説明

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物

【課題】ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂で構成されるポリマーアロイにおいて、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を与え、さらには耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度のバランスに優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】0〜96重量%の(a)特定のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂及び100〜4重量%の(b)特定の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂で構成されるポリフェニレンスルフィド樹脂を45〜99重量部で含み、(c)ポリフェニレンエーテル系樹脂を55〜1重量部で含み、且つ、成分(a)〜成分(c)の合計100重量部あたり(d)グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体を1〜20重量部で含む、樹脂組成物およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を与え、さらには耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れた樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、耐熱性の高い結晶性樹脂の一つとしてガラス繊維等のフィラーを配合し、耐熱性、耐薬品性、剛性及び難燃性に優れた樹脂成形材料として、電気・電子・OA部品、自動車電装系部品として利用されている。
中でも、光学機器機構部品の一つであるコンパクトディスクドライブなどに内蔵されている光ピックアップベースや、コピー機の光学系ハウジングは、アルミニウム、亜鉛等の金属ダイキャストにより製造されていたが、近年、軽量化、生産性向上の観点より、樹脂化への転換がなされており、特にポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が多く用いられてきている。
【0003】
しかしながら、ポリフェニレンスルフィド樹脂は樹脂性能として優れた耐熱性、加工性を有するものの、成形時は酸素雰囲気下で高温状態で溶融するため成形金型の金属を腐食させたり、ガス発生に伴い金型表面や成型品表面にシミ焼けやヤニ状の物質が付着したり、ウェルド部を有する成形金型ではガス抜けが悪化すると黒着色成型品のウェルド部周辺が外観として白化した状態になる等、成形時に多くの問題点を引き起こす可能性のある樹脂であることが周知となっている。これらの問題点は、ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンエーテルで構成されているポリマーアロイでも同様な問題点を引き起こしている。
【0004】
そしてさらに、このポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなるポリマーアロイにおいては、ポリフェニレンスルフィド中にポリフェニレンエーテルを含むことにより成形時のバリ発生を抑制する利点が認められるものの、欠点として特に無機系充填剤を含んだポリマーアロイにおいて難燃性が極度に悪化する現象が起こっている。
これら問題点のうち、成形時の成形金型の金属を腐食させたり、ガス発生に伴い金型表面や成型品表面にシミ焼けやヤニ状の物質が付着したり、ウェルド部を有する成形金型ではガス抜けが悪化すると黒着色成型品のウェルド部周辺が外観として白化する等のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関して材料面からの改良工夫が数多く提案されている。
【0005】
これらの技術としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂に無機質のガススカベンジャーを配合した組成物(例えば、特許文献1〜3参照)が提案されている。また、さらに成形時の金型へのヤニ付着防止やガス発生に伴う外観改良効果を得るために、ポリフェニレンスルフィドと特定の化合物や無機充填剤からなる樹脂組成物(例えば、特許文献4〜6参照)が提案されている。
【0006】
これら文献には、ベースとなるポリフェニレンスルフィド樹脂の欠点を解消するために他の添加剤を配合することにより、欠点である金型の金属表面腐食防止、金型表面や成型品表面にシミ焼けやヤニ状の物質の付着を防止し、成型品の外観改良を試みているが、これらの方法は単なる原因物質を隠蔽する手段に留まっており、ガス抜けが悪い成形条件で長時間成形した場合、特にウェルド部においては依然としてシミ焼けや、黒着色品においては白化現象が起こり成型品外観が顕著に悪化するなど、成型品とした場合未だ解決されていない問題点を数多く有しているのが実状である。
【0007】
もう一つの問題点として、ポリフェニレンスルフィド樹脂は成形時に成形品のバリ発生が著しいことが知られており、工業的に生産性・経済性を悪化させる要因となっている。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その製法によりリニア(直鎖)型ポリフェニレンスルフィド樹脂と架橋型(半架橋型も含む)ポリフェニレンスルフィド樹脂に二分されている。後者の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂は前者のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を重合した後にさらに酸素の存在下でポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下の温度で加熱処理し酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めた熱可塑性樹脂であり、リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂と比べ、機械的強度ならびに耐熱性に優位性を示すものの、靱性に劣る欠点を有している。一方、靱性に優れるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂は重合技術上の制約であるリニア型での分子鎖長の増大化が困難なため、機械的強度ならびに耐熱性の改善が望めず、さらには成形時に成型バリが発生しやすいという問題を有している。
特に成型バリが発生しやすいことはリニア型と架橋型ではその程度に多少の優劣はあるものの、非晶性熱可塑性樹脂と比べポリフェニレンスルフィド樹脂は一様に成型バリが発生しやすい樹脂として公知となっている。
【0008】
中でも、光学機器機構部品の一つであるコンパクトディスクドライブなどに内蔵されている光ピックアップベースや、コピー機の光学系ハウジングは、アルミニウム、亜鉛等の金属ダイキャスト等により製造されていたが、近年、軽量化、生産性向上の観点より、樹脂化への転換が進展されている。これら樹脂化への転換上、樹脂成型品として耐熱性、熱変化に伴う寸法精度の高さの他に成形時の成型バリ発生の低減化された材料が要求されている。
【0009】
このため、これら用途の成型品の原材料であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関して材料面からの改良工夫が数多く提案されおり、成形時の大きな課題である成型バリ発生を抑制する技術として、結晶性樹脂であるポリフェニレンスルフィド樹脂に非結晶性樹脂のポリフェニレンエーテル樹脂を用いてポリマーアロイ化した技術が数多く提案されている。
これらの技術としては、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂成分に対して、特定の無機化合物、繊維状充填剤及びその他の無機充填剤を配合してなる、成形時のバリ発生が少なく、剛性、寸法精度に優れた樹脂組成物(例えば、特許文献7〜8参照)が提案されている。
【0010】
また、同様な効果を得るために、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂成分に対して、シランカップリング剤、繊維状充填剤及びその他の無機充填剤を配合してなる樹脂組成物(例えば、特許文献9〜10参照)が提案され、さらに、光学部品として光軸ズレが小さい樹脂組成物(特許文献11参照)を得るために、用いるポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルの体積分率を規定し、無機充填剤を含んだ樹脂組成物が提案されている。また、射出成型時のバリ発生低下を図るため、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル及びガラス繊維の各成分比率を特定した樹脂組成物(特許文献12参照)が提案されている。
【0011】
そして、吸水性や異方性が小さく、寸法安定性に優れたポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物を得るために、特定のリニア型ポリフェニレンスルフィドと特定の架橋型ポリフェニレンスルフィドを併用すること(特許文献13参照)が提案されている。又、リニア型ポリフェニレンスルフィドと架橋型ポリフェニレンスルフィドを併用し、さらに他の少量の樹脂を併用したブロー成形に適した樹脂組成物(特許文献14参照)が提案されている。
【0012】
なお本発明者らは、先に、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂によるポリマーアロイ材料として特定の相溶化剤を用いた樹脂組成物(例えば、特許文献15〜16参照)を提案した。
これら文献には、ベースとなるポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂成分に対して各種無機充填剤を配合した組成物とすることにより、樹脂の欠点である温度変化による寸法精度を向上させたり、成形時のバリ発生を抑制させたりしているが耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度に関する改良は未だ不十分であるのが実状である。
さらに、樹脂成分にエラストマー成分としてビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合体及び/又はその水素添加物を加え、さらなる靱性改良を施した樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献17、特許文献18、特許文献19参照。)。
【0013】
しかし、これらに提案されているポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテル及びエラストマー成分からなる樹脂組成物は機械的物性の改良がなされているものの、近年の事務機器分野や情報機器分野等のフレームシャーシをはじめとする機構部品における小型、軽量、精密化に伴う成型品の薄肉化の為、より高いレベルの耐衝撃性、剛性、耐熱性の要求を満足するものではなかった。
【0014】
【特許文献1】特開昭59−209644号公報
【特許文献2】特開昭60−1241号公報
【特許文献3】特開平6−322271号公報
【特許文献4】特開2000−265060号公報
【特許文献5】特開2001−98151号公報
【特許文献6】特開2002−129014号公報
【特許文献7】特開平9−157525号公報
【特許文献8】特開平11−106655号公報
【特許文献9】特開平11−158374号公報
【特許文献10】特開2002−69298号公報
【特許文献11】特開2001−294751号公報
【特許文献12】特開2002−179915号公報
【特許文献13】特開2002−121383号公報
【特許文献14】特開平11−228829号公報
【特許文献15】特開平1−213359号公報
【特許文献16】特開2001−302916号公報
【特許文献17】特開平09−161737号公報
【特許文献18】特開平10−053706号公報
