説明

ポリマー−充填剤カップリング剤

【課題】B−A−Sx−Nで表わされるポリマー−充填剤カップリング化合物、この化合物を含む加硫可能なゴム組成物、及びこの組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】該カップリング化合物は、Bが、アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分、又はアリルスズ部分であり;Sxが、ポリスルフィドであって、但し、xが2から約10の間であり;Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基であり;Nは、保護基であり、Sxはジスルフィドでもよく、Nは、従来の保護基でも、−A−B等の他の基でもよい。また、該カップリング化合物が、不飽和炭素−炭素結合を含むポリマーを変性するため及び充填剤の分散を促進するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載された技術は、ポリマーと充填剤とをカップリングするための組成物、及び該カップリング組成物を含むポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー組成物中での充填剤の分散性、即ち、充填剤を組成物の全体に均一に分布させる度合いは、ポリマー組成物の性能特性に影響を及ぼし得る。ポリマー組成物内での充填剤の分散特性によって影響を受け得る性質の一つとして、ヒステリシスがある。エラストマーのヒステリシスとは、例えば、エラストマーを変形させるために加えられるエネルギーと、エラストマーがその当初の変形されていない形状に戻るに従って回収されるエネルギーとの差を指す。エラストマー分子と組み込まれた一種又は複数種の補強性充填剤との間の相互作用がヒステリシスに影響することが知られている。
【0003】
ポリマーの全体に渡って充填剤の良好な分散性を確保することによって、エラストマー配合物のヒステリシス及び他の物理特性を向上させることができる。ベルト、タイヤ等の物品に、良好なヒステリシスを示すエラストマー配合物を使用した場合、該物品は、使用中に機械的な応力を受けた際に、反発性の向上と発熱性の低減を示す。空気入りタイヤでは、例えば、ヒステリシスの値の低減は、使用中の転がり抵抗及び発熱性の低減に関連する。空気入りタイヤにおける転がり抵抗及び発熱性の低減は、該タイヤを使用した車両に燃費の低減をもたらし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここに記載されたポリマー−充填剤カップリング化合物は、式:B−A−Sx−Nで表わされる。該化合物において、Bは、アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分、又はアリルスズ部分であり;Sxは、ポリスルフィドであって、但し、xが2から約10の間であり;Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基であり;Nは、保護基である。Sxは、ジスルフィドであり得る。Nは、従来の保護基又は−A−B等の他の基であり得る。
【0005】
また、ここには、前記ポリマー−充填剤カップリング化合物の使用方法が記載されている。ポリマーを変性する方法は、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むポリマーとポリマー−充填剤カップリング化合物とを接触させることを含む。ポリマー組成物中での充填剤の分散を促進する方法は、ポリマー−充填剤カップリング化合物で変性されたポリマーと、該化合物のB部分に結合する表面基を有する充填剤とを反応させることを含む。また、前記ポリマー−充填剤カップリング化合物、ポリマー、及び充填剤を逐次的ではなく同時に混合して、ポリマー組成物中での充填剤の分散を促進することができる。
【0006】
また、ここには、前記ポリマー−充填剤カップリング化合物を含む加硫可能なゴム組成物及び前記ポリマー−充填剤カップリング化合物を用いた加硫ゴム組成物の製造方法が記載されている。前記加硫可能なゴム組成物は、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むエラストマー、ヒステリシスを低減できる量のポリマー−充填剤カップリング化合物、該ポリマー−充填剤カップリング化合物のB部分に結合する表面基を有する充填剤、及び硬化剤を含む。加硫エラストマー組成物の製造方法は、このような加硫可能なゴム組成物を一緒に混合することと、該組成物を硬化させることとを含む。ここに記載された加硫ゴム組成物は、空気入りタイヤに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
当業者がクレームされた発明を如何にして製造及び使用できるかの例として、この記載は、式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物、該化合物を含むポリマー組成物、ポリマー組成物中での該化合物の使用方法、前記ポリマー−充填剤カップリング化合物を含む加硫可能なゴム組成物、及び前記ポリマー−充填剤カップリング化合物を用いた加硫ゴム組成物の製造方法の例を示す。この記載は、請求項に列挙されていない限定を強要するものではなく、実施可能要件及びベストモード要件を充足するためにもたらされるものである。
【0008】
式:B−A−Sx−Nを有する化合物は、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を有するポリマーを含むポリマー組成物中での充填剤の分散を促進するのに有用である。式:B−A−Sx−Nを有する化合物において、Bは、アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分、又はアリルスズ部分であり;Sxは、ポリスルフィドであって、但し、xが2から約10の間であり;Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基であり;Nは、保護基である。
