説明

ポリマー繊維偏光子

偏光フィルムは、マトリックス内に埋め込まれた多層偏光繊維で作製される。繊維は、少なくとも第1及び第2のポリマー材料の層で形成される。第1のポリマー材料の層は、第2のポリマー材料の層の間に配置される。第1及び第2のポリマー材料の少なくとも1つが、複屈折性である。いくつかの実施形態では、材料の少なくとも1つの厚さは繊維によって変化する。繊維は、第1又は第2のポリマー材料のいずれかより低い屈折率を有する材料内に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示システム、より具体的には、横方向から照らされる複屈折性ポリマー繊維を含む光学素子を包含する光学表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非偏光光を偏光するためのいくつかの異なる種類の偏光フィルムが入手可能である。吸収(二色性)偏光子は、含有相として、ポリマーマトリックス内に整列された偏光依存吸収種、多くの場合ヨード含有鎖を有する。そのようなフィルムは、吸収種に平行に整列される電界ベクターで偏光された光を吸収し、吸収種に垂直に偏光された光を透過する。別のタイプの偏光フィルムは、反射偏光子であり、これはある状態の光を透過し、他の状態の光を反射することにより、異なる偏光状態の光を分離する。1つのタイプの反射偏光子は、多層光学フィルム(MOF)であり、これは交互に重なるポリマー材料の多くの層の積み重ね体で形成される。1つの材料は、光学的等方性であるが、一方他は、その屈折率の1つが等方性材料の屈折率に整合する複屈折性である。1つの偏光状態の光入射は、整合する屈折率を受け、偏光子を通して実質的に正反射して透過される。しかしながら、他の偏光状態の光入射は、異なる層の間の境界面で多重の可干渉性(coherent)又は非干渉性(incoherent)反射を受け、偏光子により反射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
別のタイプの反射偏光フィルムは、連続相マトリックス内に分散した含有物(inclusion)から構成される。含有物は、フィルムの幅及び高さに対して小さい。これらの含有物の特徴を操作し、フィルムに種々の反射及び透過特性を提供することができる。含有物は、連続相マトリックス内の分散ポリマー相を構成する。含有物の寸法及び配列は、フィルムを延伸することにより変更することができる。連続相又は分散相のいずれかは、複屈折性材料の屈折率の1つが他の相の屈折率に整合する複屈折性であり、これは光学的等方性である。延伸の程度に加えて、連続相及び分散相用の材料の選択は、分散相と連続相との間の複屈折率の不整合の程度に影響を与える可能性がある。他の特性を調節し、光学性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの特定の実施形態は、少なくとも第1及び第2のポリマー材料の層を含む第1の多層繊維を含む光学体を目的とする。第1のポリマー材料の層は、第2のポリマー材料の層の間に配置される。第1及び第2のポリマー材料の少なくとも1つは、複屈折性である。第3のポリマー材料は第1の多層繊維を取り囲み、第3のポリマー層は、第1及び第2のポリマー材料のいずれかの屈折率より低い屈折率を有する。
【0005】
本発明の上記の概要は、本発明の各図示された実施形態又は全ての実施を説明しようと意図されるものではない。図及び以下の詳細な説明がこれらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面と関連して本発明の様々な実施形態の以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【図1A】偏光子フィルムの操作を概略的に示す図。
【図1B】偏光子フィルムの操作を概略的に示す図。
【図2】本発明の原理によるポリマー層の実施形態の切欠図を概略的に示す図。
【図3A】本発明の原理による偏光子フィルムの実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図3B】本発明の原理による偏光子フィルムの実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図3C】本発明の原理による偏光子フィルムの実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図4】本発明のいくつかの実施形態で用い得る繊維織物を概略的に示す図。
【図5A】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5B】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5C】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5D】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5E】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5F】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5G】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図5H】本発明の原理による多層偏光繊維の別の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図6A】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6B】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6C】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6D】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6E】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6F】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6G】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図6H】多層偏光繊維の別の実施形態の例示の層厚さ特性を示すグラフ。
【図7A】多層偏光繊維と入射光の相互作用を示す、偏光子の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図7B】多層偏光繊維と入射光の相互作用を示す、偏光子の実施形態の断面図を概略的に示す図。
【図8】本発明の原理による多層偏光繊維を取り囲む低屈折率の被膜を有する偏光子の断面図を概略的に示す図。
【図9】多層偏光繊維の挙動を分析するために用いられるモデルのパラメーターを概略的に示す図。
【図10A】半径の増加とともに層厚さが減少する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維からの透過及び反射を示すグラフ。
【図10B】半径の増加とともに層厚さが減少する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維からの透過及び反射を示すグラフ。
【図11A】半径の増加とともに層厚さも増加する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維からの透過及び反射を示すグラフ。
【図11B】半径の増加とともに層厚さも増加する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維からの透過及び反射を示すグラフ。
【図12A】半径の増加とともに層厚さが減少する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維の偏光特性を示すグラフ。
【図12B】半径の増加とともに層厚さが減少する層厚さ勾配を有する多層偏光繊維の偏光特性を示すグラフ。
【図13】繊維が偏光子の表面に平行なより長い寸法を有する非円形対称横断面を有する繊維偏光子の断面図を概略的に示す図。
【図14】多層偏光繊維の部分断面図の写真。
【図15】異なる層厚さの多層偏光繊維について測定された反射及び透過のそれぞれのグラフ。
【図16】異なる層厚さの多層偏光繊維について測定された反射及び透過のそれぞれのグラフ。
