説明

ポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法

ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリビニルピロリドンおよび無機塩を含有する製膜原液を、製膜原液温度を70℃以上に保持したまま二重環状ノズルから吐出させ、乾湿式紡糸した後保湿処理してポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜を製造する。その際、乾湿式紡糸後保湿処理に先立って、得られた多孔質中空糸膜を80℃以上の水中で熱処理することが好ましい。得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜は、温度100℃、湿度80%の湿熱条件下で1000時間以上湿熱処理した後の破断強度が10MPa以上、破断伸びが80%以上であり、かつ破断伸びが湿熱処理前の80%以上を保持しており、また耐湿温性と加湿性能とにすぐれているので、固体高分子型燃料電池用加湿膜などとして有効に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法に関する。さらに詳しくは、固体高分子型燃料電池用加湿膜などとして有効に用いられるポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法に関する。
【背景技術】
固体高分子型燃料電池に使用される固体高分子電解質膜は、水分子をある程度含んだ状態でなくてはイオン伝導性を示さないため、この電解質膜が乾燥すると発電効率の急激な低下をもたらす。一方、電解質膜が水で濡れすぎた場合も、ガスが拡散しなくなるため、発電効率が低下する。このため安定して高い出力を得るには、電解質膜を適度に加湿する必要がある。電解質膜を加湿する方法としては、バブラー加湿方式、水蒸気添加方式および加湿膜方式などが挙げられるが、これらの中でも排ガス中に含まれる水蒸気のみを水蒸気選択透過膜、すなわち加湿膜を介して供給ガスに移動させ、電解質膜を加湿する加湿膜方式が、加湿器を軽量、小型化できる点で有望であるとされている。
この加湿膜方式で使われる加湿膜の形状としては、膜モジュールとした場合の単位体積当りの透過面積が大きい中空糸膜形状が望ましい。また、燃料電池、特に移動体用燃料電池の電解質膜の加湿には、極めて高い加湿能力が求められるため、中空糸膜の状態としては、水蒸気の毛管凝縮により高い透過速度が得られる点とこの凝縮により他の気体をバリヤできる点で多孔質膜が望ましい。
かかる多孔質膜を得ることを目的として、本出願人は先に水溶性重合体および無機塩を含有する低温溶液重縮合法ポリメタフェニレンイソフタルアミド製膜原液を70℃以上の加熱条件下で凝固浴中に押出し、凝固させることによりポリメタフェニレンイソフタルアミド分離膜を製造する方法を提案している(特開2001−286743号公報)。
一方、燃料電池、特に移動体用燃料電池には、長時間にわたって作動可能な耐久性が求められるため、加湿膜に対しても高温高湿環境下で長時間劣化しない耐湿熱性が求められる。しかしながら、耐湿熱性を満足しようとした場合、加湿性能が低い加湿膜となってしまい、耐湿熱性と加湿性能の二つの性能を同時に満足させることは困難であった。
【発明の開示】
本発明の目的は、耐湿温性と加湿性能とにすぐれ、固体高分子型燃料電池用加湿膜などとして有効に用いられるポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリビニルピロリドンおよび無機塩を含有する製膜原液を、製膜原液温度を70℃以上に保持したまま二重環状ノズルから吐出させ、乾湿式紡糸した後保湿処理してポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜を製造することによって達成され、好ましくは乾湿式紡糸後保湿処理に先立って、得られた多孔質中空糸膜の80℃以上の水中での熱処理が行われる。
ポリメタフェニレンイソフタルアミドとしては次のような繰り返し単位
−NH−(m−C)−NHCO−(m−C)−CO−
が用いられ、実際には市販品であるデュポン社製品ノーメックスや帝人テクノプロダクツ製品コーネックスなどを用いることができる。ポリメタフェニレンイソフタルアミドは、それと添加剤および有機溶媒からなる製膜原液中、約12〜35重量%、好ましくは14〜25重量%を占めるような割合で用いられる。ポリメタフェニレンイソフタルアミドがこれより少ない割合で用いられると、加湿性能は優れているものの、膜の分画分子量が大きくなるため、気体のリーク量が大きく、すなわち気体バリヤ性が低くなる。一方、これより多い割合で用いられると、気体バリヤ性には優れているものの、加湿性能が低下するようになる。
ポリビニルピロリドンは、その平均分子量が約20,000〜100,000、好ましくは約30,000〜50,000のものが、製膜原液中約4〜10重量%、好ましくは約6〜8重量%占めるような割合で用いられる。ポリビニルピロリドンがこれより少ない割合で用いられると、水蒸気透過速度が低くなり、また膜の分画分子量が大きくなるため、気体のリーク量が大きくなるようになる。一方、これより多い割合で用いられると、メタ型アラミドの溶解性が低下するようになり、製膜原液の粘度が非常に高くなるため、紡糸安定性が低下するようになる。また、ポリビニルピロリドンの平均分子量がこれより小さいと、加湿性能および気体バリヤ性に劣るようになり、一方これより大きい平均分子量のものが用いられると、製膜原液の粘度が高くなり、紡糸が困難となる。
