説明

ポリペプチドディスプレイライブラリ並びにそれらの作製及び使用方法

生物学的実体の外表面上にパッセンジャーポリペプチドをディスプレイする発現ベクターを開示する。ここに開示されるように、ディスプレイされたパッセンジャーポリペプチドは所定のリガンドと相互作用または結合することができる。該発現ベクターの製造方法及び使用方法も開示される。N/C末端融合発現ベクター並びに製造方法及び使用方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、細菌ポリペプチドディスプレイライブラリ並びのそれらの作製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドディスプレイ技術は、薬物発見から物質合成の範囲にまで渡り、基礎及び応用研究用途に対して実質的な影響を与えてきた。Clackson, T. and J.A. Wells (1994) Trends In Biotech. 12(5):173-184;及びShusta, E.V., et al. (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10(2):117-122;及びKodadek, T., (2001) Chem. Biol. 8(2):105-158;Lee, S.W., et al. (2002) Science 296 (5569):892-859;及びNixon, A.E. (2002) Curr. Pharm. Biotechnol. 3(1): 1-12を参照のこと。これらの方法の強みは、細胞の生合成機構を用いて数十億の多様な分子を含むライブラリを生成し、続いて選択方法もしくは高処理能力のスクリーニング方法を用いて、所望の希なポリペプチドを同定する能力に由来する。ディスプレイライブラリは分子認識用のペプチド及び抗体の単離及び操作に広範に適用されている。特に、糸状バクテリオファージの表面上でのペプチドのディスプレイ、すなわち、ファージディスプレイ法は、広範囲の標的に結合するペプチドリガンドを単離するための万能かつ有効な方法論であることが立証されている。Scott, J.K. and G.P. Smith (1990) Science 249(4967):386-904;Norris, J.D., et al. (1999) Science 285(5428):744-765;Arap, W., et al (1998) Science 279(5349):377-806;及びWhaley, S.R., et al. (2000) Nature 405(6787) :665-668を参照のこと。
【0003】
ポリペプチドディスプレイ系には、mRNA及びリボソームディスプレイ法、真核生物ウイルスディスプレイ法、及び細菌及び酵母細胞表面ディスプレイ法が含まれる。Wilson, D.S., et al. 2001 PNAS USA 98(7):3750-3511;Muller, O.J., et al. (2003) Nat. Biotechnol. 3:312;Bupp, K. and M.J. Roth (2002) Mol. Ther. 5(3):329-3513;Georgiou, G., et al., (1997) Nat. Biotechnol. 15(1):29-3414;及びBoder, E.T. and K.D. Wittrup (1997) Nature Biotech. 15(6):553-557を参照のこと。表面ディスプレイ法は、ライブラリの解析及びスクリーニングへの蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)の適用を可能にするため、魅力的である。Daugherty, P.S., et al. (2000) J. Immunol. Methods 243(1-2):211-2716;Georgiou, G. (2000) Adv. Protein Chem. 55:293-315;Daugherty, P.S., et al. (2000) PNAS USA 97(5):2029-3418; Olsen, M.J., et al (2003) Methods Mol. Biol. 230:329-342;及びBoder, E.T. et al. (2000) PNAS USA 97(20):10701-10705を参照のこと。
【0004】
ファージディスプレイ法は、被覆タンパク質、例えばバクテリオファージ粒子のpIIIやpIIVへの、末端融合体としてのペプチドの局在化を含む。Scott, J.K. and G.P. Smith (1990) Science 249(4967):386-390;及びLowman, H.B., et al. (1991) Biochem. 30(45):10832-10838を参照のこと。一般には、特異的結合機能を有するポリペプチドは、標的と共にインキュベートし、非結合ファージを洗い流した後、結合しているファージを溶離し、細菌の新鮮培養物に感染させることにより該ファージを再増幅させることにより単離する。残念ながら、ファージディスプレイ法は幾つかの望ましくない特性を示す。Zahn, G. (1999) Protein Eng. 12(12): 1031-1034を参照のこと。例えば、ファージディスプレイ法ではディスプレイされるポリペプチドがファージ当たり数千コピー以下に限定されるので、所望の配列を単離するために高感度な蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用することができない。ファージはまた固定された標的リガンドからの溶離または回収が困難であるため、クローンの損失が生じる。ファージディスプレイ法はまた感染工程を必要とし、そこでは細胞に結合し侵入しないウイルスがそのプロセスの早期に失われるので、全体として結果、例えば単離された結合性分子の親和性、が低質となる。さらに、ファージディスプレイ選択は時間のかかるものであり、所定の標的に結合するファージディスプレイポリペプチドの単離に、典型的には、約2〜3週間を必要とする。
【0005】
最も顕著には、ファージディスプレイ法は、研究者が感染、ファージ増幅、力価測定、ファージELISA、及びその他を含む定型的なファージ操作手法に習熟していることを必要とする。第2に、ファージディスプレイ法では、特定のクローンがその相対的な感染力、組立効率、及び宿主細胞に対する毒性により適者生存増殖(Darwinian outgrowth)することがある。第3に、富化率が比較的低いため、所望の結合性クローンの富化速度が遅い。
【0006】
他のディスプレイ方式及び方法論には、mRNAディスプレイ法、リボソームもしくはポリソームディスプレイ法、真核細胞ウイルスディスプレイ法、並びに細菌、酵素、及び哺乳動物細胞表面ディスプレイ法が含まれる。Mattheakis, L.C, et al. (1994) PNAS USA 91(19): 9022-9026;Wilson, D.S, et al. (2001) PNAS USA 98(7):3750-3755; Shusta, E.V, et al. (1999) Curr. Opin. Biotech. 10(2):117-122;及びBoder, E.T. and K.D. Wittrup (1997) Nature Biotech. 15(6):553-557を参照のこと。様々な代替的なディスプレイ技術が開発され、微生物の表面上でのディスプレイについて報告され、タンパク質結合性ペプチドを単離するための一般的な方策として探求されているが、成功したとの報告はない。Maurer, J., et al. (1997) J. Bacteriol. 179(3):794-804;Samuelson, P., et al. (1995) J. Bacteriol. 177(6): 1470-1476;Robert, A., et al. (1996) FEES Letters 390(3): 327-333;Stathopoulos, C., et al. (1996) Appl. Microbiol. & Biotech. 45(1-2): 112-119;Georgiou, G., et al., (1996) Protein Engineering 9(2): 239-247;Haddad, D., et al., (1995) FEMS Immunol. & Medical Microbiol. 12(3-4):175-186;Pallesen, L., et al, (1995) Microbiol. 141(Pt 11): 2839-2848、Xu, Z. and S.Y. Lee (1999) Appl. Environ. Microbiol. 65(11):5142-5147;Wernerus, H. and S. Stahl (2002) FEMS Microbiol. Lett. 212(1): 47-54;及びWesterlund-Wikstrom, B. (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(3):223-230を参照のこと。これら先行技術のディスプレイ系の幾つかはライブラリスクリーニングについて試験されているが、高親和性タンパク質結合性ペプチドの単離には成功していない。Brown, S. (1992) PNAS USA 89(18):8651-8655;Lang, H., et al. (2000) Eur. J. Biochem. 267(1):163-170;Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(3):215-221;Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Microbiol. 146(Pt 12):3025-3032;Kjaergaard, K., et al. (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66(1): 10-14;Schembri, M.A., (1999) FEMS Microbiol. Lett. 170(2):363-371; Benhar, I., et al. (2000) J. Mol. Biol. 301(4):893-904;及びLang, H., et al. (2000) Adv. Exp. Med. Biol. 485:133-136を参照のこと。
【0007】
先行技術における、宿主細胞を用いるポリペプチドディスプレイライブラリの発現ベクターは、様々な問題を有している。先行技術の方法における問題には、(1)発現させることができるのが小さなペプチドのみであること、(2)大きなライブラリを選択することができないこと、(3)ポリペプチドが外膜表面上に発現せず、内膜と外膜の間の周辺質空間に発現すること、(4)外膜表面上にディスプレイされるポリペプチドは大分子及び特定の標的に適切に結合または相互作用しないこと、並びに(5)海馬采または鞭毛上における発現の解析では、機械的剪断により、幾つかの所望のポリペプチドの損失を生じること、が含まれる。
【0008】
細菌細胞の表面上でのタンパク質ディスプレイは、細菌を用いる実験手順が効率的であり、かつFACSを用いてスクリーニングを行うことができるため、リガンド単離のプロセスを簡素化及び促進する潜在力を有する。Daugherty, P.S., et al. (2000) J. Immunol. Methods 243(1-2):211-2720;Brown, S. (1992) PNAS USA 89(18):8651-8521;及びFrancisco, J.A., et al. (1993) PNAS USA 90(22):10444-10448;Taschner, S., et al. (2002) Biochem. J. 367(Pt 2):393-402;Etz, H., et al. (2001) J. Bacteriol. 183(23):6924-6935;及びCamaj, P., et al. (2001) Biol. Chem. 382(12):1669-1677を参照のこと。幾つかの異なる細菌ディスプレイ系が報告されているが、それらの有用性は、細胞表面での接近可能性、非常に多様な配列をディスプレイすることが不可能であること、並びに細胞の成長及び生存能力に対する悪影響を含む、技術的限界によって制限されている。Francisco, J.A., et al. (1993) PNAS USA 90(22):10444-10822;Lu, Z., et al. (1995) Biotechnology (NY) 13(4):366-7223;Klemm, P. and M.A. Schembri, (2000) Microbiology 146(Pt 12):3025-3224;Christmann, A., et al. (1999) Protein Eng. 12(9):797-80625;Lee, S.Y., et al. (2003) Trends Biotechnol. 21(1):45-52;Lu, Z., et al. (1995) Biotechnology (NY) 13(4):366-7225;Lee, S.Y., et al. (2003) Trends Biotechnol. 21(l):45-5226;Camaj, P., et al. (2001) Biol. Chem. 382(12):1669-1677;及びSchembri, M.A., et al. (2000) Infect. Immun. 68(5) :2638-2646を参照のこと。
【0009】
従って、これらの技術が高親和性ペプチドリガンドの単離を可能にすることはない。加えて、これらの技術が、抗体、タンパク質、ウイルス、細胞、巨大分子を含む分析物への結合に適する細胞表面上でのペプチド露出をもたらすことはない。従って、これらのディスプレイ方式は、生成されるペプチドが、大分子及び他の表面(例えば磁性粒子)に結合しないため、ある種の単離法には適していない。その上、先行技術における工程は細胞の生存能力を低下させ、かつ膜透過性を変化させるので、工程の効率が低下する。これまでのところ、任意のタンパク質標的に対する高親和性ペプチドリガンドの定型的単離方法は示されていない。Camaj, P., et al, (2001) Biol. Chem. 382(12):1669-7727;及びTripp, B.C., et al., (2001) Protein Eng. 14(5):367-377;Lang, H., et al. (2000) Eur. J. Biochem. 267(1):163-170;Lang, H., et al. (2000) Adv. Exp. Med. Biol. 485:133-136;Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(3): 215-221;Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Microbiol. 146(Pt 12):3025-302;Kjaergaard, K., et al. (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66(1):10-14;Schembri, M.A., et al. (1999) FEMS Microbiol. Lett. 170(2):363-371;Benhar, I., et al. (2000) Mol. Biol. 301(4):893-904;Kjaergaard, K., et al. (2001) Appl. Environ. Microbiol. 67(12):5467-5473;及びLang, H., et al. (2000) Exp. Med. Biol. 485: 133-136を参照のこと。
【0010】
また、先行技術においては、ポリペプチドは、最も頻繁には、細胞表面上に外膜もしくは細胞外付属器(例えば、海馬采、鞭毛タンパク質)への挿入的融合体もしくは「サンドイッチ融合体」のいずれかとして、またはより少ない頻度で、細胞表面上に局在すると考えられる短縮型もしくはハイブリッドタンパク質への融合体として、ディスプレイされる。Pallesen, L., et al. (1995) Microbiol. 141(Pt 11):2839-48;及びEtz, H., et al. (2001) J. Bacteriol. 183(23):6924-6935を参照のこと。後者の例にはLppOmpA系及び氷核タンパク質(InP)が含まれる。Georgiou, G., et al. (1997) Nat. Biotechnol. 15(l):29-34を参照のこと。外膜タンパク質OmpA、OmpC、OmpF、FhuA、及びLamBは、外膜の細胞外側に露出するOMPループへの比較的短い挿入的融合体としてのポリペプチドのディスプレイを可能にしている。Xu, Z. and S.Y. Lee (1999) Appl. Environ. Microbiol. 65(11):5142-5147;Taschner, S., et al. (2002) Biochem. J. 367(Pt 2):393-402を参照のこと。
【非特許文献1】Clackson, T. and J.A. Wells (1994) Trends In Biotech. 12(5):173-184
【非特許文献2】Shusta, E.V., et al. (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10(2):117-122
【非特許文献3】Kodadek, T., (2001) Chem. Biol. 8(2):105-158
【非特許文献4】Lee, S.W., et al. (2002) Science 296 (5569):892-859
【非特許文献5】Nixon, A.E. (2002) Curr. Pharm. Biotechnol. 3(1): 1-12
【非特許文献6】Scott, J.K. and G.P. Smith (1990) Science 249(4967):386-390
【非特許文献7】Norris, J.D., et al. (1999) Science 285(5428):744-765
【非特許文献8】Arap, W., et al (1998) Science 279(5349):377-806
【非特許文献9】Whaley, S.R., et al. (2000) Nature 405(6787) :665-668
【非特許文献10】Wilson, D.S, et al. (2001) PNAS USA 98(7):3750-3755
【非特許文献11】Muller, O.J., et al. (2003) Nat. Biotechnol. 3:312
【非特許文献12】Bupp, K. and M.J. Roth (2002) Mol. Ther. 5(3):329-3513
【非特許文献13】Georgiou, G., et al., (1997) Nat. Biotechnol. 15(1):29-34
【非特許文献14】Boder, E.T. and K.D. Wittrup (1997) Nature Biotech. 15(6):553-557
【非特許文献15】Daugherty, P.S., et al. (2000) J. Immunol. Methods 243(1-2):211-227
【非特許文献16】Georgiou, G. (2000) Adv. Protein Chem. 55:293-315
【非特許文献17】Daugherty, P.S., et al. (2000) PNAS USA 97(5):2029-3418
【非特許文献18】Olsen, M.J., et al (2003) Methods Mol. Biol. 230:329-342
【非特許文献19】Boder, E.T. et al. (2000) PNAS USA 97(20):10701-10705
【非特許文献20】Lowman, H.B., et al. (1991) Biochem. 30(45):10832-10838
【非特許文献21】Zahn, G. (1999) Protein Eng. 12(12): 1031-1034
【非特許文献22】Mattheakis, L.C, et al. (1994) PNAS USA 91(19): 9022-9026
【非特許文献23】Maurer, J., et al. (1997) J. Bacteriol. 179(3):794-804
【非特許文献24】Samuelson, P., et al. (1995) J. Bacteriol. 177(6): 1470-1476
【非特許文献25】Robert, A., et al. (1996) FEES Letters 390(3): 327-333
【非特許文献26】Stathopoulos, C., et al. (1996) Appl. Microbiol. & Biotech. 45(1-2): 112-119
【非特許文献27】Georgiou, G., et al., (1996) Protein Engineering 9(2): 239-247
【非特許文献28】Haddad, D., et al., (1995) FEMS Immunol. & Medical Microbiol. 12(3-4):175-186
【非特許文献29】Pallesen, L., et al, (1995) Microbiol. 141(Pt 11): 2839-2848
【非特許文献30】Xu, Z. and S.Y. Lee (1999) Appl. Environ. Microbiol. 65(11):5142-5147
【非特許文献31】Wernerus, H. and S. Stahl (2002) FEMS Microbiol. Lett. 212(1): 47-54
【非特許文献32】Westerlund-Wikstrom, B. (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(3):223-230
【非特許文献33】Brown, S. (1992) PNAS USA 89(18):8651-8655
【非特許文献34】Lang, H., et al. (2000) Eur. J. Biochem. 267(1):163-170
【非特許文献35】Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(3):215-221
【非特許文献36】Klemm, P. and M.A. Schembri (2000) Microbiol. 146(Pt 12):3025-3032
【非特許文献37】Kjaergaard, K., et al. (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66(1): 10-14
【非特許文献38】Schembri, M.A., (1999) FEMS Microbiol. Lett. 170(2):363-371
【非特許文献39】Benhar, I., et al. (2000) J. Mol. Biol. 301(4):893-904
【非特許文献40】Lang, H., et al. (2000) Adv. Exp. Med. Biol. 485:133-136
【非特許文献41】Francisco, J.A., et al. (1993) PNAS USA 90(22):10444-10448
【非特許文献42】Taschner, S., et al. (2002) Biochem. J. 367(Pt 2):393-402
【非特許文献43】Etz, H., et al. (2001) J. Bacteriol. 183(23):6924-6935
【非特許文献44】Camaj, P., et al. (2001) Biol. Chem. 382(12):1669-1677
【非特許文献45】Lu, Z., et al. (1995) Biotechnology (NY) 13(4):366-372
【非特許文献46】Christmann, A., et al. (1999) Protein Eng. 12(9):797-806
【非特許文献47】Lee, S.Y., et al. (2003) Trends Biotechnol. 21(1):45-52
【非特許文献48】Camaj, P., et al. (2001) Biol. Chem. 382(12):1669-1677
【非特許文献49】Schembri, M.A., et al. (2000) Infect. Immun. 68(5) :2638-2646
【非特許文献50】Tripp, B.C., et al., (2001) Protein Eng. 14(5):367-377
【非特許文献51】Kjaergaard, K., et al. (2001) Appl. Environ. Microbiol. 67(12):5467-5473
【非特許文献52】Lang, H., et al. (2000) Exp. Med. Biol. 485: 133-136
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの「キャリア」タンパク質のC及びN末端は天然には細胞表面上には局在しないので、ポリペプチドを末端融合体としてディスプレイする能力は排除されている。結果として、C及びN末端が「キャリア」タンパク質配列に融合するときに挿入的融合の点で折り畳むことができないタンパク質は、C及びN末端が、空間的に、物理的に分離されているもの(例えば一本鎖Fv抗体断片)と同様、挿入体として有効にディスプレイすることができない。同様に、挿入的融合の使用に対する制限のため、cDNAライブラリによってコードされる多数のタンパク質の細胞表面上でのディスプレイが妨げられる。
【0012】
先行技術では、生じる新たな末端が細胞表面上にディスプレイされ得るように外膜タンパク異質配列を切り詰めることによって、挿入的融合体ディスプレイの問題に取り組む試みをしている。Lee, et al. (2003) Trends in Biotech. 23(l):45-52;Georgiou, et al. (1997) Nat. Biotech. 15(l):29-34を参照のこと。これらの先行技術のアプローチは、細菌の外膜をペプチド及びポリペプチドの標的とすることを可能にするLppOmpA系の創出に用いられた。Francisco, et al. (1992) PNAS USA 89(7):2913を参照のこと。例えば、LppOmpA’、araBADプロモーター、クロラムフェニコール耐性、及びp15Aオリジンが用いられる発現ベクター(LppOmpA発現ベクター)がある。Daugherty et al. (1999) Protein Engineer. 12(7):613-621を参照のこと。このLppOmpA発現ベクターは、アミノ酸残基159位でOmpAプロモーターの切り詰めを生じる融合タンパク質をコードする。残念ながら、大ライブラリからポリペプチドを単離及び発現させるための一般的工程としてのLppOmpA発現ベクターの性能は、i)修飾OmpAタンパク質は構造的安定性が低下していること、ii)高温において発現の寛容性がないこと、iii)生存能力が低いこと、及びiv)最も重要なことに、生存能力及び/または成長速度を損なうことなしに大分子への結合に適合するような方法で細胞表面上にポリペプチドをディスプレイすることができないこと、によって著しく制限される。Christman, A.et al., 1999. Prot. Eng. 12 (9):797を参照のこと。
【0013】
また、先行技術における発現ベクターには、(1)該発現ベクターによって産生されるポリペプチドが、外部から加えられたタンパク質、細胞、もしくは宿主細胞の表面に結合することができないこと、(2)該発現ベクターが、大きいポリペプチドを表面ディスプレイできないこと、及び(3)発現するポリペプチドが周辺質領域(内膜と外膜との間)にのみ発現して宿主細胞の外表面上に発現しないため、発現したいかなるタンパク質も、外膜を通過して細胞膜周辺腔に至る小分子とだけしか相互作用できないこと、から問題がある。これらの問題は、高親和性結合性ポリペプチドを単離するための一般的な工程としての該技術の適用を妨げている。例えば、Stathopoulos, C. (1996) Applied Microbiol. Biotech. 45 (1-2) 112、Earhart CF. (2000) Methods Enzymol. (326):506-16;Francisco, J. (1994) Annal. NY Acad. Sci. 745:372;及びBessette, P.H., et al. (2004) Prot. Eng. (印刷中)を参照のこと。
【0014】
したがって、要求される技術的専門性が最小限であり、労働集約度が低く、及びリガンド単離のプロセスを先行技術の方法と比較して数週間ないし数日早める、より確実なディスプレイ方法論に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、生物学的実体(biological entity)の外表面上でキャリアタンパク質ループ内にポリペプチドをディスプレイするための発現ベクターに関する。
【0016】
ある態様において、本発明は、生物学的実体の外表面上で、所定のリガンドと相互作用することが可能であるキャリアタンパク質ループ内に、所定のパッセンジャーポリペプチドを発現及びディスプレイすることが可能な発現ベクターを提供する。
【0017】
ある態様において、前記キャリアタンパク質ループは開放され、外表面上に露出したN末端、外表面上に露出したC末端、またはその両方を生じている。ある態様において、天然C末端及び天然N末端はペプチドリンカーを介して互いに融合している。ある態様において、外表面に露出した前記N末端及び外表面に露出した前記C末端にリガンドが接近可能である。ある態様において、前記パッセンジャーポリペプチドの前記C末端は前記キャリアタンパク質のN末端に融合している。ある態様において、前記パッセンジャーポリペプチドのN末端は前記キャリアタンパク質のC末端に融合している。ある態様において、前記キャリアタンパク質はOmpXである。
