説明

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品

【課題】レーザー焦点の光軸安定性、成形時の流動性、低バリ性に均衡して優れた光学記録装置部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および成形時の流動性、耐トラッキング性に優れた金属化フィルムコンデンサ部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂15〜45重量%、(B)ビニル系共重合体 5〜25重量%、(C)繊維状充填剤10〜50重量%、(D)非繊維状充填剤10〜50重量%を配合してなる組成物であって、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対し(E)シラン系カップリング剤0.01〜3重量部を添加してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂及びアクリロニトリル−スチレン樹脂等のビニル系共重合体を含有する樹脂組成物に関し、特に光学記憶装置部品や金属化フィルムコンデンサ部品に適した樹脂組成物に関する。更に詳細には、レーザー光を利用して書き込み及び読み出しを行うCD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMなどに代表される光学記録装置や、コンデンサ素子を外装ケース内に備え、外装ケース内に樹脂充填されてなる金属化フィルムコンデンサ部材として使用される各種部品に適した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド樹脂は高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、電気特性および寸法安定性などを有していることから、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。かかる用途の一つとして電気・電子部品である光ピックアップが挙げられる。該用途ではレーザー焦点の光軸安定性(環境温度が変化した際レーザー焦点が安定していること)が要求され、これまでCD用途ではフィラーを高充填したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が用いられてきた。しかし、昨今普及してきたDVD用途では、より優れたレーザー焦点の光軸安定性が要求され、従来のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物ではレーザー焦点の光軸安定性の点で不十分な場合が生じている。また、該部品は射出成形にて得られるが、射出成形時の流動性が悪い場合、良品が得られない又は過大な圧力を掛けて成形する為成形品に応力歪みが生じることに起因し光軸安定性が悪くなる、といった不具合が生じる。更に、該部品はDVD等に記録されたデジタル信号を読み取る役割を担う為、成形時にバリが発生すると読み取りエラー等の原因となる為好ましくない。
【0003】
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂は機械的強度、耐熱性、耐水性に優れ、過酷な使用条件にも耐えうる樹脂であることから、車載用部品などの用途でも使用実績のある樹脂のひとつである。かかる用途の一つとして、金属化フィルムコンデンサが挙げられる。金属化フィルムコンデンサは、従来の家電分野から産業用、車両分野など、あらゆる分野に展開されている。その中で、車両用の金属化フィルムコンデンサは、昨今のハイブリッド車パワーユニット部にも用いられることが多く、需要が急増しているが、大容量で高電圧、高電流に耐え得る性能と高信頼性に加えて小型化が要求される。容量は誘電体であるフィルムの使用量と比例するため、大容量化に伴い容積も大きくなる。従って、小型化を実現するためには、コンデンサ素子を内蔵するケースの厚みや、素子を覆う充填樹脂の厚みを薄くする必要がある。また、小型化に伴い金属端子間距離を短く設計される傾向が強くなり、絶縁性も要求されるようになってきている。
【0004】
本発明はポリフェニレンスルフィド樹脂、ビニル系共重合体、繊維状充填剤、非繊維状充填剤、シラン系カップリング剤を配合した樹脂組成物であるが、本発明に近い樹脂組成物としてポリフェニレンスルフィド樹脂にポリスチレン系重合体、充填剤を配合した樹脂組成物は特許文献1で公知である。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシシラン化合物及び繊維状充填材、無機充填材またはその混合物を配合した樹脂組成物は特許文献2で公知である。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている樹脂組成物はポリフェニレンスルフィド樹脂の衝撃性、靭性、難燃性向上を目的に考案された組成物であり、光学記録装置部品の中でも特に光ピックアップスライドベースについてはレーザー光軸の安定性が光学記録装置の信頼性に大きな影響を与えるのであるが、このことについては全く言及されていない。また、本文中に繊維状充填剤と非繊維状充填剤の併用について言及されているものの、同公報の実施例として具体的にされている組成物においては両充填剤を併用している例についての記載が全く無い。更に成形性に重要となる各組成物の流動性に関しても全く言及されていない。
【0006】
また、前記特許文献2に記載されている樹脂組成物はポリフェニレンスルフィド樹脂のバリ低減を目的としたものであり、本文中に光学部品への適用について言及されているものの、レーザー光軸の安定性には全く言及されていない。また、同公報の実施例として具体的にされている組成物のうちガラス繊維と炭酸カルシウムを併用した組成物はすべてガラス繊維の配合量が炭酸カルシウムの配合量より多くなっているが、そのような配合量ではガラス繊維の配向が強すぎて光軸安定性が低下してしまい、光学記録装置におけるレーザー光軸の安定性が不十分なものしか得られない。
【0007】
一方、金属化フィルムコンデンサとしては、特許文献3に記載があり、1個以上のコンデンサ素子とエポキシ樹脂を内部に充填し、エポキシ樹脂を硬化剤により硬化させてコンデンサ素子を内部に固定する外装ケースにおいて、エポキシ樹脂との接着強度が3MPa以上10MPa以下であるポリフェニレンサルファイド樹脂を材料として用いている例が記載されている。但し、前記特許文献3では上述理由により今後重要となる流動性、絶縁性については言及されていない。
