説明

ポリペプチド・ドラッグ物質および他の難吸収性活性成分を含む組成物の経口および非経口投与後の薬理活性を強化させる組成物および方法

【課題】経口投与された場合には、あるとしても極めてわずかな吸収性しか通常は示されないポリペプチド・ドラッグ物質の吸収性を強化する新規な医薬および組成物とともに新規な方法の提供。さらにまた、経口投与または非経口投与にかかわらず、ポリペプチド・ドラッグ物質の生体利用性および薬理学的有効性を顕著に強化する新規な組成物および方法の提供。
【解決手段】一般式aanの治療力を有するポリペプチドをアルキルまたはアリール担体部分に化学的に連結してプロドラッグを生成し、さらに前記生理学的異常を示している前記人間を含まない哺乳動物に前記プロドラッグを投与する工程であって、ここで式中aaが、アミノ酸であり、nが、2から40の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき米国特許出願第60/262,337号(2001年1月17日出願);60/332,636号(2001年11月6日出願);60/287,872号(2001年5月1日出願;および60/287,886号(これもまた2001年5月1日出願)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
一般に本発明は、経口および非経口投与を可能にし、さらに、治療的に活性なポリペプチド、擬似ペプチドおよびペプチド摸倣体、そうでなければ特に経口では難吸収性であるかまたは非経口的に投与された場合にわずかな生体利用性しか示さない物質の生体利用性および薬理作用を顕著に高める組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
2つまたは3つ以上のアミノ酸を有する治療的に有効なポリペプチド(aan;n≧2)は経口で吸収性が貧弱であることが文献に記載されている。アミノ酸が2つしかない(または同類構造の)ポリペプチドでさえ非常に狭い吸収域および貧弱な吸収性を示す。例えば、「臨床医デスクリフェレンス」(Physician's Desk Reference(PDR))は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)抑制物質、エナラプリラート(Enalaprilat)(R1−Ala(アラニン)−Pro(プロリン);n=2)は、経口で非常に難吸収性であることを報告している。エナラプリル(Enalapril)(R2−Ala−Pro)(前記はエナラプリラートのプロドラッグである)は経口での吸収性は増しているが、最終結果は、プロドラッグのin vivo切断で放出される活性部分(エナラプリラート)の単に25%に対応する生体利用性を示しただけである。対照的に、リシノプリル(Lisinppril)(R2−Lys(リジン)−Pro)は比較的良好な水への可溶性を示すが、経口による生体利用性は中程度でしかなく(<25%)、Tmax生体内(in vivo)で血清レベルが最大になる時間)は7時間を越える。したがってこのクラスの治療薬種は、好ましくは非経口デリバリー方法、例えば注射によって投与される。しかしながら、静脈内デリバリーでさえ、治療的に活性を有する前記物質種の血中半減期は比較的短い。
【0004】
食品に由来するトリペプチドのいくつかは経口で効果的に吸収されるが、その程度は明らかではないこともまた知られている。さらまた、活性を有するトリペプチドまたはそれより長いペプチド・ドラッグ物質(n≧3)で経口による吸収を示すものは特定されていない。
【0005】
現在係属中の米国特許出願第09/844,426号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)で、本発明者らはポリペプチド・ドラッグ物質(aan)および他の難経口吸収性薬剤の経口吸収を可能にする方法を開示した。本発明者らは、その後驚くべきことに、さらに別の担体系によって難吸収性活性薬剤の薬理活性の同様な強化が効果的に達成できること、および、より複雑な任意のリンカーによってさらに別の改善結果が提供されることを発見した。さらにまた、本発明者は、本発明の方法の実施によって、ポリペプチド・ドラッグ物質の長さ(n)は、特に組成物を非経口的に(例えば静脈内(i.v.)投与によって)投与するときは延長することが可能であり、前記活性薬剤部分の薬理学的および治療効果の劇的な改善結果が得られることを発見した。したがって、本発明を実施することによって、公知の治療的に有用なポリペプチド種(またその他に擬似ペプチドまたはペプチド摸倣体)を化学的に改変して、前記物質種の経口投与を可能にし、さらに非経口ルートで投与されたときでもその薬理学的特性を劇的に改善することができる。
【0006】