【0018】
ある態様において、前記キャリアタンパク質は細菌の外膜タンパク質である。幾つかの好ましい態様において、該細菌外膜タンパク質はOmpAまたはOmpXである。幾つかの好ましい態様において、前記ポリペプチドはOmpAの第1細胞外ループ内に発現する。幾つかの好ましい態様において、前記ポリペプチドはOmpXの第2細胞外ループ内に発現する。幾つかの好ましい態様において、前記ポリペプチドはOmpXの第3細胞外ループ内に発現する。
【0019】
ある態様において、前記ポリペプチドはストレプトアビジンまたはT7結合性ペプチドである。
【0020】
ある態様において、前記生物学的実体は細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞である。幾つかの好ましい態様において、前記生物学的実体は細菌細胞である。幾つかの好ましい態様において、該細菌細胞は大腸菌(Escherichia coli)、ソネ赤痢菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(Shingella flexneri)、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、腸炎菌(Salmonella enterica)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ペスト菌(Yersinia pestis)、または肺炎桿菌(Klebsiella pnewnoniae)である。
【0021】
ある態様において、発現ベクターは低コピーの複製起点、例えば、p15A複製起点をさらに含む。
【0022】
ある態様において、発現ベクターは殺菌性抗生物質耐性タンパク質をコードする遺伝子をさらに含む。ある態様において、該殺菌性抗生物質耐性タンパク質をコードする遺伝子はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする。
【0023】
ある態様において、発現ベクターは少なくとも1つのSfilエンドヌクレアーゼ制限酵素部位をさらに含む。
【0024】
ある態様において、発現ベクターはアラビノースaraBAD大腸菌オペロンプロモーターをさらに含む。ある態様において、発現はL−アラビノースの添加で誘導され、アラビノースの除去及びグルコースの添加によって停止する。
【0025】
ある態様において、本発明はここで提供される発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0026】
ある態様において、本発明は、ポリペプチドディスプレイライブラリを作製する方法であって、本件明細書で説明される複数のポリペプチドを発現可能な複数の発現ベクターを創出する工程、及び発現を誘導する工程を含む、該方法を提供する。
【0027】
ある態様において、本発明は、本件明細書で説明される発現ベクターの発現を誘導することによって生物学的実体の外表面上に発現したポリペプチドを提供する。ある態様において、該ポリペプチドはOmpAの第1細胞外ループ内に発現する。ある態様において、該ポリペプチドはOmpXの第2細胞外ループ内に発現する。ある態様において、該ポリペプチドはOmpXの第3細胞外ループ内に発現する。
【0028】
ある態様において、本発明は、本件明細書で説明されるように、開放され、かつ、N末端が外表面上に露出しているか、C末端が外表面上に露出しているか、または両者が外表面上に露出しているキャリアタンパク質ループを有する発現ベクターの発現を誘導することによって生物学的実体の外表面上に発現したポリペプチドを提供する。ある態様において、このポリペプチドはOmpX内に発現する。
【0029】
ある態様において、本発明は、本件明細書で説明される発現ベクターによって発現及びディスプレイされるポリペプチドを含むポリペプチドディスプレイライブラリを提供する。
【0030】
ある態様において、本発明は、試料中の所定のリガンドを検出し、監視し、または測定するためのアッセイ法であって、本件明細書で説明されるポリペプチドを発現するために発現ベクターを誘導する工程、次いで該ポリペプチドを試料と接触させる工程、及び該ポリペプチドがリガンドと相互作用するかどうかを観察する工程を含むアッセイ法を提供する。
【0031】
ある態様において、本発明の発現ベクターのキャリアポリペプチドは、所定のアミノ酸をコードし、少なくとも1つのコドンが、該所定のアミノ酸と構造的に類似する代替アミノ酸をコードする置換コドンで置換されていることを特徴とする核酸分子によってコードされる。ある態様において、該所定のアミノ酸をコードするすべてのコドンは置換されている。ある態様において、前記生物学的実体は少なくとも1つの非正準(non-canonical)アミノ酸類似体を前記ディスプレイされたポリペプチド中に組み込む。ある態様において、所定のアミノ酸はロイシンである。ある態様において、前記代替アミノ酸はバリン、イソロイシン、またはトリフルオロロイシンである。
【0032】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両者が例示的及び説明的なもののみであり、請求の範囲にある本発明の更なる説明を提供する意図によるものでことは理解されるべきである。添付の図面は本発明の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書中に組み込まれてその一部を構成し、本発明の幾つかの態様を説明し、及び説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、複製可能な生物学的実体の外表面上に所定のポリペプチド、「パッセンジャー」ポリペプチドを効率的に発現する発現ベクターを提供する。本件明細書では「キャリア」ポリペプチドと呼ばれる、表面の接近可能なCまたはN末端に欠乏する表面局在ポリペプチドに、該ポリペプチドは連結する。
【0034】
本件明細書における、「複製可能な生物学的実体」は、細菌、酵母、原生動物及び哺乳動物細胞を含む自己複製可能な生物学的細胞、並びに、当該技術分野において公知の、これらの細胞に感染することが可能な様々なウイルス等を指す。
【0035】
本件明細書で用いられる場合、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、互いに連結する2個以上のアミノ酸を指すのに交換可能に用いられる。
【0036】
本発明によって提供されるポリペプチドは、(1)キャリアポリペプチドのエネルギー的構造安定性の崩壊を軽減し、したがって、生存能力の損失なしにパッセンジャーポリペプチドの好ましい数のコピーのディスプレイを可能にし、(2)(生物学的もしくは非生物学的)物質の任意の組成物と物理的に相互作用することが可能であり、並びに(3)対応する溶液中のフリーのポリペプチドに実質的に類似する生物学的活性(例えば、親和性、特異性、触媒、組み立て等)を示す。換言すると、ディスプレイされたポリペプチドは所定の標的分子と、該ポリペプチドがその本来の環境中にあるときと実質的に類似する方法で相互作用または結合し、生物学的実体には結合しない。
【0037】
本件明細書で用いられる場合、「融合タンパク質」は、自然には1つの発現産生物として一緒に発現することのない2つ以上の核酸分子の発現産生物を指す。例えば、自然には1つの発現産生物として一緒に発現することのないサブユニットA及びサブユニットBを含む天然タンパク質Xは融合タンパク質ではない。しかしながら、当該技術分野において公知の組換えDNA法を用いてサブユニットA及びBを1つの発現産生物として一緒に発現させ、サブユニットBに融合したサブユニットAを含む融合タンパク質を得ることができる。融合タンパク質は、異種であるアミノ酸配列、例えば、同じ起点ではないもの、同じタンパク質ファミリーではないもの、機能的に類似しないもの等を含むことができる。
【0038】
本発明によって発現及びディスプレイされるポリペプチドは、大型ながら、天然ポリペプチドまたは溶液中のポリペプチドに類似する方法で所定のリガンドに結合または相互作用する能力を依然として有するポリペプチドであり得る。本件明細書に示されるように、本発明の発現ベクターは、生物学的実体の代謝的な負荷を最小限とするために、低コピーの複製起点及び調節可能なプロモーターを用い、ポリペプチドライブラリのクローン表示はライブラリ増幅中に成長競合の影響を受けない。本発明の発現ベクターは殺菌性抗生物質に対する抗菌耐性遺伝子を用い、これはプラスミドの損失及び抗生物質に耐性である細胞の成長を防止する。加えて、本発明の発現ベクターは二重系(例えば□−ラクタマーゼ)を欠いているので、細胞成長に対して加えられる負荷がより小さく、かつライブラリスクリーニングを改善する、より小型の発現ベクターとなる。本発明の発現ベクターはSfiI制限部位も利用し、これは特定の酵素による消化を可能とし、不適切なDNA基質とは反応不可能なオーバーハングを生成する。
【0039】
本件明細書における「リガンド」は別の分子に結合する分子、例えば、抗体に結合する抗原、受容体に結合するホルモンもしくは神経伝達物質、または酵素に結合する基質もしくはアロステリックエフェクタを指し、これには天然及び合成生体分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸分子、炭水化物、糖、脂質、脂質タンパク質、小分子、天然及び合成有機及び無機物質、合成ポリマー等が含まれる。
【0040】
本件明細書における「受容体」は、(1)特定の基質の選択的結合と、(2)該結合に(例えば、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、完全断片、及び免疫グロブリンについては膜受容体との結合であり、ステロイドホルモン並びに天然及び合成生体分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸分子、炭水化物、糖、脂質、リポタンパク質、小分子、天然及び合成有機及び無機物質、合成ポリマー等)については核受容体との結合)伴う特定の生理学的効果とを示すこと特徴とする、細胞内または表面上の分子構造を指す。
【0041】
本件明細書における「特異的結合」は、所定の条件下で試料中のリガンドを認識して相互作用するが他の分子は実質的に認識も相互作用もしない受容体の特徴を指す。
【0042】
本件明細書における「核酸」または「核酸分子」はポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、並びにライゲーション、分断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエクソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成される断片を指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例えば、DNA及びRNA)、もしくは天然ヌクレオチドの類似体(例えば、天然ヌクレオチドの□−鏡像異性形態)、または両者の組み合わせで構成され得る。修飾ヌクレオチドは糖部分及び/またはピリジンもしくはプリン塩基部分に変更を有することができる。糖修飾には、例えば、1以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基での置換が含まれ、または糖をエーテルもしくはエステルとして官能化することができる。さらに、糖部分全体を立体的及び電気的に類似する構造、例えば、アザ糖及び炭環式糖類似体で置換することができる。塩基部分における修飾の例には、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、または他の公知の複素環式置換基が含まれる。核酸モノマーはホスホジエステル結合またはそのような連結の類似物によって連結できる。ホスホジエステル連結の類似物には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホラミデート等が含まれる。「核酸分子」という用語はいわゆる「ペプチド核酸」も含み、これはポリアミド骨格に結合する天然もしくは修飾核酸塩基を含む。核酸は一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。
【0043】
「単離」核酸分子もしくはポリペプチドは、その核酸分子もしくはポリペプチドが天然に生じる本来の環境とは異なる環境中にある核酸分子もしくはポリペプチドを指す。単離核酸分子もしくはポリペプチドには、所定の核酸分子もしくはポリペプチドにとって本来のものではない、ヌクレオチドもしくはアミノ酸を、少なくとも一端に隣接して(flanking)有するものが含まれる。例えば、タンパク質XのプロモーターPが、本来的にPをその5’末端に持たないタンパク質Yの5’末端に挿入される場合、タンパク質Yは「単離」されているものとみなされる。
【0044】
本件明細書に示される、本発明の発現ベクター及びライブラリの範囲には(1)キャリアポリペプチド産生のオン・オフ制御を可能にする調節可能な発現ベクターの使用、(2)高い効率のクローニングを促進するための、ランダム化部位に直接隣接する効率的な制限部位、(3)所定のリガンドに対するパッセンジャーポリペプチドを効率的に提供する、キャリアポリペプチド細胞外ループの非保存部位に挿入される無作為ポリペプチド、(4)高品質な結果を生じる、最適ディスプレイレベルを得るための時間及び温度制御誘導期間、(5)形質転換のための高いプラスミド形質転換効率を有する細菌系統の使用、最大ライブラリを構築するための最適化ライブラリ構築プロトコルの使用、(6)所定の数の宿主細胞に対してより多数の独自パッセンジャーポリペプチドを得るための複数プラスミド形質転換の使用、(7)より多数の配列(1011個)の完全な処理を可能にする細胞濃度の使用、(8)1個以上のアミノ酸を欠くキャリアポリペプチドをコードする遺伝子の使用、及び(9)それらの組み合わせが組み込まれる。
【0045】
本発明は、結合、触媒、組み立て、移送等を含む有用な、または望ましい機能を果たすペプチド及びポリペプチド配列を単離、改善または他の方法で変更する方法に広範に適用することができる。例えば、本発明の発現ベクターは、ペプチド分子変形触媒の単離、全細胞試薬の開発、自己構築を促進するペプチドの発見、薬物及び遺伝子送達用のイン・ビボ標的ペプチドの発見、物質(例えば半導体)の表面に結合するペプチドの発見及び改善、タンパク質(例えばタンパク質接点)及び生体分子網のマッピング、酵素基質/阻害剤の同定、受容体アゴニスト/アンタゴニストの同定、細菌またはウイルス病原体の阻害剤の同定、飲食作用及び細胞侵入に介在するペプチドの発見、多重マッピングを含む、抗体及びタンパク質エピトープのマッピング、非ペプチドリガンドのペプチド模倣体の同定、及び、(例えばバイオメディエーションやナノワイヤー合成のための)金属結合性ペプチドの単離などに、当該技術分野において公知の方法に従って適用可能である。Georgiou, G., et al. (1997) Nat. Biotechnol. 15(l):29-34;Pasqualini, R. and E. Ruoslahti (1996) Nature 380(6572):364-366;Whaley, S.R., et al. (2000) Nature 405(6787):665-668;Fields, S. and R. Sternglanz (1994) Trends in Genetics 10(8):286-292;Kim, W.C., et al. (2000) J. Biomol. Screen. 5(6):435-440;Yang, W.P., et al. (1995) J. Mol. Biol. 254(3): 392-403;Poul, M.A., et al. (2000) J. Mol. Biol. 301(5):1149-1161;James, L.C., et al. (2003) Science 299(5611): 1362-1367;Feldhaus, M.J., et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21(2): 163-170;Kjaergaard, K., et al. (2001) Appl. Environ. Microbiol. 67(12):5467-5473、及びShusta, E.V., et al. (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10(2):117-122(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0046】
本件明細書に示されるように、本発明の発現ベクターは、本技術分野において公知の方法に従い、選択された集団の多様性を維持しながら、コンセンサス配列の解明に用いることができる。Smith, G.P. and A.M. Fernandez (2004) Biotechniques 36(4):610-614, 616, 618;及びLowman, H.B. (1997) Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:401-424(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0047】
本発明は、幾つかの例外はあるが、典型的なファージディスプレイペプチドライブラリより約10倍大きいライブラリサイズ(約5×1010)を提供する。Deshayes, K., et al. (2002) Chem. Biol. 9(4):495-505;及びFisch, I., et al. (1996) PNAS USA 93(15):7761-7766(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0048】
本件明細書に示されるように、比較的長い15量体パッセンジャーポリペプチドは、より長いコンセンサスモチーフ及び二次構造の決定を可能にする先行技術に比して高親和性結合体が生じる頻度を高める。Nakamura, G.R., et al. (2002) PNAS USA 99(3): 1303-1308(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0049】
FACSと共に用いられる本発明の発現ベクターは、クローン親和性の細かい区別、及びこの感度を利用する定量的分離をもたらす。Van Antwerp, J.J. and K.D. Wittrup (2000) Biotechnol. Prog. 16(1):31-37;及びDaugherty, P.S., et al. (1998) Protein Eng. 11(9):825-832(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。具体的には、FACSによってもたらされる親和性の細かな区別がストレプトアビジン、CRP、及び抗T7タグMabに結合する塩基配列の単離を可能にした。さらに、ここでのディスプレイ系は、系統立てたライブラリ設計なしに高結合親和性を付与する推定ジスルフィド拘束ループを形成する、有益なシステイン置換の同定を定型的に可能にするので、20以上の異なるライブラリの構築及びスクリーニング、並びに早期研究における、単離されたリガンドの親和性を制限している重大な仮説の排除の必要性が軽減される。Giebel, L.B., et al (1995) Biochemistry 34(47): 15430-15435;Deshayes, K., et al (2002) Chem. Biol. 9(4):495-505;及びNakamura, G.R., et al. (2002) PNAS USA 99(3): 1303-1308(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0050】
例えば、ストレプトアビジンへの結合についての細菌ディスプレイ選択により、すべての選択ラウンドにおいてCxxVCリガンドに対する強い優先性が生じた。しかしながら、ファージディスプレイ技術を用いるCxxxC型ライブラリの生成及びスクリーニングを記述している報告は1つのみである。推定ジスルフィドループは、無作為に生じる可能性が1000倍低下しているものの、試験される5つの標的すべてに結合するペプチド中に存在していた。図1を参照のこと。図1は推定ジスルフィド拘束ループを有する単離配列を示す。CRP結合についての選択で得られたクローン中にはNxRGFの強力なコンセンサス配列が存在するものの、富化プールのFACSスクリーニングでは、同一のコンセンサスを有するが2個のシステインが隣接するペプチド(CRP−1)(EWA−CNDRGFNC−QLQR(配列番号1))が単離された。設計されていないジスルフィド架橋を有するペプチドの同定について報告する少数の従来の研究によれば、直鎖ライブラリは多くは非環状ペプチドを生じる。Sahu, A., et al. (1996) J. Immunol. 157(2):884-891;及びLu, D., et al. (2003) J. Biol. Chem. 12:12(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0051】
環状ペプチドはここで試験されるすべてのリガンドに対して最も高い親和性のクローンのうちに見出されたという事実は、高親和性結合におけるリガンドの剛性の重要性をさらに強調する。したがって、本発明は、高親和性環状ペプチドの定型的な単離を可能にするのに十分なサイズ及び品質の単一ライブラリの構築を提供する。内因性蛍光ライブラリを構築するため、当該技術分野において公知のリボソーム結合部位(RBS)をキャリアタンパク質、例えば、OmpX、OmpA等の下流に導入し、次いで適切な蛍光性タンパク質、例えば、alajGFPを導入することができる。Bessette, P.H. and P.S. Daugherty (2004) Biotechnology Progress 20 (1)(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。生じる細菌は、0.2%アラビノースの添加によって発現が誘導されるとき、内因的に緑色であり、パッセンジャーポリペプチドをNまたはC末端誘導タンパク質としてディスプレイする。図7を参照のこと。その代わりに、蛍光性タンパク質が最初に発現し、次いでRBS及び順序置換OMP配列が発現するように順序を反転させることもできる。
【0052】
約10〜約100倍高い親和性を有する配列は、非コンセンサス残基のランダム化及び(ビオチンを競合体として用いる)動的FACS選択によって得ることができる。ストレプトアビジン結合性ペプチドを遺伝的にコードされたビオチン模倣体として用い、タンパク質をビオチンで化学標識する必要性を排除することができる。したがって、このプロセスを用いて選択及び親和性熟成されたストレプトアビジン結合性ペプチドを、当該技術分野において公知の組換え法を用いて、少なくとも1つの所定の核酸分子のCまたはN末端に融合させることができる。核酸分子の発現は通常用いられる親和性試薬、ストレプトアビジン、に結合することが可能なCまたはN末端ペプチドタグを有するポリペプチドを生成し、それは単にビオチンを添加することによって試薬から溶離することができる。
【0053】
本発明のポリペプチドディスプレイ系は、この方法が技術的に到達可能であり、かつライブラリが再使用可能であるため、専門化されていない実験室における再生可能な全細胞結合性試薬の創出を可能にする。このアプローチは、既に、細胞特異的結合性ペプチドの選択、並びにフローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡法を用いる診断アッセイの実施に有用であることが立証されている(未公開データ)。さらに、表面ディスプレイされたポリペプチドは平行もしくは多重リガンド単離に用いることができ、クローンは多くの細胞選別機に存在する効率的な単一細胞沈殿ユニットで処理することができる。Feldhaus, M.J., et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21(2): 163-170(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。したがって、本発明の発現ベクターは、タンパク質検出アレイ開発のためのプロテオーム規模のリガンドスクリーニングを含む、プロテオーム的な適用において用いることができる。Kodadek, T. (2001) Chem. Biol. 8(2): 105-115(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0054】
A.OmpAループ1発現ベクター
「細胞表面ディスプレイ」系の目的は生細胞上のポリペプチドをあらゆるサイズ及び分子組成の細胞外標的にディスプレイすることであるが、先行技術におけるLppOmpA’、周辺質ディスプレイ(PECS)、及び係留周辺質発現(APEx)系はこの目的を可能にすることができない。Stathopoulos, C., et al. (1996) Appl. Microbiol. & Biotech. 45(1-2): 112-119;Lang, H. (2000) Int. J. Med. Microbiol. 290(7):579-585;Lang, H., et al. (2000) Eur. J. Biochem. 267(1):163-170;Lang, H., et al. (2000) Adv. Exp. Med. Biol. 485:133-136;及びChen, G., et al. (2001) Nat. Biotechnol. 19(6):537-542;Harvey, B. et al (2004). PNAS. 101(25) 9193-9198(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。LppOmpA’を用いる表面ディスプレイは、必ずしも必要とされるわけではないが任意の細胞外標的への結合を可能にする方法での、大腸菌の外膜にポリペプチドを局在化するのに遺伝的融合を使用することを指す。周辺質ディスプレイ及びLppOmpA’を用いる外膜局在化は、希少な例を除いて、細胞外巨大分子への結合と両立する方法でディスプレイタンパク質をもたらすことはない。Francisco, J.A., et al. (1992) PNAS USA 89(7):2713-2717;Stathopoulos, C., et al. (1996) Appl. Microbiol. & Biotech. 45(1-2):112-119;Francisco, J.A., et al. (1993) PNAS USA 90(22):10444-10448; Francisco, J.A.., et al. (1993) Bio/Technology 11(4):491-495;Francisco, J.A. and G. Georgiou (1994) Annals NY Acad. Sci. 745:372-382;及びGeorgiou, G., et al. (1993) Trends In Biotechnology 11(1):6-10(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0055】
これら先行技術の系の両者においては、ディスプレイされたタンパク質は外膜を貫通する分子、例えば、小さくて典型的には疎水性の分子とのみ相互作用することができ、あらゆる公知のタンパク質または巨大分子と相互作用することはできない。これは、広範囲の商業的及び医学的に重要な用途、例えば、タンパク質診断、検出、及びプロテオミクス、細胞アレー構築、細胞ターゲッティング、全細胞を用いる物質科学及び物質表面官能化等における先行技術の系の適用を不可能にする。膜ターゲッティング配列、例えば、シグナル配列及び及びLppのアミノ酸1−9による表面局在化は膜破壊を生じ、したがって、細胞の成長速度及び生存能力を低下させる。タンパク質ライブラリスクリーニングへの周辺質発現(PECS)または係留周辺質発現(APex)の適用は、細胞死を生じる標的リガンドを添加する前に細胞膜を除去することを必要とする。次に、細胞内に含まれるプラスミド上のポリペプチドをコードする遺伝子を単離し、PCR増幅して対応するポリペプチドをコードする遺伝子を回収し、ライブラリ富化及び反復スクリーニングもしくは選択のため発現ベクターにサブクローニングしなければならない。したがって、このアプローチは本発明の系よりも非常に遅く、最も経費がかかり、有効性に劣る。
【0056】
対照的に、ここで例示される本発明のOmpAループ1発現ベクター、MC1061/pBAD33L1はOmpAの第1ループのもほぼ最遠点にポリペプチドをディスプレイし、これは大腸菌のリポ多糖表面からの距離を増大させ、それにより標的要素、例えば、タンパク質とディスプレイされたポリペプチドとの静電気的相反及び立体的妨害を減少させ、かつ巨大分子、無機表面、及び細胞表面の効率的な認識をもたらす。MC1061/pBAD33L1は、LMG19/pB30Dを用いる従来報告されるベクターとはこの系の機能を変化させる幾つかの重要な側面で異なる。Daugherty, P.S., et al. (1998) Protein Eng. 11(9):825-832;Daugherty, P.S., et al. (1999) Protein Eng. 12(7):613-621;Daugherty, P.S., et al. (2000) J. Immunol. Methods 243(1-2):211-227;及びDaugherty, P.S., et al. (2000) PNAS USA 97(5):2029-2034(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0057】