【特許文献19】特開2002−012764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の解決課題は、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂で構成されるポリマーアロイにおいて、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を与え、さらには耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度のバランスに優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決すべく、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる樹脂組成物に関して鋭意検討した結果、供するポリフェニレンスルフィド樹脂中に含まれるオリゴマー量と揮発分を特定し、さらにはポリフェニレンスルフィド樹脂の構造を限定することにより、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を与え、さらには耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れることを見いだし、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
[1] 0〜96重量%の成分(a)塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であり、且つ末端−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)が20μmol/g以上のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂及び
100〜4重量%の成分(b)塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1重量%以下であり、且つ320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂で構成されるポリフェニレンスルフィド樹脂を、45〜99重量部で含み、
成分(c)ポリフェニレンエーテル系樹脂を55〜1重量部で含み、且つ、
成分(d)グリシジル基、又はオキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体を、前記成分(a)〜成分(c)の合計100重量部あたり1〜20重量部で含む樹脂組成物、
[2] 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、1〜96重量%の前記成分(a)及び99〜4重量%の前記成分(b)で構成される、[1]に記載の樹脂組成物、
[3] 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂を45〜85重量部で含み、且つ前記成分(c)を55〜15重量部で含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物、
[4] さらに成分(e)無機系充填剤を、前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して20〜400重量部で含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[5] さらに成分(f)耐衝撃付与剤を、前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して、5〜30重量部で含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[6] 前記成分(a)及び前記成分(b)の溶融粘度がいずれも1〜10000ポイズである、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[7] 前記成分(c)が、ポリフェニレンエーテル=100重量%又はポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂=1〜99重量%/99〜1重量%のいずれか1つの構成比率を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[8] 前記成分(d)が、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体及びスチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマーがグラフトしたグラフト共重合体、並びに、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマー及びアクリロニトリルがグラフトしたグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[9] 前記成分(e)が、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石膏繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウム、多孔質炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウィスカー、ハイドロタルサイト、カオリン、クレー、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック(導電性カーボンも含む)、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、フライアッシュ(石炭灰)、ワラステナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、マイカ、タルク、グラファイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、及び、二硫化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[4]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[10] 前記成分(f)が、
ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を共重合して得られるブロック共重合体、前記ブロック共重合体をさらに水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体、前記ブロック共重合体若しくは水添ブロック共重合体であって、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する上記ブロック共重合体若しくは水添ブロック共重合体、並びに
エチレン/α−オレフィン共重合体、前記エチレン/α−オレフィン共重合体であって、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する上記エチレン/α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[5]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[11] 前記成分(f)を5〜30重量部で含み、前記成分(f)が、
成分(f1)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を含む少なくとも1個の重合体ブロックBとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が55〜95重量%である水添ブロック共重合体、
成分(f2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックCとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が1〜55重量%未満である水添ブロック共重合体、及び
成分(f3)オレフィン系エラストマー
からなる群より選ばれる少なくとも1種で構成され、且つ
前記成分(f)中の結合したビニル芳香族化合物の含有量が、20〜55重量%である、[5]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[12] 前記成分(f1)の前記重合体ブロックBの少なくとも1つが、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体である、[11]に記載の樹脂組成物、
[13] 少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有し、280℃以上に温度設定した二軸押出機を用いて、前記成分(a)〜成分(d)を溶融混練した後に、該二軸押出機の一つ以上の前記ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練することを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法、
[14] 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、1−96重量%の前記成分(a)及び99−4重量%の前記成分(b)で構成され、該ポリフェニレンスルフィド樹脂が、前記成分(a)を少なくとも30重量%で含み、前記成分(c)/前記ポリフェニレンスルフィド樹脂=70/30(重量比)以下であって、且つ、前記2個のベント口をそれぞれ、第1ベント口及び第2ベント口と称する場合、前記脱気が該第1ベント口で行われ、次に該第1ベント口通過後の溶融混練物存在下に残量の該ポリフェニレンスルフィド樹脂を供給して溶融混練した後に、さらに前記脱気が前記第2ベント口で行われる、[13]に記載の樹脂組成物の製造方法、
[15] 全ての前記成分(a)〜成分(d)からなる溶融混練物存在下に、さらに成分(e)無機系充填剤を前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して20〜400重量部で供給して溶融混練した後に、さらに該二軸押出機の第2ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気する、[13]又は[14]に記載の樹脂組成物の製造方法、
[16] 前記成分(d)の全量と共に成分(f)耐衝撃付与剤全量を供給する、[14]又は[15]に記載の樹脂組成物の製造方法、
[17] [13]〜[16]のいずれかに記載の製造方法で得られた樹脂組成物、
[18] 光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、自動車ランプ部品、自動車ラジエタータンク部品又は自動車エンジンルーム内部品の成形材料として用いられる、[1]〜[12]及び[17]のいずれかに記載の樹脂組成物、
を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物において、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を与え、さらには耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスを改良することができ、産業上、大いに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、下記に示す成分(a)のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂、成分(b)の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂、成分(c)のポリフェニレンエーテル系樹脂及び(d)グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体から構成される。
【0020】
