説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【目的】厚肉にしても透明性を確保しながら所要の柔軟性を有する透明性樹脂成形を得ることができるポリ乳酸樹脂組成物を提供すること。
【構成】ポリ乳酸をベースとし、可塑剤として脂肪族二塩基酸ジエステルを含有する透明樹脂成形品を成形可能なポリ乳酸樹脂組成物。さらに、ポリ乳酸と屈折率が実質的に同等であるコアシェル構造重合体であるアクリル系のゴム系ポリマーを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂成形品を成形可能な新規なポリ乳酸樹脂組成物及びそれを用いて成形した透明樹脂成形品に関する。
【0002】
ここでは、透明樹脂成形品として、小物物品(例えば、ボルト、ナット、坐金、電子部品等)をエア搬送する場合に使用するのに好適な物品搬送用押出品(以下「搬送チューブ」という。)を例に採り説明する。
【0003】
なお、以下の説明で、配合単位を示す「%」は、特に断らない限り「質量%」とする。
【背景技術】
【0004】
図1に小物物品(部品)の供給装置の一例であるボルトフィーダーを示す。
【0005】
該ボルトフィーダーは、パーツフィーダー部12からの小物部品であるボルトを、シュート14へ供給し、エスケープメント16で、搬送チューブ(送給チューブ)18を介して加工位置(例えば溶接機)へ圧縮エアにより搬送する構成となっている。図例中20は、制御盤が内蔵された機器カバーである。
【0006】
該搬送チューブ18には、配管柔軟性、耐久強度(耐摩耗性等)に加えて搬送小物部品の搬送(輸送)状態を確認するために透明性が要求される。
【0007】
従来は、該搬送チューブは、塩化ビニル(PVC)に多量の可塑剤を配合(50PHR以上)した軟質PVC組成物の中空押出品を使用し、肉厚は圧縮エア搬送のための耐圧性の見地から数mm以上(最低3mm以上)としていた。この搬送チューブは、バイオマスを原料とせず、かつ、塩素を含有するので使用後の廃棄処理に問題が生じ、環境対策品としては適切ではない。
【0008】
他方、循環型社会構築の観点から、あらゆる分野において、従来の石油起源の生分解しない又は生分解し難い石油系プラスチック(合成樹脂)に代わって、循環可能なバイオマス(デンプン等)を原料とした生分解性プラスチック(生分解性樹脂)を適用することが試みられつつある。
【0009】
そこで、本発明者らは、循環型社会構築の一環として、搬送チューブを生分解性樹脂で成形(押出成形)しようと試み、ベースポリマーとして、ポリ乳酸に着目した。
【0010】
ポリ乳酸(樹脂組成物)に関連する先行技術文献として特許文献1〜4等がある。
【0011】
ポリ乳酸は、特許文献2の段落0003に記載の如く、生分解性樹脂の中では着目度の高い実用化が進んでいる生分解性樹脂である。以下に、その一部を引用する。
【0012】
「中でもポリ乳酸は、トウモロコシなどの植物が光合成を経て精製するデンプン源を生物発酵させることにより得られる乳酸を原料にするところから、植物由来のプラスチックすなわち省石油プラスチックとして近年注目されている。ポリ乳酸は、従来の生分解性プラスチックに比べ優れた透明性、耐熱性、剛性、カビ抵抗性を有するのに加えて、実用的な耐久性をも兼ね備えた素材として各種用途への展開が盛んにはかられている。」
しかし、ポリ乳酸の内で汎用性のあるホモポリ乳酸(ホモポリマー)は、特許文献1段落0002、特許文献2段落0003に記載されている如く、結晶性が高く、分子構造に由来して剛性が高い、耐屈曲性が低い、耐衝撃性が低い、などいわゆる固くて脆いという欠点(問題点)がある。
【0013】
これらの問題点を解決するために、特許文献1では、共重合ポリ乳酸(ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸および鎖状分子ジオールとを共重合させたもの)に、可塑剤として脂肪族可塑剤(脂肪族二塩基酸ジエステル)を1〜50%含ませたポリ乳酸樹脂組成物及びその成形品が提案されている(特許請求の範囲等参照)。
【0014】
特許文献2では、結晶性ポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤からなるポリ乳酸樹脂組成物及びフィルム及びシートが提案されている(特許請求の範囲等参照)。
【0015】