本発明の発現ベクター及びライブラリはモノマー性外膜タンパク質の細胞外ループ(例えば、OmpA及びOmpX)を利用し、これは任意組成の物質に接近可能であり、外膜において高レベルで産生されて最良かつ好ましい方式の選択及びスクリーニングを可能にすることができる。ポリペプチドをコードするDNA配列は、細胞外環境に露出されるループの最遠点に対応するOmp遺伝子内に遺伝学的に挿入される。幾つかの好ましい態様においては、これは、第2図に示されるように、LIGQ−(X)n−NGPT(配列番号2)(式中、Xはアミノ酸であり、nは正の整数である)間のOmpAの第1細胞外ループ内に存在する。対照的に、LppOmpA46−159(LppOmpA’)は、アミノ酸159でのOmpAタンパク質の切り詰めから生じる、新たに生成されたC末端への融合を利用する。本発明の挿入的融合の利点は、それが外膜タンパク質の位相幾何的構造全体の安定性を保存することである。隣接するベータ鎖が分子相互作用を維持し、それがOmpの樽型構造に安定性を付与するため、構造が本発明の構成において保存される。その上、OmpAにおける挿入部位は、置換、したがって挿入に対して寛容を示すループ内の非保存配列を考慮することによって設計される。
【0058】
高度に多様なポリペプチドディスプレイライブラリの構築を可能にするため、OmpAの2つの可動性ループを、15アミノ酸エピトープをディスプレイするそれらの能力について比較した。図3を参照のこと。大腸菌OmpAをディスプレイ足場として選択したが、これは(1)それがモノマー性であり、特定の条件下で外膜内に高レベルで生成可能であり;(2)X線結晶学及びNMRを用いて決定された構造が柔軟な細胞外ループの存在を示し、及び(3)ループ挿入を許容することが示されているためである。Pautsch, A. and G.E. Schulz (2000) J. Mol. Biol. 298(2):273-8229;Arora, A., et al. (2001) Nat. Struct. Biol. 8(4): 334-830;Freudl, R. (1989) Gene 82(2):229-3631;Mejare, M., (1998) Protein Eng. 11(6):489-9432;Etz, H., et al. (2001) J. Bacteriol. 183(23):6924-6935(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0059】
本発明のディスプレイ系の挿入部位は広範囲のタンパク質及びペプチド配列の移出を妨害せず、その上構造安定性を保持する。ループ1及び4は比較的柔軟であると考えられるため、それらが構造安定性に有害に衝撃を与えることはありそうもないことは筋が通っていた。したがって、T7遺伝子10の11アミノ酸エピトープ(T7タグ)(MASMTGGQQMG)(配列番号3)を含む15量体挿入的融合体を、各々のループにおいて、OmpA相同体のうちで保存性に劣る配列領域内の細胞表面から最も離れた位置に作製した。ビオチニル化抗−T7タグモノクローナル抗体(mAb)での全細胞の標識とそれに続くストレプトアビジン−フィコエリトリン(SAPE)での二次標識は、両ループが異なる効率でT7エピトープをディスプレイすることが可能であることを示した。
【0060】
残基150の後でのループ4への挿入は、蛍光シグナルが背景細胞自己蛍光を約2倍上回るだけであったため、比較的低いレベルのディスプレイを生じた。他方、残基26の後でのループ1エピトープ挿入(図3)は効率的なT7タグディスプレイを生じ、細胞はフローサイトメトリーによる測定で背景対照細胞を300倍上回る蛍光の増加を示した。これらの実験はompA+であるMC1061株において行ったが、加工されたOmpAの過剰発現は容易に検出可能であり、他の方法での同遺伝子型ompA−宿主における改善はなかった。
【0061】
実施例1において示されるように、本発明のOmpAループ1発現ベクターの重要な特徴の1つは所定のポリペプチドがOmpAの第1細胞外ループ内に位置することであり、これは(1)OmpA樽型構造の安定性全体を維持するのに隣接する□−鎖が必要であるため、OmpAの位相幾何学的構造全体の安定性が保存され、(2)ポリペプチドが宿主細胞膜の外表面上に適正に発現し、及び(3)より大きなポリペプチドを発現させることができるために重要である。OmpAループ1発現ベクターを用いるポリペプチドの発現及びディスプレイは毒性作用因子に対する膜透過性の低下(野生型様)を示し、これは生存能力及び成長速度を改善する。
【0062】
ここで例示されるOmpAループ1発現ベクターにおいては、発現させようとするポリペプチドをコードするDNA配列を、アミノ酸残基N25及びN27(ナンバリングは成熟タンパク質に対するものである)をコードする天然OmpA配列の間に挿入する;しかしながら、ループ1内に他の挿入部位を有するOmpAループ1発現ベクターが考慮され、本発明に従って構築できることを注記する。表1を参照のこと。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明の好ましい態様において、OmpAループ1発現ベクターはOmpAの第1ループのほぼ最遠点上にポリペプチドをディスプレイされ、これにより宿主細胞のリポ多糖表面からの距離が増大するので、標的要素(例えばタンパク質)とディスプレイされたポリペプチドとの静電気的相反及び立体的妨害が減少する。本発明のある態様においては、発現ベクターの核酸配列が(保存性アミノ酸置換でSfiIを導入するため)N25Qに変更され、N26の核酸配列は削除された。
【0065】
所定のポリペプチドの好ましい挿入部位の幾つかは、結晶構造、配列、NMR構造の解析を含む当該技術分野において公知の方法を用いて決定し、次いで一般の抗エピトープ抗体(例えばT7抗体、抗−c−myc、抗−HA、抗−FLAG)を用い、認識可能であると知られているペプチドエピトープを用いて試験することができる。遺伝子挿入のための理想的な部位の一例は、残基Asn−Asn−Asn(配列番号14)の間の大腸菌OmpAの第1細胞外ループである。
【0066】
他の挿入部位としてはループ1 OmpA相同体が挙げられ、これは非保存領域を同定するための多重配列アラインメントによって同定することができ、好ましくは、ディスプレイされるタンパク質が細胞の外膜から約1nMを上回って位置するように決定される。例えば、表1を参照のこと。
【0067】
本発明の発現ベクターの他の特徴には、(1)OmpAシグナル配列の使用、(2)一方が挿入部位に直接隣接するOmpAループ1内に位置し、第2の非対称SfiIが任意の距離ではあるが第1のSfiIに対して挿入部位の反対に位置する2つのSfiI制限部位、(3)殺菌性抗生物質(例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)の単一耐性遺伝子、(4)低レベル発現のための低コピー複製起点(例えばp15A)及び(5)転写を制御するための調節可能なプロモーター(例えばaraBADプロモーター)が含まれる。
【0068】
1.OmpAシグナル配列
pBAD33L1は、LppOmpAにおいて用いられるLppリーダー配列ではなくOmpAシグナル配列を利用することにより、内膜を通過する分泌を最適化する。
【0069】
2.制限酵素(SfiI)開裂部位
本件明細書に示されるように、ベクターの設計は2つのSfiI部位をOmp読み取り枠内に直接取り込み、かつ、好ましいサイズ(約108〜約1012)のライブラリの効率的な構築及び使用を可能にする最小化されたサイズを提供する。具体的には、pBAD33L1はOmpAループ1及び4内に直接設計されたSfiI制限部位を含むため、クローン化遺伝子を高い効率で挿入し、大きなライブラリを構築することが可能となる。
【0070】
このSfiI制限部位は、特定の酵素で消化することができるが正しくないDNA基質とは反応することができないオーバーハングを生成する核酸分子(例えば、制限酵素、SfiIによって認識されるGGCCXXXXXGGCC(配列番号15)の、ディスプレイ分子が挿入される部位(挿入部位)の約1〜約50bp上流の導入、及び挿入部位の約300〜約1500bp下流の距離にある部位GGCCXXXXXGGCC(配列番号15))の導入を可能にする。この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応において用いられて十分な数の無作為DNA断片を創出する、同じSfiI配列を組み込んだ合成ランダム化オリゴヌクレオチドの使用を可能にする。
【0071】
3.殺菌性耐性遺伝子
pBAD33L1は、cat及びベータラクタマーゼの両者ではなく、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする1つの耐性遺伝子のみを含む。そのため、プラスミドpBAD33L1はより小さく、それによりpB30Dよりも高い形質転換効率をもたらす。重要なことには、そのサイズ及びベータ−ラクタマーゼを有していないことにより、発現pBAD33L1が細胞の成長に強いる負荷は従来のベクターよりも小さいため、ライブラリスクリーニングが改善される。さらに、選択に殺菌性抗生物質を用いる能力は、プラスミドの損失及びその抗生物質に対して共通に耐性である細菌細胞の成長を防止するために好ましい。
【0072】
4.低コピー複製起点
p15A複製起点を利用する低コピープラスミドの使用により、細胞生存能力の大きな低下を伴わない発現が可能となった。図4を参照のこと。対照的に、pMB1起点を有する類似のディスプレイベクターは、高レベルの発現をもたらしたものの、誘導後ほどなく細胞成長の急激な停止を生じた(データ示さず)。ある態様においては、ディスプレイされるタンパク質の発現は、ライブラリの多様性を減少させ、かつ選択を妨害するクローン競合を防止するため、細胞成長を妨害することがない。低コピープラスミド使用の代替として、より高コピーのプラスミド、例えば、pMB1複製起点を含むプラスミドを、転写活性を低下させたプロモーターと組み合わせて用いることができた。
【0073】
5.調節可能なプロモーター
本発明の発現ベクターは、転写を調節するため、厳密に制御されたプロモーターを組み込む。本件明細書で例示されるように、用いられるプロモーターは大腸菌のアラビノースaraBADオペロンに由来するものである。Guzman, L., el al. (1995) J. Bacteriol. 177(14):4121-4130;Johnson, C.M. and R.F. Schleif(1995) J. Bacteriol. 177(12):3438-3442;Khlebnikov, A., et al. (2000) J. Bacteriol. 182(24):7029-7034;及びLutz, R. and H. Bujard (1997) Nucleic Acids Res. 25(6): 1203-1210(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。タンパク質産生は糖L−アラビノースを添加することによって開始され、アラビノースの除去及びグルコースの添加によって停止される。調節は、選択またはスクリーニング工程前後の成長の間の、希な望ましい標的細胞のディスプレイ頻度における望ましくない変化を防止する。
【0074】
厳密に調節可能なプロモーターの使用により、成長の間の穏やかな毒性配列の損失が防止され、完全なライブラリ多様性が維持され、かつ1回の富化効率が改善される。Daugherty, P.S., et al. (1999) Protein Eng. 12(7):613-621(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。araBADオペロンに由来するアラビノース誘導性プロモーターの使用により、ライブラリ拡張の間のアラビノース不在下での厳密な抑制及び誘導物質飽和条件の下でのペプチド挿入の表面ディスプレイの再現可能な誘導が可能となる。細胞死または生業阻害が最小である高レベルディスプレイ(データは示さず)が誘導の約1〜約4時間後に得られた。次の実験においては、潜在的な毒性を最小化するため、選択またはスクリーニングの前に典型として約2時間の誘導期間を適用した。
【0075】
(1)スクリーニング前後のライブラリ拡張の間、発現の厳密な抑制をもたらし、かつ(2)磁性粒子の結合を可能にするか、またはフローサイトメトリー機器を用いて検出されるような、適度の発現をもたらす、あらゆるプロモーターを本発明に従って用いることが可能であった。代替的態様においては、潜在的に望ましい発現レベルの範囲にわたって発現の「加減」制御を可能にする変調性プロモーターを用いることができる。そのようなプロモーターの例には、構成性アラビノース輸送体タンパク質の同時発現を伴うaraBAD系が含まれる。Khlebnikov, A., et al. (2000) J. Bacteriol. 182(24):7029-7034(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0076】
実施例1において開示されるように、OmpAループ1発現ベクターのライブラリ構築のため、各々の位置でのすべての可能なアミノ酸(NNS変性コドンを用いる)を許容しながら、約15コドンの長さを有するように挿入体を選択した。細胞表面からの物理的距離の増加に加えて、より長い挿入体のライブラリ(例えば15量体)は、より長い結合性モチーフの出現を許容しながら短い配列のより多くのコピーを提供する利点をもたらす。約5×1010の独立した形質転換体を有する得られたライブラリにより、15量体に利用可能(0.0000002%)ではあるがすべての可能な7量体配列を含むことが期待される(約99%を上回る信頼性)配列スペースの僅かなサンプリングが提供される。
【0077】
本発明のある態様においては、好ましくは約108を上回る配列、好ましくは約1010を上回る独自配列メンバーを含むDNAライブラリを、当該技術分野において公知の方法を用いて構築する。このライブラリサイズは、ライブラリサイズが選択された配列の品質(親和性及び特異性)と相関することが示されているため、好ましい。Griffiths, A.D. and D.S. Tawfik (2000) Curr. Opin. Biotechnol. 11(4):338-53(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0078】
ある態様においては、長さが約1〜約1000、好ましくは約2〜約30アミノ酸を有するポリペプチドをコードする核酸配列の導入及び発現によってポリペプチドライブラリを調製することができる。本件明細書に示されるように、本発明は、形質転換の間、μlあたり約0.1μgを上回る高いDNA濃度を用い、これにより各々の宿主細胞において1つ以上の独立したプラスミドが生じる。この多重プラスミド形質転換工程は同じ容積の液体中により多数の独自ペプチドを生じ、細胞あたり1分子のみをもたらす先行技術の方法よりも良好な全体結果をもたらす。ある態様においては、複数の異なる発現ベクター及び/またはプラスミドの混合物を用い、同じ表面上の二つの異なるディスプレイペプチドの共同結合を提供し、複数のサブユニットを有するタンパク質をディスプレイする、等を行うことができる。
【0079】
異なる目的のために、異なる数のポリペプチドを表面上にディスプレイさせることができる。例えば、本発明の方法は、ディスプレイポリペプチドの全発現レベルを制御するための約10分〜6時間の誘導期間及び発現のレベルが、細胞の成長速度に測定可能な影響を与えないような、引き続くスクリーニングまたは選択の方式を用い得る。図4を参照のこと。ある態様においては、高親和性一価相互作用(high affinity monovalent interactions)の選択を可能にするため、より短い期間を用いて結合活性効果を低下させることができる。本件明細書に示されるように、ディスプレイを制御する能力は工程を加速し、かつ、より高品質な結果(例えば、より高い親和性で標的に結合する配列)を生じる。
【0080】
ある態様において、約10倍の細胞濃度を用いることにより、約10〜約100mlの容積の多様性を有するプール全体の完全な処理を可能とすることができる。ライブラリは、ライブラリ要素の合成を防止する条件下(例えば、araBADまたはlacプロモーターを抑制するグルコースの使用)で、約100倍を上回る増殖によって拡張することができ、ライブラリの分取標本(aliquot)を調製して、ライブラリ構成要素の総数を約3倍を超えて上回る多数のクローンの代わりとすることができる。図5を参照のこと。
【0081】
ライブラリ選択のため、無作為に分割されるか、もしくは特定の特性に基づいて選択される、全ライブラリのサブセットを、スクリーニングの出発点として用いることができた。当該技術分野において公知のMACSまたはFACS法のいずれかを、MACSとFACSとの連続適用の代わりに用いることができる。FACSの代わりとして、望ましいクローンの物理的保持及び望ましくないクローンの希釈もしくは除去を可能にする当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、ライブラリを連続成長をもたらすケモスタット内で成長させ、容器内に保持される捕捉作用物質に結合しない細胞のみを希釈分離することができる。代替として、宿主を、望ましいクローンの成長を促進する成分を有する培地で培養することもできる。
【0082】
遺伝的多様性を得るのに無作為合成ペプチドを用いる代わりに、様々な長さのゲノムDNA断片、様々な長さのcDNA、混合DNA、及びコンセンサス生成配列を本発明に従って用いることができる。
【0083】
天然アミノ酸では現れない機能性(例えば、金属結合性、光活性、化学的機能性等)を有する非天然アミノ酸を、適切な宿主を用いて、表面上にディスプレイすることができる。この場合、そのライブラリまたは等価ライブラリは、非天然アミノ酸を産生するように設計された系統へ形質転換することができる。Kiick, K.L. et al. (2001) FEES Lett. 502(l-2):25-30;Kiick, K.L., et al. (2002) PNAS USA 99(1): 19-24;Kirshenbaum, K., et al. (2002) Chembiochem. 3(2-3):235-237;及びSharma, N., et al. (2000) FEBS Lett. 467(1):37-40(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。非天然アミノ酸を組み込むペプチドは、ディスプレイポリペプチド内へのその非天然モノマーの包含を必要とする機能に基づく選択またはスクリーニングによって単離する。
【0084】
ディスプレイポリペプチドは、スクリーニング及び選択に用いられる株(例えば、MC1061またはそれに匹敵する宿主株)に望ましい修飾を加える遺伝子または遺伝子の組を導入することによって、グリコシル化、リン酸化、ヒドロキシル化、アミド化等を含む翻訳後修飾を含むように作製することができる。そのような翻訳後修飾を行う遺伝子は、cDNAライブラリまたはゲノムライブラリから、該ライブラリを用いる同時形質転換及び望ましい機能についてのFACSまたは他の適切な方法を用いるスクリーニングによって単離することができる。例えば、翻訳後グリコシル化活性(酵素)は同時形質転換を生じる。
【0085】
キャリアタンパク質によってディスプレイされるポリペプチドは、キャリアタンパク質(例えば、OmpA、OmpX等)の折り畳み及び搬出を維持する長さを有しつつ、重要な配列及び多様性を有する構造を提示する事が好ましい。ある態様においては、キャリアタンパク質(例えば外膜タンパク質(Omp))を、合理的な再設計または当該技術分野において公知の定方向性進化法によって修飾し、ディスプレイのレベルを増加させ、またはポリペプチド提示を改善することができる。例えば、無作為点またはカセット突然変異誘発及び改善された提示についてのスクリーニングによって、キャリアタンパク質を最適化することができる。ディスプレイを必要としない配列(例えばOmpAのC末端ドメイン)は、代謝負荷を最小化し、かつ全ディスプレイレベルを改善する目的で、ディスプレイキャリアタンパク質から除去することができる。
【0086】
ある態様においては、代替的Omp(例えば、OmpX、OmpF、LamB、OmpC、OmpT、OmpS、FhuA、FepA、FecA、PhoA、及びTolC)をキャリアタンパク質として用いることができる。当該技術分野において公知であるエピトープ挿入アッセイ(ここではOmpA、OmpX、及びCPXポリペプチドへのT7タグペプチドの挿入によって例示される)を用いて、前記表面にディスプレイをもたらす適切なパッセンジャー挿入部位を同定することができる。当該技術分野において公知の成長アッセイを用いて、ディスプレイの結果として成長速度または生存能力を変化させることのない挿入部位を同定することができる。図4を参照のこと。
【0087】
多量体膜タンパク質は、天然形態で多価ディスプレイ(例えば三量体OmpF上の3つのペプチド)に用いるか、または一量体に加工してOmpA、OmpX、もしくはOmpTを模倣させることが可能である。図2及び図6を参照のこと。しかしながら、好ましい態様においては、ディスプレイは一量体タンパク質(例えば、OmpA、OmpX、またはOmpTの触媒的に不活性な変異体)によるものであり、細胞表面で細胞当たり10,000を超えるコピーを示す。
【0088】
ある態様においては、代替タンパク質である足場タンパク質(scaffold protein)を用いてディスプレイしようとするパッセンジャーポリペプチド(例えばランダムペプチド)を提示することができる。例えば、緑色蛍光タンパク質またはアルファらせん束状タンパク質、ノッチン(knottins)、環状ペプチドのアシル順序置換体(例えば、Kalata−B1)をスペーサー及び足場要素として、または複数の相加もしくは相乗機能(例えば、蛍光及び結合、結合及び触媒性形質転換、結合及び組み立て等)を得るのに用いることができる。図7を参照のこと。
【0089】
本件明細書で例示されるように、本発明は細菌株MC1061を利用し、これは(1)DNAのマイクログラム当たり約5×109を上回る高いプラスミド形質転換効率、(2)対数増殖期中の短い倍増時間、すなわち、40分以下、(3)所定のポリペプチドの高レベルのディスプレイ、及び(4)発現のオン及びオフ状態の有効な維持を示す。図3、図4、及び図5を参照のこと。ある態様においては、当該技術分野において公知の代替生物学的実体を用いることができる。好ましい態様においては、生物学的実体は、タンパク質変性を防止するため、タンパク質分解機構を欠いている。Meerman, H.J., Nature Biotechnol. 12(11): 1107-1110(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。ある態様においては、切り詰められているか、または他の方法で修飾されているリポ多糖をその表面上に生成する生物学的実体を用いて、タンパク質、ウイルス、細胞等を含む大型生体分子に結合する際の立体的影響を最小にすることができる。ある好ましい態様においては、生物学的実体は、ディスプレイしようとするポリペプチドの産生をより厳密に調節する上で発現ベクターに助力する遺伝子型を有する。生物学的実体は、無作為突然辺誘発、DNAシャフリング、ゲノムシャフリング、遺伝子付加ライブラリ等を含む、当該技術分野において公知の方法を用いて改変することができる。
【0090】
本件明細書に示されるように、ポリペプチドの発現及びディスプレイは、アラビノースと、好ましくは約10〜60分、より好ましくは約10〜20分、25℃で接触させることによるタンパク質発現の誘導によって達成することができる。発現及びディスプレイの制御により、ディスプレイされるペプチドの表面濃度の過剰により生じ得る潜在的な結合活性効果が最小化される。細胞をLB培地において一晩、または約1〜約3時間成長させ、約4〜約37℃で約5分〜5時間、好ましくは、約25℃で約10〜20分間誘導した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、ビオチン結合標的タンパク質と共にPBS中に再懸濁させた。次に、それらの細胞を1回洗浄して望ましくない非結合タンパク質及び他の残滓を除去し、蛍光性のビオチン結合性試薬(好ましくは、ストレプトアビジン−フィコエリトリン(Molecular Probes、Eugene、OR)等)と共にインキュベートした。次いで、非結合蛍光試薬を洗浄によって除去し、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。外来タンパク異質またはペプチドをディスプレイする細胞は非ペプチドディスプレイ細胞、すなわち、細胞の自己蛍光よりも約8〜200倍、好ましくは、約8〜20倍強い蛍光強度を有し、これは結合活性効果を生じない適度のディスプレイレベル(約1000〜10,000コピー)を示す。
【0091】
本件明細書で示されるように、MC1061/pBAD33L1の使用により大きなランダムライブラリから直接選択されたペプチドにおける最適ジスルフィド結合配置の同定が可能となり、選択されたリガンドの親和性が増加し、安定性(例えばイン・ビボでの血清安定性)を必要とする用途に対する有用性がもたらされる。本発明のディスプレイ系は、高結合親和性で標的リガンドと結合するペプチドと比較して単純かつ高速(例えば2日)での単離をなしうる、磁気選択の使用を可能とする。
【0092】
実施例1において示されるように、ディスプレイポリペプチドが所定のリガンドに結合する能力を試験した。5種類の無関係の標的タンパク質である、既知エピトープに結合するモノクローナルIgG抗体(抗T7タグmAb)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ヒトC反応性タンパク質(CRP)、ストレプトアビジン、及びHIV−1 GP120を選択した。試験した5種類のタンパク質標的に対して、磁気選択は、非結合性クローンからのペプチド結合性タンパク質をディスプレイするクローンの富化を可能にした。まず、ストレプトアビジン官能化磁性粒子を用いる1回の磁気選択を用いて、多量のストレプトアビジン結合性ペプチドをライブラリから枯渇させた。残留する細胞をビオチニル化標的タンパク質と、次いでビオチン結合性磁性粒子と共にインキュベートし、標的タンパクが結合した細胞を捕捉した。磁気選択の各サイクルの後、選択された集団を増幅するため一晩成長させた。
【0093】
フローサイトメトリーを、ストレプトアビジン−フィコエリトリンまたは蛍光性結合抗ビオチン抗体のいずれかを蛍光プローブとして用いる磁気選択の進行の監視に用いた。図9を参照のこと。試験した5種類の標的の各々について、結合体の有意の画分を含む集団を富化するのに1または2回の磁気選択で十分であった。抗T7タグmAb結合についての選択の場合には、結合性ペプチドを50,000のうちの約1の初期頻度からその集団の約50%まで富化するのに1サイクルで十分であった−約25,000倍の1回富化。T7タグmAb結合性クローンの初期頻度は、おおよそ約2×105独自ペプチド配列が10nMの標的濃度を用いたときに結合可能であったことを示した。
【0094】
ライブラリ集団内の標的タンパク質結合性ペプチドの頻度は異なる標的の間で著しく変化することが見出され、ライブラリが幾つかの抗原の結合により「適合」したことが示唆された。標的結合性細胞の最高頻度は抗T7タグmAbで観察された。同様に、陽性細胞の最高初期頻度はストレプトアビジン及びCRPを標的として用いたときに観察された。他方、GP120結合性クローンの頻度の低下(約1:106未満)が非選択ライブラリにおいて観察され、これは、おそらく、この標的の表面が濃密にグリコシル化された状態であることを反映するものである。ライブラリにおける標的結合性クローンの頻度は、分子認識に関与する特定の重大モチーフの出現確立と一致した。例えば、抗T7タグmAb選択においては、結合性クローンの初期頻度(2:105)は同定された「核」モチーフMxP(x/−)QQの約2:105の期待される頻度と一致する。同様に、CRP選択については、コンセンサスモチーフ、NxRGF、はおおよそ約5:105の頻度で出現するものと期待される。したがって、スクリーニングに先立つライブラリ集団の細胞数測定分析は、標的タンパク質結合性ペプチドの期待される頻度に関する有益な統計的情報を提供する。
【0095】
約105〜107の独自配列を表すものと見積もられる、磁気的に富化された集団(図3)から最も親和性の高いクローンを単離するために、細胞ソーティング計測を定量的ライブラリスクリーニングのツールとして適用した。上記説明のように、平衡結合親和性(平衡スクリーニング)または解離速度定数(動的スクリーニング)のいずれかに基づく、2種類の根本的に異なるアプローチを、定量的スクリーニングに適用した。Daugherty, P.S., et al. (2000) J. Immunol. Methods 243(1-2):211-227及びBoder, E.T. and K.D. Wittrup (1998) Biotechnology Progress 14(l):55-62(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。ほとんどの場合において、平衡スクリーニングに適当な抗原濃度は、一連の異なる標的タンパク質濃度で標識した後の約106クローンの細胞数測定分析によって決定された。
【0096】
平衡スクリーニングのため、制限された濃度の標的タンパク質で細胞集団を標識し、バックグラウンド自己蛍光を上回る蛍光強度を示す細胞を収集した。図8を参照のこと。許容の基準としては、ソート窓(sort window)の強度下限ではなくリガンド濃度を用いた。ストレプトアビジン選択の場合には、遊離ビオチンを競合体として用いて動的スクリーニングを行った。ビオチンの不在下で、ストレプトアビジン結合性ペプチドは、おそらくは再結合効果のため、実質的に遅い解離速度を示した。単離されたクローンの見かけの結合親和性はスクリーニングに用いた抗原濃度から一般に予測可能であった。典型的には、見かけの解離定数はスクリーニングに用いたリガンド濃度よりほぼ10倍高いものであった。表2を参照のこと。
【0097】
【表2−1】

