間、皮膚をインキュベートした。PBS中で2回洗浄した後、氷上で1時間、0.5%グルタルアルデヒド中で皮膚を固定した。固定した組織をCardice上でOCT包埋剤(RA Lamb社)中に包埋し、Leica CM3050S Cryostatを用いて切片化した。
【0141】
光学/蛍光顕微鏡
切片を、染色せずに明視野下又は青色蛍光下で可視化した(Olympus BX50顕微鏡)。
【0142】
結果
図12Aは、皮膚の平らな切片上での蛍光標識されたpDNAの分布を示す。図12Bは、折り畳まれた皮膚中に存在する蛍光性pDNA粒子を示す(角質層が途切れなく壊れていないことに注目されたい)。図12Cは、RFマイクロチャネルを示す。興味深いことに、図12Dは、図12Cで示した、ViaDermで処理した同じ組織サンプルの真皮の深部に蛍光標識したpDNA粒子が存在することを示す。
【0143】
図13は、ポリカチオン及び脂質と複合体形成をしてLPD遺伝子送達ベクターにすることによって、ローダミン標識したpDNAに付随する蛍光が減少されないことを示す。これらの画像では、LPDベクターがRFマイクロチャネルの表面(図13B及び13D)並びに内部(図13F)の双方に局在していることがはっきりと見える。
【0144】
(実施例8)
加熱分離した表皮膜におけるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子発現
次に、脂質:ポリカチオン:pDNA(LPD)ベクターをViaDermで予め処理した皮膚に適用すると、加熱分離した表皮膜においてβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子が発現され得るかどうかを判定した。
【0145】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0146】
ViaDermパラメータ
ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:6.0g/hm;適用後のTEWL 14.6g/hm
【0147】
サンプル調製:
ViaDermで処理した皮膚を6ウェルの細胞培養プレートに入れ、1.5mlの培地(MEM(EAGLES)25mM HEPES)中で維持した。ヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV IE)プロモーターの制御下でβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を発現するpCMVβプラスミドDNAを、ClonTech Laboratories社(Palo Alto、アメリカ)から入手し、アンピシリン選択LB寒天プレート上にコロニー形成させた大腸菌の形質転換株DH5aを用いて増殖させ、37℃で一晩培養した。pDNAを回収し、Qiagen Plasmid Mega Kit(Qiagen社、Crawley、イギリス)を用いて精製した。
【0148】
50μgのpCMVβプラスミドDNA、100μgの硫酸プロタミン(サケ精子由来、グレードX)、及び150μgのDOTAPリポソームを含有する脂質:ポリカチオン:pDNA(LPD)ベクターの懸濁液300μlを調製した。脂質:プロタミン:pDNAの質量(w/w)比が3:2:1となるように、初めにプロタミン(滅菌精製水中1mg/ml原液)、次いで押出された(extruded)DOTAPリポソームをpDNA(TE緩衝液中1mg/ml原液)に順次添加することにより、LPD複合体を調製した。LPD懸濁液100μlを、ViaDermで処理された皮膚の表面にピペットで加え、このサンプルを37℃で18時間インキュベートした。18時間後に、さらに2mlの培地を加え、浸された皮膚をさらに30時間インキュベートした。
【0149】
X−gal染色
PBS中で2回洗浄した後、氷上で1時間、0.5%グルタルアルデヒド中で皮膚を固定し、組織染色用のLacZ Reporter Assay Kit(In−Vivogen社、San Diego、カリフォルニア州)を用いて、24時間、β−ガラクトシダーゼ活性に対して染色した。PBS中でさらに2回洗浄した後、実施例2で説明したようにして皮膚を加熱分離した。
【0150】
光学顕微鏡
加熱分離した表皮膜を、Olympus BX50顕微鏡によって可視化した。
【0151】
結果
図14は、加熱分離させた表皮膜中のマイクロチャネルの外観である。実施例4で以前に観察された茶色の変色が再び見える。チャネルの境界、また、おそらく中心が青色に染色されている。酵素アッセイの条件下では、青色の染色は、レポーター遺伝子の産物、すなわちβ−ガラクトシダーゼと関連している。
【0152】
(実施例9)
表面の(en face)β−ガラクトシダーゼ遺伝子発現
次に、ViaDerm装置の適用後に、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子が全層皮膚へ送達され、そこで発現され得るかどうかを判定した。
【0153】
材料及び方法
組織
ヒトの全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得及び調製した。
【0154】
ViaDermパラメータ
ViaDermのパラメータ設定値:適用2回;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:5;TEWL 対照:10.3g/hm;適用後のTEWL 26.2g/hm
【0155】
サンプル調製:
ViaDermで処理した皮膚を6ウェルの細胞培養プレートに入れ、1.5mlの培地(MEM(EAGLES)25mM HEPES)中で維持した。pCMVβプラスミドDNA溶液(1mg/ml)100μlを、ViaDermで処理した皮膚の表面にピペットで加え、このサンプルを37℃で24時間インキュベートした。PBS中で2回洗浄した後、D−Squame粘着テープ(CuDerm社、Dallas、テキサス州)を用いて20回テープストリッピングすることによって、皮膚の角質層を除去した。
【0156】
X−gal染色
氷上で1時間、0.5%グルタルアルデヒド中で組織を固定し、PBS中で一晩ゆすぎ、組織染色用のLacZ Reporter Assay Kit(Invivogen社、San Diego、カリフォルニア州)を用いて、48時間、β−ガラクトシダーゼ発現に対して染色した。
【0157】
光学顕微鏡
Olympus BX50顕微鏡及びScholt KL1500電子光源を用いて、テープストリッピングした皮膚の表面を可視化した。
【0158】
結果
図15は、RFマイクロチャネルにおいて発現されたβ−ガラクトシダーゼの存在を示す。ViaDerm装置、及びより多くの染色を組織の適切な領域に広げさせるためのDNA溶液を適用した後に、皮膚をテープストリッピングした。多数の研究が、in vivoで効率的に発現され得る裸DNAの能力を示していたため(例えば、Hengge,U.R.他、Nature Genet.10:161頁、1995年;Hengge,U.R.他、J.Clinical Investigation,97:2911頁、1996年;Chesnoy,S.及びHuang,L.Molecular Therapy,5:57頁、2002年)、この実験では、単独で、すなわち、非ウイルス性のキャリアシステムを全く用いずにプラスミドを使用した。
【0159】
(実施例10)
切片化した組織の組織構造
長さ100ミクロンの電極又は長さ50ミクロンの電極を用いて「ViaDerm(商標)」装置を適用した後にヒト皮膚中に作製されたマイクロチャネルの比較を行った。
【0160】
材料及び方法
組織
ヒト胸部の全層皮膚を、実施例1で説明したようにして取得した。
【0161】
ViaDermパラメータ
パラメータ1:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;長さ100ミクロンの電極を含む電極アレイ;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:1;TEWL 対照:7.4g/hm;適用後のTEWL 10.7g/hm パラメータ6:ViaDermのパラメータ設定値:適用4回;長さ50ミクロンの電極を含む電極アレイ;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:1;TEWL 対照:5.7g/hm;適用後のTEWL 8.7g/hm
【0162】
サンプル調製
ViaDermで処理した皮膚をPBSで洗浄し、氷上で2.5時間、0.5%グルタルアルデヒド中で固定し、PBSで後洗浄した。固定した組織をCardice上でOCT包埋剤(RA Lamb社Eastbourne、イギリス)中に包埋し、Leica CM3050S Cryostatを用いて切片化した。
【0163】
組織染色
エオジン:接着剤を塗布した「Histobond(登録商標)」顕微鏡スライド(RA Lamb社)上に組織切片を採取し、1%エオジン水溶液(BDH Laboratory Supplies社、Dorset、イギリス)中に5秒浸し、水でゆすぎ、乾燥させた。
トルイジンブルー:「Histobond(登録商標)」顕微鏡スライド上に組織切片を採取し、1%トルイジンブルー水溶液(TAAB Laboratories Equipment社、Dorset、イギリス)中に5分浸し、水でゆすぎ、乾燥させた。
【0164】
結果
提示した顕微鏡写真は、観察されたチャネルの全集団の代表である。たいていの場合は、チャネルは、長さが約50〜100μmであり、最も幅の広い径は30〜50μmであった。
【0165】
長さ50又は100ミクロンの電極アレイによって作製されたマイクロチャネルの差を図16に示す。本明細書において上記に開示した実施例1〜9においては、長さ100ミクロンの電極アレイは、ヒト表皮を通過してその下にある真皮まで貫通しているマイクロチャネルを作製した(図16A)。一方、長さ50ミクロンの電極アレイは、しばしば、分裂可能な表皮中にもっぱら存在するマイクロチャネルを作製した(図16B)。これらの結果に基づいて、長さ50ミクロンの電極を有する電極アレイを、表皮における遺伝子発現を評価するさらなる研究用に選択した。
【0166】
TEWLのデータも、50ミクロン及び100ミクロンのアレイによって作製されたチャネルの様々な形態をさらに裏付ける(表1)。
【0167】
表1.パラメータ設定6でViaDermを4回適用した後の経表皮水分喪失量(TEWL)の増加
【表1】

【0168】
(実施例11)
表面の(en face)β−ガラクトシダーゼ遺伝子発現
この実験の目的は、長さ50ミクロンの電極を有するViaDerm装置の適用後に、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子がヒト皮膚へ送達され、そこで発現され得るかどうかを判定することであった。
【0169】
材料及び方法
組織
ヒト全層皮膚を氷上で、5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM 25mM HEPES増殖培地(Invitrogen社、Paisley、イギリス)に移した。切開により真皮のかなりの比率を取り出すことによって、分層皮膚を調製した。