【0007】
本発明は様々な変更例及び代替形態に柔軟に従うことができるが、それらの細目は図面で例を用いてこれまでに示され、また詳細に記述されるであろう。しかしながら、その意図は、記述された特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解するべきである。反対に、その意図は、添付された特許請求の範囲により規定されるように、本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更例、同等の方法、及び代替方法を網羅しようとするものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、光学システムに適用可能であり、より具体的には偏光された光学システムに適用可能である。新しいタイプの反射偏光フィルムは、繊維偏光フィルムであり、これは内部複屈折境界面、すなわち複屈折性材料と別の材料との間に境界面を有する多重繊維を包含するマトリックス層である。繊維偏光子フィルム内の繊維のパラメーターは、偏光特性が改善されるように選択されることが重要である。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「正反射」及び「正反射率」とは、反射角が実質的に入射角と等しく、角度が本体表面の法線に対して測定される本体からの光線の反射率を指す。換言すれば、光が特定の角度分布で本体上に入射するとき、反射光は実質的に同じ角度分布を有する。用語「拡散反射」又は「拡散反射率」とは、一部の反射光の角度が入射角と等しくない光線の反射を指す。したがって、光が特定の角度分布で本体上に入射するとき、反射光の角度分布は入射光とは異なる。用語「全反射率」又は「全反射」とは、全ての光、すなわち正反射光及び拡散光の組み合わされた反射率を指す。
【0010】
同様に、用語「正透過」及び「正透過性」とは、本明細書で使用されるとき、スネルの法則(Snell’s law)による任意の変化に応じて調節された透過光の角度分布が実質的に入射光と同じである、本体を通過する光透過率を指す。用語「拡散透過」及び「拡散透過性」を用いて、光透過率が入射光の角度分布と異なる角度分布を有する、本体を通過する透過光を説明する。用語「全透過」又は「全透過性」とは、全ての光、すなわち正反射光及び拡散光の組み合わされた透過率を指す。
【0011】
反射偏光子フィルム100が、図1A及び1Bに概略的に示される。本明細書で採用した従来法では、フィルムの厚さ方向をz軸とし、x−y平面はフィルムの平面に対して平行である。非偏光光102が偏光子フィルム100に入射するとき、偏光子フィルム100の透過軸に平行に偏光された光104は、実質的に透過されるが、偏光子フィルム100の反射軸に平行に偏光された光106は、実質的に反射される。反射光の角度分布を、偏光子100の様々な特性に応じて決定する。例えば、いくつかの例示の実施形態では、図1Aに概略的に示されたように、光106は拡散して反射される場合がある。他の実施形態では、反射光は、正反射性及び拡散性成分の両方を含んでよく、一方いくつかの実施形態では、反射は実質的に全て正反射性であってよい。図1Aに示された実施形態では、偏光子の透過軸はx軸に平行であり、偏光子100の反射軸はy軸に平行である。他の実施形態では、これらは逆であってもよい。透過光104は、例えば図1Aに概略的に示されたように正反射して透過されてよく、例えば図1Bに概略的に示されたように拡散して反射されてもよく、又は正反射性及び拡散性成分の組み合わせで透過されてもよい。偏光子は、透過光の半分以上が拡散して透過されるとき、実質的に拡散して光を透過させ、透過光の半分以上が正反射して透過されるとき、実質的に正反射して光を透過させる。
【0012】
本発明の例示の実施形態による反射偏光子本体の切欠図が図2に概略的に示される。本体200は、連続相とも呼ばれるポリマーマトリックス202を含む。ポリマーマトリックスは、所望により光学的等方性であってよく、又は光学的複屈折性であってもよい。例えば、ポリマーマトリックスは、単軸又は双軸的に複屈折性であってよく、これはポリマーの屈折率が1方向に沿って異なってよく、2つの直交する方向で同様(単軸)であってもよい又は3つの直交する方向全てで異なってもよい(双軸)ことを意味する。
【0013】
偏光繊維204は、マトリックス202内に配置される。偏光繊維204は、少なくとも2つのポリマー材料を含み、そのうち少なくとも1つは複屈折性である。いくつかの例示の実施形態では、材料の1つは複屈折性であるが、他の材料は等方性である。他の実施形態では、繊維を形成する材料の2つ以上が複屈折性である。いくつかの実施形態では、等方性材料で形成された繊維もまた、マトリックス202内に存在してよい。
【0014】
第1の繊維材料のx、y及びz方向の屈折率は、n1x、n1y及びn1zと呼ばれることがあり、第2の繊維材料のx、y及びz方向の屈折率は、n2x、n2y及びn2zと呼ばれることがある。材料が等方性である場合、x、y及びz屈折率は、全て実質的に整合されている。第1の繊維材料が複屈折性である場合、x、y及びz屈折率の少なくとも1つは他とは異なる。
【0015】
各繊維204内には、第1の繊維材料と第2の繊維材料との間に形成される多重の境界面が存在する。例えば、2つの材料が境界面におけるx及びy屈折率を示し、n1x≠n1yである、すなわち、第1の材料が複屈折性である場合、境界面は複屈折性である。偏光繊維の異なる例示の実施形態については、以下で論じられる。
【0016】
繊維204は、図中にx軸として示されたように、概して軸に平行に配置される。x軸に平行に偏光された光についての繊維204内の複屈折境界面における屈折率の差n1x−n2xは、y軸に平行に偏光された光についての屈折率の差n1y−n2yとは異なる場合がある。境界面は、境界面における屈折率の差が方向により異なるとき、複屈折性であると言われる。したがって、複屈折境界面の場合、Δn≠Δnであり、この場合Δn=|n1x−n2x|及びΔn=|n1y−n2y|である。
【0017】
1つの偏光状態では、繊維204の複屈折境界面における屈折率の差は、比較的小さい場合がある。いくつかの例示の事例では、屈折率の差は0.05未満であってよい。この条件は、実質的に屈折率が整合していると考えられる。この屈折率の差は、0.03未満、0.02未満又は0.01未満であってよい。この偏光方向がx軸に平行である場合、x偏光光はわずかに反射し、又は全く反射せず、本体200を通過する。換言すれば、x偏光光は本体200をほとんど透過する。
【0018】
繊維内の複屈折境界面における屈折率の差は、直交する偏光状態の光に対して比較的大きな場合がある。いくつかの例示の例では、屈折率の差は、少なくとも0.05であってよく、例えば0.1若しくは0.15のようにそれより大きくてもよく、又は0.2であってもよい。この偏光方向がy軸に平行である場合、y偏光光は複屈折境界面において反射される。したがって、y偏光光は本体200により反射される。繊維204内の複屈折境界面が実質的に互いに平行である場合、反射は実質的に正反射性であってよい。他方、繊維204内の複屈折境界面が実質的に互いに平行ではない場合、反射は実質的に拡散性であってよい。複屈折境界面のいくつかは平行であってよく、他の境界面は非平行であってもよく、これは正反射性及び拡散性成分の両方を包含する反射光を導く場合がある。また、複屈折境界面は湾曲していてよく、又は比較的小さくてもよく、換言すれば、入射光の波長の桁内で、これは拡散性散乱を導く場合がある。
【0019】
ここで記載されたばかりの例示の実施形態は、y方向に比較的大きな屈折率の差を有する、x方向の屈折率の整合を目的とし、他の例示の実施形態は、x方向に比較的大きな屈折率の差を有する、y方向の屈折率の整合を含む。
【0020】
ポリマーマトリックス202は、例えば約0.05未満、好ましくは0.01未満の複屈折性n3x−n3yを有する、実質的に光学的等方性であってよく、ここでx及びy方向のマトリックス内の屈折率はそれぞれn3x及びn3yである。他の実施形態では、ポリマーマトリックス202は複屈折性であってよい。したがって、いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスと繊維材料との間の屈折率の差は、方向により異なる場合がある。例えば、x屈折率の差n1x−n3xは、y屈折率の差n1y−n3yとは異なってよい。いくつかの実施形態では、これらの屈折率の差のうち1つが、他の屈折率の差の少なくとも2倍であってよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、屈折率の差、複屈折境界面の程度及び形状、並びに複屈折境界面の相対位置により、他の偏光を超える、入射偏光のうち1つの拡散的散乱が生じる場合がある。そのような散乱は、主に後方散乱(拡散反射)、前方散乱(拡散透過)又は後方及び前方散乱の組み合わせであってよい。