【表2−2】

【0098】
表2は、ストレプトアビジン、CRP、HSA、及びGP120に結合する単離されたクローンのペプチド配列を示す。配列はClustal Wアルゴリズムを用いて整列させた。コンセンサス残基を各群の下に示す。選択されたクローンについては、フローサイトメトリーによって測定された見かけの全細胞KDを示す。
【0099】
コンセンサス配列は、2〜3回の磁気選択及び1もしくは2回のFACSの後、標的タンパク質の各々について容易に明らかとなった。表2、図9を参照のこと。1個のクローンにおいて抗T7タグmAb結合について最強のコンセンサス配列を、ライブラリにおける該クローンの頻度は1:1010という低さでありながら、7残基SMGPQQM(配列番号59)に伸長した。ある抗T7タグmAb結合体(図9)は野生型T7タグ配列と7つの同一性及び1つの類似性を有していた。コドン使用法を考慮すると、そのようなクローンは1010のうち約1未満の頻度で出現するものと予想される。HSA及びHIV−1 GP120結合のコンセンサス配列は、数個の疎水性残基、及び1もしくは2個のシステイン残基を有する高頻度のクローンを含んでいた。同じ場合において、FACSはコンセンサス配列を組み込む推定環状ペプチドの富化及び単離を生じた。例えば、厳密なFACSスクリーニングからの最高親和性CRP結合性クローン(CRP−1、表2)はシステインが隣接するコンセンサス−CNDRGFNC(配列番号60)を有していた。同一のジスルフィドループ(CQNVC(配列番号61))を有する2つのストレプトアビジン結合性クローンが4倍異なる解離速度定数を有するため、環状拘束コンセンサスの外側の残基も機能の改善に貢献する。図10Bを参照のこと。視認可能なコンセンサス配列の全長は、抗T7タグmAb(SMGPQQMXAW(配列番号:62)もしくはSMGPQQMAW(配列番号63))またはCRP(IXNXRGFXXXV(配列番号64))について約10もしくは約11残基にも渡り、より短い挿入体を有するライブラリは匹敵する親和性を有するペプチドを生じていないか、または等価のエピトープマッピング情報をもたらしていないことを示唆する。
【0100】
選択されたペプチドのサブセットの見かけの結合親和性をフローサイトメトリー分析を用いて決定した。この方法はKD及びKdiss値の両者の信頼できる推定を可能にすることが示されている。Daugherty, P.S., et al. (1998) Protein Eng. 11 (9):825-832(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。重要なことには、フローサイトメトリーを用いて得られた選択クローンの相対親和性順位が、表面プラスモン共鳴を用いて決定された該順位と等価であることが示されている。Daugherty, P.S., et al. (1998) Protein Eng. 11(9):825-832; and Feldhaus, M.J., et al. (2003) Nat. Biotechnol. 21(2): 163-170(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。見かけの平衡解離定数(図10A)は、典型的には、蛍光性結合CRP及びSAを用いる決定で、低ナノモル範囲(KD=1〜10nM)(表A)内にあった。同様に、最良のGP120結合性クローンは10nM GP120とのインキュベーションの後に高い蛍光を示し、これはKDが約10nM未満であることを示す(データは示さず)。見かけの解離速度定数(Kdiss)は、ストレプトアビジンについて、再結合を防止するために約1〜2uMのビオチンを競合体として用いて決定した。
【0101】
速度定数は、2サイクルのMACS及び1サイクルのFACS後の約0.01s-1(クローンSA−7〜SA−11)から、更なる回数のスクリーニング後の約0.001s-1(クローンSA−1〜SA−6)までの範囲であることが見出された。多量体標的タンパク質に結合する表面ディスプレイペプチドの潜在的な結合活性効果を除外しなかったにもかかわらず、解離動態は単純対数減衰との優れた一致を示し(図10B)、ほぼ1:1の結合化学量論が示唆された。さらに、最良のクローンの見かけの平衡解離定数(KD=4nM)は、Kassoc値を約5×105-1-1と仮定した0.001s-1の観察されたKdissと定性的に一致する。Giebel, L.B., et al. (1995) Biochemistry 34(47): 15430-15435(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0102】
(1)潜在的なジスルフィド安定化クローン、(2)非常に希なクローンへのコンセンサスの拡張、すなわち、無作為に選択されたクローンが野生型と同一の7個のアミノ酸を有する確立が570万のうちの1であること、を含む興味深い特徴が観察された。このデータは、更なる回数のソーティング(sorting)により平均親和性がさらに改善されることも示唆する。これらのクローンの親和性は野生型より高い。僅か33pMの抗原を用いて得られた親和性の最も高いクローンは7個までのコンセンサス残基及び野生型ペプチドよりも10倍高いT7抗体に対する親和性を有していた。したがって、抗体ペプチド相互作用をさらに最適化する目的で本発明を用いることができる。結合親和性はスクリーニングに用いた抗原濃度に基づいて統計的に予測することが可能であった。図11を参照のこと。これらの改善されたT7結合性ペプチドは、精製及びタンパク質検出、並びに改善されたエピトープ検出のための親和性タグとして用いることができる。
【0103】
本件明細書に示されるように、高親和性結合に対するOmpA足場の機能的寄与を評価するため、15残基ストレプトアビジン結合性ペプチド(SA−1)を黄色蛍光タンパク質の残基Y145の直後に遺伝的に挿入した。Baird, G.S. et al. (1999) PNAS USA 96(20): 11241-11246(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。蛍光タンパク質−ペプチド融合タンパク質を、親和性研究のため、酸化性細胞質を有する加工大腸菌株において可溶性形態で発現させた。Bessette, P.H., et al. (1999) PNAS USA 96(24):13703-13708(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。この融合タンパク質は野生型YFPに匹敵する強い黄色蛍光を保持し、ストレプトアビジン被覆ポリマー微小球に対する強力な結合を示した。フローサイトメトリーを用いて、ストレプトアビジン結合性蛍光タンパク質の解離速度定数が0.02s-1であると決定した。図12を参照のこと。まとめると、これらのデータは、本発明によってディスプレイされるポリペプチドが、スクリーニングに用いられるものとは無関係の足場の状況であっても、高い結合親和性を有することを示す。
【0104】
アミノ酸の簡単なコンセンサスモチーフであるHPQを含むペプチドがストレプトアビジンに対する複数のファージディスプレイ及びmRNAディスプレイ選択において同定されているため、従来ファージディスプレイを用いて同定されているこれらのより低い親和性の配列が本発明のディスプレイ系において検出可能な親和性をもたらすかどうかを決定した。ファージ及び細菌ディスプレイペプチドの比較を可能にするため、細菌ディスプレイクローンを挿入、SAECHPQGPPCIEGR(配列番号65)、を用いて構築し、KD及びkdissを全細胞アッセイにおいて測定した。図10A及び図10Bを参照のこと。ジスルフィド拘束HPQモチーフを含むファージディスプレイ誘導ペプチドは細菌上に効率的にディスプレイされ、細菌ディスプレイを用いて単離された最良ペプチド(クローンSA−1、図10B)よりも20倍速い解離速度(kdiss)を有していた。この結果と定性的に一致して、環状HPQクローンの見かけのKDはストレプトアビジン結合性クローンSA−1より5倍速く、ファージディスプレイを用いて単離されたものに対する細菌ディスプレイを用いて単離されたペプチドの親和性の改善が確認された。
B.OmpX発現ベクター
【0105】
OmpAループ1発現ベクターに類似するOmpXループ2発現ベクター及びOmpXループ3発現ベクターを構築した。実施例2及び図6を参照のこと。
【0106】
表3はOmpX及びOmpX相同体における代替挿入部位を示す。
【0107】
【表3】

【0108】
適切な代替的挿入部位は非保存領域を同定する多重配列アラインメントによって同定することができ、好ましくは、ディスプレイされたタンパク質が細胞の外膜から約1nMを超えて位置し、ディスプレイされたポリペプチドが物質の任意組成物と相互反応することが可能になるように選択される。例えば、表3を参照のこと。
【0109】
本発明のOmpX発現ベクターの他の特徴は上述のOmpA発現ベクターに類似するか、または同じであり、(1)Ompシグナル配列の使用、(2)SfiI制限部位、(3)殺菌性抗生物質(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)の単一耐性遺伝子、(4)低レベル発現のための低コピー複製起源(例えば、p15A)、及び(5)転写を調節するための調節可能なプロモーター(例えばaraBADプロモーター)が含まれる。
【0110】
同様に、OmpA発現ベクターに対して実施されたものと同じであるか、または実質的
に類似する実験がOmpX発現ベクターに対して実施され、同様の結果を伴った。
【0111】
C.N/C末端融合発現ベクター
本発明の以前、ポリペプチドは、多くは外膜への挿入融合体もしくは外膜または細胞外付属器官(例えば、海馬采及び鞭毛融合タンパク質)への「サンドイッチ融合体」のいずれかとして、あるいは、より低い頻度で、細胞表面上に局在するものと考えられる短縮タンパク質もしくはハイブリッドタンパク質との融合体として細胞表面上にディスプレイされた。Lee, et al. (2003) Trends in Biotech 23(l):45-52;Pallesen, et al., (1995) Microbiology 141 :2839;及びEtz, et al. (2001) J. Bacteriol. 183(23):6924(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。後者の例にはLpp(OmpAaa46−159)系及び氷核形成タンパク質(InP)が含まれる。Georgiou, et al. (1997) Nat. Biotech. 15(l):29-34;及びShimazu, et al. (2001) Biotech. Prog. 17(1):76-80(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0112】
外膜タンパク質OmpA、OmpC、OmpF、FhuA、及びLamBにより、外膜の細胞外側に露出するOmpループへの比較的短い挿入融合としてのポリペプチドのディスプレイが可能であった。しかしながら、これらのキャリアタンパク質のC及びN末端は自然には細胞表面上には位置していないので、ポリペプチドを末端融合としてディスプレイする能力は排除されている。そのため、挿入融合の脈絡において折り畳みが不可能であるタンパク質(ここでは、それらのC及びN末端がキャリアタンパク質配列に融合する)は、C及びN末端が空間中で物理的に分離されているもの(例えば、一本鎖Fv抗体断片)と同様、挿入物として有効にディスプレイされ得ない。同様に、挿入融合の使用に対する該制限により、cDNAライブラリからの多数のタンパク質の細胞表面上でのディスプレイが妨害される。
【0113】
下記実施例3において示されるように、本発明は、所定のポリペプチドを、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質、またはその両者として、生物学的実体の外面上に存在するキャリアタンパク質に直接連結もしくは融合させて発現させるための発現ベクター、並びにそれらの製造及び使用方法も提供する。本件明細書における、これらの発現ベクターは「N/C末端発現ベクター」と呼ばれ、これには実施例3に例示される環状順序置換OmpX(CPX)発現ベクターが含まれる。
【0114】
このN/C末端融合発現ベクターは、ディスプレイタンパク質の両端が挿入によって拘束されないため、より長いポリペプチド鎖を表面上にディスプレイすることを可能にする。本発明のN/C末端融合発現ベクターは、両端が拘束されていないため、パッセンジャーポリペプチドとは無関係にキャリアタンパク質の折り畳みが可能である。したがって、本発明のN/C末端融合発現ベクターは、ノッチン、位相幾何的「糸模様」折り畳みのような、効率的な折り畳みのためにフリーのNもしくはC末端を必要とするペプチド及びポリペプチドを表面ディスプレイさせ得る。Skerra, A. (2000) J. Mol. Recog. (13): 167(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0115】
本発明のN/C末端発現ベクターは、立体配座の多様性と、表面係留ポリペプチドの表面可動性の強化とを可能にする。具体的には、(挿入融合体とは反対に)末端融合体として発現することによるポリペプチドの可動性の増加により、フリーのポリペプチド(すなわち溶液中のポリペプチド)に実質的に類似した対リガンド結合親和性及び相互作用を有するポリペプチドが生じる。本発明は、折り畳み、輸送、及び組み立てに適合して所定のパッセンジャータンパク質を末端融合タンパク質として細胞表面上に適切に発現することを可能にする、エネルギー的に安定な外膜タンパク質構造を保持するための方法を提供する。
【0116】
ある態様においては、小さく(約50kD以下、好ましくは、約30kD以下)、細胞表面上のペプチドグリカン層から好ましくは2nM以上広がる細胞外ループを有する特徴を有する候補ディスプレイキャリアタンパク質(例えば、細菌OMP)が同定される。挿入点は、細胞外湾曲部の頂点、好ましくは、他の種に由来するホモログまたはパラログ(paralog)の間で配列保存性に劣る(高い可変性を有する)部位で選択される。ファイ−プサイ角の分布の制限が考慮される細胞外ループ内の湾曲部の残基、例えば、プロリンは除去する。リンカーは柔軟なアミノ酸、すなわち、グリシンまたはセリンを用いて設計する。例えば、図2及び図13を参照のこと。
【0117】
当該技術分野において公知の組換えDNA技術を用いて発現ベクターを構築し、ここで、(1)キャリアポリペプチド鎖は、好ましくは細胞表面から最大に突出する最大細胞外ループ(例えばOmpXのループ2もしくは3)で破断され、(2)天然C及びN末端は短い柔軟なリンカー配列(例えば、Gly−Gly−Ser−Gly−Gly(配列番号78)、例えば図2もしくは図13)を用いて融合され、(3)柔軟なリンカーが、ディスプレイが望まれる末端(例えば、Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser(配列番号79))への融合によって付加され、すなわち、所望のタンパク質が、N末端ディスプレイについては新たに生成されるN末端に先行し、もしくはC末端ディスプレイについては新たなC末端に後続し、(4)ディスプレイしようとするパッセンジャーペプチドもしくはポリペプチド(もしくは複数の配列、「ライブラリ」)はリンカーに融合し(例えば、図2及び図4)、最後に、N末端ディスプレイについて、天然シグナル配列が同定され、ディスプレイしようとするポリペプチドのN末端に融合する。この全体設計でプライマーを設計し、組み立てのために遺伝子断片を増幅し、または設計された配列を(総遺伝子組み立てにより)直接合成する。図13を参照のこと。組み立てられた遺伝子のライブラリを適切な制限酵素で消化し、調節された発現ベクター(例えば、pBAD18もしくはpBAD33)にライゲーションし、当該技術分野において公知の方法(例えば、トランスフェクション、電気穿孔法等)によって宿主に導入する。プラスミドDNAを調製し、無期限保存用の複数の凍結貯蔵物を調製する。
【0118】
実施例3において示されるように、N/C末端融合発現ベクターを創出するため、キャリアタンパク質(この場合にはOmpX)の配列再配置を、重複PCRを用い、当該技術分野において公知の方法に従って達成した。図14を参照のこと。細胞表面上に接近可能である1つ以上のループ等を示しかつ生物学的実体の外表面上に局在しているあらゆるタンパク質を、生物学的実体の外表面にC末端、N末端、またはそれらの両者を生成して提示するために本発明に従って修飾し、パッセンジャーポリペプチドと融合させることができることを注記する。内部ループからの末端融合ディスプレイのための再配置に適するキャリアタンパク質としては、外膜タンパク質(例えば、OmpA、OmpX、OmpT、OmpC、OmpS、LamB、TraT、IgAプロテアーゼ等)、及び細菌の他の細胞外構造的接着タンパク質(例えば、FimH、PapA、PapG等)、哺乳動物細胞の輸送体タンパク質(例えばMCAT−1)、バクテリオファージのキャプシド及び被覆タンパク質(例えば、M13に由来するgpVIII)並びに真核細胞ウイルスのエンベロープ及びキャプシドタンパク質(例えば、HIV env、レトロウイルスenv、AAVキャプシドタンパク質)等が挙げられる。例えば、表4を参照のこと。ペプチド及びタンパク質挿入点は非保存ループ配列内に現れるように選択した。次に、元のリーダーペプチド等を新たに生成された末端に融合した。
【0119】
【表4】

