説明

ポリフェノール抽出物の製造方法、骨粗鬆症予防剤、糖質消化酵素阻害剤、これらを用いた機能性組成物、およびこの機能性組成物を含む、食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物

【課題】 クエン酸を含んでおらず、ポリフェノールの組成が明確で、ポリフェノールの含有量が多いポリフェノール抽出物の製造方法、およびこれを用いた機能性組成物、骨粗鬆症予防剤、肥満や糖尿病の治療、予防用糖質消化酵素阻害剤、ならびに食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のポリフェノール抽出物の製造方法は、梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させた後に、このスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂に、水性溶媒で溶出処理をしたものを、濃縮することで、クエン酸を含まず、ポリフェノールが高濃度に含まれるポリフェノール抽出物を得る。また、梅酢から得られるポリフェノール抽出物の新たな機能性組成物は、糖尿病予防用の食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅酢から得られるポリフェノール抽出物の製造方法、梅酢から得られるポリフェノ−ル抽出物の機能性組成物に関する。また本発明は、梅酢から得られるポリフェノ−ル抽出物を用いた骨粗鬆症予防剤、肥満や糖尿病の治療、予防に有効的なα−アミラ−ゼ阻害作用およびα−グルコシドダ−ゼ阻害作用を有する糖質消化酵素阻害剤、およびこれを含む機能性組成物、ならびにこの機能性組成物を用いた、食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、古来より、梅を梅干、梅酒、梅肉エキスなどに加工して食されてきた。日本以外では、梅は、朝鮮半島、中国および台湾で主として食されている。中国では、未成熟の梅果実を燻して、漢方薬「烏梅」を得る。「烏梅」は、消化器系の疾患に用いられている。このように、梅は体に良い食べ物と認知されている。
【0003】
しかし、梅の機能性成分に関する詳しい解析や、人を対象とした介入試験などはほとんど行われていない。梅の機能性成分に関する報告としては、例えば、ポリフェノール、ペクチン質、あるいは梅の花の存在するヒドロキシ桂皮酸の配糖体であるプルノースI、II、IIIなどについて一部が報告がされている。
【0004】
一方、果実の保健機能に関与する機能性材料としてポリフェノールが注目されている。ポリフェノールは、複数のフェノール性水酸基(ヒドロキシ基)を同一分子内にもつ植物成分の総称である。ポリフェノールは、抗酸化作用を有し、抗催癌作用の他、動脈硬化、老人性痴呆症、脳梗塞、リウマチ性疾患、心筋梗塞、痛風、糖尿病などの予防に有効であると言われている。
【0005】
梅で言い伝えられている保健機能に関しても、梅が含有するポリフェノールも関与していると考えられている。
【0006】
例えば、梅酒中には、ポリフェノールの一種であるリグナン誘導体であるリオニレシノールが存在する。このリオニレシノールが、抗酸化作用を有することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、リグナン誘導体の一種であるシリンガレシノールも、梅から単離されている。シリンガレシノールは、胃粘膜に生息するピロリ菌に対する抗菌作用があることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
さらに、梅果実の抽出物が、実験動物において降血圧作用を示すことが示されている(例えば、非特許文献3参照)。この文献では、梅果実の抽出物に含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が、アンジオテンシンIを、血圧を昇圧させるアンジオテンシンIIに変換する酵素である、アンジオテンシン変換酵素の阻害活性を有することが記載されている。
【0009】
さらにまた、梅果実の抽出物が、腸内出血性大腸菌O157に対して、その最小発育素子濃度の半分程度の濃度で、ベロ毒素の産生が抑制されることが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。ベロ毒素の産生を抑制する活性物質は単離されてはいないが、ポリフェノールであると推論されている。
【0010】
しかし、梅は加工しなければ食することができない果実である。このため、加工過程で種々の副産物や廃棄物を生じる。副産物や廃棄物の主要なものに、梅干生産過程で生じる「梅酢」がある。「梅酢」の発生量は、たとえばわが国の梅干生産の約6割を算出する和歌山県で、年間約16、000トンに達する。
【0011】
これらの梅酢は、従来、野菜漬物の副原料として利用する、あるいは電気透析処理をして、食塩を回収する、脱塩梅酢を果汁代替え品などの食品素材として利用するなどされてきた。しかし、その利用は、梅酢全体の一部にしか過ぎず、付加価値も低い。また、焼却や汚水処理など、再利用されない梅酢の処理をする必要がある。このため、梅酢を高付加で有効利用することが要求されている。
【0012】
一方、梅酢の中にも、ポリフェノールが含まれていることが知られている(例えば、非特許文献5、6参照)。
【0013】