特許文献3では、(A)脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸)と、(B)アクリル系ゴム及び/又はシリコーンアクリル系ゴムに、アクリル酸アルキルエステル及び/又は芳香族ビニル単量体を含有するビニル系単量体がグラフトされたグラフト共重合体とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(ポリ乳酸樹脂組成物)が提案されている(特許請求の範囲等参照)。
【0016】
さらに、特許文献4では、(A)脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸)と、(B)粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機重合体とを含有するポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体および(C)多層構造重合体(アクリルゴム系)とを含有させた脂肪族ポリエステル樹脂組成物(ポリ乳酸樹脂組成物)が提案されている(特許請求の範囲等参照)。
【0017】
しかし、これらのうちで成形品に柔軟性とともに透明性の確保を意図したものは特許文献1のみである。
【0018】
特許文献2は、結晶核を含ませて結晶性成形体を得ることを目的としており、特許文献3・4は、何れも、特定のゴム系ポリマーを衝撃改質剤として配合し耐衝撃性及び熱安定性を成形品に得ることを目的としており、本発明のような透明性及び柔軟性(可撓性)予定していない。
【0019】
また、特許文献1は、特定の共重合ポリ乳酸をベース(必須)とするものであり、柔軟性及び透明性はフィルムのような薄肉製品(フィルム:50μm、段落0028参照)を主として予定している。段落0033の表1の衝撃強度試験に示される如く、特許文献1の成形品は、厚肉(例えば1mm以上)とした場合、柔軟性はほとんど無いものと推定され、更には、透明性も確保し難いと推定される。
【特許文献1】特開平8−199053号公報
【特許文献2】特開2002−146170号公報
【特許文献3】特開2006−56987号公報
【特許文献4】特開2006−160925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記にかんがみて、厚肉にしても透明性を確保しながら所要の柔軟性を有する透明性樹脂成形を得ることができるポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をする過程で、下記知見を得た。
【0022】
アジピン酸等のホモポリ乳酸と混和性の良好な可塑剤を配合した場合は、フィルム等においては、確かに、透明性を確保しながら柔軟性(可撓性)を有するフィルムを成形できる。
【0023】
しかし、押し出し成形品の如く、厚肉(例えば1mm以上)とした場合、所要の柔軟性を得るためには、ホモポリ乳酸にアジピン酸エステル(脂肪族二塩基酸ジエステル)のような液状可塑剤を含有率20%以上となるように配合する必要があった(比較例2参照)。そして、そのように液状可塑剤で配合させたポリ乳酸樹脂組成物で成形した厚肉の搬送用チューブは、湾曲させたときに内部に隘路(狭小通路)が発生し易い、すなわち、閉塞性し易いことが分かった。このような隘路の発生は、小物物品の搬送チューブに適用しようとした場合には障害となる。
【0024】
そこで、本発明者らは、「メタブレン」(三菱レイヨン株式会社登録商標)の商品名で、樹脂の耐衝撃性改善剤として上市されているアクリル系ゴムのコアシェル構造重合体の含有率10となるように添加したポリ乳酸樹脂組成物で1mmtの板状成形体(100mm角)を射出成形したが、大人男性が曲げることが困難な剛性を有するとともに、透明性は大幅に低下して透明物とは言い難いものであった。
【0025】
しかし、上記コアシェル構造重合体をアジピン酸エステルと組み合わせてポリ乳酸に配合させて厚肉の中空押出品を成形した場合、所要の柔軟性を得るためにアジピン酸エステルの配合量を低下できるとともに、透明性の低下もほとんど無かった。その理由は、コアシェル構造重合体として屈折率がポリ乳酸と近いものを使用した結果であると本発明者らは推定した。
【0026】
なお、「メタブレン」は、同商標権者の出願に係る前記特許文献3・4における「(B)アクリル系ゴム及び/又はシリコーンアクリル系ゴムに、アクリル酸アルキルエステル及び/又は芳香族ビニル単量体を含有するビニル系単量体がグラフトされたグラフト共重合体」又は「(c)多層構造重合体(アクリルゴム系)」に相当するものと推定される。
【0027】
そして、本発明者らは、上記知見に基づいて、下記構成のポリ乳酸樹脂組成物に想到した。
【0028】
ポリ乳酸をベースとし、可塑剤として脂肪族二塩基酸ジエステルを含有する透明樹脂成形品を成形可能なポリ乳酸樹脂組成物において、さらに、前記ポリ乳酸と屈折率が実質的に同等であるゴム系ポリマーが配合されてなることを特徴とする。
