説明

ポリマー低分子干渉RNA複合体

本発明は、ポリマーsiRNA複合体を提供する。本複合体を用いる、in vivo およびin vitroにおける遺伝子発現のダウンレギュレーション、およびがん細胞の増殖の阻害のための方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、それぞれ参照することにより本開示に含まれる、2006年11月27日出願の米国仮特許出願第60/861,382号および2007年4月13日出願の米国仮特許出願第60/911,739号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリマーsiRNA複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
小分子干渉RNAまたは低分子干渉RNA(siRNA)は2本鎖RNA分子である。siRNAは遺伝子発現に干渉し、当該遺伝子から発現されるmRNAの分解を誘導する。したがって、siRNAによって媒介されるRNA干渉は、ここ数年、潜在的に強力な抗がん治療剤として出現している。治療薬としての低分子干渉RNA(siRNA)の開発は、しかし、その非効率なデリバリー、低い安定性および不十分な薬物動態(PK)プロファイルのために限定されている。
【0004】
siRNAを治療薬として用いるためのハードルを克服するためにいくつかの提案がなされている。デリバリーを改善してsiRNAの細胞取り込みを促進するためのそのような試みの1つは、リポソームおよびナノ粒子を利用することを対象としている。非特許文献1;非特許文献2を参照。他の試みは、ヒアルロン酸ナノゲルなどのポリマーの使用を含む。非特許文献3を参照。あるいは、siRNAのデリバリーを改善するための他の試みでは、siRNAのデリバリーを改善する試みにトランスフェクション剤が用いられる。非特許文献4を参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yano et al.,Clinical Cancer Research,10:7721−7726
【非特許文献2】Bartlett et al.,Bioconjugate Chem.,18:456−468
【非特許文献3】Lee et al.,Journal of Controlled Release,"Target−specific Intracellular delivery of siRNA Using Degradable Hyaluronic A cid Nanogels",in press,2007
【非特許文献4】Wang et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods,"An Intracellular Delivery Method For siRNA By An Arginine−rich Peptide",in press,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トランスフェクションは、治療用siRNAのin vivoの使用には望ましくない。現在のところは、直接的な区画内注射が主な投与経路である。試みおよび進歩にもかかわらず、依然としてsiRNAの改善されたデリバリーシステムを提供することが必要とされている。本発明はこの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を克服するため、およびsiRNAデリバリーのための技術を改善するため、新規のポリマーsiRNAデリバリーシステムを提供する。
【0008】
本発明の1つの態様では、式(I)のsiRNA複合体が提供され:
A−R−(R−R
ここで、
Aはキャップ基またはR'−(R'e'−を含み;
は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーを含み;
およびR'は独立して選択される遊離可能なまたは永続的リンカーまたはその組み合わせであり;
およびR'は、同一のまたは異なるsiRNA含有部分であり;
(e)および(e')は、同一のまたは異なる正の整数であり、好ましくは1または2である。
【0009】
好ましくは、Rおよび、存在する場合は、R'は、siRNA含有部分のセンス鎖に結合している。
【0010】
本発明の好ましい態様では、siRNA含有部分は、本明細書に記載の化合物のポリマー部分と、遊離可能なリンカーを介して結合している。あるいは、遊離可能なリンカーは、好ましくは細胞内不安定性リンカーおよび/または酸不安定性リンカーである。
【0011】
本発明の別の好ましい態様では、たとえばBCL2について、遺伝子発現を阻害する方法が提供される。当該方法は、がん細胞または組織などのヒト細胞を、本明細書に記載されるPEG−siRNA複合体と接触させることを含む。当該複合体は、ヒト細胞および組織中の処理されている細胞において、BCL2 mRNAまたはタンパク質のダウンレギュレーションを媒介する。
【0012】
さらに別の好ましい態様では、本明細書に記載されるPEG−siRNA複合体を用いた治療は、BCL2 mRNAの抑制的調節を可能にし、それとともに、がん細胞の増殖の阻害などの悪性疾患の治療において付随的な利益を可能にする。そのような治療法は、単回治療として、または1つ以上の有用なおよび/または承認された治療との併用療法の一部として、実施されうる。
【0013】
本発明の1つの長所は、カスタマイズされた遊離可能PEGリンカー技術がsiRNA分子のin vivo投与のための方法を提供する点である。このデリバリー技術は、siRNAの生物安定性および治療効果の向上を可能にする。
【0014】
本明細書に記載されるsiRNA複合体は、体液中でsiRNAを安定化する。理論に縛られることなく、当該複合体が、ヌクレアーゼに対する耐性の上昇を通じて、siRNAの安定性を少なくとも部分的に高めると考えられている。ポリマーsiRNA複合体もまた緩衝液条件下で安定である。さらに、siRNAは複合体の一部であるため、siRNAは身体から時期尚早に排泄されない。
【0015】
もう1つの長所は、本明細書に記載される複合体が、siRNAの薬物動態特性の調節を可能にすることである。ポリマー複合体からのsiRNAの放出速度/部位は改変されうる。本明細書に記載されるポリマーに結合したsiRNAは、所定のおよび予測可能な速度で放出でき、それによって当業者が治療用siRNAの所望のバイオアベイラビリティの達成を可能にする。負に荷電した治療用siRNAの放出部位もまた改変、すなわち細胞のさまざまな区画で放出されうる。したがって、本明細書に記載されるポリマーデリバリーシステムは、十分な量の治療用siRNAを、目的の標的範囲、すなわち細胞質にて選択的に利用可能にさせる。特に、siRNAはセンス鎖を介してポリマーと複合体化しているため、siRNA分子のアンチセンス鎖は、細胞質の酸性環境でsiRNA2本鎖から解離し、所望のRNA干渉を誘導しうる。アンチセンス鎖は、ポリマー複合体化によっては完全に邪魔されない。単独で、および治療剤の放出と組み合わせた、時間的および空間的改変は、疾患の治療にとって有利である。
【0016】
本発明の他の長所は、本明細書に記載される複合体が、トランスフェクション剤の非存在下で、がん細胞において、細胞取り込み、および特異的mRNAダウンレギュレーションを可能にすることである。これは先行技術に対して顕著な長所であり、したがって、治療計画を顕著に単純化する。この技術は治療用siRNAのin vivo投与に適用することができる。
【0017】
他の、およびさらなる長所は、下記の説明から明らかになるであろう。
【0018】
本発明の目的では、「残基」の語は、化合物、すなわちPEG、オリゴヌクレオチドなどの、別の化合物との置換反応を受けた後に残る部分をいうことを意味すると解されるものとする。
【0019】
本発明の目的では、「ポリマー残基」または「PEG残基」の語は、それぞれポリマーまたはPEGの、他の化合物、部分などとの反応に供された後に残る部分を意味すると解されるものとする。
【0020】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「アルキル」の語は、直鎖、分枝鎖、および環状アルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素をいう。「アルキル」の語はまた、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、C1−6ヒドロカルボニル基を含む。アルキル基は1から12個の炭素を有することが好ましい。炭素約1から7個がより好ましく、さらには炭素約1から4個の低級アルキルがより好ましい。アルキル基は置換または非置換でありうる。置換されている場合は、置換基は、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1−6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が好ましい。
【0021】
本発明の目的では、ここで用いられる「置換」の語は、官能基または化合物に含まれる1つ以上の原子を、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1−6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基の群からの部分の1つと付加またはそれで置き換えることをいう。
【0022】
ここで用いられる「アルケニル」の語は、直鎖、分枝鎖、および環状基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む基をいう。アルケニル基は約2から12個の炭素を有することが好ましい。炭素約2から7個、さらにより好ましくは炭素約2から4個の低級アルケニルであることがより好ましい。アルケニル基は置換または非置換でありうる。置換されている場合は、置換基は、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1−6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が好ましい。
【0023】
ここで用いられる「アルキニル」の語は、直鎖、分枝鎖、および環状基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基をいう。アルキニル基は約2から12個の炭素を有することが好ましい。炭素約2から7個、さらにより好ましくは炭素約2から4個の低級アルキニルであることがより好ましい。アルキニルは置換または非置換でありうる。置換されている場合は、置換基は、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1−6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が好ましい。「アルキニル」の例として、プロパルギル、プロピン、および3−ヘキシンが挙げられる。
【0024】
ここで用いられる「アリール」の語は、少なくとも1つの芳香族環を含む、芳香族炭化水素環系をいう。芳香族環は、随意的に、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環と融合または結合されうる。アリール基の例としては、たとえば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンおよびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0025】
「シクロアルキル」の語は、本明細書では、C3−8環状炭化水素のことをいう。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0026】
「シクロアルケニル」の語は、本明細書では、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むC3−8環状炭化水素のことをいう。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
【0027】
「シクロアルキルアルキル」の語は、本明細書では、C3−8シクロアルキル基で置換されたアルキル基のことをいう。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
【0028】
「アルコキシ」の語は、本明細書では、酸素架橋を介して親分子部分と結合している、示された炭素原子数のアルキル基をいう。アルコキシ基の例としては、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシが挙げられる。
【0029】
「アルキルアリール」基は、本明細書では、アルキル基で置換されたアリール基をいう。
【0030】
「アラルキル」基は、本明細書では、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0031】
「アルコキシアルキル」基の語は、本明細書では、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。
【0032】
「アルキル−チオ−アルキル」の語は、本明細書では、アルキル−S−アルキルチオエーテル、たとえばメチルチオメチルまたはメチルチオエチルをいう。
【0033】
「アミノ」の語は、本明細書では、1つ以上の水素ラジカルが有機ラジカルによって置換されたアンモニアから生じる、本分野で公知の通りの窒素含有基をいう。たとえば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」の語は、それぞれアシルおよびアルキル置換基を有する特定のN−置換有機ラジカルをいう。
【0034】
「アルキルカルボニル」の語は、本明細書では、アルキル基で置換されたカルボニル基をいう。
【0035】
「ハロゲン」または「ハロ」の語は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素をいう。
【0036】
「ヘテロシクロアルキル」の語は、本明細書では、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む非芳香族環系をいう。ヘテロシクロアルキル環は、随意的に、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族炭化水素環と融合または付加されうる。好ましいヘテロシクロアルキル基は、3〜7員である。ヘテロシクロアルキル基の例は、たとえば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、およびピラゾールを含む。好ましいヘテロシクロアルキル基は、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびピロリジニルを含む。
【0037】
「ヘテロアリール」の語は、本明細書では、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族環系をいう。ヘテロアリール環は、1つ以上のヘテロアリール環、芳香族または非芳香族炭化水素環またはヘテロシクロアルキル環と融合または付加されうる。ヘテロアリール基の例は、たとえば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリンおよびピリミジンを含む。ヘテロアリール基の好ましい例としては、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0038】
「ヘテロ原子」の語は、本明細書では、窒素、酸素、および硫黄をいう。
【0039】
一部の実施の形態では、置換アルキルはカルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノs、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを含み;置換アルケニルはカルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを含み;置換アルキニルはカルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを含み;置換シクロアルキルは4−クロロシクロヘキシルなどの部分を含み;アリールはナフチルなどの部分を含み;置換アリールは3−ブロモフェニルなどの部分を含み;アラルキルはトリル(tolyl)などの部分を含み;ヘテロアルキルはエチルチオフェンなどの部分を含み;置換ヘテロアルキルは3−メトキシ−チオフェンなどの部分を含み;アルコキシはメトキシなどの部分を含み;フェノキシは3−ニトロフェノキシなどの部分を含む。ハロはフルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むと解されるものとする。
【0040】
本発明の目的では、「正の整数」は、当業者に理解されるように、当業者によって合理性の範囲内であるとされるべき、1以上の整数を含むと解され、すなわち、好ましくは1〜約10であり、一部の実施の形態では、より好ましくは1または2である。
【0041】
本発明の目的では、「結合した」の語は、1つの基が別の基に、共有的(好ましい)または 非共有的に付加すること、すなわち化学反応の結果と解されるものとする。
【0042】
本発明の目的では、「有効量」および「十分量」の語は、当業者に理解される効果として所望の効果または治療効果を達成する量を意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、実施例1に記載される合成の方法を図式的に示す。
【図2】図2は、実施例2に記載される合成の方法を図式的に示す。
【図3】図3は、実施例3に記載される合成の方法を図式的に示す。
【図4】図4は、実施例5に記載されるPEG−siRNA安定性を示す。
【図5】図5は、実施例6に記載されるin vitro BCL2発現試験を示す。
【図6】図6は、実施例7に記載されるin vivo BCL2発現試験を示す。
【図7】図7は、実施例9に記載されるPK試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
A.概要
本発明の1つの態様では、式(I)のsiRNA複合体が提供され:
A−R−(R−R
ここで、
Aはキャップ基またはR'−(R'e'−を含み;
は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーを含み;
およびR'は独立して選択される遊離可能なまたは永続的リンカー、もしくはその組合せであり;
およびR'は、同一のまたは異なるsiRNA含有部分であり;
(e)および(e')は、同一のまたは異なる正の整数であり、好ましくは1または2である。
【0045】
好ましくは、Rおよび、存在する場合はR'は、siRNA含有部分のセンス鎖に結合する。
【0046】
本発明の1つの態様では、本明細書に記載される複合体は、H、NH、OH、COH、C1−6アルコキシおよびC1−6アルキルなどのキャップ基を含む。1つの好ましい態様では、キャップ基はCHまたはCHOを含む。
【0047】
本発明の別の1つの態様では、複合体は下記の式を有する:
R'−(R'e'−R−(R−R
【0048】
したがって、この態様で意図されるポリマーは、直鎖PEG、ビス−PEG、U−PEGおよびマルチアームPEGを含みうる。
【0049】
好ましい実施の形態では、本明細書に記載される複合体は下記の式を有することができ:
−(CHCHO)−Z (IIa)、
Z−(CHCHO)−Z (IIb)、
【化1】

