説明

ポリマーブレンド

新規ポリマーブレンドは、(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、前記共重合体を(iv)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、(v)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、(vi)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーとからなり、(a)と(b)との合計が100%であることを特徴とする。成分(a)の共重合体は通常、メタロセン触媒を用いて調製される。該ブレンドは30〜200Paの範囲の有利なメルト弾性率を示し、特に押出コーティング用途に好適である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリマーブレンド、特にエチレン−α−オレフィン共重合体と低密度ポリエチレンとからなるポリマーブレンドに関するものである。通常、共重合体はメタロセン触媒を用いて製造可能であり、特にポリマーブレンドは押出コーティング用途に好適である。
【0002】
密度に応じて分類される多種多様な周知のポリマーが存在する。例えば、従来のチーグラー−ナッタ触媒が0.915〜0.928の標準的な範囲の密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)の調製に用いられてきた。0.929〜0.940の範囲の標準密度を有する中密度ポリエチレン、および0.940を超える密度を有する高密度ポリエチレンも周知のものである。最近になって、0.915未満の密度の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が製造されるようになった。
【0003】
一般的に、押出被覆物は高圧重合プロセスで製造されるLDPE材料が中心となっている。これらの材料は溶融強度が高く、押出が容易であるが、LLDPEは比較的分子量分布が狭いため、押出は困難である。
【0004】
しかしながら、ポリマーはどちらのタイプも押出コーティング用途においては、例えば、特定の基質と結合させた際の密着性が悪いといったデメリットがある。
【0005】
国際公開第02/48258号パンフレットには、押出コーティング用途に好適な機械的性質を向上させた、LLDPE、HDPE、およびLDPEを含有する3−成分ブレンドが記載されている。
【0006】
国際公開第02/00436号パンフレットには、0.916未満の密度を有する低密度ポリエチレンと、0.916〜0.940の範囲の密度を有する低密度ポリエチレンとのブレンドからなる押出コーティングに有用なポリマーブレンドが記載されている。ポリマーはどちらのタイプもメタロセン触媒を用いて製造するのが好ましく、該ブレンドは機械的性質も改善されている。
【0007】
国際公開第00/68285号パンフレットには、ユニークな性質の組み合わせ、特に、2〜3.4の範囲の狭い分子量分布と、28〜45kJ/molの範囲にある活性化エネルギーとの組み合わせを有するLLDPE共重合体について記載されている。これらの共重合体は、メタロセン触媒を用いて気相中で製造することが可能であり、文献には、共重合体は低密度ポリエチレン(LDPE)のような他のポリマー成分とブレンド可能であると一般に開示されている。
【0008】
現在では、LLDPEの分子量分布が狭いことを特徴とするが、特に押出コーティング用途向けのブレンドが向上するユニークなメルトインデックスおよびメルトレオロジー特性を有するLLDPEとLDPEとをベースにして、ポリマーブレンドを製造できることが分かってきた。
【0009】
したがって、本発明の第一の側面は、
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(i)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(ii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と
(iii)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレンポリマーとからなるポリマーブレンドにおいて、(a)と(b)との合計が100%であることを特徴とする、ポリマーブレンドを提供する。
【0010】
本発明に係るポリマーブレンドの成分(a)の共重合体は、0.907〜0.930gcm−3の範囲の密度が好ましく、0.907〜0.915gcm−3の範囲の密度が最も好ましい。
【0011】
共重合体のメルト弾性率G′(G″=500Pa)は、好ましくは10〜100Paの範囲であり、最も好ましくは12〜90Paの範囲である。
【0012】
共重合体のメルトインデックスは、好ましくは10〜50の範囲であり、最も好ましくは12〜30の範囲である。
【0013】
通常、共重合体は2〜3.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を示す。
【0014】
通常、共重合体の流動活性化エネルギー(Ea)は28〜50の範囲であり、最も好ましくは30〜45の範囲である。
【0015】
通常、共重合体は、30℃乃至150℃の間で2個以上の示差走査熱量計(DSC)融解ピークを示す。
【0016】
本発明の新規ブレンドは、他のポリマー成分を追加構成してもよい。
【0017】
したがって、本発明の第二の側面は、
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(i)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(ii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と
(iii)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレンポリマーと、
(c)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンまたは低密度ポリエチレンとの0〜98重量%の共重合体とからなるポリマーブレンドにおいて、(a)と(b)と(c)の合計が100%であることを特徴とする、ポリマーブレンドを提供する。
【0018】
本発明のこの側面においては、成分(c)は成分(a)で定義した性質を有する別の共重合体を構成してもよいし、成分(b)で定義した別のLDPEポリマーを構成してもよい。
【0019】
このように、本発明のこの側面によるポリマーブレンドは、例えば、成分(a)の性質を有する2種類のポリマーと、成分(b)のポリマーとで構成することができる。あるいは、このブレンドは成分(b)の性質を有する2種類のポリマーと、成分(a)で定義した共重合体とで構成することもできる。
【0020】
本発明の成分(a)の共重合体は通常、遷移金属化合物からなる触媒系を用いて調製可能である。遷移金属化合物は好適な共触媒の存在下において用いられる。
【0021】