【0029】
可塑剤の一部をゴム系ポリマーに置換して、可塑剤の配合量を相対的に少なくすることができる。そして、ゴム系ポリマーをポリ乳酸の屈折率に近似するものを使用するとともに、液状の脂肪族可塑剤を配合することによりゴム系ポリマーの配合による成形体の非透明化現象(透明性の大幅低下)を抑制できるとともに、該成形体が搬送空間を有する場合において曲げ部に隘路が発生し難い。
【0030】
上記構成において、ポリ乳酸はホモポリ乳酸とすることが、材料入手が容易で製造コストの低減に繋がり、透明性の優れたものを得やすい。
【0031】
上記各構成において、ポリ乳酸及びゴム系ポリマーの屈折率(nD25)は、例えば、1.4〜1.5とする。
【0032】
上記各構成において、前記ゴム系ポリマーとしては、「メタブレンWタイプ」(三菱レイヨン株式会社登録商標)に相当する、アクリル系ゴムの表面にグラフト層を備えたコアシェル構造重合体(以下「ゴムコアシェル構造重合体」という。)を使用することができる。このゴム系ポリマーはポリ乳酸との混和性に優れておりかつポリ乳酸の透明性も阻害し難い。
【0033】
前記脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、ポリ乳酸との混和性が良好なアジピン酸エステルを使用することができ、前記コアシェル構造重合体との混和性(Compatibility)にも優れている。
【0034】
そして、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の組成は、通常:
ポリ乳酸:50〜95%、コアシェル構造重合体:2〜30%、アジピン酸エステル:3〜40%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=2/1〜1/4とし、
望ましくは:
ポリ乳酸:60〜90%、コアシェル構造重合体:4〜20%、アジピン酸エステル:6〜30%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=3/2〜1/3とする。
【0035】
上記構成の組成物からなる透明樹脂成形品は、通常、デュロメータ硬さ(JIS K 6253)D35〜52、屈折率:(nD25)1.4〜1.5の特性を示すものとする。
【0036】
上記透明樹脂成形品を製造するに際して、成形材料を賦形後、結晶化しないように急冷させて成形することが望ましい。
【0037】
該透明樹脂成形品は、小物物品の搬送が可能な中空断面を備えた押出し成形品に適用でき、該押出成形物は、肉厚1mm以上、望ましくは3mm以上の物品搬送用押出品(チューブ体)としたときに効果が顕著となる。
【0038】
本発明の概略を、表現を変えて説明すると、下記の如くになる。
【0039】
ポリ乳酸は、バイオマスから製造されるバイオプラスチックの中で比較的安価であり、各種の成形が可能で、透明性にも優れているため、小物物品(部品)の搬送チューブ(送給チューブ)の素材として用いることを考えた。
【0040】
しかし、自らの試験結果によれば、ポリ乳酸によって搬送チューブを成形することは可能であるが、ポリ乳酸自体が硬質特性である。
【0041】
このため、中空押出品は小物物品の搬送チューブとして必要な柔軟性がなく、搬送距離間に湾曲部があると、チューブを容易に曲げることができず、直線区間での小物物品搬送に用いることしかできない。
【0042】
そのため、これらのことに鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸(ホモ乳酸)に可塑剤である液状の脂肪族二塩基酸ジエステル(アジピン酸エステル)とともに特定のコアシェル構造重合体(コア:アクリル系ゴムポリマー)を添加すれば、透明な柔軟性を有する透明なポリ乳酸成形品が成形できることを知見して本発明に想到した。
【0043】
本発明の搬送チューブは、主成分としてバイオマスから製造されるポリ乳酸を主成分として含有している。このため、廃棄されて焼却処分されると、バイオマスが成長する期間に吸収した二酸化炭素を再び大気に放出することとなっても、二酸化炭素の吸収と放出の循環関係が成り立ち、環境に対する影響が小さい。
【0044】
また、透明性に優れたポリ乳酸(特に、ホモポリ乳酸)に、特定の可塑剤と特定のゴム系ポリマーとを組み合わせて配合することにより、厚肉成形品の透明性を余り低下させず、かつ、中空押出品とした場合の中空部の隘路(閉塞)発生現象を発生させずに、成形品に対する柔軟性の付与が可能となる。
【0045】
