説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【課題】ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度、耐ブリード性を向上させ、優れた耐衝撃性、柔軟性、耐熱性、成形加工性を有するポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)と、ポリエステル系ブロック共重合体(B)と、アミド系化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記アミド系化合物(C)が、特定のトリメシン酸トリアミド化合物類であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、耐衝撃性、成形加工性に優れた食品包装等の分野で使用可能なポリ乳酸樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は一般にトウモロコシ等の植物を出発原料として大量生産が可能で、かつ優れた透明性、及び生分解性等を有することから、環境調和型の成形用樹脂として注目されている。また、ポリ乳酸は、いまや食品包装分野でのスタンダードとなりつつあるポリオレフィン等衛生協議会の定めるポジティブリストに登録されたことで多方面での用途展開が期待されている。
【0003】
一方、ポリ乳酸は耐衝撃性、耐熱性、結晶化速度遅いといった性能面での欠点を有しており、例えば包装容器では、輸送・保管の際の変形、熱殺菌や電子レンジ用途等の高温使用分野への展開、成形サイクル性等といった課題があり、ポリ乳酸の市場展開を進めるうえで大きな障害となっている。したがって、産業界からはポリ乳酸固有の優れた剛性等を損なうことなく、前記のような欠点を改善することが強く求められている。
【0004】
前記ポリ乳酸の耐熱性を改善する方法の1つとして、ポリ乳酸の結晶化を高めることによって向上させることが可能である。すなわち、ポリ乳酸の結晶化速度を高めることによって高い結晶化度を有することによって耐熱性を向上させることが期待できる。
【0005】
一般的にポリ乳酸を結晶化させる場合、成形加工時に金型をポリ乳酸の結晶化ピーク温度近辺、すなわち90℃以上、特に100〜140℃の範囲でセットして(高温設定では結晶化速度はある程度高められるものの成形品が軟化してしまう)金型での保持時間を長時間行うか、成形後に成形品をアニール処理して結晶化させる手法が挙げられる。しかし、成形時における長時間の冷却工程は、実用的でなく、かつ結晶化が不十分になり易く、又、アニールによる後結晶化は成形品が結晶化する過程で変形するため、寸法安定性が得られない、実用面ではひび、割れといった欠点があった。
【0006】
そこで、従来からポリ乳酸の結晶化速度を高める手法として、無機系、又は有機系添加剤、すなわち結晶核剤を添加する方法が検討されてきた。ポリ乳酸に無機系の結晶核剤を使用したものとしては、例えば、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の融点が100〜250℃、質量平均分子量3万〜50万の脂肪族ポリエステルを含有するものと結晶性SiO2を含有する耐熱性樹脂組成物が挙げられている(例えば、特許文献1参照、特許文献2参照)。しかしながら、実際に乳酸系ポリマーに核剤として記載のタルク、シリカ等を使用して射出成形を試みるものの未だ結晶化速度が遅く、また得られる成形物が脆いため、実用に耐えうる成形物を得られたとは言い難かった。また、ポリ乳酸のステレオコンプレックスに対し、アミド系結晶核剤を添加した乳酸系ポリエステル組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。さらにポリ乳酸に有機系の結晶核剤を使用したものとしては、例えば、ポリ乳酸と、特定のトリメシン酸トリアミド化合物を含有したポリ乳酸系樹脂組成物が挙げられている(例えば、特許文献4参照。)しかしながら、これらを実際にポリ乳酸に前記核剤を使用して射出成形、真空成形等の成形を試みるものの未だ結晶化速度が遅く、型再現性や実用レベルの成形サイクルを得るには未だ不十分なものがあった。
【0007】
一方、ポリ乳酸の脆さ、結晶化速度を促進させる目的で、乳酸を主成分とするポリエステル重合体からなる育苗用容器が開示されている(例えば、特許文献5参照)。耐衝撃性を解決する目的でポリ乳酸系ポリマーブロック共重合体又は/及び混合するに適したガラス転移温度の低い、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペートといった脂肪族ポリエステルを用いることによって耐衝撃性の改良を図っているが、これら脂肪族ポリエステルとポリ乳酸との相溶性が不充分であるため、ブリードや実用に耐え得る様々な成形品に適用するレベルに到っていない。
【0008】
一方で、ポリ乳酸の前記性能を改良する目的で、ポリ乳酸を他の樹脂等と共重合する方法の検討も進んでいる。例えばポリヒドロキシカルボン酸構造単位と、ジカルボン酸及びジオールから誘導されるポリエステル構造単位とを有するブロック共重合体からなり、前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位とのいずれか一方の構造単位が形成するマトリックス中に他方の構造単位がドメインを形成するミクロ相分離構造を有する特定の成形用樹脂や、該成形用樹脂及びポリヒドロキシカルボン酸を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物、及びそれらを成形して得られるフィルム等の成形物が、柔軟性、耐衝撃性及び生分解性に優れ、かつ透明性にも優れることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0009】
最近、前記成形用樹脂の中で特にガラス転移温度を1つ有する成形用樹脂はブリードを抑制しつつ、結晶化速度を高める効果を有することがわかってきている。前記成形用樹脂としては、大日本インキ化学工業社製のプラメートPD-350(以下、PD350と省略する)が市販されている。ここで、例えば、三井化学社製のポリ乳酸(品名:レイシア、品番:H400)(以下、PLAと省略する)にプラメートPD350を添加したブレンド物の示差走査熱量計(以下、DSCと省略する)を用いて測定される100℃における等温結晶化時間の結果を表1に示す。また、ガラス転移温度を2つ有する成形用樹脂の例示としては、大日本インキ化学工業社製のプラメートPD-150が挙げられる。
【0010】
【表1】

【0011】
表1から、ガラス転移温度を1つ有する成形用樹脂は添加量とともにポリ乳酸の結晶化速度を向上させる効果を有し、ガラス転移が2つ有する成形樹脂より結晶化促進効果を有することがわかる。しかしながら、この効果も実用面で今一歩及ぶレベルのものではなかった。
【0012】
【特許文献1】特許3359764号公報
【特許文献2】特許3599533号公報
【特許文献3】特開2004−359828号公報
【特許文献4】特許3671547号公報
【特許文献5】特許3687171号公報
【特許文献6】特開2004−250663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度、耐ブリード性を向上させ、優れた耐衝撃性、柔軟性、耐熱性、成形加工性を有するポリ乳酸樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリ乳酸と、ポリエステル系ブロック共重合体と、アミド系化合物とを含有するポリ乳酸樹脂組成物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸(A)と、ポリエステル系ブロック共重合体(B)と、アミド系化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記アミド系化合物(C)が、一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【0016】
【化1】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基を表す。]
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物によれば、優れた耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、及び成形加工性を有することから、結晶化速度が大きく、高い結晶化度、耐ブリード性を具備した成形物を提供でき、例えば包装容器等の広範な分野に適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使用するポリ乳酸(A)としては、例えばL−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、D,L−ポリ乳酸、及びそれらの混合物、ステレオステレオコンプレックス等を好ましく使用することができる。
【0019】
前記D,L−ポリ乳酸は、L−乳酸又はL−ラクタイドと、D−乳酸又はD−ラクタイドとの共重合体であって、特にL−乳酸又はL−ラクタイド由来の構造単位の割合又はD−乳酸もしくはD−ラクタイド由来の構造単位の割合が90質量%以上であるものを使用することが好ましく、95質量%以上であるものを使用することがより好ましい。かかるD,L−ポリ乳酸を使用することによって、耐熱性、及び成形加工性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0020】
前記D,L−ポリ乳酸を構成するL体及びD体の割合(光学異性比率)は、それを加水分解して得られた乳酸を、光学異性体分離カラムを備えた高性能液体クロマトグラフィーを用いて、L―乳酸とD−乳酸とに分離した後、それらを定量することにより決定できる。前記加水分解の方法としては、例えば、D,L−ポリ乳酸と水酸化ナトリウム/メタノール混合溶液とを、例えば65℃に設定した水浴浸とう器を用いて混合する方法が挙げられる。高性能液体クロマトグラフィーを用いた定量の際には、予め希塩酸溶液等を用いて中和したものを使用することが好ましい。
【0021】
また、前記ポリ乳酸としては、良好な成形加工性や機械的特性を維持する観点から、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPC)法による標準ポリスチレン換算で、質量平均分子量が50,000〜400,000の範囲であるものを使用することが好ましく、質量平均分子量が100,000〜400,000の範囲であるものを使用することがより好ましい。
【0022】
前記GPC法は、例えば、前記東ソー株式会社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(以下、GPCと省略する。)「HLC−8220」を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、展開溶媒として、テトラヒドロフランを用いて測定することができる。
【0023】
前記ポリ乳酸は、例えば、乳酸の縮合重合法や、乳酸の環状2量体であるラクタイドの開環重合法等で製造することができる。乳酸の重縮合反応は、乳酸の有するカルボキシル基及び水酸基をエステル化反応させる方法であり、例えばL−乳酸もしくはD−乳酸又はこれらの混合物を高沸点溶媒存在下、減圧下で共沸脱水させる方法が挙げられる。また、前記ラクタイドを用いた開環重合法とは、開環したラクタイド同士をエステル化反応する方法であり、例えば重合調節剤、及び重合触媒の存在下でL−ラクタイド又はD−ラクタイドを開環させる方法が挙げられる。又、L−乳酸とD−乳酸の2量体であるD,L−ラクタイドを本発明の目的を達成する範囲内で併用してもよい。
【0024】
又、本発明によれば、強度、靭性を有するポリグリコール酸、柔軟性を有するポリカプロラクトン、植物度が高いポリヒドロキシブチレート、及びポリヒドロキシバリレート、からなる群から選ばれる1種以上のヒドロキシカルボン酸誘導重合体も好ましく使用することができる。例えば、前記ヒドロキシカルボン酸誘導重合体の例としては、ポリグリコール酸とポリ乳酸との重合体や、ポリグリコール酸とポリカプロラクトンとの重合体である。ここで、前記植物度とは、製品、商品、プラスチックに占める植物由来原料の質量%(体積%を明示する場合もある)をいう。例えば、植物度100%であれば、植物由来原料から生産されたプラスチックであることを意味する。
【0025】
次に、本発明で使用するポリエステル系ブロック共重合体(B)について説明する。
【0026】
次に、本発明で使用するポリエステル系ブロック共重合体(B)は、ポリ乳酸(A)の結晶化を促進させ、柔軟性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性を付与する。
【0027】