好適な遷移金属化合物の例は、例えば、+2、+3、または+4ホルマール酸化状態にある基IIIA、IVA、またはランタノイド金属の誘導体である。好適な化合物としては、1〜3座アニオン性または中性配位子基を含有する金属錯体などがあり、この配位子基は環状または非環状非局在化π結合型アニオン性配位子のどちらでもよい。このようなπ結合型アニオン性配位子基の例では、共役または非共役、環状または非環状ジエニル基、アリール基、ボラタベンゼン基、ホスホールおよびアレーン基である。π結合という用語は、部分的に非局在化したπ結合から電子を奪うことにより配位子が金属に結合するという意味である。
【0022】
非局在化π結合基中の各原子は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、ヒドロカルビル、置換メタロイド基からなる群から選択される基で独立して置換されることが可能であり、該メタロイドは周期表の第IVB族から選択される。「ヒドロカルビル」という用語には、C1−C20の直鎖状、分岐状、および環状アルキル基やC6−C20芳香族基などが含まれる。また、このような2個以上の基で溶融環系を形成することも、金属で金属環状物を形成することもできる。
【0023】
好適なアニオン性非局在化π結合基の例としては、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、テトラヒドロインデニル、テトラヒドロフルオレニル、オクタヒドロフルオレニルなどに加え、ホスホールおよびボラタベンゼン基などが挙げられる。
【0024】
ホスホールは、シクロペンタジエニル基の類似物を含有するリンであるアニオン性配位子である。ホスホールは当該技術において周知のものであり、国際公開第98/50392号パンフレットに記載されている。
【0025】
ボラタベンゼンは、ベンゼンの類似物を含有するホウ素であるアニオン性配位子である。ボラタベンゼンは当該技術において周知のものであり、Organometallics誌(有機金属化学誌),14,1,471−480(1995年)に記載されている。
【0026】
本発明による成分(a)の共重合体を調製するのに用いられる好適な遷移金属化合物は、少なくとも上記非局在化π結合基、特にシクロペンタジエニル配位子の1つを含有するメタロセン錯体とも呼ばれる大きな配位子化合物である。このメタロセン錯体は、例えば、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムなど第IVA族金属をベースとするものである。
【0027】
メタロセン錯体は一般式で表すことができる。
LxMQn
式中、Lはシクロペンタジエニル配位子であり、Mは第IVA族金属であり、Qは離脱基であり、xおよびnは金属の酸化状態に依存するものである。
【0028】
通常、第IVA族金属はチタン、ジルコニウム、ハフニウムのいずれかであり、xは1か2であり、通常、離脱基にはハロゲンまたはヒドロカルビルなどが含まれる。シクロペンタジエニル配位子は、例えば、アルキルまたはアルケニル基で置換することも、インデニルやフルオレニルのような溶融環系を構成することも可能である。
【0029】
好適なメタロセン錯体の例は欧州特許第129368号明細書および欧州特許第206794号明細書に記載されている。このような錯体は、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチル)シクロペンタジエニルジクロリドにより架橋を外すことも、例えば、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドやジメチルシリル(インデニル)ジルコニウムジクロリドで架橋することも可能である。
【0030】
その他の好適なビス(シクロペンタジエニル)メタロセン錯体は、国際公開第96/04290号パンフレットに記載されているビス(シクロペンタジエニル)ジエン錯体である。このような錯体の例は、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(2.3−ジメチル−1,3−ブタジエン)およびエチレンビス(インデニル)ジルコニウム1,4−ジフェニルブタジエンである。
【0031】
本発明用に好適なモノシクロペンタジエニルや置換モノシクロペンタジエニル錯体の例については、欧州特許第416815号明細書、欧州特許第418044号明細書、欧州特許第420436号明細書、および欧州特許第551277号明細書に記載されている。好適な錯体は一般式で表すことができる。
CpMXn
式中、Cpは1シクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基であり、置換基により任意にMに共有結合し、Mは、η結合モードでシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基に結合した第VIA族金属であり、Xはそれぞれ、最大20個の非水素原子を有するハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、シロキシアルキルその他、および最大20個の非水素原子を有する中性ルイス塩基配位子からなる群から選択される水素化物または部分であり、または1個のXとCpは任意にMと金属環状物を形成し、nは金属の原子価に依存する。
【0032】
特に、好適なモノシクロペンタジエニル錯体は以下の式を有する。
【化1】

式中、R′はそれぞれ水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、およびそれらの組み合わせから独立して選択され、前記R′は最大20個の非水素原子を有し、2個のR′基(このR′は水素、ハロ、シアノのいずれでもない)が共に任意でシクロペンタジエニル環の隣接部に結合されるそれらの二価誘導体を形成して溶融環構造を形成し、
Xは、最大20個の非水素原子を有するハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、シロキシアルキルその他、および最大20個の非水素原子を有する中性ルイス塩基配位子からなる群から選択される水素化物または部分であり、
Yは、−O−,−S−,−NR−,−PR−であり、
Mは、ハフニウム、チタン、またはジルコニウムであり、
は、SiR,CR,SiRSIR,CRCR,CR=CR,CRSIR,またはGeRであって、
式中、Rはそれぞれ、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、およびそれらの組合せから選択される独立に水素、または員であり、前記Rは最大10個の非水素原子を有し、Zからの2個のR基(Rが水素ではない場合)、またはZからの1個のR基とYからの1個のR基とが任意で環系を形成し、
そして、nはMの原子価に依存する1または2である。
【0033】
好適なモノシクロペンタジエニル錯体の例は、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランチタニウムジクロリドおよび(2−メトキシフェニルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランチタニウムジクロリドである。
【0034】