従って、搬送チューブ内を通過する搬送小物物品の状況を外部から視認することができる。すなわち、搬送チューブに確認用のスリット穴を設けたり、非接触形センサなどを取付ける手間も不要となる。
【0046】
さらに、本発明の中空押出品は、柔軟にして割れ難いため、搬送チューブとしてナットやボルト等の小物物品(部品)の搬送に用いれば、部品送出側と受取り側の位置関係はフレキシブルな関係が成り立ち、装置類の据付などの場合は場所が限定されなくてよい。すなわち、部品供給装置の搬送チューブに適用すると、送り出し位置と取出し位置との関係はフレキシブルな設定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明のポリ乳酸樹脂組成物について詳細に説明する。
【0048】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、基本的には、ポリ乳酸をベースとし、可塑剤として脂肪族二塩基酸ジエステルを含有する、透明樹脂成形品を成形可能な透明ポリ乳酸樹脂組成物において、さらに、ポリ乳酸と屈折率が実質的に同等である(近似する)ゴム系ポリマーが配合されてなるものである。
【0049】
ポリ乳酸としては、共重合ポリ乳酸であってもよいが、通常、ホモポリ乳酸(D体及びL体)を使用する。具体的には、融点130℃以上、望ましくは150℃以上で、MFR(190℃)5g/min以下のものを好適に使用できる。本条件に適合する上市品を適宜選定する。具体例としては、三井化学(株)から「レイシア(LACEA)」の登録商標名で上市されている「レイシアH280」、「レイシアH440」、「レイシアH400」等を挙げることができる。
【0050】
上記脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、炭素数4〜10の脂肪族二塩基酸を炭素数6〜18の1種又は2種の一価アルコールでジエステル化した常温流動性(液状)のものを使用可能である。これらのうちで、アジピン酸エステルが、望ましい。
【0051】
アジピン酸エステルとしては、ジオクチルアジペート(DOP)(ジ(2エチルヘキシル)アジペート)、ジデシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジセチルアジペート、ジオレイルアジペートなど揚げることができ、これらのうちで、ホモポリ乳酸と混和性が良好でかつ耐揮発性に優れた分岐アルキル基を備えたものが望ましい。例えば、DOP(ジ(2エチルヘキシル)アジペート)を挙げることができる。
【0052】
上記ゴム系ポリマーとしては、「メタブレンWタイプ」又は「メタブレンS」(三菱レイヨン株式会社登録商標)に相当する、アクリル系ゴムの表面にアクリルグラフト層を備えたコアシェル構造重合体(以下「コアシェル構造重合体」という。)を好適に使用できる。これらはアクリルグラフ層により屈折率制御ができるためである。
【0053】
アクリル系ゴムには、特許文献3・4に記載されているような本来のアクリル系ばかりでなく、シリコーンアクリル系も含む。
【0054】
そして、これらのうちから、ポリ乳酸と同様の屈折率(nD25)1.4〜1.5を示すものを使用する。本条件に適合する上市品を適宜選定する。具体例として、「メタブレンW450」や「メタブレンW300」等を挙げることができる。
【0055】
そして、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の組成は、ポリ乳酸:50〜95%、前記コアシェル構造重合体:2〜30%、アジピン酸エステル:3〜40%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=2/1〜1/4、望ましくは、ポリ乳酸:60〜90%、コアシェル構造重合体:4〜20%、アジピン酸エステル:6〜30%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=3/2〜1/3とする。
【0056】
上記において、コアシェル構造重合体(ゴム系ポリマー)が過少では、柔軟性を得難いとともに、製造した中空押出品を屈曲させたときの耐閉塞性を得難く、また、コアシェル構造重合体が過多では、中空押出品に透明性を得難い。
【0057】
アジピン酸エステル(脂肪族二塩基酸ジエステル)が過少では、柔軟性を得難く、所要の柔軟性を得るために相対的にゴム系ポリマーの配合比率が高くなり、透明性も確保し難くなる。
【0058】
そして、コアシェル構造重合体とアジピン酸エステルは、一方が過剰でも過多でも、耐閉塞性を有する柔軟性と透明性のバランスを採り難くなる。