【0022】
ポリマーマトリックス及び/又は繊維で用いるのに好適な材料としては、所望の範囲の光波長の間で透明である熱可塑性及び熱硬化性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、非水溶性であるポリマーが特に有用である場合がある。更に、好適なポリマー材料は、非晶質又は半結晶性であってよく、ホモポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドを含んでもよい。ポリマー材料の例としては、ポリ(カーボネート)(PC);シンジオタクチック及びアイソタクチックポリ(スチレン)(PS);C1〜C8アルキルスチレン;ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)及びPMMAコポリマーを含む、アルキル、芳香族、及び脂肪族環含有(メタ)アクリレート;エトキシル化及びプロポキシル化(メタ)アクリレート;多官能性(メタ)アクリレート;アクリレート化エポキシ;エポキシ;及び他のエチレン性不飽和物質;環状オレフィン及び環状オレフィン性コポリマー;アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS);スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN);エポキシ;ポリ(ビニルシクロヘキサン);PMMA/ポリ(ビニルフロライド)ブレンド;ポリ(フェニレンオキシド)合金;スチレン系ブロックコポリマー;ポリイミド;ポリスルホン;ポリ(ビニルクロライド);ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS);ポリウレタン;不飽和ポリエステル;低複屈折性ポリエチレンを含むポリ(エチレン);ポリ(プロピレン)(PP);ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)のようなポリ(アルカンテレフタレート);ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)のようなポリ(アルカンナフタレート(alkane napthalates));ポリアミド;アイオノマー;ビニルアセテート/ポリエチレンコポリマー;セルロースアセテート;セルロースアセテートブチレート;フルオロポリマー;ポリ(スチレン)−ポリ(エチレン)コポリマー;ポリオレフィン性PET及びPENを含むPET及びPENコポリマー;並びにポリ(カーボネート)/脂肪族PETブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。用語(メタ)アクリレートは、対応するメタクリレート又はアクリレート化合物のいずれかであるとして定義される。シンジオタクチックPSを例外として、これらのポリマーは、光学的等方性の形態で使用されてもよい。
【0023】
これらのポリマーのいくつかは、配向されたときに複屈折性になることがある。特に、PET、PEN、及びこれらのコポリマー、並びに液晶ポリマーは、配向されたときに比較的大きな値の複屈折性を表す。ポリマーは、押出成形及び延伸を含む様々な方法を用いて配向されてよい。延伸は、それが高度な配向を可能にし、温度及び延伸比のような多くの容易に制御可能な外部パラメーターにより制御され得るため、ポリマーを配向するのに特に有用な方法である。配向された及び配向されていない、多くの例示のポリマーの屈折率が以下の表Iに示される。
【0024】
【表1】

【0025】
PCTG及びPETG(グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート)は、例えば、イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Co.)(テネシー州キングスポート(Kingsport)から商品名イーストマン(商標)として入手可能なコポリエステルのタイプである。THVは、3M社(ミネソタ州セントポール(St. Paul))から商品名ダイネオン(Dyneon)(商標)として入手可能な、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのポリマーである。PS/PMMAコポリマーは、コポリマー中の構成モノマーの比が変化することによりその屈折率が「同調」され、所望の値の屈折率を得ることがあるコポリマーの例である。「S.R.」と表示されている列は延伸比を包含する。延伸比1は、材料が延伸しておらず、かつ配向されていないことを意味する。延伸比6は、試料が元の長さの6倍に延伸されていたことを意味する。正確な温度条件下で延伸した場合、ポリマー分子は配向され、材料は複屈折性になる。しかしながら、分子を配向することなく材料を延伸することが可能である。「T」と表示された列は、試料が延伸した温度を示す。延伸した試料は、シート状に延伸した。n、n及びnと表示された列は、材料の屈折率を指す。n及びnの値が表中に列挙されていない場合、n及びnの値はnと同じである。
【0026】
繊維の延伸下での屈折率の挙動も、同様の結果が得られると予想されるが、必ずしもシートを延伸するときと同じではない。ポリマー繊維は、所望の値の屈折率が生じる任意の所望の値に延伸されてよい。例えば、いくつかのポリマー繊維を延伸し、少なくとも3、恐らく少なくとも6の延伸比を生じさせ得る。いくつかの実施形態では、ポリマー繊維は、例えば20以下、又はそれ以上の延伸比にさえ延伸される場合がある。
【0027】
複屈折性を実現するために延伸に好適な温度は、ケルビン(Kelvin)で表されるポリマーの融点のおよそ80%である。複屈折性はまた、押出成形及びフィルム形成プロセス中経験されるポリマー溶融物の流動により誘導される応力によっても誘導される場合もある。複屈折性はまた、フィルム物品中の繊維のような隣接する表面と整列することによって生じる場合もある。複屈折は、正又は負のいずれかであってよい。正の複屈折は、直線偏光光の電界軸の方向が、ポリマーの配向に対して平行である又は表面と整列するとき最も高い屈折率を受ける場合として定義される。負の複屈折は、直線偏光光の電界軸の方向が、ポリマーの配向に対して平行である又は表面と整列するとき最も低い屈折率を受ける場合として定義される。正の複屈折性ポリマーの例としては、PEN及びPETが挙げられる。負の複屈折性ポリマーの例としては、シンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。
【0028】
マトリックス202及び/又はポリマー繊維204は、本体200に所望の特性を提供するために種々の添加剤を備えられていてよい。例えば、添加剤は、耐候剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、分散剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料又は染料、成核剤、難燃剤、及び発泡剤のうちの1つ以上を含んでよい。他の添加剤は、ポリマーの屈折率を変化させる又は材料の強度を増大させるために提供されてよい。そのような添加剤としては、例えば、ポリマービーズ若しくは粒子及びポリマーナノ粒子のような有機添加剤、又はガラス、セラミック若しくは金属酸化物ナノ粒子又は粉砕、粉末、ビーズ、フレーク若しくは粒子状ガラス、セラミック若しくはガラスセラミックのような無機添加剤を挙げてよい。これらの添加剤の表面は、ポリマーに結合するための結合剤を備えられていてよい。例えば、シランカップリング剤をガラス添加剤とともに用いて、ガラス添加剤をポリマーに結合させる場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態では、マトリックス202又は繊維204の成分は非可溶性、又は少なくとも溶媒抵抗性であることが好ましい場合がある。溶媒抵抗性である好適な材料の例としては、ポリプロピレン、PET及びPENが挙げられる。他の実施形態では、マトリックス202又はポリマー繊維204の成分は有機溶媒に可溶性であることが好ましい場合がある。例えば、マトリックス202又はポリスチレンで形成された繊維成分は、アセトンのような有機溶媒に可溶性である。他の実施形態では、マトリックスは水溶性であることが好ましい場合がある。例えば、マトリックス202又はポリビニルアセテートで形成された繊維成分は、水溶性である。