本発明で用いられる成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、リニアPPSと略記する。)は、下記一般式(1)で示されるアリーレンスルフィドの繰返し単位を通常50モル%、好ましくは70モル%さらに好ましくは90モル%以上で含む重合体である。
[−Ar−S−] (1)
(ここで、Arはアリーレン基を示し、アリーレン基としては、例えばp−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基が好ましい。)、p,p′−ジフェニレンスルホン基、p,p′−ビフェニレン基、p,p′−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基等が挙げられる。)
【0021】
なお、リニアPPSは構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよく、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して用いて得られるコポリマーであってもよい。中でも、主構成要素としてp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂が、加工性、耐熱性に優れ、且つ、工業的に入手が容易なことから好ましい。
【0022】
このリニアPPSの製造方法としては、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウム又は硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。これらの製造方法は公知であり、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号及び米国特許第3274165号明細書、さらに特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報、等に記載された方法及びこれらの特許等に例示された先行技術の方法によりリニアPPSを得ることが出来る。
【0023】
そして成分(b)である架橋型(半架橋型も含む)ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、架橋型PPSと略記する。)は、上記の成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を重合した後に、さらに酸素の存在下でポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下の温度で加熱処理し酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めたものである。
そして本発明で用いる成分(a)のリニアPPSは、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であり、かつ末端−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)が20μmol/g以上、好ましくは20〜60μmol/gであるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂である。
【0024】
ここで、塩化メチレンによる抽出量の測定は以下の方法により求めることができる。すなわち、リニアPPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、6時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。さらに、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、秤量瓶を約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量より塩化メチレンによる抽出量、すなわちリニアPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
【0025】
そしてここでいう末端−SX基の量は以下の方法により定量することができる。すなわち、リニアPPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、乾燥リニアPPS粉末20gをN−メチル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合しスラリー状態にする。かかるスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。ここで得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで1Nの塩酸を加えて該スラリーのPHを4.5に調整する。次に、25℃で30分間撹拌し、濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりリニアPPS中に存在する末端−SX基の量を知ることができる。
【0026】
ここで、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下、末端−SX基が20μmol/g以上を満足するリニアPPSの製造方法の具体例としては、特開平8−253587号公報に記載されているように、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させ、そして反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを反応溶液上部の液層に還流させることによりオリゴマー成分を減少させることにより、又は重合後のリニア型PPSの有機アミド系溶媒(例えば、N−メチルピロリドン)による洗浄回数を増やすことにより不要な塩化メチレンによる抽出量を減らす方法が挙げられる。
【0027】
そして本発明で用いる成分(b)である架橋型PPSは、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1重量%以下であり、且つ320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂である。
ここで、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量の測定は以下の方法により求めることができる。すなわち、PPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、6時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。さらに、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、秤量瓶を約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量より塩化メチレンによる抽出量、すなわちPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
【0028】
そしてここでいう320℃溶融状態で捕集される揮発分の定量は以下の方法により求めることができる。すなわち、架橋型PPS粉末を0.5gを気流入り口と出口を有する密栓付き試験管に秤量し、320℃に加熱したハンダ浴に30分間浸漬しながら、試験管の気流入り口より窒素ガスを100cc/minの流速で注入し、試験管内に発生した架橋PPSに由来する揮発分を含むガスを試験管の気流出口よりパージし、パージされたガスはアセトンを入れた気流入り口と出口を有する密栓付き試験管の気流入り口より試験管内のアセトン中でバブリングさせ、揮発成分をアセトン中に溶解させる。アセトン中に溶解した架橋PPSの揮発分は、ガスクロマトグラフ質量分析器(GC−MS)を用いて、50℃〜290℃の昇温分析して検出される全成分をモノクロロベンゼンと同一感度と仮定して定量し、架橋PPS中の揮発分を知ることができる。
【0029】
この成分(b)である、塩化メチレンによる抽出量が1重量%以下であり、且つ320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下の架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造においては、その前駆体であるリニア型PPSの重合段階、洗浄工程で不要な塩化メチレンによる抽出量及び揮発分を減らす工夫が必要であり、例えば特開平8−253587号公報に記載されているように、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてリニア型PPSを得る際に、反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを反応溶液上部の液層に還流させることによりオリゴマー成分を減少させる方法により不要な塩化メチレンによる抽出量を減らしたり、重合後のリニア型PPSの有機アミド系溶媒(例えば、N−メチルピロリドン)による洗浄回数を増やすことにより不要な塩化メチレンによる抽出量を減らすことができる。
【0030】
また、揮発分の減少化は、上記の有機アミド系溶媒による洗浄処理の他に、水洗浄処理、酸洗浄処理の回数を増やすことにより減少させることが出来るほかに、リニア型PPSを架橋型PPSとするため酸素含有ガス存在下でリニア型PPSを熱処理し酸化架橋を促進する工程でも加熱温度、時間を調整することにより揮発分を減少させることが可能である。これらの方法以外にも、塩化メチレンによる抽出量が1重量%以上であったり、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以上有する架橋型PPSは積極的に塩化メチレンにて洗浄し、不要な塩化メチレンによる抽出量や揮発分を減らし、本発明の成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂として使用することができる。
【0031】
そして、上記したように本発明で供する成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂は、塩化メチレンによる抽出量が1重量%以下、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下であれば、いかなる製法で得られてもよい。
このように、本発明で供する成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂は、塩化メチレンによる抽出量が1重量%以下、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下であれば、得られた樹脂組成物を成型品として長期間成型した際にウェルド部分の白化現象を大幅に改良し、成型品の外観が優れ、さらに困難であったポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物の難燃性を大幅に改良することができる。
【0032】
本発明において、上記の成分(a)であるリニアPPS及び成分(b)である架橋PPSはいずれも、300℃における溶融粘度が、1〜10000ポイズ、好ましくは50〜8000ポイズ、より好ましくは100〜5000ポイズのものが使用できる。本発明において、溶融粘度とは、JISK−7210を参考試験法とし、フローテスター((株)島津製作所製CFT−500型)を用いて、PPSを300℃、6分間予熱した後、荷重196N、ダイ長さ(L)/ダイ径(D)=10mm/1mmで測定した値である。
【0033】
次に本発明の成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記の結合単位式(2)で示される繰返し単位からなり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定したポリスチレン換算した数平均分子量が1000以上、好ましくは1500〜50000、より好ましくは1500〜30000の範囲にあるホモ重合体及び/又は共重合体のポリフェニレンエーテル樹脂(以下、PPEと略記する。)である。
【0034】
【化1】

【0035】
(ここで、R,R,R及びRはそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級又は第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0036】
