説明

ポリマー

本発明は、新規な半導体ポリマー、その製造のためのプロセスおよび薄いフィルムの電子および光学デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)および光起電力デバイス、例えば太陽電池および光検出器中でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、半導体ポリマー、その合成、ならびに薄いフィルムの電子および光学デバイスにおけるその使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
半導体有機材料は、有機材料の構造によって選択することができるその加工性および広い範囲の光学的および電子的性質のために大きな関心を集めている。
【0003】
そのような材料の1つの応用は、特に、例えばAdv. Mater. 1998,10 (5), 365-377に記載されているように有機電界効果トランジスタとしてスイッチングデバイスにある。他の応用は、発光のための半導体有機材料を使用する光電気的デバイス(有機発光デバイスまたは「OLED」)にあるかまたは光電池または光検出器(「光起電力」デバイス)の活性成分としてある。これらのデバイスの基本的構造では、半導体有機層が、負電荷キャリア(電子)を有機層に注入または受容させるためのカソードと正電荷キャリア(ホール)を有機層に注入または受容させるためのアノードとの間に挟まれている。有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、電子およびホールがエレクトロルミネッセンス半導体材料の層に注入され、これらが結合して放射崩壊を起こす励起子を生み出す。ホールは、エレクトロルミネッセンス材料の最高被占軌道(HOMO)にアノードから注入される。電子は、エレクトロルミネッセンス材料の最低空軌道(LUMO)にカソードから注入される。WO 90/13148において、有機発光材料はポリマー、すなわちポリ(p-フェニレンビニレン)(「PPV」)である。当業者に知られた他の発光ポリマーは、ポリフルオレンおよびポリフェニレンを含む。US 4,539,507において、有機発光材料は、低分子材料として知られた分類、例えば(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(「Alq3」)である。ポリフルオレンおよびポリフェニレンといった発光ポリマーは、これらが溶液加工性を有するという点において利点がある。特に、溶液加工性のある発光ポリマーは、EP 0880303において記載されているようにインクジェット印刷してよく、特にフルカラー表示において高情報量表示を生み出す。
【0004】
効率的OLEDのための必須の条件は、OLEDのエレクトロルミネッセンス層へのホールおよび電子の効率的な注入である。従って、OLED分野における焦点は、エレクトロルミネッセンス材料と組み合わせて使用されるホールおよび/または電子輸送材料の開発である。効率的なホール輸送材料は、アノードの仕事関数とエレクトロルミネッセンス材料のHOMOレベルとの間に横たわるHOMOレベルを有する。さらに、典型的なOLEDの発光は、通常は最小のHOMO-LUMOバンドギャップを有する材料によって優勢的に提供されるので、電荷輸送材料からの発光が望ましくない場合、電荷輸送材料は、エレクトロルミネッセンス材料よりもより大きなHOMO-LUMOバンドギャップを有するべきである。
【0005】
OLED分野における他の焦点は、フルカラーOLED(すなわち、OLEDは赤、緑および青のエレクトロルミネッセンス材料を含む)の開発である。多くの青色の有機エレクトロルミネッセンス材料の欠点は、これらの発光が1931 CIE co-ordinatesによって定義された標準的な青色と比較したときに、不十分に大きなHOMO-LUMOバンドギャップのために、相対的に淡い青色であることである。
【0006】
WO 99/48160は、ホール輸送コポリマー「TFB」および「PFB」を開示する。
【化1】

【0007】
しかしながら、上記に同定されたコポリマーは欠点をもつ。特に、これらの材料のHOMOレベルは、ホール輸送性質に悪影響を与えるITOの仕事関数に対して理想的な適合性は示さない。WO 03/000773は、上述のコポリマーのジオクチルフルオレン単位が欠損している「TFB-PFB」のコポリマーを開示する。
【化2】

【0008】
フルオレンのような繰り返し単位が欠損しているこのタイプのポリマーは、特により高い分子量で不溶性になる。フルオレンのような繰り返し単位は、TFBおよびPFB単位を含むポリマーに組み込むことができるが、直接的に連結されたTFBおよびPFB単位の規則性を破壊してしまう。
【0009】
JP 09-151371は、式(A)のトリまたはテトラアミンホール注入材料を開示する。
【化3】