【0030】
光学素子のいくつかの実施形態では、材料の屈折率は、x方向の繊維の長さに沿って変化する場合がある。例えば、素子は均一に延伸されなくてよいが、一部の領域では他の領域より大きく延伸されてよい。したがって、配向可能な材料の配向の程度は、素子に沿って均一ではなく、そのため複屈折性は素子に沿って空間的に変化する場合がある。
【0031】
更に、マトリックス内に繊維を組み込むと、光学素子の機械的特性を向上させる場合がある。具体的には、ポリエステルのようないくつかのポリマー材料は、フィルム形態より繊維形態の方が強く、よって繊維を含有する光学素子は繊維を含有しない同様の寸法のものより強いことがあり得る。繊維204は直線であってよいが、直線である必要はなく、例えば繊維204はねじれていてよく、らせん状でもよく、又は縮れていてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、偏光子層に存在する繊維の一部又は全部は、ポリマー偏光繊維であってよい。他の実施形態では、偏光子はまた、等方性ポリマーのような等方性材料、又はガラス、セラミック若しくはガラスセラミックのような無機材料で形成され得る繊維も包含してよい。したがって、フィルム中に無機繊維を使用することは、米国特許出願第2006/0257678号でより詳細に論じられている。無機繊維は、偏光子層に更に剛性を付与し、様々な湿度及び/又は温度条件下で湾曲及び形状変化に対する耐性を付与する。
【0033】
いくつかの実施形態では、無機繊維材料は、マトリックスの屈折率に整合する屈折率を有し、他の実施形態では、無機繊維はマトリックスの屈折率とは異なる屈折率を有する。E−ガラス、S−ガラス、BK7、SK10などのような高品質ガラスを含む、任意の透明なタイプのガラスが用いられてよい。一部のセラミックはまた、適切に整合する屈折率を有するマトリックスポリマー中にそれらが埋め込まれた場合に透明に見えるように、十分に小さい結晶寸法をも有する。ミネソタ州セントポールの3M社から入手可能なネクステル(Nextel)(商標)セラミック繊維は、このタイプの材料の例であり、既に糸、織り糸、及び織布マットとして入手可能である。関心のあるガラスセラミックは、LiO−Al−SiO、CaO−Al−SiO、LiO−MgO−ZnO−Al−SiO、Al−SiO、及びZnO−Al−ZrO−SiO、LiO−Al−SiO、及びMgO−Al−SiOを含む組成を有するが、これらに限定されない。
【0034】
偏光子層は、多くの様々な方法でマトリックス内に配置された偏光繊維を含んでよい。例えば、繊維は、マトリックスの断面積に対して不規則に位置される場合がある。他には、より規則的な、断面配置がまた使用されてもよい。例えば、図2に概略的に示された例示の実施形態では、繊維204は、マトリックス202内に一次元配列で配置され、隣接する繊維204の間に規則的な空隙部を有する。この実施形態のいくつかの変形では、隣接する繊維204間の空隙部は、全ての繊維204について同じである必要はない。図示された実施形態では、単一層の繊維204は、素子200の2つの面206、208の間の中程に位置される。こうである必要はなく、繊維204の層は面206、208のいずれかに近く位置されてもよい。
【0035】
別の例示の実施形態では、図3Aに断面図で概略的に示されたように、偏光子フィルム300は、マトリックス302内に位置される2層の繊維304a、304bを含む。この実施形態では、上層の繊維304aは、下層の繊維304bと同じ中心間距離で互いに離間されている。また、上層中の繊維304aは、下層の繊維304bと重なって(in registration)(y方向に整列される)位置される。こうである必要はなく、中心間距離は異なっていてよく、及び/又は、y方向の位置合わせが異なっていてもよい。例えば、図3Bに概略的に示された偏光子310の実施形態では、上層の繊維314aの中心間距離は、下層の繊維314bと同じである。しかしながら、繊維304aは、繊維304bからy方向に片寄っている。この実施形態で見込まれる利点の1つは、繊維314aの上層が下層の繊維314b間の空隙部を「埋める」ことができ、よって垂直に伝播している光線316が繊維304a又は304bと交差し、偏光させる機会が増加することである。
【0036】
更なる繊維層が使用されてよい。例えば、図3Cに概略的に示された偏光子フィルム320の実施形態では、マトリックス322は3層の繊維324a、324b及び324cを包含する。この特定の実施形態では、中層の繊維324bは、上層の繊維324a及び下層の繊維324cからy方向に片寄っている。また、この実施形態は、y方向の繊維間距離が、z方向の繊維間距離とは異なっていてよいことを示す。
【0037】
偏光繊維は、単一繊維として又は多くの他の配列でマトリックス内で組織化される場合がある。いくつかの例示の配置では、繊維は、織り糸、ポリマーマトリックス内の1方向に配置された(繊維又は織り糸の)トウ、織物、不織布、チョップト繊維(chopped fiber)、チョップト繊維マット(不規則的な又は規則的な形式による)、又はこれらの形式の組み合わせの形態で偏光子に含まれる場合がある。チョップト繊維マット又は不織布は、繊維の不規則的な配列を有するのではなく、不織布又はチョップト繊維マット内に繊維の何らかの配列を提供するように、延伸されるか、圧力をかけられるか、又は配向されてよい。マトリックス内に偏光繊維の配列を有する偏光子の形成は、米国特許出願第2006/0193577号により完全に記載されている。
【0038】
繊維は、1つ以上の繊維織物の形態でマトリックス内に含まれてよい。織物400が図4に概略的に示される。偏光繊維は、縦糸402の一部及び/又は横糸404の一部を形成し得る。無機繊維が織物中に含まれてよく、縦糸402及び/又は横糸404の一部が形成されてもよい。更に、縦糸402又は横糸404の繊維の一部は、等方性ポリマー繊維であってよい。図4に示された織物400の実施形態は、5ハーネス(five-harness)の繻子織物(satin weave)であるが、異なるタイプの織物、例えば他のタイプの繻子織物、平織物などが用いられてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つ以上の織物がマトリックス内に含まれる場合がある。例えば、偏光子フィルムは、偏光繊維を含有する1つ以上の織物と、無機繊維のみを含有する1つ以上の織物とを含む場合がある。他の実施形態では、異なる織物が偏光繊維と無機繊維の両方を含む場合がある。3層の繊維を有する偏光子320は、例えば、3層の繊維の織布層で形成されてよい。
【0040】
偏光子はまた、例えば米国特許出願第2006/0193577号により詳細に論じられているように、一方又は両方の表面上に構造を備えられていてもよい。そのような表面としては、例えば、輝度強化表面、レンズ化表面、拡散表面などを挙げてよい。また、偏光繊維及び/又は他の繊維の密度は、偏光子の体積全体に渡って均一である必要はないが、変化してよい。図では、いくつかの繊維が用いられて、反射又は透過のいずれかにおいて拡散をもたらし、例えば偏光子に対する照度の不均一性を低減することがある。これを行い、偏光子の背後に位置される光源を隠すことができ得て、繊維の密度は、光源より上方で増加し、光源から離れると減少する。
【0041】
1つの例示の実施形態では、繊維に用いられる複屈折性材料は、配向時屈折率が変化するタイプのものである。したがって、繊維が配向されるとき、屈折率の整合又は不整合は、配向方向に沿ってもたらされる場合があり、非配向方向に沿ってもたらされる場合もある。配向パラメーター及び他の処理条件を注意深く操作することにより、複屈折性材料の正又は負の複屈折が用いられて、所与の軸に沿った光の偏光の一方又は両方の反射又は透過を誘導することができる。透過及び拡散反射の間の相対比は、繊維中の複屈折境界面の濃度、繊維の寸法、複屈折境界面における屈折率の差の二乗、複屈折境界面の寸法及び形状、並びに入射光の波長又は波長範囲などであるが、これらに限定されない多くの要因に依存する。
【0042】
特定の軸に沿った屈折率の整合又は不整合の大きさは、その軸に沿って偏光された光の錯乱の程度に影響を与える。一般に、散乱能は、屈折率不整合の二乗につれて変化する。したがって、特定の軸に沿った屈折率の不整合が大きくなるにつれて、その軸に沿って偏光された光の散乱が強くなる。逆に、特定の軸に沿った不整合が小さいとき、その軸に沿って偏光された光が散乱される程度は低く、本体の体積を通る透過は次第に正反射性になる。