このPPEの具体的な例としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0037】
かかるPPEの製造方法は、公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号に記載されているように、Hayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用いて例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易にPPEを製造することができ、そのほかにも米国特許第3306875号、同第3257357号及び同第3257358号、特公昭52−17880号及び特開昭50−51197号及び同63−152628号等に記載された方法で容易にPPEを製造することができる。
【0038】
本発明で供する成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂は、上記のようにPPE成分=100重量%であっても利用可能であるが、本発明では、PPE/スチレン系樹脂=1〜99重量%/99〜1重量%の割合で構成されたものが好ましく用いることができ、中でも、本発明の樹脂組成物において、後述する成分(e)の無機系充填剤を含んだ樹脂組成物の加工性を改善する上で、PPE/スチレン系樹脂の比率は、80/20〜20/80(単位は重量%)の比率で用いることが最も好ましい。
【0039】
かかるスチレン系樹脂としては、スチレン系化合物の単独重合体、2種以上のスチレン系化合物の共重合体及びスチレン系化合物の重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなるゴム変性スチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン)等が挙げられる。これら重合体をもたらすスチレン系化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
これらスチレン系化合物は、2種以上を併用して得られる共重合体でもよいが、中でもスチレンを単独で用いて重合することにより得られるポリスチレンが好ましい。これらの重合体としては、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン等の立体規則構造を有するポリスチレンが有効に利用することができる。なお、このPPEと併用して用いるスチレン系樹脂には、下記に示す成分(d)である共重合体として挙げてあるスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体及びスチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体、並びに成分(f)に該当するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を共重合して得られるブロック共重合体及びこのブロック共重合体をさらに水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体で代表されるスチレン−ブタジエンブロック共重合体やその水素添加物である水添ブロック共重合体は含まれない。
【0041】
本発明の樹脂組成物では、上記のポリフェニレンスルフィド樹脂の(a)リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂/(b)架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合比率は0〜96重量%/100〜4重量%の中から選択することができ、なかでもリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂と架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂とを併用した樹脂組成物が最も好ましい樹脂組成物であり、その(a)リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂/(b)架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合比率は10〜90重量%/90〜10重量%が好ましく、より好ましくは15〜80重量%/85〜20重量%である。そして成分(a)及び(b)のポリフェニレンスルフィド樹脂と成分(c)のポリフェニレンエーテル系樹脂との配合割合は、(a)+(b)/(c)=45〜99重量部/55〜1重量部、好ましくは45〜85重量部/55〜15重量部、より好ましくは55〜85重量部/45〜15重量部である。
【0042】
かかるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂と架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂を併用した樹脂組成物では、(a)リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂はポリフェニレンスルフィド樹脂中に1重量%以上が必要であり、96重量%以下であれば、靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成される樹脂組成物を与える。また成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂は1重量部以上が必要であり、55重量部以下であれば加工性、耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成される樹脂組成物を与える。
【0043】
次に本発明の成分(d)として用いる共重合体は、グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体であり、かかる共重合体がスチレン系共重合体の場合は、成分(a)及び(b)のポリフェニレンスルフィド樹脂と成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂とを混合する際の乳化分散剤として作用して、本発明の樹脂組成物を成型した際に成型品のバリ発生を顕著に低減化する他に、耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れた効果を奏するものである。また、かかる共重合体がエチレン系共重合体の場合は靱性(衝撃強度)に優れた効果を奏するものである。
【0044】
かかる成分(d)である共重合体は、グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマーとスチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体や、グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマーとエチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体が好ましく利用することができる。ここでいうスチレンを主たる成分とするモノマーとは、スチレン成分が100重量%は何ら問題ないが、スチレンと共重合可能な他のモノマーが存在する場合は、その共重合体鎖が成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性を保持する上で、少なくともスチレンモノマーを65重量%以上、より好ましくは75〜95重量%含むことが必要である。同様にエチレンを主たる成分とするモノマーとは、エチレン成分が100重量%は何ら問題ないが、エチレンと共重合可能な他のモノマーが存在する場合は、少なくともエチレンモノマーを30重量%以上、より好ましくは40重量%以上含むことが必要である。
【0045】
これら共重合体を構成するグリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマーの例として具体的には、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、中でもグリシジルメタアクリレートが好ましい。また、上記のオキサゾリル基含有不飽和モノマーとしては、例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手でき好ましく使用することができる。
【0046】
これら、グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマーと共重合する他の不飽和モノマーとしては、必須成分のスチレン、エチレン等の他に、共重合成分としてアクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。また、グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマーは成分(d)の共重合体中に0.3〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜10重量%含有しなければならない。かかる成分(d)の共重合体のグリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有する不飽和モノマー量は、0.3重量%以上が必要であり、20重量%以下であれば、成分(a)及び(b)からなるポリフェニレンスルフィド樹脂と成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性が良好となり、これにより得られた樹脂組成物を用いて成型した成型品のバリ発生を大きく抑制することができる他に、耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れた効果をもたらす。
【0047】
これら共重合可能な不飽和モノマーを共重合して得られる成分(d)である共重合体の例としては、例えば、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体及びスチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられるが、成分(d)である共重合体としてエチレン系共重合体にスチレン系モノマー等がグラフトした共重合体であってもよく、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマーがグラフトしたグラフト共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマー及びアクリロニトリルがグラフトしたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0048】
この成分(d)の共重合体の配合量は、上記の成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部が必要である。かかる成分(d)の配合量が1重量部以上であれば、成分(a)及び(b)であるポリフェニレンスルフィド樹脂と成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性が良くなり、20重量部以下であれば、得られた樹脂組成物を用いて成型した成型品のバリ発生を大きく抑制することができる他に、耐熱性(衝撃強度)及び靱性と機械的強度のバランスに優れた効果をもたらす。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、上記の成分(a)〜(d)からなることを特徴とするが、さらに下記の成分(e)である無機系充填剤及び/又は成分(f)である耐衝撃付与剤をさらに加えた樹脂組成物とすることができる。
