説明

ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合法

【課題】高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合法を提供する。
【解決手段】反応物を、攪拌トルクが粘度上昇前のトルクの1.5倍〜6倍になるまで酸素の無い雰囲気中で攪拌し、加熱する工程、攪拌を停止し反応物が泡立ちながら230℃〜350℃の温度で加熱し続ける工程、反応集合物を冷却する工程、泡だった集合物を破砕してプレポリマーを得る工程、破砕されたプレポリマーを15分〜240分間230℃〜350℃の温度で再加熱して、前記破砕されたポリマーを除去する工程、反応容器を加圧洗浄して洗浄混合物を得る工程、洗浄混合物から過剰な水を分離して破砕されたプレポリマーを得る工程、破砕されたプレポリマーおよび湿ったプレポリマーを第2反応容器に移転する工程、および破砕されたプレポリマーおよび湿った破砕されたプレポリマーを315℃〜400℃の温度、大気圧下90〜400分間加熱する工程、よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーとして、芳香族アミンおよび芳香族ジカルボン酸化合物を使用する高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許4,672,104号明細書は、ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階法を開示している。この2段階溶融重縮合法は、反応器の設計、IV不均一生成物の生成、溶液のろ過特性、色などによって、製品の熱的経過に大きなばらつきを生じることがわかった。したがって、第2段階SSP(固相状態重合)反応装置および反応条件の最適化および改良に努力が傾けられはじめた。
【0003】
米国特許4,717,764号明細書は、ベンズイミダゾール/芳香族アミドポリマーおよびコポリマー並びに完全芳香族ポリアミドの製造のための2段階法を開示している。
【0004】
ポリベンズイミダゾールは、芳香環上の2対の互いにオルトの位置にあるアミン置換基を含む少なくとも1つの芳香族テトラアミンと、次の式を有する少なくとも1つの化合物からなるジカルボン酸成分を2段階重合法によって反応させることによって製造される。
【化1】


上記式において、R’は、本明細書で後により特定して定義される2価の有機ラジカルであり、ジカルボン酸成分を構成する種々の分子中において同じか異なり、Yは、水素、アリールまたはアルキルであることができ、ジカルボン酸成分を構成する種々の分子中のYの総量の95%以下は水素またはフェニルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許4,672,104号明細書
【特許文献2】米国特許4,717,764号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この方法の第1段階において、芳香族テトラアミンおよびジカルボン酸成分の混合物が芳香族テトラアミンの融点を超える重縮合温度まで加熱される。ジカルボン酸成分を構成する化合物の性質および融点に応じて、得られる重合物は、溶融テトラアミン中の固体酸粒子のスラリーの液体、テトラアミンとジカルボン酸成分の均質混合物、および/または溶融テトラアミンと溶融ジカルボン酸成分を含むエマルジョンである。加熱は、混合物の粘度が攪拌のトルクが約1.5倍以上、通常6倍以下になる点まで激しく攪拌しながら230°〜350℃の間で続けられる。次いで、攪拌は停止され、かたまりが泡だってもろくなる間、加熱は続けられる。次いで得られたポリマーは冷却され、破砕またはすって粉にされ、第2の反応容器に移される。次いで、第1の反応容器および攪拌手段は、反応容器および攪拌手段の上の過剰な残留物を除去するために加圧洗浄される。加圧洗浄プロセスから得られた湿った残留物は収集され、第2の反応容器に移される。この「混合」ポリマーは、反応段階の後に反応容器に残るポリマーであって、洗浄または水−噴射により剥がされるものと定義される。より容易な除去は、第1段階の反応(低い温度および継続)後になされる。このようにして、残留ポリマーの除去後に改良されたより均一な熱転移がなされ、その結果「混合」の少ないポリマーが期待でき、均一な乾燥ポリマーの収率を改善し、反応経過の影響の少ないポリマー製品の均質性を改良する。第2の洗浄された容器は攪拌の手段および圧力または真空を制御する手段を有する。続いて、重合の目標段階が達成されるまで、第2の反応容器が第1の段階より高い温度に加熱される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法によって製造されるポリベンズイミダゾールは次の式の繰返し単位を有するものである。