本発明で使用するポリエステル系ブロック共重合体は、本発明を損なわない範囲であれば何ら制限はないが、ジオール(d1)及びジカルボン酸(d2)を反応させて得られるポリエステル構造単位(D1)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)とを有するポリエステル系ブロック共重合体(B1)、および/又は、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とヒドロキシカルボン酸(d3)とを反応させて得られるポリエステル構造単位(D2)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するものを好ましく使用することができる。
【0028】
前記ポリエステル構造単位(D1)は、ジオール(d1)及びジカルボン酸(d2)をエステル化反応させて得られるポリエステルに由来する構造単位であるが、なかでも側鎖を有するアルキル基からなるジオールとジカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルに由来する構造単位であることが好ましい。
【0029】
また、前記ポリエステル構造単位(D2)は、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とヒドロキシカルボン酸(d3)とのエステル化反応により形成されたポリエステルに由来する構造単位であり、それらがランダムにエステル化反応したものであることが好ましい。
【0030】
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)は、ヒドロキシカルボン酸のエステル化反応によって形成されたポリエステルに由来する構造単位であり、例えば乳酸のエステル化反応やラクトンの開環重合反応等によって形成されたポリ乳酸由来の構造単位が挙げられる。その他にポリグリコール酸単位、ポリカプロラクトン構造単位、又は混合物等を好ましく挙げることができる。
【0031】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)は、前記ポリエステル構造単位(D1)及び(D2)をY、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)をXとした場合、例えばXY型ブロック共重合体、XYX型ブロック共重合体、及びランダムブロック共重合体で示される構造を有する。本発明では前記以外の異なる化学構造を有するブロック共重合体の混合物等を使用することもできる。
【0032】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)としては、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を構成する前記ポリエステル構造単位(D1)と前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)との質量割合[(D1)/(C)]が、15/85〜85/15の範囲であるものを使用することが好ましく、30/70〜70/30の範囲であるものを使用することが、優れた結晶化速度、結晶化度、耐ブリードを有するポリ乳酸樹脂組成物を得るうえで好ましい。
【0033】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)としては、ポリエステル系ブロック共重合体(B2)を構成する前記ポリエステル構造単位(D2)と前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)との質量割合[(D2)/(C)]が15/85〜85/15の範囲であるものを使用することが好ましく、30/70〜70/30の範囲であるものを使用することが、優れた結晶化速度、結晶化度、耐ブリードを有するポリ乳酸樹脂組成物を得るうえで好ましい。
【0034】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)を構成する前記ポリエステル構造単位(D1)及びポリエステル構造単位(D2)は、結晶性であっても非結晶性であってもよいが、得られるポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、柔軟性、耐熱性、及び成形加工性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得るうえで非結晶性であることが好ましい。
【0035】
一方で、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)を構成する前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)は、結晶性であっても非結晶性であってもよいが、特に優れた耐衝撃性、透明性及び成形加工性を有するポリ乳酸樹脂組成物を得るうえで非結晶性であることが好ましい。
なお、本発明でいう結晶性とは、例えば、昇温速度20℃/minでDSC測定した際に融点が観察されるものをいい、また、非結晶性とは、例えば、前記測定により融点が観察されないものと区別した。
【0036】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)としては、質量平均分子量10,000〜300,000の範囲を有するものを使用することが好ましく、相容性の観点から、質量平均分子量15,000〜200,000の範囲を有するものがより好ましく、透明性を得るために質量平均分子量20,000〜100,000の範囲を有するものが特に好ましい。前記の範囲の質量平均分子量を有するポリエステル系ブロック共重合体を使用することによって、耐衝撃性、透明性、柔軟性、耐ブリード性の優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)としては、JIS−K7122に準じてDSC測定されるガラス転移温度が−80℃〜70℃の範囲に1つ有するものを使用することが好ましく、ポリ乳酸の結晶化速度、結晶化度を向上させるためには、−20℃〜60℃の範囲に1つ有するものを使用することが好ましい。前記温度範囲内にガラス転移温度が1つで観察されるということは、前記ポリエステル系ブロック共重合体を構成するポリエステル構造単位(D1)またはポリエステル構造単位(D2)と、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)とが相溶していることを意味し、かかるポリエステル系ブロック共重合体(B1)、またはポリエステル系ブロック共重合体(B2)を使用することによって結晶化速度に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。結晶化速度に優れるメカニズムとしては、次のように推定する。ポリ乳酸マトリックス中に微細に分散した前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)がポリ乳酸の結晶核となって核成長速度が高まったこと、又はポリ乳酸の結晶構造が、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)により可塑化されて高次構造が乱れることにより結晶化速度が大きくなったと推察する。
【0038】
又、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)のガラス転移温度を測定するその他の手法としては、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、またはポリエステル系ブロック共重合体(B2)を含む本発明のポリ乳酸樹脂組成物を加工して得られたフィルムの動的粘弾性を、例えばJIS K−7198に準じて測定周波数1Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で測定すると、損失正接のピーク極大値が現れる。ここで、損失正接のピーク極大値をガラス転移温度と定義することもあるので、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)のガラス転移温度としてもよい。また、この場合、加工条件によっては、例えば、一軸または二軸延伸加工して得られたフィルムの動的粘弾性を、例えばJIS K−7198に準じて測定周波数1Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で測定すると、損失正接のピーク極大値が2つ現れる。これは、延伸という外力によって、ポリ乳酸樹脂組成物が相分離したことを意味し、このピーク極大値は、ガラス転移温度に相当するものであって、前記ポリエステル構造単位(D1)、または前記ポリエステル構造単位(D2)、及び前記ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(C)のそれぞれに対応したものが観察される。
【0039】
次に、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B2)は、例えばそれぞれ下記の方法により製造することができる。
【0040】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)は、例えばポリエステル(B1)とポリヒドロキシカルボン酸(C)とを溶融混合した後、エステル化触媒を添加し、減圧下でエステル化反応させることによって製造することができる(方法1)。
【0041】
前記(方法1)での反応温度は、170〜220℃の範囲であることが好ましく、180〜210℃の範囲であることがより好ましい。前記範囲の温度で反応させることによって、得られるポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量低下、色相の低下、ポリヒドロキシカルボン酸(C)の解重合を抑制することが可能である。
【0042】
また、前記(方法1)での減圧度は、高真空である程、エステル化反応が速やかに進行するので好ましい。具体的には2kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましく、0.5kPa以下が特に好ましい。
【0043】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を製造する際に使用できるポリエステル(B1’)は、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)のポリエステル構造単位(D1)を形成しうるものである。
【0044】
前記ポリエステル(B1’)としては、質量平均分子量5,000〜300,000の範囲を有するものが好ましく、得られるポリ乳酸組成物の透明性を得るためには10,000〜100,000の範囲、更に得られるポリ乳酸組成物の成形加工性を向上させるためには、15,000〜50,000の範囲を有するものを使用することがより好ましい。
【0045】
前記ポリエステル(B1’)は、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とを反応させることによって得られる。
前記ポリエステル(B1’)を製造する際に使用できるジオール(d1)としては、脂肪族ジオールや芳香族ジオールが挙げられ、中でも脂肪族ジオールを使用することが好ましい。
【0046】
前記脂肪族ジオール(d1)としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール等を使用することができる。
【0047】
また、前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等を使用することができる。
【0048】
前記ジオールとしては、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の分岐したアルキル基を有するジオールを使用することが、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の柔軟性を一層向上させるため好ましい。
【0049】
また、前記ジオールとしては、前記脂肪族ジオールを2種類以上併用でき、例えばプロピレングリコールとポリエチレングリコールとの併用、エチレングリコールと1,4−ブタンジオールとの併用などが挙げられる。
【0050】
また、前記ジオール(d1)には、本発明の目的を達成する範囲内でジオール以外の水酸基含有化合物を併用することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等を使用することができる。
【0051】
また、前記ジカルボン酸(d2)としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸を使用することができる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等を使用することができる。また、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を使用することができる。ジカルボン酸としては、前記したものを2種類以上併用することもでき、例えば、テレフタル酸とアジピン酸との併用、セバシン酸とダイマー酸との併用などが挙げられる。
【0052】