非特許文献5では、以下のようにして「梅酢抽出物」を得る方法が開示されている。梅酢をまず珪藻土であらかじめ濾過して不純物を除いたものを、合成吸着樹脂(DIAION HP−20、三菱化学(株)製)のカラムに通す。次にこの樹脂を水で洗浄し、食塩及びクエン酸を洗い流す。この樹脂を使用梅酢量の1/20容量の90%エタノールで洗浄し、溶出した液を水分約25%まで濃縮して「梅酢抽出物」を得る。この文献には、この「梅酢抽出物」には、リオニレシノールが0.3%含まれていることが開示されている。また、この「梅酢抽出物」を脳卒中易発性高血圧自然発症ラットに投与すると、血圧上昇の抑制作用、血清過酸化脂質の上昇抑制、および肝臓の中性脂質の蓄積抑制作用があることが開示されている。
【0014】
しかし、この文献には、「梅酢抽出物」中のポリフェノール含量やその種類について、言及していない。
【0015】
非特許文献6では、梅酢を電気透析にかけて脱塩した後、濃縮して得た「濃縮脱塩梅酢」が開示されている。この文献には、この「濃縮脱塩梅酢」をハムスターに投与すると、血清中及び肝臓中の中性脂質の濃度を減少させる作用があることが記載されている。
【0016】
しかし、この「濃縮脱塩梅酢」のポリフェノール含量は、0.065%に過ぎない。また、製造方法から、この「濃縮脱塩梅酢」には、多量のクエン酸が含まれていることが推測される。したがって、上記「濃縮脱塩梅酢」の効果は、ポリフェノールの効果がどうかは明確ではない。ポリフェノールとクエン酸との組合せの効果である可能性がある。
【0017】
梅酢を有効利用するためには、ポリフェノールの組成が明確で、ポリフェノールの含有量が多い抽出物を作ることが重要である。また、ポリフェノールの新たな効果を見出すことで、新たな梅酢の利用分野を開発することができる。
【0018】
近年、ポリフェノールを含む植物抽出物を機能性材料として、健康食品や薬剤原料として用いることが試みられている(例えば、特許文献1、2参照)。例えば、特許文献1には、イチヤクソウ科の植物抽出物を用いた酵素阻害剤が開示されている。また、特許文献2には、ハマナス類の花弁部もしくは果実部抽出物を用いたα−アミラ−ゼ阻害剤が開示されている。
【0019】
しかし、これらの植物は食経験が無い、あるいは極めて乏しい材料が用いられている。このため、安全性の評価には長い時間と費用が予想される。また、ポリフェノ−ルはベンゼン環に複数の水酸基を有する複雑な化合物の総称で、その種類も極めて多数である。植物由来のポリフェノ−ル類は、植物により含まれるポリフェノ−ル類の種類も異なり、その作用効果も異なる。
【0020】
一方、梅酢は従来から食経験があり、なじまれていたものである。また、梅干を作成する工程で生じる副産物である梅酢は、漬物や調味料に広く用いられている伝統食品で、その安全性は特に問題とはなっていない。したがって、梅酢から得られるポリフェノール抽出物に新たな機能を見出すことができれば、その有用性が高い。
【非特許文献1】白坂憲章、他7名、「梅酒の抗酸化性と抗酸化物質の単離と同定」、日本食品科学工学会誌、1999年、第46巻、p.792−798
【非特許文献2】オオツカ ティー(Otuka T)、他9名、「ウメ濃縮果汁のモンゴルスナネズミにおけるヘリコバクター ピロリで誘発された腺胃病変の抑制効果(Suppressive effects of fruit−juice concentrate of Prunus mume Sieb. et Zucc. (Japanese apricot、 Ume) on Helicobacter pylori−induced glandular stomach lesions in Mongolian gerbils.)」、「エーシャン パシフィック ジャーナル オブ キャンサー プレベンション(Asian Pacific Journal of Cancer Prevention)」、2005年、アジア太平洋がん予防機関、第6巻、p.337−341
【非特許文献3】イナ エッチ(Ina H)、他3名、「実験的更年期モデルラットの血漿中の副腎皮質ホルモン(ACTH)レベルとカテコールアミンレベルに与えるウメ由来ベンジル配糖体およびクロロゲン酸の影響(Effects of benzyl glucoside and chlorogenic acid from Prunus mume on adrenocorticotropic hormone (ACTH) and catecholamine levels in plasma of experimental menopausal model rats)」、2004年、バイオロジカル アンド ファーマシューティカルブレティン(BIOLOGICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN)、社団法人日本薬学会、2004年、第27巻、p.136−137
【非特許文献4】サカガミ ワイ(Sakagami Y)、「腸管出血性大腸菌O157:H7によるベロ毒素産生におけるウメ抽出物の抑制効果(Inhibitory Effect of the Extract of Prunus mume Sieb.et Zucc.on Vero−toxin Production by Enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7)」、バイオコントロール サイエンス(Biocontrol Science)、日本防菌防黴学会、2001年、第6巻、p.53−56
【非特許文献5】高寺恒慈、他4名、「梅酢抽出物が高コレステロール食飼育脳卒中易発性高血圧自然発症ラットの血圧と脂質代謝に及ぼす影響」、日本栄養・食糧学会誌、日本栄養・食料学会、2004年、第57巻、p.249−255
【非特許文献6】田中智弘、他3名、「濃縮脱塩梅酢がハムスターの脂質代謝に及ぼす影響」、「微量栄養研究(Trace Nutrients Research)」、微量栄養研究会、2005年、第22巻、p.131−134
【特許文献1】特許公開2004−168770