その他の好適なモノシクロペンタジエニル錯体は、国際公開第99/40125号パンフレット,国際公開第00/05237号パンフレット,国際公開第00/05238号パンフレット,および国際公開第00/32653号パンフレットに記載されているホスフィンイミン配位子からなるものである。このような錯体の典型的な例は、シクロペンタジエニルチタン[トリ(第三ブチル)ホスフィンイミン]ジクロリドである。
【0035】
更なる好適なタイプの遷移金属化合物は、米国特許第5527752号明細書および国際公開第99/61486号パンフレットに記載されているジルコニウム(シクロペンタジエニル)トリス(カルバミン酸ジエチル)のようなヘテロアリール部分からなるモノシクロペンタジエニル錯体である。
【0036】
特に、本発明に係る成分(a)の共重合体を調製するのに用いられる好適なメタロセン錯体は、一般式で表すことができる。
【化2】

式中、R′はそれぞれ、水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、およびそれらの組合せから独立して選択され、前記R′は最大20個の非水素原子を有し、2個のR′基(このR′は水素、ハロ、シアノのいずれでもない)は共に任意でシクロペンタジエニル環の隣接部に結合されるそれらの二価誘導体を形成して溶融環構造を形成し、
Xは、最大30個の非水素原子を有する中性η結合ジエン基で、Mと共にπ錯体を形成し、
Yは、−O−,−S−,−NR−,−PR−であり、
Mは、+2ホルマール酸化状態におけるチタンまたはジルコニウムであり、
Zは、SiR,CR,SiRSIR,CRCR,CR=CR,CRSIR,もしくはGeRであって、
式中、Rはそれぞれ、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、およびそれらの組合せから選択される独立に水素または員であり、前記Rは最大10個の非水素原子を有し、Zからの2個のR基(Rが水素ではない場合)、またはZからの1個のR基とYからの1個のR基が任意で環系を形成する。
【0037】
好適なX基の例としては、s−トランス−η−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン,s−トランス−η−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η−2,4−ヘキサジエン、s−トランス−η−1,3−ペンタジエン、s−トランス−η−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−トランス−η−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン、s−シス−η−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−η−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−η−1,3−ペンタジエン、s−シス−η−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンなどがあり、前記s−シスジエン基は金属で本明細書で定義したπ錯体を形成する。
【0038】
最も好適なR′は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、もしくはフェニルか、または2R′基(水素を除く)が互いに結合することにより、CR′基全体が、例えば、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、もしくはオクタヒドロフルオレニル基となる。
【0039】
極めて好適なY基は、式−N(R″)−または−P(R″)−(このR″はC1−10ヒドロカルビル)に対応する基を含有する群を含む窒素またはリンである。
【0040】
最も好適な錯体は、アミドシラン錯体またはアミドアルカンジイル錯体である。
【0041】
最も好適な錯体は、Mがチタンである錯体である。
【0042】
特定の錯体は、国際公開第95/00526号パンフレットに開示されている錯体であり、参照することにより本書に援用されている。
【0043】
特に、好適な錯体は(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタニウム−η−1.3−ペンタジエンである。
【0044】
本発明に係る成分(a)の共重合体を調製するのに好適な共触媒は、通常、上記遷移金属化合物と併用して用いられる共触媒である。
【0045】
これらには、メチルアルミノキサン(MAO)のようなアルミノキサン類や、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのようなボラン類、およびボレートなどが挙げられる。
【0046】
アルミノキサンは当該技術において周知のものであり、オリゴマー線状および/または環式アルキルアルミノキサンからなるものが好ましい。アルミノキサンは多種多様な方法で調製可能であり、接着水および、例えば、トリメチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物により、例えば、ベンゼンや脂肪族炭化水素のような好適な有機媒体で調製するのが好ましい。
【0047】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。
【0048】
その他の好適な共触媒は有機ホウ素化合物、特にトリアリールホウ素化合物である。特に好ましいトリアリールホウ素化合物は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0049】
共触媒として好適なその他の化合物は、カチオンおよびアニオンからなる化合物である。該カチオンは一般的にプロトンを提供するブレンステッド酸であり、該アニオンは一般的にカチオンを安定させる相容性の大きな非配位種である。
【0050】
このような共触媒は式で表すことができる。
(L−H)(Ad−
式中、Lは、中性ルイス塩基であり、
(L−H)は、ブレンステッド酸であり、
d−は、dの電荷を有する非配位性相溶性アニオンであり、
dは、1〜3の整数である。
【0051】
イオン化合物のカチオンは、酸性カチオン、カルボニウムカチオン、シリリウムカチオン、オキソニウムカチオン、有機金属カチオン、およびカチオン酸化剤からなる群から選択することができる。
【0052】
好適かつ好ましいカチオンとしては、トリヒドロカルビル置換アンモニウムカチオン、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、および類似のものが挙げられる。また、好適なカチオンとしては、N,N−ジメチルアニリニウムカチオンのようなN.N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられる。
【0053】
共触媒として用いられる好ましいイオン化合物は、該イオン化合物のカチオンがヒドロカルビル置換アンモニウム塩からなり、アニオンがアリール置換ホウ酸塩からなるものである。
【0054】
イオン化合物として好適かつ代表的なホウ酸塩には以下のものがある。
トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(t−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0055】