【0043】
非複屈折性材料の屈折率がいくつかの軸に沿った複屈折性材料の屈折率と整合する場合、この軸に平行な電界で偏光された入射光は、複屈折性材料のいくつかの寸法、形状及び密度にかかわらず、散乱していない繊維を通過する。更に、その軸に沿った屈折率もまた偏光子本体のポリマーマトリックスの屈折率に整合する場合、光は実質的に散乱していない本体を通過する。2つの屈折率の間の実質的な整合は、屈折率の差が最大0.05未満、好ましくは0.03、0.02又は0.01であるときに生じる。
【0044】
反射及び/又は散乱の強度は、少なくともいくつかにおいて、約λ/30より大きな寸法を有する所与の断面積を有する散乱体の屈折率不整合の大きさにより決定され、ここでλは偏光子中の入射光の波長である。不整合境界面の正確な寸法、形状及び整列は、どの程度の光が境界面から種々の方向に散乱又は反射されるかを決定する役割を果たす。
【0045】
偏光子内で使用する前に、繊維を、複屈折性材料と非複屈折性材料との間の屈折率の差が、第1の軸に沿って比較的大きく、他の2つの直交する軸に沿って小さいように延伸し、交差する延伸面内方向でいくらかの寸法に弛緩させることにより処理されてよい。これは、異なる偏光の電磁放射線に対して、大きな光学異方性を生じさせる。
【0046】
前方散乱の後方散乱に対する比は、複屈折性材料と非複屈折性材料との間の屈折率の差、複屈折境界面の濃度、複屈折境界面の寸法及び形状、並びに繊維の全体厚さに依存する。一般に、楕円形のディフューザーは、複屈折性材料と非複屈折性材料との間の屈折率の差が比較的小さい。
【0047】
本発明にしたがって繊維で用いるために選択された材料及びこれらの材料の配向の程度は、好ましくは、最終繊維中の複屈折性材料及び非複屈折性材料が、少なくとも1本の軸を有し、そのために関連する屈折率が実質的に等しいように選択される。典型的には配向方向を横断する軸であるが、必ずしもそうである必要はない軸に関連する屈折率の整合により、偏光の平面内で実質的に光は反射しない。
【0048】
内部複屈折境界面を有し、本発明のいくつかの実施形態における使用に好適な偏光繊維の1つの例示の実施形態は、多層偏光繊維である。多層繊維は、異なるポリマー材料の複数の層を包含し、そのうち1つが複屈折性である繊維である。いくつかの例示の実施形態では、多層繊維は第1の材料と第2の材料が交互に重なった一連の層を包含し、材料の少なくとも1つは複屈折性である。いくつかの実施形態では、第1の材料は、第2の材料と大体同じ1本の軸に沿った屈折率と、第2の材料とは異なる直交する軸に沿った屈折率とを有する。追加材料の層もまた、多層繊維で用いられる。
【0049】
1つのタイプの多層繊維は、同心多層繊維と呼ばれる。同心多層繊維では、層は繊維の中心コアを完全に取り囲むように形成され得る。同心多層偏光繊維500の1つの例示の実施形態の断面が、図5Aに断面図で概略的に示される。繊維500は、第1の材料502と第2の材料504とが交互に重なった層を包含する。第1の材料は複屈折性であり、第2の材料は複屈折性又は等方性のいずれであってもよく、その結果隣接する層の間の境界面506は複屈折性である。
【0050】
繊維500は、クラッド(cladding)層508に取り囲まれていてよい。クラッド層508は、第1の材料、第2の材料、繊維が埋め込まれたポリマーマトリックス材料、又はいくつかの他の材料で作製されてよい。クラッドは、装置全体の機能性に対して機能的に寄与する場合があるか、又はクラッドは機能しない場合もある。クラッドは、例えば繊維及びマトリックスの境界面で光の偏光解消(depolarization)を最小限に抑えることにより、反射偏光子の光学を機能的に改善する場合がある。所望により、クラッドは、例えば繊維と連続相材料との間の所望の水準の接着を提供することにより、偏光子を機械的に強化し得る。いくつかの実施形態では、クラッド508が用いられて、例えば繊維500と周囲のポリマーマトリックスとの間にある程度の屈折率整合をもたらすことにより、反射防止機能を提供する場合がある。
【0051】
繊維500は、繊維500の所望の光学特性に応じて、異なる数の層で、様々な寸法で形成されてよい。例えば、繊維500は、厚さの関連する範囲を有する、約10層から数百層までで形成される場合がある。繊維の幅の値は、5μm〜約5000μmの範囲に入る場合もあるが、繊維の幅はまた、この範囲の外に入る場合もある。いくつかの実施形態では、層502、504は、特定の波長又は波長範囲の4分の1波長(quarter-wave)の厚さである厚さを有し得るが、これは本発明の必要条件ではない。4分の1波長層の配置は、可干渉性散乱及び/又は反射を提供し、よって大きな反射/散乱効果は、散乱/反射が非干渉性である場合より少ない層で得られることができる。これは、所望の水準の偏光を得るために、偏光子の効率を増大させ、必要な材料の量を減少させる。層は、厚さtが、屈折率で除された波長の4分の1に等しいとき、4分の1波長の厚さを有すると言われ、よってt=λ/(4n)(式中、nは屈折率であり、λは波長である)である。
【0052】
同心多層繊維500は、多層材料を多層繊維に共押出しし、続いて複屈折性材料を配向させ、複屈折境界面をもたらすように延伸することにより、作製され得る。複屈折性材料として使用され得る好適なポリマー材料のいくつかの例としては、上述のように、PET、PEN及びこれらの種々のコポリマーが挙げられる。非複屈折性材料として使用され得る好適なポリマー材料のいくつかの例としては、上述のような光学的等方性材料が挙げられる。一般に、多層繊維は、繊維で用いられるポリマー材料が互いに湿潤しており、適合する処理温度を有するとき、より容易に作製されることが見出されている。
【0053】
異なるタイプの断面を有する多層繊維がまた用いられてよい。例えば、同心繊維は円形である必要はなく、楕円形、矩形などのようないくつかの他の形状を有してもよい。例えば、図5Bに断面図で概略的に示された多層繊維510の別の例示の実施形態は、第1の材料512と第2の材料514とが交互に重なった同心層で形成されてよく、ここで第1の材料512は複屈折性であり、第2の材料514は等方性又は複屈折性のいずれかであってよい。この例示の実施形態では、繊維510は、交互に重なった層512と514との間に、繊維520の長さに沿って延在する同心複屈折境界面516を含む。この実施形態では、繊維510は非円形対称であり、1方向に沿って細長い。図の座標系を用ると、繊維の断面はy方向に細長く、それ故y方向の寸法dは、z方向の寸法dより大きい。
【0054】
同心多層繊維のいくつかの実施形態では、複数の層は、中心繊維コアの周囲に提供される場合がある。これは図5Cに概略的に示され、コア526の周囲に交互に重なる層522と524とを有する繊維520を示す。コア526は、層522、524のいずれかと同じ材料で形成されてよく、又は異なる材料で形成されてもよい。例えば、コア526は、異なるポリマー材料又はガラスのような無機材料で形成されてよい。
【0055】
多層偏光繊維の別の例示の実施形態は、米国特許出願第11/278,348号(2006年3月31日出願)により詳細に記載されている、らせん状に巻かれた繊維である。らせん状に巻かれた繊維の例示の実施形態が、図5Dに概略的に示される。この実施形態では、繊維530は、らせんを形成するためにそれ自体の周りに巻かれた2層のシート532のように形成される。2層のシートは、複屈折性である第1のポリマー材料及び等方性又は複屈折性であり得る第2の材料を含有する。複屈折性ポリマー材料は、繊維が形成される前又は後に配向されてよい。隣接する層の間の境界面534は、複屈折性材料と別の材料との間の境界面であり、よって複屈折境界面であると考えられる。らせん状に巻かれた繊維は、ここでは同心多層繊維であると考えられる。らせん状に巻かれた繊維は、いくつかの異なる方法で製造され得る。例えば、らせん状に巻かれた繊維は、2層以上含有するシートを押出成形する又は圧延する(rolling)ことにより形成されてよい。これらの方法は、米国特許出願第11/278,348号により詳細に論じられている。
【0056】