前記ポリエステル(B1’)の製造方法は、特に限定されず、例えば前記ジオール(d1)と、ジカルボン酸(d2)、その無水物またはそのエステル化物とを、必要に応じてエステル化触媒を用いて、種々のエステル化反応によってエステル化させることにより製造することができる。その際、ポリエステル(B1’)の着色を抑制するために、亜リン酸エステル化合物等の酸化防止剤を、前記ジオールと、ジカルボン酸、その無水物またはそのエステル化物との合計量に対し、好ましくは10〜2000ppm使用してもよい。
【0053】
前記エステル化触媒としては、周期律表2族、3族、及び4族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物からなるものを好ましく使用することができる。前記エステル化触媒としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属や、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物を使用することができる。
【0054】
また、前記エステル化触媒の使用量は、通常、前記ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)等との反応を制御でき、かつ色相等の良好なものが得られる量であればよく、一般的にジオールとジカルボン酸等との合計量に対し、10〜1000ppmの範囲であることが好ましく、20〜800ppmの範囲であることがより好ましく、30〜500ppmの範囲であることが、ポリエステル(B1’)の色相の悪化を抑制する観点から特に好ましい。
【0055】
前記エステル化触媒は、ジオールとジカルボン酸等との原料を仕込む際に添加しておいてもよく、減圧開始の際に添加してもよい。
【0056】
また、前記エステル化触媒は、前記ポリエステル(B1’)製造後に、種々の方法で失活させることが、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)やポリエステル系ブロック共重合体(B2)を製造する際の副反応を抑制できることから好ましい。エステル化触媒の失活方法としては、例えばキレート化剤を使用する方法がある。
【0057】
前記キレート化剤としては、種々の有機系キレート化剤あるいは無機系キレート化剤を使用することができる。有機系キレート化剤としては、例えば、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子としてN含有のフェノール類やカルボン酸等を使用することができる。無機キレート化剤としては、例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物を使用することができる。
【0058】
前記ポリエステル(B1’)を製造する際の温度は、150℃〜260℃の範囲であることが好ましく、180℃〜240℃の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(B1)を製造する際の反応時間は2時間以上であることが好ましく、4〜60時間の範囲であることがより好ましい。前記ポリエステル(B1’)を製造する際の減圧度は、10torr以下であることが好ましく、2torr以下であることがより好ましい。
【0059】
また、前記ポリエステル(B1’)としては、前記方法で得られたポリエステルと、酸無水物や多価イソシアネートや過酸化物等とを反応させることによって高分子量化したポリエステルを、本発明を損なわない範囲内で使用することができる。
【0060】
なお、前記ポリエステル(B1’)は、前記ポリヒドロキシカルボン酸(E)と溶融混合する前に、予めポリエステル(B1’)を製造する際に使用したエステル化触媒を除去または失活等を行って不活性にしておくことが好ましい。これによって、得られるポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量低下を抑制することができる。
【0061】
また、前記(方法1)で使用できるポリヒドロキシカルボン酸(E)は、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)のポリヒドロキシカルボン酸構造単位(B−3)を形成しうるものであって、例えば乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸及びこれらの混合物の重縮合物を使用することができる。
【0062】
前記ポリヒドロキシカルボン酸(E)としては、質量平均分子量10,000〜400,000の範囲を有するものを使用することが好ましく、質量平均分子量30,000〜400,000の範囲を有するものを使用することがより好ましい。かかるポリヒドロキシカルボン酸(E)を使用することによって、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)として高分子量のものを製造できる。
【0063】
前記エステル化触媒としては、前記ポリエステル(B1’)を製造する際に使用できるものとして例示したものと同様のものを好ましく使用することができる。エステル化触媒の使用量は、ポリエステル(B1’)とポリヒドロキシカルボン酸(E)と合計量に対して50〜500ppmの範囲であることが好ましく、50〜300ppmの範囲であることがより好ましく、50〜200ppmの範囲であることが特に好ましい。かかる範囲でエステル化触媒を使用することで、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量の低下を抑制するとともに、良好な色相を有したポリエステル系ブロック共重合体(B1)を得ることができる。
【0064】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)は、例えば前記ポリエステル(B1’)、及び前記ポリヒドロキシカルボン酸(E)とをエステル化触媒を用いて、高沸点溶媒の共存下、減圧条件で共沸脱水重縮合反応させることにより製造することもできる(方法2)。
【0065】
前記高沸点溶媒としては、例えばキシレン、アニソール、ジフェニルエーテル等を好ましく使用できる。また、減圧度は、高沸点溶媒が系内を還流させることが目的で、1000〜3000Paの範囲内であることが好ましい。なお、減圧下で反応させる場合には、前記高沸点溶媒が還流するような装置を用いることが好ましい。
また、水分は、一般に得られるポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量の低下を招くため、特に前記ポリエステル(B1’)としては、反応前に十分に乾燥させたものを使用することが好ましい。
【0066】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)は、例えば前記ポリエステル(B1’)、及びラクトンを、開環重合触媒の存在下にて反応させることにより製造することができる(方法3)。
【0067】
前記ポリエステル(B1’)とラクトンとを開環重合触媒の存在下で反応させ前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を製造する方法は、具体的には不活性ガス雰囲気下、所定温度に設定した反応釜中に、前記ポリエステル(B1’)と前記ラクトンとを適当な良溶媒中に溶解または分散、均一化し、次いで、開環重合触媒を添加することによりそれらを反応させる方法である。反応温度は、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)の着色及び熱分解を防ぐという観点から150〜220℃の範囲が好ましく、160〜210℃の範囲がより好ましく、170〜200℃の範囲が特に好ましい。
【0068】
前記ラクトンとしては、例えば5員環および6員環のラクトンを使用することが好ましく、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、及びこれらの混合物等を使用することがより好ましい。
【0069】
前記ポリエステル(B1’)としては、反応前に十分に乾燥させて水分を除したものを使用することが好ましい。これは、系内に存在する水分によって前記ポリエステルとラクトンとの開環重合反応の阻害や、得られるポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量の低下等を招くためである。
【0070】
(方法3)で使用可能な溶媒としては、例えば、トルエンなどの不活性な溶媒を使用する。溶媒の添加量は、ポリエステル(B1’)とラクトンとの合計量に対して、3〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、5〜30質量部の範囲で使用することがより好ましく、5〜20質量部使用することが更に好ましい。
【0071】
前記開環重合触媒としては、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、Ge、Co、Fe、Al、Mn、Hf等の金属又は有機金属化合物を好ましく使用することができる。これらの中でも、錫粉末、オクタン酸スズ、2−エチルヘキシル酸錫、ジブチルスズジラウレート、テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応に対する活性作用が高い開環重合触媒であるため好ましい。
【0072】
前記開環重合触媒の使用量は、ポリエステル(B1’)とラクトンとの合計量に対して50〜500ppmの範囲が好ましく、50〜300ppmの範囲がより好ましく、50〜200ppmの範囲が特に好ましい。開環重合触媒の使用量がかかる範囲であれば、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)の分子量低下を抑制するとともに、良好な色相を有するポリエステル系ブロック共重合体(B1)を得ることができる。
【0073】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を製造する方法としては、前記(方法1)〜(方法3)のなかでも、通常、多量の溶媒を除去する必要のない(方法1)、及び(方法3)が好ましい。
【0074】
また、ポリエステル系ブロック共重合体(B1)は、例えばポリエステル系ブロック共重合体(B1)を更に多官能ポリオールや酸無水物や多価イソシアネートやエポキシ化合物や過酸化物等と反応させることにより高分子量化されたものであってもよい。
【0075】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を製造する際にした開環重合触媒やエステル化触媒は、必要に応じて適当な溶媒を用いることによって抽出除去してもよく、また前記キレート化剤を用いて前記エステル化触媒等を失活させてもよい。
【0076】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)の保存安定性を向上させることを目的として、適宜、助剤を使用してもよい。かかる助剤としては、例えばカルボジイミドを使用することができる。
【0077】
一方で、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)は、例えばジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とヒドロキシカルボン酸(d3)とを反応させて得られたポリエステル(B2’)と、ポリヒドロキシカルボン酸(E)とをエステル化反応することによって製造することができる。
【0078】
前記ポリエステル(B2’)は、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)のポリエステル構造単位(D2)を構成しうるものである。ポリエステル(B2’)は、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とヒドロキシカルボン酸(d3)との共重合体であって、こられがランダムに共重合したものであることが好ましい。
【0079】
前記ポリエステル(B2’)を製造する際に使用可能なジオール(d1)及びジカルボン酸(d2)としては、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)を製造する際に使用可能なものとして例示したジオール(d1)及びジカルボン酸(d2)と同様のものを使用することができる。
【0080】
また、ポリエステル(B2’)を製造する際に使用可能なヒドロキシカルボン酸(d3)としては、分子中に1個の水酸基とカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸あるいはこれらの混合物を使用することができる。ヒドロキシカルボン酸として光学異性体の存在するヒドロキシカルボン酸を使用する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれも使用することができる。また、前記ヒドロキシカルボン酸(d3)としては、固体または液体のものを使用してもよく、それらの水溶液を使用してもよい。
【0081】