メタロセン錯体との併用に適した好ましいタイプの共触媒は、カチオンとアニオンで構成されるイオン化合物からなり、該アニオンは活性水素を有する部分からなる少なくとも1つの置換基を有する。
【0056】
このタイプの好適な共触媒については、国際公開第98/27119号パンフレットに記載されており、その関連部分が参照することにより本書に援用されている。
【0057】
このタイプのアニオンの例としては、以下のものが挙げられる。
トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、
トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、
トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、
トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート
【0058】
このタイプの共触媒に好適なカチオンの例としては、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、および類似のものが挙げられる。
【0059】
特に、好適なカチオンはジヘキシルデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ビス(水素化脂肪アルキル)メチルアンモニウム、および類似のものが挙げられる。
【0060】
特に、このタイプの好ましい共触媒は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)4−(ヒドロキシフェニル)ボレートである。特に、好ましい共触媒は、ビス(水素化脂肪アルキル)メチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートである。
【0061】
このタイプの共触媒に対する好ましい化合物は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)−4−(ヒドロキシフェニル)ボレートの反応生成物および、例えば、トリエチルアルミニウムやテトライソブチルアルミノキサンのようなアルミノキサンなどの有機金属化合物である。
【0062】
本発明に係る成分(a)の共重合体を調製するのに用いられる触媒は、好適に支持することが可能である。
【0063】
好適な支持材としては、無機金属酸化物が挙げられるが、その代替として、高分子支持体に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、粘土、ゼオライトなどを用いてもよい。
【0064】
本発明の方法による担持触媒との併用に最も好ましい支持材は、シリカである。好適なシリカとしては、Ineos ES70およびGrace Davison 948シリカなどが挙げられる。
【0065】
支持材の水分やヒドロキシル含有量を減らすには、支持材に熱処理および/または化学処理を施すとよい。通常、化学脱水剤は反応性金属水素化物、アルキルアルミニウム、およびハロゲン化物である。支持材は、その使用前に、100℃〜1000℃、好ましくは200〜850℃で減圧下、不活性雰囲気において処理するとよい。
【0066】
多孔質担体は、有機金属化合物、好ましくは有機アルミニウム化合物、最も好ましくは希釈溶剤に溶かしたトリアルキルアルミニウム化合物で前処理しておくのが好ましい。
【0067】
支持材は、−20℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃の温度で有機金属化合物で前処理しておく。
【0068】
最も好ましい担体は、少なくとも2種類の有機アルミニウム化合物で前処理しておいた材料である。
【0069】
好ましい有機アルミニウム化合物は、各アルキル基に1〜20個の炭素原子を含有するトリアルキルアルミニウム化合物である。好ましいトリアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムである。
【0070】
本発明の前処理済担体におけるアルミニウムとシリカとの比率は、すべての使用可能なヒドロキシル基が、アルミニウム化合物を用いた前処理により不動態化されるようなものが好ましい。
【0071】
好適な実施形態においては、支持材は有機アルミニウム化合物で連続前処理してある。
【0072】
本発明に係る成分(a)の共重合体の調製に好適な触媒系は、国際公開第04/018530号パンフレット、国際公開第04/018531号パンフレット、国際公開第04/020487号パンフレット、国際公開第04/055062号パンフレットのいずれかに記載されているものである。
【0073】
本発明に係る成分(a)の共重合体は、スラリーまたは気相プロセスで調製可能である。
【0074】
スラリープロセスでは一般的に、不活性炭化水素希釈剤と、0℃から該プロセスで得られたポリマーが不活性重合媒体にほぼ溶ける温度直下の温度までの温度を用いる。好適な希釈剤としては、ヘキサンやプロパン、イソブタンなどのトルエンやアルカンなどが挙げられる。好ましい温度は約30℃〜約200℃ではあるが、60℃〜100℃が好ましい。スラリー重合プロセスにおいてはループ原子炉が広範囲に用いられている。
【0075】
オレフィンの重合、特に、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのエチレン・α−オレフィン共重合に対する気相プロセスは、当該技術において周知のものである。
【0076】
一般的な気相作動条件は20℃〜100℃であり、最も好ましくは40℃〜85℃であり、圧力が大気圧から100バールまでのものである。
【0077】
特に、好ましい気相プロセスは、流動層において作動するプロセスである。このようなプロセスの例は、欧州特許第89691号明細書および欧州特許第699213号明細書に記載されており、後者は本発明の担持触媒併用に特に好ましいプロセスである。
【0078】
好ましいα−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンである。
【0079】
本発明に係るポリマーブレンドの成分(b)の低密度ポリエチレンポリマー(LDPE)は、当該技術において周知の方法により調製可能であり、例えば、上述したメタロセンなどの遷移金属触媒を用いて調製することが可能である。
【0080】
例えば、LDPEは従来の高圧滅菌技術を用いても、あるいは管型反応器技術を用いても調整可能である。
【0081】
LDPEは、エチレンのホモポリマーの場合もあれば、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンなど、3〜10個の炭素原子を有するエチレン・α−オレフィン共重合体の場合もある。
【0082】
その他の好適なコモノマーとしては、極性ビニル、共役および非共役ジエンなどが挙げられる。例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体がLDPE成分として好適であろう。
【0083】
また、LDPEはターポリマーで構成してもよい。
【0084】