別のタイプの多層繊維は、積層多層繊維であり、ここで層は積み重ね体を形成される。積層多層繊維540の1つの例示の実施形態の断面が、図5Eに概略的に示される。この実施形態では、第1のポリマー材料の層542は、第2のポリマー材料の層544の間に配置される。繊維540は、任意の被覆層546を含んでよい。この実施形態では、層542、544は平面である。繊維層542、544は平面である必要はなく、いくつかの他の形状をとる場合がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、多層繊維中の層は全て同じ厚さを有してよい。他の実施形態では、多層繊維中の層は全てが同じ厚さではない。例えば、偏光子が約400nm〜700nmの可視光線範囲全体に渡って光の偏光に有効であることが望ましい場合がある。それ故、偏光子は、異なる繊維を備えられていてよく、ここで各繊維は均一な厚さの層を有するが、いくつかの繊維は他より厚い層を有し、その結果異なる繊維は他よりむしろ一部の波長の偏光により有効である。広い帯域幅に有効性をもたらすための別の方法は、厚さが範囲とともに変化する層を有する繊維を提供することである。例えば、多層繊維は、多くの層を備えられていてよく、ここで層厚さは繊維内の位置によって変化する。そのような繊維550の1つの例示の実施形態が、図5Fに断面図で概略的に示される。この実施形態では、層厚さtは、繊維の底部からの距離sとともに減少する。したがって、層554より繊維550の底側から離れている層552は、層554より薄い。
【0058】
異なる厚さの層を有する繊維560の別の例示の実施形態が、図5Gに断面図で概略的に示される。この実施形態では、繊維560の中心に近い層562は、中心からより離れた層544の厚さより厚い厚さtを有する。換言すれば、この特定の実施形態では、層厚さtは層の半径rとともに減少する。
【0059】
多層繊維570の別の実施形態の断面図が、図5Hに概略的に示される。この実施形態では、繊維570のコア576により近い層572は、繊維570の中心からより離れた層574の厚さより薄い厚さtを有する。換言すれば、この特定の実施形態では、層厚さtは層の半径rとともに増加する。
【0060】
繊維の層厚さは、様々な方法で変化させ得る。例えば、層厚さは、一定の勾配で、繊維の内から外へ次第に増加又は減少する場合がある。他の実施形態では、繊維は、例えば第1群の層は第1の厚さを有し、第2群の層は第1の厚さとは異なる第2の厚さを有するなどの、繊維群を備えられていてよい。多くの異なる層厚さ特性について、ここで図6A〜6Hを参照して記載する。これらの図は、光学的厚さotの関数として、繊維の起点からの距離dの関数としての例示の層厚さ特性を示す。繊維の起点は、そこから層への距離が測定される位置である。積層多層繊維の場合、起点は、距離dが単純に積み重ね体を通した距離であるように、積み重ね体の片側とされる。同心繊維の場合、起点は繊維の中心とされる。同心繊維の断面が円形であるとき、距離dは半径に等しい。層の物理的厚さと屈折率との積である光学的厚さは、多層繊維がある偏光状態の反射効率を最大化するために4分の1波長の層を備えられている場合があるため、これらの異なる実施形態のいくつかを説明するのに有用である。したがって、層の光学的厚さは、繊維の反射特性を理解するのに有用なパラメーターである。ここに示された層厚さ特性は、繊維全体又は繊維のいくつかの層特性を表す場合がある。
【0061】
図6A及び6Bでは、層の光学的厚さはそれぞれ、繊維の起点からの距離とともに直線的に増加及び減少する。図6C及び6Dでは、層の光学的厚さはそれぞれ、繊維の起点からの距離とともに非直線的に増加及び減少する。形状の非直線性は、繊維の所望の設計パラメーターによって、示されたものとは異なってよい。
【0062】
図6Eでは、層の光学的厚さは、繊維の起点と繊維縁部との間の中間領域のどこかで最小になる。したがって、この実施形態では、例えば繊維の起点からの第1の距離に関連する第1のポリマー材料の層は、i)第1の距離より小さな繊維の起点からの第2の距離を有する第1のポリマー材料の第2の層の光学的厚さより小さな光学的厚さを有し、ii)第1の距離より大きな繊維の起点からの第3の距離を有する第1のポリマー材料の第3の層の光学的厚さより小さな光学的厚さを有する。
【0063】
図6Fでは、層の光学的厚さは、繊維の起点と繊維縁部との間の中間領域のどこかで最大になる。したがって、この実施形態では、繊維の起点からの第1の距離に関連する第1のポリマー材料の層は、i)第1の距離より小さな繊維の起点からの第2の距離を有する第1のポリマー材料の第2の層の光学的厚さより大きな光学的厚さを有し、ii)第1の距離より大きな繊維の起点からの第3の距離を有する第1のポリマー材料の第3の層の光学的厚さより大きな光学的厚さを有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、層はパケット(packet)内に形成されてよく、ここで同じ光学的厚さの多数の層は一緒にグループ化される。異なるパケットは、異なる光学的厚さに関連する場合がある。多数の層パケットを有する繊維の例が図6Gの特性に示され、ここでパケットは、パケット位置が繊維の起点から外側に移動するにつれて増加する光学的厚さの層に関連する。別の例が図6Hに示され、ここでは、繊維の起点から分離されたパケット増加に対して、パケットは交互に、より大きな光学的厚さの層とより小さな光学的厚さの層に関連する。本明細書で記載された様々な層厚さ特性は代表的なものであり、網羅的であるとは考えられない。多くの他の異なる層厚さ特性が可能である。
【0065】
多層偏光繊維の縁部における光の入射について、偏光子フィルム700のマトリックス702に埋め込まれた単一同心多層偏光繊維704を概略的に示す図7Aを参照して論じられる。本議論では、偏光子700に垂直入射する光のみについて考える。本明細書で論じられる概念は他の角度で偏光子に入射する光に拡大され得ることが理解されよう。光線706は、繊維704の層に垂直入射するように、繊維704の中心に向けられる。したがって、1つの偏光状態にある光708は、第1の反射スペクトルで繊維704から反射され、残りの光は透過された偏光状態にある。しかしながら、光線710、繊維704の層への入射角が垂直ではない繊維704への入射は、反射光708の第1の反射スペクトルとは異なるスペクトルで繊維704から反射する光712を生じさせる。多層構造の反射スペクトルは、典型的には、多層構造の入射角が増加するとき、青色に偏移する。したがって、反射した光712のスペクトルは、反射光708のスペクトルに対して偏移した青色である。これは、偏光子により透過及び反射された光のスペクトルに不均一性をもたらす場合がある。例えば、多層繊維が400nm〜700nmの可視領域に渡って反射する層を有する場合、例えば垂直入射光などの、高角度で入射する赤色光は、反射スペクトルの青色偏移のために、青色光より小さな角度に影響される場合がある。
【0066】
種々の方法が用いられて、青色偏移の影響を低下させてよい。例えば、1つの方法では、多層繊維は、偏光子に入射する光の範囲より長い波長を有する光の4分の1波長の層を備えられていてよい。偏光子が表示システムで用いられる場合、関心のある光の波長範囲は典型的には約400nm〜700nmである。したがって、多層繊維704は、例えば900nm以下又はそれを超える近赤外線範囲の波長で、700nmより長い波長の4分の1波長の層である層を備えられていてよい。光が例えば200nm未満スペクトルを偏移させる角度で入射する場合、繊維は高入射角でさえ赤色光の偏光に依然として有効であり得る。
【0067】
青色偏移の影響を低下させる別の方法は、繊維への入射角を減少させることである。これは、例えば、マトリックス722の屈折率n1を、図7Bの偏光子720で概略的に示されたように、異なる繊維層724の材料の屈折率より低い値に減少させることにより実現され得る。マトリックス722の比較的屈折率の低い材料から、繊維724の比較的屈折率の高い材料へ通過するとき、入射光26は繊維層に対して垂直に屈折され、よって繊維の多層構造内で光が伝播する角度が減少される。光線728は、繊維724を透過した光の方向を示し、光線730は繊維724により反射された光を示す。マトリックス722で用いられ得る低屈折率ポリマーの例としては、PMMA(屈折率約1.49)、THV、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手可能なフッ素化ポリマー(屈折率約1.34)、低分子量二官能性ウレタンアクリレート(典型的には、屈折率約1.47〜1.5)、及び約1.41の屈折率を有し得るいくつかのシリコーンが挙げられる。
【0068】