前記ヒドロキシカルボン酸(d3)としては、乳酸またはグリコール酸を使用することが、入手が容易であること、前記ポリエステル(B2’)を製造する際の反応制御が容易であること、ポリエステルの2量体や3量体等をはじめとする副生成物の発生を大幅に抑制できることから好ましい。また、前記ヒドロキシカルボン酸(d3)を用いることにより副生成物の発生を大幅に抑制でき、得られるポリエステルの分子量を比較的高分子量に調整することが容易である。
【0082】
前記ポリエステル(B2’)は、原料としてジオール(d1)及びジカルボン酸(d2)の他に前記ヒドロキシカルボン酸(d3)を使用すること以外は、前記ポリエステル(B1’)と同様の方法によって製造することができる。
【0083】
ポリエステル(B2’)は、ポリエステル(B2’)全体に対して1〜50モル%の範囲のヒドロキシカルボン酸(d3)由来の構造単位を有していることが好ましく、3〜40モル%の範囲であることがより好ましい。前記範囲のヒドロキシカルボン酸(d3)由来の構造単位を有するポリエステル(B2’)を使用することによって、ブリードを引き起こしにくく、及び結晶化速度、及び成形加工性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【0084】
また、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)は、前記ポリエステル(B1’)の代わりに、前記ポリエステル(B2’)を使用すること以外は、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)の製造方法として例示した(方法1)〜(方法3)の方法と同様の方法により製造することができる。
【0085】
次に、本発明で使用するアミド系化合物(C)を説明する。
【0086】
次に、本発明で使用するアミド系化合物(C)は、一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類である。
【0087】
【化2】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基を表す。]で表される化合物である。
【0088】
本発明で使用するトリメシン酸トリアミド化合物は、ポリ乳酸(A)又はポリエステル系ブロック共重合体(B)の結晶核を形成し、これらの結晶化を促進させる結晶核剤として有効に作用するものであり、得られるポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度、結晶化度の向上、すなわち、耐熱性、成形加工性の向上に寄与する。
【0089】
前記炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基としては、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、3−エチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、2−n−プロピルシクロヘキシル基、3−n−プロピルシクロヘキシル基、4−n−プロピルシクロヘキシル基、2−iso−プロピルシクロヘキシル基、3−iso−プロピルシクロヘキシル基、4−iso−プロピルシクロヘキシル基、2−n−ブチルシクロヘキシル基、3−n−ブチルシクロヘキシル基、4−n−ブチルシクロヘキシル基、2−iso−ブチルシクロヘキシル基、3−iso−ブチルシクロヘキシル基、4−iso−ブチルシクロヘキシル基、2−sec−ブチルシクロヘキシル基、3−sec−ブチルシクロヘキシル基、4−sec−ブチルシクロヘキシル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、2,3,4−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,6−トリメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,4,5−トリメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0090】
上記トリメシン酸トリアミド化合物類のなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度を向上させる観点から、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)が好ましく、特に、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)を好ましく使用することができる。
【0091】
前記トリメシン酸トリアミド化合物類は、例えば、トリメシン酸、又はその酸クロライドと、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシルアミンとをアミド化することにより得られる。
【0092】
又、本発明のポリ乳酸樹脂組成物中におけるトリメシン酸トリアミド化合物類の形状には特に制限がないが、平均粒径が0.01〜30μmの範囲が好ましい。平均粒径が30μmより大きい場合には、トリメシン酸トリアミド化合物類のポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)との溶融混練時の溶解性が悪くなり、ポリ乳酸樹脂組成物への造核作用、及び透明性が低下する傾向がある。その結果、得られる成形体の結晶化度が低下し、耐熱性の低下を招く。
【0093】
次に本発明のポリ乳酸樹脂組成物について説明する。
【0094】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸の結晶化速度、及び結晶化度を高め、耐ブリード性を有することから耐熱性、柔軟性、耐衝撃性、成形加工性に優れる。
【0095】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸(A1)と、ポリエステル系ブロック共重合体(B)と、アミド系化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記アミド系化合物(C)が、一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類である。
【0096】
【化3】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基を表す。]
【0097】
又、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレートからなる群から選ばれる1種以上のヒドロキシカルボン酸誘導体と乳酸又は乳酸誘導体との共重合体(A1)、ポリエステル系ブロック共重合体(B)と、アミド化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記アミド系化合物類(C)が一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類を含有する。
【0098】
【化4】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
【0099】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸(A)と前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)との質量割合(A)/(B)が95/5〜30/70の範囲が好ましく、より一層の結晶化促進効果、耐ブリード性の観点から、90/10〜40/60の範囲が好ましい。前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)の質量割合が5より小さい場合、結晶化速度の促進効果が得られがたく、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)の質量割合が70より大きい場合、ポリ乳酸樹脂組成物から得られる成形品の耐熱温度、剛性、耐ブリード性、成形加工性等が損なわれる。
【0100】
より具体的には、ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸(A)と、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)との質量割合(A)/(B1)が95/5〜30/70の範囲が好ましく、90/10〜40/60の範囲がより好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物は、前記ポリ乳酸(A)と、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)との質量割合(A)/(B2)が95/5〜30/70の範囲が好ましく、85/15〜40/60の範囲がより好ましい。前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)又は前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)の質量割合が5より小さい場合、結晶化速度の促進効果が得られがたく、前記ポリエステル系ブロック共重合体(B1)又は前記ポリエステル系ブロック共重合体(B2)の質量割合が70より大きい場合、ポリ乳酸樹脂組成物から得られる成形品の耐熱温度、剛性、耐ブリード性、成形加工性等が損なわれる。
【0101】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物において、前記ポリ乳酸(A)と前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)との合計量に対して、アミド系化合物(C)が0.05〜5質量部の範囲を含有することが好ましく、アミド系化合物(C)を前記ポリ乳酸(A)と前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)中に均一溶解させ、より効果的な結晶核成長させるためには、0.10〜1質量部の範囲を含有することがより好ましい。
【0102】
ここで、トリメシン酸トリアミド化合物類(C)の添加量に関しての理論的な知見として次のような考察が成り立つ。すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物中におけるトリメシン酸トリアミド化合物類が結晶核剤として完全に働くとすべての球晶の中心に1個の核が存在する。従って、ポリ乳酸樹脂組成物中に核剤粒子を多くすれば、球晶サイズは小さくなる筈である。具体的には、例えば直径10nmの核剤粒子の周りに直径100nmの球晶があれば、結晶核剤の混合(体積)比率は1/1000=0.1%。球晶の直径が50nmであれば、体積比率は1/125=0.8%である。
一方、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて、例えば、得られるシートを透明化するためには、結晶核剤が完全には働かないことや、その比重を考慮すると、球晶を透明のレベルまで十分小さくすればよく、具体的には、レイリー散乱以下の球晶サイズにすればよく、この時の球晶の大きさは、直径100nm以下程度になり、0.05〜0.2%の範囲内で適宜調製すればよいことになる。
【0103】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、
(1)ポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B1)及び/またはポリエステル系ブロック共重合体(B2)とアミド系化合物(C)とを適切なミキサーで混合し、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で加熱溶融混練する方法、
(2)ポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B1)及び/またはポリエステル系ブロック共重合体(B2)とを加熱溶融混練した後に、アミド系化合物(C)及び必要に応じてその他の添加剤を供給し、高速撹拌機または低速攪拌機などを用いて均一混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で加熱溶融混練する方法、
(3)予め少量のポリ乳酸(A)と過剰のポリエステル系ブロック共重合体(B1)及び/またはポリエステル系ブロック共重合体(B2)と過剰のアミド系化合物(C)とを適切なミキサーで混合し、溶融混錬させた、いわゆるマスターバッチと、ポリ乳酸(A)とを、押出機を用いて加熱溶融混錬する方法、等によって製造することができる。また、前記マスターバッチの形状は、ペレットや粉末等であることが好ましい。
【0104】
上記各成分を混練することにより、本発明の樹脂組成物を得ることができる。各成分の混錬方法としては特に制限はなく、従来公知の方法により混合することができる。例えば、各成分をタンブラー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘルシェルミキサー、タンブラーミキサーなどに仕込み混練するドライブレンド法、更に該ドライブレンド物を1軸又は2軸押出機、ニーダー、ロール等で溶融混練し冷却、ペレット化する方法、または、各樹脂を溶媒に溶かし、混合した後に溶媒を除去する溶液ブレンド法などが挙げられる。