【0050】
ここで、
(n)は約10〜約2300の整数であり、ここでポリマー部分の合計分子量は約2,000〜約100,000であり;
は、H、NH、OH、COH、C1−6アルコキシおよびC1−6アルキル、およびC1−6アルキル置換アミンなどのキャップ基であり、CHまたはCHOが好ましく;
1つ以上のZが−(R−Rであって差し支えなく;
他のすべての変数は先に定義されている。別の態様では、1つ以上のZ基が、−(R−R以外の、たとえばキャップ基など、すなわちH、OH、CH、OCH、またはn−ブチルアミンなどのC1−6アルキル置換アミンでありうる。好ましくは、8アームポリマーなどのマルチアーム・ポリマーを用いる複合体では、1つのZ基が−(R−Rを含み、別のZ基がキャップ基または官能基を含む。
【0051】
本発明の1つの好ましい態様では、遊離可能なPEG(rPEG)リンカー技術を用いてポリマーsiRNA複合体が提供される。siRNA含有部分は、本明細書に記載される化合物のポリマー部分と、遊離可能なリンカーを介して、好ましくは2本鎖のセンス鎖に結合する。遊離可能なリンカーには、ベンジル脱離系のリンカー、トリアルキルロック系のリンカー、ビシン系のリンカー、ジスルフィド結合、ヒドラゾンを含むリンカーおよびチオプロピオネートを含むリンカーがある。あるいは、遊離可能なリンカーは、細胞内不安定性リンカー、細胞外リンカーまたは酸不安定性リンカーでありうる。より好ましくは、遊離可能なリンカーは、細胞内不安定性リンカーまたは酸不安定性リンカーである。
【0052】
あるいは、siRNAは、センス鎖結合に関して記載された方法を用いて、アンチセンス鎖を介してポリマーと結合されうる。しかしながら、この態様では、siRNAをポリマーと遊離可能に結合するために選択されるリンカーは、細胞内でアンチセンス鎖の放出または生成を促進するものであるべきである。そのようなリンカーは、たとえば、本明細書に記載される酸不安定性リンカーおよび/または細胞内不安定性リンカー(すなわち、ジスルフィド基)を含む。
【0053】
本発明の別の好ましい態様では、遊離可能なリンカーを有するポリマーsiRNA複合体はBCL2siRNAを用いる。BCL2タンパク質は多くの種類の腫瘍において過剰発現されている。あるいは、当業者は、がんまたは他の疾患に対して同様の生物活性を有する代替的な適当ながん遺伝子が、ポリマーsiRNA複合体に使用されうることを理解する。本発明のより好ましい態様では、PEGリンカーと複合体化するために、siRNA2本鎖のセンス鎖の5'末端がC−アミノ尾部と結合している、遊離可能なPEG−siRNA複合体が提供される。
【0054】
B.実質的に非抗原性のポリマー
本明細書に記載される化合物に用いられるポリマーは、ポリアルキレンオキサイド(PAO)のように、好ましくは水溶性ポリマーであり、実質的に非抗原性である。
【0055】
本発明の1つの態様では、本明細書に記載される化合物は、直鎖、末端分枝またはマルチアーム・ポリアルキレンオキサイドを含みうる。本発明の一部の好ましい実施の形態では、ポリアルキレンオキサイドはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。
【0056】
ポリアルキレンオキサイドは、本発明の大部分の態様において、約2,000〜約100,000の平均分子量を有する。好ましくはポリマーは、約5,000〜約60,000、より好ましくは約20,000〜約45,000でありうる。さらにより好ましくは、ポリマーは約30,000の平均分子量を有する。当業者の要求に対応するために、他の分子量もまた考えられる。
【0057】
ポリアルキレンオキサイドは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。より好ましくは、ポリアルキレンオキサイドはポリエチレングリコール(PEG)を含む。PEGは一般的に下記の構造で表され:
−O−(CHCHO)
ここで(n)は、約10〜約2,300の整数であり、マルチアーム・ポリマーが用いられる場合はポリマーアームの数に依存する。あるいは、本発明のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は下記の構造で表され:
【化2】

【0058】
ここで、
71およびY73は独立してO、S、SO、SO、NR73または結合であり;
72はO、S、またはNR74であり;
71−74は、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−19分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C2−6置換アルケニル、C2−6置換アルキニル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、アリールオキシ、C1−6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2−6アルカノイル、アリールカルボニル、C2−6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2−6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2−6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2−6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2−6置換アルカノイルオキシおよび置換アリールカルボニルオキシから独立して選択され;
(a2)および(b2)は独立してゼロまたは正の整数であり、好ましくはゼロまたは約1〜約6の整数、より好ましくは1であり;
(n)は約10〜約2300の整数である。
【0059】
分枝またはU−PEG誘導体は、参照することにより本明細書にそれぞれの開示が援用される、米国特許第5,643,575、5,919,455、6,113,906および6,566,506号明細書に記載されている。そのようなポリマーの非限定的な一覧は、下記の構造を有するポリマー系(i)〜(vii)に相当し:
【化3−1】