本発明の成分(e)として用いる無機系充填剤は、通常、機械的強度の補強や、成形品の寸法精度改良等の機能を付与する目的で樹脂組成物に配合することができる。かかる無機系充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石膏繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウム、多孔質炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウィスカー、ハイドロタルサイト、カオリン、クレー、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック(導電性カーボンも含む)、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、フライアッシュ(石炭灰)、ワラステナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、マイカ、タルク、グラファイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、二硫化モリブデン等が挙げられ、これらの中から目的に応じ少なくとも1種の無機系充填剤を選択して用いることができる。これらの無機系充填剤は、さらにシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪族金属塩等の表面処理剤で処理した物や、インターカレーション法によりアンモニウム塩等による有機化処理した物や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂をバインダーとして処理したものであってもよい。
【0050】
この成分(e)である無機系充填剤の配合量は、上記の成分(a)〜(d)の合計100重量部に対して、20〜400重量部、より好ましくは、50〜250重量部、さらに好ましくは60〜200重量部である。かかる配合量が20重量部以上であれば、機械的強度が改良される他に、得られる樹脂組成物を用いて成型して得られる成型品の寸法精度が改良され、配合量が400重量部以下において、得られる樹脂組成物を成型して得られる成型品は、ヒケが少なく、温度変化(−30℃〜100℃)による優れた寸法精度及びその異方性を保持した成型品となり得る。
【0051】
そして本発明の成分(f)として用いる耐衝撃付与剤は、通常、衝撃強度を付与する目的で樹脂組成物に配合することができる。かかる耐衝撃付与剤としては、例えば、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を共重合して得られるブロック共重合体及びこのブロック共重合体をさらに水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体、さらにはこれらブロック共重合体、水添ブロック共重合体に、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を付与したブロック共重合体が利用でき、さらにはエチレン/α−オレフィン共重合体やこのエチレン/α−オレフィン共重合体に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する不飽和化合物をラジカル開始剤の存在下又は非存在下でグラフト反応させて得られる官能基が付与された共重合体や、エチレン及び/又は他のα−オレフィンと水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する官能基含有不飽和化合物を共重合して得られる官能基含有共重合体等が挙げられ、これらの中から目的に応じ少なくとも1種を本発明の成分(f)である耐衝撃付与剤として選択して用いることができる。
【0052】
中でも、成分(f)として、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を含む少なくとも1個の重合体ブロックBとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が55〜95重量%である水添ブロック共重合体(f1)、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックCとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が1〜55重量%未満である水添ブロック共重合体(f2)、及びオレフィン系エラストマー(f3)からなる群より選ばれる少なくとも一種で構成され、この耐衝撃付与剤(f)中に含まれる結合したビニル芳香族化合物の含有量が20〜55重量%であるものを用いることが好ましい。また、これら成分(f1)の重合体ブロックBの少なくとも1つが共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体である耐衝撃付与剤も好適に使用することができる。
【0053】
この本発明における成分(f)の構成成分として用いる(f1)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を含む少なくとも1個の重合体ブロックBとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が55〜95重量%である水添ブロック共重合体とは、例えばA−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体であり、結合したビニル芳香族化合物を55〜95重量%、好ましくは60〜90重量%含んだブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体である。
【0054】
またブロック構造に言及すると、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック又はビニル芳香族化合物を90重量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックの構造を有しており、そしてさらに、共役ジエン化合物を含む重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック又は共役ジエン化合物を10重量%を超え90重量%未満含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックの構造を有するものである。これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を含む重合体ブロックBは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物又はビニル芳香族化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組み合わせで成っていてもよく、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び該共役ジエン化合物を含む重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0055】
このブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、中でも、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。そして共役ジエン化合物を含む重合体ブロックは、そのブロックにおける結合形態のミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えば、ブタジエンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合が2〜90%が好ましく、より好ましくは8〜80%である。また、イソプレンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が2〜80%、より好ましくは3〜70%である。
【0056】
本発明で用いる成分(f1)である水添ブロック共重合体の数平均分子量は、5,000〜1,000,000であるものが好ましく、特に好ましくは20,000〜500,000の範囲のものであり、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定しポリスチレン換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〕は10以下であるものが好ましい。
さらに、この水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0057】
このような構造をもつブロック共重合体は、上記したブロック共重合体の共役ジエン化合物を含む重合体ブロックBの脂肪族系二重結合を水素添加反応を実施し、本発明で用いる成分(f1)の水添ブロック共重合体として利用できる。かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は、少なくとも20%を超えることが好ましく、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。
この水素添加率は、例えば核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0058】
また、(f2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックCとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が1〜55重量%未満である水添ブロック共重合体とは、例えばA−C、A−C−A、C−A−C−A、(A−C−)−Si、A−C−A−C−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体であり、結合したビニル芳香族化合物を1〜55重量%未満、好ましくは1〜50重量%含んだブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体である。
【0059】
またブロック構造に言及すると、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック又はビニル芳香族化合物を90重量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックの構造を有しており、さらに共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック又は共役ジエン化合物を90重量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックの構造を有するものである。
【0060】
これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックCは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組み合わせで成っていてもよく、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、また異なる構造であってもよい。
【0061】
このブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。次に、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、中でも、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
さらに、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックは、そのブロックにおける結合形態のミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えば、ブタジエンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合が2〜90%が好ましく、より好ましくは8〜80%である。また、イソプレンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が2〜80%、より好ましくは3〜70%である。
【0062】
