説明

ポリマーおよび重合方法

複数のモノマーの重合を含むポリマーの形成方法であって、前記複数のモノマーの少なくとも1つが、電荷輸送単位;および、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーの一方もしくは両方であり、前記複数のモノマーの少なくとも1つが、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端で前記末端封鎖化合物が重合を防ぐ方法であり、前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含むポリマーの形成方法。この末端封鎖基は、式:(Ar)n−X(式中、Arは、それぞれの出現において独立に、アリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、ホウ素誘導体基またはハロゲンを含む脱離基を表し、nは2以上である)を有する構造単位からなり、もしくは構造単位を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体ポリマーはよく知られており、発光ダイオード、電界効果トランジスターおよび光起電力素子(device)における電荷輸送材料もしくはエレクトロルミネッセンス材料として含む、いくつかの電子素子において、ある範囲の用途を有する。
【0002】
半導体ポリマーは、ポリマーの主鎖に沿って非局在化したパイ電子を含む共役ポリマーである。この非局在化したパイ電子系は、ポリマーに半導体性状を付与するが、従来の半導体と異なり、半導体ポリマーの非晶質の分子鎖形態が、分子鎖セグメントのエネルギーの不均一な広がりをもたらし、ホッピング型の輸送につながる。半導体ポリマーは、エレクトロルミネッセンスポリマーとして使用することができる。正孔および電子が注入されると、この輸送特性により、ポリマー内で電荷結合が生じることが可能になる。その結果、これが一重項励起子を生じ、その崩壊に起因する発光をもたらす。
【0003】
半導体ポリマーを生成させる種々の知られている方法があり、その例には、例えばWO00/53656において記述されるSuzuki重合、および、例えば、T.Yamamoto、「Elecrrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science 1993,17,1153〜1205において記述されるYamamoto重合が含まれる。これらの重合技術は、両技術とも「金属挿入」を介して実施され、金属錯体触媒の金属原子が、モノマーのアリール基と脱離基との間に挿入される。Yamamoto重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用され、Suzuki重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0004】
例えば、Yamamoto重合による線状ポリマーの合成の場合、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、Suzuki重合の方法によると、少なくとも1つの反応性基は、ホウ素酸もしくはホウ素酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、他方の反応性基はハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素、最も好ましくは臭素である。ハロゲン化物に対する代替として、金属挿入に参加することが可能な他の脱離基には、トシレート、メシレートおよびトリフレートを含む基が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ポリマーの各末端において、ならびに、ポリマーの任意の側鎖の末端において、一方の端部だけが重合されているモノマー単位が存在するであろう。このモノマーの反対側は、定義により、ポリマーの末端またはポリマーの側鎖の末端であるが、脱離基を有するであろう。これらの脱離基は、素子性能を損なう恐れがあり、したがって末端封鎖(end−capping)として知られる方法を使用して、それらを置換することが望ましく、この場合、ポリマーまたは側鎖の末端における脱離基は、US5,777,070において記述されるように、フェニルにより置換される。特に、この脱離基を、例えば、Adv.Mater.1999,11(8),671〜675において記述されるように、電荷輸送部分で置換することにより、ポリマー鎖の電子的特性に影響せずに、半導体ポリマーの効率が増大する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、半導体ポリマーの末端封鎖方法であって、
前記方法が前記ポリマーの少なくとも1つの末端の末端基を、末端封鎖化合物で置換するステップを含み、
前記末端封鎖化合物が、電荷輸送性ではなく、かつ少なくとも2つの環を含む方法を提供する。
【0007】
場合によって、前記ポリマーは、電荷輸送性繰り返し単位を含む。
【0008】
場合によって、前記ポリマーは、複数のモノマーであって、少なくとも1つのモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーである複数のモノマーを含む。
【0009】
場合によって、前記方法はさらに、前記ポリマーを形成するための前記複数のモノマーの重合を含み、この重合において前記ポリマーは、金属触媒の存在下において形成される。
【0010】
場合によって、前記金属触媒は、パラジウム触媒である。
【0011】
場合によって、このポリマーの分子量は、過剰の臭素化モノマーを使用することによって、少なくとも部分的に制御される。
【0012】
場合によって、前記複数のモノマーは、少なくとも2組の異なったモノマーであって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーを含み、
また、前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーを含む
少なくとも2組のモノマーを含む。
【0013】
場合によって、前記第1の組のモノマーは、前記第2の組のモノマーよりもゆっくり重合する。
【0014】
場合によって、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する前記原子または基は、少なくとも1つのアミン基を含む。
【0015】
場合によって、前記末端封鎖化合物は、窒素原子を含まない。
【0016】
場合によって、前記末端封鎖基は、炭化水素である。
【0017】
場合によって、前記末端封鎖基は、不飽和炭化水素である。
【0018】
場合によって、前記末端封鎖基は、少なくとも3つの環を含む。
【0019】