【0170】
ViaDermパラメータ
DNA適用前に2回適用、DNA適用後に1回適用;長さ50ミクロンの電極を有する電極アレイ;電極:140;バースト長:700μ秒;バースト数:1;TEWL 対照:g/hm
【0171】
サンプル調製
ウェルあたり2.5mlの培地(5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM 25mM HEPES)を含む6ウェル細胞培養プレート中の金網に支持されたレンズティッシュ上に置くことによって、ViaDermで処理した皮膚を気相液相界面で維持した。pCMVβプラスミドDNA溶液(1mg/ml)50μlを、ViaDermで処理した皮膚の表面にピペットで加えて広げ、ViaDermを再度適用した。37℃で24時間、このサンプルをインキュベートした。PBS/MgCl中で1回洗浄した後(30分)、4℃で2時間、2%グルタルアルデヒド/MgCl中で組織を固定した。続いて、一連のPBS/MgCl溶液中で2時間、3時間、及び30分間組織を洗浄した。
【0172】
X−gal染色
X−Gal染色溶液[X−Gal(40mg/mlジメチルホルムアミド溶液を5%(v/v)、Fisher Scientific社、イギリス)、フェリシアン化カリウム(0.6M溶液を0.84%(v/v)、Sigma−Aldrich社、イギリス)、フェロシアン化カリウム(0.6M溶液を0.84%(v/v))、塩化マグネシウム(1M溶液を0.2%(v/v)、Sigma−Aldrich社、イギリス)、Tris HCl緩衝液、pH8.5(0.2M溶液を50%(v/v)、Fisher Scientific社、イギリス)、脱イオン(Demonized)水を加えて100%とする]を用いて20時間、β−ガラクトシダーゼ発現について組織を染色した。
【0173】
実体顕微鏡検査
2.0×アタッチメント及びScholt KL1500電子光源を装備したZeiss Stemi 2000C実体顕微鏡を用いて組織を可視化した。
【0174】
光学顕微鏡
Olympus BX50顕微鏡及びScholt KL1500電子光源を用いて、皮膚の表面を可視化した。
【0175】
結果
図17及び図18は、ViaDermで処理した皮膚において発現されたβ−ガラクトシダーゼの存在を明確に示す。これまでの研究が、in vivoで効率的に発現され得る裸DNAの能力を示していたため(例えば、Hengge,U.R.他、Nature Genet.10:161頁、1995年;Hengge,U.R.他、J.Clinical Invest.97:2911頁、1996年;Chesnoy,S.他 Mol.Therapy,5:57頁、2002年)、この実験では、単独で、すなわち、非ウイルス性のキャリアシステムを全く用いずにプラスミドを使用した。β−ガラクトシダーゼ発現に関して最良の結果は、連続的にViaDerm、DNA適用、次いで再度ViaDermで皮膚を処理した場合に得られた。したがって、この装置は、皮膚にマイクロチャネルを作製するだけではなく、DNAの細胞内取り込みも推進し得る。
【0176】
(実施例12)
切片化組織におけるβ−ガラクトシダーゼ発現
次に、ViaDermで処理した皮膚におけるβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子発現のパターンを決定した。
【0177】
材料及び方法
凍結切片化
図17及び図18で示す切片3(Section3)に由来するサンプルをCardice上でOCT包埋剤(RA Lamb社、Eastbourne、イギリス)中に包埋し、Leica CM3050S Cryostatを用いて切片化した。
【0178】
光学顕微鏡
これらの組織切片を、Olympus BX50顕微鏡を用いて可視化した。
【0179】
結果
図19は、かなりの程度のレポーター遺伝子発現に関連する、RFマイクロチャネル周辺の分裂可能な表皮細胞における強い染色の存在を明確に示す。染色は、主として表皮に局在している。
【0180】
したがって、これらの結果から、50ミクロンの電極アレイを有するViaDerm装置の適用後にヒト胸部皮膚で作製されるRFマイクロチャネルが、プラスミドDNAの皮膚への送達を可能にするのに適した大きさであることが実証される。さらに、DNA溶液で予め被覆した皮膚にViaDermを適用した場合、遺伝子の取り込み及び発現が促進されるようである。この強い遺伝子発現は、組織の分裂可能な表皮領域に主として局在している。
【0181】
本発明は、本明細書において上記に具体的に示し説明したことによって限定されないことを、当業者は理解されたい。正しくは、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】未処理のヒト皮膚におけるRFマイクロチャネルの走査型電子顕微鏡写真である。スケールバー=50μm。
【図2】加熱分離した表皮膜におけるRFマイクロチャネルの光学顕微鏡写真である。A:倍率=×200;B:倍率=×100
【図3】加熱分離した表皮膜におけるRFマイクロチャネルの走査型電子顕微鏡写真である。A:ViaDermを2回適用した後のチャネルの分布パターンを示す、低倍率での走査型電子顕微鏡写真である。B〜D:マイクロチャネルの大きさを示す、高倍率での走査型電子顕微鏡写真である。E〜F:偏向電子ビーム(angled electron−beam)によりマイクロチャネルの深さを走査電子で可視化した写真である(スケールバー(加えられている場合)=50μm)。