【0105】
より具体的に本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、上述した3つの製造方法に加え、ポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)にトリメシン酸トリアミド化合物類が溶解する温度(以下、溶解温度)以上にて均一に分散するまで溶融混練させることを特徴とする。これにより、優れた結晶化速度を有するため、短時間で成形体に高い結晶化度を付与し、優れた耐熱性、耐衝撃性、成形加工性を有する成形体を得ることができる。
【0106】
具体的にトリメシン酸トリアミド化合物類は、一般に融点が180℃〜400℃の範囲に存在するため、ポリ乳酸(A)、及びポリエステル系ブロック共重合体(B)とトリメシン酸トリアミド化合物類とを溶融混練すると、まずポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)が先に溶融し、次いでトリメシン酸トリアミド化合物類がポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)に溶解する。ここで溶解温度は、190℃〜260℃の範囲が好ましく、200℃〜255℃の範囲がより好ましく、ポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)の熱分解を抑制し、トリメシン酸トリアミド化合物類をより均一に分散させる観点から210℃〜250℃の範囲で溶解させることが特に好ましい。
【0107】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、溶融温度で溶解後は直ちに冷却固化せしめることで一端溶解したトリメシン酸トリアミド化合物類を析出させ、さらに析出したトリメシン酸トリアミド化合物類が微細な核を形成せしめるため、透明性、結晶化速度、結晶化度を高める。
【0108】
前記溶解温度を事前に簡便に測定する手法としては、例えば、加熱プレート等の温ちょう機を付属した光学顕微鏡を用いて、ポリ乳酸樹脂組成物を加熱しながら、溶融したポリ乳酸(A)とポリエステル系ブロック共重合体(B)中に存在するトリメシン酸トリアミド化合物類由来の固体が観察されなくなるまでの温度を観察する。又、実際にトリメシン酸トリアミド化合物類が認められなくなるまで溶融混練するには、加熱溶融時のポリ乳酸樹脂組成物の滞留時間、スクリューの回転数等を調整することにより行うことができる。次いで、この溶融状態を維持したまま、成形工程に供して、ポリ乳酸樹脂組成物を冷却・結晶化させる。なお冷却時の温度(例えば、射出成形においては金型温度)は、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度〜140℃の範囲、特に80℃〜120℃の範囲が好ましい。かかる成形方法を用いることにより、結晶化速度が大きく、高い結晶化度、耐ブリード性を有し、優れた耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、成形加工性のある成形体を得ることができる。
【0109】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えば、セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」(以下、DSC)を用いて、約10mgのポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温した際に観察される、結晶化ピーク温度が110℃〜ポリ乳酸樹脂組成物の融点の範囲にされることで結晶化速度、結晶化度を有するため耐熱性に優れる。さらに耐熱性を付与するためには、115℃〜160℃の範囲に観察されることが好ましい。
【0110】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、DSC測定装置を用いて、約10mgのポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、この後、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度20℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行なう。この時、2次昇温時で描かれたDSC曲線の融解熱量ピーク面積(ΔHm)と1次昇温時に描かれたDSC曲線の結晶化熱量ピーク面積(ΔHc)を用いて、次式から算出される結晶化度αは20%〜100%の範囲であることが好ましく、優れた結晶化速度を有するためには30%〜100%の範囲がより好ましく、格段な成形加工性を有するためには40%〜100%の範囲を有することが特に好ましい。
結晶化度α=(ΔHm−ΔHc)/ΔHmx100 (%)
【0111】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、必要に応じてその他の樹脂等を併用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンに代表される汎用樹脂や、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、酢酸セルロース等に代表される生分解性樹脂、ポリエチレンオキサイド、メタクリルブチレンスチレン樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリルブチレンスチレン樹脂(ABS樹脂)等を使用することができ、なかでも環境負荷低減の観点からバイオマス由来である熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0112】
本発明にかかるポリ乳酸樹脂組成物には、目的に応じて、本発明を損なわない範囲内で、顔料、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着付与剤、可塑剤、有機フィラー、無機フィラー、内部離型剤、抗菌抗カビ剤、その他フィラーを添加することができる。
【0113】
顔料としては、有機顔料、無機顔料に大別されるが、無機顔料としては、体質顔料として沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸カルシウムホワイトカーボン(シリカ)、焼成クレー、カオリンクレー、タルク、金属酸化物として酸化チタン、亜鉛華、チタンブラック、黄色酸化鉄、べんがら、黒鉄、酸化クロム、ビリジアン、複合金属酸化物としてコバルトブルー、コバルトグリーン、チタンイエロー、クロム酸塩として黄鉛、クロムバーミリオン、硫化物としてリトポン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、リン酸塩としてコバルトバイオレットディープ、金属錯体として紺青、群青、炭素としてカーボンブラック、金属粉としてアルミニウム粉、亜鉛末、その他としてコバルトバイオレットノーバが挙げられ、有機系顔料としては、アゾ系顔料と縮合多環系顔料に大別できるが、アゾ系顔料として不溶性アゾ顔料(ノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、β−ナフトール系、ナフトールAS系、ピラゾロン系、ベンツイミダゾロン系)、縮合アゾ顔料(イエロー、レッド)、アゾレーキ顔料(イエロー、β−ナフトール系、BON酸系、ナフトールAS系)、縮合多環系顔料としてはフタロシアニン系(ブルー、グリーン)、キナクリドン系、アントラキノン系(インダンスロンブルー、アントラキノン系)、ペリレン系、ペリレン系、インジゴ系、ジオキサジン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系が挙げられる。これらの顔料の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜1質量部の範囲内で使用することができる。
【0114】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなどを、熱安定剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどを、紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノンなどを、帯電防止剤としては、N,N−ビス(ヒドリキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルフォネート、アルキルスルフォネートなどが挙げられる。これら添加剤の量としては、樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内で使用することができる。
【0115】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素系や塩素系等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、シリコーン系化合物等の無機系難燃剤、赤リン、リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン等のリン系難燃剤、メラミン、目ラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、アルキルホスホン酸メラミン、フォスホン酸メラミン、硫酸メラミン、メタンスルホン酸メラム等のメラミン系難燃剤、PTFE等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらの難燃剤の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜100質量部の範囲内で使用することができる。
【0116】
有機フィラーとしては、公知の有機フィラーを使用することができる。有機フィラーとしては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシル−2.6−ナフタレンジカルボキシアミド、N,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,4−ブタンテトラアミド、N,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシックアミド、 N,N’−ジフェニル−3−スルフォニルジベンズアミド、 N,N’、N”−トリブチルトリメシックアミド、N,N’−ジフェニルテレフタルアミド、N,N’−ジフェニルサクシンアミド、N,N’−ジフェニルスベリックアミド、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−フォスフォフェニル)メタンのナトリウム塩, ジ−t−ブチルアルミニウムベンゾエート、脂肪族カルボン酸系において、脂肪族カルボン酸アミドとして、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスー12−ヒドロキシステアリン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩としてステアリン酸Na、ステアリン酸K、ステアリン酸Zn、モンタン酸Ca、脂肪族カルボン酸エステルとしてエチレングリコールジステアレート、脂肪族アルコールとしてステアリルアルコールが挙げられる。これらの有機フィラーの量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜100質量部の範囲内で使用することができる。
【0117】
無機フィラーとしては、種々の無機フィラーを使用することができる。無機フィラーとしては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化錫、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの無機フィラーの量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜50質量部の範囲内で使用することができる。
【0118】
本発明で使用する内部離型剤としては、通常の高級脂肪酸及びその塩やエステル油、シリコーン油、ポリビニルアルコール、ポリアルキルグリコール、低分子量ポリオレフィン等の離型剤が挙げられるが、特に、シリコーン油が好ましい。シリコーン油の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル等のストレートシリコーン油、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル等の変性シリコーン油が挙げられ、特に安全性の点で、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルが好ましい。これらの内部離型剤の量は、樹脂分100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内で使用することができる。
【0119】