【0010】
R1-5は、H、メチル、メトキシ、フェニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ホルミル、NH2、二重結合基、およびエポキシ環から選択され;nは、1または2である。デバイスとして使用されるとき、この材料は、別のAlq3発光層をもつホール注入層として提供される。
【0011】
同じような化合物が、WO96/22273およびJP11-251068中に開示されている。これらの材料は、蒸着によって堆積される。
【0012】
このタイプの材料は、ポリアリールポリアミン、例えば式(B)のアクリレートポリマーを開示するWO97/33193のポリマーに組み込まれる。
【化4】

【0013】
この材料はホール輸送層を形成するために硬化されるが、この材料から誘導されたポリマーはアクリレート基の架橋のために不溶性であり、結果としてポリマーは、上記モノマーの層に堆積させかつこれを硬化させることによってのみ形成することができる。さらに、重合のためのアクリレート基の使用は、合成されたポリマーの位置規則性のあらゆる制御を提供しない。
【0014】
従って、本発明の目的は、HOMO-LUMOバンドギャップの狭小化によってポリマーの発光の色に不利な影響を与えることなく、ホール輸送性質を向上させる溶液加工性のあるポリマーを提供することである。
【発明の概要】
【0015】
本発明者は、驚くべきことに、半導体ポリマーの繰り返し単位の背骨の窒素原子数の増加が、合成されたポリマーのHOMOレベルを移動させ、空(vacuum)により近づけ、従って前記半導体ポリマーが使用される有機光電気的デバイスのアノード(例えばITO)の仕事関数により近づけることによって、そのホール輸送容量を向上させることを見出した。本発明者はまた、驚くべきことに、LUMOレベルの対応する変化が前記ポリマーにおいて観察され、ポリマーのHOMO-LUMOバンドギャップを保持し、あるいは少なくともバンドギャップの狭小化を最小化することを見出した。さらに、このような繰り返し単位のモノマーの重合可能な基の適切な選択は、先行技術のポリマーと比較したときにポリマーの位置規則性の十分な制御を可能にするヤマモトまたはスズキ重合といった技術によって、モノマーの重合化を可能にする。これらの重合技術は共に、金属錯体触媒の金属原子をモノマーのアリール基と脱離基との間に挿入する「金属挿入」を介して行う。ヤマモト重合の場合には、ニッケル錯体触媒を使用し、スズキ重合の場合には、パラジウム錯体触媒を使用する。
【0016】
これに応じて、第1の側面において本発明は、式(Im)のモノマーを提供する:
【化5】

【0017】
各Arは同一または異なり、かつ独立して任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;Ar1は、任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;各Rは、同一または異なり、かつ独立して置換基を表わし;各Pは、同一または異なり、かつ独立してニッケルまたはパラジウム錯体触媒を用いた金属挿入に関与することができる脱離基を表わし;およびnは少なくとも2である。
【0018】
n=2の場合において、Rは好ましくはナフチル基ではない。より好ましくはこの場合におけるRは、9〜40炭素原子を含む任意的に置換された縮合された芳香族またはヘテロ芳香族環系ではない。
【0019】
n=2の場合において、Rは好ましくは2または6位で置換されたフェニル基ではない。
【0020】
好ましくは、Rはアミノ基を含まない。
【0021】
好ましくは、各Pは、同一または異なり、かつハロゲン;ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン基;式-B-Hal3- M+またはDZ-B-Hal3の基(各Halは独立してハロゲンを表わし、Mは金属カチオンを表わし、かつDZはジアゾニウムを表わす);式の基(各Halは独立してハロゲンを表わし、かつMは金属カチオンを表わす) 式O-SiR73の基(各R7は独立して任意的に置換されたアルキルまたはアリールを表わす);または式-O-SO2-Zの基(Zは任意的に置換されたアルキルおよびアリールからなる基から選択される)から独立して選択される。
【0022】
好ましくは、各Pは同一または異なり、かつハロゲン;ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン基;または式-O-SO2-Zの基(Zは、任意的に置換されたアルキルおよびアリールからなる基から選択される)から独立して選択される。
【0023】
Pの好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素であり、より好ましくは臭素である。好ましくは、Halはフッ素である。好ましくは、M+はアルカリ金属、より好ましくはナトリウムまたはカリウムである。好ましくは、R7はアルキル、より好ましくはメチルである。
【0024】
本発明によるアリールまたはヘテロアリール基ArおよびAr1は、単環式の環系;1以上のN, OおよびS原子を含む5-または6-員環へテロ芳香族;融合芳香環系、例えばナフタレン、フルオレンおよびベンゾチアジアゾール;および共に融合されていない2以上の芳香環を含むアリール基を含む。アリール基、より好ましくはフェニルおよびビフェニルが好ましい。好ましくは各Arは任意的に置換されたフェニルである。好ましくは各Ar1は、任意的に置換されたフェニルまたはビフェニルである。
【0025】
好ましくはnは2または3である。
【0026】
好ましくは、各Rは、任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリール、より好ましくは式(III)の基である:
【化6】