【化3−2】

【0060】
ここで:
61−62は独立してO、SまたはNR61であり;
63はO、NR62、S、SOまたはSOであり
(w62)、(w63)および(w64)は独立して、0または正の整数、好ましくはゼロ または約1〜約3の整数であり;
(w61)は0または1であり;
mPEGはメトキシPEGであり
ここでPEGは既に規定されており、およびポリマー部分の合計分子量は約2、000〜約100、000であり;
61およびR62は独立して、R73に使用されうるのと同じ部分である。
【0061】
さらに別の1つの態様では、ポリマーは、マルチアームPEG−OHまたは、参照することにより本明細書にその開示が援用される、NOF Corp.ドラッグデリバリーシステムカタログ,Ver.8,April 2006に記載されるもののような「星型PEG」製品を含む。参照することにより本明細書にその開示が援用される、Shearwater Corporationの2001カタログ「Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application」も参照。そのマルチアーム・ポリマー複合体は4以上のポリマーアームおよび好ましくは4または8のポリマーアームを含む。
【0062】
説明目的で、および限定目的でなく、マルチアーム・ポリエチレングリコール(PEG)残基は下記であることができ:
【化4】

【0063】
ここで:
(x)は0および正の整数、すなわち約0〜約28であり;
(n)は重合度である。
【0064】
本発明の特定の一実施形態では、マルチアームPEGは下記の構造を有し:
【化5】

【0065】
ここで(n)は正の整数である。本発明の好ましい実施の形態では、ポリマーは約5,000〜約60,000,および好ましくは20,000〜45,000の合計分子量を有する。
【0066】
さらに別の特定の一実施形態では、マルチアームPEGは下記の構造を有し:
【化6】

【0067】
ここで(n)は正の整数である。本発明の好ましい実施の形態では、マルチアーム・ポリマーの重合度(n)は約28〜約350であって、合計分子量約5,000〜約60,000、および好ましくは12,000〜45,000のポリマーを与える。これはポリマー鎖中の反復単位の数を表し、ポリマーの分子量に依存する。
【0068】
ポリマーは、米国特許第5,122,614または5,808,096号明細書に記載された活性化法を用いて、適当に活性化されたポリマーへ変換されうる。具体的には、そのようなPEGは次式であることができ:
【化7】

【0069】
ここで:
(u’)は約4〜約455の整数であり;残基の3つまでの終端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャッピングされている。
【0070】
一部の好ましい実施の形態では、4つすべてのPEGアームが、芳香族基の結合を円滑化するために、適当な活性化基へ変換されうる。変換前のそのような化合物は下記を含む:
【化8−1】

【化8−2】

【0071】
ここで、含まれるポリマー物質は、好ましくは室温にて水溶性である。そのようなポリマーの非限定的なリストは、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、その共重合体および、そのブロック共重合体の水溶性が維持されるならばブロック共重合体を含む。
【0072】
別の一実施形態では、およびPAOを基礎とするポリマーの代替として、1つ以上の有効に非抗原性の材料、たとえばデキストラン、ポリビニルアルコール、糖質を基礎とするポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキサイド、および/またはその共重合体が使用されうる。参照することにより本明細書にその開示が援用される、本発明と同一の譲受人に譲渡された米国特許第6,153,655号明細書も参照。PEGなどのPAOについてここで記載されたのと同一の種類の活性化が用いられることが当業者に理解される。前記の一覧は単に説明であり、本明細書に記載される性質を有するすべてのポリマー材料が考慮されることが当業者にさらに理解される。本発明の目的では、「実質的にまたは有効に非抗原性」とは、哺乳類において非毒性であり、認識可能な免疫応答を起こさないと本分野で理解されるすべての材料を意味する。
【0073】
一部の態様では、末端アミン基を有するポリマーは、本明細書に記載される化合物を作製するのに使用されうる。末端アミンを含むポリマーを高純度で調製する方法は、参照することにより本明細書にそれぞれの開示が援用される、米国特許出願第11/508,507号および同第11/537,172号の各明細書に記載されている。たとえば、アジドを有するポリマーは、トリフェニルホスフィンなどのホスフィンを基礎とする還元剤、またはNaBHなどのアルカリ金属ボロヒドリド還元剤と反応する。あるいは、脱離基を含むポリマーは、メチル−tert−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNMeBoc)またはジ−tert−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNBoc)などの保護アミン塩と反応し、次いで保護アミン基が脱保護される。これらの製法によって作製された末端アミンを含むポリマーの純度は、約95%を上回り、99%を上回ることが好ましい。
【0074】
代替的な態様では、末端カルボン酸基を有するポリマーが、本明細書に記載されるポリマーデリバリー系に使用されうる。末端カルボン酸を有するポリマーを高純度で調製する方法は、参照することにより本明細書にその開示が援用される、米国特許出願第11/328,662号明細書に記載されている。。その方法は、ポリアルキレンオキサイドの三級アルキルエステルをまず調製、次いでそのカルボン酸誘導体への変換を含む。その工程のPAOカルボン酸の調製の第一段階は、ポリアルキレンオキサイドカルボン酸のt−ブチルエステルなどの中間体の形成を含む。この中間体は、PAOをハロ酢酸t−ブチルと、カリウムt−ブトキシドなどの塩基の存在下で反応させることによって形成される。一旦t−ブチルエステル中間体が形成されると、ポリアルキレンオキサイドのカルボン酸誘導体は、92%を上回る,好ましくは97%を上回る,より好ましくは99%を上回る、および非常に好ましくは純度99.5%を上回る純度で容易に提供されうる。
【0075】
C.RおよびR'
本発明の1つの態様では、siRNAは本明細書に記載される化合物のポリマー部分と、単独でまたは組み合わせて用いられる永続的リンカーおよび遊離可能なリンカーを介して結合されうる。本明細書に記載される複合体が2つ以上のリンカーを用いる、すなわち(e)(または(e'))がまたは2以上である場合、R(またはR')のための2つ以上のリンカーは同一でありうるかまたは異なりうる。選択されたリンカーにかかわらず、それらは、当業者によく知られている合成法を用いて、複合体の残りの部分へ結合されることが理解される。下記の実施例1〜3も参照。
【0076】
本発明の好ましい態様では、本明細書に記載される複合体は、遊離可能なリンカーに結合したsiRNAを含む。本発明の1つの長所は、siRNAが調節された方法で放出されうることである。
【0077】
遊離可能なリンカーには、ベンジル脱離系のリンカー、トリアルキルロック系のリンカー(またはトリアルキルロックラクトン化を基礎とする)、ビシン系のリンカー、酸不安定性リンカー、リソソームで切断可能なペプチドおよびカプテプシン(capthepsin)B切断可能ペプチドがある。酸不安定性リンカーには、ジスルフィド結合、ヒドラゾンを含むリンカーおよびチオプロピオネートを含むリンカーが含まれうる。あるいは、遊離可能なリンカーは、細胞内不安定性リンカー、細胞外リンカーおよび酸不安定性リンカーである。好ましくは、遊離可能なリンカーは、細胞内不安定性リンカーおよび/または酸不安定性リンカーであり、式(I)の複合体からのsiRNAの放出は細胞質内で円滑化されうる。
【0078】
遊離可能なリンカーは下記の式を有し:
【化9−1】

【化9−2】

【0079】
ここで
11−19は独立してO、SまたはNR48であり;
31−48、R50−51およびA51は独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシの中から選択され;
Arはアリールまたはヘテロアリール部分であり;
11−15は独立して選択される二官能性スペーサーであり;
JおよびJ’は独立して、標的細胞内へ能動輸送される部分、疎水性部分、二官能性結合部分およびその組み合わせの中から選択され;
(c11)、(h11)、(k11)、(l11)、(m11)および(n11)は独立して選択される正の整数、好ましくは1であり;
(a11)、(e11)、(g11)、(j11)、(o11)および(q11)は独立して、ゼロまたは正の整数、好ましくは1であり;
(b11)、(x11)、(x’11)、(f11)、(i11)および(p11)は独立してゼロまたは1である。
【0080】
標的細胞内へ能動輸送される部分は下記の構造を有することができ
【化10】

【0081】
ここでLは二官能性リンカーであり、YはO、SまたはNR11であり、ここでR11は、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシの中から選択されうる。
【0082】
ベンジル脱離を基礎とするかまたはトリアルキルロックを基礎とする、さまざまな遊離可能なリンカーが、たとえば、参照することにより本明細書にその開示が援用される、本発明と同一のの譲受人に譲渡された米国特許第6,180,095号、同第6,720,306号、同第5,965,119号、同第6624,142号、および同第6,303,569号の各明細書に記載されている。ビシン系のリンカーはまた、参照することにより本明細書にその開示が援用される、本発明と同一の譲受人に譲渡された米国特許第7,122,189号および同第7087,229号の各明細書および米国特許出願第10/557,522号、同第11/502,108号、および、同第11/011,818号の各明細書に記載されている。
【0083】
一部の好ましい実施の形態では、siRNAは、本明細書に記載される複合体のポリマー部分と、酸不安定性リンカーを介して結合している。理論に縛られることなく、酸不安定性リンカーは、細胞内および特にリソソーム、エンドソーム、またはマクロピノソーム内で、親ポリマー化合物からのオリゴヌクレオチドの遊離を円滑化する。
【0084】
およびR'は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体などの二官能性リンカーを含みうる。アミノ酸は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸でありうる。疎水性または非疎水性の、天然に存在するアミノ酸の誘導体およびアナログ、およびさまざまな本分野で公知である天然に存在しないアミノ酸(DまたはL)、もまた本発明の範囲内と考えられる。非天然に存在するアミノ酸の適当な非限定的な一覧は、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−アミノ酪酸、デスモシン、2,2−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチル−イソロイシン、6−N−メチル−リジン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、およびオルニチンを含む。一部の好ましいアミノ酸残基は、グリシン、アラニン、メチオニンおよびサルコシンを含む。これらの二官能性リンカーは、L11−15基にも使用されうる。あるいは、RおよびR'基は、下記の中から選択される二官能性リンカーでありうる
【化11−1】