【0009】
本明細書で使用する場合、アザへテロ環式酸素又は硫黄含有部分との語句は、式I、II、III:
【化1】

[式中、Xは、酸素又は硫黄であって;R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して水素、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリール基、分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリール基、又はAであり、ここで、Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基である]で具体化される構造を含むことを意図する。R基に関して、各R基は、同一、例えば、水素であってもよく;各R基は、異なる、例えば、2種以上の異なる基であってもよく;或いは、R基の幾つかが同一で、他が異なる、例えば、R1がAで、R2が水素で、その他のR基が同一又は異なるアルキル基であってもよい。
【0010】
前記アリルスズ部分は、式:−CH−CHCH2Sn(R8)3
[式中、R8は、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリール基、分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリール基、又はそれらが混じった状態である]を含むことができる。該アリルスズ部分の−CH部分は、B−A−Sx−N化合物のA基に結合して、(アリルスズ)−A−Sx−Nを形成する。
【0011】
前記連結原子又は基Aは、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキレニル部分、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキレニル部分、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリーレニル部分、又は分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリーレニル部分であり得る。更に、Aは、[A'−(Z−A")k]
[式中、A'及びA"は、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキレニル部分、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキレニル部分、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリーレニル部分、又は分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリーレニル部分であり;Zは、酸素、硫黄又はC=Oであり;kは、1から約4である]を含み得る。例えば、Aは、B及びSxとのオルト、メタ又はパラ結合を有するフェニル基を含み得る。他の例としては、Aは、(CH2)m
[式中、mは、1から約10である]を含み得る。
【0012】
前記Sx基は、ポリスルフィドである。該ポリスルフィドは、2個以上の硫黄原子を有し得る。例えば、該ポリスルフィドは、2から約10の間の硫黄原子を有することができ、即ち、xは、2から約10である。一般的に、硫黄原子が多く存在すればする程、N基、即ち、保護基が解離して、反応性のB−A−Sy-1−S−分子を放出するのが容易になる。解離において、N基は、尚も結合している硫黄原子を有し得、即ち、離れる基は、−S−Sz-1−Nであり得る。前記下付き文字y及びzは、各解離分子に結合した硫黄原子の数を指し、ここで、x=y+zである。
【0013】
前記N基は、従来の保護基、或いは、例えば、上記したようなB−A−基等の他の基であることができる(即ち、B−A−Sx−A−B)。保護基の追加例としては、メルカプタン類の硫黄部分をブロックするのに有用であることが知られている基が挙げられる。このタイプの保護基によって、メルカプト水素を、メルカプタンの有機部分の反応性、即ち、B−A−Sx−N分子の場合はB部分の反応性に影響を及ぼさない他の基で置換する。好適なメルカプト保護基としては、特に限定されるものではないが、米国特許第6,127,468; 6,204,339; 6,528,673; 6,635,700; 6,649,684; 及び6,683,135号に記載のものが挙げられ、記載されているメルカプト保護基に関して、その記載を参照し、ここに取り込む。B−A−Sx−Nと充填剤との反応が起こった後、製造プロセス中でブロッキング剤を添加することで、B−A−Sx−N分子の硫黄原子がゴムと結合するのが可能となる。配合プロセス中のいつでも、非ブロック化が望まれる如何なる混合段階においても、単一成分として脱ブロッキング剤を添加することができる。通常、非ブロック化は、熱を加える混合段階の後に望まれる。配合の硬化段階の間及び最終混合段階中で、脱ブロッキング剤を添加することができる。脱ブロッキング剤を硫黄硬化パッケージ中に含めることができ、また、脱ブロッキング剤は、通常、特には亜鉛塩と共同して、硬化促進剤として機能し得る。脱ブロッキング剤の例は、当業者に周知である。
【0014】
B−A−Sx−N化合物の非限定的な一例として、式IV:
【化2】