【0120】
N末端ディスプレイのため、ペプチドまたはタンパク質配列を、多重クローニング部位(MCS)中の、リーダーペプチドの後(好ましくはリーダーペプチドの直後)にクローン化した。次に、ディスプレイペプチドまたはタンパク質をコードする該DNA配列を、PCRにより、様々な長さ(好ましくは、約5〜20アミノ酸)の可動性の柔軟なリンカーをコードするDNA配列に融合した。図15及び図16を参照のこと。続いて、リンカーのC末端を、重複PCRを用いて、OmpXの新たに生成されたN末端(例えば、ループ2内の残基54)に融合した。好ましくは、(リーダーペプチドのペプチダーゼ開裂から生じる)元のC及びN末端は、短い柔軟なリンカー、例えば、Gly−Gly−Ser−Gly−Gly(配列番号78)等(すなわち、配列番号78と実質的に類似する柔軟性及び立体配座構造を示すリンカー)を介して接続される。図15を参照のこと。配列再配置から生じるC末端を、2つの停止コドンを組み込むオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRを用いて翻訳を停止させるため、1以上の停止コドンを付加することにより、当該技術分野において公知の方法を用いて修飾した。
【0121】
N/C末端発現ディスプレイ系を製造及び使用する他に最適化する方法には、OmpAループ1、OmpX−ループ2、及びループ3発現ベクターについて上記で提供されたものに加えて、当該技術分野において公知のものが含まれる。
【0122】
従って、本発明は、生物学的実体の外表面上にディスプレイされる加工されたCまたはN末端へ、ポリペプチドを融合タンパク質として呈示またはディスプレイする、発現ベクターを提供する。ここで説明される方法は、通常は生物学的実体の外表面に接近可能なCまたはN末端を呈示しない他のタンパク質に適用することができる。この特徴により、生物学的実体上で最適に発現し、または単離されているが、表面露出末端を持ち得ないタンパク質への本発明の適用が可能となる。該タンパク質の例としては、細菌のOmp、細菌海馬采、線毛、及び鞭毛の構造タンパク質、真核細胞輸送体並びに接着タンパク質が挙げられる。表4を参照のこと。挿入融合タンパク質や「サンドイッチ」融合タンパク質としてではなく末端融合タンパク質としてペプチドをディスプレイすることにより、表面ディスプレイペプチド親和性は表面ディスプレイの脈絡においてより正確に測定される。換言すると、見かけのポリペプチド−標的分子結合親和性は、溶液中での可溶性ペプチドとの同じ相互作用についての測定で得られた値とより密接に近似する。結果として、優れた性能を有するペプチドを単離及び同定することができ、また、タンパク質の一端が拘束されていないため、より多様なタンパク質配列をディスプレイすることができる。このアプローチは、2種類の独自ペプチドをC及びN末端の両者に同時にディスプレイすることも可能にする。
【0123】
末端融合ディスプレイにより、表面ディスプレイ分子の高い可動性、標的分子への接近可能性の増加、及び可溶性ペプチドを生成するためのディスプレイペプチドの簡単なタンパク分解開裂が得られる。末端融合ディスプレイにより、プロテアーゼ及びペプチダーゼの新規基質の同定も可能となる。図33を参照のこと。本発明によるN/C末端融合発現ベクターは、表面係留ペプチド及びポリペプチドの立体配座多様性及び表面可動性を強化する直接的な方法を提供する。(挿入融合とは反対に)末端融合から生じる可動性の増加を通じて、対応標的分子または物質に結合するポリペプチドの見かけの親和性は溶液中のペプチドとより密接な類似点を持つ。N/C末端ディスプレイベクターは、細胞表面上での所定のパッセンジャータンパク質の効率的なディスプレイのための折り畳み、輸送、及び組み立てと適合する、エネルギー的に安定な外膜タンパク質構造の保持を可能にする。
【0124】
ある態様においては、細胞表面上の全ディスプレイレベルの測定を考慮し、cDNAクローンの末端に付加される末端親和性タグ(例えばT7タグエピトープ)または標識等を使用して、cDNAライブラリをNまたはC末端融合発現ベクターのディスプレイ位置にクローン化することができる。本件明細書における、「親和性タグ」という語には、第2生体分子の精製もしくは検出に備え、または第2生体分子が基質に結合するための部位を提供するため、第2生体分子に結合することができる生体分子(例えばポリペプチドセグメント)を指す。親和性タグの例には、ポリヒスチジントラクト、プロテインA(Nilsson et al. (1985) EMBO J. 4: 1075;Nilsson et al. (1991) Methods Enzymol. 198:3)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith and Johnson (1988) Gene 67:31)、Glu−Glu親和性タグ(Grussenmeyer et al., (1985) PNAS USA 82:7952)、サブスタンスP、FLAGペプチド(Hopp et al. (1988) Biotechnology 6: 1204)、ストレプトアビジン結合性ペプチド、または抗原性エピトープもしくは結合性ドメイン等が含まれる(Ford et al. (1991) Protein Expression and Purification 2:950)(これらのすべては参照により本件明細書に組み込まれる)。本件明細書における、「標識」は、生体分子と結合して、該生体分子または生体分子の構成体(例えば結合体)を検出可能または測定可能にしうる分子または原子である。標識の例には、キレーター、光活性剤、放射性同位体、蛍光剤、常磁性イオン等が含まれる。
【0125】
表面局在化cDNAの存在は、前記タグまたは標識に特異的な抗体または試薬を用いて、当該技術分野において公知の方法に従ってモニターすることができる。その後、標的タンパク質に結合する細胞をMACS及び/またはFACSを用いて選択することができる。ライブラリプールを一色(例えば、緑色)の蛍光標識、次いで第2の色(例えば、赤色)の第2蛍光標識と共にインキュベートし、関心のある全長cDNAの存在を同定することができる。その後、赤色及び緑色であるクローンを、ライブラリから、当該技術分野に
おいて公知の細胞ソーティング法を直接用いて単離する。
【0126】
ある態様においては、N/C末端融合発現ベクターのポリペプチドを宿主の外表面から単離または精製することができる。換言すると、N/C末端融合発現ベクターを用いてポリペプチドを発現させた後、所定のポリペプチドの下流に抑制コドンを導入することによって可溶性形態(溶液中でフリー)で生成することができる。または、プロテアーゼ感受性リンカーを該「抑制」コドンの代わりに用いることもできる。誘導(例えば、アラビノースの約2時間使用)により、ペプチドが表面上に高密度でディスプレイされる。細胞を適合性バッファ(例えばPBS)で1回もしくは2回洗浄して望ましくないタンパク質及び他の残滓を除去し、細胞を濃縮して、得られた細胞懸濁液にプロテアーゼを添加する。次に、タンパク分解的に開裂されたポリペプチドを低速遠心による細胞の除去によって回収し。その懸濁液を新しい管に移す。
【0127】
ある態様においては、本発明のN/C末端融合発現ベクターを基質ライブラリからの基質(例えば、プロテアーゼ及びペプチダーゼの基質)の同定に用いることができる。図17を参照のこと。従って、N/C末端融合発現ベクターを、当該技術分野において公知の方法を用いて蛍光タンパク質を発現するように修飾することができる。例えば、(1)環状順序置換外膜タンパク質(例えば、OmpAまたはOmpX)、(2)Omp遺伝子配列の下流のリボソーム結合部位、及び(3)標識(例えば、蛍光活性化細胞ソーティングを用いる効率的な検出に適する緑色蛍光タンパク質(例えばalajGFP))を含む、二シストロン性発現ベクターの使用が挙げられる。その後、緑色蛍光の強度によって発現をモニターする。
【0128】
基質のライブラリは当該技術分野において公知の方法を用いて創出する。基質をNもしくはC末端N/C末端融合発現系のNもしくはC末端にそれぞれ融合させる。基質ライブラリは、蛍光標識に適する標識または親和性タグが細胞表面上のパッセンジャーポリペプチドのフリーな末端に融合するように構築する。図17を参照のこと。その後、ライブラリを成長させ、緑色ではあるが赤色ではない細胞をその集団から除去して偽陽性クローンの単離を排除する。次に、ライブラリを酵素(例えば、プロテアーゼまたはペプチダーゼ)と共にインキュベートし、緑色蛍光を保持しながら赤色蛍光を失った細胞をその集団からFACSを用いて単離する。
【0129】
ある態様においては、本発明のN/C末端融合発現ベクターを、試薬として使用可能な全細胞の構築に用いることができる。例えば、ここでの方法を用いて同定され、タンパク質、ウイルス、もしくは細胞受容体、または物質の合成組成物に結合する、1つ以上のペプチドを、大腸菌の外表面に所望の表面密度でディスプレイさせた後、細胞を物質(例えば、ガラス/ケイ素、金、ポリマー)に、該物質に結合するように選択されたペプチドによって直接結合させ、同じ細胞上の他の様々なディスプレイペプチドに結合する溶液中分子の捕捉に用いることができる。光学的検出のため、細胞に蛍光性もしくは発光性レポーター分子、例えばGFP、またはルシフェラーゼを同時発現させることができる。フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡を、標的作用因子(例えば、ウイルス、細胞、粒子、ビーズ等)へ分子認識要素をディスプレイしている細胞の結合の検出に用いることができる。図18及び図7を参照のこと。
【0130】
ここでは細菌性タンパク質の使用が例示されているが、表面露出ループを有する様々な表面局在化タンパク質を本発明に従って修飾し、ウイルス、並びにファージ、細菌、酵母、及び哺乳動物細胞を含む原核及び真核細胞の外表面上でのポリペプチドのディスプレイを可能にするN/C末端融合発現ベクターを提供できることを注記する。当該技術分野において公知の様々な表面局在化タンパク質を用いることができる。大腸菌及び実質的に類似する種においては、そのようなタンパク質としてはOmpA、OmpX、OmpT、OmpC、OmpF、OmpN、LamB、FepA、FecA、及び他のベータ樽型外膜タンパク質が挙げられる。図2において示されるものに実質的に類似する位相幾何を示す、すなわち、細菌の外表面上にCもしくはN末端のいずれかを呈示するタンパク質も、本発明に従って用いることができる。当該技術分野における通常の技術を有する者は、本発明に従って用いることができる様々な表面局在化タンパク質を容易に識別及び同定することができる。
【0131】
D.発現ベクターの適用
D1.生存している動物における腫瘍または組織/器官局在化細菌の選択
実施例4において示されるように、本発明によるライブラリまたはライブラリの所定のサブセットを、異種移植(zenografted)腫瘍を有する動物に注射することができる。数分〜数日の期間の後、所望の組織/体液、または腫瘍をその生物から取り出し、細菌増幅のためにその試料を細菌成長培地に移すことによって腫瘍または組織標的細菌を単離する。
【0132】
イン・ビボでの細菌の成長は、ルシフェラーゼオペロン、自己蛍光性タンパク質発現ベクター等を用いてモニターすることができる。続いて、増幅した細菌を類似のプロセスにおいて用い、選択した組織について細菌をさらに富化する。宿主免疫応答を低下させ、イン・ビボでの非特異的結合が防止されるように選択を改善する目的で、当該技術分野において公知の方法に従い、宿主株を改変することができる。プラスミドDNAを単離された細菌から回収し、ペプチドをコードするDNA配列を決定する。その後、同定されたペプチド配列を単独で、または互いに組み合わせて、細菌、遺伝子治療ベクター、及びヒトにおける腫瘍に対する生物薬剤を標的化するのに用いることができる。
【0133】
D2.免疫応答識別
本発明のディスプレイ系は、免疫応答が標的とする優性エピトープを同定する目的で、ヒト血清または動物血清に適用することができる。例えば、免疫応答は、後天性及び遺伝性疾患の両方(例えば、自己免疫疾患、癌、ウイルス感染等)において、疾患の原因、効果、及び潜在的な治療処置の点を同定するため、定量的に精査することができる。
【0134】
これらの態様においては、免疫グロブリン(IgG)または他のタンパク質画分を試験試料(例えば、血清、脊髄液、または他の体液)から精製し、ビオチンで標識することができる。次に、このビオチニル化された異なるIgGの混合物を抗原として、該抗原混合物における、対応抗体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の選択及びスクリーニングに用いることができる。抗体結合性分子をディスプレイしている生物学的実体を富化した後、個々のクローンを平板培養によって混合物から単離し、それらの配列をDNA配列決定によって決定する。生じる配列は、混合物中に多く出現する、異なる抗体特異性に相当する別々のコンセンサス群に入る。例えば、図11、図19、及び図20を参照のこと。この抗体混合物を全抗原濃度の範囲(例えば約0.1〜100nM)にわたって用いて多重選択を実施することにより、異なるコンセンサス配列が出現する。単離されたライブラリから選択されたペプチド配列は、多くの場合、天然のタンパク質表面上に存在する対応配列に実質的に類似するか、または同じである。換言すると、ディスプレイ選択は、混合物中の抗体が結合するタンパク質の同定を可能にし、それにより治療処置の標的を提供する。
【0135】
以下の例は本発明の説明を目的とするが、それを限定するものではない。
【実施例1】
【0136】
OmpAループ1発現ベクター
配列の複雑性と安定性及び折り畳み及びOmpAの搬出の維持とのバランスを提供する15量体無作為挿入配列を選択した。図2を参照のこと。より長い挿入配列(例えば15量体)ライブラリは、10以上のアミノ酸を必要とする可能なより長い細胞結合モチーフを許容しながら短い配列のより多くのコピーを提供することを注記する。改変されたジスルフィド架橋を安定化のために用いることができるが、大腸菌周辺質におけるシステイン酸化は凝集及び搬出の減少につながる可能性があり、かつジスルフィドが偶然に出現する潜在的可能性があったため、該架橋は用いなかった。さらに、OmpAの膜さしわたしドメイン(membrane spanning domain)はより柔軟なループへのペプチド挿入のための強固な構造的錨を既に提供している。
【0137】
pBAB33L1の使用によってライブラリ構築プロセスを最適化した後、約4.5×1010の独立形質転換体の高品質ライブラリの構築が可能であることが見出された。幾つかの同様のサイズのファージライブラリは構築されているものの、本ライブラリは、他の報告されている細菌ディスプレイライブラリのいかなるものよりも大きいものと信じられる。Vaughan, T.J., et al. (1996) Nature Biotech. 14(3):309-314(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。この事実は、ライブラリのサイズが選択された配列の品質(親和性及び特異性)に相関することが従来示されているため、注目に値する。Griffiths, A.D. and D.S. Tawfik (2000) Curr. Opin. Biotechnol. 11(4):338-353(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。最適な選択及びスクリーニング効率のため、発現、成長、及び誘導条件に加えてプロモーター強度及び挿入位置を最適化した。図4を参照のこと。厳密に調節可能なプロモーターを用いて、成長の間の穏やかな毒性配列の損失を防止し、完全なライブラリ多様性を維持し、かつ1回の富化効率を改善した点が重要である。図5を参照のこと。
【0138】
A.細菌株、ベクター及びプラスミド
すべての作業は、FA113において行ったYFP発現を除いて、大腸菌株MC1061(F araD139 Δ(ara−leu)7696 galE15 galK16 Δ(lac)X74 rpsL (StrR)hsdR2(rK-K+)mcrA mcrB1)で行った。Bessette, P.M., et al., (1999) PNAS USA 96(24):13703-13849;及びCasadaban, M.J. and S.N. Cohen, (1980) J. Mol. Biol. 138(2): 179-207(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。プライマーは、Integrated DNA Technology(Coralville、IA)、Operon-Qiagen(Valencia、CA)、及びInvitrogen(Carlsbad、CA)から得た。制限酵素はNew England BioLabs(Beverly、MA)製であった。ストレプトアビジン、R−フィコエリトリン結合体はMolecular Probes(Eugene、OR)から購入した。ビオチニル化、及びHRP結合、抗T7タグモノクローナル抗体はNovagen(Madison、WI)から得た。ストレプトアビジン被覆磁性微小ビーズはQiagen(Valencia、CA)、Dynal(Brown Deer、WI)、またはMiltenyi Biotec(Auburn、CA)から得た。抗ビオチンmAb被覆磁性ビーズ及び抗ビオチンmAb R−フィコエリトリンはMiltenyi Biotec(Auburn、CA)製であった。ビオチニル化及びAlexaFluor488を用いる蛍光標識は、それぞれ、Molecular Probes (Eugene、OR)製のFluoReporterR Mini-biotin-XX Protein Labeling Kit及びAlexa FluorR 488 Monoclonal Antibody Labeling Kitを用いて行った。ヒトC反応性タンパク質(カタログ番号C4063)及び血清アルブミン(カタログ番号A3782)はSigma(St. Louis、MO)製であった。ビオチニル化HIV−1 gp120はImmunoDiagnostics(Woburn、MA)から得た。
【0139】
B.ベクター及びライブラリの構築
ライブラリ構築効率を最大化するため、非対称SfiI制限部位をOmpA発現ベクターのループ1の直前及びループ4の後に導入した。無作為エピトープ挿入を含むDNA断片群をPCRによって合成し、SfiIで消化し、ディスプレイベクターにライゲートして、高度に形質転換適格にすることができ、かつOmpA発現の制御へのaraBADプロモーターの使用を許容するara−である大腸菌株MC1061を形質転換した。Sidhu, S.S. (2000) Curr. Opin. Biotechnol. 11(6):610-616(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0140】
プラスミドpBAD33内のaraBADプロモーターの下流に挿入された天然RBSを含む野生型ompA遺伝子を含むプラスミドpB33OmpAについてはGuzman, L., et al., (1995) J. Bacteriol. 177(14):4121-4130(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。これは、消化された(KpnI/HindIII)pBAD33を、同様に消化された、MC1061誘導ゲノムDNA並びにプライマー1及び2を用いて得られたompA遺伝子PCR産生物でライゲートすることによって構築した。表5を参照のこと。
【0141】
【表5】