その他フィラーとしては、ケナフ繊維が挙げられる。本発明に適用されるケナフ繊維は、平均繊維長が100μm〜20mmであり、かつ少なくとも300μm〜20mmの繊維長のケナフ繊維を含んでいることが好ましい。本発明の樹脂組成物はこうした範囲からなるケナフ繊維が含有されているので、成形体の補強効果がより高められる。より好ましいケナフ繊維の平均繊維長は1〜10mmであり、ポリエステル樹脂組成物の補強効果をより一層向上させることができる。ここで、平均繊維長とは、破砕片を除く繊維の数平均繊維長を意味し、破砕片とは、長手方向の長さが50μmに満たないものと定義する。
【0120】
含有するケナフ繊維が20mmを超える平均繊維長である場合または20mmを超える繊維長のケナフ繊維を含む場合には、ケナフ繊維強化樹脂組成物を製造する際に、混練機などの製造装置内で樹脂中の繊維分の分散が不均一になり易い。成形品の肉厚に対して長過ぎる繊維が含まれると、成形品の外観や手触りなどが損なわれるので、最大繊維長は成形品の肉厚に対して10倍以下が望ましく、より望ましくは5倍以下である。さらに射出成形時においては、成形装置内で樹脂組成物が詰まる原因となる。特に、繊維長が50mmを超えるケナフ繊維については、混練機に導入する前に除去することが望ましい。一方、繊維長が300μm未満のケナフ繊維のみを含有したケナフ繊維強化樹脂組成物を用いた場合は、ケナフ繊維による補強効果が十分ではない。
【0121】
平均繊維長が100μm〜20mmであり、かつ少なくとも300μm〜20mmの繊維長のケナフ繊維を含むケナフ繊維を、本発明のポリ乳酸樹脂組成物に含有させた場合、強度が向上するだけでなく、熱変形温度を指標とする耐熱性も向上効果が期待できる。
【0122】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、成形してポリ乳酸樹脂成形体を得ることができる。
【0123】
具体的に、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は成形加工性に優れるため、各種成形物を得ることができる。各種成形物の製造方法としては、特に限定するものでなく、一般のプラスチックと同様の押出成形、射出成形、カレンダー成形、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形、ニュージェネレーションフォーミング等の公知の成形法によって、種々の形状の成形体に容易に成形することができ、しかも、得られる成形体は高強度で熱安定性に優れたものとなりうる。また、溶融紡糸することにより、繊維状に成形することもできる。
【0124】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて製造可能な成形物としては、例えばフィルム、繊維、各種容器、各種部品等の成形物に使用することができるが、特にフィルムやシートの製造に好適な材料である。フィルムやシートの具体的な成形方法としては、押出し法、共押出し法、カレンダー法、ホットプレス法、溶媒キャスティング法、インフレーション法、バルーン法、テンター法等が挙げられるが、その方法に何ら制限はない。
なお、本発明でいうフィルムは、その形状、大きさ、厚み及び意匠等の点で何ら制限されるものではない。本発明では混乱を避けるため、フィルム及びシートの表現を「フィルム」に一元化するものとする。本発明のフィルムは、5μm〜2mmの範囲の厚みを有することが好ましい。
【0125】
前記押出し法によりフィルムを成形する場合には、例えばTダイ、インフレーションダイ(円形ダイ)、フラットダイ、シングルマニホールドダイ等のダイを用いることができる。共押出し法によれば、性質の異なる複数の該ポリマー及び/又は他種ポリマーを用いて、多層フィルムを製造することができる。
【0126】
本発明のフィルムは、前記した各種成形法により成形された、加熱溶融状態のフィルムは、通常、所定の厚みになるようにキャスティングされ、必要により冷却・固化される。その際、タッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一なフィルムを作製することができる。
【0127】
前記フィルムは、ポリ乳酸樹脂組成物のTg以上、融点以下の温度でテンター方式やインフレーション方式等の公知慣用の方法で一軸及び二軸に延伸することができる。延伸温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のTg〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、Tg〜(Tg+30)℃の範囲が特に好ましく設定することができる。但し、Tgが2つ以上有する場合、いずれかの高い温度のTgを指すものとする。延伸温度がTg未満では延伸が困難であり、(Tg+50)℃を越えると延伸による強度向上が認められないことがある。
【0128】
一軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸、又はテンターによる横延伸により、縦方向又は横方向に1.3〜10倍延伸することが好ましい。二軸延伸の場合は、ロール法による縦延伸及びテンターによる横延伸により行うことが好ましい。前記延伸は、一軸目の延伸と二軸目の延伸を逐次的に行っても、同時に行っても良い。延伸倍率は、縦方向及び横方向にそれぞれ1.00〜3.00倍延伸するのが好ましい。延伸倍率がこれ以上高いと延伸時にフィルムが破れてしまい成形加工が困難になる。
【0129】
前記得られた延伸フィルムを成形加工することによって、透明性、耐熱性、耐衝撃性、成形加工性が特に優れた成形体を得ることができる。前記した性能の発現は、延伸によりフィルムが配向結晶するため獲得されるが、特に本発明のフィルムの場合、トリメシン酸トリアミド化合物類の結晶核剤効果、及びポリ乳酸樹脂組成物の配向結晶の相乗効果によりその性能レベルを格段に飛躍することができる。
【0130】
また、本発明のフィルムは延伸直後に後述するヘーズ値を損なわない範囲内で延伸された状態で熱セット処理を行うことでフィルムの歪みを除去し(収縮の抑制)、または結晶化を促進させることができる。熱セット処理温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のTg〜ポリ乳酸樹脂組成物の融点の範囲で行うことができるが、50%〜160℃の範囲、より好ましくは60%〜140℃の範囲で行うと、耐熱性だけではなく引張伸度、引張強度等の他のフィルム物性を向上させることができる。但し、前記フィルムを延伸後に熱処理により完全に結晶化させてしまうと熱加工がしにくくなり、良好な成形体を得難くなる。
【0131】
熱セット処理時間は通常0.1秒〜30分の範囲であるが、生産性等の実用性を考えた場合、この時間は短い程良いため、好ましくは0.1秒〜3分の範囲、より好ましくは0.1秒〜1分の範囲である。
【0132】
前記フィルムは、ヘーズ値が0.1%〜50%の範囲であることが好ましく、より微細な結晶核が実現できれば、ヘーズ値が0.1%〜40%の範囲である。また、特に透明性を必要な分野に適用する場合には、フィルムのヘーズ値が0.1%〜10%の範囲を有することが好ましい。
【0133】
ヘーズ値の測定方法としては、ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを5cm×5cmの正方形(200μm厚み)に切り抜き、濁度計(日本電色工業株式会社製ND−1001DP)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のヘーズ値を測定した。
【0134】
前記方法で得られたフィルムは、更にブロー加工法、真空成形法、圧空成形等の方法によって二次加工に供することができる。具体的には、前記フィルムを二次加工することによって、例えばスーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ、等の袋やバッグを製造することができる。2次加工では、成形加工前後でフィルムの耐熱性を向上させるためにガラス転移温度〜150℃の範囲で熱処理することが特に好ましい。
【0135】
本発明のフィルムは、シュリンクフィルム、蒸着フィルム、ラップフィルム、食品包装、その他一般包装、ゴミ袋、レジ袋、一般規格袋、重袋等の包装や、紙おむつ及び生理用品等の衛生材料や、創傷被覆材等の医療用材料や、発芽フィルム、農業用マルチフィルム、養生フィルム及び苗木ポット等の農業資材や、トレー、カップ、皿及びメガホン等の紙製品の表面ラミネーション材料や、その他結束テープ(結束バンド)、プリペイカード、風船、セロハン粘着テープ、傘、合羽、手袋、煙草等のフィルター等の多岐にわたる用途に使用することができる。
【0136】
本発明で得られたポリ乳酸樹脂組成物は、例えば80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて190℃で加熱溶融、冷却固化させることで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製する。前記フィルムを用いて、JIS−P−8115に準拠し、MIT耐折強度試験を行うと、3,000回以上が好ましく、5,000回以上がより好ましく、10,000回が特に好ましい。上記の回数を有することによって、成形品の割れ、脆さといった耐衝撃性の判断材料となる。ここで、汎用樹脂の1つであるPET(A−PET)では、MIT耐折強度試験で3,000回以上である。よって、MIT耐折強度試験によって、3,000回以上であることが実用上好ましい。
【0137】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物から得られるフィルムは、加熱処理することによって優れた耐熱性を有する。フィルムの耐熱性を測定する方法としては、例えば、フィルムを真空成形により成形した成形体のフランジ部分を用いて、幅20mm、長さ120mm、厚み250μmの試験片とし(試験片の長手方向に両端から長さ10mmのところに標線を付した)、該試験片の一方の端に、全重量約160gの分銅の入った容器をクリップに結びつけた治具を取り付け(クリップのつかみ部分10mm)、他方の端を適当な冶具にて固定してフィルムおよび分銅が垂下するようにする。これを100℃に設定した恒温ギアオーブン(例えば、エスペック社製、GPHH-101)中に、試験片が恒温器の中央に位置するように静置し、1分間加熱した。恒温器中から、試験片を取り出して冷却した後、試料片の長さ(A:単位mm)を測定し、加熱、荷重負荷処理(温度100℃の環境下、0.4MPaの荷重を1分間負荷)後の処理前の長さに対する長さ変化率D(単位%)を次式にて算出した。例えば、Dが0%であれば実質上、その試料片は100℃の耐熱性を有すると判断することができる。
長さ変化率D=((A−100)/100}×100 (%)
上記耐熱試験方法における100℃における長さ変化率Dは、0〜30%の範囲が好ましく、優れた耐熱性を有するためには0〜10%がより好ましく、0〜5%の範囲が特に好ましい。
【0138】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形加工して得られたフィルム又は容器は、優れた生分解性を有する。例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形して得られた100〜600μm厚の範囲のフィルムを10cm×10cmの正方形に切り抜き、40℃で湿度90%の恒温恒湿器に放置したとき、これらフィルム表面から少なくとも200日以上ブリードの発生が認められない。
【0139】
前記したように、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を成形加工して得られたフィルム又は容器は、良好な分解性を有し、海中に投棄された場合であっても、加水分解、生分解等による分解を受ける。海水中では数カ月の間に外形を保たないまでに分解可能である。また、コンポストを用いると、更に短期間で原形をとどめないまでに生分解され、また焼却しても有毒ガスや有毒物質を排出することはない。
【実施例】
【0140】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0141】
[数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の測定方法]
東ソー株式会社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(以下、GPCと省略する。)「HLC−8220」を使用し、カラムとして、TSK gel SuperHZM−Mを2本、及びTSK gel SuperHZ−2000を2本と、ガードカラムとしてTSK SuperH−Hを用い、展開溶媒として、テトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレンとの比較で、ポリ乳酸、ポリエステル系ブロック共重合体の分子量を測定した。
【0142】
[ガラス転移温度の測定方法]