【特許文献1】特開平7−316428号公報
【特許文献2】特開2000−198924号公報
【特許文献3】特開2004−146724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明は、レーザー焦点の光軸安定性、成形時の流動性、低バリ性に均衡して優れた光学記録装置部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および成形時の流動性、耐トラッキング性に優れた金属化フィルムコンデンサ部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂15〜45重量%、(B)ビニル系共重合体 5〜25重量%、(C)繊維状充填剤10〜50重量%、(D)非繊維状充填剤10〜50重量%からなる組成物であって、本組成物100重量部に対し(E)シラン系カップリング剤0.01〜3重量部を添加してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が、レーザー焦点の光軸安定性に優れ、かつ成形時の流動性、低バリ性にも均衡して優れることを見出した。また、本組成物が成形時の流動性、耐トラッキング性に優れることを併せて見出した。
【0010】
即ち、本発明は
(1)(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂15〜45重量%、(B)ビニル系共重合体 5〜25重量%、(C)繊維状充填剤10〜50重量%、(D)非繊維状充填剤10〜50重量%からなる組成物であって、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対し(E)シラン系カップリング剤0.01〜3重量部を添加してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(2)(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量より少ないことを特徴とする(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(3)射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が90mm以上であることを特徴とする、(2)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(4)(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量より多く、かつ(C)+(D)の合計が)(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として60重量%以下であることを特徴とする(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(5)射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が150mm以上であることを特徴とする、(4)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(6)(1)〜(5)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品、
(7)耐トラッキング指数が225V以上であることを特徴とする(6)記載の成形品、
(8)(1)〜(3)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、23℃から80℃へ温度変化させた際の光軸ずれ量が2.5分以下であることを特徴とする成形品、
(9)(1)〜(3)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、円周上に(a)幅4mm×長さ20mm×深さ500μm、(b)幅4mm×長さ20mm×深さ20μmの2つの突起部を有する80mmφ×2mmtの円盤形状金型を130℃に温調し、成形機シリンダー設定温度320℃にて射出成形を行った際、(a)の突起部が充填される最下限圧力に10MPaを加えて成形した時の(b)の突起部の充填長さが130μm以下であることを特徴とする成形品、
(10)(6)〜(9)のいずれかの成形品からなる光学記録装置部品、
(11)(1)、(4)または(5)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、成形品厚みが2mm以下である成形品、および
(12)(6)、(7)または(11)記載の成形品からなる金属化フィルムコンデンサ部品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザー焦点の環境安定性に優れ、かつ成形時の流動性、低バリ性、機械強度等に均衡して優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることが可能である。また、成形時の流動性、耐トラッキング性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることも併せて可能である。かかる特性を併せ持つことから、光学記録装置部品、特に光ピックアップスライドベース用材料として、又車載用部品、特に金属化フィルムコンデンサ部材用材料として適するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用する(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位
【0013】
【化1】

【0014】
を70モル%以上、好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれる傾向にある。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能である。
【0015】
【化2】

【0016】
かかるポリフェニレンスルフィド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0017】
