ポリフェノールの吸収促進剤
【課題】 ポリフェノールを良好に吸収するための手段を提供する。
【解決手段】 ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤。
【解決手段】 ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールの吸収に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームは、肥満と、脂肪の過剰な蓄積により引き起こされ易い高脂血症、高血糖症および高血圧との組み合わせによって定義される症候群である。メタボリックシンドロームの患者の増加は、欧米先進国ばかりではなく、日本においても深刻な社会問題となっている。
【0003】
近年の疫学的研究や病態生理学的研究から、肥満と耐糖能異常、高脂血症、高血圧の合併においては、脂肪の絶対量よりも体内脂肪の分布が重要であり、特に、内臓脂肪の蓄積がそれらの肥満合併病態の形成において大きな役割を担っていることが明らかとなった。従って、体脂肪、特に内臓脂肪をどのようにして減らすかがメタボリックシンドロームを予防するために重要であり、それを可能とする手段の開発は、現代社会における大きな課題である。
【0004】
一方、疾病予防および健康増進のために食品中に含有される成分を利用することが注目されている。例えば、ゴマリグナン類、大豆イソフラボン、カテキンを初めとするポリフェノールなどの多くの成分が疾患の予防および治療並びに健康増進のために有効であることが報告されており、既に数多くの製品が広く利用されている。また、例えば、カテキンでは体脂肪蓄積抑制作用(特許文献1)や体内脂肪燃焼促進効果(特許文献2)などが報告されている。また、ソバの全草などに含まれるルチンおよびケルセチンには、抗酸化作用や高血中脂質濃度に因る疾患を予防または治療する効果があることが報告されている(特許文献3)。このような食物由来の成分が、医薬組成物や特定保健用食品における活性成分として脚光を浴びている中で、新たな有効成分の発見や製品の開発が更に期待されている。
【0005】
しかしながら、ルチンを初めとするポリフェノールは、その吸収性に問題があり、摂取された物質が生体に取り込まれる量は極めて少ない。また、その吸収の機序もポリフェノールの種類により様々である。
【特許文献1】特許第3756438号公報
【特許文献2】特開2002−326932号公報
【特許文献3】特表2002−524522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、ポリフェノールを良好に吸収するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための手段は、本出願人の鋭意研究の結果見出された。即ち、
(1)ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤;
(2)前記クエン酸塩がクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄からなる群より選択される(1)に記載の吸収促進剤;
(3)ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分と、(1)または(2)の何れかに記載の吸収促進剤を含有する食品;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ポリフェノールを良好に吸収するための手段が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、機能性成分、特に、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどのポリフェノールの吸収が、クエン酸塩により促進されたことを本願発明者らが初めて明らかにしたことにより達成された。
【0010】
ここでいう「吸収促進」とは、腸管透過吸収促進のことをいう。当該機能性成分のクエン酸塩またはクエン酸による吸収促進は、ヒト結腸癌由来上皮細胞株Caco−2の単層培養細胞(以下「Caco−2細胞」と称する)およびイヌ腎尿細管由来上皮細胞株MDCKの単層培養細胞を用いた in vitroモデルにより評価された。これらの in vitroモデルは、in vivoにおけるヒト腸管透過吸収との間に相関性がある(Irvine J. D et. al. J. Pharm. Sci., 88(1), 28-33(1999)、Eur. J. Pharm. Sci., 11, Suppl. 2, S51-S60(2000))。従って、今回、実施例に示すような当該 in vitro モデルにおいて評価された本発明に従う効果は、in vivo においての有用性を示すものである。
【0011】
本発明に従う機能性成分とは、一般的にポリフェノールと称される物質であればよく、特に、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジン並びにそれらの組み合わせをいう。
【0012】
当該ルチンは、以下の化学式(I)により示される化合物である。
【化1】
【0013】
当該ルチンは、化学式(I)により示される化合物としてのルチンを含む何れかの天然由来の供給源から採取すればよい。そのような天然由来の供給源は、例えば、ルチンを含有することが従来知られるそれ自身公知の何れかの植物であればよく、これに限定するものではないが、例えば、ソバ、エンジュ、ヘンルーダ、並びにタマネギ、レタスおよびトマトなどの野菜、柑橘類などの全草、つぼみ、実、葉、花および芽などであってもよい。
【0014】
このような供給源から、ホモジネート、刻み、抽出、濾過、再結晶、濃縮および乾燥など、それ自身当業者に公知の何れかの手段によって得ればよい。例えば、第7改正日本薬局方に記載される方法を使用してもよい。
【0015】
第7改正日本薬局方に記載される方法は次の通りである。まず、250kgのエンジュのつぼみ(即ち、花)を抽出釜に入れて、メタノールを用いて温時抽出する。その抽出液を蒸発濃縮して半固型残留物を得る。この残留物をベンゼン、続いてアセトンを用いて温時洗浄する。これにより樹脂、クロロフィルおよび可溶性色素などの不純物を除去する。次に、溶剤を分離し、水に注加して粗ルチンを析出させ、遠心分離または濾過により約50kgの粗ルチンを得る。50kgの粗ルチン乾燥品をメタノールに加温溶解し、活性炭処理した後に濾過し、濃縮冷却して結晶を得る。この結晶について、50%メタノールから再結晶を行い、得られた結晶を乾燥粉砕して、ふるいに掛けて約22kgのルチンを得ればよい。
【0016】
また、本発明に従うルチンの糖転移物は糖転移ルチンとも称し、糖転移酵素によってルチンに対して糖を付加することによって得られる。また、当該ルチンの糖転移物はそれ自体公知の何れの糖転移ルチンであってもよい。そのような糖転移ルチンは、例えば、グルコシルルチンおよびガラクトシルルチンなど、詳しくは、例えば、α−グルコシルルチンおよびα−ガラクトシルルチンなどであってもよく、更に詳しくは、例えば、4G−α−D−グルコピラノシルルチン及び4G−β−D−ガラクトピラノシルルチンなどであってもよく、これらの混合物であってもよい。これらのグルコシルルチンおよびガラクトシルルチンは、優れた水溶性を有し、生体内ではルチンと同様の生理活性を有することが知られるルチン誘導体である(特許第3701426号公報を参照されたい)。グルコシルルチンの製造方法は、それ自身当業者に公知の何れかの方法を使用してよく、例えば、特開平3−27293号公報および特開平3−58790号公報に開示される方法を使用してよい。また、ガラクトシルルチンの製造方法は、それ自身当業者に公知の何れかの方法を使用してもよく、例えば、特開平4−66096公報、特開平4−66097号公報および特開平4−66098号公報に開示される方法を使用してもよい。これらの文献はここに開示することにより本明細書に組み込まれる。また、本発明に従う糖転移ルチンとして、商業的に入手可能なα−グルコシルルチンの混合物(例えば、酵素処理ルチン、東洋精糖(株)製、商品名:αGルチン)を使用してもよい。
【0017】
本発明に従うケルシトリンとは、以下の式を有する化合物である。
【化2】
【0018】
当該ケルシトリンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、宿根そばおよびトチノキなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に、精製されてもよい。
【0019】
本発明に従うダイジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化3】
【0020】
当該ダイジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ダイズ、葛の根などからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0021】
本発明に従うゲニスチンとは、以下の式を有する化合物である。
【化4】
【0022】
当該ゲニスチンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ダイズなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0023】
本発明に従う水溶性イソフラボンとは、以下の式を有する化合物である。
【化5】
【0024】
当該水溶性イソフラボンは、例えば、ダイジン配糖体、ゲニスチン配糖体およびグリシチン配糖体などである。これらの水溶性イソフラボンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよい。
【0025】
本発明に従うヘスペリジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化6】
【0026】
当該ヘスペリジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、レモンおよびミカン等のかんきつ類、アンズおよびサクランボなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0027】
本発明に従うナリンジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化7】
【0028】
当該ナリンジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ザボン、ユズおよびグレープフルーツなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0029】
本発明における吸収促進剤は、クエン酸塩である。当該クエン酸塩は、クエン酸とアルカリ金属または金属イオンとの塩のことであり、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄などであり、溶媒に溶解した場合に、細胞の生理的機能を維持することが可能なpH値を示すクエン酸塩であればよい。例えば、クエン酸ナトリウムが好ましい。但し、生体の腸管のpHは中性域であり、クエン酸として摂取したとしても、クエン酸塩と同等の効果を示すことから、クエン酸塩に代わり、クエン酸を使用することも可能である。
【0030】
本発明の吸収促進剤として当該クエン酸塩を使用する場合の量は、腸管壁付近において約0.25重量%(100mL中の溶媒に0.25gで溶解)以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%、好ましくは0.25重量%〜2重量%、0.5重量%〜2重量%、1重量%〜2重量%となるような濃度であればよい。
【0031】
また、クエン酸として使用される場合も、同様の濃度となる量を摂取されればよい。
【0032】
当該クエン酸塩と、当該活性成分が同時に存在することにより、当該活性成分の吸収が促進される。
【0033】
本発明に従う吸収促進剤は、ポリフェノール類、例えば、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどのヒトおよびヒト以外の哺乳類などの生体における吸収を促進するために、食品、飲料、医薬品およびサプリメントに含ませて使用してもよい。
【0034】