【図4】蛍光性ナノ粒子のドナー濃度を計算するための検量線のグラフである。R=0.990。
【図5】脂質:ポリカチオン:DNA(LPD)非ウイルス性遺伝子療法用ベクターの拡散モデルとして蛍光性ナノ粒子を使用する妥当性を示す、透過型電子顕微鏡写真である。A:LPD3:2:1(w/w)のベクター;B:蛍光性ナノ粒子。スケールバー=100nm。
【図6】ViaDermで処理した表皮膜を通過しての蛍光性ナノ粒子の拡散を示すグラフである。データは、16時間後にドナー相に残存している、適用された全ナノ粒子の比率として示される。対照:未処理の表皮膜;1:330V、バースト5回、700μ秒、140電極のパラメータ設定でのViaDermの2回適用で処理した、新鮮な組織に由来する表皮膜;2:330V、バースト3回、700μ秒、140電極のパラメータ設定でのViaDermの2回適用で処理した、新鮮な組織に由来する表皮膜;3:330V、バースト5回、700μ秒、140電極のパラメータ設定でのViaDermの2回適用で処理した、解凍組織に由来する表皮膜;ろ紙:ろ紙のみ。
【図7】ヒト皮膚におけるRFマイクロチャネルの分布パターンを示す実体顕微鏡写真である。A:未処理の皮膚;B及びC:ViaDerm処理した皮膚。スケールバー=500μm。
【図8】ViaDerm処理後、メチレンブルー染色した皮膚の光学顕微鏡写真である。A:倍率=×40;B:倍率=×100。
【図9】330V、バースト3回、700μ秒、140電極のパラメータ設定でViaDermで処理したヒトの胸部皮膚の光学顕微鏡写真である。A:エオジン染色、倍率=×200;B:トルイジン(Toludine)ブルー染色、倍率=×200;C:トルイジンブルー染色、倍率=×100。スケールバー=100μm。
【図10】330V、バースト5回、700μ秒、140電極のパラメータ設定でViaDermで処理したヒトの胸部皮膚の光学顕微鏡写真である。A:ヘマトキシリンエオジン染色、倍率=×100;B:ヘマトキシリンエオジン染色、倍率=×200。スケールバー=100μm。
【図11】蛍光性ナノ粒子を含有するRFマイクロチャネルの光学顕微鏡写真及び蛍光顕微鏡写真である。A:光学顕微鏡写真;B:蛍光顕微鏡写真。倍率=×100。スケールバー=100μm。
【図12】蛍光標識したプラスミドDNAのみとともに後でインキュベートした、ViaDerm処理した皮膚の蛍光顕微鏡写真である。倍率=×200。スケールバー=100μm。
【図13】LPD遺伝子ベクター複合体中の蛍光標識したプラスミドDNAとともに後でインキュベートした、ViaDerm処理した皮膚の二重標識顕微鏡写真である。A、C、及びEは、光学顕微鏡写真である。B、D、及びFは、蛍光顕微鏡写真である。倍率=×100。スケールバー=100μm。
【図14】β−ガラクトシダーゼ発現に対して染色した、加熱分離した表皮膜の光学顕微鏡写真である。A:倍率=×100;B:倍率=×200。
【図15】β−ガラクトシダーゼ発現に対して染色した、テープストリッピングしたViaDerm処理皮膚の光学顕微鏡写真である。倍率=×100。
【図16】ViaDerm処理したヒト胸部皮膚の光学顕微鏡写真である。A 長さ100ミクロンの電極、エオジン染色、倍率=×100;B 長さ50ミクロンの電極、トルイジンブルー染色、倍率=×200。スケールバー=100μm
【図17】ViaDerm適用、DNAコーティング、次いで追加のViaDerm適用をした後にβ−ガラクトシダーゼ発現について染色したヒト皮膚の実体顕微鏡写真である。A〜E:pCMVβDNAとともにインキュベートした、ViaDerm(長さ50ミクロンの電極)で処理した皮膚;F:PBSとともにインキュベートした、ViaDermで処理した皮膚。スケールバー=1mm。
【図18】ViaDerm適用、DNAコーティング、次いで追加のViaDerm適用をした後にβ−ガラクトシダーゼ発現について染色したヒト皮膚の3種の異なるサンプルの光学顕微鏡写真である。A サンプル1:倍率=×40;B サンプル1:倍率=×100;C サンプル2:倍率=×40;D サンプル2:倍率=×100;サンプル3:倍率=×40;F サンプル3:倍率=×40;G サンプル3:倍率=×100;H サンプル3:倍率=×100。
【図19】ViaDerm、DNAコーティング、次いでViaDermで連続的に処理した皮膚に由来する、β−ガラクトシダーゼ染色した組織切片の光学顕微鏡写真である。A:倍率=×100;B:倍率=×200;C:倍率=×100;D:倍率=×100;E:倍率=×200;F:倍率=×200;G:倍率=×100;H:倍率=×100。スケールバー=100μm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用の方法であって、
(a)被験者の皮膚のある領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップと、