【化2】


上記式において、Rは、ベンズイミダゾール環を形成する窒素原子が隣接する炭素原子、すなわち芳香核のオルト炭素原子に対になる4価の芳香核である。R’は、芳香族炭化水素環、アルキレン基(好ましくは、4ないし8炭素原子)、または、ピリジン、ピラジン、フラン、キノリン、チオフェンおよびピランのようなヘテロサイクリック環である。ジカルボン酸モノマー成分中のジカルボン酸部位が同じか異なるかに応じて、R’はポリマー主鎖に沿った繰返し単位中同じか不規則的に異なる。さらに、1または2以上のテトラアミンモノマーが重合に利用されるかどうかに応じて、Rはポリマー主鎖に沿って同じか不規則的に異なる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次の一般化された式は、次の式の繰返し単位を有するポリベンズイミダゾールの形成において生じる縮合反応を示す。
【化3】


上記式において、R、R’およびYは前述のように定義される。このようなポリベンズイミダゾールは、(1)アミン置換基の2つの基を含む少なくとも1つの芳香族テトラアミンであって、各基中の前記アミン置換基は互いにオルトの位置にある、および(2)前述の式中に示されたジカルボン酸成分であり、本明細書において後により完全に定義される。
【0009】
例えば、使用される芳香族テトラアミンは次の式を有するものである。
【化4】


上記式において、Xは、−O−、−S−、−SO、−C−または−CH−、−(CH)2−、または−C(CH3のような低アルキレン基である。芳香族テトラアミンのなかでは、例えば、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,2,5,6−テトラアモノナフタレート、2,3,6,7−テトラアミノナフタレート、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエタン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニル−2,2−プロパン、3,3’4,4’−テトラアミノジフェニルチオエーテル、および3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホンである。好ましい芳香族テトラアミンは、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルである。
【0010】
本発明のジカルボン酸成分を含む化合物は次の式で定義される。
【化5】


上記式において、Yは、水素、アリールまたはアルキルであり、Yの95%以下は水素またはフェニルである。したがって、ジカルボン酸成分は酸と少なくとも1つのジエステルおよび/またはモノエステルの混合物、または単一ジアルキルエステル、モノエステルまたは混合アリール−アルキルまたはアルキル/アルキルエステル、しかし、完全に酸 からなることはできない。Yがアルキルであるとき、好ましくは、1ないし5個の炭素原子を含み、最も好ましくはメチルである。Yがアリールであるとき、それは全ての価を水素で満たして得られる任意の単価芳香族単価水素基であることができ、しかし、前述したように、RまたはR’であり得る芳香族基の1つは、置換されないか、または1ないし5の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシのような任意の不活性単価ラジカルで置換される。このようなアリール基の例は、フェニル、ナフチル、3つの可能なフェニルフェニルラジカルおよび3つの可能なトリールラジカルである。好ましいアリール基は、通常、フェニルである。
【0011】
本発明の方法によるポリベンズイミダゾールの製造に使用される前述したジカルボン酸成分の一部として独立またはエステルの適切なジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、4ないし8炭素原子を有するもの)およびヘテロシクリックジカルボン酸を含み、前記カルボン酸基は、ピリジン、ピラジン、フラン、キノリン、チオフェンおよびピランのような環化合物中の炭素原子の置換基である。
【0012】
記載されるような独立またはエステルに利用される好ましいジカルボン酸は下記に示されるような芳香族ジカルボン酸である。
【化6】


上記式において、Xは先に定義したものである。例えば、次のジ酸が適切に導入される。イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニック酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸)、フェニルインダンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルチオエーテルジカルボン酸である。イソフタル酸は、独立またはエステル化されたジカルボン酸であり、ジフェニルイソフタレート(1,3−ベンゼンジカルボン酸、ジフェニルエステル)は本発明の方法に使用される最も好ましいものである。