【特許文献2】特許公開2005−306801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、クエン酸を含んでおらず、ポリフェノールの組成が明確で、ポリフェノールの含有量が多いポリフェノール抽出物を製造することにある。
【0022】
また、本発明の別の目的は、ポリフェノールの含有量が多いポリフェノール抽出物を用いた機能性組成物を提供することにある。また、ポリフェノールの含有量が多い抽出物を用いて、梅酢から得られたポリフェノールの新たな機能を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させた後に、このスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂に、水性溶媒で溶出処理をしたものを、濃縮することで、クエン酸を含まず、ポリフェノールが高濃度に含まれるポリフェノール抽出物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
また、梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物に新たな機能を見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0025】
本発明のポリフェノール抽出物の製造方法は、梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させる工程と、前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を水で洗浄する工程と、前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を、水性溶媒で溶出処理をする工程と、前記溶出処理により得られた溶出液を濃縮する工程とを含む。
【0026】
また、本発明の機能性組成物は、上記製造方法で得られたポリフェノール抽出物または一部を含むとよい。
【0027】
梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物は、骨粗鬆症予防剤、α−グルコシダ−ゼ阻害剤、α−アミラ−ゼ阻害剤として機能する。また、本発明の機能性組成物は、食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物として利用できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のポリフェノール抽出物の製造方法では、梅酢のポリフェノールを吸着樹脂に吸着させる。クエン酸、食塩は、水で洗浄することで容易に除去できる。また、樹脂に吸着しなかった成分を回収すれば、そのままで食品などに再利用できる。
【0029】
また、溶出溶媒として、水性溶媒を用いる。この結果、ポリフェノールの回収率を高めることができる。また、使用する水性溶媒は水を含まないので、溶媒の除去が容易となる。
【0030】
本発明のポリフェノール抽出物は、ポリフェノールをほぼ100%含む。この結果、このポリフェノール抽出物を用いると、ポリフェノールを用いた機能性組成物として有効に利用できる。また、本発明のポリフェノール抽出物を構成する複数種のポリフェノールから所望のポリフェノールを分離したポリフェノール抽出物の一部を含むものにおいても、ポリフェノールを用いた機能性組成物として有効に利用できる。
【0031】
本発明では、梅酢から得られたポリフェノール抽出物に骨粗鬆症予防効果、α−アミラ−ゼ、あるいはα−グルコシダ−ゼ阻害作用があることを見出した。この結果、本発明のポリフェノール抽出物は、骨粗鬆症予防剤、血糖降下作用により、糖尿病予防効果がある。すなわち、本発明の機能性組成物は、骨粗鬆症予防用あるいは糖尿病予防用の食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0033】
[ポリフェノール抽出物の製造方法]
(使用原料)
本発明において、ポリフェノール抽出物の原料となるのは、梅酢である。本明細書中で、「梅酢」とは、梅果実を塩漬けする工程で生ずるものであり、塩分と梅果実から浸出する液とで構成されるものをいう。一般に、梅酢は、食塩を20質量%程度含んでいる。
【0034】
代表的な梅の品種である南高梅の果実には、採集時期にもよるが、ポリフェノールが約9000ppm含まれる。主なポリフェノールは、ヒドロキシ桂皮酸配糖体である。しかし、梅果実から十分な量のポリフェノールを抽出するのは難しい。
【0035】
一方、上記梅酢1tは、約30g約のポリフェノールを含む。また、そのポリフェノールの組成も、梅の果実に含まれるポリフェノールと同様である。
【0036】
(吸着樹脂)
使用する吸着樹脂としては、ポリフェノール類を選択的に吸着且つ溶離できる吸着剤、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂を用いればよい。具体的には、イオン交換基を持たない多孔性構造を有する合成吸着樹脂である、ダイヤイオン(登録商標)HP20、HP21(三菱化学株式会社製)、セパビーズ(登録商標)SP825L、SP850(三菱化学株式会社製)、セパビーズ(登録商標)SP700(三菱化学株式会社製)、セパビーズ(登録商標)SP70(三菱化学株式会社製)などが使用できる。特に好ましい樹脂は、ダイヤイオン(登録商標)HP20、セパビーズ(登録商標)SP70である。これらの樹脂を用いると、梅酢中のポリフェノールの90%程度を樹脂に吸着できる。
【0037】
(溶出溶媒)
スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂からポリフェノールの溶出は、水性溶媒で行う。本明細書中で、水性溶媒とは、水と親和する有機溶媒であり、例えば、炭素数が1〜5のアルコール、アセトンなどである。好ましくはエタノール、アセトンである。使用するスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂にもよるが、エタノールを用いれば、梅酢に含まれるポリフェノールの約70%以上が、アセトンを用いれば、梅酢に含まれるポリフェノールの90%近くが回収できる。また、これらの水性溶媒は、水溶液として用いず、水性溶媒単独、または水性溶媒同士の混合物として用いるのが好ましい。
【0038】
(製造方法)
まず、梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させて、梅酢中のポリフェノールをスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂に吸着させる。スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂は、梅酢に含まれるポリフェノールを吸着する吸着能力に余裕がある量を用いる。使用する樹脂の吸着能力を、あらかじめ調べておけばよい。例えば、梅酢の20倍量のスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を用いるなどである。
【0039】
また、この際に、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂に吸着されなかった成分を回収してもよい。スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂に吸着されなかった成分にも梅酢の風味が残っている。したがって、そのまま食品等に再利用できる。
【0040】
次に、ポリフェノールを吸着させたスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を水で洗浄する。これにより、梅酢中に含まれていたクエン酸、食塩を、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂から除去する。
【0041】
次に、洗浄工程の終わったスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を、水性溶媒で溶出処理をする。これにより、樹脂に吸着されたポリフェノールを高効率で回収できる。
【0042】
次に、溶出液を濃縮する。本発明では、溶出液は、水を含まない、分子量の小さい水性溶媒である。したがって、比較的低温で溶媒を除去できる。この結果、溶媒を除去するためのエネルギーを押えることができる。このようにして得られるポリフェノール抽出物は、粘性のエキス状態である。
【0043】
上記したポリフェノール抽出物の製造は、処理量などを考慮して、以下のようなバッチ法、連続法のいずれかの方法で行えばよい。
【0044】
バッチ法は、大型の容器中に、梅酢と吸着樹脂とを混合し、梅酢中のポリフェノールを吸着樹脂に吸着させる。この後、吸着樹脂を水で洗浄する。洗浄後、水性溶媒を加え、ポリフェノールを溶出させる。この方法は、ポリフェノールの回収率が劣り、作業量が多くなる。しかし、1トン以内の比較的少量の梅酢を処理する場合には、特段の製造設備が必要とされないので、有用な方法である。
【0045】
連続法は、吸着樹脂をカラムに詰めたカラム法で行う。吸着樹脂を詰めたカラムに、梅酢を通す。次に、このカラムに水を通し、吸着樹脂を洗浄する。洗浄後、水性溶媒を通し、ポリフェノールを溶出させる。この方法は、吸着温度、流速、カラム形状などの条件を適宜設計することで、より効率的で、多量な処理が可能となる。また、省力化、自動化も達成可能となる。また、ポリフェノール溶出後の梅酢の回収も容易である。
【0046】
[ポリフェノール抽出物]
上記の方法で得られた本発明のポリフェノール抽出物は、通常抽出物中にポリフェノールを11質量%以上含む。通常ポリフェノールは、配糖体の形で存在する。上記ポリフェノールの含有量は、糖を含まないポリフェノールの含有量である。ポリフェノールは、フォーリン―チオカルト法などで定量できる。また、本発明のポリフェノール抽出物は、クエン酸を含まない。
【0047】
本発明のポリフェノール抽出物は、このポリフェノール抽出物の一部を含むものであってもよい。本発明のポリフェノール抽出物中には、多数種のポリフェノールを含む。これらの中から、特定の目的に用いられるポリフェノールを、ろ過、カラム処理、溶剤洗浄などの選別処理を行ったものであってもよい。
【0048】
本発明のポリフェノール抽出物またはこの抽出物の一部、およびこれらを含む機能性組成物の形態には特に制限はなく、溶液であっても固体であってもよく、その他の化合物との混合物であってもよい。混合物である場合には、スプレードライ、凍結乾燥、デキストリンなどの造形剤を添加処理などをしたものであってもよい。
【0049】
本発明の機能性組成物は、そのまま利用することもできるが、必要に応じて、下記に示される医薬品類、医薬部外品類、化粧品類、浴用剤、食品類、飲料類などにおいて使用されている各種成分や添加剤の中から用途に適したものを任意に選択、併用して、それぞれの利用しやすい製品形態とすることができる。
【0050】
本発明の機能性組成物の具体例としては、従来ポリフェノールが有効とされる、抗催癌作用の他、動脈硬化、高血圧、老人性痴呆症、脳梗塞、リウマチ性疾患、心筋梗塞、痛風、糖尿病などの予防剤、抗酸化剤、抗菌剤、として用いることができる。また、本発明のポリフェノール抽出物またはこの抽出物の一部は、現在知られていない新たなポリフェノールの効果を検証するツールとして用いることもできる。本発明では、梅酢のポリフェノール抽出物に骨密度増大効果があり、骨粗鬆症予防剤としての新たな機能を見出した。また、梅酢のポリフェノール抽出物に、α−グルコシダ−ゼ阻害剤またはα−アミラ−ゼ阻害剤としての機能を見出した。