【0142】
プラスミドpB33OmpAL4は、ompA遺伝子内の、OmpAの第1細胞外ループの始めから第4ループの終わりまでに相当する位置にSfiI制限部位の付加を含み、これは突然変異F23L、N25G、N26Q及びH151G、T152Q、T155Qを生じる。プラスミドpB33OmpA14はプライマー1〜4(表5)をテンプレートとしてのpB33OmpAと共に用いるオーバーラップPCRによって作製した。このオーバーラップ産生物を消化し(Kpnl/HindIII)、同様に消化したpBAD33にライゲートした。OmpAのループ1及び4にそれぞれ挿入されたT7タグエピトープを含むプラスミドpB33OT1及びpB33OT4を、テンプレートとしてのpB33OmpA、並びに、それぞれ、プライマー5または6(表5)をプライマー1及び2(表5)と共に用いるPCRを用いて構築した。該オーバーラップ産生物をSfiIで消化し、SfiI消化pB33OmpA14とライゲートした。OmpAループ1に挿入されたストレプトアビジン結合性ペプチド配列SAECHPQGPPCIEGR(配列番号96)を含むプラスミドpB33OS1を、プライマー1、2、7、及び8(表5)をテンプレートとしてのpB33OmpA14と共に用いる重複PCRによって構築した。Giebel, L.B., el al (1995) Biochemistry 34(47):15430-15435(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。産生物をSfiIで消化し、消化済pB33OmpA14にライゲートした。
【0143】
無作為15量体ライブラリ構築のため、プライマー9及び10(表5)をテンプレートとしてのpB33OmpAと共にPCRにおいて用いた。生じる産生物を、プライマー11及び12(表5)を用いて第2PCRにおいて伸長し、効率的な消化を可能にした。次に、その産生物を消化し(SfiI)、HincII/SfiI消化したpB33OmpA14ベクターに挿入した。分取標本10個において、電気穿孔法により、約15μgのライゲートされたDNAでMC1061株を形質転換した。形質転換された細胞をプールし、30ml SOC培地中で1時間インキュベートした。系列希釈をLBプレート上に32μg/mlクロラムフェニコールと共に配置し、ライブラリサイズを決定した。形質転換された細胞を、0.2%グルコース及び32μg/mlクロラムフェニコールを含む500mlのLB培地において培養し、OD2.2まで成長させた。プールされた形質転換混合物の系列希釈の平板培養は5×1010の独立の形質転換体を示した。
【0144】
ストレプトアビジンに結合するペプチド挿入を組み込んだ黄色蛍光タンパク質をコードする融合タンパク質発現プラスミドであるpB33YFP−SAを、YFPのアミノ酸Y145及びN146の間の許容性部位に15アミノ酸SA−1の挿入を生じる、テンプレートとしてのAquorea GFPベースの黄色蛍光タンパク質遺伝子プライマー13〜16(表5)と共に用いるオーバーラップ伸長PCRによって構築した。Baird, G.S., et al. (1999) PNAS USA 96(20):11241-11246(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0145】
ライブラリの分取標本を、約0.1%を上回るグルコースを含有する適切な細菌成長培地に入れ、一晩約6〜12時間増殖させた。次に、そのライブラリを新鮮な成長培地で約1:50〜1:100の倍率で希釈し、培養密度(OD600)が約0.5〜1.0のOD値に到達するまで成長させ、アラビノースを培養物に添加することによってディスプレイさせようとするライブラリ要素の発現を開始した。その後、ディスプレイさせようとするライブラリ要素の所望の表面濃度により約1〜3時間、培養物をさらに増殖させた。OmpA−L1にディスプレイされる無作為ペプチドライブラリのスクリーニングにおいては、約30分〜2時間の誘導時間が好ましい。時間が短くなると、一価結合性相互作用への選択圧の増加がもたらされ、その帰結として高親和性結合部分への選択圧の増加がもたらされた。
【0146】
次に、約2×1011個を上回る細菌細胞を含む培養物の分取標本を採取し、PBSで洗浄し、PBS中に約1〜10のODで最懸濁させた。その後、そのライブラリを、ビオチンに化学的に結合されている1種類以上のリガンド(例えばタンパク質)と混合し、穏やかに混合しながら(例えば、反転または揺らしながら)約1時間インキュベートした。次いで、PBSで約1〜2回洗浄することによって未結合リガンドを除去した。その後、約10nm〜1μmのストレプトアビジン被覆常磁性ビーズまたはストレプトアビジン結合蛍光プローブを添加し、標識された細胞を磁性粒子に結合させた。
【0147】
C.磁気選択
次に、特異的に標識された細胞を混合物から取り除くためにライブラリを保持する容器の外面に有意の強度の磁気を適用することによる富化サイクルの連続適用によって、所定のポリペプチドをディスプレイする細胞をそうではないものから分離した。図21を参照のこと。その後、磁性粒子に付着しない細胞を容器から除去し、関心がない細胞である場合には廃棄した。次いで、磁気を取り除き、無菌バッファを容器に加え、当該技術分野において公知の方法を用いて細胞及び磁性粒子を完全に再懸濁させた。
【0148】
その後、前の2工程を、単離されたクローンの解離定数の期待値によって約2〜5回反復した。ランダムライブラリからの第1回の選択については、ライブラリが標的に結合する多くの配列を含むことが既知でない限り、2回の洗浄で十分であった。各々の連続サイクルにおいては、約10〜1000倍少ない細胞を選択に用い、標的リガンド濃度(可溶である場合)を2を上回る数倍(例えば10倍)に減じた。富化サイクルの理想的な数は、その後には蛍光現象の数の変化が観察されないサイクルによって決定される。例えば、HSAへの結合についての選択においては、FITC結合HSAに結合する細胞の頻度は、第1回の後に約0.6%に増加し、第2回の後に約10%に増加し、第3回の後には約10%でほぼ一定に維持され、さらなる回の富化が行われる必要はないことが示された。
【0149】
最終洗浄の後、小容積の試料を約1:1000に希釈し、寒天プレート上に塗布してこの富化サイクルの後に残留するクローンの数を決定した。残りの容積は、適切な成長培地、抗生物質、及びグルコースを収容する細菌培養容器、例えば、250ml培養フラスコに移した。細胞を、約0.5OD以上の密度に到達するまで、好ましくは、細胞が(培養ODが変化しない)静止期に到達した後約2時間以下、増殖させた。その後、細胞をビオチニル化標的及びストレプトアビジンフィコエリトリン等で再標識し、フローサイトメトリーで分析して富化を決定した。図21及び図22を参照のこと。
【0150】
D.フローサイトメトリースクリーニング
磁気的に富化されたライブラリ集団のフローサイトメトリースクリーニングを用いて、最も緊密に結合するペプチドのみをより正確に分離した。ペプチドリガンドの選択効率を評価するため、磁気選択で富化されたプールを、フローサイトメトリーを用いて、ビオチニル化T7抗体(100pMの最終濃度)、次いでストレプトアビジン−フィコエリトリンと共にインキュベートした後に高度に蛍光性の細胞についてスクリーニングに供した。図21を参照のこと。その後、保存された集団から無作為に選択されたクローンの配列決定を行った。図11を参照のこと。
【0151】
フローサイトメトリー分析及びソーティングのため、誘導された細胞を、PBS中、氷上で約45〜60分、ビオチニル化抗原または蛍光標識抗原で典型的に標識し、次に遠心して上清を除去した。ビオチニル化抗原を用いるとき、二次標識は6nMストレプトアビジン−フィコエリトリン(Molecular Probes、Eugene、OR)または1nM抗ビオチンmAb−フィコエリトリン(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を用いて氷上で30分間行い、次に遠心して上清を除去した。その後、細胞を冷PBS中に約106細胞/mlとなるよう再懸濁し、100mWアルゴン(488nm)レーザーを備えるPartec PAS IIIサイトメーター(Partec Inc.、Muenster、ドイツ)で直ちに分析した。分析については、約104〜106細胞を調べ、ソーティングについては、期待されるクローン多様性の少なくとも10倍の過剰サンプリングを適用した。ソーティングの後、保持された細胞をさらなる分析及び/またはソーティングのためにグルコースを含有する培地中で一晩成長させることによって増幅するか、または単一クローンを単離するため寒天上に直接塗布した。典型的には、約5〜15の選択されたクローンの抗原結合性を確認し、単離されたプラスミドに含まれるompA遺伝子の自動配列決定によって各ペプチド挿入の正体を決定した。
【0152】
一般には、第1回の磁気選択のため、約2.5×1011細胞の凍結分取標本を用いて25μg/mlのクロラムフェニコールを含有する500mlのLB培地に接種し、OD600が約1〜1.5になるまで37℃で振盪(250rpm)しながら成長させ、その時点でL−アラビノースを0.02%(w/v)の最終濃度まで添加した。さらに2時間成長させた後、約2.5×1011細胞に相当する容積を遠心(2000×g、4℃、15分)によって濃縮し、15mlの冷PBSに再懸濁した。
【0153】
陰性選択については、150μlのストレプトアビジン被覆磁性ビーズ(Qiagen、Valencia、CA)を添加して細胞/ビーズ混合物を氷上で30分間インキュベートし、その時点で磁気をその管に適用して上清中の非結合細胞を新たな管に取り除いた。
【0154】
陽性選択については、ビオチニル化抗原(約1〜100nM)を上清画分に添加し、氷上で約30〜60分間インキュベートした。細胞を上記のように遠心し、150μlのストレプトアビジン被覆磁性粒子(Qiagen、Valencia、CA、またはMiltenyi Biotec、Auburn、CA)を含む7.5mlの冷PBSに再懸濁した。氷上の細胞を周期的に攪拌しながら約30〜60分インキュベートした後、管に磁気を適用し、上清を除去して廃棄した。そのペレットを、毎回磁気に再ペレット化して、7.5mlの冷PBSで2回洗浄し、最後に、LB培地中に再懸濁し、クロラムフェニコール及び0.2%グルコースを含有する20mlのLB培地中、37℃で振盪しながら、一晩成長させた。
【0155】
続く回の選択またはソーティングについては、前回において保持された細胞の数の少なくとも10倍の過剰サンプリングに相当する容積の細胞を、クロラムフェニコールは含有するがグルコースは含有しない新鮮なLB培地に継代培養し、中間対数期まで生長させ、上述のように誘導した。磁気選択に用いる容積は、同じ濃度は維持しながら、減少させた。ある場合においては、続く回の磁気選択を抗ビオチンmAb被覆磁性粒子(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を用いて行った。
【0156】
ある回においては、集団を約1:105の初期頻度から約50%結合性ペプチドに富化した(約50,000倍の富化)。スクリーニング1回には、選択された配列を増幅するのに約2時間の労力とそれに続く一晩の成長のみを必要とした。2回の磁気選択の後の8つの無作為選択クローンのDNA配列決定により、MAPQQ(配列番号97)またはMGPQQ(配列番号98)の強力なコンセンサス結合性モチーフが明らかとなった。これらは平衡結合親和性アッセイを用いて決定したところT7抗体に高親和性(KD=1nM)結合を付与していた。例えば、図17を参照のこと。対照的に、約12量体〜20量体のファージディスプレイライブラリは、おそらくは各回の選択後の選択された配列の不均一な増幅のため、コンセンサス配列を生じることはほとんどなかった。Barry, MA., et al. (2002)VECTOR TARGETING FOR THERAPEUTIC GENE DELIVERY. Wiley-Liss;及びDaugherty, et al. (1999)Protein Engineering. 12(7):613(これらは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。選択されたクローンを直接用いて全細胞アッセイを行い、ペプチド−標的相互作用の解離速度定数及び平衡親和性値の両者を決定することが可能であったことは意味深い。図11及びDaugherty, et al. (1999)Protein Engineering. 12(7):613(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0157】
選択されたクローンの総体親和性を、全細胞方式における平衡解離定数測定またはここで説明される解離速度定数測定のいずれかを用いてランク付けした。図13及び図17を参照のこと。
【0158】
内在化を行うか否かにかかわらず、細胞表面受容体に結合するペプチドを選択するため、ライブラリを標的細胞が過剰である標的細胞の集団と混合した。図1及び図18を参照のこと。次に、加えた細菌ライブラリから、標的細胞を、免疫化学的方法、クロマトグラフィー法、または遠心のいずれかを用いて除去し、このプロセスを反復した。
【0159】
別途、フローサイトメトリー検出に最適化された自己蛍光タンパク質(例えばalajGFP)を発現するライブラリを宿主細胞内に構築した。この蛍光タンパク質は、細菌に結合するか、または内在化している細胞を、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡によって簡単に検出することを可能とする。図18及び図21を参照のこと。結果として、結合現象の存在を検出するのに高価な試薬を必要としない。次に、細胞内GFPを提示する細菌ディスプレイライブラリを標的細胞集団と混合し、約1分〜数時間の短時間インキュベーション及び任意の洗浄工程の後に緑色蛍光を示す標的細胞を集団からソーティングする。
【0160】
その後、細菌が結合する標的細胞を細菌成長培地に移すことによって細菌を回収した。内在化しているリガンドを選択するため、細胞外細菌を殺す薬物または選択剤(例えばリゾチーム)で細胞を処理した。次に、標的細胞を水で希釈して標的細胞を溶解し、細菌を放出させることによって細胞内細菌を回収した。このプロセスの連続適用により、標的細胞に結合するか、または標的細胞に結合して内在化する配列を生じる。図20及び図23を参照のこと。
【0161】
E.タンパク質エピトープマッピング
多くの環境において、タンパク質と、別のタンパク質が結合するタンパク質部位とを決定すること、またはタンパク質結合エピトープをマッピングすることが望ましい。本発明を(1)タンパク質結合性ペプチドの単離、及び(2)選択されたタンパク質が結合するタンパク質配列の決定に用いうることを示すため、タンパク質マッピング実験を以下のように行った。
【0162】
まず、ストレプトアビジン被覆微小ビーズ(例えばQiagen, Inc.(Valencia、CA)製品)と共にインキュベートすることによってライブラリをストレプトアビジン結合性ペプチド枯渇状態にした。次に、そのライブラリを10nM最終濃度のビオチニル化ヒトC反応性タンパク質と共にインキュベートし、2回の磁気選択を用いてCRP結合性ペプチドを富化した。図22を参照のこと。10nM抗原を用いる3回のMACSで、約50%を上回る結合性クローンを含む集団が生じた。その後、富化された集団を100pM CRPで標識し、背景自己蛍光を上回る蛍光を示す細胞をFACSを用いてソーティングした。1回のソーティングでCRPに対する非常に高い親和性を示す数個のクローンが富化され、そこに含まれる1つのクローン、EWACNDRGFNCQLQR(配列番号99)、はKD=1.2nMの親和性を有する環状ペプチドであることが決定された。図19を参照のこと。2つの異なるコンセンサス配列が得られ、他のディスプレイ技術を用いては非常に希にしか観察されない結果であった。全細胞方式において、様々な濃度の標的CRPで細胞蛍光を決定することによって平衡結合親和性を測定した。例えば、図17を参照のこと。CRP結合性クローンは安価な診断試薬として有用であるものと思われる。
【0163】
F.動的選択を用いる高親和性タンパク質結合性ペプチドの選択
ライブラリをストレプトアビジン被覆ナノ球体(50nM)及びストレプトアビジン被覆微小粒子(Qiagen、Valencia、CA)の1:1混合物と共にインキュベートした。磁気選択を用いて結合性クローンを非結合性クローンから分離した。2回の選択で約25%を上回るストレプトアビジン結合性細胞の集団が得られた。その富化された集団を1nM濃度のストレプトアビジンで標識し、PBSで1×洗浄して、競合体としてのビオチンを100μM含むPBSに再懸濁した。この処理工程を用いて低解離速度定数を有するクローンを選択する。1時間後、検出可能な蛍光を保持する細胞をFACSを用いてソーティングした。寒天プレートに塗布し、一晩成長させた後にコロニーを採集することによって個々のクローンを単離した。磁気選択及び磁気選択+FACSの両者からのクローンを配列決定し、それらの解離速度定数をフローサイトメトリーを用いて測定した。図24を参照のこと。解離速度及び平衡解離定数はフローサイトメトリーを用いて測定した。図13及び図17を参照のこと。親和性が最も高いクローンは4nMの親和性及び0.0007s-1の解離速度定数を有していた。この配列機能データは配列機能関係の確立に用いることができる。
【0164】
G.HSA及びgp120結合性ペプチドの選択
薬物送達及び精製用途への適合性を決定するため、上記処理を(潜在的なウイルス侵入阻害剤としての)HIV−1 gp120及びヒト血清アルブミンに結合するペプチドの単離に適用した。Sato, A.K., et al. (2002)Biotechnol. Prog. 18(2):182-192(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。選択されたペプチドの例が図25及び図26に示されている。本発明の方法を用いて単離されたペプチドの親和性は、同一の標的についてファージディスプレイを用いて単離されたペプチドの親和性を有意に上回ることが見出される。表6を参照のこと。
【0165】
【表6】

【0166】
本発明は、系統だったライブラリを設計することなく、高結合親和性を付与するジスルフィド拘束ループを形成する最適システイン配置を同定することを可能にし、それにより早期研究における10以上の異なるライブラリの構築及びスクリーニングの必要性を軽減し、並びに単離されたリガンドの親和性を制限していた重大な仮説を排除する。例えば、Giebel, L.B., et al. (1995)Biochemistry 34(47):15430-15435(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。例えば、ストレプトアビジンへの結合についての選択はすべての回の選択においてCX3Cリガンドに対する強い選好性を生じた。幾つかの報告において(異なる長さの)線形及びジスルフィド拘束ペプチドライブラリの両者のスクリーニングが従来記述されているが、報告されているディスプレイ技術のいずれかを用いてのCX3X型ライブラリの生成及びスクリーニングは従来記述されていない。
【0167】
ループの強剛性が結合親和性と相関することが示されているため、より緊密に拘束されたループによって付与されるさらなる強剛性は、親和性にとって有益であるものと思われる。「組込型」3残基ターンを用いるファージディスプレイ選択は従来の選択方法に較べて親和性の改善を生じるものと思われる。ストレプトアビジンでの結果が予測されたが、出現の可能性が1000倍減じているにもかかわらず、推定ジスルフィドループを含むペプチドが試験した標的リガンド(T7抗体、HSA、gp120、及びCRP)の各々に結合するペプチド中に存在していた。強力なコンセンサス配列であるIXNXRGF(配列番号100)が、CRP結合性に基づく選択で得られたクローン内に存在していたものの、富化されたプールのFACSスクリーニングにより、コンセンサスを有し、かつ2つのシステインが隣接するペプチド、CNDRGFNC(配列番号101)、すなわち、6残基ループが単離された。幾つかのそのようなペプチドは異なる程度にコンセンサスから逸脱しており、ジスルフィドの存在によってコンセンサスからの他の逸脱が補償されたことが示唆された。図11、図19、及び図25を参照のこと。
【0168】
H.クローン親和性の特徴付け
平衡結合曲線を得るため、上述のように、細胞を一連の範囲にわたる濃度(例えば約0.1〜200nM)の蛍光性結合標的タンパク質(ストレプトアビジン−フィコエリトリンまたはCRP−AlexaFluor488)で標識し、フローサイトメトリーによって分析した。対応する平均蛍光対濃度データを一価結合等温式にフィットさせ、見かけのKDを得た。ストレプトアビジン結合性クローンの解離速度は約1〜2μMビオチンの存在下で測定した。細胞を50nMストレプトアビジン−フィコエリトリンを用いて30分間、室温で標識した。次に、それらの細胞をペレット化し、ビオチンと共にPBSに再懸濁し、フローサイトメトリーによって直ちに分析した。蛍光データを約5分間連続的に収集した。その後、解離速度定数を前述のように決定した。Daugherty, P.S., et al. (1998)Protein Eng. 11(9):825-832(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0169】
可溶性足場におけるペプチド親和性を分析するため、YFPのループ内に融合されているストレプトアビジン結合性ペプチドSA−1を大腸菌株FA113における細胞質発現によって調製し、室温で一晩誘導した。B−PER II細菌タンパク質抽出試薬(Pierce Biotechnology、Rockford、IL)を製造者のプロトコルに従って用いて可溶性タンパク質を単離した。約107個のストレプトアビジン被覆磁性ビーズ(Dynal Inc.、Brown Deer、WI)を40μlの細胞溶解物に添加し、室温で20分間平衡化した。ビーズを2mlのPBSで1回洗浄し;ビオチンを1μMの最終濃度まで添加して、上述のようにフローサイトメトリーによって直ちに分析した。YFPを発現し、T7タグ挿入を同じ位置に有する株からの溶解物を陰性対照区として用いた。
【0170】
実施例2
OmpXループ2及びOmpXループ3発現ベクター
以下のプロトコルはポリペプチド及びポリペプチドライブラリをOmpXのループ2内にディスプレイするためのベクターの構築を具体的に説明するが、この手順は、表3に記載されるループ3の非保存領域を考慮することにより、当該技術分野における熟練者がOmpXのループ3に容易に適用することができる。ループ3において、ペプチド挿入は、Pro96を除去して、残基94〜99の間が好ましく、好ましくは残基95〜97の間である。大腸菌MC1061に由来する野生型OmpX:
atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagctgcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc/tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatac/ccg/acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttctaataa
(配列番号102)
を、KpnI切断部位を該遺伝子の前に導入し、またSfiI及びHindIII切断部位を該遺伝子の最後に導入して、プライマー1及びプライマー2を用いて増幅し、KpnI及びHindIII消化を用いてpBAD33に挿入し、pB33OmpXを創出した。 表7は使用したプライマーを示す。
【0171】
【表7】