【0013】
好ましくは、ジカルボン酸成分は、次の組み合わせの1つである。(1)少なくとも1つの独立したジカルボン酸および少なくとも1つのジカルボン酸のジフェニルエステル、(2)少なくとも1つの独立したジカルボン酸および少なくとも1つのジカルボン酸のジアルキルエステル、および(3)少なくとも1つのジカルボン酸のジフェニルエステルおよび少なくとも1つのジカルボン酸のジアルキルエステル、および(4)少なくとも1つのジカルボン酸のジアルキルエステルである。各組み合わせの化合物のジカルボン酸部位は同じか異なり、組合せ(2)(3)および(4)のアルキルエステルのアルキル基は、通常、1ないし5の炭素原子および最も好ましくはフェニルである。
【0014】
ジカルボン酸成分は、芳香族テトラアミンのモル当り、約1モルのジカルボン酸成分比率で導入することが好ましい。しかしながら、特に、重合系の反応物の最適な割合は、当業者によって容易に決められる。
【0015】
本発明の方法によって製造されるポリベンズイミダゾールの例としては次のものが挙げられる。
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール
ポリ−2,2’−(ビフェニレン−2”2”’)−5,5’−ビベンジイミダゾール
ポリ−2,2’−(ビフェニレン−4”4”’)−5,5’−ビベンジイミダゾール
ポリ−2,2’−(1”,1”,3”トリメチルインダニレン−3”5”−p−フェニレン−5,5’−ビベンジイミダゾール、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール/2,2−(1”,1”,3”−トリメチルインダニレン)5”,3”−(p−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾールコポリマー、
2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール/2,2’−ビフェニレン−2”,”’)−5,5’−ビベンジイミダゾールコポリマー、
ポリ−2,2’−(フリレン−2”,5”)−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−1”,6”)−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−(ナフタレン−2”,6”)−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−アミレン−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−オクタメチレン−5,5’−ビベンジイミダゾール、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−ジイミダゾベンゼン、
ポリ−2,2’−シクロヘキセニル−5,5’−ビベンゼイミダゾール、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンジイミダゾール)エーテル、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンジイミダゾール)スルフィド、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンジイミダゾール)スルフォン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンジイミダゾール)メタン、
ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ジ(ベンジイミダゾール)プロパン、およびポリ−エチレン−1,2−2,2”−(m−フェニレン)−5,5”−ジベンジイミダゾール)エチレン−1,2、この中で、エチレン基の2重結合は最終ポリマー中で完全である。
【0016】
本発明の方法で製造される好ましいポリベンズイミダゾールは、ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾールであり、その繰返し単位は,nが75を超える整数である。このポリマーは、本発明の方法によって、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルと、イソフタル酸およびジフェニルイソフタレートまたはジメチルイソフタレートのようなジアルキルイソフタレートの組合せ、ジフェニルイソフタレートおよびジメチルイソフタレートのようなジアルキルイソフタレートの組合せ、またはジカルボン酸成分として少なくとも1つのジアルキルイソフタレートの反応によって製造される。