LDPEは、0.914〜0.928の範囲の密度を有する。
【0085】
LDPEは通常、0.1〜25の範囲、好ましくは0.1〜10の範囲、最も好ましくは2〜8の範囲のメルトインデックスを有する。
【0086】
LDPEは通常、30〜300Paの範囲、好ましくは40〜250Paの範囲、最も好ましくは80〜200Paの範囲のメルト弾性率,G′(G″=500Pa)を有する。
【0087】
好適なLDPEは、弊社出願の国際公開公報第99/35174号パンフレットに記載されており、長鎖分岐の増加度が示してある。
【0088】
本発明のポリマーブレンドは、好ましくは共重合体の成分(a)の60〜75重量%と、低密度ポリエチレンポリマーの成分(b)の25〜40重量%とからなる。
【0089】
本発明のポリマーブレンドは通常、30〜200Paの範囲、好ましくは45〜150Paの範囲、最も好ましくは60〜120Paの範囲のメルト弾性率,G′(G″=500Pa)を有する。
【0090】
最も好ましいメルト弾性率は、75〜100Paの範囲にある。
【0091】
本発明のポリマーブレンドは通常、30℃乃至150℃の間で2個以上の示差走査熱量計(DSC)融解ピークを示す。
【0092】
本発明のポリマーブレンドは、配合によっても、乾式混合によっても製造可能である。
【0093】
本発明のポリマーブレンドは、当該技術において周知の用途、例えば、フィルムや塗装、物品などに使用可能である。
【0094】
フィルムは、例えば、キャスティングなど従来のプロセスにより形成可能である。ポリマーブレンドは、単層フィルムの成分としても、多層フィルムの成分としても使用可能である。
【0095】
通常、押出コーティングは塗膜を基板に密着させるためにフィルムより高い温度で処理される。
【0096】
通常、フィルムやコーティングは紙、ホイル、または高分子材料のような基板に使用可能であり、好ましくは液体パッケージ実装構造に使用可能である。
【0097】
本発明のポリマーブレンドは、押出コーティング用途に使用するのが好ましい。
【0098】
したがって、本発明の更なる側面は、
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(i)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(ii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、
(iii)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーとからなるポリマーブレンドで構成される押出コーティングにおいて、(a)と(b)との合計が100%であることを特徴とする、押出コーティングを提供する。
【0099】
また、上記の多成分ブレンドはフィルムおよび押出コーティング用途にも好適であろう。
【0100】
次に、本発明について以下の実施例を参照して説明する。
【0101】
実施例
略語
TEA トリエチルアルミニウム
TiBA トリイソブチルアルミニウム
TiBAO テトライソブチルアルミノキサン
イオン化合物A [N(H)Me(C18−2237−45][B(C(p−OHC)]
錯体A (CMeSiMeBu)Ti(η−1,3−ペンタジエン)
以下の手順では本発明に係るブレンドの成分(a)としての使用に好適なエチレン共重合体の調製について説明する。
【0102】
手順A
触媒調製
Grace948シリカ(従来は窒素下、250℃で5時間焼成)10gに、TiBA,0.952mol/l(0.8mmol Al/g silica)のヘキサン溶液8.4mlを加え、その後、TEA,1.027mol/l(0.8mmol Al/g silica)のヘキサン溶液を7.8ml加えた。その混合物を2時間反応させてからシリカをデカントし、3回洗浄して、真空乾燥させた。
[Al]=1.35mmol/g(ICP測定)
イオン化合物A(トルエンに溶かしたもの11.1wt%)の溶液0.927mlをトルエンに溶かしたTiBA(0.265mol/l)(モル比Al/B=0.5)0.148mlと反応させた。上記の不動態化させたシリカ2.5gをゆっくりとこの溶液に含浸させていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌し、その後、30分間保持した。
次に、ヘプタン(9.17wt%)に溶かした錯体Aの溶液0.440をゆっくりと加えていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌した後、30分間保持した。その後、触媒を13mlのエキスで3回洗浄してから真空乾燥させた。
[Ti]=31μmol/g;[Al]=1.23mmol/g
【0103】
重合データ
2.5l二重ジャケット式サーモスタットステンレスオートクレーブを70℃で少なくとも1時間、窒素パージさせた。あらかじめ80℃で12時間真空乾燥させたPEペレット150gを導入し、その後、反応器を3回窒素パージさせた(大気圧に対して7バール)。加圧下、〜0.13gのTEA処理したシリカ(TEA1.5mmol/g)を加え、攪拌下、少なくとも15分間不純物を除去した。その後、気相が構成され(エチレン、1−ヘキセン、および水素を添加)、担持触媒(〜0.1g)とシリカ/TEA(〜0.1g)との混合物を注入した。実験中、エチレンの定圧とエチレンとコモノマーとの定圧比を保持させた。反応器を通風させ、その後、3回窒素パージを行い、この実験を終了させた。次に、実験中に生成されたPEパウダーを簡単なふるい分けでPE苗床から分離した。
【0104】
実験条件
床としてPEペレット228g
T=70℃
PC2=6.5バール
PC6/PC2=0.586(%vol)
PH2/PC2=1.12(%vol)
不純物除去剤として用いられた含浸物SiO2/TEA
触媒量:90mg
重合時間=90分
重合反応の終わりに、生成されたポリマー(33g、活量45g/ghb)には次のような性質が見られた。
【0105】
手順B
Grace948シリカ(従来は窒素下、250℃で5時間焼成)10gに、TiBA,0.952mol/l(0.8mmol Al/g silica)のヘキサン溶液8.4mlを加え、その後、トリエチルアルミニウム(TEA)1.027mol/l(0.8mmol Al/g silica)のヘキサン溶液を7.8ml加えた。その混合物を2時間反応させてからシリカをデカントし、3回洗浄して、真空乾燥させた。
[Al]=1.35mmol/g(ICP測定)
イオン化合物A(トルエンに溶かしたもの11.1wt%)の溶液1.11mlをシクロヘキサン(0.081mol/l)に溶かしたTiBAO(モル比TiBAO/B=2)0.233mlと反応させた。上記の不動態化させたシリカ3gをゆっくりとこの溶液に含浸させていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌し、その後、30分保持した。
次に、ヘプタン(9.17wt%)に溶かしたCGC−7溶液0.528をゆっくりと加えていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌し、その後、30分保持した。次に、触媒を15mlのエキスで3回洗浄して真空乾燥させた。
【0106】