で表わされるビス-[2-(2-オキサゾリル)-フェニル]-ジスルフィド(2OPD)がある。具体的に言うと、2OPDは、B−A−Sx−A−Bタイプの分子(式中、xは2である)であり、即ち、Nが−A−Bで且つA及びB基が分子の各サイドで同一である。B−A−S1−が離れる基である場合、次に、式V:
【化3】

で示される構造の2つの同一の分子が生成する。B−A−Sx−A−Bタイプの分子において、A部分は、2OPD分子のように同一でも、異なってもよい。同様に、B−A−Sx−A−Bタイプの分子において、B部分は、2OPD分子のように同一でも、異なってもよい。B−A−Sx−N化合物の非限定的な追加例として、式VI:
【化4】

で表わされるビス-[2-(2-チアゾリル)-フェニル]-ジスルフィド(2TPD)がある。
【0015】
通常の化学合成法を用いて、過度の実験をすることなく、例示の化合物及び他のB−A−Sx−N化合物を製造することができる。2OPDの製造法の例を、下記例Aに開示する。しかしながら、他の出発物質及び中間体を用いた公知の他の化学合成法を用いても、これらの及び他のB−A−Sx−N化合物を製造できることが認められる。
【0016】
ここで使用するポリマーは、分子構造内に炭素−炭素不飽和を含み、該ポリマーとしては、熱可塑性ポリマー並びに熱硬化性ポリマーが挙げられる。不飽和は、ポリマーの骨格にそって存在することができ、並びに/或いは、エテニック基等の張り出した基として存在することもできる。分子構造内に炭素−炭素不飽和を含む好適なポリマーとしては、天然ゴム、並びに、脂肪族、共役ジオレフィン類、具体的には、特に限定されるものではないが、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン等の1分子当り4から8個の炭素原子を含むものを重合させて製造したものや、かかるジエン類のコポリマー及びターポリマー等の合成ゴムが挙げられる。ここで使用するエラストマーのポリマー骨格は、かなりの量の不飽和を含み得る。例えば、ポリマー骨格中の炭素−炭素結合の少なくとも約5%が不飽和結合である。
【0017】
不飽和炭素鎖を有するゴムの特徴は、不飽和鎖ゴムがRゴムと呼ばれているANSI/ASTM基準D 1418−79Aに示されるように、当該技術分野で周知である。クラスRのゴムとしては、天然ゴム、並びに、少なくとも一部がジオレフィン類に由来する種々の合成ゴムが挙げられる。次の記載:アクリレート-ブタジエンゴム;ブタジエンゴム;クロロ-イソブテン-イソプレンゴム;クロロプレンゴム;合成イソプレン;ニトリル-ブタジエンゴム;ニトリル-クロロプレンゴム;ニトリル-イソプレンゴム;天然ゴム;スチレン-ブタジエンゴム;スチレン-クロロプレンゴム;及びスチレン-イソプレンゴムは、本発明の組成物に使用できるRクラスのゴムの包括的なリストである。また、ここで使用する炭素−炭素不飽和を有するゴムは、特に限定されるものではないが、エチレン-プロピレンジエンモノマーに由来し、通常、その炭素結合の約3%から約8%が不飽和炭素−炭素結合であるEPDMゴム等のRゴム以外であってもよい。
【0018】
ここに開示する組成物に使用可能な合成ゴムの更なる例としては、特に限定されるものではないが、ブタジエンや、例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエン及びペンタジエン等のブタジエンの相同物及び誘導体の単独重合生成物、並びに、ブタジエン又はブタジエンの相同物若しくは誘導体と他の不飽和有機化合物とから生成させたコポリマーが挙げられる。後者の中には、例えば、エチレン、プロピレン、又はイソプレンと共重合してブチルゴムとしても知られるポリイソブチレンを生成するイソブチレン等のオレフィン類;ブタジエン及びイソプレン等のジエンモノマー類と共重合可能なビニル化合物;アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、アルファメチルスチレン、(o-、m-、又はp-)メチルスチレン及びスチレン(最後の化合物はブタジエンと重合してスチレンブタジエンゴムを形成する)、並びに、アクロレイン及びビニルエチルエーテル等のビニルエステル類並びに種々の不飽和アルデヒド類、ケトン類及びエーテル類がある。
【0019】
一般に、前記組成物と共に使用するエラストマーの例としては、共役ジエンモノマー類のホモポリマー、共役ジエンモノマー類とモノビニル芳香族モノマー類及びトリエン類とのコポリマー及びターポリマーが挙げられる。より具体的に、前記組成物と共に使用するエラストマーの例としては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-ブタジエンのターポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリトニトリル、ブタジエン、スチレンのターポリマー、及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0020】
B−A−Sx−N化合物と分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むポリマーの間の化学反応をスキーム1で図解する。スキーム1では、ポリマー(P)を、"n"モルのB−A−Sx−Nと反応可能な"n"個の繰り返し単位を有するものとして表わす。実用的な見地から、ポリマーの分子構造中の利用可能な反応サイトの総てが反応するとは限らず、そのため、"n"は、反応サイトの平均数を表わすように意図されていることが認識される。便宜上、スキーム1で製造される変性ポリマーを、P−(Sy−A−B)nとして表わす。上述のように、表記"y"は、−Sz−N基が去った後に分子と結合している硫黄原子の数を指し、ここで、x=z+yである。
【0021】