本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、酸水溶液などによる洗浄(酸洗浄)、有機溶媒あるいは熱水による処理、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理を施した上で使用すること、およびこれらの処理を複数回繰り返したり、異なる処理を組み合わせたりすることももちろん可能であるが、なかでも少なくとも酸洗浄することは本発明の効果をより顕著に発揮する上で特に有効である。
【0018】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を酸洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリフェニレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリフェニレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂の酸洗浄に用いる酸または酸水溶液について、pHは2.5〜5.5であることが好ましく、使用量は乾燥したポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対して2〜100kgであることが好ましく、4〜50kgであることがより好ましく、5〜15kgであることがさらに好ましい。洗浄温度に特に制限はなく、通常室温で行うことが可能であり、加熱する場合には50〜90℃で行うことが可能である。洗浄時間は通常30分以上であることが好ましく、45分以上であることがさらに好ましい。上限についても特に制限はないが、洗浄効率の点から90分程度であることが好ましい。例えば、酢酸を用いる場合、室温に保持したpH4の水溶液中にポリフェニレンスルフィド樹脂粉末を浸漬し、45〜90分間撹拌することが好ましい。酸処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜100℃であることが好ましく、60〜95℃であることがさらに好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸洗浄によるポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
【0019】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリフェニレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリフェニレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0020】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリフェニレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリフェニレンスルフィド樹脂と水との割合は、水が多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリフェニレンスルフィド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0021】
ポリフェニレンスルフィド樹脂をアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
【0022】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、通常150〜280℃の範囲が選択され、好ましくは200〜270℃であり、処理時間としては、通常0.5〜100時間の範囲が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることによって目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0023】
ポリフェニレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0024】
本発明で用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量は(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として15〜45重量%であり、好ましくは12〜42重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量が少なすぎると成形時の流動性低下、靭性低下に繋がり、一方、多すぎると成形時の剛性低下、収縮量増加に繋がる。
【0025】
後述する(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量より少ないときは、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として15〜35重量%が好ましい。
【0026】
本発明で用いられる(B)ビニル系共重合体としては、シアン化ビニル系単量体(イ)と芳香族ビニル系単量体(ロ)を共重合してなるビニル系共重合体およびシアン化ビニル系単量体(イ)、芳香族ビニル系単量体(ロ)およびこれらと共重合し得る他の単量体(ハ)を共重合してなるビニル系共重合体などのビニル系共重合体が挙げられ、これらは一種以上で用いることができ、粉体状物およびペレット状物双方共に使用することが出来る。
【0027】
ここで、シアン化ビニル系単量体(イ)の例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらは一種または2種以上併用することができる。また、芳香族ビニル系単量体(ロ)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレンなどが挙げられ、1種または2種以上併用が可能である。具体的には、ビニル系共重合体(B)としてアクリロニトリル−スチレン樹脂(以下AS樹脂)もしくはグリシジルメタクリレート(以下GMA)等で変性したAS樹脂が好ましい。本発明で用いられるビニル系共重合体の配合量は(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、5〜25重量%であり、好ましくは7〜22重量%、更に好ましくは10〜20重量%である。ビニル系共重合体の配合量が少なすぎるとレーザー光軸の安定性が低くなってしまい、また耐トラッキング指数が低下してしまう。一方、多すぎると成形時の強度、流動性が低下してしまう。