【0027】
式中、Gは水素または置換基である。
【0028】
好ましくは、GはC1-20アルキル;C1-20アルコキシ;C1-20フルオロアルキル;C1-20パーフルオロアルキル;およびフルオレンから選択された置換基である。
【0029】
第2の側面において、本発明は、式(Im)のモノマーを重合する工程を含む、ポリマーを調製するためのプロセスを提供する。
【0030】
第2の側面の1つの好ましい実施形態において、各Pは、独立してハロゲン(好ましくは臭素)または式-O-SO2-Zの基であり、式(Im)のモノマーは、ニッケル錯体触媒の存在中において重合される。この実施形態によるモノマー(Im)は単独で重合されてもまたは第2のモノマーと重合されてもよい。
【0031】
第2の側面の第2の実施形態において、各Pは、独立してハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基であり;式(Im)のモノマーは、ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から独立して選択された少なくとも2つの反応性ボロン官能基をもつ第2のモノマーと重合し;および前記重合はパラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる。
【0032】
第2の側面の第3の実施形態において、各Pは、独立してボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン官能基であり;式(Im)のモノマーは、ハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基から独立して選択された少なくとも2つの置換基を有する第2のモノマーと重合し;および前記重合は、パラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる。
【0033】
第2の側面の第4の実施形態において、一方のPはハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基であり、他方のPはボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン官能基であり、重合はパラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる。この第4の実施形態によるモノマーは、単独で重合されてもまたは1以上のハロゲン基または式-O-SO2-Zの基および/または1以上のボロン誘導体官能基を含むコモノマーと重合してもよい。
【0034】
第3の側面において、本発明は、式(Ir)の第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位Ar2を含むコポリマーを提供する:
【化7】