重合データ
概ね、実施例1の調製を以下の条件で繰り返した。
床としてPEペレット221g
T=70℃
PC2=6.5バール
PC6/C2=0.595(%vol)
PH2/PC2=1.23
不純物除去剤として用いた含浸物SiO2/TEA
触媒量:91mg
重合時間=75分
重合反応の終わりに、生成されたポリマー(24g、活量35g/ghb)には次のような性質が見られた。
【0107】
手順C
Ineos ES70シリカ(従来は窒素下、500℃で5時間焼成した。ポア容積1.55ml/g)30gに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、0.96mol/lのヘキサン溶液28.1mlとヘキサン18.4mlとで作った溶液を加えた。その混合物を攪拌下、2時間反応させてから真空乾燥させた。イオン化合物(トルエンに溶かしたもの11.1wt%)の溶液15.1mlをトルエン(0.265mol/l)に溶かしたTiBA溶液(モル比Al/B=0.5)2.4mlと反応させて、活性剤溶液を調製した。次に、この溶液をゆっくりと上記のTiBA処理させたシリカに含浸させていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌した。その後、10mlの1-ヘキセンを加え、その混合物を30分間攪拌した。ヘプタン(9.17wt%)に溶かした錯体Aの溶液7.16mlをゆっくりと加えていき(15分)、塊が見えなくなるまで手動で攪拌した。次に、その混合物を1時間放置させた。その後、触媒を真空乾燥させた。
【0108】
手順D
シリカの不動態化
シリカES70(従来は500℃で5時間焼成)10Kgに、ヘキサンに溶かしたTiBA950mMAl/lを10.5L加え、その後、ヘキサン5Lを加えた。30℃で2時間攪拌した後、シリカを60℃で真空乾燥させた。
触媒調製
トルエン(11.1wt%)に溶かした5.7Lのイオン活性剤Aを、3.4Lのヘキサンに加えた後、シクロヘキサン(0.812mol/l)に溶かした1.2LのTIBAOを加え、その混合物を1時間反応させた。不動態化させたシリカを攪拌下、この溶液にゆっくりと含浸させていき(1時間)、その後、2時間保持した。次に、ヘプタン(11.64wt%)に溶かした錯体Aの溶液2.2Lを攪拌下、ゆっくりと加えていき(1時間)、その後、1時間保持した。その混合物を真空乾燥させた後、28.5Lのヘキサンを攪拌下、ゆっくりと加えていき(30分)、その後、1.5時間保持した。最後に、得られた触媒を真空乾燥させた。
【0109】
手順E
シリカの不動態化
シリカES70(従来は500℃で5時間焼成)10Kgに、ヘキサンに溶かしたTiBA950mMAl/lを10.5L加え、その後、5リットルのヘキサンを加えた。30℃で2時間攪拌した後、シリカを60℃で真空乾燥させた。
触媒調製
トルエン(11.1wt%)に溶かしたイオン活性剤A4.2Lを、1.5Lのヘキサンに加えた後、ヘキサン(0.950mol/l)に溶かした0.19LのTIBAを加え、その混合物を1時間反応させた。不動態化させたシリカを攪拌下、この溶液にゆっくりと含浸させていき(1時間)、その後、1時間保持した。続いて、3.8の1−ヘキセンを30分に亘って加えた後、30分保持した。次に、ヘプタン(11.64wt%)に溶かした錯体Aの溶液1.6Lを攪拌下、ゆっくりと加えていき、その後、1時間保持した。最後に、得られた触媒を真空乾燥させた。
【0110】
手順F
シリカの不動態化
ヘキサン110Lに溶かしたシリカGrace−Davison948(従来は250℃で5時間焼成)10Kgに、ヘキサンに溶かした12.9リットルのTiBA0.7MAl/lを加え、その後、TEAペンタン0.5MAl/lを18l加えた。30℃で2時間攪拌した後、シリカを130リットルのヘキサンで5回洗浄して真空乾燥させた。
触媒調製
トルエン(9.7wt%)に溶かしたイオン活性剤Aの溶液7.3Lを、ヘキサン1.5Lに加え、その後、シクロヘキサン(0.816mol/l)に溶かした1.3LのTIBAOを加え(モル比TiBAO/イオン活性剤A=2)、その混合物を1時間反応させた。不動態化させたシリカを攪拌下、この溶液にゆっくりと含浸させていき(1時間)、その後、1時間保持した。続いて、ヘプタン(8.58wt%)に溶かした錯体Aの溶液3.1Lを攪拌下、ゆっくりと加えていき、その後、1時間保持した。次に、ヘキサン60Lを加え、その懸濁液を1時間攪拌した。得られた触媒を150Lのヘキサンで3回洗浄してから真空乾燥させた。
【0111】
手順G
シリカの不動態化
ヘキサン110Lに溶かしたシリカGrace−Davison948(従来は250℃で5時間焼成)10Kgに、ペンタンに溶かした36リットルのTEA0.5MAl/lを加えた。30℃で1時間攪拌した後、シリカを130リットルのヘキサンで5回洗浄して真空乾燥させた。
触媒調製
ペンタン(0.5mol/l)に溶かした1.43LのTEAを、トルエン(9.6wt%)に溶かした9.7Lのイオン活性剤Aに加え、その混合物を15分間反応させた。不動態化させたシリカを攪拌下、ゆっくりとこの溶液に含浸させていき(45分)、その後、30分間保持した。
続いて、1−ヘキセン2.8を、ヘプタン(8.63wt%)に溶かした錯体Aの溶液4Lに、攪拌下、ゆっくりと加えた。得られた混合物を上記で処理した担体に30分間に亘って加えた後、1時間保持した。最後に、得られた触媒を真空乾燥させた。
手順C−Gで調製した触媒を用いて、手順AおよびBに記載したプロセスと同様のプロセスでエチレンと1−ヘキセンを共重合した。
【0112】
物理的性質
GPC/オンライン粘度測定による分子量分布(Mw/Mn)測定
ウォーターズ(Waters)社のGPCV2000を用いて、長鎖分岐の見かけの分子量分布、関連平均値、未補正値をゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。同じ供給業者のアライアンス(Alliance)ソフトウェアを用いて、データ収集を行った。
装置設定は以下の通りであった。
カラム温度:150℃
インジェクター温度:150℃
ポンプ温度:50℃
注入量:217.5μl
溶出時間:60分
溶出剤:0.05%BHTで安定させた1,2,4トリクロロベンゼン
流速:1ml/分
カラム設定:2 Shodex AT806MS+1 Waters HT2
(通常26,000のプレートカウント(半値幅)使用)
検出器:示差屈折計
【0113】
溶出前に、ポリエチレン試料を、0.05%BHTで安定させた1,2,4トリクロロベンゼンに入れて攪拌しながら、150℃で2時間溶解した。ポリエチレン濃度は0.1%w/wであった。
【0114】
狭いポリスチレン標準を用いて相対較正を作成した。分子量および溶液濃度を以下の表に記載する。
#小瓶 M(PS) PD 30mlの溶剤の質量(mg)

76600 1.03 34.125
2 3900000 1.05 6.75
50400 1.03 42.75
3 1950000 1.04 8.625
30300 1.02 42.75
4 995000 1.04 8.625
21000 1.02 42.75
5 488400 1.05 17.25
9860 1.02 51.375
6 195000 1.02 25.5