スキーム2〜9は、他の反応、即ち、P−(Sy−A−B)n化合物のB部分の充填剤の表面上の反応基への結合を図解している。ここでの議論は、ポリマーを含む、スキーム1からの反応生成物を用いる。しかしながら、B部分の反応は、B−A−Sx−N化合物とポリマーの反応とは、独立に起こる。即ち、B部分−充填剤反応が起こるために、B−A−Sx−N化合物がポリマーに結合していることは必要ではない。B部分−充填剤反応は、B−A−Sx−N化合物がポリマーとカップリングする前、同時、又は後に起こり得る。
【0022】
スキーム2〜9に図解するように、P−(Sy−A−B)nとカーボンブラックの混合によって、カーボンブラックの前記化合物のB部分への直接的な結合が可能になるように、B部分は、カーボンブラック(CB)の表面基と反応するアザへテロ環式の酸素又は硫黄含有部分を含み得る。従って、Bとポリマーとの反応によって、ポリマーの分子構造に沿って充填剤を結合させる。
【0023】
スキーム10は、P−(Sy−A−B)nとカーボンブラック充填剤の混合によって、カーボンブラックの前記P−(Sy−A−B)n化合物のB部分への直接的な結合、並びにBとポリマーとの反応によるポリマーの分子構造とカーボンブラック充填剤との結合が可能になるように、P−(Sy−A−B)nのB部分が、カーボンブラック上に存在する表面オルト-キノン構造と反応するアリルスズ基を含み得る反応を図解している。
【0024】
【化5】

【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
スキーム2〜10で図解された各反応において、カーボンブラック充填剤の粒子若しくは凝集体に複数の反応基が存在する場合、2以上のB−A−Sx−N分子を、カーボンブラック充填剤の粒子若しくは凝集体に結合させることができる。更に、B−A−Sx−NのB部分と反応する表面基を有する他の充填剤を、カーボンブラックと混合して、Bとポリマーの反応によって、ポリマーの分子構造に沿って結合させることができる。例えば、特に限定されるものではないが、シリカ、タルク、カオリン、クレー、金属酸化物、アルミニウム水和物、マイカ等の鉱物系充填剤は、かかる反応性表面基を有し、カーボンブラックを含む混合物中でこれらの充填剤を使用することができる。
【0034】
上記スキーム1に図説したように、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むポリマーと上記の式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物とを接触させることにより、変性ポリマーを製造することができる。B−A−Sx−N化合物の量は、変性されるポリマーの重量で計算して約0.1から約30重量%の範囲とすることができる。代案として、B−A−Sx−N化合物の量を、ポリマーの約0.5から約10重量%の範囲とすることができる。更に、B−A−Sx−N化合物の量を、ポリマーの約1から約8重量%の範囲とすることができる。変性反応は、溶液中、又は無溶媒条件下(固相反応)で実施できる。ミリング又はバンバリーミキサー中等での如何なる従来技術によっても、ゴムにB−A−Sx−N化合物を添加することができる。
【0035】
例えば、重合反応から得られるセメントにB−A−Sx−N化合物を添加すること、乾燥したポリマーの小片に該化合物をスプレーすること、或いは、充填剤の添加前若しくは添加と同時にポリマー組成物にポリマーと共に該化合物を添加すること等によって、重合反応の後のいつでも、変性ポリマーを得ることができる。
【0036】
従って、ポリマー組成物中での充填剤の分散を促進する方法は、(a)ポリマーと式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物と反応させることによって、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を有するポリマーを変性して、変性ポリマーを生成させる工程、及び(b)変性ポリマーと、前記化合物のB部分に結合できる表面基を含む充填剤とを反応させる工程を含むことができる。
【0037】
他の例では、ポリマー組成物中での充填剤の分散を促進する方法は、(i)分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を有するポリマー;(ii)式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物;及び(iii)該化合物のB部分に結合できる表面基を具える充填剤を、一緒に混合する工程を含むことができる。
【0038】
本発明の加硫可能なエラストマー組成物は、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むエラストマー;ヒステリシスを低減できる量の、例えば、エラストマーの約0.1から約30重量%の式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物;該化合物のB部分に結合できる表面基を具える充填剤;及び硬化剤を含む。ここで使用する硬化剤との語句は、硫黄で加硫可能なゴム組成物中で一般に用いられる硫黄及び促進剤を含む硬化パッケージを意味する。充填剤は、カーボンブラック、又はカーボンブラックと前記化合物のB部分に結合できる表面基を有する他の充填剤との混合物である。一例では、エラストマーと充填剤を含むマスターバッチにおいて、B−A−Sx−N化合物を添加する。他の例では、上記のように、B−A−Sx−N化合物をエラストマーと予備反応させて、変性エラストマーを生成させることができる。その他の例では、リミル段階又は最終混合段階でB−A−Sx−N化合物を添加して、B−A−Sx−N化合物をエラストマー及び充填剤と反応させることができる。
【0039】