【0035】
式中、各ArおよびAr1は、独立して任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;各Rは、独立して置換基を表わし;nは少なくとも2であり;およびAr2は、アリールまたはヘテロアリール基からなる背骨を有する任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし、かつこれが式(Ir)の第1の繰り返し単位のArに直接的に結合しかつ共役される。
【0036】
好ましくは、Ar2は、任意的に置換されたフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレンおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【0037】
第4の側面において、本発明は、第1のタイプの電荷キャリアの注入のための第1の電極、第2のタイプの電荷キャリアの注入のための第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された本発明の第2の側面によって得られうるポリマーを含む光学デバイスを提供する。
【0038】
第4の側面の1つの好ましい実施形態において、前記光学デバイスは、本発明の第2の側面によって得られうるポリマーを含むホール輸送層を含む。
【0039】
第4の側面の他の好ましい実施形態において、前記光学デバイスは、本発明の第2の側面によって得られうるポリマーを含むエレクトロルミネッセンス層を含む。
【0040】
第5の側面において、本発明は、以下の工程を含む、光学デバイスを形成するための方法を提供する:
−本発明の第3の側面によるポリマーを、第1のタイプの電荷キャリアの注入のための第1の電極を有する基板上に溶液から堆積する工程と、
−第2のタイプの荷電キャリアの注入のための第2の電極を前記ポリマー上に堆積する工程とを含む。
【0041】
本発明の第4および第5の側面の好ましい実施形態において、第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードである。
【0042】
OLEDまたは光起電力デバイスといった光学デバイスへの適用可能性に加えて、本発明によるポリマーは、スイッチングデバイス中に使用することができる。これに応じて、第6の側面において、本発明は、本発明の第3の側面によるポリマーを含むスイッチングデバイスを提供する。好ましい実施形態において、本発明のこの側面は、前記ポリマー上に順番に、ゲート電極;絶縁体;本発明の第3の側面によるポリマー;およびドレイン電極およびソース電極を含む電界効果トランジスタを提供する。第7の側面において、本発明は、本発明の第6の側面による電界効果トランジスタを含む集積回路を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0043】
本発明によるモノマーは、ポリマー発光デバイスにおける使用のための、溶液加工性のあるホール輸送および/または青色発光ポリマーを調製するために使用することができる。
【0044】
これらのモノマーの重合のための好ましい方法は、例えばWO 00/53656およびWO03/048225に記載されたようなスズキ重合、および例えばT. Yamamoto, "Electrically Conducting And Thermally Stable π-Conjugated Poly(arylen)s Prepared by Organometallic Processes", Progress in Polymer Science 1993,17, 1153-1205に記載されたようなヤマモト重合である。例えば、ヤマモト重合による直鎖ポリマーの合成において、2つの反応性ハライド基Pを有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合の方法では、少なくとも1つの反応基Pがボロン誘導体基である。
【0045】
スズキ重合の場合では、使用される2つのモノマーについての反応基Pの多数の組み合わせは当業者にとって明らかであろう。これらは、リガンドフリーパラジウム(例えば酢酸パラジウム)(Organic Letters, 2002, Vol 4, No 11, pp 1867-1870)を使用する、ボロン酸またはそのエステルとハライド、アルキルスルホネートまたはトリアルキルシロキシ基との組み合わせ;ボロン酸またはそのエステルとジアゾニウムテトラフルオロボレートとの組み合わせ(Tetrahedron Letters, 1997, Vol 38, No 25, pp4393-4396);ジアゾニウムテトラフルオロボレートと金属トリフルオロボレートとの組み合わせ(Tetrahedron Letters, 1997, Vol 38, No 25, pp4393-4396);および金属トリフルオロボレートとアリールハライドとの組み合わせを含む。
【0046】
スズキ重合は、Pd(0)錯体またはPd(II)塩を使用する。Pd(0)錯体が好ましい。特にPd(0)錯体は少なくとも1つのホスフィンリガンド、例えばPd(Ph3P)4を有する。スズキ重合は、塩基(例えばカルボン酸ナトリウム)または有機塩基(例えばカルボン酸テトラエチルアンモニウム)の存在中において行われる。
【0047】
ヤマモト重合は、Ni(0)錯体、例えばビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(0)を使用する。
【0048】
スズキ重合は、位置規則性、ブロックおよびランダムコポリマーを調製するために使用することができる。特に、ホモポリマーまたはランダムコポリマーは、一方の反応基Pがハロゲンであり、かつ他方の反応基Pがボロン誘導体基であるときに調製することができる。代わりに、ブロックまたは位置規則性、特にABコポリマーは、第1のモノマーの両反応基がボロン誘導体基であり、かつ第2のモノマーの両反応基がハライドであるときに調製することができる。
【0049】
本発明によるモノマーは、ホモポリマーを形成するために単独で重合されてもまたはコポリマーを形成するために1以上のコモノマーの存在中において重合されてもよい。このようなコモノマーから誘導された可能なコポリマー繰り返し単位(co-repeat units)について以下に概説する;これらのコポリマー繰り返し単位の各々が、ハロゲン(好ましくは塩素、臭素またはヨウ素、より好ましくは臭素)、ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から独立して選択された2つの重合可能な基を含むコモノマーから誘導され得ることが適切であろう。
【0050】
上述に記載されたハロゲンの代替物として、例えばトシレート、メシレートおよびトリフレートといった脱離基を使用することができる。
【0051】
モノマーが共重合体化される場合、終端ポリマー中のコポリマー繰り返し単位の1つの分類は、アリーレン繰り返し単位、特に:J. Appl. Phys. 1996, 79, 934に開示されている1,4-フェニレン繰り返し単位;EP 0842208に開示されているフルオレン繰り返し単位、例えばMacromolecules 2000, 33 (6), 2016-2020に開示されているインデノフルオレン繰り返し単位、および例えばEP 0707020に開示されているスピロビフルオレン繰り返し単位である。これらの繰り返し単位の各々が任意的に置換される。置換基の例は、C1-20アルキルまたはアルコキシといった可溶性基;フッ素、ニトロまたはシアノといった電子求引性基;およびバルキー基といったポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基、例えばtert-ブチルを含む。好ましいコポリマー繰り返し単位のさらなる分類は、繰り返し単位の背骨の中に1つまたは2つのアミノ基を含む繰り返し単位、特に以下の式1〜6の繰り返し単位である:
【化8】

