説明

ポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡体

【課題】 低温物性に優れ、且つ耐熱性、表面平滑性、柔軟性、圧縮回復性、緩衝性、断熱性、環境適合性、機械的物性等にも優れるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びそれにより得られるポリプロピレン系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 メルトフローレート0.1〜5g/10minのポリプロピレン系樹脂100重量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜100重量部から成る配合樹脂組成物と、気泡核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し、二酸化炭素を発泡剤として押出機内へ圧入して押出発泡させて得る、発泡シートの平均気泡径が0.02〜0.3mm、見かけ密度が20〜100kg/m、−40℃雰囲気下での引張破断点伸びが9%以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びポリプロピレン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン系樹脂発泡体は、高強度で柔軟性に優れることから、緩衝材、包装材、パッキング材等として広く用いられている。
クッション性、断熱性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体として、ポリオレフィン系樹脂とゴムおよび/または熱可塑性オレフィン系エラストマーからなるポリマー成分と、パウダー粒子を含むポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物であって、ポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物の融点から高温側に20℃以内の温度で測定した溶融張力が20cN以上とすることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物、並びにポリオレフィン系樹脂とゴムおよび/または熱可塑性オレフィン系エラストマーからなるポリマー成分と、パウダー粒子を含むポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物であって、その伸長粘度が20〜100kPa・sであることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が、公知である(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、これらの特許文献の製造方法で使用されている方法では、低温物性が悪いため低温環境で使用する緩衝材には使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−250529号公報
【特許文献2】特開2005−68203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低温物性に優れ、且つ耐熱性、表面平滑性、柔軟性、圧縮回復性、緩衝性、断熱性、環境適合性、機械的物性等にも優れるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びそれにより得られるポリプロピレン系樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、特定の熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し、二酸化炭素を発泡剤として押出機内へ圧入して溶融樹脂と混練した後、押出発泡させることにより得られる発泡体によれば、上記課題を達成し得ることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下のポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びそれにより得られるポリプロピレン系樹脂発泡体を提供するものである。
すなわち、
1.メルトフローレート0.1〜5g/10minのポリプロピレン系樹脂100重量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜100重量部から成る配合樹脂組成物と、気泡核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し、二酸化炭素を発泡剤として押出機内へ圧入して押出発泡させて得る、発泡シートの平均気泡径が0.02〜0.3mm、見かけ密度が20〜100kg/m、−40℃雰囲気下での引張破断点伸びが9%以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法。
2.請求項1記載のスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系共重合体であるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法。
3.請求項1または2に記載の製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂発泡体。
4.上記請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂発泡体をスライス加工して得られる、ポリプロピレン系樹脂発泡体スライスシート。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のようにして構成されていることから、低温物性に優れ、且つ耐熱性、表面平滑性、柔軟性、圧縮回復性、緩衝性、断熱性、環境適合性、機械的物性等にも優れるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びそれにより得られるポリプロピレン系樹脂発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す円環ダイの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート0.1〜5g/10minのポリプロピレン系樹脂100重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜100重量部及び気泡核剤を、必須成分として含有する。
【0010】
ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂としては、メルトフローレートが0.1〜5g/10min程度であれば、特に限定されない。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数が4〜10であるα−オレフィンが挙げられる。本発明で使用するポリプロピレン系樹脂としては、発泡性に優れることからホモポリプロピレン及びブロックポリプロピレンが好ましく使用でき、耐熱性が優れることからホモポリプロピレンがより好ましく使用できる。