【0028】
本発明においては(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として(C)繊維状充填剤10〜50重量%、(D)非繊維状充填剤10〜50重量%を添加し、繊維状充填材を非繊維状充填材と共に配合することが必須である。かかる繊維状充填材としては、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが用いられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。中でもガラス繊維、炭素繊維がより好適に用いられる。本発明で用いられる繊維状充填材の配合量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、10〜50重量%であり、好ましくは12〜45重量%、更に好ましくは15〜40重量%である。繊維状充填材の配合量が少なすぎると強度、剛性、耐衝撃性が低くなってしまい、多すぎると成形時の流動性が低下する上にレーザー光軸の安定性が低下してしまう。
【0029】
本発明においては非繊維状充填材を配合することも又必須である。かかる非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、カオリン、クレー、タルクなどの珪酸塩、アルミナ、黒鉛が特に好ましい。本発明で用いられる非繊維状充填材の配合量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、10〜50重量%であり、好ましくは12〜48重量%、更に好ましくは15〜45重量%である。非繊維状充填材の配合量が少なすぎるとレーザー光軸の安定性が不十分であり、多すぎると強度、剛性、耐衝撃性が不十分となってしまう。
【0030】
本発明においては、優れたレーザー焦点の環境安定性を得るためには、非繊維状充填材の含有量が繊維状充填材の含有量より多いことが好ましい。具体的には、5重量%以上多いことが好ましく、10重量%以上多いことがより好ましい。
【0031】
一方、優れた流動性を得るためには、非繊維状充填材の含有量が繊維状充填材の含有量より少ないことが好ましい。具体的には、5重量%以上少ないことが好ましく、10重量%以上少ないことがより好ましい。また、非繊維状充填材と繊維状充填材の合計量が多いと流動性に悪影響を及ぼす為、両材の合計は60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物においては、低バリ性および高靭性をより改良するために、さらに(E)シラン化合物を配合することが必要である。かかるシラン化合物としては、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられ、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。特に好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。かかるシラン化合物の含有量は、より優れた低バリ性および高靭性を得る点から、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲が好ましく選択され、0.2〜1.5重量部の範囲がより好ましく選択される。少なすぎると、シラン化合物添加による低バリ性および高靭性の向上効果が十分発現しなく、また多すぎると、上記改良効果が飽和に達するばかりでなく、組成物のガス発生量を増加させる傾向にある。
【0033】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタールおよびポリイミドなどが挙げられる。
【0034】
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0035】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0036】
このようにして得られる本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
【0037】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のうち、特に(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量よりも少ない場合は、は光学記録装置部品、中でもCD、DVD、レーザーディスク、光磁気ディスク等の光ピックアップ部品用途に好ましく用いることができる。本用途では最近製品の小型化、薄肉化が図られている。本用途では射出成形による成形が一般的であるが、この際に流動性が劣ると良品が成形出来ない、といった事態が想定される。また、流動性が悪く過大な圧力を掛けて成形すると、成形品に応力歪みが生じることに起因し光軸安定性が悪くなることも想定される。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が90mm以上であることを特徴し、射出成形時の流動性に優れるものである。スパイラル流動長の上限値については特に限定はないが、流動性が上がると機械物性低下に繋がる懸念があることから、実用性を考慮すると150mm以下であることが好ましい。
【0038】
一方、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のうち、特に(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量よりも多く、かつ(C)と(D)の合計が、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、60じゅうりょう%以下である場合は、車載用部品、特に金属化フィルムコンデンサーケース部材用材料として好ましく用いることができる。本用途でも最近製品の小型化、薄肉化が図られている。更に、本用途では外装ケースとして用いられる例が多いが、前述の光学記録部材と異なり箱状の形状であることから成形品自体が大きく、良品を射出成形するには更なる流動性が要求される。また、流動性が悪く過大な圧力を掛けて成形すると、成形品に応力歪みが生じ、実使用環境下で温度が上昇した際に歪みが開放され、変形または反りに繋がることが懸念される。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が150mm以上であることを特徴し、本形状品射出成形時の流動性に優れるものである。スパイラル流動長の上限値については特に限定はないが、本組成物においては220mm付近が実力上限値と考えられる。