【0052】
XおよびYは同一または異なっていてもよく、かつ置換基である。A、B、CおよびDは同一または異なっていてもよく、かつ置換基である。1以上のX、Y、A、B、CおよびDは、アルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールおよびアリールアルキル基からなる群から独立して選択されることが好ましい。1以上のX、Y、A、B、CおよびDはまた、水素とすることができる。1以上のX、Y、A、B、CおよびDは、独立してイソブチル基、n-アルキル、n-アルコキシまたはトリフルオロメチル基であることが好ましい。なぜなら、これらはHOMOレベルを選択するのを助けるのに適しており、および/またはポリマーの可溶性を向上させるのに適しているからである。
【0053】
このタイプの繰り返し単位中のトリフルオロメチル基の使用は、WO 01/66618中に開示されている。コポリマー繰り返し単位のさらなる分類は、ヘテロアリール繰り返し単位、例えば任意的に置換された2,5-チエニル、ピリジル、ジアジン、トリアジン、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、オキサゾールまたはオキサジアゾール;または任意的に置換された以下の式7〜19の単位を含む:
【化9】

【0054】

【0055】
式中、R5およびR6は同一または異なり、各々独立した置換基である。好ましくは、1以上のR5およびR6は、水素、アルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルから選択することができる。これらの基は、上記X、Y、A、B、CおよびDについて議論されたのと同じ理由で好ましい。好ましくは、実用的な理由のために、R5およびR6は同一である。
【0056】
OLED中に使用された時、本発明のモノマーから調製されたポリマーは、ホール輸送および発光性質の少なくとも1つを有する。さらに、コポリマー繰り返し単位の適切な選択は、これらのポリマーが電子輸送性質を有することを可能にする。ポリマーが1以上のこれらの性質を有する場合、異なる性質をブロックコポリマーの異なる部分(特に、WO 00/55927に記載されたポリマーの背骨の部分またはWO 02/26859に記載されたペンダント基)ごとに提供することができる。代わりに、本発明のポリマーが、ホール輸送、電子輸送および発光の1つまたは2つの性質のみ有している場合、WO 99/48160に記載されているように残りの必要な1つまたは複数の性質を有する1以上のさらなるポリマーと混合することができる。
【0057】
本発明により調製されたポリマーは、任意の上述の光学デバイス、特にエレクトロルミネッセンスデバイスおよび光起電力デバイス(すなわち、光検出器または光電池)中の活性材料として使用することができる。このような光学デバイスは、正電荷を帯びる電極と負電荷を帯びる電極との間に配置されたポリマーを有する基板を含む。これらのデバイスを形成することにおいて、特に、EP 0880303中に開示されたスピンコーティング、浸漬コーティング、インクジェットコーティングといった技術、EP 0851714に記載されたレーザートランスファー、フレキソグラフィックプリンティング、スクリーンプリンティングおよびドクターブレードコーティングを含む技術の範囲の任意の1つによって、ポリマーを溶液から堆積させることができる。
【0058】
光学デバイスは、湿気および酸素に敏感な傾向がある。これに応じて、基板は好ましくはデバイスへの湿気および酸素の移入の防止のための良好なバリア性質を有する。基板は、通常ガラスであるが、特にデバイスの柔軟性が望ましいところでは、代替の基板を使用することができる。例えば、基板は、代替のプラスチックおよびバリア層の基板を開示するUS6268695中のプラスチックまたはEP 0949850中に開示された薄いガラスおよびプラスチックの積層板を含みことができる。
【0059】
必須ではないけれども、アノード上の有機ホール注入材料の層の存在は、アノードから半導体ポリマーの単層または多層までのホールの注入を補助するので望ましい。有機ホール注入材料の例は、EP 0901176およびEP 0947123に開示されたPEDT/PSS、またはUS 5723873およびUS 5798170に開示されたポリアニリンを含む。
【0060】
カソードは、電子がデバイスに効率的に注入されるように選択される。従って、アルミニウムの層といった単一の導電性材料を含むことができる。代わりに、複数の金属、例えばWO 98/10621に開示されたカルシウムおよびアルミニウムの二層、または例えばWO 00/48258に開示された電子注入を補助するフッ化リチウムといった誘電体材料の薄層を含むことができる。
【0061】
デバイスは、好ましくは湿気および酸素の移入を妨げるための封入体で封入される。適切な封入体は、ガラスのシート、例えばWO 01/81649に開示された代替のポリマーおよび誘電体の積重ねといった適切なバリア性質を有するフィルム、または例えばWO 01/19142に開示された気密な容器を含む。
【0062】
実用的なオプトエレクトロニクデバイスにおいて、電極の少なくとも1つは、光を吸収できるように(光反応性デバイスの場合)、あるいは放射できるように(PLEDの場合)半透明である。アノードが透明である場合、それは典型的にはインジウムスズ酸化物を含む。透明なカソードの例は、例えばGB 2348316中に開示されている。本発明のポリマーが、スイッチングデバイス、例えば電界効果トランジスタ中で使用される場合、全ての電極を不透明にしてもよいことが理解されるであろう。
【0063】
PLEDは、パッシブマトリックスまたはアクティブマトリックスデバイスとすることができる。
【0064】