2100 1.05 68.25
溶出容量、VをPS基準別に記録した。
以下のマークホーインク(Mark−Houwink)定数を用いて、PS分子量をPE当量で変換した。
αPS=0.67 KPS=0.000175
αPE=0.706 KPE=0.00051
較正曲線MwPE=f(V)を第3多項式と適合させた。計算はすべてウォーターズ(Waters)社のミレニアム32を用いて行った。この較正をNIST認証のポリエチレンBRPE0と照らし合わせてチェックした。得られた値はMwが53,000であり、Mnが19,000であった。
【0115】
動的レオロジー解析
レオロジー測定は、直径25mmの平行板を備えた動的レオメーター(例えば、レオメトリックス(Rheometrics)社のRDS−2,ARES)により動的モードで行われる。すべての実験では、レオメーターを190℃で少なくとも30分間熱安定させてから、適切に安定させ(酸化防止添加剤で)、圧縮成形した試料を平行板上に挿入する。そうすると、これらのプレートはメーターに登録された正の垂直抗力で閉じられる。190℃で約5分後、プレートが軽く圧縮されてプレート周りの余分のポリマーが取り除かれる。熱安定および垂直抗力をゼロに戻すために更に10分の時間が与えられる。すなわち、測定はすべて、190℃で約15分間試料を平衡させてから行い、そして完全な窒素ブランケット下で実行することになる。
【0116】
最初に、全周波数帯域(例えば、0.01〜100rad/秒)にわたって、変換器の下部目盛の10%を超えるトルク信号を生成してしまう線形粘弾性歪みを測定するため、2つのストレインスイープ(SS)実験を190℃で行う。第一のSS実験は0.1rad/秒の低印加周波数で行う。このテストは、低周波数におけるトルクの感度を測定するものである。第二のSS実験は100rad/秒の高印加周波数で行う。これは、振動レオロジー測定がテスト中にポリマーの構造変化を誘起しないように、ポリマーの線形粘弾性領域内における選択印加歪みが適切であるかどうか確認するためのものである。また、テスト中に試料の安定性を確認するため、タイムスイープ(TS)実験を、選択した歪みにおいて0.1rad/秒の低印加周波数で行う(SS実験で測定したと同様に)。
【0117】
190℃でのメルト弾性率G′(G″=500Pa)の測定
次に、上記の適切に選択した歪みレベルおよび動的レオロジーデータを用いて、190℃で周波数歪み(FS)実験を行い、その後、レオメーターソフトウェア(すなわち、レオメトリックス(Rheometrics)社のRHIOS バージョン(V)4.4またはオーケストレータ(Orchestrator)ソフトウェアを用いて測定値を解析し、定数におけるメルト弾性率G′(G″=500Pa)、メルト粘性率(G″)の基準値(500Pa)を決定する。
【0118】
流動活性化エネルギー(Ea)の測定
次に、全ポリマーの動的レオロジー特性(例えば、G′、G″、およびη)の大部分を170℃、190℃、および210℃で測定した。上記の手順で測定した一定のせん断歪みでの角せん断周波数(100〜0.01rad/秒)の関数として、それぞれの温度で走査を行った。
【0119】
続いて、レオメトリックスソフトウェアを用いて、動的レオロジーデータを分析した。シフトファクター(aT)をEに関連付けるアレニウス式、aT=exp(Ea/kT)による時間−温度(t−T)重ね合わせ、および流動活性化エネルギー(E)の決定に対し、以下の条件を選択した。
レオロジーパラメータ: G′(ω)、G″(ω)、およびη(ω)
基準温度: 190℃
シフトモード: 2D(すなわち、水平および垂直シフト)
シフト精度: 高
補間条件: スプライン
メルトインデックス(190℃/2.16kg)をISO1133方法に準拠して測定した。
密度を、ISO1872/1−1986に準拠し、密度カラムを用いて測定した。但し、メルトインデックス押出物は焼きなまさずに、高分子材料のシート上で30分間冷却させた。
融解挙動を、ASTM D3417に沿った方法に従い、パーキンエルマー社製DSC−7機器を用いて示差走査熱量計で測定した。但し、第一の加熱は20℃/秒で行った。ピーク溶融温度は、10℃/分でのポリマーの第二の加熱中に見られた最大熱流量に対応する温度とした。
【0120】
本発明に係る成分(a)のエチレン−1−ヘキセン共重合体の物理的性質を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
以下の線状低密度ポリエチレン(LDPE)は、本発明のブレンドの成分(b)として使用した。
【0123】
【表2】

【0124】
BPの高圧重合プロセスを用いて、LDPE試料A−Dを調製し、ISO 1872/1に準拠して、それらの試料の密度を測定した:試料A−Cは市販のものである。試料Eは市販の材料である。
【0125】
上記の共重合体と低密度ポリエチレン(LDPE)とを組み合わせて、2−成分ブレンドを調製した。このブレンドは、直径が20mm、L対D比が24対1、スクリュー速度が70rpm、および温度プロファイルが170℃〜190℃の押出機(シングルスクリュー)で溶融混合により調製した。
【0126】
【表3】

【0127】
密度0.902(ISO1183)、ピーク溶融温度(DSC)96.0℃、メルトインデックス10(ISO1133)、G36.6Pa、および表2のLDPE E(Exxon LD250)30%を有する70%Exact0210(エクソンモービル(ExxonMobil)社)を基準として、比較ブレンドを調製した。比較ブレンドは、密度0.907.4、メルトインデックス7.85、およびG72.4Paを有し、101.4℃ではっきりした1つの融解ピークを示した。この比較ブレンドは、本発明の成分(a)の性質とは異なる性質を持つ共重合体をベースとしている。
【0128】
本発明の新規ブレンドの効果は、シール性(最小低融解温度)に重要なブレンドの低溶融温度であるが、このブレンドの成分(a)の共重合体の構造により、優れた引っ張り粘着力が得られる。これらの効果は、例えば、パッケージングなど、押出コーティング用途にブレンドを使用する上で特に重要である。ブレンドの成分(a)の共重合体は、純LDPEの加工性にも匹敵する優れた加工性に加え、成分(b)のLDPEとブレンドすると低ネックインおよびハイダウンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(iv)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(v)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、
(vi)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーとからなるポリマーブレンドにおいて、(a)と(b)との合計が100%であることを特徴とするポリマーブレンド。
【請求項2】
成分(a)の共重合体が0.907〜0.915の範囲にある密度を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
成分(a)の共重合体が12〜50の範囲にあるメルトインデックスを有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