また、当該吸収促進剤は、ポリフェノール類、例えば、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどの物質の膜透過性を向上するために、各実験モデルにおいて使用されてもよい。
【0035】
本発明者は、当該活性成分の中でも、ルチンおよび水溶性ルチンが体脂肪低減効果を有することを見出した。従って、ルチンおよび/または水溶性ルチンを本発明の吸収促進剤と共に対象に摂取させることにより有効に体脂肪低減効果を与えることが可能である。
【実施例】
【0036】
例1
以下、有機酸塩のポリフェノール吸収促進効果について試験した。
【0037】
(1)in vitro 吸収モデル
トランズウェルの粘膜側ウェル内に細胞を播種し、粘膜側ウェルと基底膜側ウェルの両方にMEM(組成:EAGLE’sMEM、血清10%含有、1%非必須アミノ酸、0.3g/Lのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム)を加えた中で37℃、5%CO2雰囲気下でメンブラン上に単層のコンフルエントになるまで培養した。
【0038】
吸収試験は、基底膜側ウェルにPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)を加え、粘膜側ウェルに所望の濃度のポリフェノールおよび/または有機酸塩を含有するサンプル溶液を添加し、インキュベートした後に、粘膜側ウェル、基底膜側ウェルおよび細胞から試料を採取し、HPLCによりポリフェノール量を定量した。
【0039】
粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したポリフェノールの量を吸収されたポリフェノールとみなし、結果は、対照区の透過ポリフェノールの量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の透過ポリフェノールの量(μg/ウェル)の割合を吸収率(%)として示した。
【0040】
(2)サンプル溶液の調製
ルチン24.2mgをDMSO10mLで溶解し、ルチンストック溶液とした。次に、試験物質であるクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはグルコン酸ナトリウムなどの有機酸塩を候補物質としてPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)9.9mLに添加して溶解した。それらに対してルチンストック溶液を0.1mLずつ添加してサンプル溶液とした。
【0041】
同様に、他のポリフェノール、即ち、ケルシトリン、ケルセチン、ダイジン、ゲニスチン、イソフラボンアグリコン、ダイゼイン、ゲニステイン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびアントシアニンを、それぞれDMSO10mLに溶解してポリフェノールストック溶液とした。クエン酸ナトリウムをPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)9.9mLに対して溶解し、これらに対して0.1mLのポリフェノールストック溶液を1種類ずつ添加して各サンプル溶液とした。
【0042】
水溶性ルチンおよび水溶性イソフラボンは、DMSOに溶解せずに、クエン酸ナトリウムと共に直接10mLのPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)に対して溶解した。
【0043】
(3)MDCK細胞を用いた吸収モデルにおけるルチン吸収量への有機酸塩の効果
<方法>
MEM(組成:EAGLE’sMEM、血清10%含有、1%非必須アミノ酸、0.3g/Lのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム)を用いてトランズウェル(コーニング社製)の粘膜側ウェルにMDCK細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で3日間培養した。培地交換は、培養2日目に実施した。培養後、両ウェルから培地を除去し、PBS緩衝液で粘膜側ウェル、基底膜側ウェルのそれぞれを数回洗浄した。次いで、粘膜側ウェルに上記(2)に従って調製した最終濃度0.0024重量%(即ち、242μg/10mL)のルチンと種々の濃度の試験物質を含有するサンプル溶液を添加し、基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で1時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側ウェルの溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合後、表Aに記載の条件でのHPLC分析によって、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したルチン量をμg/ウェルとして測定した。また、対照区は、試験物質を含有せず、最終濃度0.0024重量%のルチンのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加し、吸収試験を行った。
【表A】
<結果>
結果を図1に示す。図1に示すグラフの横軸には添加した試験物質名とその最終濃度を示した。縦軸は、対象区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示した。
【0044】
図1に示されるように、1%クエン酸と1%クエン酸ナトリウムを粘膜側ウェルに添加した場合に顕著な吸収の促進が観察された。1%クエン酸に関しては、腸管のpH(即ち、中性付近)を想定し、サンプルのpHを中性域(pH約7.3)に調整した後、粘膜側ウェルに添加したため、クエン酸ナトリウムと同様な効果が見られた。
【0045】
(4)Caco−2細胞を用いた吸収モデルにおけるルチン吸収量への有機酸塩の影響
<方法>
DMEM(組成;Dulbecco’s Modified EAGLE Medium、血清10%、1%非必須アミノ酸、ペニシリン50U/mL、ストレプトマイシン50μg/mL)を用いてトランズウェル(コーニング社製)の粘膜側ウェルにCaco−2細胞(ATCC HTB−37)を37℃、5%CO2雰囲気下で2〜3週間程度培養した。培地交換は2日おきに行った。培養後、両ウェルから培地を除去し、PBS緩衝液で粘膜側ウェル、基底膜側ウェルそれぞれを数回洗浄した。次いで、粘膜側ウェルに(2)で調製した最終濃度0.0024重量%(即ち、242μg/10mL)のルチンと種々の濃度の試験物質を含有するサンプル溶液を添加し、基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合した後、(3)と同様の条件でのHPLC分析によって、粘膜側から基底膜側に透過したルチン量(μg/ウェル)を測定した。
【0046】
また、対照区は、試験物質を含有せず、最終濃度0.0024重量%のルチンのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述の方法と同様に吸収試験を行った。
【0047】
<結果>
結果を図2に示す。図2に示すグラフの横軸には添加した試験物質名とその最終濃度を示した。縦軸は、対照区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示した。
【0048】
図2に示されるように、2%クエン酸ナトリウムを粘膜側ウェルに添加した場合にのみ顕著な吸収の促進が観察された。
【0049】
(5)MDCK細胞を用いた吸収モデルにおけるポリフェノール吸収量へのクエン酸ナトリウムの効果
クエン酸ナトリウムによる各種ポリフェノールの吸収に対する影響を試験した。クエン酸ナトリウムを被検物質としてPBS緩衝液に1%となるように溶解し、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン(αG大豆イソフラボン)、ルチン、水溶性ルチン(αGルチン)、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれに最終濃度が0.0020、0.0022、0.0033、0.0034、0.5、0.0048、4、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046、0.035重量%となるように添加してサンプル溶液を調製した。それらのサンプル溶液をMDCK細胞粘膜側ウェルに添加し、基底膜側ウェルにはPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)を添加し、37℃、1時間後に基底膜側溶液を回収し、ウェルあたりのポリフェノール透過量を測定した。測定は回収した基底膜側溶液をメタノールと容量比1:1で混合し、上記表Aに示す条件でのHPLC分析によって実施した。
【0050】
また、対照区は、試験物質を含有せず、上記濃度のポリフェノールのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述と同様の方法により吸収試験を行った。
【0051】
<結果>
結果を図3に示した。図3に示すグラフは、縦軸に、対照区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示し、横軸に、添加したポリフェノールの種類を示した。
【0052】
その結果、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジンおよびナリンジンについて顕著な吸収促進効果が観察された。
【0053】
ここで、MDCK細胞を使用した吸収モデルにおいて、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれ0.0020、0.0022、0.0033、0.0034、0.5、0.0048、4.0、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046および0.35重量%の濃度で粘膜側ウェルに存在させたこと以外は(3)と同じ条件で吸収試験をした場合、基底膜側ウェルに透過したポリフェノールは、それぞれ、16.5、19.5、0.08、0.07、4.2、0.08、10.8、0.05、1.7、0.02、0.06および0.20μg/ウェルであった。一方、前記濃度の前記ポリフェノールと共にクエン酸ナトリウムを1.0重量%で存在させたこと以外は同様の条件で試験した場合では、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルへの各ポリフェノールの透過量は、12.8、18.4、0.66、0.73、54.5、0.68、72.5、0.37、1.9、2.0、0.45および0.68μg/ウェルであった。
【0054】
(6)Caco−2細胞を用いた吸収モデルにおけるポリフェノール吸収量へのクエン酸ナトリウムによる効果
クエン酸ナトリウムによる各種ポリフェノールの吸収に対する影響を試験した。クエン酸ナトリウムを被検物質としてPBS緩衝液に対して(併用の物質が水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジンおよびナリンジンの場合には)1重量%、(併用の物質がダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、ケルセチンおよびカシスポリフェノールの場合には)2重量%となるように溶解した。これらに対して、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれに0.2、0.2、0.0033、0.0034、1、2、4、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046、0.035重量%の最終濃度となるように添加してサンプル溶液とした。それらのサンプル溶液をCaco−2細胞基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合した後、(5)と同様の条件でのHPLC分析によって、粘膜側から基底膜側に透過したポリフェノール量(μg/ウェル)を測定した。
【0055】
また、対照区は、試験物質を含有せず、上記濃度のポリフェノールのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述と同様の方法により吸収試験を行った。