プライマー1/プライマー3及びプライマー4/プライマー2を別々のPCR反応においてテンプレートとしてのpB33OmpXと共に用いて断片を生成し、それらをオーバーラップ伸長PCRにおいて用いた。
【0172】
最終生成物は、T7タグペプチドエピトープの前に、いずれかの側に4つの隣接残基を伴ってOmpXのループ2内に挿入され、S74G置換を生じる、SfiI部位を含む。次に、この生成物をKpnI及びHindIIIで消化し、同様に消化されたpBAD33にライゲートしてpB33OmpX−T2を創出した。その後、そのpB33OmpX−T2プラスミドをSfiIで切断してベクターを創出し、それをOmpXライブラリの生成に用いた。プラスミドpB33OmpX−tempはSfiI制限部位及びT7エプトープを欠いて創出され、それをテンプレートとしてPCRに用いてライブラリ挿入物を生成した。pB33OmpX−tempは、PCRを用い、「メガプライマー」を創出するプライマー5及びプライマー6を用いて、pB33OmpX−T2をテンプレートとして作製した。次いで、該メガプライマー及びプライマー1をテンプレートとしてのpB33OmpX−T2と共にPCR反応に使用した。その生成物をKpnI及びHindIIIで消化し、同様に消化したpBAD33にライゲートした。プライマー7及びプライマー8を、逆方向プライマーとしてのプライマー2及びテンプレートとしてのB33OmpX−tempと共に、別々に順方向プライマーとして用いて様々なライブラリ挿入物を創出した。生成物をSfiIで消化し、同様に切断したpBAD33OmpX−T2にライゲートし、OmpXディスプレイライブラリを生成した。
【0173】
実施例3
環状順序置換OmpX(CPX)
パッセンジャーポリペプチドのNまたはC末端融合体としてのディスプレイ及び発現を、図14に示されるようにOmpの位相幾何的順序置換によって達成する。N末端融合構築体又はC末端融合構築体を創出するため、外膜タンパク質(この場合にはOmpX)の配列再配置を当該技術分野において公知のオーバーラップ伸長PCRを用いて達成した。Ho, et al. (1989)Gene 77(1):51-59(これは参照により本件明細書に組み込まれる);並びに図14、図27、図28、図30、及び図32を参照のこと。ポリペプチドパッセンジャー挿入点は、表面露出タンパク質、例えば、単量体Omp(OmpA、OmpX、OmpT等を含む)の非保存表面露出ループ配列内に生じるように、当該技術分野において公知の方法を用いて選択する。
【0174】
N/C末端融合発現ベクターのDNA配列は、NからC末端への直線順序で融合または連結する以下の連続成分を提供する(図14を参照):
1.N末端リーダーペプチド、例えば、外膜に局在するタンパク質(例えば、OmpX、OmpA等)に由来する天然N末端リーダーペプチドをコードするDNA配列、
2.(効率的なライブラリ構築のための)DNA制限酵素開裂部位、
3.細胞表面上に発現及びディスプレイさせるべき所定のポリペプチドをコードするDNA配列、
4.組換えDNA及びタンパク質工学技術において通常用いられる実体(例えば、細胞表面からのペプチド放出を可能にするタンパク分解性開裂部位等)を含みうる、ペプチドリンカーをコードするDNA配列、
5.ディスプレイが望まれる位置の挿入点(例えば、wtOmpXaa54)の下流(好ましくはすぐ下流)のアミノ酸で開始され、本来の停止コドン以外の本来の末端で終止する、キャリアタンパク質配列、
6.短く柔軟なペプチドリンカー配列(例えば、GGSGG(配列番号78)、または当該技術分野において公知の他のもの)をコードするDNA配列、
7.本来のリーダーペプチドの上流(好ましくはすぐ上流)のアミノ酸で開始され、選択された挿入部位の上流(好ましくはすぐ上流)のアミノ酸で終止するキャリアタンパク質の配列をコードするDNA配列、並びに
8.適切な制限酵素開裂部位(例えば、SfiI等)が後続する、効率的な終了のための2つの停止コドン。
【0175】
末端融合発現ベクター
本発明において公知の方法を用いる、図14の仕様によるN/C末端融合発現ベクター及び生じるDNA配列の構築に、以下の配列及びプライマーを用いた:

野生型大腸菌pro−OmpXのタンパク質配列(シグナルペプチド前開裂):
M K K I A C L S A L A A V L A F T A G T S V A A T S T V T G G Y A Q S D A Q G Q M N K M G G F N L K Y R Y E E D N S P L G V IG S F T Y T E K S R T A S / S G D Y N K N Q Y Y G I T A G P A Y R I N D W A S I Y G V V G V G Y G K F Q T T E Y / P / T Y K H D T S D Y G F S Y G A G L Q F N P M E N V A L D F S Y E Q S R I R S V D V G T W I A G V G Y R F * *(配列番号111)

野生型大腸菌OmpXのDNA配列:
atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagctgcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc/tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatac/ccg/acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttctaataa(配列番号112)

A.T7タグペプチドエピトープをOmpXループ2内のN末端融合体としてディスプレイするための連続(融合)DNA配列(成熟OmpXのアミノ酸53及び54の間):
(SS)atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct-gcgacttctact(配列番号113)

T7タグ:
atggcgagcatgaccggcggccagcagatgggt(配列番号114)

リンカー:
ggaggccagtctggccag(配列番号115)

OmpXアミノ酸54から最後(停止)まで:
tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatacccgacctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttc(配列番号116)

ペプチドリンカー:ggaggaagcgga(配列番号117)

OmpXaa1(構造の第1残基)−53:
gcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc(配列番号118)

停止コドン:taataa(配列番号119)

上記DNA配列の翻訳から生じるタンパク質配列=OmpXシグナル配列/T7/SfiI/AA54/AA148/AA1/AA53:
MKKIACLSALAAVLAFTAGTSVA/MASMTGGQQMG/G/GQSGQ/SGDYNKNQYYGITAGPAYRINDWASIYGVVGVGYGKFQTTEYPTYKHDTSDYGFSYGAGLQFNPMENVALDFSYEQSRIRSVDVGTWIAGVGYRF/GGSG/ATSTVTGGYAQSDAQGQMNKMGGFNLKYRYEEDNSPLGVIGSFTYTEKSRTAS**(配列番号120)
【0176】
B.T7エピトープをOmpXループ3内のC末端融合としてディスプレイするための連続DNA配列(アミノ酸95/97の間)
C−末端ループ3ディスプレイベクターをコードする遺伝子要素の順序は:シグナル配列/OmpX 97−148/リンカー/OmpX 1−95/リンカー/T7タグペプチド/停止コドンである:この融合タンパク質は以下のDNA配列によってコードされる:
atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagctacctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttc/ggaggaagcgga/gcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagctctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatac/ggaggaagcggaggaa/tggcgagcatgaccggcggccagcagatgggt/taataa(配列番号121)

すぐ上のDNA配列=シグナルペプチド/AA97−AA148/リンカー/AA1−AA95/リンカー/T7タグの翻訳から生じるタンパク質配列:
MKKIACLSALAAVLAFTAGTSVA/TYKHDTSDYGFSYGAGLQFNPMENVALDFSYEQSRIRSVDVGTWIAGVGYRF/GGSG/ATSTVTGGYAQSDAQGQMNKMGGFNLKYRYEEDNSPLGVIGSFTYTEKSRTASSGDYNKNQYYGITAGPAYRINDWASIYGVVGVGYGKFQTTEY/GGSGGMASMTGGQQMG**(配列番号122)

T7タグペプチドをコードする配列:
5' tggcgagcatgaccggcggccagcagatgggt(配列番号123)
MASMTGGQQMG(配列番号124)

ストレプトアビジン結合性ペプチドをコードする配列:
5' accgtgctgatttgcatgaacatctgttggacgggcgaaactcag(配列番号125)
TVLICMNICWTGETQ(配列番号126)

SacI及びKpnI5’部位:
ttcgagctcggtacctttgaggtggtt(配列番号127)

シグナル配列:
atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct(配列番号128)
MKKIACLSALAAVLAFTAGTSVA(配列番号129)

SfiI&HindIII 3’部位:
ggccaaggtggccaagcttggctgtttt(配列番号130)
【0177】
C.ストレプトアビジン、T7タグモノクローナル抗体、及びC反応性タンパク質にN末端融合タンパク質として結合するペプチドのディスプレイ
N−末端T7タグディスプレイベクターを構築するため、プライマー1〜14:
プライマー(5’→3’)1:長さ60融解温度48センス鎖
ttcgagctcggtacctttgaggtggttatgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggcc(配列番号131)

プライマー(5’→3’)2:長さ60融解温度49センス鎖
tttcagcagtggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagctatggcgagca(配列番号132)

プライマー(5’→3’)3:長さ60融解温度49センス鎖
agctatggcgagcatgaccggcggccagcagatgggtggaggaagcggaggatctggtga(配列番号133)

プライマー(5’→3’)4:長さ60融解温度50センス鎖
cggaggatctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggctta(配列番号134)

プライマー(5’→3’)5:長さ60融解温度49センス鎖
gctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggt(配列番号135)

プライマー(5’→3’)6:長さ60融解温度50センス鎖
gtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatacccgacctacaaacacgac(配列番号136)

プライマー(5’→3’)7:長さ60融解温度51センス鎖
cgacctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttca(配列番号137)

プライマー(5’→3’)8:長さ60融解温度48センス鎖
cgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagcc(配列番号138)

プライマー(5’→3’)9:長さ60融解温度50センス鎖
cttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggtt(配列番号139)

プライマー(5’→3’)10:長さ60融解温度48センス鎖
tgccggtgttggttaccgcttcggaggaagcggagcgacttctactgtaactggcggtta(配列番号140)

プライマー(5’→3’)11:長さ60融解温度48センス鎖
ctgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtt(配列番号141)

プライマー(5’→3’)12:長さ60融解温度51センス鎖
acaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtg(配列番号142)

プライマー(5’→3’)13:長さ60融解温度49センス鎖
gcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagctaat(配列番号143)

プライマー(5’→3’)14:長さ47融解温度49アンチセンス鎖
aaaacagccaagcttggccaccttggccttattagcttgcagtacgg(配列番号144)

並びに図28及び図29に相当するナンバリングされたスキームを当該技術分野において公知の標準PCRにおいて用いて以下の配列を得た:
5’隣接&シグナル配列:
/ttcgagctcggtacctttgaggtggtt/atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct/(配列番号145)

nt1〜159:
/gcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc/(配列番号146)

nt160〜285:
tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatac/ccg/(配列番号147)

nt289〜441:
acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttc/taataa(配列番号148)
【0178】
次に、上記PCR断片を、図25のスキームに従い、プライマー1−14を用いるオーバーラップ伸長PCRを用いて融合させ、以下によってコードされる完全長N末端T7タグディスプレイベクターを得た:
5'ttcgagctcggtacctttgaggtggtt/atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct/gcgacttctact/atggcgagcatgaccggcggccagcagatgggt/ggaggccagtctggccag/tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatac/ccg/acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttc/ggaggaagcgga/gcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc/taataa 3'(配列番号149)
D.図28及び29によるN末端ループ2並びに図30及び図31によるC末端ループ3ディスプレイベクターを構築するため、下記DNA配列:
5’フランキング&シグナル配列(プライムw/PSD515)
ttcgagctcggtacctttgaggtggtt/atgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct(配列番号150)

nt1〜159:
gcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc(配列番号151)

nt160〜285:
tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcatt
aacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccact
gaatac(配列番号152)

nt289〜441:
acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttctaataa(配列番号153)

を合成し、以下のプライマー1〜16:
プライマー(5’→3’)1:長さ45融解温度49センス鎖:
ttcgagctcggtacctttgaggtggttatgaaaaaaattgcatgt(配列番号154)

プライマー(5’→3’)2:長さ57融解温度48アンチセンス鎖:
gcggtgaaagccagaactgcggccagtgctgaaagacatgcaatttttttcataacc(配列番号155)

プライマー(5’→3’)3:長さ57融解温度48センス鎖:
tggctttcaccgcaggtacttccgtagctacctacaaacacgacaccagcgactacg(配列番号156)

プライマー(5’→3’)4:長さ57融解温度49アンチセンス鎖:
ttttccatcgggttgaactgcagacccgcaccgtaggagaaaccgtagtcgctggtg(配列番号157)

プライマー(5’→3’)5:長さ57融解温度48センス鎖:
ttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgt(配列番号158)

プライマー(5’→3’)6:長さ57融解温度50アンチセンス鎖:
gcggtaaccaacaccggcaatccaggtgcctacgtcaacgctacgaatacggctctg(配列番号159)

プライマー(5’→3’)7:長さ57融解温度48センス鎖:
ggtgttggttaccgcttcggaggaagcggagcgacttctactgtaactggcggttac(配列番号160)

プライマー(5’→3’)8:長さ57融解温度48アンチセンス鎖:
ccgcccattttgttcatttggccctgagcgtcgctctgtgcgtaaccgccagttaca(配列番号161)

プライマー(5’→3’)9:長さ57融解温度49センス鎖:
gaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaaca gcccgct(配列番号162)

プライマー(5’→3’)10:長さ57融解温度51アンチセンス鎖:
cagtacggcttttctcggtgtaagtgaaagaaccgatcacacccagcgggctgttgt(配列番号163)

プライマー(5’→3’)11:長さ57融解温度49センス鎖:
cgagaaaagccgtactgcaagctctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcat(配列番号164)

プライマー(5’→3’)12:長さ57融解温度51アンチセンス鎖:
tgcttgcccagtcgttaatgcggtaagccggaccagcagtgatgccgtagtactggt(配列番号165)

プライマー(5’→3’)13:長さ57融解温度49センス鎖:
cgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccac(配列番号166)

プライマー(5’→3’)14:長さ57融解温度48アンチセンス鎖:
ccggtcatgctcgccattcctccgcttcctccgtattcagtggtctggaatttacca(配列番号167)

プライマー(5’→3’)15:長さ57融解温度48センス鎖:
cgagcatgaccggcggccagcagatgggttaataaggccaaggtggccaagcttggc(配列番号168)

プライマー(5’→3’)16:長さ19融解温度49アンチセンス鎖:
aaaacagccaagcttggcc(配列番号169)

を用いるPCRを図30のスキームに従って用いて重複させ:
ttcgagctcggtacctttgaggtggttatgaaaaaaattgcatgtctttcagcactggccgcagttctggctttcaccgcaggtacttccgtagct/acctacaaacacgacaccagcgactacggtttctcctacggtgcgggtctgcagttcaacccgatggaaaacgttgctctggacttctcttacgagcagagccgtattcgtagcgttgacgtaggcacctggattgccggtgttggttaccgcttc/ggaggaagcggagcgacttctactgtaactggcggttacgcacagagcgacgctcagggccaaatgaacaaaatgggcggtttcaacctgaaataccgctatgaagaagacaacagcccgctgggtgtgatcggttctttcacttacaccgagaaaagccgtactgcaagc/tctggtgactacaacaaaaaccagtactacggcatcactgctggtccggcttaccgcattaacgactgggcaagcatctacggtgtagtgggtgtgggttatggtaaattccagaccactgaatacg/gaggaagcggagga/atggcgagcatgaccggcggccagcagatgggt/taataa(配列番号170)
によってコードされる完全長C末端ディスプレイベクターを得た。
【0179】
E.20個の標準アミノ酸のうち19個のみを用いる(すなわち、ロイシンコドンを用いない)OmpXディスプレイ足場の構築
プラスミドpB33NLXT2(ループ2にT7タグを有するロイシン非含有OmpX)を、ループ2内にT7タグペプチドが挿入されているOmpXをコードするプラスミド発現ベクターpBAD33OmpX−T7タグ−L2に構築された非ロイシン含有OmpXライブラリ(NLL)から、アラビノースプロモーター(B)の転写制御の下、p15A複製起点を有する低コピープラスミドで、ロイシンを欠く最小培地において成長するロイシン栄養要求体(MC1061)におけるT7タグディスプレイに基づいてFACSを用いて選択することにより単離した。このOmpX変種は突然変異L17V、L14V、L10V、L26V、L37I、L113V、L123Vを有し、ここでアミノ酸のナンバリングは野生型OmpXの成熟形態に基づくものである。
【0180】
各ロイシンコドン位置にバリンまたはイソロイシンを有することを許容する、上で用いられる「ロイシン非含有」ライブラリは、当該技術分野において公知の方法を用いてオーバーラップ伸長PCRを行うことにより構築した。プラスミドpB33XT2をテンプレートとして、プライマーPD674/675、PD676/677、及びPD678/180と共に3つの別々の反応に用いた。表8を参照のこと。
【0181】
【表8】