【0011】
また、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、発泡性に優れることから、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。高溶融張力ポリプロピレン系樹脂としては、電子線架橋などにより分子構造中に自由末端長鎖分岐を有している高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)や、高分子量成分を含むことで溶融張力を上げたもの等がある。この高溶融張力ポリプロピレンとしては、日本ポリプロ社製の商品名「ニューストレンSH9000」や、Borealis社製の商品名「DaployWB135HMS」などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を適宜組み合わせ混合して用いてもよい。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は低いと、押出機の負荷が大きくなって生産性が低下し、又は、発泡剤を含む溶融したポリプロピレン系樹脂組成物が金型内を円滑に流れることができなくなって、得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の表面にムラが発生して外観が低下する一方、高いと、金型円環ダイ手前での樹脂圧力が低下し、円環ダイ気泡生成部における樹脂圧力も低下することから、気泡生成部手前で気泡が生成してしまい発泡体成形部で破泡が急激に生じることにより発泡性が低下し、得られる発泡体の外観が低下もしくは、発泡体が得られなくなるので、0.1〜5g/10min程度に限定され、0.2〜4g/10min程度が好ましく、0.2〜3.5g/10min程度がより好ましい。
【0013】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210:1999のB法に準拠して、試験温度230℃、試験荷重21.18Nにて測定されたものをいう。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、ポリプロピレン系樹脂を一種単独で用いた場合には、その樹脂のメルトフローレートを上記方法で測定されたものをいう。また、ポリプロピレン系樹脂二種以上を混合して用いた場合には、それぞれ個々のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートを上記測定方法で測定し、それぞれのメルトフローレートの値から、下記の様にして、算出したものをいう。
即ち、ポリプロピレン系樹脂が、n種類のポリプロピレン系樹脂の混合物であるとした場合、ポリプロピレン系樹脂1のメルトフローレートをMFR、ポリプロピレン系樹脂2のメルトフローレートをMFR、・・・ポリプロピレン系樹脂nのメルトフローレートをMFRとすると共に、ポリプロピレン系樹脂1の含有量をC1、ポリプロピレン系樹脂2の含有量をC2・・・ポリプロピレン系樹脂nの含有量をCnとする。なお、ポリプロピレン系樹脂nの含有量は、ポリプロピレン系樹脂nの重量をポリプロピレン系樹脂全体の重量で除したものとする。そして、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、下記式によって算出される。
メルトフローレート(g/10min)=(MFR1)C1×(MFR2)C2×・・・×(MFRn)Cn
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマー
スチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するもので、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性樹脂と同様に可塑化され成形できるという性質を有する。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定がされないが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましい。
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)としては、特に限定はされないが、含まれているスチレン(ポリスチレンも含む)の量、すなわち、スチレン成分の含有量が、10〜40重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることが更に好ましい。スチレン成分が10重量%未満では樹脂組成物の弾性が悪くなり、40重量%を超えると樹脂組成物の耐衝撃性が悪くなる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS K6253で規定されるデュロA硬度で90以下であることが、優れた柔軟性を有するポリプロピレン系樹脂発泡体が得られる点から、好ましい。デュロA硬度は、20〜80程度であることがより好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、少ないと、得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の緩衝性や柔軟性が乏しくなる一方、多いと、熱可塑性樹脂組成物のゴム弾性が強くなりすぎて発泡性が低下したり、得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の収縮が大きくなるために、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して10〜100重量部程度に限定され、20〜90重量部程度が好ましく、30〜80重量部程度がより好ましく、30〜70重量部程度が特に好ましい。
【0015】
気泡核剤
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物には、気泡核剤が含まれる。気泡核剤は熱可塑性樹脂組成物が気泡を形成する際に気泡核の生成を促すものであり、気泡の微細化と均一性に効果を示す。気泡核剤としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、ガラスビーズなどの無機化合物;ポリテトラフルオロエチレン、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などの有機化合物、窒素などの不活性ガスなどが挙げられ、その中でも特にタルクが好ましい。なお、気泡核剤は、一種単独で用いても、二種以上を混合して併用してもよい。