1)モノマーの例(I)
式(I)のモノマーは、以下に挙げた2つの方法のうちいずれか1つによって形成された:
方法1:
【化10】

方法2:
【化11】

2)モノマーの例(II)
式(II)のモノマーは、以下に挙げた方法によって形成された:
【化12】

3)モノマーの例(III)
式(III)のモノマーは、以下に挙げた方法によって形成された:
【化13】

モノマー(III)の中心のビフェニル環は、Macromol. Symp. 1997,125, 157-164に開示されたアルキルまたはアルコキシといった置換基で提供され得る。これらの置換基は、互いに関連したフェニル環のねじれを誘導し、繰り返し単位の背骨に沿って共役を乱す。
【0065】
4)ポリマーの例
モノマーの例(I)および(III)は、WO 00/53656に開示された方法に従ったスズキ重合によって、(a)2,8-ジボロン酸-6,6,12,12-テトラ(n-オクチル)インデノフルオレン ピナコール ジエステル(以下、「アルキルインデノフルオレン」として示す)、(b)ジアルキル-ジフェニル インデノフルオレン ボロン酸 エステル(以下、「アルキル アリール インデノフルオレン」として示す)、および(c)スピロビフルオレン ボロン酸 ジエステル(以下、「スピロビフルオレン」として示す)と共重合された。比較の目的のために、上述した先行技術の繰り返し単位「PFB」を含むポリマーを形成した。
【化14】

表1
【表1】

【0066】
上記結果から見てとれるように、ポリマー1は、空により近いHOMOレベルを有し、比較対象のポリマー2よりも広い電気的バンドギャップを有する。
【0067】
5)デバイスの例
本発明によるエレクトロルミネッセンスを以下のように形成した;インジウムスズ酸化物を含むガラス基板のアノード上にポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(H C Starck of Leverkusen, Germany as Baytron Pから入手可能)のホール輸送層をスピンコートし、本発明によるポリマー(上記のポリマーの例に記載されたもの)のエレクトロルミネッセンス層をキシレン溶液からスピンコートし、続いてバリウムの第1層とアルミニウムの第2層とを含むカソードを真空蒸着によって形成した。このデバイスを、Saes Getters SpAから入手可能な気密な容器中に封入した。比較の目的のために、上述した先行技術の繰り返し単位「PFB」を含むポリマーを使用してデバイスを形成した。
【0068】
表2
【表2】

【0069】
上記結果から見てとれるように、本発明によるデバイスは、先行技術のポリマーを含む比較対象のデバイス3よりも著しく低い駆動電圧およびより高い最大外部量子効率を提供する。
【0070】
本発明は模範的な実施形態について記述したが、様々な修飾、代替および/または本明細書中に開示された特徴の組み合わせが、以下の請求の範囲に示された本発明の精神および範囲から逸脱しないことは当業者にとって明らかであることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Im)のモノマー:
【化1】