本発明で用いる成分(f2)である水添ブロック共重合体の数平均分子量は、5,000〜1,000,000であるものが好ましく、特に好ましくは20,000〜500,000の範囲のものであり、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定しポリスチレン換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〕は10以下であるものが好ましい。
さらに、この水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0063】
このような構造をもつブロック共重合体は、上記したブロック共重合体の共役ジエン化合物を主体とした重合体ブロックCの脂肪族系二重結合を水素添加反応させて、本発明で用いる成分(f2)の水添ブロック共重合体として利用できる。かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は、少なくとも20%を超えることが好ましく、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。
この水素添加率は例えば核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0064】
さらに、(f3)オレフィン系エラストマーとは、前記成分(f1)及び/又は(f2)と併用することにより、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性付与に大きな効果を奏するものである。具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体、共役ジエン化合物重合体を水素添加反応して得られる水添共役ジエン化合物が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体とは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン;2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン等のオレフィン類の単独重合又は共重合体である。
これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を過半重量含む共重合体又は単独重合体が好ましく、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンのブロック又はランダム共重合体、エチレン−オクテンのブロック又はランダム共重合体がさらに好ましい。
【0065】
ここでエチレン・α−オレフィン共重合体は、一般に温度230℃及び荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)で表して、0.01〜400g/10分、好ましくは0.15〜60g/10分、さらに好ましくは0.3〜40g/10分である。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体は従来公知の方法によって製造でき、市販品も広く入手可能である。本発明では、適宜これらから選んで使用することができる。
【0066】
この成分(f)である耐衝撃付与剤の配合量は、上記の成分(a)〜(d)で構成される樹脂組成物の合計100重量部に対して、5〜30重量部、好ましくは5〜20重量部、より好ましくは10〜20重量部である。かかる配合量が5重量部以上であれば、耐熱性が高く、衝撃強度等の靱性が改良された成型品となり、配合量が30重量部以下において、得られる樹脂組成物を成型して得られる成型品は、耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れた成型品となり得る。
【0067】
本願発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有し、280℃以上に温度設定した二軸押出機を用いて、上記成分(a)〜成分(d)を溶融混練した後に、該二軸押出機の一つ以上の前記ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練することを含む製造方法が好ましい。
【0068】
成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を全く含まず、且つ成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることにより得られる本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を奏するために下記に示した特定の製造方法を経て得られることが最も好ましい。
すなわち、本発明の樹脂組成物の最も好ましい製造方法とは、成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を全く含まず、100重量%の(b)塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1重量%以下であり、且つ320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂で構成されるポリフェニレンスルフィド樹脂を、45〜99重量部で含み、(c)ポリフェニレンエーテル系樹脂を55〜1重量部で含み、且つ(d)グリシジル基、オキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体を、成分(a)〜成分(c)の合計100重量部あたり1〜20重量部で含む樹脂組成物の製造方法であって、(1)少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有し、280℃〜350℃に温度設定した二軸押出機を用いて、成分(b)〜成分(d)を溶融混練した後に、該二軸押出機の一つ以上のベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練することにより本発明の樹脂組成物を得ることができる製造方法である。
【0069】
そして、成分(e)である無機系充填剤を含んだ本発明の樹脂組成物の製造方法においては、上記(1)の該二軸押出機の第1ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練された全ての成分(b)〜(d)からなる樹脂組成物の存在下で、成分(e)の無機系充填剤を添加して加熱溶融混練し、さらに第2ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練することにより、成分(e)である無機系充填剤をさらに含んだ樹脂組成物を製造することができる。
【0070】
そしてさらに成分(f)を含んだ本発明の樹脂組成物の製造方法においては、上記の樹脂組成物の製造方法に記載した(1)の段階の溶融混練物を得る際に成分(b)〜(d)と共に成分(f)である耐衝撃付与剤を添加することにより、成分(f)である耐衝撃付与剤を含んだ樹脂組成物を製造することができる。
【0071】
次に、成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂と成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂とを併用して得られる本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を奏するために下記に示した特定の製造方法を経て得られることが最も好ましい。
すなわち、本発明の樹脂組成物の最も好ましい製造方法とは、1〜96重量%の(a)リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂及び99〜4重量%の(b)架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂で構成されるポリフェニレンスルフィド樹脂を45〜99重量部、(c)ポリフェニレンエーテル系樹脂を55〜1重量部で含み、且つ(d)混和剤を、成分(a)〜成分(c)の合計100重量部あたり1〜20重量部からなる樹脂組成物の製造方法であって、(1)少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有し、280℃〜350℃に温度設定した二軸押出機を用いて、加熱溶融混練の第一段階において、成分(c)のポリフェニレンエーテル系樹脂全量/ポリフェニレンスルフィド樹脂=70/30(重量比)以下を満たし、且つ該ポリフェニレンスルフィド樹脂中に含有する(a)リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂が少なくとも30重量%、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上と成分(d)の共重合体全量を加熱溶融混練した後に、該二軸押出機の第1ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して第一溶融混練物を得、(2)次に、(1)で得た第一溶融混練物の存在下で、該二軸押出機の第1サイド供給口より残量のポリフェニレンスルフィド樹脂を添加し、さらに加熱溶融混練した後に、該二軸押出機の第2ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気することにより本発明の樹脂組成物を得ることができる製造方法である。
【0072】
また成分(e)である無機系充填剤を含んだ本発明の樹脂組成物の製造方法においては、上記(2)の該二軸押出機の第1サイド供給口より残量のポリフェニレンスルフィド樹脂を添加して加熱溶融混練された全ての成分(a)〜(d)からなる樹脂組成物の存在下で、成分(e)である無機系充填剤を該二軸押出機の第2サイド供給口より添加して加熱溶融混練し、さらに該二軸押出機の第2ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気することにより、成分(e)である無機系充填剤をさらに含んだ樹脂組成物を製造することができる。
そしてさらに成分(f)を含んだ本発明の樹脂組成物の製造方法においては、上記の樹脂組成物の製造方法に記載した(1)の段階の第一溶融混練物を得る際に成分(a)〜(d)と共に成分(f)である耐衝撃付与剤を添加することにより、成分(f)である耐衝撃付与剤を含んだ樹脂組成物を製造することができる。
【0073】
本発明では、上記成分の他に、本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料や染料等の着色剤、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸塩ワックス、ステアリン酸塩ワックス等の公知の離形剤もまた、適宜添加することができる。
【0074】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、精密成型品と成りうる成形材料として、例えば、射出成形、金属インモールド成形、アウトサート成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱プレス成形、回転成形、積層成形等の成形方法を適用することができる。
そしてこれらの成形方法により、本発明の樹脂組成物は、光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品や自動車ランプ部品等の成形品として広く使用することができる。
以下、実施例によって、本発明を説明する。
【実施例】
【0075】
なお、使用した原料は下記の通りである。
<成分(a)であるリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂>
特開平8−253587号公報の実施例1に準じて下記のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を得た。
(a−1):溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が500ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.4重量%、末端−SX基量が26μmol/gのp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニアタイプのPPS。