場合によって、前記末端封鎖基は、1つまたはそれ以上のフルオレン基を含み、場合によって、複数のフルオレン基を含む。
【0020】
第2の態様において、本発明は、複数のモノマーの重合を含むポリマーの形成方法であって、
前記複数のモノマーの少なくとも1つが、電荷輸送単位;および、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーの一方もしくは両方であり、
また前記複数のモノマーの少なくとも1つが、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端で前記末端封鎖化合物が重合を防ぐ方法であり、前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含むポリマーの形成方法を提供する。
【0021】
場合によって、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている、前記炭化水素モノマーの少なくとも1つは、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端封鎖化合物が前記末端で重合を防ぎ、前記末端封鎖化合物は電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含む。
【0022】
場合によって、前記重合は、金属触媒の存在下において起こる。
【0023】
場合によって、前記金属触媒は、パラジウム触媒である。
【0024】
場合によって、このポリマーの分子量は、過剰の臭素化モノマーを使用することによって、少なくとも部分的に制御される。
【0025】
場合によって、前記複数のモノマーは、少なくとも2組の異なったモノマーであって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている前記1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーを含み、
前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーを含む
少なくとも2組のモノマーを含み、
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている、前記1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーの少なくとも1つは、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端封鎖化合物は前記末端で重合を防ぎ、前記末端封鎖化合物は電荷輸送性ではなく、かつ少なくとも2つの環を含む。
【0026】
場合によって、前記第1の組のモノマーは、前記第2の組のモノマーよりもゆっくり重合する。
【0027】
場合によって、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基は、少なくとも1つのアミン基を含む。
【0028】
場合によって、前記末端封鎖化合物は、窒素原子を含まない。
【0029】
場合によって、前記末端封鎖基は、炭化水素である。
【0030】
場合によって、前記末端封鎖基は、不飽和炭化水素である。
【0031】
第3の態様において、本発明は、半導体ポリマーであって、
前記ポリマーが、複数の重合したモノマーであり、
前記複数の重合したモノマーの少なくとも1つが、電荷輸送単位;および、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーの一方もしくは両方である
複数の重合したモノマーを含み、
前記ポリマーの少なくとも1つの末端の末端基が、末端封鎖化合物であり、
前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、かつ少なくとも2つの環を含むポリマーを提供する。
【0032】
場合によって、前記複数のモノマーは、少なくとも2組の異なったモノマーであって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーを含み、
前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーを含む
少なくとも2組のモノマーを含む。
【0033】
場合によって、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基は、少なくとも1つのアミン基を含む。
【0034】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様によるポリマーを含むフィルムを提供する。
【0035】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様によるポリマーを含む電子素子を提供する。
【0036】
場合によって、前記素子は、発光ダイオード、電界効果トランジスターまたは光起電力素子である。
【0037】
場合によって、前記素子は、発光ダイオードである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】Suzuki重合において、過剰の臭素化モノマーを使用することによって製造した低分子量ポリマーの効率低下を示すグラフである。
【図2】Suzuki重合において、過剰の臭素化モノマーを使用することによって製造した低分子量ポリマーの寿命短縮を示すグラフである。
【図3】本発明によるエレクトロルミネッセンス素子を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
驚くべきことに、少なくとも2つの環を備え、それらの環が電荷輸送性ではない末端封鎖化合物の使用が、半導体ポリマーにおいてより調和した電荷平衡を生じ、ポリマーの効率および寿命の両方を増大させることが見出されている。どんな特定の機作によっても制約されようとせずに、末端封鎖部分の少なくとも2つの環が、電子に富むモノマーがポリマーの末端および/またはポリマーの側鎖の末端からより離れて空間配置されることを確保するため、これらの利益が達成されると考えられ、末端封鎖部分が電荷輸送性ではないので、電子に富む基の電子がより有利に非局在化することが達成されると考えられる。
【0040】
本明細書において使用される用語「電荷輸送性ではない(not charge transporting)」とは、フェニルで末端封鎖した同一のポリマーと比較して、ポリマーの電子、正孔(すなわち、電子欠損などの電荷欠損)およびイオンの移動度を増加させないことを意味する。これにより、電荷輸送性である末端封鎖基、ならびに、プロトン化、開裂、タンパク質分解、光分解または他の形のいずれかによって、電荷輸送性基に変換されることが可能な末端封鎖基が除かれる。例として、電荷輸送性ではない末端封鎖基は、アミン基を含まないであろう。