青色偏移の影響を低下させる別の方法は、低屈折率の被膜を有する繊維を提供することである。この方法は図8に概略的に示され、ここではマトリックス802内に埋め込まれた多層繊維804を有する偏光子800を示す。各繊維804は、マトリックス802及び繊維804で用いられている材料の屈折率より小さな、比較的低い屈折率を有する被膜806を備えられている。被膜806は、前の章に列挙された低屈折率材料のうち1つから形成されてよい。この実施形態では、光808は、繊維804の縁部領域に伝播するような方向で、偏光子800に入射する。低屈折率の被膜806のない場合、光808は非垂直な入射角で縁部に近い繊維804と交差する。しかしながら、光808は低屈折率の被膜806とマトリックス802との間の境界面に入射する。i)マトリックス802と被膜806との間の屈折率の差、及びii)入射角が十分に大きい場合、光808は完全に内部で反射されることがある。図示された実施形態では、完全に内部で反射された光は、隣接する繊維804に向けられ、ここで光は2度目に完全に内部で反射される。全ての内部反射の角度及び他の繊維の位置に応じて、完全に内部で反射された光が、他の繊維で反射される場合がある、又は他の繊維を透過される場合がある。
【0069】
青色偏移の影響を低下させる別の方法は、層厚さの勾配に対して適切な方向を設定することである。この方法について、図9〜11を参照して更に記載される。全波数値モデルが開発され、同心多層偏光繊維により光の散乱(反射)を調査した。モデルが、図9に示される。繊維900は、10μmのコアを有すると仮定され、別の材料の50個の4分の1波長の層と織り合わされた、1つの材料の50個の4分の1波長の層で形成された。波長の4分の1波長の層として直線的に並べられた材料層の光学的厚さは、500nm〜600nmの範囲である。光は、図示された方向に入射し、反射率及び透過率に対する散乱断面積が、300nm〜800nmの波長範囲に渡って、繊維の幅全体について算出された。散乱断面積は、両方の偏光状態、通過偏光(pass polarization)及び遮蔽偏光(block polarization)状態の光について算出された。図10A及び10Bは、コアに近いより厚い層と繊維の外側に近いより薄い層とに配置された層を有する繊維について算出された結果を示す。曲線1002は、通過状態の繊維で偏光された光の透過率を表す。繊維の透過率は、全体のスペクトルに渡って比較的に均一である。曲線1004は、遮蔽状態の繊維で偏光された光の、繊維の透過率を表す。曲線は、繊維の透過率が約400nm未満及び約650nm超の波長で比較的高く、約400nm〜650nmの波長で著しく減少することを示す。この挙動は、多層積み重ね体が500〜600nmの波長の4分の1波長の積み重ね体であり、繊維の有効性がこの範囲外では比較的乏しいことから、予測されたものである。
【0070】
図10Bの曲線1012は、繊維の通過状態で偏光された光の反射を表す。反射は、図10Aに示された所与の高い透過率が予測されたように、スペクトル全体に渡って低い。曲線1014は、繊維の遮蔽状態で偏光された光に対する、繊維による反射を示す。曲線は実質的に曲線1004と補完的である。これらのグラフから分かるように、層厚さが500nm〜600nmで4分の1波長から均一に変化したとしても、反射率は500nmをわずかに下回る波長でピークに達し、反射率は500nm〜600nmで単調減少する。これは、非垂直角で繊維に入射する光の反射率スペクトルの青色偏移の結果である。
【0071】
繊維の挙動は、層厚さの勾配が逆であるとき、より薄い層が繊維コアに近いとき、及びより厚い層が繊維の外側に近いとき異なる。図11Aの曲線1102は、繊維の通過状態で偏光された光の透過率を示し、一方曲線1104は繊維の遮蔽状態で偏光された光に対する繊維の透過率を表す。図11Bの曲線1112は、繊維の通過状態で偏光された光の反射を表す。曲線1114は、繊維の遮蔽状態で偏光された光に対する繊維による反射を表す。曲線1114は、実質的に曲線1104と補完的である。繊維コアに向かってより薄い層を有する繊維の反射率は、500〜600nmの範囲に渡って有意に均一であり、繊維コアに向かって層がより厚くなるとき、偏光子の偏光特性が改善される。この改善は、入射角の反射スペクトルに対するより適切な整合から生じると考えられる。繊維縁部の層は、反射帯域の目的とする設計波長(intended design wavelength)についてより適切に集中した高角度反射スペクトルを有し、一方繊維コアの層は、目的とする設計波長について同様により適切に集合した垂直反射スペクトルを有する。
【0072】
繊維に垂直に偏光された前方散乱光の、繊維に平行に偏光された前方散乱光に対する比は、透過率偏光関数(Transmission Polarization Function)(TPF)と呼ばれる。繊維に平行に偏光された後方散乱光の、繊維に垂直に偏光された後方散乱光に対する比は、反射偏光関数(Reflection Polarization Function)(RPF)と呼ばれる。図12Aは、繊維層の厚さが半径の増加とともに減少する場合の、波長の関数としてのTPF(曲線1202)とRPF(曲線1204)の値を示す。図12Bは、繊維層の厚さが半径の増加とともに増加する場合の、波長の関数としてのTPF(曲線1212)とRPF(曲線1214)の値を示す。RPF曲線1202は、500nm〜600nmで図10Bの反射スペクトルと同じ傾斜挙動(sloped behavior)を示し、一方RPF曲線1212は同じ範囲に渡って図11Bの反射スペクトルと同じ実質的に均一な挙動を示す。したがって、段階層(graded layer)の厚さを有する多層繊維の偏光特性は、層厚さが半径とともに増加するとき、より均一である。
【0073】
偏光子の特性における青色偏移の影響を低下させる別の方法は、入射光への断面積が小さな繊維を使用することであり、そこで繊維は高入射角であり、繊維が低入射角である場合より大きな断面積を示す。これを実現する方法の1つは、例えば図5B及び5Cに示されたような、他の方向に比べて1方向に細長い断面を有する繊維を使用することである。そのような偏光子1300の例が、図13に概略的に示される。繊維1304は、マトリックス1302内に埋め込まれている。繊維1304は、偏光子1300の表面に平行な方向に細長い。この構成は、例えば円形断面を有する繊維より、低い入射角での入射光に対してより大きな繊維断面積を示す。
【実施例】
【0074】
実施例−単一繊維
以下のプロセスを使用して、多層同心偏光繊維を作製した。それぞれ厚さ125μm(0.005”)である952個のシム(shim)からなるダイを用いることにより、Xポリマー及びYポリマーの多層交互同心環からなる長繊維を製造した。2つのシムを用いて環を作製するため、この952個のシムダイを476個の環からなる長繊維を製造するよう設計した。これらの環の半分をXポリマーから、もう半分をYポリマーから作製した。このダイは2つの入口ポートを有し、一方は溶融Xポリマー用、もう一方は溶融Yポリマー用であった。
【0075】
XポリマーはLMPEN、すなわち3M社から入手可能な90%PEN/10%PETから作製されたコポリマーであった。Yポリマーは、以下の実質的に等方性である材料のうち1つであった。
【0076】
i)イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Company)(テネシー州キングスポート(Kingspor)製イースター(Eastar)6763 PETG
ii)イーストマン・ケミカル社製SA115 PC/PCT−Gブレンド
iii)G.E.プラスチックス(G.E. Plastics)(マサチューセッツ州ピッツフィールド(Pittsfield)製キレックス(Xylex)7200 PC/PCCT−Gブレンド
iv)ノバ・ケミカルズ社(Nova Chemicals Corporation)(カナダ、アルバータ州カルガリー)製NAS 30 PS/PMMAブレンド
形成される層の数を、ダイのシムの数を変化させること並びに流速及び温度のようなプロセス条件を変化させることにより制御することができる。積み重ね体中のシムの設計を変化させて、繊維環の厚さ特性を調節することができる。紡糸口金パック中のシムをレーザー切断を使用して形成した。特定の形成及び延伸プロセス後、広域帯可視ブラッグ干渉反射(broadband visible Bragg interference reflection)が生じる層厚さ勾配及び層厚さ比を提供するために、繊維ダイを特別に設計した。
【0077】