本開示では、“ペプチド”という用語は、天然に存在する任意のアミノ酸配列の他に擬似ペプチドおよびペプチド摸倣体に対応する。“擬似ペプチド”とは、ペプチドを構成するアミノ酸残基またはそれらアミノ酸残基の結合の1つまたは2つ以上の化学的改変を意味し、これらは、例えばそのD型立体配置でのアミノ酸の使用、N−メチルアミノ酸の使用、1つまたは2つ以上のペプチド結合(−CO−NH)の還元結合(−CH2NH)による置換および/または−NHCO、−CH2CH2、−COCH2、−CHOHCH2、−CH2Oによる置換であるが、ただしこれらに限定されない。“ペプチド摸倣体”とは、その−C−骨格がオリゴウレア骨格またはオリゴカルバメート骨格によって置換された任意のアミノ酸配列を意味する。この定義にはω(オメガ)−ペプチドも含まれる。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
第一の実施例では、本発明は、担体部分および治療的に活性を有するペプチド種を含む薬剤を提供する。ペプチドはaanの形態を有し、nはペプチド内のアミノ酸残基の数である。好ましくは担体部分は、活性ペプチド種をin vivoでの酵素分解から保護する十分な長さまたは立体的な大きさを有するアリールまたはアルキル基を含む。より好ましくは担体は、シンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル、およびフマロイルを含む群から選択される。さらにまた、担体部分は、一般式aan(nは2から40の整数である)を有する治療的に活性なペプチド種に化学的に連結させることができる。さらに、本発明の実施例は経口吸収が貧弱である治療的に活性なペプチドを意図する。好ましくは、nは3から6の整数である。より好ましくはnは5である。さらに好ましくは治療的に活性なペプチド種はTyr−Gly−Gly−Phe−Metを含む。
【0008】
また別の実施例では、本発明の薬剤はさらにペプチドを担体部分に連結するリンカー種を含む。好ましくはリンカー種は、天然のペプチド、擬似ペプチドおよびペプチド摸倣体からなる群から選択され、群の各構成物質は4つまたはそれより少ないアミノ酸残基を含む。本発明のこの実施例の1つのある特徴では、リンカー種は担体に直接結合される。また別には、リンカー種は−C6または−C8酸性部分を介して担体に結合される。より好ましくはリンカー種はGly−カルバ−Gly(擬似ペプチド)である。さらに好ましくはリンカー種は−Cn鎖に結合し、ここでnは6から8の整数である。
【0009】
別の実施例では、本発明は、その必要がある患者に投与される医薬組成物を提供する。医薬組成物は、直ぐ上に記載した薬剤および1つまたは2つ以上の医薬として許容できるアジュバントを含む。好ましくは組成物は経口投与用に製剤化される。また別に、組成物は非経口投与用に製剤化される。好ましくは組成物は静脈内投与用に製剤化される。本発明のこの実施例はまた、生物学的に活性な形態の薬剤を12時間までの時間にわたって生理学的に有効なレベルで患者の身体系統に放出する組成物を意図する。好ましくは、組成物は、生物学的に活性な形態の医薬物質を24時間までの時間にわたって生理学的に有効なレベルで患者の身体系統に放出する。本発明のこの実施例では、ペプチド種は好ましくは感染症、ウイルス性疾患または癌疾患に特徴的なエピトープまたは免疫配列である。
【0010】
さらに別の実施例では、本発明は、以下の工程を含む、治療的に有効な物質種の投与によって生理的異常を治療する方法を意図する:一般式aan(式中aaはアミノ酸であり、nは2から40の整数である)の治療力を有するポリペプチドをアルキルまたはアリール担体部分に化学的に結合させてプロドラッグを生成し、さらに生理学的異常を示している患者にプロドラッグを投与する。好ましくは、本発明の実施で用いられる治療力を有するポリペプチドは経口吸収が貧弱で、さらに前記担体部分は、シンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル、およびフマロイルを含む群から選択される。
【0011】
また別には、本発明のこの実施例は、プロドラッグを経口的または非経口的に投与する方法を提供する。さらに本実施例のまた別の例では、方法は、リンカー種を介して担体部分と連結された治療力を有するポリペプチドの使用を意図する。
【0012】
さらに別の実施例では、本発明は、以下の工程を含む、医薬製剤に含まれるaanの形態を有する活性なポリペプチド・ドラッグ物質の吸収および生体利用性を強化する方法を提供する:ポリペプチド部分Xn(式中nは1から3であり、末端アミノ酸は、Pro(プロリン)、Met(メチオニン)およびArg(アルギニン)からなる群から選択される)をポリペプチド・ドラッグ物質の一方の端に付加し、さらに保護部分をポリペプチド・ドラッグ物質の反対側の端に付加する。