【0051】
骨粗鬆症予防剤としての効果は、骨密度量を実際に測定し、骨密度量が増加することを確認する。
【0052】
本発明のα−グルコシダ−ゼ阻害剤またはα−アミラ−ゼ阻害剤は、上記梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物を含む。α−グルコシダ−ゼ阻害活性またはα−アミラ−ゼ阻害活性は以下のように測定する。
【0053】
(α−グルコシダ−ゼ阻害活性の測定)
ラット小腸アセトン抽出物由来のα−グルコシダ−ゼとp−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシドの反応で生成するp−ニトロフェノ−ルの量を比色定量で測定し、梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物のα−グルコシダ−ゼ阻害活性を測定する。
【0054】
(α−アミラ−ゼ阻害活性の測定)
ブタ膵臓α−アミラ−ゼと可溶性デンプンを反応させ、デンプンの加水分解によって生じるマルト−スなどの還元性末端をパラヒドロキシベンゼンヒドラジド(PAHBAH)で定量して、梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物のα−アミラ−ゼ阻害活性を測定する。
【0055】
本発明の機能性組成物の使用量は、使用する目的に応じて適宜変更することができる。例えば、医薬組成物に用いるときは、公知のα−グルコシダ−ゼ阻害剤と同等程度の活性効果を有する量を使用すればよい。また、糖尿病予防用の食品組成物、特定保健用食品組成物などに使用する場合には、それよりも使用量を減らすなどである。また、骨粗鬆症予防剤として利用する場合は、骨密度量が実際に増加する量を用いるなどである。
【0056】
本発明の機能性組成物を医薬品または医薬部外品に使用する場合は、経口的に投与されるものとすることができる。シソ抽出物を、医薬用担体と共に製剤化し、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トロ−チ、液剤、顆粒剤、散剤等の形態で用いることができる。その場合には、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、懸濁化剤、安定化剤、着色料、甘味剤等の常用成分を適宜添加することができる。
【0057】
その他、噴霧剤、座剤、防腐剤、はみがき剤、石鹸、衛生用品、軟膏、皮膚貼り付けフィルム、すり傷、切り傷、火傷、あかぎれ、炎症、湿疹、吹き出物、ニキビ、肌荒れなどに適用する消毒用又は治療用の医療品もしくはそれを含浸させたガ−ゼ類、マスク、絆創膏、アイ・ケア剤、吸入剤、口腔洗浄剤、うがい剤、歯磨き剤等の医療補助品などが挙げられる。
【0058】
例えば、経口的に摂取する場合には、食品添加剤として食物に添加して摂取することができる。食品添加剤として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、食品の種類に応じ適宜決めればよい。例えば、清涼飲料、炭酸飲料などの液体食品や菓子類やその他の各種食品等の固形食品に添加して用いることができる。また、その他に、食物として人体に投与する場合の投与方法の一例を示すと次の通りである。投与は、種々の方法で行うことができ、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等による経口投与とすることができる。経口投与剤は、通常の製造方法に従って製造することができる。例えば、デンプン、乳糖、マンニット等の賦形剤、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロ−ス等の結合剤、結晶セルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等として製造することができる。
【0059】
非経口的に摂取する場合は、皮膚への塗布や噴霧等が挙げられ、化粧料に添加して用いることができる。その添加量については特に限定的ではなく、化粧料の種類に応じ適宜決めればよい。
【0060】
化粧料としては、例えば化粧水(ロ−ション)、乳液、クリ−ム、軟膏、シェ−ビングム−ス、オイル、パック、シャンプ−、リンス、トリ−トメント、ヘアトニック、整髪料、育毛料、パ−マネント液、染毛剤、ボディ−ソ−プなどのスキンケアおよびヘアケア製剤、あるいは浴用剤(液状、粉末状、顆粒状、固形状など性状は、何れであってもよい)などが挙げられる。
【0061】
本発明の機能性組成物を食物に用いる場合の具体例として、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の水産加工製品、ソ−セ−ジ、ハム、ウインナ−等の食肉加工製品、豆腐や油揚げ、コンニャク等の農産加工製品、洋菓子、和菓子、パン、ケ−キ、ゼリ−、プリン、スナック、クッキ−、ガム、キャンディ、ラムネ等の菓子類、生めん、中華めん、そば、うどん等のめん類、ソ−ス、醤油、ドレッシング、マヨネ−ズ、タレ、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレ−粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マ−マレ−ド、チョコレ−トスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけや、各種野菜・果実の缶詰・瓶詰等の加工野菜・果実類、チ−ズ、バタ−、ヨ−グルト等の乳製品、果実ジュ−ス、野菜ジュ−ス、乳清飲料、清涼飲料、健康茶、薬用酒類等の飲料、その他、栄養補強(栄養補助)等を目的とする健康維持のための錠剤、飲料、顆粒等の健康志向の飲食品類、家畜飼料、ペットフ−ド等が対象として挙げられる。