また、無機塩としては、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化物、硝酸カリウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム等の硝酸塩、炭酸カリウム等の炭酸塩、チオシアン化カルシウム等のチオシアン化物などの少くとも一種が用いられ、好ましくは塩化カルシウム、塩化カルシウムと塩化リチウムの混合物が用いられる。塩化カルシウムと塩化リチウムの混合物が用いられる場合には、塩化リチウムは混合物中50重量%以下の割合で用いられる。これらの無機塩は、製膜原液中約4〜10重量%、好ましくは約6〜8重量%占めるような割合で用いられる。無機塩がこれより少ない割合で用いられると、加湿性能や他の気体のバリヤ性が低くなり、一方これより多い割合で用いられると、無機塩が析出したり、有機溶媒中へのメタ型アラミドの溶解性が低下するようになる。
以上の各成分を溶解させ、製膜溶液への残部を形成する有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒が用いられ、好ましくはジメチルアセトアミドが用いられる。
ポリフェニレンイソフタルアミドに無機塩またはポリビニルピロリドン等の水溶性重合体を添加した製膜原液を乾湿式紡糸して多孔質中空糸膜を製造することは、特開平10−52631号公報などに記載されているが、ここでの乾湿式紡糸は室温下で行われている。乾湿式紡糸を室温下で行うと、後記比較例4の結果に示されるように、水蒸気透過速度に対する空気透過速度の比である分離係数の値が小さくなり、加湿性能が低下したものしか得られない。
本発明においては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリビニルピロリドンおよび無機塩を含有する製膜原液を均一な1相溶液として調製した上、製膜原液温度を70℃以上、好ましくは90〜110℃に保持したまま二重環状ノズルから吐出させ、乾湿式紡糸することが行われる。
このような製膜原液温度の保持は、一般には原液タンク、配管部分および二重環状ノズルをこのような温度に加熱しておくことにより達成される。この温度が70℃以下では、製膜原液の粘度が高くなるため製膜が困難となったり、また製膜できたとしても、加湿性能や他の気体のバリヤ性の低い多孔質中空糸膜しか得られない。
乾湿式紡糸に際しては、水、ポリビニルピロリドン水溶液等の水性液が芯液として用いられ、また凝固浴としては水によって代表される水性液が用いられる。
乾湿式紡糸された多孔質中空糸膜は、80℃以上、好ましくは80〜121℃の水中で熱処理されることが好ましい。熱処理時間は、多孔質中空糸膜が使用される環境により異なるが、高い処理温度ほど短時間の処理で足り、例えば80℃では24時間程度、121℃では1時間程度の熱処理が行われる。
一般に、ポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜は熱収縮が大きいため、高温環境下で使用すると膜の収縮応力により膜モジュールが破損するおそれがあるが、上記熱処理により、かかる可能性を回避することができる。
また、本発明では製膜原液中に無機塩を添加しているが、この無機塩が膜に残存した場合には、燃料電池使用時に出力低下の要因となる無機イオンが溶出するおそれもあるが、上記熱処理を行うことにより、かかる可能性を回避することも可能となる。
乾湿式紡糸され、好ましくはさらに熱処理されたされた多孔質中空糸膜は、濃度約5〜50重量%、好ましくは約10〜30重量%の保湿剤水溶液中に浸漬させて保湿処理される。保湿剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコールまたはポリビニルピロリドンなどが用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、実施例について本発明を説明する。
【実施例1】
ポリメタフェニレンイソフタルアミド 16.39重量%
(デュポン社製品ノーメックス)
塩化カルシウム 9.06 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 3.64 〃
ジメチルアセトアミド 70.91 〃
よりなる均一な1相状態の製膜原液を、いずれも100℃に加熱された原液タンク、配管部分および二重環状ノズルを通して乾湿式紡糸し、25℃の水凝固浴中に押出し、浴中を通過させた後、ロールに巻き取った。次いで、得られた多孔質中空糸膜を20重量%グリセリン水溶液中に12時間浸漬した後、膜を十分に乾燥させた。
このようにして得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径680μm、内径450μm)を、枝別れした金属管(SUS製チューブの両端に、互いに反対方向に向けたT字型チューブ継手を接続したもの)内に2本入れ、膜の有効長が15cmになるように、多孔質中空糸膜両端部をエポキシ樹脂系接着剤で封止して、ペンシルモジュールを作製した。
この多孔質中空糸膜の内側には、温度80℃、湿度80%の湿潤空気を0.5MPaの加圧下、0.25NL/分の流量で供給し、またその外側には、温度80℃、湿度0%のスイープ空気を1.2MPaの加圧下、0.28NL/分の流量で流し、多孔質中空糸膜の内側から外側へ透過した水蒸気によって加湿されたスイープ空気を、冷却されたトラップ管を通すことによってスイープ空気中の水蒸気を採取し、その水蒸気重量から加湿性能の指針である水蒸気透過速度(PH2O)を測定した。
また、モジュール内の多孔質中空糸膜の内側に、温度80℃の乾燥空気を0.2MPaの加圧下にデッドエンド方式により供給し、多孔質中空糸膜の外側に透過した空気を容積法により求め、空気透過速度(PAIR)の測定および水蒸気透過速度に対する空気透過速度の比である分離係数(αH2O/AI)を算出した。