【0017】
本発明の方法は、1または2以上の芳香族テトラアミンのポリベンズイミダゾールおよび1または2以上のジカルボン酸を製造するために使用される。一般的に、テトラアミンおよびジカルボン酸成分の化学量論的総量が使用され、またはジカルボン酸成分のモル量のわずかな過剰が使用される。
【0018】
本発明の第1の段階は、第1の反応容器において、芳香族テトラアミン、ジカルボン酸成分を230℃〜350℃、および好ましくは280℃〜340℃の範囲で強く攪拌しながら加熱することによって実行される。反応容器は、攪拌手段および温度制御手段を有する。任意に、反応容器は圧力を制御する手段を有する。攪拌手段は反応物を混合または攪拌することができる任意の機械的機器である。攪拌のためのある手段としては、ブレードを有するシャフト、突出部を有するシャフト、スクリュー型の攪拌器、キャビテーター、ミキサー、混合器、または攪拌器がある。ジカルボン酸化合物の融点およびテトラアミンおよびジカルボン酸成分の化学的性質に応じて、攪拌された液体集合は、2つの混合できない液体のスラリー、均一な混合物またはエマルジョンとなる。攪拌エネルギーの増加により現れる攪拌器上のトルクの増大によって示されるように、反応集合物の粘度が上昇し始めるとき、攪拌は停止され、集合物はさらに加熱されて泡立つ。攪拌が停止されるのは、攪拌トルクまたは攪拌エネルギーが、例えば、テトラアミンが溶融した後の最初のトルクまたは攪拌ネルギーの約1000%以上上がらない、好ましくは最初のトルクまたは攪拌エネルギーの300%以上上がらない点である。次いで、集合物は、攪拌されずにさらに加熱され、例えば、約230℃〜350℃、好ましくは約280℃〜340℃の温度範囲に保持される。この加熱は、例えば、約15〜240分、1つの態様では、約0.5〜1.5時間の範囲で継続される。次いで、砕けやすく泡立った集合物は40〜200℃の温度範囲に冷却され、容易に粉砕されるようになる。本明細書において、「容易に粉砕される」とは、破砕、すり砕き、粉ひき、研磨、するつぶし、撃破、おろすまたは泡立った集合物を粉または微粒にさせる任意の手段を意味する。次いで、泡立った集合体は容易に粉砕されて粉となり、230℃〜350℃の温度範囲に加熱され、30分〜90分間保持される。一般的に、第1段階反応が終了した後のプレポリマーの固有粘度は、例えば、約0.05〜0.3dl/gである(全ての固有粘度は、25℃における96.5%硫酸中のポリマー重量0.4%の溶液から測定される)。
【0019】
粉にされたプレポリマーは、80℃未満に冷却され、次いで、第2の(洗浄された)反応容器に移転される。この反応容器は、攪拌手段、温度制御手段および圧力または真空を制御する手段を有する。
【0020】
さらに、次いで、最初の反応容器および攪拌手段は加圧水スプレーで洗浄される。本明細書において、加圧水とは、6.89MPaG(1000psigまたは70.3kg力/平方cmゲージ)未満のノズル水圧を有するものと定義する。これは、しばしば、1.38〜6.82MPaG(200psig〜990psig)で駆動し、他の実施態様では、水圧1.38〜6.82MPaG(200psig〜990psig、21.1kg力/平方cmゲージ〜63.3kg力/平方cmゲージ)で使用される。また、ランシグ工程で駆動されることあり得る。ランシング工程とは、ノズル水圧が6.89MPaG(1000psig、70.3kg力/平方cmゲージ)を超えると定義される。これは、通常、圧力7.58〜41.34MPaG(1100psigおよび6000psigの間、77.3kg力/平方cmゲージ〜428.1kg力/平方cmゲージ)で駆動される。他の実施態様では、ランシングは、圧力17.23〜37.90MPaG(2500psigおよび5500psigの間、175.8kg力/平方cmゲージ〜386.7kg力/平方cmゲージ)で駆動される。加圧水またはランシングのいずれかを用いて、反応容器および攪拌手段から、過剰なプレポリマーの残留物が除去される。加圧水またはランシング法により得られた湿った残留物は、洗浄混合物として収集される。このプロセスにおいて、破砕されたプレポリマーが落下した後、第1反応容器が加圧水で洗浄されると、反応容器をランシングする必要性は十分少なくなる。また、ランシング工程ではより多くの水が使用される、水使用量は加圧水工程の30ないし50倍に増加する。ランチング工程は高圧力を必要とするので操作者にとって危険である。操作においては、安いコストでより安全なプロセスが望ましい。
【0021】