【0056】
<結果>
結果を図4に示した。図4に示すグラフは、縦軸に、対照区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示し、横軸に、添加したポリフェノールの種類を示した。
【0057】
その結果、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジン、およびナリンジンについて顕著な吸収促進効果が観察された。
【0058】
ここで、Caco−2細胞を使用した吸収モデルにおいて、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジン、カシスポリフェノールを、それぞれ0.2、0.2、0.0033、0.0034、1.0、2.0、4.0、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046および0.035重量%の濃度で粘膜側ウェルに存在させたこと以外は(4)と同じ条件で吸収試験をした場合、基底膜側ウェルに透過したポリフェノールは、それぞれ、4.4、5.9、0.2、0.3、33.7、0.2、37.3、0.03、2.9、0.02、0.3および2.2μg/ウェルであった。一方、前記濃度のそれぞれのポリフェノールに対して、2.0、2.0、2.0、2.0、1.0、1.0、1.0、1.0、2.0、1.0、1.0および2.0重量%のクエン酸ナトリウムを併用したこと以外は同様の条件で試験した場合では、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルへの各ポリフェノール透過量は、3.6、5.3、3.2、2.4、143.7、1.5、131.6、0.28、2.9、0.26、2.4および3.3μg/ウェルであった。
【0059】
(7)クエン酸ナトリウムの濃度による影響
<方法>
使用するクエン酸ナトリウムの濃度を0.25、0.5、1.0、2.0重量%とし、且つ各ポリフェノールの最終濃度を0.00178、0.002、0.00216、0.0024、0.00242、0.0033、0.00342、0.0046、0.00484、0.001、0.01、0.035、0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、4、8重量%とすること以外は(2)に記載のサンプル溶液の調製法と同様にサンプル溶液を調製し、MDCK細胞およびCaco−2細胞を用いた(1)に記載の吸収モデルを用いて、各細胞毎に(3)および(4)に記載の方法と同様に、ポリフェノールの吸収量に対するクエン酸ナトリウムの影響を検討した。
【0060】
また更に、粘膜側のポリフェノール量は、粘膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合後、同様の条件でHPLC分析し、μg/ウェルとして算出した。また、データには示さないが、細胞に存在するポリフェノール量は、メタノールを添加して細胞をかきとり、バイアル瓶に入れ、ソニケーションにて抽出後、溶媒留去し、1ウェル当たりの抽出物をメタノール1mLで溶解したものをHPLC分析に供して測定した。
【0061】
<結果>
結果を、表Bおよび表Cに示す。
【表B】
【0062】
【表C】
表中、各濃度は重量%で示した。「吸収率(対コントロール%)」は、試験区において粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したポリフェノールの量を、対照区の透過ポリフェノール量を100%としたときの割合で示す。ポリフェノールの濃度(%)は、当該試験区における試験前の粘膜側ウェルに含まれる各ポリフェノールの濃度を示す。同様にクエン酸Na濃度(%)は当該試験区における試験開始前の粘膜側ウェルに含まれるクエン酸ナトリウムの濃度を示す。
【0063】
表BおよびCから明らかであるように、いずれの細胞を使用した場合においても、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジン、ナリンジンは、いずれのクエン酸ナトリウム濃度でも良好な吸収促進が観察された。
【0064】
(8)クエン酸ナトリウムのLDH遊離率による細胞毒性
定法に従ってMEM(EAGLE’s MEM)を用いて96ウェルプレート(コーニング社製)に培養したMDCK細胞のプレートから培地を除去し、0.1mLのPBS緩衝液で数回洗浄した後に、0.05mLのMEM(1%血清含有)を添加した。そこへ被験サンプルとして0.25〜2%のクエン酸ナトリウム溶液(PBS緩衝液調製)を0.05mLずつ添加(終濃度0.125〜1%)して、37℃、5%CO2雰囲気下、1時間インキュベートした。インキュベート後の上清中のLDH(乳酸脱水素酵素)をLDH−Cytotoxic Test Wako(和光純薬社製)を用いて測定した。なお、陰性対照にはPBS緩衝液、陽性対照にはPBS緩衝液で溶解した1%TritonX−100を使用した。結果を図5に示す。クエン酸ナトリウムによるLDH遊離率は低く、クエン酸ナトリウムは細胞膜障害由来の細胞毒性は非常に低いことが示された。
【0065】
(9)クエン酸ナトリウムの呼吸阻害による細胞毒性
定法に従ってMEM(EAGLE’s MEM)を用いて96ウェルプレート(コーニング社製)に培養したMDCK細胞のプレートから培地を除去し、0.1mLのPBS緩衝液で数回洗浄した後に、被験サンプルとしてPBS緩衝液で0.1〜2.0%に調製したクエン酸ナトリウム溶液を0.1mL添加して、37℃、5%CO2雰囲気下、1時間インキュベートした。インキュベート後、サンプル溶液を除去し、予めMEM(10%血清含有)で0.5mg/mLに調製したMTT溶液を各ウェルに0.1mLずつ添加して、37℃、4時間反応した。反応後、MTT溶液を除去し、DMSOを各ウェルに100μLずつ添加し、振盪し、生成したMTTホルマザンを溶解した。溶解後、マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定した。なお、陰性対照にはPBS緩衝液、陽性対照にはPBS緩衝液で溶解した1%TritonX−100を使用した。結果を図6に示す。クエン酸ナトリウムによる呼吸阻害由来の細胞増殖阻害は殆ど見られず、クエン酸ナトリウムは細胞毒性が非常に低いことが示された。
【0066】
例2:ルチンの体脂肪低減効果
(1)試験サンプル
それぞれの試験サンプルは、ヒトが摂取するのと同様の凍結乾燥麺(一般的には「FD麺」とも称する)として形成した。
【0067】
サンプル1は、1.5kgのソバ粉、および3.5kgの小麦粉、150gの食塩および7.5gのアスコルビン酸をミキサーで混合した。サンプル2は、1.5kgのソバ粉、3.5kgの小麦粉、150gの食塩、7.5gのアスコルビン酸、65gのルチンをミキサーで混合した。サンプル3は、1.5kgのソバ粉、3.5kgの小麦粉、150gの食塩、7.5gのアスコルビン酸、50gのカテキン(太陽化学(株)サンフェノン)をミキサーで混合した。得られたそれぞれの混合物に対して、1.75kgの水を加えて練り、ドウを調製した。
【0068】
次に練り上がったドウをロールで圧延し、厚さ1.35mmの麺帯を作製し、得られた麺帯を切刃で切り出し、幅1.5mm、長さ340〜350mmの麺線を形成した。
【0069】
切り出した麺線を水分20〜27%まで乾燥して半生麺を作製した。この麺を3分間ボイルし、冷水で冷却した。得られた麺を急速凍結し、これを、KYOWAC RL−8 04(日精(株))にて真空凍結乾燥処理した。
【0070】
得られたそれぞれのFD麺に含まれる各成分を定量した。
【0071】
ルチン含量を高速液体クロマトグラフィー(ここでは、「HPLC」とも記す)で測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
【0072】
CAPCELL PAKカラム C18、4.6*250mm(資生堂)
溶離液:0.1%リン酸/メタノール=70/30(v/v)およびメタノール100%のグラジエント溶出
UV検出器の波長:360nm
流速:1mL/min。
【0073】
サンプル1およびサンプル2の1.00gを、それぞれ20mLのメタノールを用いて80℃で1時間還流抽出した。これをNo.5cの濾紙で濾過し、メタノールで25mLに定容した。これをHPLCディスク(0.45μm)で濾過し、得られた濾液をHPLCで分析した。その結果、サンプル1はルチンを0.17mg/100gで含有した。サンプル2はルチンを756mg/100gで含有した。
【0074】
カテキン含量は、エピガロカテキンガレート(以下「EGCG」と記す)を標品として、酒石酸鉄法により測定した。サンプル1およびサンプル3の1.00gを40mLの80%エタノールで1分間ホモジナイズした後に、室温にて1時間以上放置した。これを80%エタノールで50mLに定容した後、No.5cの濾紙で濾過した。これを酒石酸鉄法にて定量した。その結果、サンプル3に含まれるカテキンは、EGCG換算で860mg/100gであった。また更に、サンプル3に含まれる幾つかのカテキン成分を更に詳しくHPLCで定量を行った。
【0075】
HPLCの条件は次の通りである。
【0076】
CAPCELL PAKカラム C18、4.6*250mm(資生堂)
溶離液:メタノール/0.5%リン酸溶液=25/75(v/v)
UV検出器の波長:280nm
流速:1mL/min。
【0077】
その結果、EGC(即ち、エピガロカテキン)は107mg/100g、EGCg(即ち、エピガロカテキンガレート)は295mg/100g、EC(即ち、エピカテキン)は105mg/100g、ECg(エピカテキンガレート)は125mg/100gであった。
【0078】
上述のようなFD麺を以下の実験飼料を製造するために使用した。
【0079】
(2)実験飼料
試験動物に与えるための飼料1、飼料2および飼料3の実験飼料(本明細書では単に「飼料」とも記す)は、以下の組成を有する粉末に対して上記で製造した試験サンプルを粉砕したものを添加して調製した。即ち、飼料1にはサンプル1、飼料2にはサンプル2、飼料3にはサンプル3が含まれる。飼料1、飼料2および飼料3は、粉末のまま餌として動物に与えた。
【0080】
ノーマル群に与えた飼料4は、通常飼料として用いられるAIN93G組成のものを用いた。他の飼料はそれを改変した組成を有する。表中の塩類混合物およびビタミン混合物は、AIN93Gの組成に従った。
【表1】
【0081】
また、それぞれの飼料は次のような飼料である。
【0082】
飼料1:コントロール群に与えるためのコントロール飼料
飼料2:ルチン添加群に与えるためのルチン添加飼料
飼料3:カテキン添加群に与えるためのカテキン添加飼料
飼料4:通常食群に与えるための通常飼料。
【0083】
(3)実験方法
4週齢のSprague Dawley(SD)系雄性ラット(日本クレア株より購入)を、搬入から2〜3日間市販の通常の固形飼料を与えて飼育した。その後、体重測定し、各群の平均体重がほぼ同じになるように4匹ずつ4群に分けた。
【0084】
コントロール群には飼料1を、ルチン添加群には飼料2を、カテキン添加群には飼料3を、通常食群には飼料4を割り当てた。実験開始と同時にそれぞれの群に割り当てられた実験飼料を与え、3週間に亘って自由摂取させた。また同様に水も自由摂取させた。その後、1日置きに体重を測定し、飼料摂取量を計量した。
【0085】
試験食開始から14日目の午前に尾静脈採血を行った。採取した血液はヘパリンコートキャピラリー2本分で約80μlであり、これについて血漿総コレステロールを以下のように測定した。採取した血液を含むヘパリンコートキャピラリーをキャピラリー用遠心機に掛け、血球を沈殿させ、血漿をマイクロチューブに採取した。得られた血漿を市販の定量用キットでコレステロールE−テストワコー(和光純薬工業(株))を使用し、酵素法により測定した。
【0086】
試験食開始から21日目の午前に飼料をケージから取り除き、午後に麻酔下で解剖を行い、血液はヘパリン不在下で採取し、肝臓、脂肪および可能であれば副腎を採取した。
【0087】
採取した血液の凝固後に血清を採取し、得られた血清について、血清コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度をそれぞれの定量用キット、コレステロールE-テストワコー、トリグリセライドE-テストワコー(和光純薬工業(株))を使用し酵素法によって測定した。
【0088】