上記気泡核剤の平均粒子径は、小さすぎると気泡径を微細化する効果が乏しくなる。さらに、押出機内で溶融樹脂と混練した場合に二次凝集が起こりやすくなるために二軸押出機などであらかじめ予備混練しておく必要が生じる場合があり、生産性が低下する。一方、大きすぎると押出機のスクリーンや金型での目詰まりを引き起こす原因となることに加え、発泡体の表面平滑性の低下や気泡膜の破れによる発泡性の低下に繋がることがある。従って、これらの問題を引き起こすことなく、効果的に気泡核剤としての効果を発現するには、平均粒子径が2〜20μm程度であることが好ましく、5〜15μm程度であることがより好ましい。
そして気泡核剤の量は、少ないと得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の気泡数を増加させることが困難となり、得られるポリプロピレン系樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがある。一方、多いと二次凝集を起こしやすくなり押出発泡不良による発泡体の表面平滑性が低下することがあるので、配合樹脂組成物100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜8重量部であることがより好ましい。
本発明で使用される気泡核剤は、そのものの形態で配合樹脂組成物と混合し熱可塑性樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良く、更にマスターバッチとして配合樹脂組成物と混合し熱可塑性樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良い。
マスターバッチの基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0016】
添加剤
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物には、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー及び気泡核剤以外に、任意成分として、発泡成形に通常用いられる各種添加剤を配合することができる。該添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、光安定剤、顔料、染料、難燃剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの内、界面活性剤は、すべり性及びアンチブロッキング性を付与するものである。また、分散剤は、無機充填剤の分散性を向上させるもので、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
添加剤の添加量は、気泡の形成、得られる発泡体の物性等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性樹脂の成形に用いられる添加量を採用できる。
前記気泡核剤及び上記添加剤は、取扱いの容易性や粉体飛散による製造環境汚染の防止のため、又熱可塑性樹脂中への分散性を向上させるため、マスターバッチとして、使用することもできる。
マスターバッチは、通常、熱可塑性の基材樹脂に、添加剤等を高濃度で練り込み、ペレット状とすることにより、行うことができる。基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0017】
発泡剤
発泡剤は、熱可塑性樹脂組成物を発泡させるために、押出機内に圧入させて供給されるものであり、本発明においては、二酸化炭素を用いる。二酸化炭素は、超臨界状態、亜臨界状態、又は液化された二酸化炭素を用いることで、従来の発泡体以上に微細な気泡を形成させることが出来、得られる発泡体の表面平滑性や柔軟性を向上させることが出来る。
押出機内に圧入される発泡剤の量は、ポリプロピレン系樹脂発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整されればよいが、少ないと、ポリプロピレン系樹脂発泡体の発泡倍率が低くなり、軽量性及び断熱性が低下することがある一方、多いと、金型内において発泡を生じ、破泡を生じたり、或いは、ポリプロピレン系樹脂発泡体中に大きな空隙が生じることがあるので、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して1〜10重量部程度であるのが好ましく、2〜8重量部程度であるのがより好ましく、3〜6重量部程度であるのが特に好ましい。
【0018】
製造方法
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法において、押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、およびタンデム型押出機のいずれの押出機をも用いることができる。これらの内、押出条件を調整しやすいことから、タンデム型押出機が好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法において用いられる金型は、図1に示すとおり、樹脂流路3の絞りにより形成された気泡生成部2と、生成した気泡の成長及び発泡体表面の平滑化を行う発泡体成形部1とを有している円環ダイDである。本発明によるポリプロピレン系樹脂発泡体は、従来よりも微細な気泡を有しているため、従来の円環ダイを用いて発泡させた場合、発泡体表面には多数のコルゲートが発生し、得られる発泡体の表面平滑性が悪くなる。しかしながら、発泡体形成部の有する円環ダイDは、発泡体成形部1における適度なすべり抵抗によって、気泡生成部2でのコルゲートの発生を抑制でき、表面平滑な発泡体を得ることができる。ここで言うコルゲートとは、円環ダイから出た発泡体が体積膨張による円周方向の線膨張分を吸収するために波打ちしてできる、多数の山谷状のヒダのことである。なお、4は円環ダイイン側金型、5は円環ダイアウト側金型である。
円環ダイ手前での樹脂圧力は7MPa以上であり、8MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。円環ダイ手前での樹脂圧力は、7MPaよりも低いと円環ダイ気泡生成部より手前で気泡生成が始まり、良好な発泡体が得られなくなるため好ましくない。また、20MPaより高くなると、押出機の負荷が高くなりすぎたり、発泡剤の注入圧力が高くなりすぎて圧入出来なくなる恐れがあるため、好ましくない。
円環ダイ手前での樹脂圧力は、溶融樹脂粘度と押出吐出量、円環ダイ気泡生成部断面積によって適宜調節される。更に溶融樹脂粘度は配合樹脂組成物の粘度と発泡剤の添加量、及び溶融樹脂温度によって適宜調節される。なお、本明細書での溶融樹脂温度とは、円環ダイ手前での樹脂圧力を測定する直管金型において、溶融樹脂に直接接触させる形で取り付けられた熱電対にて測定された温度を言う。