(b)有効成分として治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び製薬上許容される担体を含む薬剤組成物を、少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の前記領域に適用するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記被験者の皮膚の前記領域に複数のマイクロチャネルを作製し、それによって、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、DNA、RNA、及びその合成類似体のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、ポリペプチド、類似体、断片、又はその融合タンパク質をコードする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが調節配列に作動可能に連結されており、それにより、被験者の細胞において発現されることができる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ポリペプチドが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来増殖因子、上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、コロニー刺激因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、骨形成タンパク質、エリスロポエチン、造血増殖因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、プラスミノーゲンアクチベーター、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、血管内皮成長因子、抗血管新生因子、インターロイキン、ウイルス抗原、非ウイルス抗原、輸送タンパク質、及び抗体からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉オリゴヌクレオチド(siRNA)、及びmiRNAからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
薬剤組成物が、脂質、ポリカチオン、及びヌクレアーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被験者の皮膚の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップが、
(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加えて、通常、電流又は1つ若しくは複数のスパークを生じ、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む装置によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電極カートリッジが、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製するように適合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
電極の直径が、30〜150ミクロンの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
電極の直径が、40〜100ミクロンの範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電極の長さが、30〜500ミクロンの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
電極の長さが、50〜100ミクロンの範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電気エネルギーが高周波である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用の方法であって、
(a)有効成分として治療有効量のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び製薬上許容される担体を含む薬剤組成物を、被験者の皮膚のある領域に適用するステップと、
(b)被験者の皮膚の前記領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製し、それによってオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するステップとを含む方法。
【請求項17】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、DNA、RNA、及びその合成類似体のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、ポリペプチド、類似体、断片、又はその融合タンパク質をコードする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが調節配列に作動可能に連結されており、それにより、被験者の細胞において発現されることができる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ポリペプチドが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来増殖因子、上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、コロニー刺激因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、骨形成タンパク質、エリスロポエチン、造血増殖因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、プラスミノーゲンアクチベーター、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、血管内皮成長因子、抗血管新生因子、インターロイキン、ウイルス抗原、非ウイルス抗原、輸送タンパク質、及び抗体からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉オリゴヌクレオチド(siRNA)、及びmiRNAからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