腎周辺脂肪組織、副睾丸周辺脂肪組織および後腹壁脂肪組織の重量を測定した。肝臓からFolchらの方法(クロロホルム:メタノール=2:1を使用)の変法により脂質成分を抽出し、定量を行った。
【0089】
(4)統計学的解析
結果は、平均値±標準誤差で示した。統計学的解析は、ダンカンの検定法を用いて行った。
【0090】
(5)結果
得られた結果を図7〜12に示す。
【0091】
ここで、図中、有意差は*<0.05、**<0.01で示した。
【0092】
図7に示すように3週間投与後の脂肪総重量は、コントロール群と通常食群はほぼ同じであった。また、コントロール群に比べてルチン添加群では有意に低かった。一方、コントロール群に比べてカテキン添加群では脂肪総重量を減少する傾向が見られたが統計的に有意な差ではなかった。図8に示すように3週間投与後の後腹壁脂肪量は、コントロール群と比べてルチン添加群で低い傾向が見られた。図9に示すように、3週間投与後の腎周辺脂肪量は、コントロール群、通常食群に比べてルチン添加群は有意に低かった。図10に示すように、3週間投与後の副睾丸周辺脂肪量は、ルチン添加群およびカテキン添加群共にコントロール群および通常食群と比べて有意に低かった。図11に示すように、3週間投与後の脂肪率は、ルチン添加群はコントロール群に比べて有意に低かった。
【0093】
一方、図12に示すように、血清トリグリセリド濃度は、コントロール群、ルチン添加群、カテキン添加群は通常食群に比べて高い傾向があった。図13に示すように、3週間投与後の肝臓重量は、コントロール群とルチン添加群には有意差はなかった。それに対して、カテキン添加群は、コントロール群に比べて肝臓重量に有意な減少があった。同様に、通常食群もコントロール群に比べて肝臓重量が有意に減少した。
【0094】
図14に示すように、3週間投与後の血清コレステロール濃度は、コントロール群とルチン添加群の間に有意差はなかった。通常食群とコントロール群、および通常食群とルチン添加群の間には有意差があった。
【0095】
図15に示すように、3週間投与後の肝臓総脂質量は、コントロール群とルチン添加群の間に有意差はなかった。カテキン添加群では減少する傾向が見られた。これらに対して通常食群は有意に低かった。図16に示すように肝臓総脂質濃度も同様な結果であった。
【0096】
図17および図18から分かるように、何れの群の間にも体重増加量および飼料摂取量に差はなかった。飼料効率においても有意な差はなかった(表2)。
【表2】
【0097】
以上の結果から明らかなようにルチン添加群では、体重、血清脂質および肝臓重量には影響せずに、体脂肪が顕著に減少した。一方、比較例として用いたカテキン添加群では、血清コレステロールの有意な減少と、肝臓重量の有意な減少が観察された。従って、ルチンとカテキンの体脂肪減少作用に関する作用機序が異なる可能性が示唆された。
【0098】
これらの結果から、本発明に従うルチンが、血中脂質量および体重には影響を与えずに体脂肪のみを有意に減少させる効果を有することが明らかになった。このようなルチンを活性成分として使用することにより、消費者または患者が、苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できる。また、ルチンの効果を利用することにより、現代に多い偏った食事において、メタボリックシンドロームへの関与の高い危険因子である内臓脂肪を含む体脂肪のみを減少することが可能である。
【0099】
例3:ルチン入り半生麺
小麦粉3500g、ソバ粉1500gおよびルチン30gをミキサーに入れ、食塩150gおよびビタミンC10gを溶解させた調味液1700gを添加して撹拌混合する。得られた混合物を練りドウを作製する。
【0100】
練り上がったドウをロールで圧延し、切刃にて切り出して麺線とする。次に、麺線を竿掛けし、調湿しながら乾燥機にて水分22〜27%程度にまで乾燥する。
【0101】
これにより0.5重量%のルチンを含有する半生麺が得られる。
【0102】
従って、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できる半生麺が提供される。
【0103】
例4:ルチン入りソーセージ
配合割合が45重量%の冷凍すり身500gとルチン3.5gをミキサーで混合する。そこにソバ粉、調味料、油、水を計500gを加えて練る。ある程度練ったら、15%の食塩水100gを加えて塩ずりを行う。更に練り、均一となったところでフィルムに充填する。その後、レトルト殺菌処理を行う。
【0104】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるソーセージが提供される。
【0105】
例5:ルチン入りFDソバ
配合割合49.5%のソバ粉、配合割合49.5%の小麦粉、配合割合1%のルチンを所定量ミキサーで混合する。別途、配合割合50%のソバ粉および配合割合50%の小麦粉を所定量ミキサーで混合する。
【0106】
得られたそれぞれの混合物に対して、調味料などを添加した水を所定量加えて練り、ドウを調製する。
【0107】
次に練り上がったドウをロールで圧延する。このとき、内層に前記ルチン配合のドウ、外層にルチン非配合のドウとなるようにする。得られた麺帯を切刃で切り出す。
【0108】
切り出した麺を所定時間ボイルし、冷水で冷却する。その後、得られた麺をトレーに充填し、そこに別途調合した和風スープ、具材を合わせて充填する。
【0109】
これを真空凍結乾燥処理する。
【0110】
本例では、スープおよび具材を麺と合わせて充填する例を示したが、麺のみがFD乾燥処理され、提供されてもよい。
【0111】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるFD麺が提供される。
【0112】
例6:ルチン入りふりかけ
乳糖10g、グラニュー糖20g、食塩13g、デキストリン21g、鰹エキス10gおよび10gのルチンに、少量の水を加えて混合し、圧延した後、約2mm x 3mmの大きさに裁断乾燥し、ルチン含有ふりかけ用素材とする。
【0113】
当該素材をその他のふりかけ用素材と混合して、ルチン入りふりかけを作製する。
【0114】
得られたルチン入りふりかけを小袋に充填して一食用のふりかけとする。
【0115】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるふりかけが提供される。
【0116】
例7:ルチン入りスープ
和風味のFDスープの例を以下に記す。調合釜に配合割合が12%重量の調味料(食塩、砂糖、醤油、みりんおよびその他エキス類)、3.3%重量の保形剤、(でん粉、デキストリン、ゼラチン)、20%重量の具材(鶏肉、卵、きのこ、葱、ゴマ)及び0.7%重量の水溶性ルチン(本例では、αGルチン)を入れ1000mLに加水メスアップし、加熱混合を行う。冷却後、所定の容量のトレーに充填して真空凍結乾燥処理する。本例ではスープと具材が合わせて調合、充填されるものを示したが、スープのみで真空凍結乾燥処理され提供されてもよい。
【0117】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるスープが提供される。
【0118】
例8 ポリフェノールの溶け出し防止に関する検討
ルチン、水溶性ルチン(本例では、αGルチン)、ケルセチン、カテキン、ケルシトリンまたはナリンジンをそれぞれに含む麺帯からの前記物質の放出防止効果を検討した。
【0119】
タンパク質もポリフェノールも含まない無添加試料と、ポリフェノールは含有するがタンパク質は含まないコントロール試料のためのドウは以下のように製造した。小麦粉25gと、125mg(対小麦粉0.5重量%)のルチン、αGルチン、ケルセチン、カテキン、ケルシトリンまたはナリンジンとをそれぞれに混合した。その後、それぞれの混合物に8mL(対小麦粉32重量%)加水し、フードカッター(25g:NationalMX−X62−Cファイバーミキサーまたは50g;NationalスピードカッターMK−K45)にて混合(10秒*3回程度)し、ドウを形成した。
【0120】
一方、被験試料は、飼料が粉体の場合は、小麦粉の一部を置き換える形とし、ポリフェノールと試料を少量の水で加水混合後、小麦粉を添加し、残量の水を加えて、前記同様ドウを形成した。また、試料が水を含んでいる場合は、ドウの水分量がほぼ同じになるように加水量を調整し、ポリフェノールと試料を混合した後、小麦粉を添加し、残量の水を加えて、前記同様ドウを形成した。例えば、4gのスケトウダラすり身とルチン125mgを混合後、小麦粉23gを混合し、水5mLを加えた後、前記と同様の方法でドウを形成した。
【0121】
これらのドウを麺機(パスタメーカーMODEL.CH02−K29、Dulton製)にて圧延した(ダイヤル7→7→6→5→4→3→2→1)。次に、得られた麺帯をパンチ(No.4)にて直径8mmに打ち抜き、一枚ずつ重量を測定して試験管(1枚/本)に入れ、各試験区ごとに3本ずつ用意した。各試験管に蒸留水を3mL添加して撹拌し、5分間室温放置した。これを正確に5分間茹でた。冷水浴に試験管を移して冷却した後、直ぐに各試験管のゆで汁を各500μl、別の試験管に採取した。それぞれの試験管にメタノールを2.5mLずつ入れた。得られた各抽出液を0.45μmフィルターで濾過した後、各々の極大吸収波長で吸光値を測定した。各々の極大吸収波長は次の通りである。
【0122】
ルチン:360nm
αGルチン:360nm
ケルセチン:350nm
カテキン:280nm
ケルシトリン:350nm
ナリンジン:292nm。
【0123】
その結果、スケトウダラのすり身は、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、カテキン、ナリンジンおよびケルセチンの溶け出し防止に有効であった。バイタルグルテンはルチンおよび水溶性ルチンの溶け出し防止に有効であった。また、ホッケすり身、豚肉(ウデ、モモ、カシラ)および鶏肉(ムネ、モモ)についてもケルセチンで溶け出し防止効果があった。結果を表3に示す。
【表3】
【0124】
以上の結果から、食品の製造において、使用したいポリフェノール、例えばルチンおよび水溶性ルチンなどを先にタンパク質と混合し、その後、他の材料と混合することにより、製造時の各工程および/または喫食前の調理時における当該食品からの当該成分の放出を防止することも可能であることが示唆された。また、苦味のある物質に対しては苦味低減に繋がるという効果もある。
【0125】
このような方法は、特に小麦粉およびソバ粉などの穀粉との混合により製造される食品、例えば、餃子、ワンタンおよびシュウマイなどの包皮食品の皮、麺類などの食品において特に有益であり、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら効率よくポリフェノールを摂取できる食品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】例1の結果を示すグラフ。
【図2】例1の結果を示すグラフ。
【図3】例1の結果を示すグラフ。
【図4】例1の結果を示すグラフ。
【図5】例1の結果を示すグラフ。
【図6】例1の結果を示すグラフ。
【図7】例2の結果を示すグラフ。
【図8】例2の結果を示すグラフ。
【図9】例2の結果を示すグラフ。
【図10】例2の結果を示すグラフ。
【図11】例2の結果を示すグラフ。
【図12】例2の結果を示すグラフ。
【図13】例2の結果を示すグラフ。
【図14】例2の結果を示すグラフ。
【図15】例2の結果を示すグラフ。
【図16】例2の結果を示すグラフ。
【図17】例2の結果を示すグラフ。
【図18】例2の結果を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールの吸収に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームは、肥満と、脂肪の過剰な蓄積により引き起こされ易い高脂血症、高血糖症および高血圧との組み合わせによって定義される症候群である。メタボリックシンドロームの患者の増加は、欧米先進国ばかりではなく、日本においても深刻な社会問題となっている。
【0003】
近年の疫学的研究や病態生理学的研究から、肥満と耐糖能異常、高脂血症、高血圧の合併においては、脂肪の絶対量よりも体内脂肪の分布が重要であり、特に、内臓脂肪の蓄積がそれらの肥満合併病態の形成において大きな役割を担っていることが明らかとなった。従って、体脂肪、特に内臓脂肪をどのようにして減らすかがメタボリックシンドロームを予防するために重要であり、それを可能とする手段の開発は、現代社会における大きな課題である。