【0039】
また、光ピックアップ部品用途に於いては、ディスク等に記録されたデジタル信号を読み取る際に本部品上にアッセンブリーされたレーザーを用い、その反射強度から信号を判別することが一般的である。かかる構造上、レーザー焦点の環境安定性は重要であり、このレーザー焦点の環境安定性を表す指標である、環境温度変化時の光軸ずれ量が小さいことが読み取り、書き込みエラー防止の観点から必要となる。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形により成形した成形品は、23℃から80℃へ温度変化させた際の光軸ずれ量が2.5分以下であることを特徴とし、優れたレーザー焦点の環境安定性を有する。光軸ずれ量の下限値については特に限定はなく、より小さい値であることが好ましいが、樹脂組成物の場合金属と比して温度環境変化時の光軸ずれ量は大きく、1.0分付近が実力値下限と考えられる。
【0040】
一方、光ピックアップ部品用途に於いては、レーザーによる信号読み取り、書き込みを行う際に、バリ等のごみ、ほこりがレーザー焦点を調節するレンズ上に付着した場合、読み取り、書き込みエラーに繋がる可能性が想定される為好ましくない。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形により成形した成形品は、円周上に(a)幅4mm×長さ20mm×深さ500μm、(b)幅4mm×長さ20mm×深さ20μmの2つの突起部を有する80mmφ×2mmtの円盤形状金型を130℃に温調し、成形機シリンダー設定温度320℃にて射出成形を行った際、(a)の突起部が充填される最下限圧力に10MPaを加えて成形した時の(b)の突起部の充填長さが130μm以下であることを特徴とし、低バリ性に優れる。なお、(b)で示される形状の突起部は、通常バリが発生しやすい射出成形品のキャビティー末端部クリアランスと深さが同等であり、又他部位が充填した際に流動している長さである点も共通することから、(b)の突起部の充填長さはバリ長さに準じると判断した。なお、一般に製品機械物性向上等の目的で、良品が採取可能な最下限圧力に約5〜10MPa程度を加え成形することが多く、今回これに準じ最下限圧力に10MPaを加え評価を行った。(b)の突起部の充填長さの下限値については特に限定はなく、より小さい値であることが好ましいが、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形体の場合、50μm付近が実力値下限と考えられる。
【0041】
車載用部品、特に金属化フィルムコンデンサ部材用材料としては、小型化に伴うダウンサイジングにより、例えば金属端子をアッセンブリーする場合、端子間距離を短く取らざるを得ず、このため昨今耐トラッキング性のような絶縁特性をより厳しく問われる傾向にある。本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形により成形した成形品は
耐トラッキング指数が225V以上であることを特徴とし、これら部材として優れている。ポリフェニレンスルフィド樹脂そのものの耐トラッキング性は決して高くないが、ビニル系共重合体が耐トラッキング性に優れ、本効果により本組成物の耐トラッキング性向上に繋がったものと考えられる。耐トラッキング指数については、本組成物においては300V付近が実力上限値と考えられる。
【0042】
以上のように、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、上述した各特性について均衡して優れていることから、光学記録装置部品、中でもCD、DVD、レーザーディスク、光磁気ディスクなどの光ピックアップ部品用途、また車載用部品、特に外装ケースなどの金属化フィルムコンデンサ部材用材料に特に好適に用いられる。
【0043】
その他本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0045】
[使用原材料]
PPS−1:攪拌機付きオートクレーブに47%水硫化ナトリウム水溶液2.98kg(25モル)、48%水酸化ナトリウム2.17kg(26モル)ならびにN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す。)5kgを仕込み、徐々に205℃まで昇温し、水2.7kgを含む抽出水2.8リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロロベンゼン3.75kg(25.5モル)ならびにNMP2.5kgを加えて、270℃で1時間加熱した。これを濾過し、pH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、ポリマーを120℃で24時間減圧乾燥してMFR6000(g/10min)のPPS−1を得た。なお、MFRは、315.5℃、5分滞留、荷重5000g(オリフィス直径2.095mm、長さ8.00mm)の条件下でメルトインデクサーを用いて測定した。またポリフェニレンスルフィド樹脂の加熱減量は、0.5重量%であった。なお、加熱減量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂を1gをアルミカップに入れ、150℃の雰囲気で1時間予備乾燥した後、重量を測定し、371℃の空気中で1時間処理し、再度重量を測定した。371℃の処理による重量の減量を処理前の重量で徐してパーセント表示して加熱減量とした。
【0046】