薬剤組成物が、脂質、ポリカチオン、及びヌクレアーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
被験者の皮膚の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するステップが、
(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加えて、通常、電流又は1つ若しくは複数のスパークを生じ、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む装置によって実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
電極カートリッジが、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製するように適合される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
電極の直径が、30〜150ミクロンの範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
電極の直径が、40〜100ミクロンの範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
電極の長さが、30〜500ミクロンの範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
電極の長さが、50〜100ミクロンの範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
電気エネルギーが高周波である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
被験者の皮膚を通してのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達を促進するための装置、及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む薬剤組成物を含む、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの皮内又は経皮送達用システムであって、前記装置が、
(a)複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
(b)電極が皮膚の近傍にあるときに、2つ以上の電極の間に電気エネルギーを加えて、通常、電流又は1つ若しくは複数のスパークを生じ、前記電極の真下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを作製するように適合された制御ユニットを含む主要ユニットを含む、システム。
【請求項31】
電極カートリッジが、形状及び大きさが均一な複数のマイクロチャネルを作製するように適合される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
電極の直径が、30〜150ミクロンの範囲である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
電極の直径が、40〜100ミクロンの範囲である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
電極の長さが、30〜500ミクロンの範囲である、請求項30に記載のシステム。
【請求項35】
電極の長さが、50〜100ミクロンの範囲である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
電気エネルギーが高周波である、請求項30に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図18G】
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【図18H】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【図19G】
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【図19H】
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【公表番号】特表2007−518792(P2007−518792A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550489(P2006−550489)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000089
【国際公開番号】WO2005/069736
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】