【0059】
透明成形品は、デュロメータ硬さ(JIS K 6253)約D35〜52、さらには、約D40〜50の範囲が望ましい。これらの範囲より硬度(デュロメータ硬さ)が高いと、所要の湾曲柔軟性を得難く、これらの範囲より硬度が低いと、中空押出品として屈曲させたとき耐閉塞性が確保し難い。
【0060】
本実施形態のポリ乳酸樹脂組成物は、汎用の方法で、溶融混練してペレット化(水冷)したものを、押出機等を用いて中空押出品を製造(成形)する。このとき、押出後、急冷して結晶化しないようにする。
【0061】
このときの中空押出品の断面は特に限定されない。図2(A)・(B)・(C)に、各種小物物品(部品)22A、22B、22Cと、各部品の搬送に適した中空断面を有する押出品(押出成形品)18A、18B、18Cとの組合せを示す。なお、22A:四角ナット、22B:軸状チップ、22C:鍔付きボルトである。
【0062】
ここで、押出品の肉厚は1〜6mm、望ましくは3〜5mmとする。肉厚が薄すぎては、強度を確保し難く、肉厚が厚すぎては、過剰品質となるとともに、透明性も確保し難くなる。
【0063】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記搬送チューブに限られず、搬送ダクト、散水ホース及び他の異形断面押出品(C型・H型・T型)さらには射出成形品(カップ等)、ブロー成形品(ボトル等)の成形にも使用できる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の効果を確認するために比較例とともに行った実施例について説明をする。
【0065】
<ポリ乳酸樹脂組成物の調製>
ポリ乳酸と可塑剤(アジピン酸エステル)とコアシェル構造重合体(アクリルゴム系)を下記表1の組成処方にしたがって、混練押出機によって溶融混練(溶融温度180°C)し、押出されたポリ乳酸系樹脂組成物を水中で冷却し、切断してペレット化して各比較例及び実施例の成形用材料とした。
【0066】
【表1】

なお、各比較例・実施例で使用したポリ乳酸、アジピン酸エステル及びコアシェル構造重合体(アクリルゴム系)はそれぞれ下記のものを使用した。
【0067】
ポリ乳酸・・・「レイシアH400」(三井化学(株)登録商標)、屈折率:屈折率(nD25)1.4〜1.5
可塑剤・・・「DAIFATTY−101」(大八化学工業(株)登録商標)、ジ(2エチルヘキシル)アジペート
コアシェル構造重合体・・・「メタブレンW450A」(三菱レイヨン(株)登録商標)、コア:アクリルゴム、屈折率(nD25)1.4〜1.5
<押出(成形)>
以上のようにして調製した各比較例及び各実施例のペレットを用い、押出成形機により180°Cでチューブ(図2(B)外径19mmφ、肉厚3mmφ)の押出成形により製造した。
【0068】
こうして製造したチューブ(中空押出品)を切断(L=200mm)して各比較例及び各実施例の試験片を調製した。
【0069】
各試験片について、下記各項目の評価試験を行った。
【0070】
(1)硬度・・・デュロメータ硬さ(JIS K 6253)タイプD
(2)透明性・・・チューブ上方からチューブ内へ挿入した部品を目視確認して判定した。
【0071】
(3)実用性・・・曲率半径約150mmまで湾曲して中空内部の閉塞性を観察するとともに、拘束を外したとき、元の復元性があるか否で判定をした。
【0072】
評価試験の結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

実施例1・2のチューブでは、適度に柔軟性があり、割れやヒビが生ずることはなく、また、アクリルの屈折率よりは若干劣るが、チューブ内に小物部品を収容して外部から観察した結果、部品の位置、数量をはっきり確認することができる透明度が得られた。
【0074】
なお、実施例2は、ウレタンゴム相当の硬さと柔軟性があり、実際の部品供給装置で搬送チューブ(送給チューブ)として使用した結果、充分耐える機械的強度を有していた。
【0075】
これに対して、比較例1・2の搬送チューブは、透明性はあるものの、プラスチック並みの硬度があり、フレキシブルな位置関係を必要とする機械や設備に対しては使用不可であった。
【0076】
すなわち、比較例1のように硬度が高いと、チューブ自体をフレキシブルに動かし使用する場合は取付けが困難で、無理に湾曲すると割れやヒビが生じ支障をきたすことが分かった。
【0077】
比較例2は、柔軟性は比較例1より有するが、実施例1・2より劣り、かつ、湾曲させたときのとき目で見て分かる内部閉塞が観察された。
【0078】