【0041】
電子に富むモノマー、例えば、少なくとも1個のアミン基を含むモノマーは、ポリマー内において正孔輸送を提供するため、有利に使用することができる。これらのモノマーに由来する繰り返し単位は、発光をもたらすために使用することもできる。しかし、これらのモノマーは、半導体ポリマーを形成するのに使用される重合反応において、電子に乏しいモノマーよりもゆっくり反応する。本明細書において使用される、電子に富むモノマーとは、少なくとも1個の炭素原子が、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、置換されている炭化水素モノマーである。これにより、異なるモノマーが、異なる速度でポリマー中に導入され、電子に富むモノマーが電子に乏しいモノマーよりもゆっくりとポリマーに組み込まれるという結果になる。したがって、ポリマーの末端の方に位置して、より高い濃縮度の電子に富むポリマーが存在する。
【0042】
この効果は、Suzuki重合において、過剰な臭素化モノマーを使用することによってポリマーの分子量が制御される(または少なくとも部分的に制御される)場合に明らかであり、それは、低分子量ポリマー(すなわち、250,000以下のMwを有する)において末端の数が増加し、ポリマーの末端の方に位置して、より大きい割合の電子に富むモノマーが存在することになるからである。その結果得られる、ポリマーの効率および寿命の低下は、それぞれ図1および2に示される(これらの図において、Aは、ジエステル:二臭化物の比率1:1で生成される対照ポリマーであり、Bは、ジエステル:二臭化物の比率0.98:1で生成される低分子量ポリマーである)。
【0043】
どんな学説によっても制約されようとせずに、この電子に富む基の分布は、この材料の寿命および効率の両方に有害であると考えられる。上述の末端封鎖基を提供することによって、この長い末端封鎖基が、従来のフェニル末端封鎖基よりもポリマー末端から遠くに、電子に富む基を空間配置するので、ポリマーの安定性が向上するものと考えられる。
【0044】
本発明によりもたらされる利益は、重合速度以外の理由のために、例えば、電子に乏しいモノマーに対して電子に富むモノマーの百分率がより大きい場合に、または単に、重合反応中にその機会が含まれるために、電子に富むモノマーが、ポリマーの主鎖もしくは分枝の末端の方に位置して組み込まれる場合にも得られるはずである。
【0045】
共役ポリマー(蛍光および/または電荷輸送性)
本発明において使用するのに適したエレクトロルミネッセンス[および/または電子輸送性]ポリマーには、金属挿入重合によって形成されるポリアリーレンが含まれる。
【0046】
複数のモノマーの重合からポリマーが形成される。モノマーは、他のモノマーに化学的に結合され、分子鎖を形成する。したがって、それぞれのモノマーは、少なくとも2つの「末端(end)」、すなわち、モノマーが他のモノマーに化学的に結合することができる位置を有するものと見なすことができる。それぞれのモノマーの末端を他のモノマーに化学的に結合することによって、モノマーの鎖が形成され、ポリマーを作り出す。モノマーは、3つ以上のこのような位置を有することができ、その場合には、これにより分枝を有するポリマーを生じることができる。
【0047】
この形で作り出されるポリマーは、ポリマー鎖のそれぞれの末端に、一方の末端だけが重合されているモノマーを有するであろう。ポリマーの他方の重合されない末端は、ポリマーの末端であり、このモノマーの重合されない末端、すなわちポリマーの末端、に存在する基が末端基である。同様に、分枝が存在する場合、それぞれの分枝は、その分子鎖の末端に、一方の末端だけが重合しているモノマーを有し、その重合されない末端に存在する基が末端基であろう。使用される重合方法に応じて、このような末端基は、脱離基を含むことができる。
【0048】
同一の型のモノマーが重合する場合(他の型のモノマーと重合するか否かにかかわらず)、繰り返し単位を有するポリマーが形成される。ポリマーは、例えば、Adv.Mater.2000 12(23) 1737〜1750およびその中の参考文献中に開示されるアリーレン繰り返し単位から選択される繰り返し単位を有することが好ましい。例示的な第1の繰り返し単位には:1,4−フェニレン繰り返し単位(J.Appl.Phys.1996,79,934中に開示される)、フルオレン繰り返し単位(EP 0842208中に開示される)、インデノフルオレン繰り返し単位(例えば、Macromolecules 2000,33(6),2016〜2020中に開示される)、およびスピロフルオレン繰り返し単位(例えば、EP 0707020中に開示される)が含まれる。それぞれのこれらの繰り返し単位は、場合によって置換される。置換基の例には、C120アルキルもしくはアルコキシなどの可溶化基;フッ素、ニトロもしくはシアノなどの電子求引基;およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が含まれる。
【0049】
特に好ましいポリマーは、場合によって2,7−結合したフルオレン、最も好ましくは式Iの繰り返し単位:
【化1】

(式中、R1およびR2は、水素、または場合によって置換されるアルキル(1個もしくは複数の非隣接C原子が、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されうる)、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される)を有している。R1およびR2の少なくとも1つが、場合によって置換されるC4〜C20アルキルまたはアリール基を含むことがより好ましい。
【0050】
Rがアリールもしくはヘテロアリールである場合、好ましい場合による置換基には、1個もしくは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換され得るアルキル基が含まれる。
【0051】
フルオレン単位についての、置換基R1およびR2以外の場合による置換基は、1個もしくは複数の非隣接C原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されるアルキル、場合によって置換されるアリール、場合によって置換されるヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアリールアルキルからなる群から選択されることが好ましい。
【0052】
ポリマーは、それが素子内のどの層で使用されるか、および共繰り返し単位の性質に応じて、正孔輸送、電子輸送および発光の機能の1つまたはそれ以上を提供することができる。
【0053】
本ポリマーは、上述のアリーレン繰り返し単位、およびアリールアミン繰り返し単位、特に繰り返し単位II:
【化2】

(式中、Ar1およびAr2は、場合によって置換されるアリールまたはヘテロアリール基であり、nは1を超えもしくは1に等しく、好ましくは1または2であり、RはHまたは置換基、好ましくは置換基である)を有することが好ましい。Rは、アルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールであることが好ましく、アリールもしくはヘテロアリールであることが最も好ましい。式1の単位中のいずれのアリールもしくはヘテロアリール基も置換できる。好ましい置換基には、アルキルおよびアルコキシ基が含まれる。式Iの繰り返し単位中のいずれのアリールもしくはヘテロアリール基も、直接結合または二価連結原子もしくは基によって連結できる。好ましい二価連結原子および基には、O、S、置換されるNおよび置換されるCが含まれる。
【0054】
式IIを満たす特に好ましい単位には、式1〜3の単位:
【化3】

(式中、Ar1およびAr2は、上記において定義した通りであり、Ar3は、場合によって置換されるアリールまたはヘテロアリールである)が含まれる。存在する場合、Ar3についての好ましい置換基には、アルキルおよびアルコキシ基が含まれる。
【0055】
アリールアミン単位の好ましい濃度は、それを含有するポリマーの機能によって決まる。このアリールアミン単位が、正孔輸送層中に使用されるポリマー内に存在する場合、95モル%まで、好ましくは70モル%までの量で存在することが好ましい。このアリールアミン単位が、発光性層中に使用されるポリマー内に存在する場合(発光性ポリマーとして、または発光性ドーパントのためのホストとして)、30モル%まで、好ましくは20モル%までの量で存在することが好ましい。これらの百分率は、2つ以上の型の式IIの繰り返し単位が使用される場合、ポリマー中に存在するアリールアミン単位の合計数について適用する。
【0056】
本ポリマーは、電荷輸送または発光向けにヘテロアリーレン繰り返し単位を含むことができる。好ましいヘテロアリーレン繰り返し単位は、式7〜21から選択される:
【化4】

(上式において、R6およびR7は、同一または異なっており、それぞれ独立に、水素、または置換基、好ましくはアルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)。製造を容易にするため、R6およびR7は、同一とすることが好ましい。R6およびR7は同一であり、それぞれフェニル基であることがより好ましい。
【化5−1】

【化5−2】

【0057】
エレクトロルミネッセンスコポリマーは、例えば、WO00/55927およびUS6353083において開示されるように、電子発光領域、ならびに正孔輸送領域および電子輸送領域の少なくとも1つを備えることができる。正孔輸送領域および電子輸送領域の一方だけが提供される場合、エレクトロルミネッセンス領域が、他方の正孔輸送および電子輸送機能性を提供することもできる。別法として、エレクトロルミネッセンスポリマーは、正孔輸送材料および/または電子輸送材料とブレンドすることができる。正孔輸送繰り返し単位、電子輸送繰り返し単位および発光性繰り返し単位の1つまたはそれ以上を有するポリマーは、ポリマー主鎖またはポリマー側鎖において前記単位を提供することができる。
【0058】
このようなポリマー内の種々の領域は、US6353083に従ってポリマー主鎖に沿って提供でき、またはWO01/62869に従ってポリマー主鎖から吊り下がる(ペンダント)基として提供できる。
【0059】
重合方法
これらのポリマーの好ましい調製方法は、例えばWO00/53656において記述されるSuzuki重合、および、例えば、T.Yamamoto、「Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science 1993,17,1153〜1205において記述されるYamamoto重合である。これらの重合技術は、両技術とも「金属挿入」を介して実施され、金属錯体触媒の金属原子が、モノマーのアリール基と脱離基との間に挿入される。Yamamoto重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用され、Suzuki重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0060】
例えば、Yamamoto重合による線状ポリマーの合成の場合、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、Suzuki重合の方法によると、少なくとも1つの反応性基は、ホウ素酸もしくはホウ素酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、他方の反応性基はハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素、最も好ましくは臭素である。
【0061】
したがって、本出願全体にわたって例示されるアリール基を含む繰り返し単位および末端基が、適切な脱離基を帯びるモノマーから由来し得ることが理解されるであろう。
【0062】
Suzuki重合は、位置規則性、ブロックおよびランダムコポリマーを調製するのに使用できる。特に、一方の反応性基がハロゲンであり、他方の反応性基がホウ素誘導体基である場合、ホモポリマーまたはランダムコポリマーを調製することができる。別法として、第1のモノマーの両反応性基がホウ素であり、第2のモノマーの両反応性基がハロゲンである場合、ブロックまたは位置規則性コポリマー、特にABコポリマーを調製することができる。
【0063】
ハロゲン化物の代替として、金属挿入に参加することが可能な他の脱離基には、トシレート、メシレートおよびトリフレートなどのスルホン酸エステルを含む基が含まれる。
【0064】
末端封鎖
本発明の方法において使用される1つの一般的な種類の末端封鎖基は、式(V):
(Ar)n-
(V)
(式中、Arは、それぞれの出現において独立に、アリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、上述の脱離基、例えば、ホウ素誘導体基もしくはハロゲンを表し、nは少なくとも2である)を有する。Ar基は、置換できる。隣接するAr基は、二価原子または基によって結合することができる。
【0065】
一実施形態において、末端封鎖基は、少なくとも2つのフェニル環からなる分子鎖を含む。
【0066】
他の実施形態において、末端封鎖基は、少なくとも1つのフルオレン単位を含む(すなわち、2つの隣接するAr基が、C原子によりフェニル結合される)。この末端封鎖基は、複数のフルオレン単位を含むことが好ましい。この末端封鎖基は、フルオレン単位10個までの分子鎖を含むことが好ましい。