【0004】
一方、疾病予防および健康増進のために食品中に含有される成分を利用することが注目されている。例えば、ゴマリグナン類、大豆イソフラボン、カテキンを初めとするポリフェノールなどの多くの成分が疾患の予防および治療並びに健康増進のために有効であることが報告されており、既に数多くの製品が広く利用されている。また、例えば、カテキンでは体脂肪蓄積抑制作用(特許文献1)や体内脂肪燃焼促進効果(特許文献2)などが報告されている。また、ソバの全草などに含まれるルチンおよびケルセチンには、抗酸化作用や高血中脂質濃度に因る疾患を予防または治療する効果があることが報告されている(特許文献3)。このような食物由来の成分が、医薬組成物や特定保健用食品における活性成分として脚光を浴びている中で、新たな有効成分の発見や製品の開発が更に期待されている。
【0005】
しかしながら、ルチンを初めとするポリフェノールは、その吸収性に問題があり、摂取された物質が生体に取り込まれる量は極めて少ない。また、その吸収の機序もポリフェノールの種類により様々である。
【特許文献1】特許第3756438号公報
【特許文献2】特開2002−326932号公報
【特許文献3】特表2002−524522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、ポリフェノールを良好に吸収するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するための手段は、本出願人の鋭意研究の結果見出された。即ち、
(1)ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤;
(2)前記クエン酸塩がクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄からなる群より選択される(1)に記載の吸収促進剤;
(3)ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分と、(1)または(2)の何れかに記載の吸収促進剤を含有する食品;
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ポリフェノールを良好に吸収するための手段が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、機能性成分、特に、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどのポリフェノールの吸収が、クエン酸塩により促進されたことを本願発明者らが初めて明らかにしたことにより達成された。
【0010】
ここでいう「吸収促進」とは、腸管透過吸収促進のことをいう。当該機能性成分のクエン酸塩またはクエン酸による吸収促進は、ヒト結腸癌由来上皮細胞株Caco−2の単層培養細胞(以下「Caco−2細胞」と称する)およびイヌ腎尿細管由来上皮細胞株MDCKの単層培養細胞を用いた in vitroモデルにより評価された。これらの in vitroモデルは、in vivoにおけるヒト腸管透過吸収との間に相関性がある(Irvine J. D et. al. J. Pharm. Sci., 88(1), 28-33(1999)、Eur. J. Pharm. Sci., 11, Suppl. 2, S51-S60(2000))。従って、今回、実施例に示すような当該 in vitro モデルにおいて評価された本発明に従う効果は、in vivo においての有用性を示すものである。
【0011】
本発明に従う機能性成分とは、一般的にポリフェノールと称される物質であればよく、特に、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジン並びにそれらの組み合わせをいう。
【0012】
当該ルチンは、以下の化学式(I)により示される化合物である。
【化1】
【0013】
当該ルチンは、化学式(I)により示される化合物としてのルチンを含む何れかの天然由来の供給源から採取すればよい。そのような天然由来の供給源は、例えば、ルチンを含有することが従来知られるそれ自身公知の何れかの植物であればよく、これに限定するものではないが、例えば、ソバ、エンジュ、ヘンルーダ、並びにタマネギ、レタスおよびトマトなどの野菜、柑橘類などの全草、つぼみ、実、葉、花および芽などであってもよい。
【0014】
このような供給源から、ホモジネート、刻み、抽出、濾過、再結晶、濃縮および乾燥など、それ自身当業者に公知の何れかの手段によって得ればよい。例えば、第7改正日本薬局方に記載される方法を使用してもよい。
【0015】
第7改正日本薬局方に記載される方法は次の通りである。まず、250kgのエンジュのつぼみ(即ち、花)を抽出釜に入れて、メタノールを用いて温時抽出する。その抽出液を蒸発濃縮して半固型残留物を得る。この残留物をベンゼン、続いてアセトンを用いて温時洗浄する。これにより樹脂、クロロフィルおよび可溶性色素などの不純物を除去する。次に、溶剤を分離し、水に注加して粗ルチンを析出させ、遠心分離または濾過により約50kgの粗ルチンを得る。50kgの粗ルチン乾燥品をメタノールに加温溶解し、活性炭処理した後に濾過し、濃縮冷却して結晶を得る。この結晶について、50%メタノールから再結晶を行い、得られた結晶を乾燥粉砕して、ふるいに掛けて約22kgのルチンを得ればよい。
【0016】
また、本発明に従うルチンの糖転移物は糖転移ルチンとも称し、糖転移酵素によってルチンに対して糖を付加することによって得られる。また、当該ルチンの糖転移物はそれ自体公知の何れの糖転移ルチンであってもよい。そのような糖転移ルチンは、例えば、グルコシルルチンおよびガラクトシルルチンなど、詳しくは、例えば、α−グルコシルルチンおよびα−ガラクトシルルチンなどであってもよく、更に詳しくは、例えば、4G−α−D−グルコピラノシルルチン及び4G−β−D−ガラクトピラノシルルチンなどであってもよく、これらの混合物であってもよい。これらのグルコシルルチンおよびガラクトシルルチンは、優れた水溶性を有し、生体内ではルチンと同様の生理活性を有することが知られるルチン誘導体である(特許第3701426号公報を参照されたい)。グルコシルルチンの製造方法は、それ自身当業者に公知の何れかの方法を使用してよく、例えば、特開平3−27293号公報および特開平3−58790号公報に開示される方法を使用してよい。また、ガラクトシルルチンの製造方法は、それ自身当業者に公知の何れかの方法を使用してもよく、例えば、特開平4−66096公報、特開平4−66097号公報および特開平4−66098号公報に開示される方法を使用してもよい。これらの文献はここに開示することにより本明細書に組み込まれる。また、本発明に従う糖転移ルチンとして、商業的に入手可能なα−グルコシルルチンの混合物(例えば、酵素処理ルチン、東洋精糖(株)製、商品名:αGルチン)を使用してもよい。
【0017】
本発明に従うケルシトリンとは、以下の式を有する化合物である。
【化2】
【0018】
当該ケルシトリンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、宿根そばおよびトチノキなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に、精製されてもよい。
【0019】
本発明に従うダイジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化3】
【0020】
当該ダイジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ダイズ、葛の根などからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0021】
本発明に従うゲニスチンとは、以下の式を有する化合物である。
【化4】
【0022】
当該ゲニスチンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ダイズなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0023】
本発明に従う水溶性イソフラボンとは、以下の式を有する化合物である。
【化5】
【0024】
当該水溶性イソフラボンは、例えば、ダイジン配糖体、ゲニスチン配糖体およびグリシチン配糖体などである。これらの水溶性イソフラボンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよい。
【0025】
本発明に従うヘスペリジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化6】
【0026】
当該ヘスペリジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、レモンおよびミカン等のかんきつ類、アンズおよびサクランボなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0027】
本発明に従うナリンジンとは、以下の式を有する化合物である。
【化7】
【0028】
当該ナリンジンは、それ自身公知の何れかの手段により合成されてもよく、ザボン、ユズおよびグレープフルーツなどからそれ自身公知の何れかの手段により抽出され、任意に精製されてもよい。
【0029】
本発明における吸収促進剤は、クエン酸塩である。当該クエン酸塩は、クエン酸とアルカリ金属または金属イオンとの塩のことであり、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄などであり、溶媒に溶解した場合に、細胞の生理的機能を維持することが可能なpH値を示すクエン酸塩であればよい。例えば、クエン酸ナトリウムが好ましい。但し、生体の腸管のpHは中性域であり、クエン酸として摂取したとしても、クエン酸塩と同等の効果を示すことから、クエン酸塩に代わり、クエン酸を使用することも可能である。
【0030】
本発明の吸収促進剤として当該クエン酸塩を使用する場合の量は、腸管壁付近において約0.25重量%(100mL中の溶媒に0.25gで溶解)以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%、好ましくは0.25重量%〜2重量%、0.5重量%〜2重量%、1重量%〜2重量%となるような濃度であればよい。
【0031】
また、クエン酸として使用される場合も、同様の濃度となる量を摂取されればよい。
【0032】
当該クエン酸塩と、当該活性成分が同時に存在することにより、当該活性成分の吸収が促進される。
【0033】
本発明に従う吸収促進剤は、ポリフェノール類、例えば、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどのヒトおよびヒト以外の哺乳類などの生体における吸収を促進するために、食品、飲料、医薬品およびサプリメントに含ませて使用してもよい。
【0034】
また、当該吸収促進剤は、ポリフェノール類、例えば、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンなどの物質の膜透過性を向上するために、各実験モデルにおいて使用されてもよい。
【0035】
本発明者は、当該活性成分の中でも、ルチンおよび水溶性ルチンが体脂肪低減効果を有することを見出した。従って、ルチンおよび/または水溶性ルチンを本発明の吸収促進剤と共に対象に摂取させることにより有効に体脂肪低減効果を与えることが可能である。
【実施例】
【0036】
例1
以下、有機酸塩のポリフェノール吸収促進効果について試験した。
【0037】
(1)in vitro 吸収モデル
トランズウェルの粘膜側ウェル内に細胞を播種し、粘膜側ウェルと基底膜側ウェルの両方にMEM(組成:EAGLE’sMEM、血清10%含有、1%非必須アミノ酸、0.3g/Lのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム)を加えた中で37℃、5%CO2雰囲気下でメンブラン上に単層のコンフルエントになるまで培養した。
【0038】
吸収試験は、基底膜側ウェルにPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)を加え、粘膜側ウェルに所望の濃度のポリフェノールおよび/または有機酸塩を含有するサンプル溶液を添加し、インキュベートした後に、粘膜側ウェル、基底膜側ウェルおよび細胞から試料を採取し、HPLCによりポリフェノール量を定量した。