約10mgのポリエステル系ブロック共重合体を測定容器に入れ、セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量測定装置「DSC 220C」(以下、DSCと省略する。)を用いて、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度50℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行うことによって描かれたDSC曲線からガラス転移温度と融点を求めた。
【0143】
[ポリエステルを構成するジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比、ならびにポリエステル系ブロック共重合体を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位の質量組成比の測定方法]
H−NMR装置(日本電子株式会社製、JNM−LA300)を用いて、ポリエステルのクロロホルム−d(CDCl)溶液を分析することで、該ポリエステルを構成する中のジオール構造単位、ジカルボン酸構造単位及びヒドロキシカルボン酸構造単位のモル組成比(モル%)を測定した。また、ポリエステル系ブロック共重合体のクロロホルム−d(CDCl)溶液を前記と同様の装置を用いて分析することで、該ブロック共重合体を構成するポリヒドロキシカルボン酸構造単位とポリエステル構造単位との質量組成比(質量%)を算出した。
【0144】
[等温結晶化時間、結晶化熱量、結晶化温度の測定方法]
5.0mgの得られたポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、パーキンエルマー社製の示差走査熱量測定装置「DSC−ダイアモンド」を用いて、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度20℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせ、冷却速度20℃/分で210℃から0℃まで降温し、加熱速度20℃/分で0℃から210℃まで昇温した。降温時に観察される結晶化熱量と、ピーク温度(結晶化温度)とした。この後、100℃まで急激に降温させてホールドし、降温してから結晶化の吸熱ピークが現れるまでの時間を等温結晶化時間とした。なお、本発明では概ね1分以下の結晶化時間を有するものが、成形加工性(特に成形加工サイクル)に優れるため好ましい。無論、樹脂によって結晶化ピーク温度が異なるので同一温度での測定で性能比較はできないが、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の場合、100℃〜120℃の範囲であれば、一定温度条件で測定したサンプルにて等温結晶化時間を比較しても何ら問題はない。また、得られたポリ乳酸樹脂組成物の等温結晶化時間は、測定装置の限界から30秒以上に吸熱ピークが観察されるものについて測定可能であった。
【0145】
[結晶化度の算出方法]
10mgのポリ乳酸樹脂組成物を測定容器に入れ、DSCを用いて、窒素ガス流量50mL/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度20℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行った。2次昇温時で描かれたDSC曲線の融解熱量ピーク面積(ΔHm)と1次昇温時に描かれたDSC曲線の結晶化熱量ピーク面積(ΔHc)から次式にて結晶化度αを算出した。
結晶化度α=(ΔHm−ΔHc)/ΔHm×100 (%)
【0146】
[冷却時間の評価方法]
1oz竪型射出成型機(株式会社山城精機製作所製、SAV30)を用いて、シリンダー温度が155℃〜185℃、金型温度が110℃、射出時間15sにて、バー試験片13x130×6(mm)、15x130×3(mm)を成形した。
この際、冷却時間をかえて、突き出しによる変形、目視による結晶化の状態、成形品の型離れの成形品の状態確認を行って最適な冷却時間を定めた。例えば、前記成形条件で数平均分子量94,000、質量平均分子量172,000のポリ乳酸(三井化学社製レイシア、品番「H400」、以下、「PLA1」と省略する。)の冷却時間は30min以上要した。
【0147】
《参考例1》ポリエステル(D1−1)の製造例1
反応器にコハク酸(以下、SuAと省略。)を1000gとプロピレングリコール(以下、PGと省略。)を696gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に20℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。220℃到達1時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SuAとPGとの仕込み合計量に対して70ppmを加えて、3,500Paまで減圧し加熱撹拌した。更に減圧1時間後、100Paまで減圧して7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステルに対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が15,000、質量平均分子量が24,000のポリエステル(D1−1)を得た。なお、ポリエステル(D1−1)の酸価は0.5、ガラス転移温度は−4℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位との組成比は50.4/49.6(モル%)であった。
【0148】
《参考例2》ポリエステル(D2−1)の製造例2
反応器にSuAを1024gとPGを586gと90質量%乳酸水溶液を600gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に20℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら220℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。220℃到達1時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SuAとPGとLAとの仕込み合計量に対して70ppmを加えて、3,000Paまで減圧し加熱撹拌した。更に減圧1時間後、100Paまで減圧し、5時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステルに対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が17,000、質量平均分子量が25,000のポリエステル(D2−1)を得た。なお、ポリエステル(D2−1)の酸価は0.8、ガラス転移温度は5℃、PG由来の構造単位とSuA由来の構造単位とLA由来の構造単位との組成比は31.2/36.3/32.5(モル%)であった。
【0149】
《参考例3》ポリエステル(D1−2)の製造例3
反応器にセバシン酸(以下、SeAと省略。)を1000gとプロピレングリコール(以下、PGと省略。)を414gとを仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に20℃ずつ昇温し、生成する水を留去しながら230℃まで加熱撹拌してエステル化反応を行った。230℃到達1時間後、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを、SeAとPGとの仕込み合計量に対して70ppmを加えて、3,500Paまで減圧し加熱撹拌した。更に減圧2時間後、100Paまで減圧して7時間反応させた。反応終了後、得られたポリエステルに対して重合触媒の失活剤として2−エチルヘキサン酸ホスフェートを80ppm添加することにより数平均分子量が15,000、質量平均分子量が24,000のポリエステル(B1−3)を得た。なお、ポリエステル(B1−3)の酸価は0.2、ガラス転移温度は−48℃、PG由来の構造単位とSeA由来の構造単位との組成比は50.8/49.2(モル%)であった。
【0150】
《参考例4》ポリエステル系ブロック共重合体(B1−1)の製造例1
210℃に加熱した反応器にポリエステル(D1−1)を500g仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、550gのPLA1を添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを前記溶融混合物に対して150ppm添加し、温度200℃及び減圧度150Paの条件下で4.5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを得られた反応物に対して500ppmを添加し、数平均分子量が37,000、質量平均分子量が58,000のポリエステル系ブロック共重合体(B1−1)(ガラス転移温度:17.1℃、融点:152.5℃)を得た。
【0151】
《参考例5》ポリエステル系ブロック共重合体(B2−1)の製造例2
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(D2−1)を500g仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を550g添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを前記溶融混合物に対して200ppm添加し、温度200℃及び減圧度150Paの条件下で4.5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを得られた反応物に対して500ppmを添加することで、数平均分子量が27,000、質量平均分子量が47,000のポリエステル系ブロック共重合体(D2−1)(ガラス転移温度:25.6℃、融点:147.5℃)を得た。
【0152】
《参考例6》ポリエステル系ブロック共重合体(B1−2)の製造例3
210℃に加熱した反応器に、ポリエステル(D1−1)を500g仕込み、十分に加熱溶融した。次いで、PLA1を550g添加して均一に加熱溶融混合したものに、重合触媒としてチタンテトラブトキシドを前記溶融混合物に対して150ppm添加し、温度200℃及び減圧度150Paの条件下で4.5時間反応させた。反応終了後に重合触媒の失活剤である2−エチルヘキサン酸ホスフェートを得られた反応物に対して500ppmを添加し、数平均分子量が66,000、質量平均分子量が111,000のポリエステル系ブロック共重合体(D1−2)(ガラス転移温度:−47.5℃、55.5℃、融点:164.5℃)を得た。
【0153】
《実施例1》ポリ乳酸樹脂組成物(P−1)
ポリ乳酸(トヨタ自動車社製U‘s、品番「S09」、以下、PLA2と省略する)を2250gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B1−1)を750gと、平均粒子径2.8μmのトリメシン酸トリシクロヘキシルアミド(新日本理化株式会社製エヌジェスターTF−1、以下、TF−1と省略する)7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−1)を得た。
【0154】
《実施例2》ポリ乳酸樹脂組成物(P−2)
PLA1を600gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B1−1)を600gと、TF−1とを7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレットを得た。前記ペレットを80℃、2時間、真空乾燥させた後、PLA2を75質量部と、前記ペレットを25質量部とをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−2)を得た。
【0155】
《実施例3》ポリ乳酸樹脂組成物(P−3)
PLA2を2700gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B2−1)を300gと、TF−1を15gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−3)を得た。
【0156】
《比較例1》ポリ乳酸樹脂組成物(P−4)
PLA1を3000gと、TF−1を7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−4)を得た。
【0157】
《比較例2》ポリ乳酸樹脂組成物(P−5)
PLA1を2400gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B1−1)を600gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−5)を得た。
【0158】
《比較例3》ポリ乳酸樹脂組成物(P−6)
PLA1を2400gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B1−2)を600gと、TF−1を7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−6)を得た。
【0159】
《比較例4》ポリ乳酸樹脂組成物(P−7)