【0062】
本発明の機能性組成物は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、タルク、流動性向上剤等、一般的に造粒に使用される添加剤を用いても良い。例えば、デンプン、乳糖、マンニットカルボキシメチルセルロ−スナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロ−ス等の結晶セルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の軽質無水ケイ酸等、酢酸セルロ−ス、キトサン、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、脱脂米糖、油かす、大豆粉、小麦粉、無水ケイ酸、フスマ、もみがら粉、炭酸カルシウム、ミルクカルシウム、酸化マグネシウム、重炭酸ナトリウム、結晶セルロ−ス、澱粉、ビ−ル酵母、糖、還元乳糖、植物油脂等等を適宜組み合わせて処方することにより、錠剤、カプセル剤、顆粒剤の形状等に製造することができる。
【0063】
また、必要に応じて植物又は動物系原料由来の種々の添加物やその他の添加物も併用することができる。これらの添加物は、添加しようとする製品種別、形態に応じて常法的に行われる加工(例えば、粉砕、製粉、洗浄、加水分解、醗酵、精製、圧搾、抽出、分画、ろ過、乾燥、粉末化、造粒、溶解、滅菌、pH調整、脱臭、脱色などを任意に選択、組合わせた処理)を行い、各種の素材から任意に選択して供すればよい。尚、抽出に用いる溶媒については、供する製品の用法(食用、外用、浴用)や、後に行う加工処理等を考慮した上で選択すればよい。
【0064】
本発明の機能性組成物には、その他保湿剤、ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレ−ト剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質及びその分解物、動・植物性多糖類及びその分解物、動・植物性糖蛋白質及びその分解物、血流促進剤、消炎剤・抗アレルギ−剤、細胞賦活剤、角質溶解剤、創傷治療剤、増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、苦味料、調味料、酵素などを併用してもよい。これらとの併用によって、相加的及び相乗的な効果が期待できる。
【0065】
以下本発明を詳細に説明するため実験例を挙げて説明するが、本発明は実験例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
容器中で、合成吸着樹脂(ダイヤイオン(登録商標) HP−20、三菱化学(株)製)に、20倍量(質量比)の梅酢(ポリフェノール270mg/Kg)とを接触させた。梅酢を除去した後に、DIAION HP−20を、樹脂の5倍量(質量比)の水で洗浄した。樹脂を通過した梅酢中のポリフェノール量をフォーリン―チオカルト法で定量した。除去した梅酢から、梅酢のポリフェノールの約90質量%が吸着されたことがわかった。
【0067】
次に、このポリフェノールが吸着された吸着樹脂を、メタノールを溶出液として処理をしてポリフェノールを回収した。使用したメタノールの量は、樹脂の5倍量(質量比)であった。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの約65質量%であった。得られたポリフェノール抽出液の酸度を滴定した。得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0068】
(実施例2)
エタノールを溶出液(樹脂の5倍量(質量比))として使用した以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの約70質量%であった。また、得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0069】
(実施例3)
アセトンを溶出液(樹脂の5倍量(質量比))として使用した以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの約80質量%であった。また、得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0070】
(実施例4)
合成吸着樹脂(ダイヤイオン(登録商標) HP−20、三菱化学(株)製)の代わりに、合成吸着樹脂(セパビーズ(登録商標) SP−70、三菱化学(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの70質量%であった。また、得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0071】
(実施例5)
合成吸着樹脂(セパビーズ(登録商標) SP−70、三菱化学(株)製)を用いて、エタノールを溶出液(樹脂の5倍量(質量比))として使用した以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの75質量%であった。また、得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0072】
(実施例6)