【0067】
上記において言及したように、フェニルで末端封鎖した同一のポリマーと比較して、この末端基は、ポリマーの移動度を増加させない。したがって、Ar基およびその上の置換基(それが存在する場合)の特性を適宜選択しなければならない。例えば、Arはオキサジアゾールではなく、置換基は、存在する場合、窒素を含まないことが好ましい。
【0068】
アルキル置換基が好ましい。特に、末端封鎖基がフルオレンを含む場合、フルオレン基の2つのフェニル基を橋かけするC原子上のアルキル置換基が好ましい。
【0069】
この末端封鎖基は、重合の開始時、重合の間、または重合の終わりに付加することができる。
【0070】
全体的素子構成
本発明のポリマーは、発光ダイオード、電界効果トランジスターを含むまた光起電力素子としての、ある範囲の種々の素子に含まれ得る。
【0071】
図3を参照すると、本発明の一態様によるエレクトロルミネッセンス素子の構成は、透明なガラスもしくはプラスチック基板1、アノード2およびカソード4を備えている。エレクトロルミネッセンス層3は、アノード2とカソード4との間に提供されている。
【0072】
実際の素子において、電極の少なくとも1つは、発光できるように、半透明性である。アノードが透明である場合、アノードは通例インジウムスズ酸化物を含む。
【0073】
電荷輸送層
電荷輸送層、電荷注入層または電荷遮断層などのさらなる層が、アノード2とカソード3との間に位置することができる。
【0074】
特に、導電性の正孔注入層を提供することが望ましく、この層は、アノード2とエレクトロルミネッセンス層3との間に提供される導電性有機もしくは無機材料から構成されて、1つまたはそれ以上の半導体ポリマー層中へのアノードからの正孔注入を助けることができる。ドープした有機正孔注入材料の例には、ドープしたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に、電荷平衡性ポリ酸、例えば、EP0901176およびEP0947123において開示されるポリスチレンスルホネート(PSS)、ポリアクリル酸、またはフッ素化スルホン酸などをドープしたPEDT、例えばNafion(登録商標);US5723873およびUS5798170において開示されるポリアニリン;ならびにポリ(チエノチオフェン)が含まれる。導電性無機材料の例には、遷移金属酸化物、例えばJournal of Physics D:Applied Physics(1996),29(11),2750〜2753において開示されるVOx MoOxおよびRuOxなどが含まれる。
【0075】
存在する場合、アノード2とエレクトロルミネッセンス層3との間に位置している正孔輸送層は、5.5eV以下の、より好ましくは約4.8〜5.5eVのHOMOレベルを有することが好ましい。HOMOレベルは、例えば、サイクリックボルタンメトリーによって測定できる。
【0076】
存在する場合、エレクトロルミネッセンス層3とカソード4との間に位置している電子輸送層は、約3〜3.5eVのLUMOレベルを有することが好ましい。
【0077】
エレクトロルミネッセンス層
エレクトロルミネッセンス層3は、本発明による末端封鎖したエレクトロルミネッセンスポリマー単独からなることができ、または1種もしくは複数のさらなる材料と組み合せたエレクトロルミネッセンスポリマーを含むことができる。特に、本エレクトロルミネッセンスポリマーは、例えば、WO99/48160において開示される正孔および/もしくは電子輸送材料とブレンドでき、または半導体ホストマトリックス中のエレクトロルミネッセンス性ドーパントを含むことができる。別法として、エレクトロルミネッセンスポリマーは、電荷輸送材料および/またはホスト材料に共有結合することができる。
【0078】
エレクトロルミネッセンス層3は、パターン形成することができ、またはパターン不形成とすることができる。パターン不形成層を備える素子は、例えば照明源として使用できる。白色光発光素子は、この目的に特に適している。パターン形成層を備える素子は、例えば、アクティブマトリックス表示装置またはパッシブマトリックス表示装置とすることができる。アクティブマトリックス表示装置の場合、パターン形成したエレクトロルミネッセンス層は、通例、パターン形成したアノード層およびパターン不形成のカソード層と組み合せて使用される。パッシブマトリックス表示装置の場合、アノード層は、アノード材料の平行な縞で構成され、エレクトロルミネッセンス材料およびカソード材料の平行な縞がアノード材料と直交して配列され、この場合、エレクトロルミネッセンス材料およびカソード材料の縞は、通例、フォトリソグラフィーによって形成される絶縁材料の縞(「カソードセパレーター」)によって分離されている。
【0079】
カソード
カソード4は、エレクトロルミネッセンス層への電子の注入を可能にする仕事関数(自由エネルギー)を有する材料から、選択される。カソードと本発明のエレクトロルミネッセンスポリマーとの間の逆相互作用の可能性などの他の因子が、カソードの選択に影響を及ぼす。カソードは、アルミニウムの層などの単一材料からなることができる。別法として、カソードは、複数の金属、例えば、WO98/10621において開示されるカルシウムおよびアルミニウムなどの低仕事関数材料および高仕事関数材料の二重層;WO98/57381、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634およびWO02/84759において開示される元素バリウム;または金属化合物、特に、電子注入を助けるアルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物もしくはフッ化物、例えば、WO00/48258において開示されるフッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム;Appl.Phys.Lett.2001,79(5),2001において開示されるフッ化バリウム;および酸化バリウムの薄層を備えることができる。素子への効率的な電子の注入をもたらすために、カソードは、3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有することが好ましい。金属の仕事関数は、例えば、Michaelson、J.Appl.Phys.48(11),4729,1977中に見出すことができる。
【0080】
カソードは、不透明または透明とすることができる。アクティブマトリックス素子向けには透明なカソードが、特に有利であり、それは、このような素子中の透明なアノードを通る発光が、発光性画素の下方に位置している作動回路によって、少なくとも部分的に遮断されるからである。透明なカソードは、透明とするため十分に薄い電子注入材料の層を備えるであろう。通例、この層の横方向導電率は、その層厚の結果として低いであろう。この場合、電子注入材料の層は、インジウムスズ酸化物などの透明な導電性材料の、より厚い層と組み合せて使用される。