【化11−2】

【0085】
ここで:
21−29は独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシから選択され;
(t)および(t’)は独立して、ゼロまたは正の整数、好ましくはゼロまたは約1〜約12の整数、より好ましくは約1〜約8の整数、および非常に好ましくは1または2であり;
(v)および(v’)は独立してゼロまたは1である。
【0086】
これらの二官能性リンカーは、L11−15基にも使用されうる。
【0087】
好ましくは、二官能性リンカーは下記から選択でき:
【化12−1】

【化12−2】

【0088】
ここで(r)および(r’)は独立してゼロまたは1であり、ただし(r)および(r’)の両方が同時にゼロではない。
【0089】
本発明のさらに別の代替的な態様では、二官能性リンカーは下記を含み:
【化13】

【0090】
これらの二官能基は、もう1つの物質を直接的に複合体化するのを可能にし、したがって、もう1つの物質を複合体化するための官能基を結合する必要を無くす。
【0091】
代替的な実施形態では、二官能性リンカーは、上記で示すものと対応し、マレイミジル基の代わりにビニルのような基、ビニルスルホン、アミノ、カルボキシ、メルカプト、チオプロピオネート、ヒドラジド、カルバザートなどの残基を含む構造を含む。当業者に公知である他の永続的なまたは遊離可能なリンカーもまた、本明細書に記載される複合体の範囲内であると考えられる。
【0092】
D.siRNA含有部分
本明細書に記載される複合体は、さまざまなsiRNAを細胞または組織へ送達するために使用されうる。
【0093】
本発明の範囲をより完全に理解するために、下記の用語が定義される。「核酸」または「ヌクレオチド」の語は、特記されない限り、1本鎖でも2本鎖でも、デオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA)およびその任意の化学修飾に該当すると当業者は理解する。「オリゴヌクレオチド」は一般的に、たとえば、大きさが長さ約2〜約200塩基、またはより好ましくは約10〜約30塩基にわたる、相対的に短いポリヌクレオチドである。本発明に記載のオリゴヌクレオチドは、特記されない限り、一般的に合成核酸、および1本鎖である。「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」の語はまたここでは同義語として使用されうる。
【0094】
「アンチセンス、」または「アンチセンス鎖」の語は、本明細書では、ヌクレオチド
遺伝子産物をコードするかまたは調節配列をコードする特定のDNAまたはRNA配列と相補的である配列をいう。細胞代謝の通常の動作では、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチドおよび/または他の遺伝子産物をコードする鎖である。アンチセンス核酸分子は、目的の遺伝子を逆方向で、相補鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターとライゲーションすることによる合成を含む、本分野で公知である任意の方法によって作製されうる。細胞へ一旦導入されると、この転写された鎖は、細胞によって産生される天然配列と組み合わさり、二本鎖を形成する。これらの二本鎖は次いで、さらなる転写または翻訳を遮断する。「負」または(−)の表示もまた、アンチセンス鎖をいうことが本分野で公知であり、「正」または(+)もまた、センス鎖をいうことが本分野で公知である。
【0095】
本発明の目的では、「相補的」とは、核酸配列が別のRNA配列と水素結合を形成することを意味すると理解される。パーセント相補性とは、水素結合、すなわち、ワトソン−クリック塩基対を別の核酸配列と形成できる、核酸分子中の連続残基の割合を示し、すなわち、10個中5、6、7、8、9、10個が50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補である。「完全に相補的な」とは、核 酸 配列のすべての連続 残基が、別の核 酸 配列の同数の連続 残基 と水素結合を形成することを意味する。
【0096】
オリゴヌクレオチド(アナログ)は、単一種のオリゴヌクレオチドに限定されるのでなく、幅広いそのような部分と共に働くように設計され、リンカーは1つ以上の3'−または5'−末端、通常はヌクレオチドのPOまたはSO基と結合できると理解される。考えられる核酸分子は、ホスホロチオエート・ヌクレオチド間結合修飾、糖修飾、核酸塩基修飾および/またはリン酸骨格修飾を含みうる。オリゴヌクレオチドは、天然ホスホロジエステル骨格またはホスホロチオエート骨格または任意の他の修飾骨格アナログ、たとえばLNA(ロックされた核酸)、PNA(ペプチド骨格を有する核酸)、CpGオリゴマー、など、たとえば参照することにより本明細書にその開示が援用される、Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences,May 6−8,2002,Las Vegas,NVおよびOligonucleotide & Peptide Technologies,18th & 19th November 2003,Hamburg,Germanyで開示されるようなものを含みうる。
【0097】
本発明に記載のオリゴヌクレオチドはまた、下記の表1に列記されるものを含む、本分野で公知の任意の適当なヌクレオチドアナログおよび誘導体を随意的に含みうる。
【0098】

【0099】
本発明で考慮されるオリゴヌクレオチドへの修飾は、たとえば、望ましいポリマーとのオリゴヌクレオチドの共有結合を可能にする官能基または部分での選択されたヌクレオチドへの付加またはその置換、および/または追加の電荷、分極率、水素結合、静電相互作用、および官能性をオリゴヌクレオチドへ組み込む官能性部分の付加または置換を含む。そのような修飾は、2'位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨードウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、イソ塩基のイソシチジンおよびイソグアニジンなどの塩基対の組み合わせ、および類似の組み合わせを含むがそれらに限定されない。本発明の範囲内で考えられるオリゴヌクレオチドはまた、3'および/または5'キャップ構造を含みうる。参照することにより本明細書にそれぞれの開示が援用される、Freier & Altmann; Nucl.Acid Res.,1997,25,4429−4443およびUhlmann; Curr.Opinion in Drug Development,2000,3(2),293−213に記載されるヌクレオシドアナログのさらなる例を参照。
【0100】
本発明の目的では、「キャップ構造」は、オリゴヌクレオチドのどちらかの末端に組み込まれている化学修飾を意味すると理解される。キャップは5'末端に(5'−キャップ)または3'末端に(3'−キャップ)存在でき、または両方の末端に存在しうる。5'−キャップの非限定的な例は、逆方向塩基脱落残基(部分)、4',5'−メチレンヌクレオチド;1−(ベータ−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'−チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;1,5−アンヒドロへキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'−セコ(seco)ヌクレオチド;非環式3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'−3'−逆方向ヌクレオチド部分;3'−3'−逆方向塩基脱落部分;3'−2'−逆方向ヌクレオチド部分;3'−2'−逆方向塩基脱落部分;1,4−ブタンジオールリン酸;3'−ホスホルアミデート;リン酸ヘキシル;リン酸アミノヘキシル;3'−リン酸;3'−ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;または架橋または非架橋リン酸メチル部分を含む。詳細は、参照することにより本明細書にその開示が援用される、国際公開第97/26270号パンフレットに記載されている。3'−キャップは、たとえば4',5'−メチレンヌクレオチド;1−(ベータ−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4'−チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;リン酸5'−アミノ−アルキル;リン酸1,3−ジアミノ−2−プロピル、リン酸3−アミノプロピル;リン酸6−アミノヘキシル;リン酸1,2−アミノドデシル;リン酸ヒドロキシプロピル;1,5−アンヒドロへキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、S'−S'−逆方向ヌクレオチド部分;5'−5'−逆方向塩基脱落部分;5'−ホスホルアミデート;5'−ホスホロチオエート;1,4−ブタンジオールリン酸;5'−アミノ;架橋および/または非架橋5'−ホスホルアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホナートおよび5'−メルカプト部分を含みうる。参照することにより本明細書にその開示が援用される、Beaucage and Iyer,1993,Tetrahedron 49,1925も参照。
【0101】
本発明の好ましい態様では、考えられるsiRNAは、腫瘍細胞の抗がん剤に対する耐性に関与する遺伝子またはタンパク質を阻害またはダウンレギュレートすることに関与する。たとえば、がん治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドによるダウンレギュレーションのためのBCL2などの、本分野で公知である任意の細胞タンパク質が本発明に使用されうる。参照することにより本明細書にその開示が援用される、2004年4月9日出願の米国特許出願第10/822,205号明細書を参照。好ましい治療薬の非限定的な一覧は、BCL2 siRNA、HIF−1α siRNAおよびサバイビンsiRNAを含みうる。
【0102】
好ましい態様では、siRNA含有部分の各鎖は、標的遺伝子と相補的な、長さ約18から約28ヌクレオチド、より好ましくは約20から約24ヌクレオチド、および非常に好ましくは約21ヌクレオチドを含みうる。ヌクレオチドの長さはまた、当業者の必要および望まれる相補核酸の数にしたがって変化しうる。siRNAの各鎖において、少なくとも約14から24ヌクレオチドが、好ましくは他方の鎖および/または標的遺伝子のヌクレオチドと完全に相補的である。siRNAは好ましくは、長さ約2ヌクレオチドの3'オーバーハングを両端に含む。
【0103】
一実施形態では、2本鎖siRNA分子は、BCL2遺伝子などの遺伝子発現を、RNA干渉を介して阻害またはダウンレギュレートしうる。好ましい実施の形態では、siRNA分子のアンチセンス鎖は、siRNA分子がRNA干渉を介してRNAの切断を導くために、BCL2遺伝子のRNAと相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0104】
より好ましい実施の形態では、siRNA含有部分のアンチセンス鎖は、配列番号:1の核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含む。BCL2遺伝子はまた、参照することにより本明細書にそれぞれの開示が援用される、米国特許第5,831,066号、同第6,040,181号、同第6,414,134号、および同第6,841,541号の各明細書に記載されている。特に好ましい実施の形態は、配列番号:3の核酸配列を含む、siRNA含有部分のアンチセンス鎖を用いる。
【0105】
BCL2 siRNA:

【0106】
ここでdTはDNAを表す。
【0107】
本明細書に記載される複合体に用いられるsiRNA分子は、(CHアミノリンカーでオリゴヌクレオチドの5'または3'末端にて修飾でき、ここで(w)はこの態様では好ましくは約1〜約10の正の整数、好ましくは6である。修飾オリゴヌクレオチドは、下記に示すNH−(CH−オリゴヌクレオチドでありうる:
【化14】

【0108】
1つの実施の形態では、siRNAのセンス鎖の5’末端は修飾されている。たとえば、ポリマー複合体に使用されるsiRNAは、5'−C−NHで修飾されている。
【0109】
代替的な態様では、本明細書に記載される複合体は、立体障害エステル含有(CHアミノリンカーで修飾されたsiRNAを含みうる。参照することによりそれぞれの内容が援用される、国際出願第PCT/USO7/78597号パンフレット(表題"Hindered−Ester −Based Biodegradable Linkers For Oligonucleotide Delivery")および 国際出願第PCT/USO7/78593号パンフレット(表題"Polyaklylene Oxide Having Hindered Ester −Based Biodegradable Linkers")を参照。ポリマー化合物はアミノ尾部を含まないオリゴヌクレオチドを放出しうる。たとえば、オリゴヌクレオチドは下記の構造を有することができる:
【化15】

【0110】
さらに別の態様では、siRNAは(CHスルフヒドリルリンカー(チオオリゴヌクレオチド)で修飾されうる。チオオリゴヌクレオチドは、リンカーのシステインと直接に、またはマレイミジル基を介して複合体化するのに使用されうる。チオオリゴヌクレオチドはSH−(CH−オリゴヌクレオチドの構造を有しうる。チオオリゴヌクレオチドはまた、下記の構造を有する立体障害エステルを含みうる:
【化16】

【0111】
E.式Iに対応する好ましい実施の形態
たとえば、本発明にしたがって調製されたsiRNA複合体は下記:
【化17−1】

【化17−2】

【0112】
であり、
ここで、siRNA含有部分のセンス鎖はポリマーと複合体化されている。
【0113】
好ましい実施の形態では、siRNA含有部分のアンチセンス鎖は、がん細胞または組織において発現または過剰発現されている核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含みうる。特に好ましい実施の形態では、siRNA含有部分は、配列番号:1の核酸配列と相補的なヌクレオチド、たとえば配列番号:3の核酸配列を含みうる。
【0114】
1つの特定のの実施形態では、複合体は下記の中にあり:
【化18】