次いで、この得られた洗浄混合物は、大部分の水が除去され、湿った破砕されたプレポリマーとなる。水の除去は、湿った破砕プレポリマーをスラリーシステムに貫通させて水を除去することによって達成される。このスラリーシステムは、遠心分離、ろ過または任意の他の個体−液体分離技術によって達成される。ろ過は、吸引ろ過または加圧ろ過でもよい。分離は、機械的圧搾、プレスまたは他の固−液分離技術によってなされてもよい。水除去は、湿った破砕プレポリマーを加熱して過剰な水を除去することによっても達成される。次いで、湿った破砕ポリマーは第2反応容器または洗浄された第1反応容器に移される。本明細書においては、洗浄された反応容器とは、前述した加圧水またはランシング洗浄された反応容器をいう。この湿った破砕されたプレポリマーは、反応容器、攪拌ブレードおよびシャフトからの残留物の収集物であり、以後「混合」と称する。第1の反応後の容器の洗浄によって、スケールを相当量低減でき、これにより第2の反応後のスケールが大幅に減少されることとなる。混合材料の製造浴への再投入は完成品の固有粘度に決定的な影響をもたらす傾向があるので、この工程の使用は、得られる高分子量ポリベンズイミダゾールの特性をより県子に制御するのに役立つ。
【0022】
このプロセスに使用される反応容器は、第1の工程の間の泡立ちを許容するのに十分な容量を有さなければならない。第2の工程の間の次の操作においては、最大容量未満の反応容器でよい。したがって、この工程は、第2の反応容器または洗浄された第1の反応容器における第2の工程を操作する前に、複数の第1工程を行い、破砕されたプレポリマーおよび湿った破砕物を収集し、それらを混合することができる。
【0023】
反応の第2の工程の間、破砕されたプレポリマーを第2の反応容器または洗浄された第1の反応容器に移した後、破砕されたプレポリマーは攪拌されながら315℃〜400℃の間、好ましくは330℃〜400℃の間に加熱される。攪拌しながら破砕されたポリマーを過熱しながら、わずかに加圧されるが、このわずかな加圧は、周辺大気圧または2mbar〜30mbarまたは、HOの0.25インチ〜5インチもしくはHOの0.63cm〜13cmの間である。破砕されたプレポリマーは90分と400分の間、好ましくは200分と360分の間または220分と330分の間加熱される。この点において、容器の中身は出させまたは放出され、高分子重量ポリベンズイミダゾールを生成する。
【0024】
本発明工程の両段階において、圧力が導入され得る。圧力は、少なくとも大気圧と等しく、例えば、1〜2気圧であり、1つの実施態様において大気圧である。このような圧力は、通常、反応の副生物として製造される濃縮化合物、典型的にはフェノールおよび水を除くために装置の開放重合システムを導入することによって得られるかまたは制御される。
【0025】
工程の両段階は、実質的に酸素のない雰囲気中で行われる。例えば、窒素またはアルゴンのような不活性ガスが重合の間反応ゾーンを連続的に通過させられる。導入される不活性ガスは実質的に酸素を含まない、例えば、約20ppm未満、好ましくは約8ppm未満の酸素含有量、より好ましくは酸素なしである。反応ゾーンに導入される不活性ガスは、標準状態で計測される流れの速さ、すなわち、大気圧および大気温度であり、毎分反応ゾーンの容量の約1〜200パーセントの範囲である。不活性ガスは室温で重合反応ゾーンを通過させることができ、または、望むなら、反応温度まで呼び加熱される。実質的に酸素の無い雰囲気を達成するための1つの方法は、毎分0.6標準リットル(SLPM)〜4.6SLPMの間の速度で反応チャンバーにN2を加入する方法である。
【0026】
本発明の方法は、相対的に高い固有粘度、平均して少なくとも0.8dl/g、できれば、1.1dl/gおよびそれ以上有する高分子重量ポリベンズイミダゾール製品を製造するのに使用される。本発明の重合プロセスは、触媒なしで実行されることができ、例え使用したとしても、多くの場合IV増加効果を示す。
【0027】
固有粘度(IV)は、dl/g単位で測定される、溶質の濃度を濃度0まで外挿したときの濃度に対する公知の濃度の溶液の特定の粘度の比である。固有の粘度は限界粘度数とも呼ばれる。それは、ポリマー平均分子重量に直接的に比例する。IV測定値は、g/100mlまたはg/dlであり、試験されるポリマー試料の濃度に基づいている。このポリマーは、80℃における96.5%(+/−0.5%)硫酸の100ml中の0.4(w/v)レベルで溶解される。ろ過後、アリコートは、25+/−0.1℃水浴中で、PBIポリマー溶液の流通時間(分)対溶解溶媒を使用して測定される。IV=[In[tl/t2]/cであり、溶媒の流通時間(t2)に対するPBIの流通時間(t1)の自然対数をPBI溶液濃度で割った値である。
【0028】