【0039】
粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したポリフェノールの量を吸収されたポリフェノールとみなし、結果は、対照区の透過ポリフェノールの量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の透過ポリフェノールの量(μg/ウェル)の割合を吸収率(%)として示した。
【0040】
(2)サンプル溶液の調製
ルチン24.2mgをDMSO10mLで溶解し、ルチンストック溶液とした。次に、試験物質であるクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはグルコン酸ナトリウムなどの有機酸塩を候補物質としてPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)9.9mLに添加して溶解した。それらに対してルチンストック溶液を0.1mLずつ添加してサンプル溶液とした。
【0041】
同様に、他のポリフェノール、即ち、ケルシトリン、ケルセチン、ダイジン、ゲニスチン、イソフラボンアグリコン、ダイゼイン、ゲニステイン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびアントシアニンを、それぞれDMSO10mLに溶解してポリフェノールストック溶液とした。クエン酸ナトリウムをPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)9.9mLに対して溶解し、これらに対して0.1mLのポリフェノールストック溶液を1種類ずつ添加して各サンプル溶液とした。
【0042】
水溶性ルチンおよび水溶性イソフラボンは、DMSOに溶解せずに、クエン酸ナトリウムと共に直接10mLのPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)に対して溶解した。
【0043】
(3)MDCK細胞を用いた吸収モデルにおけるルチン吸収量への有機酸塩の効果
<方法>
MEM(組成:EAGLE’sMEM、血清10%含有、1%非必須アミノ酸、0.3g/Lのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム)を用いてトランズウェル(コーニング社製)の粘膜側ウェルにMDCK細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で3日間培養した。培地交換は、培養2日目に実施した。培養後、両ウェルから培地を除去し、PBS緩衝液で粘膜側ウェル、基底膜側ウェルのそれぞれを数回洗浄した。次いで、粘膜側ウェルに上記(2)に従って調製した最終濃度0.0024重量%(即ち、242μg/10mL)のルチンと種々の濃度の試験物質を含有するサンプル溶液を添加し、基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で1時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側ウェルの溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合後、表Aに記載の条件でのHPLC分析によって、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したルチン量をμg/ウェルとして測定した。また、対照区は、試験物質を含有せず、最終濃度0.0024重量%のルチンのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加し、吸収試験を行った。
【表A】
<結果>
結果を図1に示す。図1に示すグラフの横軸には添加した試験物質名とその最終濃度を示した。縦軸は、対象区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示した。
【0044】
図1に示されるように、1%クエン酸と1%クエン酸ナトリウムを粘膜側ウェルに添加した場合に顕著な吸収の促進が観察された。1%クエン酸に関しては、腸管のpH(即ち、中性付近)を想定し、サンプルのpHを中性域(pH約7.3)に調整した後、粘膜側ウェルに添加したため、クエン酸ナトリウムと同様な効果が見られた。
【0045】
(4)Caco−2細胞を用いた吸収モデルにおけるルチン吸収量への有機酸塩の影響
<方法>
DMEM(組成;Dulbecco’s Modified EAGLE Medium、血清10%、1%非必須アミノ酸、ペニシリン50U/mL、ストレプトマイシン50μg/mL)を用いてトランズウェル(コーニング社製)の粘膜側ウェルにCaco−2細胞(ATCC HTB−37)を37℃、5%CO2雰囲気下で2〜3週間程度培養した。培地交換は2日おきに行った。培養後、両ウェルから培地を除去し、PBS緩衝液で粘膜側ウェル、基底膜側ウェルそれぞれを数回洗浄した。次いで、粘膜側ウェルに(2)で調製した最終濃度0.0024重量%(即ち、242μg/10mL)のルチンと種々の濃度の試験物質を含有するサンプル溶液を添加し、基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合した後、(3)と同様の条件でのHPLC分析によって、粘膜側から基底膜側に透過したルチン量(μg/ウェル)を測定した。
【0046】
また、対照区は、試験物質を含有せず、最終濃度0.0024重量%のルチンのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述の方法と同様に吸収試験を行った。
【0047】
<結果>
結果を図2に示す。図2に示すグラフの横軸には添加した試験物質名とその最終濃度を示した。縦軸は、対照区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区のルチン吸収量、即ち、基底膜側ウェルのルチン量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示した。
【0048】
図2に示されるように、2%クエン酸ナトリウムを粘膜側ウェルに添加した場合にのみ顕著な吸収の促進が観察された。
【0049】
(5)MDCK細胞を用いた吸収モデルにおけるポリフェノール吸収量へのクエン酸ナトリウムの効果
クエン酸ナトリウムによる各種ポリフェノールの吸収に対する影響を試験した。クエン酸ナトリウムを被検物質としてPBS緩衝液に1%となるように溶解し、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン(αG大豆イソフラボン)、ルチン、水溶性ルチン(αGルチン)、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれに最終濃度が0.0020、0.0022、0.0033、0.0034、0.5、0.0048、4、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046、0.035重量%となるように添加してサンプル溶液を調製した。それらのサンプル溶液をMDCK細胞粘膜側ウェルに添加し、基底膜側ウェルにはPBS緩衝液(pH7.2〜7.4)を添加し、37℃、1時間後に基底膜側溶液を回収し、ウェルあたりのポリフェノール透過量を測定した。測定は回収した基底膜側溶液をメタノールと容量比1:1で混合し、上記表Aに示す条件でのHPLC分析によって実施した。
【0050】
また、対照区は、試験物質を含有せず、上記濃度のポリフェノールのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述と同様の方法により吸収試験を行った。
【0051】
<結果>
結果を図3に示した。図3に示すグラフは、縦軸に、対照区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示し、横軸に、添加したポリフェノールの種類を示した。
【0052】
その結果、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジンおよびナリンジンについて顕著な吸収促進効果が観察された。
【0053】
ここで、MDCK細胞を使用した吸収モデルにおいて、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれ0.0020、0.0022、0.0033、0.0034、0.5、0.0048、4.0、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046および0.35重量%の濃度で粘膜側ウェルに存在させたこと以外は(3)と同じ条件で吸収試験をした場合、基底膜側ウェルに透過したポリフェノールは、それぞれ、16.5、19.5、0.08、0.07、4.2、0.08、10.8、0.05、1.7、0.02、0.06および0.20μg/ウェルであった。一方、前記濃度の前記ポリフェノールと共にクエン酸ナトリウムを1.0重量%で存在させたこと以外は同様の条件で試験した場合では、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルへの各ポリフェノールの透過量は、12.8、18.4、0.66、0.73、54.5、0.68、72.5、0.37、1.9、2.0、0.45および0.68μg/ウェルであった。
【0054】
(6)Caco−2細胞を用いた吸収モデルにおけるポリフェノール吸収量へのクエン酸ナトリウムによる効果
クエン酸ナトリウムによる各種ポリフェノールの吸収に対する影響を試験した。クエン酸ナトリウムを被検物質としてPBS緩衝液に対して(併用の物質が水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジンおよびナリンジンの場合には)1重量%、(併用の物質がダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、ケルセチンおよびカシスポリフェノールの場合には)2重量%となるように溶解した。これらに対して、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジンおよびカシスポリフェノールを、それぞれに0.2、0.2、0.0033、0.0034、1、2、4、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046、0.035重量%の最終濃度となるように添加してサンプル溶液とした。それらのサンプル溶液をCaco−2細胞基底膜側ウェルにPBS緩衝液を添加して37℃、5%CO2雰囲気下で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、基底膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合した後、(5)と同様の条件でのHPLC分析によって、粘膜側から基底膜側に透過したポリフェノール量(μg/ウェル)を測定した。
【0055】
また、対照区は、試験物質を含有せず、上記濃度のポリフェノールのみを含有するサンプルを粘膜側ウェルに添加したこと以外は上述と同様の方法により吸収試験を行った。
【0056】
<結果>
結果を図4に示した。図4に示すグラフは、縦軸に、対照区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)を100%としたときの試験区の基底膜側ポリフェノール量(μg/ウェル)の割合をパーセンテージで示し、横軸に、添加したポリフェノールの種類を示した。
【0057】
その結果、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ヘスペリジン、およびナリンジンについて顕著な吸収促進効果が観察された。
【0058】