本発明における樹脂温度は、概ねポリプロピレン系樹脂の融点より10℃〜20℃の範囲とすることが、発泡性を高める上で好ましい。樹脂温度が融点に近づくと、ポリプロピレンの結晶化が始まり、急激に粘度が上昇し押出条件が不安定になったり、押出機の負荷が上昇したりするので好ましくない。逆に高すぎると発泡後の樹脂固化が発泡スピード追い着かず、破泡をきたして発泡倍率が上がらないなどの問題が出るので好ましくない。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂発泡体
本発明方法により得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は、小さいと、破泡が多くなり、ポリプロピレン系樹脂発泡体の見かけ密度が大きくなることがある一方、大きいと、ポリプロピレン系樹脂発泡体の表面平滑性や柔軟性、クッション性が低下することがあるので、0.02〜0.3mm程度であるのが好ましく、0.05〜0.2mm程度であるのがより好ましく、0.07〜0.18mm程度であるのが特に好ましい。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は、ASTM D2842−69記載の試験方法に準拠して、下記の様にして測定されたものをいう。即ち、ポリプロピレン系樹脂発泡体をMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡で20倍(場合により100倍)に拡大して撮影する。走査型電子顕微鏡としては、例えば、(株)日立製作所から商品名「S-3000N」にて市販されているものを用いることができる。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、画像上に長さ60mmの直線を一本、描く。なお、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に直線を描く。
上記直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出する。
平均弦長 t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
前記で算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出する。
気泡径(mm)D=t/0.616
そして、下記式で求められた、得られたMD方向の気泡径(DMD)とTD方向の気泡径(DTD)との相加平均値をポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(DMD+DTD)/2
【0020】
ポリプロピレン系樹脂発泡体の見かけ密度は、小さいと、ポリプロピレン系樹脂発泡体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、ポリプロピレン系樹脂発泡体のクッション性又は柔軟性が低下することがあるので、20〜100kg/m程度の範囲内であるのが好ましく、30〜90kg/m程度の範囲内であるのがより好ましく、35〜70kg/m程度の範囲内であるのが特に好ましい。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂発泡体の見かけ密度はJIS K 7222−1999記載の試験方法に準拠して、下記の様にして測定されたものをいう。即ち、試料から10cm以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を試料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出する。
密度(kg/m)=試験片質量(g)/試験片体積(cm)×10
【0021】
ポリプロピレン系樹脂発泡体の−40℃での引張破断点伸びは5%以上であることが好ましく、9%以上であることがより好ましく、9〜15%であることが更に好ましい。―40℃での引張破断点伸びが5%以下であると、低温時での脆性が強くなり柔軟性が低下してしまうため好ましくない。
本明細書においてポリプロピレン系樹脂発泡体の−40℃での引張破断点伸びは、JIS K 6251−1993記載の試験方法に準拠して、下記の様にして測定されたものをいう。即ち、ダンベル状3号型試験片の長さ方向にポリプロピレン系樹脂発泡体のMD方向が来るように切り抜き、切り抜いた試験片を−40℃の雰囲気下で16時間以上放置し状態調節をする。状態調節が終わった試験片を引張試験機にセットし(チャック間隔を50mm)、−40℃の雰囲気下で、速度100mm/minで引張り、破断したときの伸長率を引張破断点伸びとする。引張試験機としては、例えば、(株)オリエンティクから商品名「テンシロン万能試験機UCT−10T」にて市販されているものを用いることが出来る。
【0022】
得られたポリプロピレン系樹脂発泡体は、表皮をスライス加工によって除去することが出来る。本発明で得られたポリプロピレン系樹脂発泡体はスライス加工性に優れており、発泡体の表皮を除去することで、折れ曲がった際でも折れ皺の発生が少ないなど、さらに表面平滑性、柔軟性、緩衝性に優れた発泡体となる。スライス加工機としては、刃物が回転するタイプのものなどの公知のものを使用できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、各例において、部及び%は、原則として、重量基準である。
【0024】
実施例1
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
このタンデム型押出機の第一押出機に、ポリプロピレン系樹脂のニューストレンSH9000 (日本ポリプロ社製 MFR:0.3g/10min)100重量部に、SEBSのエスポレックスSB2400(住友化学社製 MFR:0.5g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させた熱可塑性樹脂組成物を、第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を5重量部圧入して、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型出口口径φ70の円環ダイから吐出量29kg/hr、樹脂温度179℃、円環ダイ手前での樹脂圧力11.4MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は0.15mm、見かけ密度は51kg/m3、−40℃での引張破断点伸びは9%であった。表1は評価した結果を示している。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例2
SEBSの配合量をポリプロピレン系樹脂100重量部に対して100重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を5重量部圧入し、樹脂温度178℃、円環ダイ手前樹脂圧力10.7MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、ポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は0.17mm、見かけ密度は54kg/m3、−40℃での引張破断点伸びは9%であった。表1は評価した結果を示している。