従って、加硫エラストマー組成物の製造方法は、(a)(i)分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むエラストマー、(ii)式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物、(iii)該化合物のB部分に結合できる表面基を具える充填剤、及び(iv)硬化剤を、一緒に混合する工程;並びに(b)該組成物を硬化させる工程を含むことができる。
【0040】
加硫エラストマー組成物の製造方法は、(a)(i)分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むエラストマーと式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物とを反応させることによって調製した変性ポリマー、(ii)前記化合物のB部分に結合できる表面基を具える充填剤、及び(iii)硬化剤を、一緒に混合する工程;並びに(b)該組成物を硬化させる工程を含むことができる。
【0041】
得られる加硫可能なエラストマー組成物は、S−ポリマー反応及びB−充填剤反応の両方が起こった後、(a)(i)分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を含むエラストマー、(ii)式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物、及び(iii)該化合物のB部分に結合した表面基を具える充填剤の反応生成物;並びに(b)硬化剤を含む。
【0042】
トレッドストック配合物においては、共役ジエンポリマー、又は共役ジエンモノマー類とモノビニル芳香族モノマー類とのコポリマー若しくはターポリマーを、100部のゴムとして利用でき、或いは、それらを、天然ゴム、合成ゴム及びそれらのブレンド等の従来使用されている如何なるトレッドストックゴムとブレンドすることもできる。かかるゴムは、当業者に周知であり、特に限定されるものではないが、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素エラストマー類、エチレンアクリルゴム、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム等が挙げられる。本発明の加硫可能なエラストマー組成物を従来のゴムとブレンドする場合、全ゴムの約10重量%から20重量%を下限としつつ、広範囲に渡って量を変えることができる。最少量は、主として所望の物理特性に依存する。
【0043】
加硫可能なエラストマー組成物は、カーボンブラックやカーボンブラックと他の充填剤との混合物等の補強性充填剤と混合することができる。いかなる形態のカーボンブラックでも使用できる。カーボンブラックは、約0phrから約100phrの範囲の量で存在できる。代案として、カーボンブラックを約5から約80phr配合でき、更には、約20から約70phrの量で使用できる。カーボンブラックとしては、一般に入手可能で、商業生産されている如何なるカーボンブラックをも挙げることができる。例えば、少なくとも約20m2/gから約200m2/gまでの表面積を有するカーボンブラック、更には、少なくとも約35m2/gから約200m2/gまでの表面積を有するカーボンブラックも使用できる。表面積の値は、セチルトリメチル-アンモニウムブロマイド(CTAB)技術を用いたASTM試験D-1765で決定されたものである。
【0044】
有用なカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックがある。より具体的に、カーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、高速押出性ファーネス(FEF)ブラック、微粒子ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(SRF)ブラック、中級作業性チャンネルブラック、ハード作業性チャンネルブラック及び導電性チャンネルブラックが挙げられる。利用可能な他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。使用される代表的なカーボンブラックとしては、N110, N121, N220, N231, N242, N293, N299, N326, N330, N332, N339, N343, N347, N351, N358, N375, N472, N539, N472, N539, N550, N660, N683, N754, 及びN765が挙げられる。酸化されたカーボンブラックも使用できる。オゾン、ジクロメート、又は酸化性酸による酸化等の好適などんな従来技術を用いても、カーボンブラックを酸化することができる。例えば、窒素を含む酸化性酸又はオゾン用いて酸化されたカーボンブラックを用いることができる。酸化カーボンブラックの好適な製造方法の例が米国特許第3,914,148; 4,075,140; 及び4,075,157号に開示されており、これらを参照して取り込む。配合物の特定用途に依存して、適切なカーボンブラックを選択することができる。本発明の製品の製造においては、上記カーボンブラックの2種以上の混合物を使用できる。本発明の充填加硫物の製造に利用されるカーボンブラックは、ペレット化された形態でも、ペレット化されていない凝集した塊でもよい。ペレット化されていないカーボンブラックを用いて、均一な混合の達成を助けることができる。
【0045】