ここで、Caco−2細胞を使用した吸収モデルにおいて、ダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ケルセチン、ヘスペリジン、ナリンジン、カシスポリフェノールを、それぞれ0.2、0.2、0.0033、0.0034、1.0、2.0、4.0、0.0018、0.0024、0.0024、0.0046および0.035重量%の濃度で粘膜側ウェルに存在させたこと以外は(4)と同じ条件で吸収試験をした場合、基底膜側ウェルに透過したポリフェノールは、それぞれ、4.4、5.9、0.2、0.3、33.7、0.2、37.3、0.03、2.9、0.02、0.3および2.2μg/ウェルであった。一方、前記濃度のそれぞれのポリフェノールに対して、2.0、2.0、2.0、2.0、1.0、1.0、1.0、1.0、2.0、1.0、1.0および2.0重量%のクエン酸ナトリウムを併用したこと以外は同様の条件で試験した場合では、粘膜側ウェルから基底膜側ウェルへの各ポリフェノール透過量は、3.6、5.3、3.2、2.4、143.7、1.5、131.6、0.28、2.9、0.26、2.4および3.3μg/ウェルであった。
【0059】
(7)クエン酸ナトリウムの濃度による影響
<方法>
使用するクエン酸ナトリウムの濃度を0.25、0.5、1.0、2.0重量%とし、且つ各ポリフェノールの最終濃度を0.00178、0.002、0.00216、0.0024、0.00242、0.0033、0.00342、0.0046、0.00484、0.001、0.01、0.035、0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、4、8重量%とすること以外は(2)に記載のサンプル溶液の調製法と同様にサンプル溶液を調製し、MDCK細胞およびCaco−2細胞を用いた(1)に記載の吸収モデルを用いて、各細胞毎に(3)および(4)に記載の方法と同様に、ポリフェノールの吸収量に対するクエン酸ナトリウムの影響を検討した。
【0060】
また更に、粘膜側のポリフェノール量は、粘膜側溶液0.5mLを回収し、メタノール0.5mLと混合後、同様の条件でHPLC分析し、μg/ウェルとして算出した。また、データには示さないが、細胞に存在するポリフェノール量は、メタノールを添加して細胞をかきとり、バイアル瓶に入れ、ソニケーションにて抽出後、溶媒留去し、1ウェル当たりの抽出物をメタノール1mLで溶解したものをHPLC分析に供して測定した。
【0061】
<結果>
結果を、表Bおよび表Cに示す。
【表B】
【0062】
【表C】
表中、各濃度は重量%で示した。「吸収率(対コントロール%)」は、試験区において粘膜側ウェルから基底膜側ウェルに透過したポリフェノールの量を、対照区の透過ポリフェノール量を100%としたときの割合で示す。ポリフェノールの濃度(%)は、当該試験区における試験前の粘膜側ウェルに含まれる各ポリフェノールの濃度を示す。同様にクエン酸Na濃度(%)は当該試験区における試験開始前の粘膜側ウェルに含まれるクエン酸ナトリウムの濃度を示す。
【0063】
表BおよびCから明らかであるように、いずれの細胞を使用した場合においても、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジン、ナリンジンは、いずれのクエン酸ナトリウム濃度でも良好な吸収促進が観察された。
【0064】
(8)クエン酸ナトリウムのLDH遊離率による細胞毒性
定法に従ってMEM(EAGLE’s MEM)を用いて96ウェルプレート(コーニング社製)に培養したMDCK細胞のプレートから培地を除去し、0.1mLのPBS緩衝液で数回洗浄した後に、0.05mLのMEM(1%血清含有)を添加した。そこへ被験サンプルとして0.25〜2%のクエン酸ナトリウム溶液(PBS緩衝液調製)を0.05mLずつ添加(終濃度0.125〜1%)して、37℃、5%CO2雰囲気下、1時間インキュベートした。インキュベート後の上清中のLDH(乳酸脱水素酵素)をLDH−Cytotoxic Test Wako(和光純薬社製)を用いて測定した。なお、陰性対照にはPBS緩衝液、陽性対照にはPBS緩衝液で溶解した1%TritonX−100を使用した。結果を図5に示す。クエン酸ナトリウムによるLDH遊離率は低く、クエン酸ナトリウムは細胞膜障害由来の細胞毒性は非常に低いことが示された。
【0065】
(9)クエン酸ナトリウムの呼吸阻害による細胞毒性
定法に従ってMEM(EAGLE’s MEM)を用いて96ウェルプレート(コーニング社製)に培養したMDCK細胞のプレートから培地を除去し、0.1mLのPBS緩衝液で数回洗浄した後に、被験サンプルとしてPBS緩衝液で0.1〜2.0%に調製したクエン酸ナトリウム溶液を0.1mL添加して、37℃、5%CO2雰囲気下、1時間インキュベートした。インキュベート後、サンプル溶液を除去し、予めMEM(10%血清含有)で0.5mg/mLに調製したMTT溶液を各ウェルに0.1mLずつ添加して、37℃、4時間反応した。反応後、MTT溶液を除去し、DMSOを各ウェルに100μLずつ添加し、振盪し、生成したMTTホルマザンを溶解した。溶解後、マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定した。なお、陰性対照にはPBS緩衝液、陽性対照にはPBS緩衝液で溶解した1%TritonX−100を使用した。結果を図6に示す。クエン酸ナトリウムによる呼吸阻害由来の細胞増殖阻害は殆ど見られず、クエン酸ナトリウムは細胞毒性が非常に低いことが示された。
【0066】
例2:ルチンの体脂肪低減効果
(1)試験サンプル
それぞれの試験サンプルは、ヒトが摂取するのと同様の凍結乾燥麺(一般的には「FD麺」とも称する)として形成した。
【0067】
サンプル1は、1.5kgのソバ粉、および3.5kgの小麦粉、150gの食塩および7.5gのアスコルビン酸をミキサーで混合した。サンプル2は、1.5kgのソバ粉、3.5kgの小麦粉、150gの食塩、7.5gのアスコルビン酸、65gのルチンをミキサーで混合した。サンプル3は、1.5kgのソバ粉、3.5kgの小麦粉、150gの食塩、7.5gのアスコルビン酸、50gのカテキン(太陽化学(株)サンフェノン)をミキサーで混合した。得られたそれぞれの混合物に対して、1.75kgの水を加えて練り、ドウを調製した。
【0068】
次に練り上がったドウをロールで圧延し、厚さ1.35mmの麺帯を作製し、得られた麺帯を切刃で切り出し、幅1.5mm、長さ340〜350mmの麺線を形成した。
【0069】
切り出した麺線を水分20〜27%まで乾燥して半生麺を作製した。この麺を3分間ボイルし、冷水で冷却した。得られた麺を急速凍結し、これを、KYOWAC RL−8 04(日精(株))にて真空凍結乾燥処理した。
【0070】
得られたそれぞれのFD麺に含まれる各成分を定量した。
【0071】
ルチン含量を高速液体クロマトグラフィー(ここでは、「HPLC」とも記す)で測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
【0072】
CAPCELL PAKカラム C18、4.6*250mm(資生堂)
溶離液:0.1%リン酸/メタノール=70/30(v/v)およびメタノール100%のグラジエント溶出
UV検出器の波長:360nm
流速:1mL/min。
【0073】
サンプル1およびサンプル2の1.00gを、それぞれ20mLのメタノールを用いて80℃で1時間還流抽出した。これをNo.5cの濾紙で濾過し、メタノールで25mLに定容した。これをHPLCディスク(0.45μm)で濾過し、得られた濾液をHPLCで分析した。その結果、サンプル1はルチンを0.17mg/100gで含有した。サンプル2はルチンを756mg/100gで含有した。
【0074】
カテキン含量は、エピガロカテキンガレート(以下「EGCG」と記す)を標品として、酒石酸鉄法により測定した。サンプル1およびサンプル3の1.00gを40mLの80%エタノールで1分間ホモジナイズした後に、室温にて1時間以上放置した。これを80%エタノールで50mLに定容した後、No.5cの濾紙で濾過した。これを酒石酸鉄法にて定量した。その結果、サンプル3に含まれるカテキンは、EGCG換算で860mg/100gであった。また更に、サンプル3に含まれる幾つかのカテキン成分を更に詳しくHPLCで定量を行った。
【0075】
HPLCの条件は次の通りである。
【0076】
CAPCELL PAKカラム C18、4.6*250mm(資生堂)
溶離液:メタノール/0.5%リン酸溶液=25/75(v/v)
UV検出器の波長:280nm
流速:1mL/min。
【0077】
その結果、EGC(即ち、エピガロカテキン)は107mg/100g、EGCg(即ち、エピガロカテキンガレート)は295mg/100g、EC(即ち、エピカテキン)は105mg/100g、ECg(エピカテキンガレート)は125mg/100gであった。
【0078】
上述のようなFD麺を以下の実験飼料を製造するために使用した。
【0079】
(2)実験飼料
試験動物に与えるための飼料1、飼料2および飼料3の実験飼料(本明細書では単に「飼料」とも記す)は、以下の組成を有する粉末に対して上記で製造した試験サンプルを粉砕したものを添加して調製した。即ち、飼料1にはサンプル1、飼料2にはサンプル2、飼料3にはサンプル3が含まれる。飼料1、飼料2および飼料3は、粉末のまま餌として動物に与えた。
【0080】
ノーマル群に与えた飼料4は、通常飼料として用いられるAIN93G組成のものを用いた。他の飼料はそれを改変した組成を有する。表中の塩類混合物およびビタミン混合物は、AIN93Gの組成に従った。
【表1】
【0081】
また、それぞれの飼料は次のような飼料である。
【0082】
飼料1:コントロール群に与えるためのコントロール飼料
飼料2:ルチン添加群に与えるためのルチン添加飼料
飼料3:カテキン添加群に与えるためのカテキン添加飼料
飼料4:通常食群に与えるための通常飼料。
【0083】
(3)実験方法
4週齢のSprague Dawley(SD)系雄性ラット(日本クレア株より購入)を、搬入から2〜3日間市販の通常の固形飼料を与えて飼育した。その後、体重測定し、各群の平均体重がほぼ同じになるように4匹ずつ4群に分けた。
【0084】
コントロール群には飼料1を、ルチン添加群には飼料2を、カテキン添加群には飼料3を、通常食群には飼料4を割り当てた。実験開始と同時にそれぞれの群に割り当てられた実験飼料を与え、3週間に亘って自由摂取させた。また同様に水も自由摂取させた。その後、1日置きに体重を測定し、飼料摂取量を計量した。
【0085】
試験食開始から14日目の午前に尾静脈採血を行った。採取した血液はヘパリンコートキャピラリー2本分で約80μlであり、これについて血漿総コレステロールを以下のように測定した。採取した血液を含むヘパリンコートキャピラリーをキャピラリー用遠心機に掛け、血球を沈殿させ、血漿をマイクロチューブに採取した。得られた血漿を市販の定量用キットでコレステロールE−テストワコー(和光純薬工業(株))を使用し、酵素法により測定した。
【0086】
試験食開始から21日目の午前に飼料をケージから取り除き、午後に麻酔下で解剖を行い、血液はヘパリン不在下で採取し、肝臓、脂肪および可能であれば副腎を採取した。
【0087】
採取した血液の凝固後に血清を採取し、得られた血清について、血清コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度をそれぞれの定量用キット、コレステロールE-テストワコー、トリグリセライドE-テストワコー(和光純薬工業(株))を使用し酵素法によって測定した。
【0088】
腎周辺脂肪組織、副睾丸周辺脂肪組織および後腹壁脂肪組織の重量を測定した。肝臓からFolchらの方法(クロロホルム:メタノール=2:1を使用)の変法により脂質成分を抽出し、定量を行った。
【0089】
(4)統計学的解析
結果は、平均値±標準誤差で示した。統計学的解析は、ダンカンの検定法を用いて行った。
【0090】
(5)結果
得られた結果を図7〜12に示す。
【0091】
ここで、図中、有意差は*<0.05、**<0.01で示した。
【0092】
図7に示すように3週間投与後の脂肪総重量は、コントロール群と通常食群はほぼ同じであった。また、コントロール群に比べてルチン添加群では有意に低かった。一方、コントロール群に比べてカテキン添加群では脂肪総重量を減少する傾向が見られたが統計的に有意な差ではなかった。図8に示すように3週間投与後の後腹壁脂肪量は、コントロール群と比べてルチン添加群で低い傾向が見られた。図9に示すように、3週間投与後の腎周辺脂肪量は、コントロール群、通常食群に比べてルチン添加群は有意に低かった。図10に示すように、3週間投与後の副睾丸周辺脂肪量は、ルチン添加群およびカテキン添加群共にコントロール群および通常食群と比べて有意に低かった。図11に示すように、3週間投与後の脂肪率は、ルチン添加群はコントロール群に比べて有意に低かった。