PPS−2:攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、NMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.763kg(25.6モル)ならびにNMP1.8kgを加えて、窒素下に密閉し、274℃まで昇温後、274℃で0.8時間反応した。オートクレーブ下部に設けた抜き出しバルブを常温常圧下で開放して、内容物を抜き出し、80℃の熱水で洗浄した。これを濾過し、酢酸カルシウムを10.4g入れた水溶液25リットル中に投入し、密閉されたオートクレーブ中で192℃で約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥し、MFR3000g/10分のPPS−2を得た。
【0047】
ビニル系共重合体:東レ(株)製、GMA変性AS樹脂“AS−3G”。
【0048】
シラン系カップリング剤:信越化学工業社製、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン“KBM−303”
【0049】
ガラス繊維(以下、GFと略す):日本電気硝子社製、ガラスチョップドストランド“ECS 03 T−747H”
【0050】
炭酸カルシウム(以下、炭カルと略す):同和カルファイン社製、重質炭酸カルシウム“KSS−1000”
【0051】
[樹脂ペレット調整方法]
上記各原材料を表1〜表4に示す割合で予めドライブレンドし、シリンダー温度280℃(ホッパー下側)〜310℃(吐出口側)に設定したスクリュー型2軸押出機(日本製鋼所製TEX−44)を用いて溶融混練、ペレタイズしてペレット状樹脂組成物を作製した。 このペレットを用い、以降に示す各手段により機械物性、光軸安定性、スパイラル流動長、バリ長さの測定を行った。なお、いずれの測定時にも共通し、成形前にはペレットを130℃に温調した熱風乾燥機中にて3時間予備乾燥を行った。
【0052】
[機械物性の測定]
引張特性:ASTM D638に従って測定した。
【0053】
曲げ特性:ASTM D790に従って測定した。
【0054】
アイゾット衝撃強度:ASTM D256に従って測定した。
【0055】
何れの材料も機械特性評価用試験片は、東芝機械IS80型射出成形機にて、シリンダー温度:320℃、金型温度:140℃、射出−冷却時間:13−15秒、射出速度:75%、射出圧力:充填下限圧力+10kg/cm(G)の設定条件で射出成形することにより作成した。
【0056】
[光軸安定性評価(光軸ずれ量)の測定]
樹脂ペレットをシリンダー温度320℃、金型温度130℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、成形下限圧力+5kgf/cmゲージの条件で射出成形し、図1に示す形状の光ピックアップモデル射出成形品1を得た。上記光ピックアップモデル射出成形品1の中央切欠部分にハーフミラー2(材質:ガラス基材)を設置し、恒温槽の中で焦点距離200mm、波長650nm、出力0.3mWの半導体レーザーオートコリメーターから発振したレーザー光を当て、反射してくるレーザー光をCCDカメラにて受光した。なお、これら測定には(株)クボテック製光軸傾き測定機を用いた。23℃における反射レーザー光の位置を原点とし、20分かけて80℃まで昇温し、60分放置後の光軸変動値を測定した。この値が小さいほどレーザー焦点の環境安定性に優れていると言える。
【0057】
図1は、本射出成形品正面図を示したものである。又、図2はハーフミラーを設置した成形品を固定用治具にセットした状態の斜視図である。射出成形品1の中央切欠部分にはハーフミラー2が設置され、これらは固定用治具3によりハーフミラーが床面に対しフラットとなるよう固定される。半導体レーザーオートコリメーターから発振されたレーザー光aは、ハーフミラー2の表面に対して直角に入射し、反射レーザー光bの通り直角に反射する。従って、ハーフミラーを設置した面が変位すると、反射光の反射角も直角からずれが生じる。
【0058】
[スパイラル流動長の測定]
樹脂ペレットをシリンダー温度320℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、130℃に温調した幅5mm、深さ1mmのスパイラル状キャビティーを有する金型を用い、射出圧98MPaとした際の流動長を測定、これを以てスパイラル流動長とした。なお、射出速度は全開とし、1速1圧の設定にて測定を行った。この値が大きい程流動性に優れていると言える。
【0059】
[バリ長さの測定]
樹脂ペレットをシリンダー温度320℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、金型温度130℃に温調した、円周上に(a)幅4mm×長さ20mm×深さ500μm、(b)幅4mm×長さ20mm×深さ20μmの2つの突起部を有する80mmφ×厚さ2mmの円盤形状金型を用いて射出成形を行い、(a)の突起部が充填される最下限圧力に10MPaを加えて成形した時の(b)の突起部の充填長さをバリ長さとして、光学投影機にて100倍に拡大し長さを測定した。
【0060】
[耐トラッキング指数の測定]
樹脂ペレットをシリンダー温度320℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、金型温度130℃に温調した、幅80mm×長さ80mm×厚さ3mmの角板形状金型を用いて射出成形を行い、キャビティーが充填される最下限圧力に10MPaを加えて得た試験片を用い、IEC112第3版に準拠し、トラッキングが生じる印加電圧を測定した。
【0061】
[実施例1〜13]
表1、表2、表3に実施例を示す。実施例1〜3では、PPS−1を単独でベースとしており、いずれも優れた光軸ずれ量、バーフロー流動長、バリ長さ、耐トラッキング指数を示す。実施例2、3では、シラン系カップリング剤の量を増量しており、実施例1に比べ流動性は劣るものの、低バリ性に優れ、低い光軸ずれ量を保っている。又、実施例4〜6では、PPS−1とPPS−2を併用しており、PPS−1単独に比べ流動性は劣るものの、実施例1〜3と同一の傾向を示す。実施例7は請求項1の範囲に該当する組成であるが、繊維状充填材が非繊維状充填材より多く、繊維状充填材が非繊維状充填材より少ない場合に比べて光軸ずれ量が大きくなる。また、繊維状充填材と非繊維状充填材の合計が70重量%であり、流動性の面でコンデンサーケースへの適用は困難である。
【0062】