ポリベンズイミダゾールは、IVおよび粒子径/粒子径分布に基づいて異なった目的のために使用される。平均粒子径(PS)150ミクロン(100メッシュ)未満を有するポリベンズイミダゾールはポリマー樹脂として一般的に商業的に使用され、最小固有粘度0.5を有する必要がある。突き出た繊維および突き出た薄膜の製造のために、大きな粒子、通常300ミクロン以上、約0.8以上の固有粘度(IV)を有するのが好ましい。典型的には、突き出た量の平均IVは、通常および「混合」ポリマーの重量平均になるので、これよりいくらか低く、「混合」ポリマーレベルに留まる。これは、「混合」ポリマーレベルは十分に減少するので、この技術および粒子には重要である。
【0029】
プラグ値(PV)またはろ過性は、97%硫酸中の5%ポリマー溶液、または2%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド中の9%溶液を形成して、フィルターがつまるまで1.38MPaG(200psig)窒素圧で溶液をろ過することによって測定される。PVは、つまるまでのフィルターの単位面積あたりろ過された乾燥ポリマーのグラム数であり、ポリマーg/平方cmで表される。高い値は、ポリマー溶液がゲルおよび不溶物をあまり含まないことを意味する。
【実施例】
【0030】
実施例1
この目的は、典型的に重要な特性を有するポリマーを製造において、通常の重合プロセスで得られたものに比較して混合ポリマーの量を十分に減らすことである。主な測定値は下表のとおりである。
【表1】


仮定:反応容器から第1段階のポリマーを除き、洗浄し、第1段階のポリマーを再投入するとき、得られた第2反応「混合」ポリマーは通常のポリマーと異ならない。しかし、反応容器から洗浄された最後の材料なので、通常のポリマーより小さい粒子径と低いIVを有する。
【0031】
3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(TAB)の815モルおよびジフェニルイソプタラート(DPIP)の819モルからのポリベンズイミダゾールプレポリマーであって、第1反応または第1段階の8つのバッチが,反応容器から数日を経て回収された。90分の第1反応および290℃で45分間の追加の保持時間が第1のバッチで完結される。放出前の容器の準備はランシングを含む。しかしながら、各第1段階のバッチが製造された後(A〜H)、容器の清浄度が評価され、もし、予備洗浄および洗浄後にスケールまたは薄膜があるときのみランシングがなされた。
【0032】
第1段階から乾燥放出されたバッチ2つを合わせ、第2の反応のための2倍バッチとして得られる(表2参照)。全てのバッチからの第1段階の混合物は合わせられ、1つの単一の反応バッチ(I)とされ、(I)は第1段階のバッチ、A、B、C、D、E、F、GおよびHの混合である。すべてのバッチの収率は、99%を超えていた。
【0033】
粒子径による相違を補償するため150ミクロン未満の粒子をふるいにかけ、乾燥させた後、ポリマーについてIVおよびPV試験を行った。
【表2】


結論:この改良されたプロセスを使用することで混合割合は十分減少し、通常および混合ポリマーの特性は正常な範囲となった。
【0034】
統計:
混合割合のデータは、以前に完結された137コントロールバッチに比較して低くなるかまたは改良された。
【0035】
>150μの混合ポリマーに比較して、>150μの通常ポリマーのIVに統計的な相違は見られなかった。
【0036】
通常のPV>150μは混合PV>150μより統計的に高い。しかし、両者はのぞまれる低い限界値より高かった。
【0037】
コントロール法に比較してこの改良されたプロセスにより製造された通常のポリマーのIVまたはPVに統計的な相違はなかった。
実施例2
この実施例においては、残留第1段階ポリマーが低圧力水を使用して反応器から除去され得るかどうかを決定することが目的であった、また、第2の目的は、このプロセスを使用して以前得られたものより高いIVのものを製造することにあった。
【0038】
4つの第1反応または第1バッチが2日間後に反応器から放出された(上記実施例1と同じ量)。90分間の第1反応および290℃における45分間の追加の保持時間により、すべての第1反応バッチを得た。反応容器の準備はランシング工程を含んでいた。各乾燥後、第1段階のポリマーバッチが放出された。容器は通常のように予備洗浄され、5.51MPaG(800psig)で駆動する加圧水を使用して洗浄された。同じバッチからの湿ったプレポリマーを伴った第1段階の乾燥され、放出されたバッチを2つ合わせ、この2バッチの総量を第2段階の反応のための2倍バッチとして用いた。
【0039】
この実施例による主要な測定値および結果については下記の表3に示されている。
【表3】


結論:
反応容器の洗浄に必要とされる水圧を十分に減らすことはこの方法により達成され、通常のIVのポリマーを製造するとともに、実質的に混合ポリマーの割合が低いポリマーを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法であって、