【0093】
一方、図12に示すように、血清トリグリセリド濃度は、コントロール群、ルチン添加群、カテキン添加群は通常食群に比べて高い傾向があった。図13に示すように、3週間投与後の肝臓重量は、コントロール群とルチン添加群には有意差はなかった。それに対して、カテキン添加群は、コントロール群に比べて肝臓重量に有意な減少があった。同様に、通常食群もコントロール群に比べて肝臓重量が有意に減少した。
【0094】
図14に示すように、3週間投与後の血清コレステロール濃度は、コントロール群とルチン添加群の間に有意差はなかった。通常食群とコントロール群、および通常食群とルチン添加群の間には有意差があった。
【0095】
図15に示すように、3週間投与後の肝臓総脂質量は、コントロール群とルチン添加群の間に有意差はなかった。カテキン添加群では減少する傾向が見られた。これらに対して通常食群は有意に低かった。図16に示すように肝臓総脂質濃度も同様な結果であった。
【0096】
図17および図18から分かるように、何れの群の間にも体重増加量および飼料摂取量に差はなかった。飼料効率においても有意な差はなかった(表2)。
【表2】
【0097】
以上の結果から明らかなようにルチン添加群では、体重、血清脂質および肝臓重量には影響せずに、体脂肪が顕著に減少した。一方、比較例として用いたカテキン添加群では、血清コレステロールの有意な減少と、肝臓重量の有意な減少が観察された。従って、ルチンとカテキンの体脂肪減少作用に関する作用機序が異なる可能性が示唆された。
【0098】
これらの結果から、本発明に従うルチンが、血中脂質量および体重には影響を与えずに体脂肪のみを有意に減少させる効果を有することが明らかになった。このようなルチンを活性成分として使用することにより、消費者または患者が、苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できる。また、ルチンの効果を利用することにより、現代に多い偏った食事において、メタボリックシンドロームへの関与の高い危険因子である内臓脂肪を含む体脂肪のみを減少することが可能である。
【0099】
例3:ルチン入り半生麺
小麦粉3500g、ソバ粉1500gおよびルチン30gをミキサーに入れ、食塩150gおよびビタミンC10gを溶解させた調味液1700gを添加して撹拌混合する。得られた混合物を練りドウを作製する。
【0100】
練り上がったドウをロールで圧延し、切刃にて切り出して麺線とする。次に、麺線を竿掛けし、調湿しながら乾燥機にて水分22〜27%程度にまで乾燥する。
【0101】
これにより0.5重量%のルチンを含有する半生麺が得られる。
【0102】
従って、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できる半生麺が提供される。
【0103】
例4:ルチン入りソーセージ
配合割合が45重量%の冷凍すり身500gとルチン3.5gをミキサーで混合する。そこにソバ粉、調味料、油、水を計500gを加えて練る。ある程度練ったら、15%の食塩水100gを加えて塩ずりを行う。更に練り、均一となったところでフィルムに充填する。その後、レトルト殺菌処理を行う。
【0104】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるソーセージが提供される。
【0105】
例5:ルチン入りFDソバ
配合割合49.5%のソバ粉、配合割合49.5%の小麦粉、配合割合1%のルチンを所定量ミキサーで混合する。別途、配合割合50%のソバ粉および配合割合50%の小麦粉を所定量ミキサーで混合する。
【0106】
得られたそれぞれの混合物に対して、調味料などを添加した水を所定量加えて練り、ドウを調製する。
【0107】
次に練り上がったドウをロールで圧延する。このとき、内層に前記ルチン配合のドウ、外層にルチン非配合のドウとなるようにする。得られた麺帯を切刃で切り出す。
【0108】
切り出した麺を所定時間ボイルし、冷水で冷却する。その後、得られた麺をトレーに充填し、そこに別途調合した和風スープ、具材を合わせて充填する。
【0109】
これを真空凍結乾燥処理する。
【0110】
本例では、スープおよび具材を麺と合わせて充填する例を示したが、麺のみがFD乾燥処理され、提供されてもよい。
【0111】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるFD麺が提供される。
【0112】
例6:ルチン入りふりかけ
乳糖10g、グラニュー糖20g、食塩13g、デキストリン21g、鰹エキス10gおよび10gのルチンに、少量の水を加えて混合し、圧延した後、約2mm x 3mmの大きさに裁断乾燥し、ルチン含有ふりかけ用素材とする。
【0113】
当該素材をその他のふりかけ用素材と混合して、ルチン入りふりかけを作製する。
【0114】
得られたルチン入りふりかけを小袋に充填して一食用のふりかけとする。
【0115】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるふりかけが提供される。
【0116】
例7:ルチン入りスープ
和風味のFDスープの例を以下に記す。調合釜に配合割合が12%重量の調味料(食塩、砂糖、醤油、みりんおよびその他エキス類)、3.3%重量の保形剤、(でん粉、デキストリン、ゼラチン)、20%重量の具材(鶏肉、卵、きのこ、葱、ゴマ)及び0.7%重量の水溶性ルチン(本例では、αGルチン)を入れ1000mLに加水メスアップし、加熱混合を行う。冷却後、所定の容量のトレーに充填して真空凍結乾燥処理する。本例ではスープと具材が合わせて調合、充填されるものを示したが、スープのみで真空凍結乾燥処理され提供されてもよい。
【0117】
これにより、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら体脂肪を低減できるスープが提供される。
【0118】
例8 ポリフェノールの溶け出し防止に関する検討
ルチン、水溶性ルチン(本例では、αGルチン)、ケルセチン、カテキン、ケルシトリンまたはナリンジンをそれぞれに含む麺帯からの前記物質の放出防止効果を検討した。
【0119】
タンパク質もポリフェノールも含まない無添加試料と、ポリフェノールは含有するがタンパク質は含まないコントロール試料のためのドウは以下のように製造した。小麦粉25gと、125mg(対小麦粉0.5重量%)のルチン、αGルチン、ケルセチン、カテキン、ケルシトリンまたはナリンジンとをそれぞれに混合した。その後、それぞれの混合物に8mL(対小麦粉32重量%)加水し、フードカッター(25g:NationalMX−X62−Cファイバーミキサーまたは50g;NationalスピードカッターMK−K45)にて混合(10秒*3回程度)し、ドウを形成した。
【0120】
一方、被験試料は、飼料が粉体の場合は、小麦粉の一部を置き換える形とし、ポリフェノールと試料を少量の水で加水混合後、小麦粉を添加し、残量の水を加えて、前記同様ドウを形成した。また、試料が水を含んでいる場合は、ドウの水分量がほぼ同じになるように加水量を調整し、ポリフェノールと試料を混合した後、小麦粉を添加し、残量の水を加えて、前記同様ドウを形成した。例えば、4gのスケトウダラすり身とルチン125mgを混合後、小麦粉23gを混合し、水5mLを加えた後、前記と同様の方法でドウを形成した。
【0121】
これらのドウを麺機(パスタメーカーMODEL.CH02−K29、Dulton製)にて圧延した(ダイヤル7→7→6→5→4→3→2→1)。次に、得られた麺帯をパンチ(No.4)にて直径8mmに打ち抜き、一枚ずつ重量を測定して試験管(1枚/本)に入れ、各試験区ごとに3本ずつ用意した。各試験管に蒸留水を3mL添加して撹拌し、5分間室温放置した。これを正確に5分間茹でた。冷水浴に試験管を移して冷却した後、直ぐに各試験管のゆで汁を各500μl、別の試験管に採取した。それぞれの試験管にメタノールを2.5mLずつ入れた。得られた各抽出液を0.45μmフィルターで濾過した後、各々の極大吸収波長で吸光値を測定した。各々の極大吸収波長は次の通りである。
【0122】
ルチン:360nm
αGルチン:360nm
ケルセチン:350nm
カテキン:280nm
ケルシトリン:350nm
ナリンジン:292nm。
【0123】
その結果、スケトウダラのすり身は、ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、カテキン、ナリンジンおよびケルセチンの溶け出し防止に有効であった。バイタルグルテンはルチンおよび水溶性ルチンの溶け出し防止に有効であった。また、ホッケすり身、豚肉(ウデ、モモ、カシラ)および鶏肉(ムネ、モモ)についてもケルセチンで溶け出し防止効果があった。結果を表3に示す。
【表3】
【0124】
以上の結果から、食品の製造において、使用したいポリフェノール、例えばルチンおよび水溶性ルチンなどを先にタンパク質と混合し、その後、他の材料と混合することにより、製造時の各工程および/または喫食前の調理時における当該食品からの当該成分の放出を防止することも可能であることが示唆された。また、苦味のある物質に対しては苦味低減に繋がるという効果もある。
【0125】
このような方法は、特に小麦粉およびソバ粉などの穀粉との混合により製造される食品、例えば、餃子、ワンタンおよびシュウマイなどの包皮食品の皮、麺類などの食品において特に有益であり、消費者または患者が安全、簡単且つ苦痛なく食を楽しみながら効率よくポリフェノールを摂取できる食品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】例1の結果を示すグラフ。
【図2】例1の結果を示すグラフ。
【図3】例1の結果を示すグラフ。
【図4】例1の結果を示すグラフ。
【図5】例1の結果を示すグラフ。
【図6】例1の結果を示すグラフ。
【図7】例2の結果を示すグラフ。
【図8】例2の結果を示すグラフ。
【図9】例2の結果を示すグラフ。
【図10】例2の結果を示すグラフ。
【図11】例2の結果を示すグラフ。
【図12】例2の結果を示すグラフ。
【図13】例2の結果を示すグラフ。
【図14】例2の結果を示すグラフ。
【図15】例2の結果を示すグラフ。
【図16】例2の結果を示すグラフ。
【図17】例2の結果を示すグラフ。
【図18】例2の結果を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤。
【請求項2】
前記活性成分が、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄からなる群より選択される請求項1に記載の吸収促進剤。
【請求項3】
ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分と、請求項1または2の何れかに記載の吸収促進剤を含有する食品。
【請求項1】
ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分の吸収を促進する、クエン酸塩またはクエン酸を活性成分とする吸収促進剤。
【請求項2】
前記活性成分が、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸鉄からなる群より選択される請求項1に記載の吸収促進剤。
【請求項3】
ルチン、水溶性ルチン、ケルシトリン、ダイジン、ゲニスチン、水溶性イソフラボン、ヘスペリジンおよびナリンジンからなる群より選択される機能性成分と、請求項1または2の何れかに記載の吸収促進剤を含有する食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−37258(P2010−37258A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201173(P2008−201173)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000222783)東洋水産株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000222783)東洋水産株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
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