式中、各Arは同一または異なり、かつ独立して任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;Ar1は、任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;各Rは、同一または異なり、かつ独立して置換基を表わし;各Pは、同一または異なり、かつ独立してニッケルまたはパラジウム錯体触媒を用いた金属挿入に関与することができる脱離基を表わし;およびnは少なくとも2である。
【請求項2】
各Pが、同一または異なり、かつハロゲン;ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン基;式-B-Hal3- M+またはDZ-B-Hal3の基(各Halは独立してハロゲンを表わし、Mは金属カチオンを表わし、かつDZはジアゾニウムを表わす);式の基(各Halは独立してハロゲンを表わし、かつMは金属カチオンを表わす) 式O-SiR73の基(各R7は独立して任意的に置換されたアルキルまたはアリールを表わす);または式-O-SO2-Zの基(Zは任意的に置換されたアルキルおよびアリールからなる基から選択される)から独立して選択される請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
nが2または3である請求項1または2に記載のモノマー。
【請求項4】
各Rが、任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のモノマー。
【請求項5】
各Rが式(II)の基である請求項4に記載のモノマー:
【化2】

式中、Gは水素または置換基である。
【請求項6】
Gが、C1-20アルキル;C1-20アルコキシ;C1-20フルオロアルキル;C1-20パーフルオロアルキル;およびフルオレンから選択された置換基である請求項5に記載のモノマー。
【請求項7】
式(Im)のモノマーを重合する工程を含む、ポリマーを調製するための方法。
【請求項8】
各Pが、独立してハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基であり、式(Im)のモノマーがニッケル錯体触媒の存在中において重合される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各Pが、独立してハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基であり、式(Im)のモノマーは、ボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から独立して選択された少なくとも2つの反応性ボロン官能基をもつ第2のモノマーと重合し、および前記重合はパラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる請求項7に記載の方法。
【請求項10】
各Pが、独立してボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン官能基であり;式(Im)のモノマーは、ハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基から独立して選択された少なくとも2つの置換基を有する第2のモノマーと重合し;および前記重合は、パラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる請求項7に記載の方法。
【請求項11】
一方のPがハロゲンまたは式-O-SO2-Zの基であり、他方のPがボロン酸基、ボロンエステル基およびボラン基から選択された反応性ボロン官能基であり、重合がパラジウム錯体触媒および塩基の存在中において行われる請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記式(Im)のモノマーが、任意的に置換されたアリールおよびヘテロアリール基からなる群から選択された第2のモノマーと重合する請求項7ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のモノマーが、任意的に置換されたフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレンおよびヘテロアリールからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項7ないし13のいずれか1項の方法によって得られうるポリマー。
【請求項15】
式(Ir)の第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位Ar2を含むコポリマー:
【化3】

式中、各Arは、同一または異なり、かつ独立して任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし;Ar1は、任意的に置換されたアリールまたはへテロアリールを表わし;各Rは、同一または異なり、かつ独立して置換基を表わし;nは少なくとも2であり;およびAr2は、アリールまたはヘテロアリール基からなる背骨を有する任意的に置換されたアリールまたはヘテロアリールを表わし、かつこれが式(Ir)の第1の繰り返し単位のArに直接的に結合しかつ共役される。
【請求項16】
Ar2が、任意的に置換されたフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、インデノフルオレンおよびヘテロアリールからなる群から選択される請求項15に記載のコポリマー。
【請求項17】
第1のタイプの電荷キャリアの注入のための第1の電極、第2のタイプの電荷キャリアの注入のための第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された請求項14に記載のポリマーを含む光学デバイス。
【請求項18】
−請求項14に記載のポリマーを、第1のタイプの電荷キャリアの注入のための第1の電極を有する基板上に溶液から堆積する工程と、
−第2のタイプの荷電キャリアの注入のための第2の電極を前記ポリマー上に堆積する工程と
を含む光学デバイスを形成する方法。
【請求項19】
請求項14に記載のポリマーを含むスイッチングデバイス。
【請求項20】
前記ポリマー上に順番に、ゲート電極;絶縁体;請求項14に記載のポリマー;およびドレイン電極およびソース電極を含む電界効果トランジスタ。
【請求項21】
請求項20に記載の電界効果トランジスタを含む集積回路。

【公表番号】特表2007−504342(P2007−504342A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529951(P2006−529951)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005818
【国際公開番号】WO2004/106409
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】