合成吸着樹脂(セパビーズ(登録商標) SP−70、三菱化学(株)製)を用いて、アセトンを溶出液(樹脂の5倍量(質量比))として使用した以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールの約90質量%であった。また、得られたポリフェノール抽出液中には、クエン酸は含まれていなかった。
【0073】
(比較例1)
合成吸着樹脂(セパビーズ(登録商標) SP−70、三菱化学(株)製)を用いて、溶出液として、90体積%エタノール、50体積%エタノール、90体積%アセトン、50体積%アセトンを使用した以外は、実施例1と同様にした。得られたポリフェノールは元の梅酢のポリフェノールにして、90体積%エタノールの場合、約70質量%、50体積%エタノールの場合、約60質量%、90体積%アセトンの場合、約80質量%、50体積%アセトンの場合、約70質量%であった。
【0074】
このようにスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を用いて、水を含まない水性溶媒を用いると、ポリフェノールの回収率がよいことがわかる。特に、エタノール(ダイヤイオンHP−20:約70質量%、セパビーズSP70:約75質量%)、アセトン(ダイヤイオンHP−20:約80質量%、セパビーズSP70:約90質量%)と、極めてポリフェノールの回収率に優れていることがわかる。
【0075】
(実験例1)
(使用動物)
以下のようにして骨粗鬆症モデルラットを作成した。SPF Wister系メスラット(導入時13週齢)を数日間馴致期間おいた後、卵巣摘出手術(OVX)と擬似手術(sham)を施した。その後に回復期間をおいたものを使用した。
【0076】
(飼料)
コントロール飼料として、全量1kgあたり、スクロース585g、カゼイン200g、セルロース100g、コーンオイル70g、ミネラル混合物(AIN−93M、米国国立栄養研究所(AIN)から1993年に発表されたマウス・ラットを用いた栄養研究のための標準精製飼料)35g、およびビタミン混合物(AIN−93、米国国立栄養研究所(AIN)から1993年に発表されたマウス・ラットを用いた栄養研究のための標準精製ビタミン混合物)10gの飼料を用いた。
【0077】
梅酢ポリフェノール添加飼料(梅酢p.p添加飼料)は、コントロール飼料中のスクロースの量を560gとして、上記実施例から得られたポリフェノールを15%含有する「梅酢ポリフェノール」25gを添加したものを用いた。
【0078】
(飼育方法)
手術後のラットを以下の4区分(1区あたり5匹)に分けて、28日間飼育した。飼料の給与期間中は体重、摂食量を測定した。
1区:使用ラット:sham、飼育飼料:コントロール飼料
2区:使用ラット:sham、飼育飼料:梅酢p.p添加飼料
3区:使用ラット:OVX、飼育飼料:コントロール飼料
4区:使用ラット:OVX、飼育飼料:梅酢p.p添加飼料
【0079】
(評価)
飼料給与期間終了後24時間絶食させた。その後大腿骨を採取し、アロカ社製の実験動物用X線CTで骨密度を測定した。結果を図1に示す。
【0080】
図1は、上記各4区(sham+コントロール飼料区(1区)、sham+梅酢p.p添加飼料区(2区)、OVX+コントロール飼料区(3区)、OVX+梅酢p.p添加飼料区(4区))における各区のラットの全骨密度(mg/cm)を表している。図1において、sham+梅酢p.p添加飼料区、OVX+コントロール飼料区、OVX+梅酢p.p添加飼料区は、有意差p<0.01で有意であった。図1から、擬似手術(sham)を施したラットにおいても、コントロール飼料を与えたラットの骨密度量(741.0)に比べ、梅酢p.p添加飼料を与えたラットの骨密度量(753.0)のほうが骨密度量が増加していることがわかる。卵巣除去手術(OVX)を施したラットでは、コントロール飼料を与えたラットの骨密度量(691.0)に比べ、梅酢p.p添加飼料を与えたラットの骨密度量(723.0)のほうが骨密度量が有意に増加していることがわかる。すなわち、梅酢ポリフェノールは、骨量の減少を抑制する効果があることがわかった。
【0081】
卵巣除去手術(OVX)を施したラットは、体重、摂食量から、梅酢ポリフェノールを一日あたり、平均33mg/kg摂取していると推測される。この梅酢ポリフェノールの骨密度の回復効果は、同量のイソフラボンで行った回復試験の結果と同程度であった。
【0082】
以上から、梅酢ポリフェノールは、骨粗鬆症の予防剤として有効であることがわかる。
【0083】
上記実施例から得られたポリフェノールを15%含有する梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物を以下の実験に用いた。
【0084】
(実験例2)
ラット小腸アセトン抽出物(シグマ社製)250mgを100mMリン酸緩衝液(pH6.8)5mlに懸濁し、3、000rpmで遠心処理を行った。上清液を分離し、グラスフィルタ−でろ過したものを、α−グルコシダ−ゼ酵素液とした。α−グルコシダ−ゼ酵素液40μlと梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物を100mMリン酸緩衝液(pH6.8)に種々の濃度で溶解した試料溶液1、000μlとを混合し、37℃、5分間インキュベ−トした。次に950μlの0.7mM p−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド(シグマ社製)、100mMリン酸カリウム緩衝液((pH6.8)、100mM NaClに溶解)を混和し、37℃、15分間インキュベ−トした。その後、反応停止液(0.5Mトリス溶液)1mlを添加し、400nmで吸光度を測定した。別に、対照として試料溶液の代わりに蒸留水を、またブランクとしてp−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド溶液を添加する前に反応停止液を加え同様に操作して吸光度を測定した。結果を図2に示す。