これに対して、実施例1・2は目で分かる内部閉塞は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
ウレタンゴム相当の硬度の製品が実現できたので、搬送チューブ等の押出品以外に、硬質ゴム製品の代替品として、平板状やブロック(塊状)等に成形したものを素材として加工すれば利用範囲が更に広がる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の透明樹脂成形品(搬送チューブ)を用いる小物品輸送機(ボルトフィーダー)の一例を示す斜視図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、それぞれ、小物物品及びその小物物品の搬送に適した断面を有する搬送チューブの組合せを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
18、18A、18B、14C:搬送チューブ(送給チューブ)
22A、22B、22C:小物物品(部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸をベースとし、可塑剤として脂肪族二塩基酸ジエステルを含有する透明樹脂成形品を成形可能なポリ乳酸樹脂組成物において、さらに、前記ポリ乳酸と屈折率が実質的に同等であるゴム系ポリマーが配合されてなることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリ乳酸がホモポリ乳酸であることを特徴とする請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸及びゴム系ポリマーの屈折率:(nD25)1.4〜1.5であることを特徴とする請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム系ポリマーが「メタブレンWタイプ」又は「メタブレンSタイプ」(三菱レイヨン株式会社登録商標)に相当する、アクリル系ゴムの表面にアクリルグラフト層を備えたコアシェル構造重合体(以下単に「コア/シェル構造重合体」をいう。)であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪族二塩基酸ジエステルが、アジピン酸エステルであることを特徴とする請求項4に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリ乳酸:50〜95質量%、前記コアシェル構造重合体:2〜30質量%、前記アジピン酸エステル:3〜40質量%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=2/1〜1/4であることを特徴とする請求項5に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリ乳酸:60〜90質量%、前記コアシェル構造重合体:4〜20質量%、前記アジピン酸エステル:6〜30質量%、コアシェル構造重合体/アジピン酸エステル(質量比)=3/2〜1/3であることを特徴とする請求項6記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物で成形されてなる透明樹脂成形品であり、デュロメータ硬さ(JIS K 6253)D32〜52、及び、屈折率:(nD25)1.4〜1.5の特性を示すものであることを特徴とする透明樹脂成形品。
【請求項9】
請求項8記載の透明樹脂成形品を製造するに際して、成形材料を賦形後、結晶化しないように急冷させて成形することを特徴とする透明樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載の透明樹脂成形品が小物物品の搬送が可能な中空断面を備えた搬送チューブ(中空押出品)であることを特徴とする透明樹脂成形品。
【請求項11】
前記搬送チューブが肉厚1mm以上を有するものであることを特徴とする請求項10記載の透明樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−94878(P2008−94878A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275170(P2006−275170)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(593038000)矢島技研株式会社 (13)
【出願人】(593227132)ダイトーエムイー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】