【0115】
ここで、siRNAは配列番号:2および3の核酸配列を有し;siRNAのセンス鎖の5'末端は、PEGリンカーと複合体化するために、C6−アミノ尾部に修飾されている。
【0116】
F.ポリマーデリバリーシステムの合成
一般的に、siRNA複合体は、まず活性化ポリマーを調製し、それが今度はsiRNA含有部分と反応して、ポリマーsiRNA複合体を提供することによって調製されうる。付加の正確な順序はこの順序に限定されず、および当業者に明らかになる通り、PEGが最初にリンカーへ付加され、次いでリンカーが活性化される態様がある。
【0117】
本発明の一部の好ましい態様では、まずOHまたは脱離基を含むポリマー化合物が、遊離可能なリンカーを含む求核試薬と反応されうる。遊離可能なリンカーは次いで活性化され、および活性化リンカーが、OH、NHまたはSH基を含むsiRNA含有部分の官能基と反応する。さまざまな活性化基を含むポリマーは、さまざまな 求核 部分に対する異なる化学反応性を提供しうる。 たとえば、マレイミジル基 および ビニルスルホン 基 は、SH含有部分と選択的に反応しうる。 この一実施形態の一部の好ましい態様に関する詳細は、下記の実施例に示される。
【0118】
本明細書に記載されるすべての反応は、当業者に公知である必要な段階および条件を含む標準的な化学反応を用いる。本明細書に記載される合成反応は、したがって不必要以上の実験を要しない。
【0119】
PEGまたは他のポリマーへのリンカー部分の付加は、ポリマーおよびカップリング試薬を用いて、または活性化ポリマーを利用することによって、当業者によく知られた標準的な化学合成法を用いて実施されうる。SC−PEG、PEG−アミン、PEG酸などの活性化ポリマー部分は、購入可能であるかまたは過度の実験なしに当業者によって合成されうる。
【0120】
ポリマー部分へのリンカー部分の付加は、カップリング剤の存在下で実施される。適当なカップリング剤の非限定的なリストは、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、任意の適当なジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−1−アルキル−ピリジニウムハライド(向山試薬)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンリン酸環状無水物(PPACA)およびジクロロリン酸フェニルなどを含み、たとえばSigma−Aldrich Chemical社などの販売者から入手可能であるかまたは公知の方法を用いて合成されうる。
【0121】
反応は、塩化メチレン、クロロホルム、DMFまたはその混合物などの不活性溶媒中で実施されることが好ましい。反応は好ましくは、酸が生じれば中和するための、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で実施されうる。反応は約0℃〜約22℃(室温)の温度にて実施されうる。
【0122】
1つの態様では、siRNA含有部分と反応するポリマー化合物は、siRNA2本鎖構造の完全性を保存するために、pH約5〜約10、好ましくは中性pHの水系溶媒中で、PBSなどの緩衝液および室温を用いて調製されうる。
【0123】
好ましくは、siRNA含有部分のセンス鎖は、下記の種類のうちの1つでありうる:
(i)(CHアミノリンカーでオリゴヌクレオチドの5−'または3'末端にて修飾されたオリゴヌクレオチド;
(ii)(CHスルフヒドリルリンカーでオリゴヌクレオチドの5−'または3'末端にて修飾されたオリゴヌクレオチド;
(iii)立体障害エステルを含む(CHアミノリンカーまたは(CHスルフヒドリルリンカーで修飾されたオリゴヌクレオチド。この態様における(w)は、約1〜約10の正の整数が好ましく、さらに好ましくは6である。
【0124】
siRNAのセンス鎖の修飾は、本分野で公知である標準的な方法によって達成されうる。一部のC−NH修飾センス鎖は、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のTriLink BioTechnologiesからも購入可能である。次に、修飾センス鎖および非修飾アンチセンス鎖をアニーリングし、siRNAの2本鎖構造を形成する。siRNA2本鎖のセンス鎖の、活性化ポリマーとの、本発明の選択的複合体化は、一部には、修飾siRNA2本鎖中の芳香族アミンが、水系条件およびpH5〜10などの複合体化反応条件下で反応するのに十分なほど求核性ではないことから、得ることができる。反応は、このように、センス鎖上のより求核性の修飾を含む末端にて進行する。
【0125】
立体障害エステル含有オリゴヌクレオチドの形成に関する説明は、参照することにより本明細書にその内容が援用される、本発明と同一の譲受人に譲渡された国際出願第PCT/US07/78597号および同第PCT/US07/78593号の各パンフレットに記載されている。
【0126】
さらに別の態様では、本発明にしたがって調製されるsiRNA複合体は、1つ以上の遊離可能なリンカーを含みうる。参照することにより本明細書にその内容が援用される、国際出願第PCT/USO7/78598号パンフレットを参照。
【0127】
G.治療の方法
上記を考慮して、ヒト細胞または組織において遺伝子発現をダウンレギュレートまたは阻害する方法もまた提供される。遺伝子発現のダウンレギュレーションまたは阻害は、in vivoおよび/またはin vitroで達成されうる。当該方法は、ヒト細胞または組織を、本明細書に記載される式(I)のsiRNA複合体と接触させる工程を有してなる。接触が生じる際に、mRNAまたはタンパク質レベルでの遺伝子発現の阻害またはダウンレギュレーションの成功が、in vivoまたはin vitroでの測定で少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%以上実現される場合に、起こると見なされる。
【0128】
本発明の目的では、「阻害する」または「ダウンレギュレートする」は、たとえばBCL2などの、1つ以上のタンパク質サブユニットをコードする遺伝子の発現、すなわちRNAまたは等価RNAのレベル、または1つ以上のタンパク質サブユニットの活性が、本明細書に記載される複合体の非存在下で観察されるよりも低減されることを意味すると解されるものとする。
【0129】
本発明の1つの好ましい態様では、本発明は、BCL2をコードする遺伝子のような、がん細胞または組織に関連し、過剰発現されている遺伝子を標的とするsiRNA複合体を対象とする。1つの特定の実の施形態では、siRNA分子のアンチセンス鎖は、配列番号:1の核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含む。
【0130】
がん細胞または組織は、下記のうち1つ以上に由来しうる:固形腫瘍、リンパ腫、小細胞肺がん、急性リンパ性白血病(ALL)、膵臓がん、神経膠芽腫、卵巣がん、胃がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がんおよび脳腫瘍など。
【0131】
別の態様では、がんを有する患者の治療;哺乳類における腫瘍性疾患の治療、腫瘍量の低減、腫瘍の転移防止、および腫瘍の再発/新生物増殖の防止方法についても提供される。当該方法は、式(I)のsiRNA複合体を含む医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者へ投与する工程を含む。たとえば、非複合体化siRNA(たとえば、未変化BCL2 siRNA)が特定のがんまたは腫瘍細胞に対して効力を有する場合、当該方法は、未変化siRNAに対して感受性を有する細胞へsiRNAを含むポリマー複合体を送達する工程を含む。送達は、in vivoで適当な医薬組成物の一部として、または直接的に細胞へex vivo環境で、行うことができる。1つの特定の治療では、siRNA分子(配列番号:2および3)を含むポリマー複合体が使用されうる。
【0132】
さらに別の態様では、本発明は、がん細胞の成長または増殖をin vivo または in vitroで阻害する方法を提供する。当該方法は、がん細胞を本明細書に記載されるsiRNA複合体と接触させる工程を含む。好ましくは、本発明は、細胞がBCL2遺伝子を発現することを特徴とする、リンパ腫または白血病細胞の成長をin vivoまたはin vitroで阻害する方法を提供する。リンパ腫または白血病細胞は、本明細書に記載される複合体から放出されたsiRNAと接触する。ヒトBCL2遺伝子から発現されたmRNAと相補的なアンチセンス鎖は、リンパ腫または白血病細胞の成長を阻害し、リンパ腫または白血病細胞におけるBCL2遺伝子の発現を低下させる。あるいは、本発明は、がん細胞においてアポトーシスを調節する方法を提供する。
【0133】
さらに別の態様では、in vivoまたはin vitroでがん細胞または組織の化学療法剤に対する感受性を増加させる方法が提供される。1つの特定の態様では、当該方法は、siRNAがBCL2遺伝子から発現されるmRNAと結合し、BCL2遺伝子発現を低減することを特徴とする、がん細胞または組織におけるBCL2発現を低減するために本明細書に記載されるsiRNA複合体をがん細胞へ導入する工程を含む。
【0134】
さらに別の態様では、腫瘍細胞をin vivoまたはin vitroで殺す方法が提供される。当該方法は、BCL2遺伝子などの遺伝子発現を低下させるために本明細書に記載されるsiRNA複合体を腫瘍細胞へ導入すること、および腫瘍細胞を腫瘍細胞の一部を殺すのに十分な量の少なくとも1つの化学療法剤と接触させる工程を含む。したがって、腫瘍 細胞の殺された部分は、本明細書に記載されるsiRNA 複合体の非存在下で同量の化学療法剤によって殺されたであろう部分より大きくなりうる。
【0135】
本発明のさらなる態様では、化学療法剤は、本明細書に記載されるsiRNA複合体を用いる方法と組み合わせて、同時にまたは連続して、使用されうる。本明細書に記載されるsiRNA複合体は、化学療法剤と同時に、または化学療法剤の投与後に、投与されうる。よって、siRNA複合体は化学療法剤の治療中または後に投与されうる。
【0136】
たとえば、化学療法剤の非限定的なリストは下記を含む:
(i)DNAトポイソメラーゼ阻害剤:アドリアマイシン、アムサクリン、カンプトテシン、CPT−11、SN38、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、またはミトキサントロン;
(ii)タキサンのような微小管阻害薬、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンを含む;
(iii)DNA傷害剤:アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン(hexamethylmelamineoxaliplatin)、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドまたはエトポシド(VP16);
(iv)代謝拮抗薬:葉酸拮抗薬;および
(v)ヌクレオシドアナログ:5−フルオロウラシル;シトシンアラビノシド、アザシチジン、6−メルカプトプリン、アザチオプリン;5−ヨード−2'−デオキシウリジン;6−チオグアニン、2−デオキシコホルマイシン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、AZT(ジドブジン)、ACV、バラシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、シドホビル、ペンシクロビル、ガンシクロビル、リバビリン、ddC、ddl(ザルシタビン)、ラミブジン(lamuvidine)、アバカビル、アデホビル、ジダノシン、d4T(スタブジン)、3TC、BW1592、PMEA/ビス−POM PMEA、ddT、HPMPC、HPMPG、HPMPA、PMEA、PMEG、dOTC;DAPD、Ara−AC、ペントスタチン、ジヒドロ−5−アザシチジン、チアゾフリン、サンギバマイシン、Ara−A(ビダラビン)、6−MMPR、5−FUDR(フロクスウリジン)、シタラビン(Ara−C;シトシンアラビノシド)、5−アザシチジン(アザシチジン)、HBG[9−(4−ヒドロキシブチル)グアニン]、コハク酸(1S,4R)−4−[2−アミノ−6−シクロプロピル−アミノ)−9H−プリン−9−イル]−2−シクロペンテン−1−m−エタノール(「159U89」)、ウリジン、チミジン、イドクスウリジン、3−デアザウリジン、シクロシチジン、ジヒドロ−5−アザシチジン、トリシリビン、リバビリン、フルダラビン(fludrabine)、アシクロビル、1−β−D−アラビノフラノシル−E−5−(2−ブロモビニル)ウラシル、2'−フルオロ炭素環−2'−デオキシグアノシン;6'−フルオロ炭素環−2'−デオキシグアノシン;1−(β−D−アラビノフラノシル)−5(E)−(2−ヨードビニル)ウラシル;{(1r−1α,2β,3α)−2−アミノ−9−(2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブト−イル)−6H−プリン−6−オン}ロブカビル、9H−プリン−2−アミン、9−((2−(1−メチルエトキシ)−1−((1−メチルエトキシ)メチル)エトキシ)メチル)−(9Cl);トリフルオロチミジン、9−>(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシ)メチルグアニン(ガンシクロビル)、5−エチル−2'−デオキシウリジン;E−5−(2−ブロモビニル)−2'−デオキシウリジン;5−(2−クロロエチル)−2'−デオキシウリジン、ブシクロビル、6−デオキシアシクロビル;9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルブト−1−イル)グアニン、E−5−(2−ヨードビニル)−2'−デオキシウリジン、5−ビニル−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル、1−β−D−アラビノフラノシルチミン;2'−ノル−2'デオキシグアノシン;および1−β−D−アラビノフラノシルアデニン。
【0137】
他の潜在的な抗がん剤は、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、ベグ(beg)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、ホリナートカルシウム、カンプトテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンから選択される。他の多数の抗がん剤は、参照することにより本明細書にその内容が援用される、米国特許出願公開第2006/0135468号明細書に列記されている。
【0138】
別の態様では、本発明は、哺乳類におけるさまざまな病状の治療方法を提供する。当該医薬組成物は、本明細書に記載されるsiRNA複合体を含み、多くの異なる疾患の治療に使用されうる。要約すると、PEGポリマーに結合されうる任意のsiRNAが、そのような治療を必要とする細胞へin vivoまたはin vitroで投与されうる。非複合体化状態で治療作用を有する任意のsiRNAが、本明細書に記載されるように調製された複合形態で、細胞へ導入されうる。
【0139】
H.組成物/処方
本発明のsiRNA複合体を含む医薬組成物は、活性化合物を医薬品として使用されうる調製物への加工を円滑にする、添加物および助剤を含む、1種類以上の生理的に許容される担体と併用して製剤化して差し支えない。適切な製剤は、選択される投与経路、すなわち局所治療または全身治療が処置されるか否かによって決まる。本発明の多くの態様では、非経口経路が好ましい。
【0140】
本明細書に記載されるsiRNA複合体を含む医薬組成物の投与は、経口、肺、表皮・経皮・眼を含む局所、ならびに、膣および直腸デリバリーを含む粘膜、または静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または輸液を含む非経口でありうる。1つの実施の形態では、siRNA複合体はIV、IPまたはボーラス注射として投与される。
【0141】
限定はしないが、静脈内、筋肉内および皮下注射を含む注射では、本発明の化合物は、水溶液に、好ましくは生理食塩緩衝液などの生理的に適合する緩衝液、または限定はしないがピロリドンまたはジメチルスルホキシドを含む極性溶媒の形態で製剤されうる。
【0142】
当該化合物はまた、たとえば、ボーラス注射または連続輸液による非経口投与用に製剤されうる。注射用製剤は、たとえば、アンプルなどの単位用量形態で、または複数回投与容器で提供されうる。有用な組成物は、限定はしないが、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液または乳液を含み、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの添加物を含みうる。非経口投与用の医薬組成物は、限定はしないが、活性化合物の塩(好ましい)などの水溶性の形態の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は、親油性媒体中で調製されうる。適当な親油性媒体は、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルおよびトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームなどの材料を含む。水系注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を高める物質を含みうる。随意的に、懸濁液はまた、適当な安定剤および/または、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を高める物質を含みうる。あるいは、有効成分は、たとえば、滅菌パイロジェンフリー水などの適当な媒体で、使用前に再構成するための粉末の形態でありうる。
【0143】
経口投与では、化合物は、活性化合物を、当該分野で周知の医薬品として許容される担体と混合することによって製剤されうる。そのような担体は、本発明の化合物を、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ジェル、シロップ、ペースト、スラリー、溶液、懸濁液、濃縮溶液、および患者の飲料水で希釈するための懸濁液、患者の食事での希釈するためのプレミックスなどとして、患者による経口摂取用に製剤することを可能にする。経口用途の医薬品は、固体の添加物を用いて、得られた混合物を随意的に粉砕し、他の適当な助剤を必要に応じて加えた後、顆粒の混合物を加工して、錠剤をまたは糖衣剤の核を得ることによって調製されうる。有用な添加物は、特に、増量剤、たとえば乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖、セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプンおよびジャガイモデンプン、および他の材料、たとえばゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸などの崩壊剤を添加してもよい。アルギン酸ナトリウムなどの塩もまた使用して差し支えない。
【0144】
吸入による投与では、本発明の化合物は、加圧容器またはネブライザーおよび適当な噴霧剤を用いてエアロゾルスプレーの形態で便利に送達されうる。
【0145】
化合物はまた、たとえば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて、坐剤または停留浣腸剤などの直腸用組成物として製剤されうる。
【0146】
前述の製剤に加えて、化合物はデポ製剤としても製剤されうる。そのような長期作用型の製剤は、埋め込みによって(たとえば、皮下にまたは筋肉内に)または筋肉内注射によって投与して差し支えない。本発明の化合物は、この投与経路のために、適当なポリマーまたは疎水性材料を用いて(たとえば、医薬品として許容される油との乳液で)、イオン交換樹脂を用いて、または、たとえば限定はしないが難溶性塩など、難溶性誘導体として、製剤されうる。
【0147】
リポソームおよび乳液などの他のデリバリーシステムも使用して差し支えない。
【0148】
加えて、複合体は、治療剤入りの固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスなどの徐放系を用いて送達されうる。さまざまな徐放材料が確立されており、当業者によく知られている。
【0149】
I.投与量
治療上有効な量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0150】
本発明の方法に用いられる任意の複合体では、治療上有効な量は、最初にin vitroアッセイから推定されうる。次いで、有効用量を含む循環濃度を達成するように、用量を動物モデル用途に製剤化することができる。次に、そのような情報を、患者に有用な用量をより正確に決定するために利用することができる。
【0151】
たとえばプロドラッグとして用いられる、組成物の投与量は、含まれる親分子(すなわち、非複合体化siRNAの効力)に応じて決まるであろう。一般に、治療法に用いられるプロドラッグの量は、哺乳類において所望の治療結果を有効に達成する量である。当然、さまざまなプロドラッグ化合物の用量は、親化合物(siRNA)、in vivo加水分解の速度、ポリマーの分子量などにいくらか依存して変化するであろう。さらには、用量はもちろん、剤形および投与経路によっても変化しうる。しかしながら、一般的に、本明細書に記載されるsiRNA複合体は、約1mg/kg/週〜約1g/kg/週、好ましくは約1〜約500mg/kg/週およびより好ましくは1〜約100mg/kg/週(すなわち、約2〜約60mg/kg/週)の範囲の量で投与されて構わない。上記に示す範囲は例示であり、当業者は、臨床経験および治療の適応に基づいて、選択されたプロドラッグの最適用量を決定する。さらには、正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されうる。さらに、本明細書に記載される化合物の毒性および治療効果は、本分野で周知の方法を用いて、細胞培養または実験動物において、標準的な薬学的手順によって測定されうる。
【0152】
より好ましい態様では、本発明の治療は、本明細書に記載されるsiRNA複合体を、約2〜約50mg/kg/投与、および好ましくは約5〜約30mg/kg/投与の量で哺乳類へ投与する工程を含む。
【0153】
あるいは、本明細書に記載されるsiRNA複合体のデリバリーは、約0.1〜約1000nM、好ましくは約10〜約1000nMのsiRNAの濃度を腫瘍細胞または組織とin vivoまたはin vitroで接触させる工程を含む。
【0154】
組成物は、1日1回投与でき、または複数週治療プロトコルの一部として与えることができる複数回用量に分割してもよい。正確な用量は、当業者に理解されるように、症状のステージおよび重症度のみならず、腫瘍のポリマー−プロドラッグ組成物に対する感受性、および治療されている患者の個別の特徴に依存する。
【0155】
ポリマー複合体が投与される本発明のすべての態様において、言及される投与量は、投与されるポリマー複合体の量でなくsiRNA分子の量に基づいている。治療は、目的の臨床結果が得られるまで、1日以上にわたって与えられることが意図されている。本発明の化合物の正確な量、頻度および投与期間はもちろん、患者の性別、年齢および医学的症状、および主治医によって判定される疾患の重症度に依存して変化するであろう。
【0156】
さらに別の態様は、相乗または相加的利益のために、本明細書に記載される本発明の化合物を、他の抗がん療法と併用することを含む。
【実施例】
【0157】
下記の実施例は、本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、いかなる形でも本発明の範囲を限定しないことが意図されている。実施例中に挙げられる太字の数字は、図1〜3中に示される数字に対応する。
【0158】
一般的手順
PEGリンカーとsiRNAとの間のすべての複合体化反応は、PBS緩衝液系中で室温にて実施された。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いてPEG−siRNA複合体を反応しなかった過剰のPEGリンカーおよび未変化siRNAから分離して、純粋な産物を生じた。
【0159】
HPLC法
反応混合物、および中間体および最終産物の純度は、Beckman Coulter System Gold(登録商標)HPLC機器によって監視した。それは It employs a Phenomenex Jupiter(登録商標)300A C18逆相カラム(150×4.6mm)を光ダイオードアレイ装備UV検出器と共に用い、25〜35 %アセトニトリル勾配を含む50 mM TEAA緩衝液を流速1mL/分にて用いる。陰イオン交換クロマトグラフィーはGE healthcare (Amersham Biosciences)のAKTA explorer 100Aで行い、WatersのAP−Emptyガラスカラムに充填したApplied BiosystemsのPoros 50HQ強陰イオン交換樹脂を用いた。脱塩はAmersham BiosciencesのHiPrep 26/10脱塩カラムを用いることによって達成した。
【0160】
実施例1.化合物3の調製
化合物1(330mg、0.011mmol、30当量)および化合物2(5mg、0.37μmol、1.0当量)を含むPBS緩衝液(2.5mL、pH7.4)の溶液を室温にて5時間攪拌した。反応液をMilli−Q水(25mL)で希釈し、HQ/10 Poros強陰イオン交換カラム(10mm×60mm、ベッドボリューム〜6mL)に負荷した。未反応PEGリンカーは除去された。純粋な産物を含む画分をプールし、凍結乾燥して純粋な化合物3(6.5mg、0.15umol、40%)を得た。
【0161】
実施例2.化合物5の調製
化合物4を実施例1に記載の条件に供して、化合物5を得た。
【0162】
実施例3.化合物7の調製
化合物6を実施例1に記載の条件に供して、化合物7を得た。
【0163】
実施例4.生理食塩水中のin vitro安定性試験
siRNAのPEGポリマーとの複合体化の作用を判定するために、PEG化siRNAの安定性を測定した。未変化siRNA(配列番号:2および3)またはPEG化siRNA複合体(化合物3、5および7)を生理食塩水に溶解して濃度約0.7mg/mLとした。各被験化合物の100μLの部分標本を別々のエッペンドルフチューブに加え、37℃にてそれぞれ30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間インキュベートした。各時点での試料を、50〜200μLの部分標本をHPLCに注入し、次いでPEG化siRNAに対応するピークの面積を分析することによって分析した。分析は個々の被験化合物について2回繰り返した。結果を下記の表1に示す。
【0164】
実施例5.ラットおよびヒト血漿中のin vitro安定性試験
ヒトおよびラット血漿中の未変化siRNAおよびPEG化siRNAの動態試験を、in vitroT1/2を評価するために実施した。未変化siRNAまたはPEG化siRNA複合体(化合物3、5および7)を新鮮血漿に溶解して濃度〜0.7mg/mLとした。各被験化合物の100μLの部分標本を別々のエッペンドルフチューブに加え、37℃にてそれぞれ5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間インキュベートした。未変化siRNAをフェノール・クロロホルムで抽出し、HPLCに注入する前に、PEG−siRNA複合体を有機溶媒アセトニトリル/メタノールで抽出した。分析は個々の被験化合物について2回繰り返した。PEG−siRNA複合体のin vitro安定性特性を表1に示し、安定性曲線も図4に示す。
【表1】