【0085】
図2は横軸に反応液に添加した梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物の濃度(μg/ml)を表わし、縦軸は梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物が添加されていない時の吸光度を100%ととした時の、相対的な活性の割合を%で示したものである。梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物が500μg/mlを超えると、濃度依存的に、α−グルコシダ−ゼを阻害することが判明した。梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物が濃度依存的に、α−グルコシダ−ゼを阻害することが判明した。
【0086】
(実験例3)
ブタ膵臓のα−アミラ−ゼ(シグマ社製)は人工唾液に溶解し、酵素液とした。可溶性デンプン(ナカライエスク社製)を人工唾液で1%になるよう懸濁し、100℃、15分間処理して溶解した。人工唾液は、文献(Gal、 J.Y.、 et.al.、 About a synthetic saliva for in vitro studies. Talanta(2001)、 53、 1103−1115)に記載の方法で作製した。α−アミラ−ゼ溶液100μlと種々の濃度の梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物を含む人工唾液900μlを混和し、37℃、5分間インキュベ−トした。次に可溶性デンプン溶液を500μl添加し、さらに37℃、25分間インキュベ−トした。PAHBAH(シグマ社製)を0.5M HCl溶液に5%濃度で溶解した液と、0.5M NaOH溶液とを1:4の割合で混合して作成したPAHBAH溶液1mlと、上記の反応液50μlを混合して、100℃、10分間加熱した。この反応液の吸光度を410nmで測定した。なお、ブランクには酵素が入っていないものを使用した。結果を図3に示す。
【0087】
図3は横軸に反応液に添加した梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物の濃度(μg/ml)を表わし、縦軸は梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物が添加されていない時の吸光度を100%ととした時の、相対的な活性の割合を%で示したものである。梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物が濃度依存的に、α−アミラ−ゼを阻害することが判明した。
【0088】
以上から、梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物は、糖質の消化酵素を阻害することから、食後の血糖値の上昇を抑え、糖尿病の予防剤として有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、各実験区のラットにおける全骨密度量を示す図である。
【図2】図2は、梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物がα−グルコシダ−ゼを阻害することを示す図である。
【図3】図3は、梅酢由来のポリフェノ−ル抽出物がα−アミラ−ゼを阻害することを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させる工程と、
前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を水で洗浄する工程と、
前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を、水性溶媒で溶出処理をする工程と、
前記溶出処理により得られた溶出液を濃縮する工程と
を含む、ポリフェノール抽出物の製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法で得られたポリフェノール抽出物を含む、機能性組成物。
【請求項3】
請求項1の製造方法で得られたポリフェノール抽出物の一部を含む、機能性組成物。
【請求項4】
梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物を含む、骨粗鬆症予防剤。
【請求項5】
梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物を含む、α−グルコシダ−ゼ阻害剤。
【請求項6】
梅酢から得られたポリフェノ−ル抽出物を含む、α−アミラ−ゼ阻害剤。
【請求項7】
請求項4ないし6に記載の機能を持つ、機能性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の機能性組成物を含む、食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−137929(P2009−137929A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38748(P2008−38748)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(593078143)社団法人和歌山県農産物加工研究所 (2)
【Fターム(参考)】