(a−2):a−1と同様に測定した溶融粘度が300ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%、末端−SX基量が32μmol/gのp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニアタイプのPPS。
(a−3):a−1と同様に測定した溶融粘度が100ポイズ、塩化メチレンによる抽出量が0.3重量%、末端−SX基量が35μmol/gのp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニアタイプのPPS。
【0076】
<成分(b)である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂>
(b−1):溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.7重量%、320℃溶融状態で捕集される揮発分が160ppmの架橋タイプのPPS(ディーアイシーEP(株)製 商標DSP K−2G)。
(b−2):b−1と同様に測定した溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.4重量%、320℃溶融状態で捕集される揮発分が300ppmの架橋タイプのPPS(ディーアイシーEP(株)製 商標DSP T−2G)。
(b−3):b−1と同様に測定した溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.8重量%、320℃溶融状態で捕集される揮発分が790ppmの架橋タイプのPPS試作品。
(b−4):溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1.2重量%、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1200ppmの架橋タイプのPPS(東レ(株)製 商標トレリナM2900)。
(b−5):溶融粘度が500ポイズ、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が2.1重量%、320℃溶融状態で捕集される揮発分が1800ppmの架橋タイプのPPS(シェブロンフィリップス化学(株)製 商標ライトンPR−07)。
【0077】
<成分(c)であるポリフェニレンエーテル系樹脂>
(c−1):2,6−キシレノールを酸化重合し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定し、ポリスチレン換算した数平均分子量が24000のポリフェニレンエーテル。
(c−2):2,6−キシレノールを酸化重合し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定し、ポリスチレン換算した数平均分子量が9600のポリフェニレンエーテル。
(c−3):ポリフェニレンエーテル系樹脂としてポリフェニレンエーテル(c−1)/アタクチックポリスチレン(PSジャパン社製 商標PSJポリスチレン685)=60/40(重量比)の割合でドライブレンド(加熱溶融しないで単に両者を混合)することにより得たポリフェニレンエーテル。
【0078】
<成分(d)である共重合体>
(d−1):グリシジルメタクリレートを5重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(重量平均分子量110,000)。
(d−2):2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを5重量%含有するスチレン−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体(重量平均分子量146,000)。
(d−3):グリシジルメタクリレートを6重量%含有するエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業(株)製 商標ボンドファースト2C)。
【0079】
<成分(e)である無機系充填剤>
(e−1):平均直径13μm、長さ3mm、アミノシラン系カップリング剤で表面処理し、さらにバインダーとしてエポキシ樹脂で処理した、ガラス繊維。
(e−2):平均板径600μm、アミノシラン系カップリング剤で処理し、さらにバインダーとしてエポキシ樹脂で処理したガラスフレーク。
(e−3):平均板径90μm、平均板厚2μm、アミノシラン系カップリング剤で処理したマイカ。
(e−4):JIS A6201−1999の品質規格でフライアッシュIIに分類されるフライアッシュ((株)テクノ中部製 中部フライアッシュ)。
(e−5):平均粒子径7μmである炭酸カルシウム100重量部に対し、シランカップリング剤[β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]1.5重量部を添加し、ブレンダーを用いてブレンドして得られた炭酸カルシウム。
(e−6):レーザー回折/散乱法による平均粒子径が11μmのタルク。
【0080】
<成分(f)である耐衝撃付与剤>
(f−1):ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が47%、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が48%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が19000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.8%の水添ブロック共重合体。
(f−2):ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が35%、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が55%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が43000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.2%の水添ブロック共重合体。
(f−3):ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が85%、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が40%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が44000、ポリブタジエン部の水素添加率が98%の水添ブロック共重合体。
(f−4):ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が20%、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が55%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が9800、ポリブタジエン部の水素添加率が98%の水添ブロック共重合体。
(f−5):ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が20%、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が55%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が10,000、ポリブタジエン部の水素添加率が62%の水添ブロック共重合体。
(f−6): ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロックの構造を持ち、結合スチレン量が84%、ポリブタジエン部が水素添加されたポリブタジエン/ポリスチレン=43%/57%のランダム共重合体であり、ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が38%、ポリスチレン鎖の数平均分子量が30,000、水素添加率96%である水添ブロック共重合体。
(f−7):密度0.87、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.7g/10分のエチレンープロピレン共重合体。
(f−8):密度0.86、温度230℃、荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレートが0.5g/10分のエチレン−オクテン共重合体。
【0081】
<成分(g)であるその他添加剤>
(g):離型剤として、モンタン酸カルシウム(クラリアントジャパン(株)製 商標リコモントCaV102)を(g)とした。
なお、共通の着色剤として、カーボンブラック(三菱化学(株)製 商標三菱カーボンブラックMCF88)を用いた。
【0082】
上記成分より得られた樹脂組成物を用いて成形した成型品の評価は次の通りに行った。
(成形白化試験)
特にガス抜け部を設けていないウェルド金型(縦38mm、横79mm、厚み5mmの板状で横中央にウェルド部を有し、そのウェルド部より左右8mmの位置にゲート部を有する)を用いて310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に樹脂組成物を供給し、金型温度130℃の条件で連続成形を行い、成型品のウェルド部分が白化するまでの成形ショット数を求めた。成形ショット数が多いものほどウェルド白化が少ない材料である。
(難燃性試験)
UL94に準拠し、厚み1.6mmの燃焼用試験片を作成し燃焼試験を実施した。
(荷重撓み温度)
樹脂組成物を290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度130℃の条件で試験片を成形し、DTUL(荷重撓み温度)をASTM D−648に準拠(1.82MPa荷重)し測定した。
(衝撃強度)
樹脂組成物を290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度130℃の条件で試験片を成形し、アイゾット衝撃強度(厚み1/8インチ、ノッチ付き)をASTM D−256に準拠(測定温度23℃)し測定した。
(引張強度)
樹脂組成物を290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度130℃の条件で試験片を成形し、引張強度をASTM D−638に準拠(測定温度23℃)し測定した。
【0083】
[実施例1〜31、比較例1〜14]
温度290〜310℃、スクリュー回転数280rpmに設定した二軸押出機(ZSK−40;COPERION WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用い、押出機の第一原料供給口より、表1〜4に記載の組成割合で各成分を供給して加熱溶融混練し、溶融混練後の第一ベント口の真空度を変化させて脱気操作を行い、さらに該二軸押出機の第一ベント口の下流側に位置する第一のサイド供給口及び第二のサイド供給口より表1〜4記載の各成分を供給して溶融混練し、そしてさらに該二軸押出機の出口手前に位置する第二ベント口にて真空度を変化させて脱気操作を行い樹脂組成物をペレットとして得た。ここで得たペレットを用いて290〜310℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ウェルド金型にて金型温度130℃の条件で連続成形を行い、成型品のウェルド部分が白化するまでの成形ショット数を求めた。なお、成形白化が起こらない材料は5000ショットまで成形した。
また他のテスト用サンプルとして、金型温度130℃の条件で荷重撓み温度(DTUL)測定用テストピース、アイゾット衝撃試験用テストピース、引張試験用テストピース及び難燃性試験用テストピースを射出成形した。
【0084】
次に、これらのテストピースを用いて荷重撓み温度:DTUL(ASTM D−648:1.82MPa荷重)の測定、アイゾット(厚み1/8、ノッチ付き)衝撃強度(ASTM D−256に準拠:測定温度23℃)の測定及び引張強度試験(ASTM D−638に準拠:測定温度23℃)を行ない引張強度を測定した。UL94に準拠して厚み1.6mmの試験片を燃焼させ燃焼レベルを測定した。