さらに、この多孔質中空糸膜を、温度100℃、湿度80%の恒温恒湿槽に入れて1000時間の湿熱処理を行った後、標点間距離50mm、引張速度30mm/分の条件下で引張試験を行い、破断強度および破断伸びを算出すると共に、湿熱処理前の破断伸びに対する湿熱処理後の破断伸びの比として破断伸び保持率を算出した。
比較例1
実施例1において、塩化カルシウムおよびポリビニルピロリドンを添加しないで製膜原液を調製しようとしたが、ポリメタフェニレンイソフタルアミドは膨潤するのみで、ジメチルアセトアミドに溶解することはなかった。
比較例2
実施例1において、塩化カルシウムを添加しないで製膜原液を調製しようとしたが、ポリメタフェニレンイソフタルアミドは膨潤するのみで、ジメチルアセトアミドに溶解することはなかった。
比較例3
実施例1において、ポリビニルピロリドンを添加しないで製膜原液を調製しようとしたが、製膜原液は70℃以上で白濁し、2相に分離した。
比較例4
実施例1において、原液タンク、配管部分および二重環状ノズルを加熱せず、室温(25℃)下で乾湿式紡糸して、得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径700μm、内径480μm)について同様の測定を行った。
比較例5
実施例1において、保湿処理を行わずに膜を十分に乾燥させて得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径680μm、内径450μm)について同様の測定が行われた。
比較例6
ポリアミドイミド 20重量%
(アモコ・ジャパン製品トーロン4000T)
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 4 〃
ジメチルアセトアミド 76 〃
よりなる均一な1相状態の製膜原液を、室温(25℃)の原液タンク、配管部分および二重環状ノズルを通して乾湿式紡糸し、以下実施例1と同様に保湿処理迄を行って得られたポリアミドイミド多孔質中空糸膜(外径650μm、内径420μm)について、同様の測定が行われた。
以上の実施例1および比較例4〜6における測定結果は、次の表1に示される。

【実施例2】
ポリメタフェニレンイソフタルアミド 16.2重量%
(帝人テクノプロダクツ製品コーネックス)
塩化カルシウム 6.5 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 7.3 〃
ジメチルアセトアミド 70.0 〃
よりなる均一な1相状態の製膜原液を、いずれも100℃に加熱された原液タンク、配管部分および二重環状ノズルを通して乾湿式紡糸し、25℃の水凝固浴中に押出し、これを通過させた後、ロールに巻き取った。ロールに巻き取った多孔質中空糸膜を30cmずつの長さにカットし、イオン交換水中で121℃、1時間のオートクレーブ熱処理を行った後、イオン交換水で多孔質中空糸膜を流水洗浄し、乾燥した。最後に、保湿処理として、この多孔質中空糸膜を20重量%グリセリン水溶液中に12時間浸漬した後、膜を十分に乾燥させた。
このようにして得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径680μm、内径450μm)について、実施例1と同様にして、水蒸気透過速度(PH2O)、空気透過速度(PAIR)および分離係数(αH2O/AIR)の測定および算出を行った。
【実施例3】
実施例2において、塩化カルシウム量を3.25重量%に変更し、さらに塩化リチウム3.25重量%が用いられ、得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径680μm、内径450μm)について、実施例1と同様の測定が行われた。
【実施例4】
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)19.27重量%
塩化カルシウム 6.26 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 7.03 〃
ジメチルアセトアミド 67.44 〃
得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径690μm、内径450μm)について、実施例1と同様の測定が行われた。
比較例7
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)10.66重量%
塩化カルシウム 6.93 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 7.78 〃
ジメチルアセトアミド 74.63 〃
得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径660μm、内径420μm)について、実施例1と同様の測定が行われた。
比較例8
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)16.74重量%
塩化カルシウム 3.36 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 7.55 〃
ジメチルアセトアミド 72.35 〃
しかるに、製膜原液中のポリメタフェニレンイソフタルアミドが完全に溶解しなかった。
比較例9
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)15.36重量%
塩化カルシウム 11.37 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 6.92 〃
ジメチルアセトアミド 66.35 〃
しかるに、製膜原液中のポリメタフェニレンイソフタルアミドおよび塩化カルシウムが完全に溶解しなかった。
比較例10