PLA1を2400gと、ポリエステル系ブロック共重合体(B1−2)を600gと、PPA−Zn(日産化学社製、フェニルホスホン酸亜鉛、平均粒子径3.0μm)を9gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−7)を得た。
【0160】
《比較例5》ポリ乳酸樹脂組成物(P−8)
PLA2を2700gと、アジピン酸系可塑剤(大八化学社製、SN0213)を300gと、TF−1を7.5gとをドライブレンドした後、それらをシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリエステル組成物(P−8)を得た。
【0161】
《比較例6》ポリ乳酸樹脂組成物(P−9)
PLA1をシリンダー温度が240〜250℃の範囲の温度に設定した二軸混練押出機を用いて溶融混合しペレット状であるポリ乳酸樹脂組成物(P−9)を得た。
【0162】
[MIT耐折強度の評価方法]
実施例1〜3、及び比較例1〜6で得られた各ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間、真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて190℃で加熱溶融、冷却固化させることで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。前記フィルムを用いて、JIS-P-8115に準拠してMIT耐折強度試験を行った。例えば、汎用樹脂の1つであるPET(A−PET)では、MIT耐折強度試験で3,000回以上である。よって、MIT耐折強度試験によって、3,000回以上であることが実用上好ましい。
【0163】
[ヘーズ値の測定方法]
ポリ乳酸樹脂組成物を80℃で3時間真空乾燥させた後、加熱プレス機を用いて200℃で加熱溶融することで、縦15cm、横15cm、厚み200μmのフィルムを作製した。かかるフィルムを5cm×5cmの正方形(200μm厚み)に切り抜き、濁度計(日本電色工業株式会社製ND−1001DP)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルム表面のヘーズ値を測定した。なお、ヘーズ値は、概ね50%以下であることが実用上好ましく、10%以下であることが実用上より好ましい。
【0164】
[ブリードの測定方法及び評価]
前記方法で作製した、ポリエステル組成物からなる各フィルム(200μm厚み)を、15cm×15cmの正方形に切抜き、該正方形のフィルムを40℃、湿度90%の条件に保った恒温恒湿器(エスペック社製、型式PR−2F)内に120日放置し、耐ブリード試験を行った。120日以上経過してもいずれもブリードが認めらなかったものを(ブリード)無、120日以内にブリードが認められたものを(ブリード)有と評価した。
【0165】
表2〜表4に実施例1〜3、比較例1〜6で得られたポリ乳酸樹脂組成物の物性測定結果を示した。
【0166】
【表2】

【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
表2〜表4より、実施例のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品は、比較例のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品と比較して、結晶化速度、耐ブリード性、成形加工性等の点で格段に優れていた。
[成形体の作製方法、及びその評価]
実施例1〜3で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−1)〜(P−3)、及び比較例1〜6で得られたポリ乳酸樹脂組成物(P−4)〜(P−9)を90℃にセットした真空乾燥機を用いて2時間乾燥させた。この後、Tダイを付設した単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製、50mmφ、L/D=36)を用いて、厚みが約250μmのフィルムを作製した。真空成形機(ハーミス社製、FE型)を用いて得られたフィルムを金型温度100℃にて底部直径60mm、高さ35mmの勘合可能な成形体(フランジ付き容器)を作製した。
【0170】
作製したポリ乳酸組成物からなる容器は、状態観察にて成形加工性を2段階の評価を行った。すなわち、所定時間金型冷却した後、金型形状を正確にトレースし、割れ、びびが観察されなかったものを○、所定時間金型冷却した後、金型形状をトレースが困難、若しくは容器に割れや、ひびや、表面荒れ、金型からの成形体の離型が困難であること、ブリードが観察されたものを×とした。ここで、真空成形について、(1)予備加熱時間は作製したフィルムが軟化すればよく、本発明では概ね2〜6秒の範囲で適宜選択し、(2)金型保持時間は、実施例1〜3、比較例1〜6に示した等温結晶化時間以上で金型内にて成形体を保持し、(3)冷却時間は離型するための冷却時間をいい、一律10秒とした。
また、実施例4〜6、及び比較例7〜12で得られた成形体(M−1)〜(M−9)の結晶化度αを測定した。
【0171】
表5〜表7に実施例4〜6、比較例7〜12で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の状態観察結果を示した。
【0172】
【表5】

【0173】
【表6】

【0174】
【表7】

【0175】
[クリープ耐熱試験方法、及びその評価]
実施例4の成形体(M−1)、及び比較例7の成形体(M−4)、比較例12の成形体(M−9)のフランジ部分を幅20mm、長さ120mmに裁断し、試験片の長手方向に両端から長さ10mmのところに標線を付して試験片とした。該試験片の一方の端に、全重量約160gの分銅の入った容器をクリップに結びつけた治具を取り付け(つかみ部分10mm)、他方の端を適当な冶具にて固定してフィルムおよび分銅が垂下するようにした。これを100℃に設定した恒温ギアオーブン(エスペック社製、GPHH-101)中に試験片が恒温器の中央に位置するように静置して1分間加熱した。恒温器中から、試験片を取り出して冷却した後、試料片の長さ(A:単位mm)を測定し、加熱、張力負荷処理(温度100℃の環境下、0.4MPaの荷重を1分間負荷)後の処理前の長さに対する長さ変化率D(単位%)を次式にて算出した。例えば、Dが0%であれば実質上、その試料片は100℃の耐熱性を有すると判断することができる。
長さ変化率D=((A−100)/100)×100 (%)
【0176】
表8に実施例4で得られた成形体(M−1)、比較例7、比較例12で得られた成形体(M−4)、及び成形体(M−9)のクリープ耐熱試験の結果を示した。
【0177】
【表8】

【0178】
以上より、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて成形してなる成形体は、優れた結晶化度、成形性を有しており、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性を必要とすることから食品包装材料をはじめとする様々な分野に適用可能である。
【0179】
《微生物による分解性試験方法》
実施例4〜6で得られた成形体を45℃に保った電動コンポスト中に埋設し、90日間埋没させた後に取り出したところ、成形体は殆ど原形をとどめていなかった。更に120日〜180日間埋没した後には、確認できない程に分解が進んでいた。このことから、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は分解性にも優れるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)と、ポリエステル系ブロック共重合体(B)と、アミド系化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、前記アミド系化合物(C)が、一般式(1)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類であることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
【化1】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基を表す。]
【請求項2】
前記ポリエステル系ブロック共重合体(B)が、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とを反応させて得られるポリエステル構造単位(D1)、及び、ポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するブロック共重合体(B1)であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体(B)が、ジオール(d1)とジカルボン酸(d2)とに加えて、更に、ヒドロキシカルボン酸(d3)を反応させて得られるポリエステル構造単位(D2)とポリヒドロキシカルボン酸構造単位(E)とを有するブロック共重合体(B2)である請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(B1)が、それぞれ独立に、ガラス転移温度を1つ有するものである請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(B2)が、それぞれ独立に、ガラス転移温度を1つ有するものである請求項3記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル構造単位(D1)が、非結晶性ポリマーである請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル構造単位(D2)が、非結晶性ポリマーである請求項3記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項8】
ヒドロキシカルボン酸(E)の構造単位が、グリコール酸の構造単位、乳酸の構造単位、ヒドロキシカプロン酸の構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位である請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリ乳酸(A)と、前記ブロック共重合体(B)との質量比(A)/(B)が、90/10〜30/70である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリ乳酸(A)と前記ブロック共重合体(B)との合計100重量部に対して、アミド系化合物(C)が0.05〜5重量部の範囲を含有する請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項11】
ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレートからなる群から選ばれる1種以上のヒドロキシカルボン酸誘導重合体(A)、ポリエステル系ブロック共重合体(B)、アミド系化合物(C)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であって、
前記アミド系化合物(C)が一般式(2)で表されるトリメシン酸トリアミド化合物類を含有することを特徴とするポリ乳酸組成物。
【化2】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するシクロヘキシル基を表す。]
【請求項12】
請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形してなるポリ乳酸樹脂成形体。
【請求項13】
請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度〜140℃の範囲の金型温度で射出成形して得られる成形体。
【請求項14】
請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練した後成形し、次いで、得られた成形物を急冷することを特徴とするポリ乳酸樹脂成形体の製造方法。
【請求項15】
請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物を溶融押出して、フィルムの延伸倍率をフィルムの長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)についてそれぞれ1.00〜3.00でフィルムを成膜し、次いで、成形加工すること特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記フィルムのヘーズ値が0.1〜50%の範囲である請求項15記載のフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−79188(P2009−79188A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251227(P2007−251227)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】