【0182】
生じる生成物を精製してプールし、プライマーPD515/180を用いて第2回の増幅を行った。その生成物をKpnI/HindIII(加えて、テンプレートの繰り越しを除去するためのDpnI及びPstI)で消化して再精製し、KpnI/HindIIIで消化済のpBAD33の大断片にライゲートした。
【0183】
プラスミドpB33NLCPX(pBAD33におけるロイシン非含有環状順序置換OmpX)を、PD515/703、PD704/632、及びPD633/634を用いる3つの反応でのpB33NLXT2のPCR増幅によって構築した。精製した断片を各々精製し、外側プライマーPD5 15/634を用いる第2回のオーバーラップ反応でプールした。次に、生じる生成物を精製し、KpnI/HindIII(加えて、テンプレートの繰り越しを除去するDpnI)で消化し、再精製して、KpnI/HindIIIで消化されているpBad33の大断片にライゲートした。
【0184】
F.NLCPXのループ2内でのN末端ペプチドライブラリの構築
NLCPX−C7Cライブラリを、プライマーPD707/180を用いるpB33NLCPXのPCR増幅によって構築した。5’末端の断片の長さを伸長するため、生成物を25倍に希釈してプライマーPD753/180を含む新鮮なPCRに入れた。生じる生成物を精製し、SfiIで消化して再精製し、pB33NLCPXのSfiI/HindIIIによる消化で生じる大断片にライゲートした。次に、電気穿孔法を用いて該ライゲーション混合物で電気コンピタント大腸菌MC1061を形質転換し、グルコース補充LB中で細胞を一晩成長させてN末端ペプチドディスプレイライブラリを得た。これは等分することも、成長によってさらに増幅することもできる。
【0185】
G.非正準アミノ酸類似体
天然または改変された細胞の翻訳機構によって認識及び取り込みされ得る非正準アミノ酸類似体を、足場を以下で説明されるように再設計することにより、より効率的にディスプレイすることができる。Link, A.J. et al.(2003)Curr. Opin. Biotechnol. 14(6):604(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。1以上の天然アミノ酸に対応するすべてのコドンを、まず、内部のすべてのコドンをランダム化して代替アミノ酸をコードするコドンを生成する遺伝子組み立て突然変異誘発(gene assembly mutagenesis)によってOmp遺伝子変種ライブラリを構築することにより除去する。Bessette, et al. (2003) Methods. Mol. Biol. 231 :29-37(これは参照により本件明細書に組み込まれる)を参照のこと。その後、選択またはスクリーニングを用いて、対応する天然アミノ酸の不在下でパッセンジャータンパク質を効率的にディスプレイするOmp変種を単離する。
【0186】
例えば、ロイシン類似体トリフルオロロイシンを効率的にディスプレイする足場を創出するため、すべてのロイシンコドンを、それらが各々の位置にバリンまたはイソロイシンをコードすることができるようにランダム化した。このライブラリを、FACSにより、トリフルオロロイシンを補足した、19種類の標準アミノ酸(ロイシンは含まず)を含む培地におけるT7タグディスプレイに基づきソートした。生じるクローンのうちの1つ(NLOmpX T7タグ)は、ロイシンを欠く培地において、20種類のアミノ酸を含有する培地におけると同等レベルのT7タグディスプレイを示す。対照的に、野生型OmpX足場は、19種アミノ酸培地条件においてはペプチドディスプレイのレベルが実質的に低下する。この変異体OmpX配列(NLOmpX)は、成熟タンパク質における37位のロイシンコドンがイソロイシンで置換されている以外は、すべてのロイシンコドンがバリンで置換されている。ライブラリの創出及びスクリーニングの出発点としてのこのNLOmpXにより、ロイシンコドンを含有しない結合因子を除去するために、ロイシンを欠く培地において陰性選択を実施する能力を得うる。
【0187】
例えば、20種類の標準アミノ酸のうちの少なくとも1種類を欠く足場は、該欠乏アミノ酸の類似体を組み込んだライブラリのスクリーニングに好ましい。その理由は、OmpX DNA配列中に存在するロイシンコドンが多すぎると、ロイシンの除去、及びロイシン類似体(例えばトリフルオロロイシン)の添加により、キャリアOmpXの発現が阻害されるためである。図34を参照のこと。このように、野生型OmpXは培地中にLeuが無いと作製することができないが、ロイシンが存在すると、取り込みの速度が異なるため、ロイシン類似体は取り込まれ得ない。従って、足場(OmpX)からのロイシンの除去により、いかなるロイシンの存在も無しでの足場合成が可能となる。結果として、ロイシン類似体を組み込むポリペプチドライブラリを容易にスクリーニングすることができる。
【0188】
実施例4
発現ベクターを用いるアッセイ
以下の2つの方策を用いて、腫瘍細胞に結合し、かつ潜在的に内在化される配列を単離した。まず、腫瘍細胞と共にインキュベートし、腫瘍細胞を選択沈殿させることにより、細菌ディスプレイライブラリを結合性に基づいて選択した。沈殿による1回の富化を結合性または内在化性配列の富化に用いた。細胞外細菌を抗生物質ゲンタマイシンで選択的に殺すように設計された工程を含めたさらに2回の富化を実施した。その後、細胞内細菌を、腫瘍細胞溶解を優先的に生じる浸透圧ショック条件によって回収した。ゲンタマイシン選択工程を含む2回の選択により、FACS侵襲アッセイにおける緑色腫瘍細胞のパーセンテージがさらに増加した。図23を参照のこと。腫瘍細胞に付着する細菌の簡単な同時沈殿及びゲンタマイシン選択による最初の3回の富化の後、定量的かつ効率的なFACSスクリーニングを促進するため、GFP発現ベクターを各回から得られたライブラリプールの各々に電気穿孔で入れ、ライブラリ集団の残存に成功する選択をモニターした。図23を参照のこと。2回のFACSスクリーニングによりさらなる富化がもたらされた。図20を参照のこと。ATCC(Manassas、VA)から入手したZR−75−1腫瘍細胞株(ATCC No. CRL−1500)への内在化性に基づく5回の選択の後、1個のクローンを単離し、ゲンタマイシン保護アッセイに示されると同様にそれらの内在化効率についてアッセイした。単離されたクローンは、陰性対照に対して、標的細胞株中に内在化する能力を約200倍(0.005□ 1.0%)まで示した。第5回選択から単離された配列のパネルの配列を図7に示す。
【0189】
細菌ディスプレイによって選択されたペプチドが腫瘍細胞に特異的に結合したことを示すため、腫瘍標的ペプチドをディスプレイし、かつ自己蛍光タンパク質(例えばEGFP)を発現する細菌細胞を腫瘍細胞と共に1時間インキュベートした。非結合細胞を腫瘍細胞表面から洗浄し、蛍光顕微鏡を用いて画像を得た。図14を参照のこと。OmpAディスプレイ細菌のみと共にインキュベートした腫瘍細胞は蛍光を示さない(図14)のに対して、腫瘍標的ペプチドディスプレイ細菌は腫瘍細胞塊(ZR−75−1)に特異的に結合した。したがって、蛍光タンパク質を発現しペプチドをディスプレイする細菌を、無限に再生可能な診断試薬として、当該技術分野における熟練者に公知の様々なアッセイプラットフォーム、例えば、ELISA、蛍光顕微鏡、及びフローサイトメトリーにおいて使用することができる。
【0190】
本発明の開示を理解または達成するのに必要な程度まで、ここで言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々が個々に該程度まで組み込まれているのと同様に、参照により本件明細書に明示的に組み込まれる。
【0191】
上記のように本発明の例示的態様を説明したが、この開示の中身は例示目的で示されたものであり、当該技術分野における熟練者は様々な他の代替、適応及び変更を本発明の範囲内で成し得ることを注記する。従って、本発明はここで説明される特定の態様に限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0192】
関連出願との相互参照
本願は、Patrick S. Daugherty、Paul H. Bessette、及びJeffrey Riceを共同発明者として列挙する2003年8月18日出願の米国仮特許出願第60/495,698号(これは参照によりその全体がここに組み込まれる)の利益を主張する。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、生物学的実体の外表面上でキャリアタンパク質ループ内にポリペプチドをディスプレイするための発現ベクターを提供する。本発明により、要求される技術的専門性が最小限であり、労働集約度が低く、及びリガンド単離のプロセスを先行技術の方法と比較して数週間ないし数日早める、より確実なポリペプチドの生物学的実体外表面上ディスプレイが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】標的タンパク質への高親和性結合を可能にする、新たに同定されたジスルフィドループを示す。上部左のボックス内の第1配列は配列番号186であり、上部左のボックス内の第2配列は配列番号187であり、上部右のボックス内の第1配列は配列番号188であり、上部右のボックス内の第2配列は配列番号189であり、下部左のボックス内の第1配列は配列番号190であり、下部左のボックス内の第2配列は配列番号191であり、下部右のボックス内の第1配列は配列番号192であり、下部右のボックス内の第2配列は配列番号193である。
【図2】オリゴペプチドの高レベルディスプレイに介在するOmpAループ1挿入の位置、及び高効率クローニングを可能にするSfilクローニング部位の位置の図である。
【図3】図3Aは、外膜(OM)のプロテインA(OmpA)の第1細胞外ループ(L1)への挿入を用いた大腸菌表面上でのペプチドのディスプレイの模式図を示す。LPS=リポ多糖。図3Bは、いかなる挿入も伴わずにOmpAを過剰発現するプラスミドpB33OmpAを含む細胞のクローン集団のフローサイトメトリー分析のヒストグラムを示す。細胞は2時間誘導し、10nMビオチニル化抗−T7・タグmAb及びフィコエリトリン結合ストレプトアビジンで標識した。図3Cは、図3A、図3Bと同様に誘導及び標識されている、T7・タグペプチドをOmpAループ1内にディスプレイするプラスミドpB33OT1を含む細胞を示す。
【図4】ペプチドをディスプレイしない細胞(MC1061/pBAD33OmpA)、及びMC1061/pBAD18OmpAL1を用いてペプチドをディスプレイする細胞と比較して、ペプチドをディスプレイする細胞(MC1061/pBAD33L1)においては成長阻害が欠如していることを示す。
【図5】80回の倍増によるライブラリ多様性の維持を示し、これはライブラリを再利用のために無限に拡張できることを示す。
【図6】図6Aは、複数の配列アラインメントによって同定される、2つの、OmpXにおけるポリペプチドディスプレイ可能部位を示す。第1の配列は配列番号194であり、第2の配列は配列番号195である。該部位は、それらが(1)細胞表面から約1nMを超えて局在し、(2)異種間で非保存的であり、(3)立体配置的柔軟性を示し、かつ(4)比較的小さなモノマー性Ompタンパク質内に局在するので適している。図6Bは、OmpXの環状順序置換変種へのN末端融合体である細菌ディスプレイライブラリを示す。
【図7】図7Aは、発現プラスミドである、(いかなるパッセンジャータンパク質をも伴わずにN末端CPXを発現する)pBAD33CPX、(ColE1起点からGFPを発現する)pBAD18Grn、p15A起点を有するプラスミドからGFPを発現するpBAD33Grn、N末端CPX足場内にalajGFP(G)及びSA−1(表2)を同時発現するpBAD18GCS、及びN末端CPX足場内にAlajGFP(G)及びSA−1を発現するpBAD33GCSを含む大腸菌細胞(MC1061)の、フローサイトメトリーを用いて測定される蛍光強度を示す。図7Bは、標的ペプチドなしでOmpAを過剰発現する細菌細胞MC1061/pBAD33OmpAと共にインキュベートされた腫瘍細胞の蛍光顕微鏡分析を示す。細菌は自己蛍光タンパク質(例えば、alajGFP)を内部に、また選択された腫瘍結合性/侵害性ペプチドを外部に、同時発現する。図7Cは、ヒト乳癌細胞を標的とする細菌細胞の蛍光顕微鏡分析を示す。MC1061細菌は、プラスミドpBAD33OmpA15から、自己蛍光タンパク質を内部に(例えば、AlajGFP)、及び選択された腫瘍結合性/侵害性ペプチド(YCLSYSNGRFFHCPA)を外部に発現する。
【図8】図8Aは、フローサイトメトリーを用いて測定される、C−反応性タンパク質結合性ペプチドの富化を示す。誘導された細胞は未選択ライブラリ集団において10nMのビオチン−CRP及び6nMのSAPEで標識された。図8Bは、フローサイトメトリーを用いて測定される、C−反応性タンパク質結合性ペプチドの富化を示す。誘導された細胞は、2回の磁気選択の後、10nMのビオチン−CRP及び6nMのSAPEで標識された。図8Cは、フローサイトメトリーを用いて測定される、C−反応性タンパク質結合性ペプチドの富化を示す。誘導された細胞は、2回の磁気選択及び1回のFACSの後、10nMのビオチン−CRP及び6nMのSAPEで標識された。
【図9】磁気選択及びFACSを用い、異なる標的リガンド濃度で単離された、表面ディスプレイされた高親和性抗T7タグmAb結合性ペプチドの代表的な配列を示す。2回のMACSを10nMの抗体濃度で行い、次いで33pMの抗体を用いるFACSを行った。ボールド体の残基は、それに対して抗体が生じた、最下部に示される野生型T7タグエピトープと同一の位置を示す。最上部から最下部にかけて、配列の識別子は配列番号196〜208である。
【図10】図10Aは、フローサイトメトリーを用いる細胞表面ディスプレイされたストレプトアビジン結合性ペプチドと、ここで説明される競合体としてのビオチンとの、結合親和性の測定である。見かけの平衡解離定数(KD)の決定。図10Bは、フローサイトメトリーを用いる細胞表面ディスプレイされたストレプトアビジン結合性ペプチドと、ここで説明される競合体としてのビオチンとの、結合親和性の測定である。細胞表面ディスプレイされたペプチドの解離速度定数(kdiss)の決定。クローンSA−1及びSA−7のペプチド配列は表2に列挙される。クローンHPQは、比較のため、OmpAループ1に挿入された配列SAECHPQGPPCIEGR(配列番号209)を含む。
【図11】抗T7タグ抗体の抗体エピトープマッピングを示す。示される濃度はFACSを用いるスクリーニングに用いられるものである。配列識別子は、上部左のボックスについて:配列番号210、配列番号211、配列番号212、配列番号213、及び配列番号214;上部右のボックスについて:配列番号215、配列番号216、配列番号217、配列番号218、及び配列番号219;中央左のボックスについて:配列番号220、配列番号221、及び配列番号220;中央右のボックスについて:配列番号223、配列番号224、及び配列番号225;並びに下部のボックスについて:配列番号226、配列番号227、配列番号228、配列番号229、及び配列番号230であり、w.t.は配列番号231である。
【図12】YFPのループ内にグラフト化されたストレプトアビジン結合性ペプチドSA−1の解離速度の測定を示す。フローサイトメトリーを用いて、競合体としてのビオチンの添加後の、ストレプトアビジン被覆1μmビーズに結合したYFPの蛍光を測定した。
【図13】フローサイトメトリーを用いて測定された、ストレプトアビジン結合性配列の平衡解離定数を示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号232、配列番号233、及び配列番号234である。
【図14】OmpXを用いて例示されるポリペプチドディスプレイのために位相幾何学的順置換Ompを用いる末端融合ディスプレイの例を示す。当該技術分野における熟練者が習熟するPCR法を用いて、表面露出ループ内における末端ポリペプチドディスプレイを達成するため、Ompポリペプチド配列の順序が下部ボックスに示されるものとなるように再構成遺伝子配列を組み立てる。
【図15】図15Aは、OmpXを過剰発現する対照区大腸菌のフローサイトメトリー分析を示す。細胞をLB成長培地において成長させ、1×洗浄して抗−T7タグモノクローナル抗体と共にインキュベートし、再度洗浄して10nMのストレプトアビジンフィコエリトリンと共にインキュベートし、フローサイトメトリーを用いて分析した。図15Bは、15Aと同一の試料の緑色対赤色蛍光の2パラメータプロットを示す。図15Cは、モノクローナル抗体(MC1061/pCPX−T7)によって認識されるT7タグペプチドエピトープをディスプレイする大腸菌を示す。細胞を液体成長培地中で成長させ、1×洗浄して抗−T7タグモノクローナル抗体と共にインキュベートし、再度洗浄して10nMのストレプトアビジンフィコエリトリンと共にインキュベートし、フローサイトメトリーを用いて分析した。図15Dは、15Cと同一の試料の緑色対赤色蛍光の2パラメータプロットを示す。
【図16】パッセンジャーポリペプチドのN末端ディスプレイ(N−CPX)またはC末端ディスプレイ(C−CPX)のいずれかを生じる再構成OmpXディスプレイベクター(CPX)を用いる、ストレプトアビジンに結合するジスルフィド拘束ペプチド(SA−1pep)、または抗−T7エピトープ抗体に結合する非拘束ペプチド(T7pep)の大腸菌表面上でのディスプレイを示す。一次標識濃度は、蛍光標識に用いられるストレプトアビジン−フィコエリトリンまたは抗−T7モノクローナル抗体のいずれかの濃度である。
【図17】OmpAループ内にディスプレイされた完全にランダムなライブラリから単離される、ストレプトアビジン結合性ペプチドのコンセンサス配列を示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号235〜245である。
【図18】腫瘍細胞認識のための内因性蛍光性細菌ディスプレイペプチドライブラリの、フローサイトメトリーを用いたスクリーニングを示す。
【図19】2つの別個のコンセンサス配列を有するCRP結合性ペプチドを示す。配列識別子は、最上から最下部に向けて、配列番号246〜256である。
【図20】ZR−75−1ヒト乳癌腫瘍細胞に結合するOmpAにおける15量体ライブラリから単離されるペプチド配列を示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号257〜266である。
【図21】選択前(ソートされていないライブラリ)のOmpA15量体ライブラリ、及びT7タグ抗体への結合に基づき1もしくは2回の磁気選択(MACS)から生じる集団の、サイトメトリー分析を示す。
【図22】フローサイトメトリーによって測定される、磁気選択によるCRP結合性ペプチドの富化を示す。
【図23】腫瘍結合性かつ内在性である細菌の富化を、FACSを用いて示す。
【図24】フローサイトメトリーによって測定される、大腸菌上のストレプトアビジン結合性ペプチドディスプレイの解離速度定数を示す。
【図25】図25Aは、OmpXのループ2にディスプレイされる約1×109個の独自クローンを含む、二重拘束ライブラリ(XCCX4CX7CX)から選択されるストレプトアビジン結合性ペプチドを示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号267〜275である。図25Bは、OmpXのループ2にディスプレイされるX4CX3CX4ライブラリから選択されるストレプトアビジン結合性ペプチドを示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号276〜284である。
【図26】2サイクルのMACS及び1サイクルのFACSを用いて単離される、HIV−1 gp120結合性ペプチドを示す。配列識別子は、最上部から最下部に向けて、配列番号285〜297である。
【図27】残基97で始まって95で終わる(P96は削除)、OmpX T7のループ2内でのT7ペプチドエピトープのC末端ディスプレイに必要な順序及び遺伝的要素を示す。
【図28】環状順序置換及びOmpX残基53/54の間で開くループを用いてN末端融合ディスプレイを構築するための例示方法論を示す。ディスプレイされたポリペプチドは残基95に融合し、リーダーペプチドはaa97の上流に遺伝的に融合する。
【図29】N末端OmpXディスプレイベクターの構築に用いられるプライマーを示す。プライマーは以下の通りである:プライマー1=センスttcgagctcggtacctttgaggtggttatgaaaaaaattg(配列番号298)プライマー2=アンチセンスctggcctccacccatctgctggccgccggtcatgctcgccatagtagaagtcgcagctac(配列番号299)プライマー3=センスggccagcagatgggtggaggccagtctggccagtctggtgactacaacaaaaaccagtac(配列番号300)プライマー4=アンチセンスcagtagaagtcgctccgcttcctccgaagcggtaaccaacaccgg(配列番号301)プライマー5=センスggaggaagcggagcgacttctactgtaactggcggttacgcacag(配列番号302)プライマー6=アンチセンスaaaacagccaagcttggccaccttggccttattagcttgcagtacggcttttctcg(配列番号303)
【図30】パッセンジャーポリペプチドのC末端ディスプレイを可能にするのに必要なOmpX断片の配置を示す。C末端ディスプレイを生じるOmpX断片の増幅及び組み立てに必要とされるオリゴヌクレオチドプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応の適用から生じるDNA産生物に沿って図示される。
【図31】オーバーラップPCRによりOmpXを用いるC末端ディスプレイベクターの構築に用いることができるオリゴヌクレオチドプライマーのアニール部位を示す。プライマーは以下のものである:プライマー1=センスttcgagctcggtacctttgaggtggttatgaaaaaaattg(配列番号304)プライマー2=アンチセンスctggcctccacccatctgctggccgccggtcatgctcgccatagtagaagtcgcagctac(配列番号305プライマー3=センスgccagcagatgggtggaggccagtctggccagtctggtgactacaacaaaaaccagtac(配列番号306)プライマー4=アンチセンスcagtagaagtcgctccgcttcctccgaagcggtaaccaacaccgg(配列番号307)プライマー5=センスggaggaagcggagcgacttctactgtaactggcggttacgcacag(配列番号308)プライマー6=アンチセンスtgctggccgccggtcatgctcgccatctggccagactggcctccgtattcagtggtctgg(配列番号309)プライマー7=アンチセンスaaaacagccaagcttggccaccttggccttattaacccatctgctggccgccggtcatgc(配列番号310)
【図33】酵素プロテアーゼ及びペプチド基質の選択、同定、及び改変にN末端癒合ディスプレイベクター(N−CPX)を用いる、ポリペプチド酵素基質のディスプレイを示し、ここで、該基質と内部発現gree蛍光性タンパク質とは緑色と赤色の蛍光で示される。表面基質を開裂する所定のプロテアーゼで処理された細胞では赤色蛍光が抜けるが緑色蛍光を留める。緑色蛍光(赤ではない)細胞の単離により、所定のプロテアーゼによって開裂または分解することができる基質の同定が可能となる。
【図34】ロイシンコドンを有さないように改変された遺伝子をコードすることで、様々な合成ロイシン類似体を取り込むペプチドのディスプレイを可能にする、Omp内にペプチドをディスプレイする細胞の、フローサイトメトリー分析を示す。非正準アミノ酸のディスプレイが、トリフルオロロイシン(Tfl)及びOmpXを用いて例示される。この図は、非修飾野生型(最上部)またはロイシン無しOmpX(最下部)足場のいずれかを(左)19アミノ酸(Leu欠乏)、(中央)19アミノ酸+トリフルオロロイシン(ロイシン無し)、または(右)20標準アミノ酸の存在下で用いる、(いかなるロイシン残基をも含まない)T7タグペプチドのディスプレイのレベルの比較をも示す。これらは抗−T7タグビオチニル化抗体で標識し、PBSで1回洗浄して、ストレプトアビジン−フィコエリトリン(Molecular Probes, Eugene, OR)で標識した。19+Tfl試料(中央)の約5.6から約63.7への緑色蛍光の増加により、Tflを含むペプチドの細菌ディスプレイライブラリのスクリーニングが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的実体の外表面上の、所定のリガンドと相互作用することが可能であるキャリアタンパク質ループ内に、所定のパッセンジャーポリペプチドを発現しディスプレイすることが可能な発現ベクター。
【請求項2】
前記キャリアタンパク質ループが開放され、外表面上に露出したN末端、外表面上に露出したC末端、またはその両方を生じることを特徴とする、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
天然のC末端及び天然のN末端がペプチドリンカーを介して融合していることを特徴とする、請求項2記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記外表面上に露出したN末端及び前記外表面上に露出したC末端に前記リガンドが接近可能である請求項2記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記パッセンジャーポリペプチドの前記C末端が前記キャリアタンパク質の前記N末端に融合していることを特徴とする、請求項2記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記パッセンジャーポリペプチドの前記N末端が前記キャリアタンパク質の前記C末端に融合していることを特徴とする、請求項2記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記キャリアタンパク質が細菌外膜タンパク質である請求項1記載の発現ベクター。
【請求項8】
前記細菌外膜タンパク質がOmpAまたはOmpXである請求項1記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記ポリペプチドがOmpAの第1細胞外ループ内に発現する請求項8記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記ポリペプチドがOmpXの第2細胞外ループ内に発現する請求項8記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記ポリペプチドがOmpXの第3細胞外ループ内に発現する請求項8記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記キャリアタンパク質がOmpXである請求項2記載の発現ベクター。
【請求項13】
前記ポリペプチドがストレプトアビジンまたはT7結合性ペプチドである請求項1記載の発現ベクター。
【請求項14】
前記生物学的実体が細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞である請求項1記載の発現ベクター。
【請求項15】
生物学的実体が細菌細胞である請求項1記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記細菌細胞が大腸菌、ソネ赤痢菌、志賀赤痢菌、フレクスナー赤痢菌、サルモネラ菌、腸炎菌、エンテロバクター・エアロゲネス、セラチア・マルセッセンス、ペスト菌、または肺炎桿菌である請求項15記載の発現ベクター。
【請求項17】
低コピー複製起点をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項18】
前記低コピー複製起点がp15A複製起点である請求項17記載の発現ベクター。
【請求項19】
殺菌性抗生物質耐性タンパク質をコードする遺伝子をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項20】
前記殺菌性抗生物質耐性タンパク質をコードする遺伝子がクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードすることを特徴とする請求項19記載の発現ベクター。
【請求項21】
少なくとも1つのSfiIエンドヌクレアーゼ制限酵素部位をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項22】
アラビノースaraBAD大腸菌オペロンプロモーターをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項23】
発現がL−アラビノースの添加で誘導され、かつアラビノースの除去及びグルコースの添加によって停止することを特徴とする、請求項22記載の発現ベクター。
【請求項24】
請求項1記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
複数の請求項1記載のポリペプチドを発現することが可能な複数の発現ベクターを創出する工程、及び、発現を誘導する工程を含むことを特徴とする、ポリペプチドディスプレイライブラリの製造方法。
【請求項26】
請求項1記載の発現ベクターの発現を誘導することによって生物学的実体の外表面上に発現したポリペプチド。
【請求項27】
OmpAの第1細胞外ループ内に発現した請求項26記載のポリペプチド。
【請求項28】
OmpXの第2細胞外ループ内に発現した請求項26記載のポリペプチド。
【請求項29】
OmpXの第3細胞外ループ内に発現した請求項26記載のポリペプチド。
【請求項30】
請求項2記載の発現ベクターの発現を誘導することによって生物学的実体の外表面上に発現したポリペプチド。
【請求項31】
OmpX内に発現した請求項30記載のポリペプチド。
【請求項32】
請求項1記載の発現ベクターによって発現及びディスプレイされたポリペプチドを含むことを特徴とするポリペプチドディスプレイライブラリ。
【請求項33】
請求項2記載の発現ベクターによって発現及びディスプレイされたポリペプチドを含むことを特徴とするポリペプチドディスプレイライブラリ。
【請求項34】
試料中の所定のリガンドを検出、モニター、または測定するためのアッセイ方法であって、請求項1記載の発現ベクターを誘導して前記ポリペプチドを発現させる工程、及び、該ポリペプチドを試料と接触させ、該ポリペプチドが該リガンドと相互作用するかどうかを観察する工程を含むことを特徴とする、該方法。
【請求項35】
試料中の所定のリガンドを検出、モニター、または測定するためのアッセイ方法であって、請求項2記載の発現ベクターを誘導して前記ポリペプチドを発現させる工程、及び、該ポリペプチドを試料と接触させ、該ポリペプチドが該リガンドと相互作用するかどうかを観察する工程を含むことを特徴とする、該方法。
【請求項36】
前記キャリアポリペプチドが所定のアミノ酸をコードする少なくとも1つのコドンを含む核酸分子によってコードされ、該所定のアミノ酸が該所定のアミノ酸と構造的に類似する代替アミノ酸をコードする置換コドンで置換されていることを特徴とする、請求項1記載の発現ベクター。
【請求項37】
前記所定のアミノ酸をコードするコドンがすべて置換されていることを特徴とする請求項36記載の発現ベクター。
【請求項38】
前記生物学的実体によって、少なくとも1つの非正準アミノ酸類似体が前記ディスプレイポリペプチド中に組み込まれることを特徴とする、請求項36記載の発現ベクター。
【請求項39】
前記所定のアミノ酸がロイシンである請求項36記載の発現ベクター。
【請求項40】
前記代替アミノ酸がバリン、イソロイシン、またはトリフルオロロイシンである請求項39記載の発現ベクター。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2007−513602(P2007−513602A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524024(P2006−524024)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/026873
【国際公開番号】WO2005/047461
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【Fターム(参考)】