【0165】
結果は、PEG−siRNA 複合体が血漿中でヌクレアーゼに対して高まった安定性を有することを示している。
【0166】
実施例6.ウェスタンブロットを用いるin vitro効力試験
siRNAおよび3つのPEG−siRNA複合体(化合物3、5および7)および未変化siRNAについてのin vitro効力試験を、ウェスタンブロットを用いることによって実施した。各被験化合物0.1nMから1,000nMをSiLenFect(BioRad社製)と混合し、10,000個のAK431K5細胞を含むPRMI1640培地に加え、37℃にて5%CO2雰囲気で72時間インキュベートした。インキュベート後、AK431K5細胞タンパク質を各被験化合物でトランスフェクションされたAK431K5細胞から抽出し、4〜20%SDS−PAGEで分離し、Hybond膜に転写した。膜を1/1000希釈のBCL2に対するモノクローナル抗体(Santa−Cruz Biotechnology社製SC7328)およびアルファ−チューブリンに対するモノクローナル抗体(Santa−Cruz Biotechnology社製SC5286)中で4℃にて一晩インキュベートし、次いで1/2,000希釈の抗マウスIgG(Sant−Cruz社製,SC 2031)中で室温にて1時間インキュベートした。膜を化学発光試薬中で発色させた。ウェスタンブロットからの結果を図5に示す。結果は、未変化siRNAおよびPEG−siRNA複合体がBCL2タンパク質発現の用量依存的ダウンレギュレーションを示したことを示す。臨床医は患者の必要に応じて治療用オリゴヌクレオチドの投与量を調整するので、この性質は、がんの治療において長所となりうる。
【0167】
実施例7.RT−PCRを用いるin vitro効力試験
3つのPEG−siRNA複合体(化合物3、5および7)および未変化siRNAについてのin vitro効力試験を、RT−PCRを用いることによって実施した。各被験化合物でトランスフェクションされたH460細胞から、RNAqueousキット(AmBion社製)の取扱説明書にしたがって総RNAを抽出した。各試料に由来する総RNA100ngを、TagMan遺伝子発現アッセイ(AppliedBiosystems社製Hs00608023 ml)を用いて相対定量検定法によって分析した。18S rRNA遺伝子を内在性対照として用いた。RT−PCRからの結果を図6に示す。結果は、未変化siRNAおよびPEG−siRNA複合体がBCL2 mRNA発現の用量依存的ダウンレギュレーションを示したことを示す。結果は、本発明に記載のsiRNAデリバリー技術が、siRNAの細胞取り込み、治療用の使用を可能にすることを示している。
実施例8.ICRマウスにおけるPEG−siRNA複合体の薬物動態
被験化合物群当たり30匹の雌マウスに単回低速ボーラス静脈内注射を側尾静脈から、50mg/kg siRNAまたは各PEG−siRNA複合体(化合物3、5および7)についてsiRNA等量を投与した。投与後に、マウス(3匹/群)を心臓穿刺によってEDTA入りチューブに、下記に示す時点で採血した。5分間400×gにて血液の遠心分離後、血漿を回収し、直ちにドライアイス上で−80℃にて凍結した。5匹の未処理マウスを陰性対照として採血した。血漿中の遊離siRNAおよびPEG−siRNAの濃度をHPLCによって測定した。薬物動態パラメータを、WinNonlin software,Pharsightを用いて決定した。各動物を試験期間中に検査した。検査は、一般状態、皮膚および被毛、眼、鼻、腹部および外性器の観察、および呼吸の評価、および、あれば異常行動または毒性作用または薬理作用の臨床徴候の観察を含んだ。薬物動態結果を表2に示す。
【表2】