【0013】
また別には、本出願の発明は、以下の工程を含む、医薬製剤に含まれるaanの形態を有する活性なポリペプチド・ドラッグ物質の吸収および生体利用性を強化する方法を提供する:Pro、MetおよびArgからなる群から選択される末端アミノ酸を有し、さらにポリペプチド物質の反対側の末端に保護部分を有する活性なポリペプチド・ドラッグ物質を製剤化し、ここで末端アミノ酸(Pro、MetまたはArg)は保護部分によって封鎖されていない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
ある実施例では、本発明は、上記で定義した担体部分および治療的に活性を有するペプチド種を含む、生理学的異常の治療において使用する医薬組成物を提供する。担体は、活性な薬剤種のin vivoでの急速な酵素分解の抑制に十分な長さおよび/または立体的な大きさを有するアリール基またはアルキル基を含む。好ましい担体は、シンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニルおよびフマロイルを含む群から選択される。担体部分は、一般式aan(aaはアミノ酸、または上記で定義したように化学的または構造的変種であり、nは2から40の整数である)の治療力を有するポリペプチド(ポリペプチドは経口吸収が貧弱である)に化学的に連結される。好ましくは、本発明の薬剤組成物において、nは3から6の整数である。より好ましくはnは5である。特に好ましい実施例では、ポリペプチドはTyr−Gly−Gly−Phe−Met1である(1Tyr=チロシン;Gly=グリシン;Phe=フェニルアラニン;Met=メチオニン)。
【0015】
また別の変形例では、本発明のプロドラッグはさらにペプチドを担体種に連結するリンカー種を含む。好ましくはリンカー種は、4未満残基の天然のペプチド、擬似ペプチド、ペプチド摸倣体であり、担体に直接結合されているか、または−C6もしくは−C8酸性部分またはこれらの複合体を介して担体に結合される。好ましいリンカーは擬似ペプチドGly−カルバ−Glyであり、−C6または−C8鎖に結合されている(またはされていない)。したがって、本発明は3つの成分を有する物質とみなすことができる。すなわち、第一に治療的に活性な成分はペプチドであり、第二はリンカー種であり、第三は担体部分である。
【0016】
経口的にデリバーされるとき、本発明の薬剤組成物は、プロドラッグを取り込んだ患者に全身的用量の活性薬剤種をデリバーすることを可能にする。前記活性ペプチド(通常は直ちに胃腸管で治療力のない形態に分解される)は、担体成分の保護作用によって残存し、長時間にわたって患者の身体系統に存続する。時間をかけて、前記マルチ成分系は(おそらく肝臓または血漿中の酵素による加水分解によって)ゆっくりと崩壊し、薬理学的に活性な成分を放出する。本発明のまた別の利点は、活性成分を放出するそのような崩壊動態は、改変されていないポリペプチド・ドラッグ種の代謝性崩壊に関わるプロセスの場合よりも顕著に緩慢で、患者の身体系統に対する活性物質種の持続的、制御的放出を効果的に可能にし、したがって薬理学的に有効な血中レベルをさらに長時間にわたって維持するということである。
【0017】
別の実施例では、本発明は同様なマルチ成分物質を含む医薬組成物を意図する。医薬組成物は、非経口ルートで投与されたとき、活性薬剤種と担体および/または連結用成分との結合によって提供される、酵素による崩壊に対する保護作用を利用し、それによって治療力を有する成分のin vivoでの半減期を延長し、その薬理学的特性を改善する。本発明の実施例で使用される好ましい治療薬部分は、感染症、ウイルス疾患または癌疾患に特徴的なエピトープまたは免疫配列である。したがって、本発明は、その薬理学的有効性が強化された免疫能力を有するペプチドのためのデリバリー方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の実施例では、本発明は上記で定義した医薬組成物を意図する。医薬組成物は、アリール基またはアルキル基を含む担体部分、場合によってリンカー種、および一般式aan(aaはアミノ酸またはその化学的もしくは構造的変種で、nは2から40の整数である)の治療力を有するポリペプチド、並びに医薬として有効なアジュバント種を含む。
【0019】
当業者には理解されるところであるが、本発明と一緒に用いられる治療的に活性なポリペプチドの1つまたは2つ以上のアミノ酸は、その治療力を有する物質の薬理学的活性を顕著に低下させることなく(好ましくは強化させながら)化学的または構造的に改変することができる。これらの改変ポリペプチドは本発明で用いることができる。
【0020】