成分(a)の共重合体が11〜90Paの範囲にあるメルト弾性率G′を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
成分(a)の共重合体が28〜50の範囲にある流動活性化エネルギー(Ea)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
成分(a)の共重合体が2〜3.5の範囲にあるMw/Mnを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
成分(a)の共重合体が、30℃乃至150℃の間で2個以上の示差走査熱量計(DSC)融解ピークを示すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
成分(b)のLDPEが0.1〜25の範囲にあるメルトインデックスを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
成分(b)のLDPEが80〜200Paの範囲にあるメルト弾性率G′を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
成分(a)と成分(b)の比率が、重量で60:75乃至40:25の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
該ブレンドが30〜200Paの範囲にあるメルト弾性率G′を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項12】
該ブレンドが30〜200Paの範囲にあるメルト弾性率G′を有することを特徴とする請求項11に記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
該ブレンドが60〜120Paの範囲にあるメルト弾性率Gを有することを特徴とする請求項12に記載のポリマーブレンド。
【請求項14】
該メルト弾性率Gが75〜100Paの範囲にあることを特徴とする請求項13に記載のポリマーブレンド。
【請求項15】
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(vii)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(viii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、
(ix)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーと、
(c)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンまたは低密度ポリエチレン(LDPE)との0〜98重量%の共重合体とからなるポリマーブレンドにおいて、(a)と(b)と(c)との合計が100%であることを特徴とするポリマーブレンド。
【請求項16】
成分(a)の共重合体が遷移金属化合物からなる触媒系を用いて調製されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項17】
該遷移金属化合物がメタロセンであることを特徴とする請求項16に記載のポリマーブレンド。
【請求項18】
該メタロセンは一般式を有し、
【化1】

式中、R′はそれぞれ、水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、およびそれらの組合せから独立して選択され、前記R′は最大20個の非水素原子を有し、2個のR′基(このR′は水素、ハロ、シアノのいずれでもない)は共に任意でシクロペンタジエニル環の隣接部に結合されるそれらの二価誘導体を形成して溶融環構造を形成し、
Xは、最大30個の非水素原子を有する中性η結合ジエン基で、Mと共にπ錯体を形成し、
Yは、−O−,−S−,−NR−,−PR−であり、
Mは、+2ホルマール酸化状態におけるチタンまたはジルコニウムであり、
Zは、SiR,CR,SiRSIR,CRCR,CR=CR,CRSIR,またはGeRであり、
式中、Rはそれぞれ、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、およびそれらの組合せから選択される独立に水素、または員であり、前記Rは最大10個の非水素原子を有し、Zからの2個のR基(Rが水素ではない場合)、またはZからの1個のR基とYからの1個のR基とが任意で環系を形成することを特徴とする請求項17に記載のポリマーブレンド。
【請求項19】
該共重合体が気相中で調製されることを特徴とする請求項16乃至18に記載のポリマーブレンド。
【請求項20】
成分(b)の低密度ポリエチレン(LDPE)が高圧プロセスで調製されることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項21】
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(i)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(ii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、
(iii)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーとからなるポリマーブレンドで構成される押出コーティングにおいて、(a)と(b)との合計が100%であることを特徴とする押出コーティング。
【請求項22】
(a)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンとの1〜99重量%の共重合体と、
前記共重合体を
(i)0.905〜0.940gcm−3の範囲にある密度と、
(ii)10〜150Paの範囲にあるメルト弾性率G′(G″=500Pa)と、
(iii)5〜50の範囲にあるメルトインデックスとを有するものとし、
(b)0.914〜0.928gcm−3の密度を有する1〜99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)ポリマーと、
(c)エチレンと3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンまたは低密度ポリエチレン(LDPE)との0〜98重量%の共重合体とからなるポリマーブレンドで構成される押出コーティングにおいて、(a)と(b)と(c)との合計が100%であることを特徴とする押出コーティング。

【公表番号】特表2007−502881(P2007−502881A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523674(P2006−523674)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003483
【国際公開番号】WO2005/019333
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(505229003)イネオス ヨーロッパ リミテッド (20)
【Fターム(参考)】