【0168】
マウスに静脈内投与されたPEG−siRNA複合体の血漿濃度−時間曲線を図7に示す。未変化siRNAおよび化合物5で試験したマウスには25mg/kg siRNA当量にて投与した。化合物3および化合物7で試験したマウスには50 mg/kg siRNA当量を投与した。非複合体化未変化siRNAで処理したマウスでは、siRNAは投与5分以内に血漿中に検出不能であった。結果は、siRNA複合体が未変化siRNAと比較してsiRNAの循環を顕著に延長したことを示す。理論に縛られるわけではないが、siRNAの生物安定性などのsiRNAの薬力学的性質は、分解すなわちヌクレアーゼに対するsiRNA耐性の上昇を通じて改善された。
【0169】
実施例9.ヒト肺腫瘍細胞を異種移植されたマウスにおけるin vivo効力試験
異なるリンカーを用いて調製されたPEG−siRNA複合体(化合物3、5および7)のBCL2ダウンレギュレーション効力を、Nu/nuマウス、Harlan Sprague−Dawley(雌)で評価した。試験には、生理食塩水または未変化siRNAを注射されたマウスの対照群も含めた。H460ヒト非小細胞肺腫瘍を、ヌードマウスにおいて2.5×10細胞/マウスの右腋側腹部への皮下注射によって確立した。腫瘍成長を週2回監視し、触知可能になるとすぐに計測した。腫瘍が平均量70〜80mmに達した際に、マウスを実験群に分割した(10匹/群)。各マウスについて腫瘍量を、ノギスを用いて2次元計測することによって測定し、式:腫瘍量=(長さ×幅)/2を用いて計算した。
【0170】
各被験化合物を含む溶液を生理食塩水で調製した。注射量は0.2mLであった。投与用溶液は注射の直前に作製した。未変化siRNAを腫瘍内に注射したのを除いて、各被験化合物(化合物3、5および7)を腹腔内に注射した。各被験化合物は試験終了まで1日1回10mg/kg(siRNA当量)にて注射した。投与1日目をDay1とした。Day9に各試験群から3匹のマウスを殺処理して、腫瘍中のBCL2レベルを調べた。動物を殺処理した際に、動物からの腫瘍のほとんどを摘出した。一部の腫瘍は、大きい潰瘍形成が腫瘍試料の摘出を妨げたため、摘出されなかった。これらの組織についてBCL2 mRNAレベルをRT−PCRを用いて定量し、結果を表3に示す。
【表3】

【0171】
ビシンを基礎とする遊離可能なリンカーを含むPEG−siRNA複合体は、H460ヒトがん細胞を異種移植されたマウスの組織において、BCL2 mRNA発現を顕著にダウンレギュレートした。本発明に記載の複合体は、トランスフェクション剤の非存在下で、がん細胞におけるsiRNAの細胞取り込み、mRNAダウンレギュレーションを可能にする。この技術は、治療用siRNAのin vivo投与に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物であって:
A−R−(R−R
ここで、
Aがキャップ基またはR'−(R'e'−であり;
が実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
およびR'が独立して選択される遊離可能なリンカーまたは永続的リンカー、もしくはその組合せであり;
およびR'が、同一のまたは異なるsiRNA含有部分であり;
(e)および(e')が、同一のまたは異なる正の整数である、
化合物。
【請求項2】
がsiRNA含有部分のセンス鎖に結合していることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項3】
AがH、NH、OH、COH、C1−6アルコキシおよびC1−6アルキルから成る群より選択されることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項4】
式:
R'−(R'e'−R−(R−R
を有する、請求項1の複合体。
【請求項5】
およびR'が、ベンジル脱離系のリンカー、トリアルキルロック系のリンカー、ビシン系のリンカー、酸不安定性リンカー、リソソームで切断可能なペプチドおよびカプテプシン(capthepsin)B切断可能ペプチドから成る群より独立して選択されることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項6】
およびR'が、
【化1−1】

【化1−2】

から成る群より独立して選択され、
ここで、
11−19は独立してO、SまたはNR48であり;
31−48、R50−51およびA51は独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシから成る群より選択され;
Arはアリールまたはヘテロアリール部分であり;
11−15は独立して選択される二官能性スペーサーであり;
JおよびJ’は独立して、標的細胞内へ能動輸送される部分または
【化2】

であり、
ここで、
は二官能性リンカーであり;
はO、SまたはNR11であり;
11は、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシから成る群より選択され;
(c11)、(h11)、(k11)、(l11)、(m11)および(n11)は独立して選択される正の整数であり;
(a11)、(e11)、(g11)、(j11)、(o11)および(q11)は独立して、ゼロまたは正の整数であり;
(b11)、(x11)、(x’11)、(f11)、(i11)および(p11)は独立してゼロまたは1である
ことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項7】
およびR'が、
【化3−1】

【化3−2】

から成る群より独立して選択され、
ここで、
21−29は独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシおよびC1−6ヘテロアルコキシから成る群より選択され;
(t)および(t’)は独立して、ゼロまたは正の整数であり;
(v)および(v’)は独立してゼロまたは1である
ことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項8】
およびR'が、独立して選択されるアミノ酸またはアミノ酸誘導体であることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項9】
およびR'が、
【化4】

から成る群より独立して選択されることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項10】
(e)および(e')が独立して1または2であることを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項11】
が、直鎖、末端分枝またはマルチアームのポリアルキレンオキサイドを含むことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項12】
前記ポリアルキレンオキサイドが、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールから成る群より選択されることを特徴とする、請求項11の複合体。
【請求項13】
前記ポリアルキレンオキサイドが、
【化5】

から成る群より選択され、
ここで、
71およびY73が独立してO、S、SO、SO、NR73または結合であり;
72がO、S、またはNR74であり;
71−74が、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−19分枝アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C2−6置換アルケニル、C2−6置換アルキニル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1−6ヘテロアルキル、置換C1−6ヘテロアルキル、C1−6アルコキシ、アリールオキシ、C1−6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2−6アルカノイル、アリールカルボニル、C2−6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2−6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2−6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2−6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2−6置換アルカノイルオキシおよび置換アリールカルボニルオキシから成る群より独立して選択され;
(a2)および(b2)が独立してゼロまたは正の整数であり;
(n)が約10〜約2300の整数である
ことを特徴とする、請求項11の複合体。
【請求項14】
前記ポリアルキレンオキサイドが式−O−(CHCHO)−のポリエチレングリコールであり、
ここで、(n)が約10〜約2,300の整数である
ことを特徴とする、請求項11の複合体。
【請求項15】
が約2,000〜約100,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項16】
が約5,000〜約60,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項17】
が約20,000〜約45,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項18】
前記siRNA含有部分のアンチセンス鎖が、標的遺伝子と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項19】
前記siRNA含有部分のアンチセンス鎖が、配列番号:1の核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項20】
前記siRNA含有部分のアンチセンス鎖が、配列番号:3の核酸配列を含むことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項21】
【化6−1】

【化6−2】

から成る群より選択され、
前記siRNA含有部分のセンス鎖が、前記ポリマーと複合体化されている
ことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項22】
【化7】

から成る群より選択され、
ここで、
siRNAが配列番号:2または3の核酸配列を含み;
前記siRNAのセンス鎖の5'末端がPEGリンカーと複合体化するため、C6−アミノ尾部に修飾されている
ことを特徴とする、請求項1の複合体。
【請求項23】
前記酸不安定性リンカーが、ジスルフィドリンカー、ヒドラゾン含有リンカーおよびチオプロピオネート含有リンカーから成る群より選択されることを特徴とする、請求項5の複合体。
【請求項24】
ヒト細胞または組織を、請求項1の複合体と接触させる工程を有してなる、ヒト細胞または組織における遺伝子発現を阻害する方法。
【請求項25】
前記細胞または組織が、がん細胞または組織であることを特徴とする、請求項25の方法。
【請求項26】
前記細胞または組織を化学療法剤と接触させる工程をさらに有してなる、請求項26の方法。
【請求項27】
BCL2の発現が阻害されることを特徴とする、請求項25の方法。
【請求項28】
前記siRNA含有部分のアンチセンス鎖が配列番号:1の核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項28の方法。
【請求項29】
前記複合体が、
【化8】

から成る群より選択されることを特徴とする、請求項28の方法。
【請求項30】
請求項1の複合体と共にがん細胞を含む、がん細胞の成長または増殖を阻害する方法。
【請求項31】
前記siRNA含有部分のアンチセンス鎖が配列番号:1の核酸配列と相補的な約18から約28ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項31の方法。
【請求項32】
前記、複合体が
【化9】

から成る群より選択されることを特徴とする、請求項31の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−510810(P2010−510810A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539441(P2009−539441)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/085616
【国際公開番号】WO2008/070477
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】