【0027】
実施例3
SEBSをラバロンME5301C(三菱化学社製 MFR:2.5g/10min)に変更した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.3重量部圧入し、円環ダイから吐出量30kg/hr、樹脂温度180℃、円環ダイ手前樹脂圧力10.7MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、ポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は0.17mm、見かけ密度は56kg/m3、−40℃での引張破断点伸びは13%であった。表1は評価した結果を示している。
【0028】
比較例1
SEBSを加えなかった以外、は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を3.8重量部圧入し、円環ダイから吐出量30kg/hr、樹脂温度177℃、円環ダイ手前での樹脂圧力11.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリプロピレン系樹脂発泡体を得たが、しかし、外観が美麗なシートを得ることができなかった。また破泡してしまい、平均気泡径を測定することができなかった。表1は評価した結果を示している。
【0029】
比較例2
SEBSのかわりにスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)であるハイプラー7125(クラレ社製 MFR:0.7g/10min)に変更した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.3重量部圧入し、円環ダイから吐出量30kg/hr、樹脂温度175℃、円環ダイ手前樹脂圧力12.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体形成部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、ポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の見かけ密度は67kg/mであったが、破泡してしまい平均気泡径を測定することができなかった。表1は評価した結果を示している。
【0030】
比較例3
SEBSのかわりに水素添加スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(HSBR)であるダイナロン1320P(JSR社製 MFR:3.5g/10min)に変更した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.3重量部圧入し、円環ダイから吐出量30kg/hr、樹脂温度173℃、円環ダイ手前樹脂圧力9.6MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形させた円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、ポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の見かけ密度は73kg/mであったが、破泡してしまい平均気泡径を測定することができなかった。表1は評価した結果を示している。
【0031】
比較例4
SEBSの変わりにオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)のビスタマックスVM3000(エクソンモービル社製 MFR:8g/10min)に変更した以外は実施例1と同様にして、超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入し、円環ダイから吐出量30kg/hr、樹脂温度175℃、円環ダイ手前での樹脂圧力9.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の平均気泡径は0.14mm、見かけ密度は46kg/mであったが、−40℃での引張破断点伸びは4%であった。表1は評価した結果を示している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は上述のようにして構成されていることから、低温物性に優れ、且つ耐熱性、表面平滑性、柔軟性、圧縮回復性、緩衝性、断熱性、環境適合性、機械的物性等にも優れるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法及びそれにより得られるポリプロピレン系樹脂発泡体を得ることができた。特に0℃以下、好ましくは−20℃〜−40℃の低温物性に優れたクール宅急便(商標)や冷凍食品、冷蔵食品等の緩衝材、パッキン材、中でもシート状の緩衝材やパッキン材などを提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:発泡成形部
2:気泡生成部
3:発泡剤含有混練溶融樹脂流路部
4:円環ダイイン側金型
5:円環ダイアウト側金型




【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート0.1〜5g/10minのポリプロピレン系樹脂100重量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜100重量部から成る配合樹脂組成物と、気泡核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し、二酸化炭素を発泡剤として押出機内へ圧入して押出発泡させて得る、発泡シートの平均気泡径が0.02〜0.3mm、見かけ密度が20〜100kg/m、−40℃雰囲気下での引張破断点伸びが9%以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系共重合体(SEBS)であるポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
上記請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂発泡体をスライス加工して得られる、ポリプロピレン系樹脂発泡体スライスシート。


【図1】
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【公開番号】特開2011−132420(P2011−132420A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294781(P2009−294781)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】