また、加硫可能なエラストマー組成物は、例えば、追加の充填剤、可塑剤、老化防止剤、活性化剤、遅延剤、促進剤、顔料、硬化剤、オイル及び粘着付与樹脂等の樹脂等の加工添加剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、並びに素練り促進剤等の追加の加工添加剤及び従来のゴム用添加剤を含むことができる。当業者に知られているように、硫黄で加硫可能な及び硫黄で加硫された材料(ゴム)の目的用途に応じて、上述の添加剤を選択し、標準的なゴムの混合装置及び手法を用いて、従来の量で普通に使用する。かかるエラストマー組成物は、従来のゴムの加硫条件を用いて加硫した場合、製品の反発性が向上したことを意味するヒステリシスの低減、転がり抵抗の低減、及び機械的な応力を受けた際の発熱性の減少を示す。タイヤ、パワーベルト等の製品が想定される。もちろん、転がり抵抗の低減は、空気入りタイヤ、即ち、ラジアル並びにバアイスプライタイヤの両方にとって、有用な特性であり、従って、本発明の加硫可能なエラストマー組成物を利用して、かかるタイヤ用のトレッドストックを形成することができる。米国特許第5,866,171; 5,876,527; 5,931,211; 及び5,971,046号に開示の構成に従って、空気入りタイヤを製造することができ、その記載を参照してここに取り込む。また、前記組成物を用いて、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビードフィラー等の他のエラストマー状のタイヤ部材を形成することもできる。
【0046】
従って、例としては、上記のような加硫可能なゴム組成物の加硫物、並びに、分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を有するエラストマーと、カーボンブラック又はカーボンブラックと他の充填剤との混合物を含む充填剤と、硬化剤と、式:B−A−Sx−Nで表わされる化合物との反応生成物を含む加硫されたエラストマー組成物を含む部品を少なくとも1つ具えたタイヤが挙げられる。
【0047】
タッキファイヤー樹脂を使用する場合、典型量のタッキファイヤー樹脂が、約0.5から約10phr、通常は約1から約5phrを構成する。典型量の配合助剤が、約1から約50phrを構成する。かかる配合助剤としては、例えば、アロマ系、ナフテン系、及び/又はパラフィン系のプロセスオイルが挙げられる。
【0048】
前記ゴム組成物に存在し得る老化防止剤の代表としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、チオビスフェノール類、ポリフェノール類、ヒドロキノン誘導体、ホスフェート類、ホスフェート混合物、チオエステル類、ナフチルアミン類、ジフェノールアミン類、並びに、他のジアリールアミン誘導体、パラフェニレンジアミン類、キノリン類及び混合アミン類等が挙げられる。老化防止剤は、一般に、約0.1から約10phrの範囲の量で使用される。代案として、老化防止剤を約0.5から約6phrの範囲の量で使用することができる。例えば、典型量の老化防止剤は、約0.1から約5phrを構成する。例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、及び、例えば、バンダービルト ラバー ハンドブック(1978)の344から346頁に開示のもの等の他のものが、代表的な老化防止剤となり得る。典型量のオゾン劣化防止剤は、約0.1から約5phrを構成することができる。
【0049】
脂肪酸を使用する場合、典型量の脂肪酸は、約0.5から約3phrを構成でき、該脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、又は1種以上の脂肪酸の混合物が挙げられる。典型量のワックスは、約1から約2phrを構成する。通常、マイクロクリスタリンワックスが使用される。素練り促進剤を使用する場合、典型量の素練り促進剤は、約0.1から約1phrを構成する。例えば、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドが、代表的な素練り促進剤であり得る。ペンタクロロチオフェノールは、例えば、約0.1phrから0.4phrの範囲の量で使用できる。代案として、ペンタクロロチオフェノールを約0.2から0.3phrの範囲の量で使用できる。
【0050】
本発明のゴム組成物に使用できるプロセスオイルの代表としては、ブラックオイル(添加剤を含み、多環式芳香族分が3%未満のナフテン系オイル、エルゴンによってこの表記で販売されている)、脂肪族系-ナフテン系 芳香族系樹脂、ポリエチレングリコール、石油オイル、エステル可塑剤、加硫された植物油、パインタール、フェノール系樹脂、石油樹脂、ポリマー状エステル及び樹脂が挙げられる。これらのプロセスオイルは、約0から約50phrの範囲の従来の量で使用できる。代案として、該プロセスオイルを約5から約25phrの範囲で使用できる。
【0051】
種々の加硫可能な一種又は複数種のポリマーと、例えば、硬化剤、活性化剤、遅延剤、促進剤等の汎用の添加剤とを混合すること等の、ゴムの配合の技術分野で一般に知られた方法で、前記ゴム組成物が配合されることは、当業者にとって容易に理解できることである。
【0052】
硫黄等の公知の加硫剤及び促進剤と共に、従来の手法で、補強ゴム組成物を硬化することができる。本発明に従うポリマーの変性及び充填剤の結合は、硬化時間に、認識できる程の影響を及ぼすことがなく、従って、従来の時間で、ゴム組成物を硬化させることができる。加硫剤を使用する場合、該剤の使用量は、ゴム材料100重量部に対して、0.1から5重量部である。代案として、加硫剤の使用量を、ゴム材料100重量部に対して、0.1から3重量部とすることができ、更には、約0.1phrから約2phrの範囲で使用することもできる。加硫剤は、一種単独でも、組み合わせて使用してもよい。硬化又は架橋されたポリマーは、この開示の目的に対して、加硫物とも呼ばれる。適切な加硫剤の一般的な開示のために、カーク-オスマー、化学技術百科事典、第三版、ウィリー インターサイエンス、ニューヨーク、1982、20巻、365から468頁、特には、"加硫剤及び補助材料"、390から402頁を参照できる。