反応容器に反応集合物を形成するためのポリベンズイミダゾールを製造することができる複数の反応物を充填する工程であって、前記反応容器は攪拌のための手段および雰囲気を制御するための手段を有する工程、
前記反応物を混合物の粘度が攪拌のトルクが粘度上昇前のトルクの1.5倍〜6倍になるまで実質的に酸素の無い雰囲気中で攪拌しながら加熱する工程、
攪拌を停止し、前記反応集合物が泡立ちながら、230℃〜350℃の温度で反応混合物を加熱し続ける工程、
前記反応集合物を泡立ったもろい集合物に冷却する工程、
前記泡だったもろい集合物を破砕して破砕されたプレポリマーを得る工程、
前記破砕されたプレポリマーを15分〜240分間230℃〜350℃の温度で再加熱して、次いで前記破砕されたポリマーを除去する工程、
前記反応容器および前記攪拌手段を加圧洗浄して洗浄混合物を得る工程、
前記洗浄混合物から過剰な水を分離して湿った破砕されたプレポリマーを得る工程、
前記破砕されたプレポリマーおよび前記湿った破砕されたプレポリマーを第2の反応容器に移転する工程、および
前記破砕されたプレポリマーおよび前記湿った破砕されたプレポリマーを攪拌しながら315℃〜400℃の温度で大気圧下90〜400分間加熱する工程を含む溶融重合方法。
【請求項2】
前記加圧洗浄は、6.89MPaG(70.3kg力/平方cmゲージ、1000psig)未満の圧力で行われる請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項3】
前記加圧洗浄は、6.89MPaG(70.3kg力/平方cmゲージ、1000psig)を超える圧力で行われるランシング工程である請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項4】
前記加圧洗浄の前に、さらに前記第1反応容器を冷却する工程を含む請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項5】
前記反応集合物を冷却する工程において、前記反応集合物は40℃〜200℃の温度範囲に冷却される請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項6】
前記破砕されたプレポリマーを15分〜240分間230℃から350℃の温度で再加熱した後、次いで、前記反応容器から除去される前に80℃以下の温度に冷却される請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項7】
前記破砕されたプレポリマーを第2の反応容器に移転する工程において、前記破砕されたプレポリマーの追加のバッチが前記反応容器に加えられる請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項8】
ポリベンズイミダゾールを製造することができる複数の反応物は、芳香環のオルト位置にある2対のアミン置換基を含む少なくとも1つの芳香族炭化水素テトラアミン、および次の式を有する少なくとも1つの化合物からなるジカルボン酸成分であり、
【化1】


、上記式においてR’は、芳香族炭化水素環、アルキレン基またはヘテロサイクリック環からなる種類の2価の有機ラジカルであり、ジカルボン酸成分を構成する種々の分子中において同じか異なり、Yは、水素、アリールまたはアルキルであり、Yの総量の95%以下は水素またはフェニルである請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項9】
前記洗浄混合物から過剰な水を分離する工程の手段は、遠心分離、ろ過、固体−液体分離の他の手段、加熱またはこれらの組合せから選択される請求項1に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項10】
第1段階およびこれに引き続く第2段階による高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法であって、
前記第1段階は、
攪拌のための手段および雰囲気を制御するための手段を有する第1反応容器を供給す
る工程、
前記反応容器に、芳香環のオルト位置にある2対のアミン置換基を含む少なくとも1つの芳香族炭化水素テトラアミン、および次の式を有する少なくとも1つの化合物からなるジカルボン酸成分であり、
【化2】


上記式においてR’は、芳香族炭化水素環、アルキレン基およびヘテロサイリック環からなる種類の2価の有機ラジカルであり、ジカルボン酸成分を構成する種々の分子中において同じか異なり、Yは、水素、アリールまたはアルキルであり、Yの総量の95%以下は反応集合物を形成する水素またはフェニルであるジカルボン成分を満たす工程、