2つのポリマーの固化ペレットを2つの2軸押出機のうち1つに別々に送った。これらの押出機を、260℃〜300℃の範囲の温度及び40〜70rpmの範囲の送り速度で操作した。典型的な押出成形圧は、約2.1×10Pa〜約2.1×10Paの範囲であった。各押出機は、正確な量の溶融ポリマーを長繊維スピニングダイに供給する計量ギアポンプ(metering gear pump)を備えていた。各計量ギアポンプの寸法は0.16cc/revであり、これらのギアポンプを一般に10〜80rpmの範囲の同一速度で操作した。溶融ポリマーを、加熱したステンレススチールネックチューブを使用して計量ポンプからダイに移動させた。
【0078】
溶融ポリマー流はダイに入り、シムを通じて流れた。第1のシム対が長繊維のコアを作製し、第2のシム対がコアの周囲の第1の環を形成し、第3のシム対が第1の環の外側に第2の環を形成するなど、476個の環を形成するまで続く。次いで、この溶融多環長繊維をダイから出させて、水のタンク中で急冷した。プルロール(pull roll)を用いて長繊維を水に引き込んだ。長繊維をプルロールから出させて、均等巻機を使用してコアに巻き付けた。計量ポンプ速度と巻き付け速度との組み合わせで長繊維の直径を制御する。このプロセスの典型的な速度は、約0.5ms−1〜4ms−1の範囲であった。
【0079】
押出成形後、多層繊維を延伸し、配向して、複屈折性及び反射偏光特性を生じさせ、層厚さを適切な寸法に減少させる(およそ可視光線の4分の1波長光学的厚さ)。
【0080】
この工程では、長繊維の巻きを解いて、プルロール所(station)、次いで加熱された片持ち圧盤、別のプルロール所、最終的に巻き取り機に送った。圧盤温度は一般に120℃〜182℃の範囲であった。第2のプルロール所は一般に、約6〜8回第1のプルロール所の速度で稼働し、それを圧盤上で加熱するにつれて長繊維が延伸した。第1のプルロール所の典型的な速度は約0.2ms−1であり、一方第2のプルロール所は1.2ms−1〜1.6ms−1の範囲であった。巻き取り機は第2のプルロール所と同じ速度で稼働した。
【0081】
記載したばかりの技術を使用して製造した繊維の部分断面図を図14に示す。繊維は、広帯域偏光可干渉性反射を生じる所望の層厚さ特性及び勾配を有する約400層の交互に重なる材料を有していた。この繊維はポリマーYとしてキレックスを用いた。非常に良好な狭範囲秩序(short-range order)及び均一性は、可干渉性反射の実現において重要であり、これは繊維材料で光の相互作用長を低減し、光吸収の機会を最小限に抑え、それにより効率を最大化する。
【0082】
単一引き出し繊維(single drawn fibe)の偏光選択性を測定するための技術を開発した。繊維に平行に偏光された光及び繊維に垂直に偏光された光について、レーザーからの前方及び後方散乱光(光軸から7度錐未満)を測定した。多層偏光繊維のTPF及びRPFの値を、それぞれ543.5nmで2.3及び5.6であると測定した。等方性繊維のRPF及びTPFは1〜2である。これは、単一繊維からの偏光選択性反射及び散乱を明白に示す。
【0083】
実施例−裸繊維(Naked Fiber)配列
上記方法を使用して作製した裸繊維の配列を、広波長帯域に渡って分析し、引き出し繊維の光学特性を特徴付けた。空気中に吊るされた繊維配列を、実質的に全ての透過又は反射光を捕捉するために積分球(integrating sphere)を用いて、パーキンエルマー(PerkinElmer)UV−ビス分光計で広帯域偏光透過及び反射について分析した。一連の繊維から得た結果を図15及び16に示す。これらの図は、引き出し繊維の偏光選択性反射を示すだけでなく、繊維の層厚さを変化させることにより遮蔽状態偏光の反射帯域を偏移させる能力をも示す。増加する繊維層厚さと増加する反射波長との間の一致(通過軸偏光の比較的不変である反射と組み合わせた)は、多層繊維構造からの可干渉性干渉に基づく反射を明示する。
【0084】
更に、これらの結果は、反射偏光子を作製するために、未封入の状態でさえ繊維を使用することができることを示す。したがって、繊維の配列又は布地は、封入樹脂マトリックスを用いることなく反射偏光物品を作製し得る。これらの繊維布又は配列は、場合によっては、繊維表面でブルースター角(Brewster’s angle)効果のために通過状態で高透過である、通過状態偏光における光をいくらか拡散させるという点においていくつかの利点を有し得る。繊維を封入しているかどうかにかかわらず、バスケット、絡み織り、綾織などのような種々の織物において横断方向に等方性繊維織布と組み合わせることができる。
【0085】
全ての繊維に対して非常に類似したプロセス条件を用いるが、繊維層厚さを変化させるために押出成形工程中巻き取り速度を変化させて、LMPEN及びPETG材料から引き出した繊維の配列に対する、図15は反射を示し、一方図16は透過を示す。各繊維は、均一な光学的厚さの多重の層を有していた。より厚い繊維は、より厚い層を有し、より長い波長への反射及び透過帯域の偏移に対応し、可干渉性干渉に基づく反射並びに偏光選択性を明らかに示す。通過状態のスペクトルは、全て実質的に不変であり、グラフから省略した。
【0086】
本発明は、上に記載した特定の実施例に限られるとみなされるべきではなく、添付の特許請求の範囲で明確に提示されているとおり、本発明のあらゆる態様を網羅していると理解されるべきである。種々の変更例、同等のプロセス、並びに本発明を適用することができる多数の構造は、本明細書を検討すれば、本発明に関連する当業者には容易にはっきりと理解されるであろう。特許請求の範囲は、そのような修正及び装置を網羅することを意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2のポリマー材料の層を含む第1の多層繊維と、
前記第1のポリマー材料の層は、前記第2のポリマー材料の層の間に配置され、前記
第1及び第2のポリマー材料の少なくとも1つは、複屈折性である、
前記第1の多層繊維を取り囲む第3のポリマー材料と、
前記第3のポリマーの層は、前記第1及び第2のポリマー材料のいずれかの屈折率よ
り低い屈折率を有する、
を含む光学体。
【請求項2】
前記第3のポリマー材料が、前記第1の多層ポリマー繊維を取り囲む低屈折率の被膜を構成する、請求項1に記載の光学体。
【請求項3】
前記第3のポリマー材料が、ポリマーマトリックスを構成し、そして前記ポリマーマトリックス内に埋め込まれた少なくとも第2及び第3の多層ポリマー繊維を更に含む、請求項1に記載の光学体。
【請求項4】
前記第1及び第2のポリマー材料の層が、積層配置されている、請求項1に記載の光学体。
【請求項5】
前記第1及び第2のポリマー材料の層が、同心配置されている、請求項1に記載の光学体。
【請求項6】
前記第1及び第2のポリマー材料の層の光学的厚さが、前記繊維に渡って変化する、請求項1に記載の光学体。
【請求項7】
前記層の光学的厚さが、前記繊維の起点からの勾配によって変化し、前記繊維の起点から離れた層が、繊維の起点により近い層よりも厚い光学的厚さを有する、請求項6に記載の光学体。
【請求項8】
前記第1及び第2のポリマー層の少なくともいくつかが、約400nm〜700nmの波長範囲の光の4分の1波長の厚さに対応する厚さを有する、請求項1に記載の光学体。
【請求項9】
前記ポリマー層の少なくともいくつかが、700nmより長い波長を有する光の4分の1波長の厚さに対応する厚さを有する、請求項8に記載の光学体。
【請求項10】
前記ポリマー繊維が、被膜層を含む、請求項1に記載の光学体。
【請求項11】
前記被膜層が、前記第1及び第2のポリマー材料のうちの1つの層を含む、請求項10に記載の光学体。
【請求項12】
前記被膜層が、前記第1及び第2のポリマー材料の屈折率より低い屈折率を有する前記第3のポリマー材料の層を含む、請求項10に記載の光学体。
【請求項13】
ポリマーマトリックスを更に含み、
前記第1の多層ポリマー繊維は、前記ポリマーマトリックス内に埋め込まれている、
そして、少なくともポリマーマトリックス内に埋め込まれた第2及び第3の多層ポリマー繊維を更に含む、請求項1に記載の光学体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−503022(P2010−503022A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526833(P2009−526833)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/076745
【国際公開番号】WO2008/027803
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】