【0053】
従来、酸化亜鉛及びステアリン酸を用いて、エラストマーを加硫する。一般に、酸化亜鉛を約0.5から約5phrの範囲の従来量で使用する。一般に、ステアリン酸を約1から約4phrの範囲の従来量で使用する。
【0054】
硫黄系加硫剤の存在下で、加硫を行う。好適な硫黄系加硫剤の例としては、"ゴムメーカーの"可溶性硫黄;アミンジスルフィド、ポリマー状ポリスルフィド又は硫黄-オレフィン付加物等の硫黄供与性加硫剤;並びに不溶性ポリマー状硫黄が挙げられる。硫黄系加硫剤は、可溶性と不溶性ポリマー状硫黄との混合物であってもよい。硫黄系加硫剤は、約0.1から約10phrの範囲の量で使用される。代案として、硫黄系加硫剤を約1.5から約5phrの範囲の量で使用でき、更には、硫黄系加硫剤は、約1.5から約3.5phrの範囲で変動してもよい。
【0055】
促進剤を用いて、加硫に必要な時間及び/又は温度をコントロールし、加硫物の特性を向上させる。本発明で使用する加硫促進剤は、特に限定されない。従来の促進剤の代表は、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チオール類、チウラム類、スルフェンアミド類、ジチオカーバメート類及びキサンテート類である。追加例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)等のチアゾール系加硫促進剤;及びジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤の使用量を約0.1から約10phrとすることができる。代案として、加硫促進剤を、約0.1から約5phr、又は約0.2から約3phrの範囲の量で添加できる。
【0056】
ミル、インターナルミキサー等のミリング装置を用いて、生成する配合物が所望の物理特性を達成するのに十分に高い温度で、十分な時間、前記成分をすりつぶすことで、本発明の加硫可能なエラストマー組成物が得られる。ゴムの混合の技術分野の当業者に公知の方法で、加硫可能なエラストマー組成物の混合を達成することができる。例えば、少なくとも"マスターバッチ"段階(エラストマーと、少なくともカーボンブラック及び/又はシリカの一部並びに他の成分との混合を含む);及び通常硬化剤を添加する"最終段階"からなる2以上の段階で、前記成分を混合することができる。また、成分を追加することなく、混合物をリミルする混合段階があってもよい。混合プロセスのどの段階でも、B−A−Sx−N化合物を添加することができる。
【0057】
段階ごとに混合温度を変えることができる。しかしながら、ここに開示の例の目的に対しては、B−A−Sx−N化合物、エラストマー、及び充填剤を、約60℃から約200℃の混合温度で混合できる。代案としては、エラストマー及び充填剤を、約90℃から約190℃、更には、約120℃から約180℃の混合温度で混合できる。一例においては、充填剤の一部及び/又はB−A−Sx−N化合物をマスターバッチ段階でエラストマーに加え、残りのものをリミル段階で加える。
【実施例】
【0058】
以下の例で、模範的なB−A−Sx−N化合物及び該化合物を含むエラストマー組成物の調製を説明する。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、前記化合物及びゴム組成物を製造するための他の方法並びに異なるゴムの配合組成物を用いることができるので、これらの例に限定されることを意図するものではない。
【0059】
例A
ビス-[2-(2-オキサゾリル)-フェニル]-ジスルフィド(2OPD)の合成
20gの2,2'-ジチオ-ビス-(安息香酸)(65mmol)を28.6mLのチオニルクロライド(390mmol)に加えた混合物を12時間還流し、その後、濾過した。ロータリーエバポレーターを用いて、濾液を乾燥し、150gの2,2'-ジチオ-ビス-(ベンゾイルクロライド)の粉末(44mmol)を回収した。この反応の収率は、68%であった。
【0060】
次に、前記2,2'-ジチオ-ビス-(ベンゾイルクロライド)を300mLのクロロホルムに加え混合した。この混合物に、撹拌しながら、200mLのクロロホルム中に10.7gの2-アミノエタノール(175mmol)を含み0℃に保持された溶液を滴下した。添加終了後すぐに、得られた混合物を25℃で2時間撹拌したところ、その間に、沈殿物が生成した。該沈殿物を濾過で回収し、200mLの水で洗浄した。その後、該沈殿物を乾燥すると、淡褐色の粉末が生成した。13.5gの2,2'-ジチオ-ビス-[N-(ヒドロキシエチル)-ベンズアミド](34mmol)を回収し、収率は77%であった。
【0061】
次に、前記2,2'-ジチオ-ビス-[N-(ヒドロキシエチル)-ベンズアミド]の粉末に、撹拌しながら、15mLのチオニルクロライド(204mmol)を滴下した。この混合物を150mLのエーテル中に注ぐと、白色の沈殿物が生成した。その後、沈殿物を濾過し、水に溶解させた。次に、溶解した沈殿物を冷たい20%水酸化ナトリウムで中和し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム抽出液を乾燥し、ヘキサンで再結晶させた。7gのビス-[2-(2-オキサゾリル)-フェニル]-ジスルフィド(20mmol)を回収し、収率は59%であった。この合成の全体での収率は、15%であった。
【0062】
例B
ゴムのヒステリシス特性への2OPDの効果を判断するために、溶液重合SBR、カーボンブラック及び他の典型的な配合成分を含む4種のゴム配合組成物を調製した。表1に示すように、コントロール組成物(C1)、2種の2OPD含有組成物(E1及びE2)、並びに天然ゴムにおけるヒステリシスを減少させることが知られている市販の添加剤(Sumifine(登録商標)1162、住友化学社から入手可能)を含有する比較組成物(C2)を調製した。