【0081】
透明なカソード素子は、透明なアノードを有する必要がなく(もちろん、完全に透明な素子が所望されない限り)、したがって底部発光素子向けに使用される透明なアノードを、アルミニウムの層などの反射材料の層で置換、もしくは補うことができることが理解されるであろう。透明なカソード素子の例は、例えばGB2348316中に開示されている。
【0082】
カプセル化
光学的素子は、湿気および酸素に敏感である傾向がある。したがって、素子中への湿気および酸素の進入を防ぐため、基板は、良好なバリヤー性状を有することが好ましい。基板は一般にガラスであるが、特に素子の可撓性が望ましい場合、代替的な基板を使用することができる。例えば、基板は、プラスチックとバリヤー層とが1つおきである基板を開示しているUS6268695におけるプラスチック、またはEP0949850において開示される、薄いガラスとプラスチックの積層板を備えることができる。
【0083】
本素子は、湿気および酸素の進入を防ぐため、封入材(図示されない)でカプセル化することが好ましい。適切な封入材には、ガラスのシート;例えば、WO01/81649において開示される、ポリマーと誘電体とが1つおきであるスタックなどの適切なバリヤー性状を有するフィルム;または例えば、WO01/19142において開示される気密容器が含まれる。基板または封入材を透過する恐れのあるどんな雰囲気湿分および/または酸素をも吸収するゲッター材料を、基板と封入材の間に配置することができる。
【0084】
溶液処理
単一ポリマーまたは複数のポリマーは、溶液から堆積させて、層3を形成することができる。ポリアリーレン、特にポリフルオレンに適した溶媒には、モノ−もしくはポリアルキルベンゼン例えばトルエンおよびキシレンなどが含まれる。特に好ましい溶液堆積技術は、スピンコーティングおよびインクジェット印刷である。
【0085】
スピンコーティングは、エレクトロルミネッセンス材料のパターン形成が不必要である素子--例えば、照明用、または単純な単色セグメント表示装置に特に適している。
【0086】
インクジェット印刷は、高い情報量表示装置、とりわけフルカラー表示装置向けに特に適している。素子は、第1の電極上にパターン形成層を提供し、1色(単色素子の場合に)または多色(マルチカラー、特にフルカラー素子の場合に)を印刷するためのウェルを規定することによりインクジェット印刷することができる。このパターン形成層は、通例、例えば、EP0880303において記述されるように、パターン形成されてウェルを規定するフォトレジストの層である。
【0087】
ウェルの代替として、パターン形成層内に規定されるチャネル中にインキを印刷することができる。特に、フォトレジストにパターン形成して、ウェルと異なり、複数の画素上に広がり、チャネル末端で閉じ、もしくは開くことができるチャネルを形成することができる。
【0088】
他の溶液堆積技術には、浸し塗り、ロール印刷およびスクリーン印刷が含まれる。
【0089】
溶液処理によって、多層の素子を形成する場合、当業者は、例えば、その次の層を堆積させる前に1つの層を架橋させることによって、または、第1のこれらの層を形成する材料が、第2の層を堆積させるのに使用される溶媒に溶解しないように、隣接する層の材料を選択することによって、隣接する層の混ざり合いを防ぐ技術に気付くであろう。
【0090】
リン光発光体用のホスト
本発明の末端封鎖ポリマーは、発光性ドーパント、特にリン光性ドーパントのためのホストとして使用することができる。従来技術において、数多くのホストが記述されている。ホスト材料は、励起状態のエネルギーとして、ホストのT1エネルギー準位から、発光体のT1準位に移行するために、十分に高いT1エネルギー準位を有するべきである。ホストは、発光体のT1エネルギー準位からエネルギーが逆移行するのを防ぐため十分に高い、特に発光体のT1エネルギー準位よりも高いT1エネルギー準位を有することが好ましい。しかし、いくつかの場合、ホストのT1エネルギー準位が、発光体のT1エネルギー準位と同じ、もしくは発光体のT1エネルギー準位よりもむしろ低い恐れがある。
【0091】
金属錯体
好ましい金属錯体は、式(III):
ML1q2r3s
(III)
(式中、Mは金属であり、それぞれのL1、L2およびL3は配位基であり、qは整数であり、rおよびsは、それぞれ独立に、0または整数であり、(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計は、M上に提供可能な配位部位の数であり、ここにaはL1についての配位部位の数であり、bはL2についての配位部位の数であり、cはL3についての配位部位の数である)の、場合によって置換される錯体を含む。
【0092】
重元素Mは、強いスピン軌道カップリングを誘発して、速やかな系間交差、および三重項もしくはより高位状態からの発光(リン光)を可能にする。適切な重金属Mには:
−ランタニド金属例えばセリウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジムなど、ならびに
−d−ブロック金属、特に2および3列にあるもの、すなわち元素39〜48および72〜80、とりわけルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金
が含まれる。
【0093】
f−ブロック金属に適した配位基には、酸素もしくは窒素供与体系、例えばカルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸;アシルフェノールおよびイミノアシル基を含むシッフ塩基などが含まれる。知られているように、リン光性ランタニド金属錯体は、金属イオンの第一励起状態よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する1つもしくは複数の増感基を必要とする。発光は、金属のf−f遷移からであり、したがって発光色は、金属の選択によって決まる。鋭い発光は一般に狭く、表示装置の用途に有用な純色発光をもたらす。
【0094】
d−ブロック金属は特に、三重項励起状態からの発光に適している。これらの金属は、炭素もしくは窒素供与体を有する有機金属錯体例えばポルフィリンまたは式(IV)の二座配位子:
【化6】

(式中、Ar4およびAr5は同一としもしくは異なることができ、場合によって置換されるアリールまたはヘテロアリールから独立に選択され;X1およびY1は同一としもしくは異なることができ、炭素または窒素から独立に選択され;Ar4およびAr5は、一緒に縮合することができる)などを形成する。X1が炭素であり、Y1が窒素である配位子が、特に好ましい。
【0095】
二座配位子の例は、以下に例示される:
【化7】

【0096】
Ar4およびAr5のそれぞれは、1つまたはそれ以上の置換基を有することができる。2つ以上のこれらの置換基が連結して、環を例えば芳香環を形成することができる。特に好ましい置換基には、フッ素もしくはトリフルオロメチル(WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662およびUS2002−182441において開示されるように、錯体の発光をブルーシフト(青色移動)させるのに使用できる);アルキルもしくはアルコキシ基(JP2002−324679において開示される);カルバゾール(WO02/81448において開示されるように発光性材料として使用される場合、錯体への正孔輸送を助けるのに使用できる);臭素、塩素もしくはヨウ素(WO02/68435およびEP1245659において開示されるように、さらなる基を結合させるため、配位子を官能基化するのに役立つことができる);およびデンドロン(WO02/66552において開示されるように金属錯体の溶液処理性を得るもしくは高めるのに使用できる)が含まれる。
【0097】
発光性デンドリマーは、通例、1つもしくは複数のデンドロンに結合した発光核を備え、その際、それぞれのデンドロンは、分岐点および2つ以上の樹枝状分枝を備える。デンドロンは、少なくとも部分的に共役し、少なくとも1つの核および樹枝状分枝がアリールもしくはヘテロアリール基を含むことが好ましい。
【0098】
d−ブロック元素と一緒に使用するのに適した他の配位子には、ジケトネート、特にアセチルアセトネート(acac)、トリアリールホスフィンおよびピリジンが含まれ、そのそれぞれが、置換できる。
【0099】
主族金属錯体は、配位子に基づくもしくは電荷移動発光を示す。これらの錯体について、発光色は、配位子ならびに金属の選択によって決まる。
【0100】
ホスト材料および金属錯体は、物理的ブレンドの形態で組み合せることができる。別法として、金属錯体はホスト材料に、化学的に結合できる。ポリマー状ホストの場合、金属錯体は、EP1245659、WO02/31896、WO03/18653およびWO03/22908において開示されるように、ポリマー主鎖に結合した置換基として化学的に結合され、またはポリマー主鎖中の繰り返し単位として組み込まれ得る。
【0101】
本発明の末端封鎖ポリマーは、蛍光性ドーパントのためのホストとしての役割を果たすこともできる。広い範囲の蛍光性低分子量金属錯体が知られ、有機発光素子中に示されている[例えば、Macromol.Sym.125(1997)1〜48、US−A5,150,006、US−A6,083,634およびUS−A5,432,014を参照されたい。]2価または3価金属に適した配位子は、例えば、酸素−窒素もしくは酸素−酸素供与原子、一般には置換基酸素原子を有する環窒素原子、または置換基酸素原子を有する置換基窒素原子もしくは酸素原子とのオキシノイド、例えば8−ヒドロキシキノレートおよびヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナート(II)、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、ならびにサリチラートアミノカルボキシレートおよびカルボン酸エステルなどのカルボン酸が含まれる。場合による置換基には、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、(ヘテロ)芳香環上のアリールまたはヘテロアリールが含まれ、これらは発光色を変えることができる。
【0102】
その他
図3の実施形態は素子を例示しており、ここで素子は、最初に基板上にアノードを形成し、続いてエレクトロルミネッセンス層およびカソードを堆積させることによって形成されるが、本発明の素子は、最初に基板上にカソードを形成し、続いてエレクトロルミネッセンス層およびアノードを堆積させることによっても形成できることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ポリマーの末端封鎖(end−capping)方法であって、
前記方法が前記ポリマーの少なくとも1つの末端の末端基を、末端封鎖化合物で置換するステップを含み、
前記末端封鎖化合物が、電荷輸送性ではなく、かつ少なくとも2つの環を含む方法。
【請求項2】
末端封鎖化合物が、式:
(Ar)n−X
(式中、Arは、それぞれの出現において独立に、アリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、ホウ素誘導体基またはハロゲンを含む脱離基を表し、nは2以上である)を有する構造単位からなる、または構造単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーが、電荷輸送性繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、複数のモノマーを含み、少なくとも1つのモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーを形成するための前記複数のモノマーの重合をさらに含み、前記ポリマーが、金属触媒の存在下において形成される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーの分子量が、過剰の臭素化モノマーを使用することによって、少なくとも部分的に制御される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のモノマーが、少なくとも2組の異なったモノマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーを含み、
また、前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーを含む方法。
【請求項8】
前記第1の組のモノマーが、前記第2の組のモノマーよりもゆっくり重合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する前記原子または基が、少なくとも1つのアミン基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記末端封鎖化合物が、窒素原子を含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記末端封鎖基が、炭化水素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記末端封鎖基が、不飽和炭化水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記末端封鎖基が、少なくとも3つの環を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記末端封鎖基が、1つまたはそれ以上のフルオレン基を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