前記反応物を混合物の粘度が攪拌のトルクが粘度上昇前のトルクの1.5倍〜6倍になるまで実質的に酸素の無い雰囲気中で攪拌しながら加熱する工程、
前記反応集合物が泡立ちながら、230〜350℃の温度で反応混合物を加熱し続けて攪拌を停止する工程、
前記反応集合物を泡立ったもろい集合物に冷却する工程、
前記泡だったもろい集合物を破砕して破砕されたプレポリマーを得る工程、
前記破砕されたプレポリマーを15分〜240分間230℃〜350℃の温度で再加熱する工程、
前記破砕されたポリマーを除去する工程、
前記第1反応容器および前記攪拌手段を加圧洗浄して洗浄混合物を得る工程、
前記洗浄混合物から過剰な水を分離して湿った破砕されたプレポリマーを得る工程、
前記破砕されたプレポリマーを除去する工程を含み、および
前記第2工程は、
攪拌のための手段および雰囲気を制御するための手段を有する第2反応容器を供給す
る工程、
前記破砕されたプレポリマーおよび前記湿った破砕されたプレポリマーを前記第2反応容器に移転する工程、および
前記破砕されたプレポリマーおよび前記湿った破砕されたプレポリマーを攪拌しながら315℃〜400℃の温度で大気圧下90〜400分間加熱する工程を含む溶融重合方法。
【請求項11】
前記加圧洗浄は、6.89MPaG(70.3kg力/平方cmゲージ、1000psig)未満の圧力で行われる請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項12】
前記加圧洗浄は、6.89MPaG(70.3kg力/平方cmゲージ、1000psig)を超える圧力で行われるランシング工程である請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項13】
前記第2反応容器は前記第1反応容器でもある請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項14】
前記加圧洗浄の前に、さらに前記第1反応容器を冷却する工程を含む請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項15】
前記反応集合物を冷却する工程において、前記反応集合物は40℃〜200℃の温度範囲に冷却される請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項16】
前記破砕されたプレポリマーを15分〜240分間230℃から350℃の温度で再加熱した後、次いで、前記反応容器から除去される前に80℃以下の温度に冷却される請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項17】
前記破砕されたプレポリマーを第2の反応容器に移転する工程において、前記破砕されたプレポリマーの追加のバッチが前記反応容器に加えられる請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項18】
前記芳香族ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルを含む請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項19】
前記ジフェニルエステルはジフェニルイソフタレートである請求項18に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項20】
前記芳香族テトラアミンは、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルである請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。
【請求項21】
前記洗浄混合物から過剰な水を分離する工程の手段は、遠心分離、ろ過、固体−液体分離の他の手段、加熱またはこれらの組合せから選択される請求項10に記載の高分子重量ポリベンズイミダゾールの製造のための2段階溶融重合方法。

【公開番号】特開2012−31418(P2012−31418A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−193864(P2011−193864)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2008−521392(P2008−521392)の分割
【原出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(506184772)ピービーアイ・パフォーマンス・プロダクツ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】