【0063】
【表1】

【0064】
表1中の組成物の特性を判断するために、ムーニー粘度;引張特性;並びにtanデルタ(tanδ)、損失モジュラス(G')及びペイン効果(ΔG')を含む歪等の幾つかのテストを実行した。テスト結果を表2に示す。大ローターを用い、130℃でムーニー粘度測定(アニーリング前に測定)を行い、ローターが4分間回転した際のトルクを記録した。ローターをスタートさせる前に、130℃で1分間、サンプルを予備加熱した。ASTM−D 412に記載の標準手法を用い、室温及び100℃で、硬化ストックに対して引張特性を測定した。引張の試験片は、直径1.3mm、厚さ1.9mmのリングであった。引張特性の計算のために、25.4mmのゲージ長を利用した。ヒステリシスが低減されているかを判断するために、ARES−Aレオメーターを用い、50℃、15Hzで、tanδ、5%歪でのG'、0.1から20%歪でのΔG'を測定した。また、一定の2%歪及び15Hzで、温度変化中のtanδ及びG'も測定した(表2に25℃、50℃及び75℃に対する値を示す)。
【0065】
【表2】

【0066】
tanδは、組成物の損失モジュラスの貯蔵モジュラスに対する比の尺度であり、50℃でのtanδの大きさが小さい程、組成物のヒステリシスロスが低いことが分かる。表2中に挙げられた結果から分かるように、2OPDが配合されたゴム組成物は、C1及びC2の組成物に比べて、ムーニー粘度の値が低減されており、(室温及び100℃の両方で)リングの引張の値が同等で、ヒステリシスが低かった(tanδが低かった)。ムーニー粘度の改良は、加工性の改良を示している。2OPDが配合されたゴムのリング引張の値が同等であることは、該組成物が同等の機械強度を有していることを示している。2OPDが配合されたゴムの50℃でのtanδが低いことは、該組成物から作製したタイヤトレッドにおいて転がり抵抗が改良されることを示している。
【0067】
まとめとして、ゴム組成物へのB−A−Sx−N化合物の添加、即ち、2OPDの添加により、ヒステリシスが低減され、該ヒステリシスの低減は、B−A−Sx−N化合物を用いて作製したタイヤトレッドにおいて転がり抵抗が改善されることを示している。
【0068】
ここに示された記載は、例を用いて、ベストモードを含む本発明を開示するものであり、また、当業者が本発明を作製及び使用できるようにするものである。本発明の特許可能な範囲は、請求項で規定され、当業者の心に浮かぶ他の例を含み得る。かかる他の例は、本願の出願日の前又は後に利用可能になるものであってもよく、それらが、請求項の字義通りの文言と異ならない場合、又は請求項の字義通りの文言と実質的に異ならない均等の要素を含む場合、請求項の範囲内に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:B−A−Sx−N
[式中、Bは、アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分、又はアリルスズ部分であり;
xは、ポリスルフィドであって、但し、xが2から約10の間であり;
Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基であり;
Nは、保護基である]で表わされる化合物。
【請求項2】
前記化合物が、ビス-[2-(2-オキサゾリル)-フェニル]-ジスルフィドであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分又はアリルスズ部分が、下記式I〜III:
【化1】

[式中、Xは、酸素又は硫黄であって;R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して水素、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリール基、分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリール基、又はAである]からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記アリルスズ部分が、式:−CH−CHCH2Sn(R8)3
[式中、R8は、分岐鎖若しくは直鎖状のC1−C20アルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC3−C20シクロアルキル基、分岐鎖若しくは直鎖状のC6−C20アリール基、分岐鎖若しくは直鎖状のC7−C20アルキルアリール基、又はそれらが混じった状態である]を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物を含む空気入りタイヤ。
【請求項6】
ポリマー組成物中への充填剤の分散を促進する方法であって、
(i)分子構造中に不飽和炭素−炭素結合を有するポリマー;(ii)式:B−A−Sx−N
[式中、Bは、アザへテロ環式の酸素若しくは硫黄含有部分、又はアリルスズ部分であり;Sxは、ポリスルフィドを含み、xが2から約10であり;Aは、BとSxの間に橋かけを形成する連結原子又は基であり;Nは、保護基である]で表わされる化合物;及び(iii)該化合物のB部分と結合する表面基を有する充填剤であって、カーボンブラック又はカーボンブラックと鉱物系充填剤との混合物である充填剤を、一緒に混合することを含む方法。

【公開番号】特開2007−238600(P2007−238600A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−356224(P2006−356224)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】