理想的には、本発明のプロドラッグは、製剤化学分野の業者にとって公知の医薬的に許容できるアジュバントを含む医薬組成物に製剤化される。
【0021】
典型的な経口投与ルートでデリバーされた場合には薬理学的に効果がないことが示されている公知の治療的に活性なポリペプチド種を担体物質種に連結することによって改変し、活性物質の効果的な生体利用性とともに活性種の治療的に有効な制御放出を達成することができる。
【0022】
別の実施例では、本出願の発明は、以下の工程を含む、治療的に有効な物質種の経口的または非経口的投与によって生理学的異常を治療する方法を包含する:一般式aan(式中aaはアミノ酸であり、nは2から40の整数である)の治療力を有するポリペプチド(ポリペプチドは経口吸収が貧弱である)またはその化学的もしくは構造的変種を、アルキルまたはアリール担体部分(好ましくはシンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル、およびフマロイルを含む群から選択される)に化学的に結合させてプロドラッグを生成し、さらに生理学的異常を示している患者にプロドラッグを経口的または非経口的に投与する。また別に、本発明の方法の実施では、ポリペプチドはリンカー種を介して担体部分と化学的に連結される。
したがって、本発明を用いて、あまり望ましくない投与ルートまたは効果が少ない投与ルートで通常は投与する必要がある、治療的に活性を有するポリペプチドを経口投与することによって生理学的異常を治療することが可能である。
【0023】
本発明では、以下の2つの手順のいずれかを用いることによって活性なポリペプチド・ドラッグ物質の吸収および生体利用性を高度に強化することができる:Pro、MetおよびArgからなる群から選択されるアミノ酸で終わるポリペプチド部分Xn(式中nは1から3である)を活性なポリペプチド・ドラッグ物質の一方の端に付加し、さらに活性ポリペプチドの反対側の端に保護部分を付加する;また別には、Pro、MetおよびArgからなる群から選択される末端アミノ酸を有し、ポリペプチド物質の反対側の末端に保護部分を有するが、末端アミノ酸(Pro、MetまたはArg)は保護部分によって封鎖されていないことを条件とする活性なポリペプチド・ドラッグ物質を製剤化することによる。
【0024】
さらに別の実施例では、本出願の発明は、以下の工程を含む、一般式aan(式中aaはアミノ酸であり、nは2から40の整数である)の治療的に有効なポリペプチド(ポリペプチドは経口吸収が貧弱である)またはその化学的もしくは構造的変種の制御放出投与の方法を提供する:前記ポリペプチドをアルキルまたはアリール担体部分(好ましくはシンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル、およびフマロイルを含む群から選択される)に化学的に連結させてプロドラッグを生成し、さらに患者に前記プロドラッグを経口的投与する。好ましい実施例では、ポリペプチドはリンカー種を介して担体部分と化学的に連結される。さらに好ましくは、リンカー種はアミノ酸、擬似ペプチドまたはペプチド摸倣体であり、場合によって担体に−C6または−C8酸性残基を介して結合される。本発明のプロドラッグの、おそらくは酵素による分解動態によって、治療的に活性なポリペプチド種は患者の身体系統に対して24時間までの比較的長時間にわたって用量依存態様で放出される。
【実施例】
【0025】
Met−エンケファリン(Tyr−Gly−Gly−Phe−Met)は天然に存在するペンタペプチド(n=5)で、エンドルフィン類に属する。この物質は、痛覚脱失の基礎的メカニズムに中心的に関与することが判明している。これは非経口的に投与されたとき一過性の痛覚脱失作用をもたらすが、経口的に投与されたときには作用は認められていない。これの作用メカニズムは、脳内のオピオイド・デルタ・レセプターとの結合を必要とすると考えられている。Met−エンケファリンは非常に急速にin vivoでテトラペプチドに分解され、後者は続いて代謝される。Met−エンケファリンの薬理学的動態についていえば、プロドラッグの血中レベルは、代謝物の血中レベルと同様に非経口的に投与したときでもほとんど測定することができない。
【0026】
具体例1:CY5M、本発明のシンナモイル−Met−エンケファリン・プロドラッグの投与による鎮痛効果
本発明のプロドラッグ(引用に簡便なようにCY5Mと称する)(一般式担体−aa5のシンナモイル−Met−エンケファリンを含む)は、ラットによるホット・プレート・テストで経口投与および非経口投与の両方で予想に反する強力で長時間持続する痛覚脱失を示した。
【0027】
方法および物質