複数のモノマーの重合を含むポリマーの形成方法であって、
前記複数のモノマーの少なくとも1つが、電荷輸送単位;および、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーの一方もしくは両方であり、
また前記複数のモノマーの少なくとも1つが、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端で前記末端封鎖化合物が重合を防ぐ方法であり、前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含む方法。
【請求項16】
末端封鎖化合物が、式:
(Ar)n−X
(式中、Arは、それぞれの出現において独立に、アリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、ホウ素誘導体基またはハロゲンを含む脱離基を表し、nは2以上である)を有する構造単位からなる、または構造単位を含む、請求項15に記載のポリマーの形成方法。
【請求項17】
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている、前記炭化水素モノマーの少なくとも1つが、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端封鎖化合物が前記末端で重合を防ぎ、前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合が、金属触媒の存在下において起こる、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーの分子量が、過剰の臭素化モノマーを使用することによって、少なくとも部分的に制御される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のモノマーが、少なくとも2組の異なったモノマーを含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている前記1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーを含み、
前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーを含み、
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている前記1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーの少なくとも1つが、前記モノマーの一方の末端に末端封鎖化合物を含み、前記末端封鎖化合物が前記末端で重合を防ぎ、前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、少なくとも2つの環を含む方法。
【請求項21】
前記第1の組のモノマーが、前記第2の組のモノマーよりもゆっくり重合する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する前記原子または基が、少なくとも1つのアミン基を含む、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記末端封鎖化合物が、窒素原子を含まない、請求項15から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記末端封鎖基が、炭化水素である、請求項15から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記末端封鎖基が、不飽和炭化水素である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
半導体ポリマーであって、
前記ポリマーが、複数の重合したモノマーを含み、
前記複数の重合したモノマーの少なくとも1つが、電荷輸送単位;および、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている炭化水素モノマーの一方もしくは両方であり、
前記ポリマーの少なくとも1つの末端の末端基が、末端封鎖(end−capping)化合物であり、
前記末端封鎖化合物が電荷輸送性ではなく、かつ少なくとも2つの環を含むポリマー。
【請求項27】
末端封鎖化合物が、式:
(Ar)n−X
(式中、Arは、それぞれの出現において独立に、アリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、ホウ素誘導体基またはハロゲンを含む脱離基を表し、nは2以上である)を有する構造単位からなる、または構造単位を含む、請求項26に記載の半導体ポリマー。
【請求項28】
前記複数のモノマーが、少なくとも2組の異なったモノマーを含む、請求項26または27に記載の半導体ポリマーであって、
前記第1の組のモノマーが、その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する原子または基によって、少なくとも1個の炭素原子が置換されている1つまたはそれ以上の炭化水素モノマーであり、
また前記第2の組のモノマーが、前記第1の組のモノマーに対して、より少ない量の非共有の価電子を含む1つまたはそれ以上のモノマーであるポリマー。
【請求項29】
その置換されている炭素原子よりも多い量の非共有の価電子を有する前記原子または基が、少なくとも1つのアミン基を含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の半導体ポリマー。
【請求項30】
請求項26から29のいずれか一項に記載のポリマーを含むフィルム。
【請求項31】
請求項26から29のいずれか一項に記載のポリマーを含む電子素子(device)。
【請求項32】
前記素子が、発光ダイオードである、請求項30に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524140(P2012−524140A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505236(P2012−505236)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000812
【国際公開番号】WO2010/119277
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】