実施例8〜13では、繊維状充填材が非繊維状充填材より多く、かつその合計が50重量%である為、流動性が大きく向上している。実施例9ではベースポリマー粘度が上昇している為に他の例に比べ流動性に劣るが、バーフロー流動長は150mmと高い値を示す。実施例11〜12では、ビニル系共重合体の増加により流動性、耐トラッキング指数が向上することが判る。又、実施例13では繊維状充填材と非繊維状充填材の差が小さくなっており、流動性は実施例7と比べ劣るものの、バーフロー流動長は150mm以上を保っている。なお、耐トラッキング指数に関しては実施例1〜12全てで225[V]以上を示し、ビニル系共重合体添加の効果が確認出来る。
【0063】
[比較例1〜10]
表3、表4に比較例を示す。比較例1はビニル系共重合体を含有せず、含有する場合と比して光軸ずれ量が増加し、耐トラッキング指数が低下する。比較例2はシラン系カップリング剤を含有せず、バリ長さが悪化する。一方、シラン系カップリング剤を4部含有する比較例3の場合、バリ長さは低下するが流動性が大きく悪化する。比較例4〜5では、ビニル系共重合体を30部含有するが、共に強度・流動性が低下することが判る。又、比較例6〜7では繊維状充填剤、非繊維状充填剤を併用せず、それぞれ単独で使用しているが、比較例6では光軸ずれ量、比較例7では強度が大きく悪化することが判る。
【0064】
また、比較例8では繊維状充填材が非繊維状充填材より少なく、バーフロー流動長が150mmより少なくなっていることが判る。また、比較例9〜10ではビニル系共重合体を含有しないと耐トラッキング指数が大きく低下し、流動性も低下することが判る。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、レーザー光を利用して書き込み及び読み出しを行うCD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAMなどに代表される光学記録装置に使用される、光ピックアップスライドベース等の各種部品、およびコンデンサ素子を外装ケース内に備え、外装ケース内に樹脂充填されてなる金属化フィルムコンデンサ部材に使用される、外装ケース等の各種部品として展開が期待出来るが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例において光軸安定性評価のために使用した、射出成形品1を示す図である。
【図2】実施例において光軸安定性評価のために使用した、ハーフミラー2を設置した射出成形品1を固定用冶具3の上で固定した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1.射出成形品
2.ハーフミラー
3、固定用冶具
a.半導体レーザーオートコリメーターから発振されたレーザー光の入射方向
b.反射レーザー光の反射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂15〜45重量%、(B)ビニル系共重合体 5〜25重量%、(C)繊維状充填剤10〜50重量%、(D)非繊維状充填剤10〜50重量%を配合してなる組成物であって、(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対し(E)シラン系カップリング剤0.01〜3重量部を添加してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項2】
(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量より少ないことを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項3】
射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が90mm以上であることを特徴とする、請求項2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項4】
(C)繊維状充填剤の配合量が(D)非繊維状充填剤の配合量より多く、かつ(C)+(D)の合計が、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100重量%として60重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物
【請求項5】
射出成形機シリンダー設定温度320℃、射出圧98MPaとした際の、130℃に温調した幅5mm、厚さ1mmの金型キャビティーでのスパイラル流動長が150mm以上であることを特徴とする、請求項4記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
【請求項7】
耐トラッキング指数が225V以上であることを特徴とする請求項6記載の成形品。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、23℃から80℃へ温度変化させた際の光軸ずれ量が2.5分以下であることを特徴とする成形品。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、円周上に(a)幅4mm×長さ20mm×深さ500μm、(b)幅4mm×長さ20mm×深さ20μmの2つの突起部を有する80mmφ×2mmtの円盤形状金型を130℃に温調し、成形機シリンダー設定温度320℃にて射出成形を行った際、(a)の突起部が充填される最下限圧力に10MPaを加えて成形した時の(b)の突起部の充填長さが130μm以下であることを特徴とする成形品。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかの成形品からなる光学記録装置部品。
【請求項11】
請求項1、4または5記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品であって、成形品厚みが2mm以下である成形品。
【請求項12】
請求項6、7または11記載の成形品からなる金属化フィルムコンデンサ部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−186672(P2007−186672A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265719(P2006−265719)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】