鎮痛活性は、検査動物としてラットを用いるホット・プレートで古典的に示される。ラットを高い温度(40℃)で維持したホット・プレート上に置いた後、ラットによる後肢の最初の一舐めまでの時間を記録する。この方法は、種々の候補薬剤によって誘発される中枢の鎮痛活性に対する正確なデータを提供する。プラセボ条件下では、テスト動物による後肢の最初の一舐めまでの時間は30から50秒の間で変動する。強い痛覚脱失は、この時間が2倍より大きいときに示される。本明細書で報告する実験では、標準的なホット・プレート・テストを痛覚脱失評価に用い、テスト動物による後肢の最初の一舐めまでの時間を、投与薬剤種の薬理作用の表示としての経過時間を測定するための開始事象として用いた。
【0028】
一群5匹のウィスター・ラット(雄)の7群を任意に以下の処置にふり分けた:プラセボ、モルヒネ1mg/kg(i.v.)、モルヒネ10mg/kg(経口)、コデイン10mg/kg(経口)、イブプロフェン10mg/kg(経口)、CY5M2.5mg/kg(i.v.)およびCY5M2.5mg/kg(経口)。本方法の有効性は食塩水プラセボの2つの経口およびi.v.投与によって予備的に立証し、得られた結果は下記に報告する実験でプラセボにより得られた結果と類似していた。
【0029】
結果
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
予備実験では(データは示されていない)、Met−エンケファリン単独では5mg/kgの用量での経口投与後いかなる作用も示すことはできなかったが、i.v.投与後には約15分の一過性作用が観察された。
【0033】
用量反応曲線下の面積を平均作用のおおざっぱな概算と考えると、1mg/kgのモルヒネのi.v.は10mg/kgのモルヒネの経口投与に匹敵することを前記の結果は示している。対照的に、CY5Mは、経口またはi.v.で投与されたとき、同じルートによるモルヒネよりも少なくとも8倍高い効果を示す。さらに興味深いことには、上記のデータはまた、モルヒネは6時間以上持続する鎮痛作用をいずれの事例でも示さないが、CYM5の経口およびi.v.投与は24時間またはそれ以上の時間、顕著な鎮痛作用を示すことを示している。
【0034】
さらにまた、シンナモイル担体種の他にリンカー種を含むCY5Mの類似体は、上記に提供したものよりも同様かまたはより強い作用を示すであろう。
【0035】
これらの結果は、ポリペプチド・ドラッグ種に結合させた担体(例えば本明細書に開示したようなもの)は、長さが少なくとも5アミノ酸のペプチドの効果的な経口吸収を可能にし、さらに顕著に強化された薬理動態像を示しつつ経口およびi.v.の両投与ルートではるかに強い薬理効果を可能にすることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、治療的に有効な物質種の投与によって人間を含まない哺乳動物の生理学的異常を治療する方法:
一般式aanの治療力を有するポリペプチドをアルキルまたはアリール担体部分に化学的に連結してプロドラッグを生成し、さらに前記生理学的異常を示している前記人間を含まない哺乳動物に前記プロドラッグを投与する工程であって、ここで式中aaが、アミノ酸であり、nが、2から40の整数である。
【請求項2】
前記治療力を有するポリペプチドが、経口で吸収が貧弱である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記担体部分が、シンナモイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、3,4−メチレンジオキシシンナモイル、3,4,5−トリメトキシシンナモイル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ピバロイル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル、およびフマロイルを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロドラッグが、経口的または非経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療力を有するポリペプチドが、前記担体部分にリンカー種を介して化学的に連結される、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2009−235082(P2009−235082A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137059(P2009−137059)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2002−557423(P2002−557423)の分割
【原出願日】平成14年1月17日(2002.1.17)
【出願人】(503257365)
【Fターム(参考)】