実施例2において、ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000)の代わりに、ポリビニルピロリドン(平均分子量10,000)が同割合で用いられ、得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径670μm、内径440μm)について、実施例1と同様の測定が行われた。
比較例11
実施例2において、ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000)の代わりに、ポリビニルピロリドン(平均分子量120,000)が同割合で用いられたところ、製膜原液の粘度が非常に高く、紡糸が困難であった。
比較例12
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)16.82重量%
塩化カルシウム 6.75 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 3.74 〃
ジメチルアセトアミド 72.69 〃
得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜(外径670μm、内径440μm)について、実施例1と同様の測定が行われた。
比較例13
実施例2において、製膜原液として以下のものが用いられた。
ポリメタフェニレンイソフタルアミド(コーネックス)15.47重量%
塩化カルシウム 6.21 〃
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 11.46 〃
ジメチルアセトアミド 66.86 〃
しかるに、製膜原液の粘度が非常に高く、紡糸が困難であった。
以上の実施例2〜4、比較例7、10および12における測定結果は、次の表2に示される。

【産業上の利用可能性】
本発明に係るポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜は、耐湿熱性および加湿特性にすぐれており、また機械的強度や気体バリヤ性の点でも良好であるので、加湿膜として有効に用いることができ、具体的には固体高分子型燃料電池用加湿膜、特に移動体用固体高分子型燃料電池加湿膜として好適に使用される。また、除湿装置などにも使用される。
耐湿温性および機械的強度についていえば、温度が100℃、湿度が80%の湿熱環境下で1000時間以上湿熱処理した後の多孔質中空糸膜の破断強度は10MPa以上、破断伸びが80%以上であり、かつ破断伸びが湿熱処理前の80%以上保持しているものが得られている。
また、乾湿式紡糸後保湿処理に先立って、得られた多孔質中空糸膜を80℃以上の水中で熱処理した場合には、分離係数αH2O/AIRが高められるばかりではなく、高温環境下での使用により膜モジュールが破損するおそれおよび膜に残存する無機イオン溶出のおそれを回避することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリビニルピロリドンおよび無機塩を含有する製膜原液を、製膜原液温度を70℃以上に保持したまま二重環状ノズルから吐出させ、乾湿式紡糸した後保湿処理することを特徴とするポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項2】
ポリメタフェニレンイソフタルアミド12〜35重量%、ポリビニルピロリドン4〜10重量%、無機塩4〜10重量%および残部が非プロトン性極性溶媒よりなる製膜原液が用いられた請求項1記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項3】
平均分子量が20,000〜100,000のポリビニルピロリドンが用いられた請求項1または2記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項4】
無機塩が塩化カルシウムまたはこれと塩化リチウムとの混合物である請求項1または2記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項5】
乾湿式紡糸後保湿処理に先立って、得られた多孔質中空糸膜を80℃以上の水中で熱処理する請求項1記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項6】
80〜121℃の水中で熱処理が行われる請求項5記載ポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜の製造法。
【請求項7】
請求項1または5記載の方法により製造されたポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜。
【請求項8】
温度100℃、湿度80%の湿熱条件下で1000時間以上湿熱処理した後の多孔質中空糸膜の破断強度が10MPa以上、破断伸びが80%以上であり、かつ破断伸びが湿熱処理前の80%以上を保持している請求項7記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜。
【請求項9】
加湿膜として用いられる請求項7記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜。
【請求項10】
固体高分子型燃料電池用加湿膜として用いられる請求項9記載のポリメタフェニレンイソフタルアミド多孔質中空糸膜。

【国際公開番号】WO2004/024305
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535884(P2004−535884)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011062
【国際出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】