これらの結果を併せて表1〜5に載せた。
これらの結果より、オリゴマー量と揮発成分を特定量に減じた架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることにより、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を有するポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂からなる樹脂組成物を提供し、さらにはリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂と架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂を併用した樹脂組成物は、併用しない場合と比べ、新たな耐熱性、靱性(衝撃強度)と機械的強度とのバランスに優れた樹脂組成物となる。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、成形した際に成型品表面に発生する成形白化を無くし、優れた表面外観及び優れた難燃性を有し、さらには耐熱性、靱性(衝撃強度)と機械的強度のバランスに優れた樹脂組成物与えるため、コンパクト・ディスク・リードオンリーメモリ(CD−ROM)、デジタル・バーサタイル・ディスク・リードオンリーメモリ(DVD−ROM)、コンパクト・ディスク・レコーダブル(CD−R)、デジタル・バーサタイル・ディスク・レコーダブル・−R規格(DVD−R)、デジタル・バーサタイル・ディスク・レコーダブル・+R規格(DVD+R)、コンパクト・ディスク・リライタブル(CD−RW)、デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル・−R規格(DVD−RW)、デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル・+R規格(DVD+RW)、デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダムアクセスメモリ(DVD−RAM)等のシャーシーやキャビネット、光ピックアップスライドベース等の光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、レーザービームプリンター内部部品、インクジェットプリンター内部部品、コピー機内部部品、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品や自動車ランプ部品等の成形品の少なくとも1つの部品として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0〜96重量%の成分(a)塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下であり、且つ末端−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)が20μmol/g以上のリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂及び
100〜4重量%の成分(b)塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が1重量%以下であり、且つ320℃溶融状態で捕集される揮発分が1000ppm以下である架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂で構成されるポリフェニレンスルフィド樹脂を、45〜99重量部で含み、
成分(c)ポリフェニレンエーテル系樹脂を55〜1重量部で含み、且つ、
成分(d)グリシジル基、又はオキサゾリル基のいずれか一つの官能基を有するスチレン系共重合体及び/又はエチレン系共重合体を、前記成分(a)〜成分(c)の合計100重量部あたり1〜20重量部で含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、1〜96重量%の前記成分(a)及び99〜4重量%の前記成分(b)で構成される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂を45〜85重量部で含み、且つ前記成分(c)を55〜15重量部で含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに成分(e)無機系充填剤を、前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して20〜400重量部で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに成分(f)耐衝撃付与剤を、前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して、5〜30重量部で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(a)及び前記成分(b)の溶融粘度がいずれも1〜10000ポイズである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(c)が、ポリフェニレンエーテル=100重量%又はポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂=1〜99重量%/99〜1重量%のいずれか1つの構成比率を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記成分(d)が、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体及びスチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマーがグラフトしたグラフト共重合体、並びに、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体にスチレンモノマー及びアクリロニトリルがグラフトしたグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分(e)が、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、石膏繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウム、多孔質炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウィスカー、ハイドロタルサイト、カオリン、クレー、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック(導電性カーボンも含む)、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、フライアッシュ(石炭灰)、ワラステナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、マイカ、タルク、グラファイト、窒化アルミニウム、窒化硼素、及び、二硫化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記成分(f)が、
ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を共重合して得られるブロック共重合体、前記ブロック共重合体をさらに水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体、前記ブロック共重合体若しくは水添ブロック共重合体であって、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、エポキシ基、オキサゾリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する上記ブロック共重合体若しくは水添ブロック共重合体、並びに
エチレン/α−オレフィン共重合体、前記エチレン/α−オレフィン共重合体であって、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エステル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する上記エチレン/α−オレフィン共重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記成分(f)を5〜30重量部で含み、前記成分(f)が、
成分(f1)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を含む少なくとも1個の重合体ブロックBとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が55〜95重量%である水添ブロック共重合体、
成分(f2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックCとからなり、結合したビニル芳香族化合物の量が1〜55重量%未満である水添ブロック共重合体、及び
成分(f3)オレフィン系エラストマー
からなる群より選ばれる少なくとも1種で構成され、且つ
前記成分(f)中の結合したビニル芳香族化合物の含有量が、20〜55重量%である、
請求項5〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記成分(f1)の前記重合体ブロックBの少なくとも1つが、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
少なくとも2個のベント口及び少なくとも1個のサイド供給口を有し、280℃以上に温度設定した二軸押出機を用いて、前記成分(a)〜成分(d)を溶融混練した後に、該二軸押出機の一つ以上の前記ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ポリフェニレンスルフィド樹脂が、1〜96重量%の前記成分(a)及び99−4重量%の前記成分(b)で構成され、該ポリフェニレンスルフィド樹脂が、前記成分(a)を少なくとも30重量%で含み、前記成分(c)/前記ポリフェニレンスルフィド樹脂=70/30(重量比)以下であって、且つ、前記2個のベント口をそれぞれ、第1ベント口及び第2ベント口と称する場合、前記脱気が該第1ベント口で行われ、次に該第1ベント口通過後の溶融混練物存在下に残量の該ポリフェニレンスルフィド樹脂を供給して溶融混練した後に、さらに前記脱気が前記第2ベント口で行われる、請求項13に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
全ての前記成分(a)〜成分(d)からなる溶融混練物存在下に、さらに成分(e)無機系充填剤を前記成分(a)〜成分(d)の合計100重量部に対して20〜400重量部で供給して溶融混練した後に、さらに該二軸押出機の第2ベント口を絶対真空圧95kPa以下で脱気する、請求項13又は14に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記成分(d)の全量と共に成分(f)耐衝撃付与剤全量を供給する、請求項14又は15に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の製造方法で得られた樹脂組成物。
【請求項18】
光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、自動車ランプ部品、自動車ラジエタータンク部品又は自動車エンジンルーム内部品の成形材料として用いられる、請求項1〜12及び請求項17のいずれか1項に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−316245(P2006−316245A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283249(P2005−283249)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】