説明

ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法

【課題】結晶化速度を実測することなく、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度(臨界濃度)を予測することができるポリ乳酸結晶造核剤の評価方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法であって、フーリエ変換型赤外線(FT-IR)分光計を用いてポリ乳酸系樹脂の赤外線吸収(IR)スペクトルを測定し、有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値を比較することにより、結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度を予測することを特徴とする、前記評価方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することができる、ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油を原料として生産されるプラスチックは石油化学製品の代表例であり、包装容器のような日用品から自動車部品に至るまで、現代社会のあらゆる場面で使用されている。しかしながら、その優れた利点の一つである耐腐食性は、廃棄する際には難分解性という欠点となり、地球環境汚染の一因となっている。また、石油資源の大量消費は、石油自体の枯渇という問題とともに、二酸化炭素排出に起因する地球温暖化という問題も引き起こしており、石油資源の消費量の削減と持続可能な資源への転換は緊急の課題である。
【0003】
石油代替プラスチックの1つとして、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂の原料となる乳酸は、植物由来のデンプンなどを乳酸発酵することにより製造することができるため、ポリ乳酸系樹脂はカーボンニュートラル素材として注目されている。
【0004】
一方で、ポリ乳酸系樹脂は結晶化速度が遅いことから、成形工程に時間を要する問題点が存在する。特に耐熱性が必要となる製品を成形する際に、結晶化が不十分な状態で使用すると、成形品が高温に曝された際に熱変形等を起こすことが知られている。このような問題点を解決するために、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進する結晶造核剤を使用する技術が開発されている。例えば特許文献1には、ポリ乳酸系樹脂にタルク、マイカおよび炭酸カルシウムなどの無機系結晶造核剤を配合する技術が記載されている。また、特許文献2および3には、トリメシン酸トリアミド化合物を有機系結晶造核剤として配合する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-87975号公報
【特許文献2】特開2006-328163号公報
【特許文献3】特開2007-2128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ポリ乳酸系樹脂を短時間で結晶化させる方法として、結晶造核剤を添加する方法が挙げられる。中でもトリメシン酸トリアミド化合物のような、ポリ乳酸に溶解する有機系結晶造核剤は、結晶化促進効果が高く様々な用途が提案されている。
【0007】
有機系結晶造核剤の添加はポリ乳酸系樹脂の結晶化速度を高める効果を有するが、その結晶化促進効果は、添加される結晶造核剤の種類および/または濃度に応じて様々である。ある種の結晶造核剤においては、特定の濃度で結晶化速度が極大値を示すことも知られているが、それを特定するためには結晶造核剤の濃度が異なる複数の試験検体を調製し、それぞれについて結晶化速度を実測して、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を決定する必要があったため、多大な労力を必要とした。それ故、本発明は、結晶化速度を実測することなく、簡便な機器分析によって得られるデータから結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することができる、ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、フーリエ変換型赤外線(FT-IR)分光計を用いてポリ乳酸系樹脂の赤外線吸収(IR)スペクトルを測定し、有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値を比較することにより、結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度を予測できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法であって、
ポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤を含有する、有機系結晶造核剤の濃度Cが異なる複数のポリ乳酸系樹脂組成物を調製し、各組成物を溶融温度Tにおいて溶融した後に冷却し固化させ、有機系結晶造核剤の濃度Cが異なる複数の試験検体を調製する試験検体調製ステップと、有機系結晶造核剤を含有しないポリ乳酸系樹脂を、溶融温度Tにおいて溶融した後に冷却し固化させ、対照検体を調製する対照検体調製ステップと、フーリエ変換型赤外線分光計を用いて、複数の試験検体および対照検体の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ測定する測定ステップと、各試験検体の赤外線吸収スペクトルから対照検体の赤外線吸収スペクトルを差し引きして赤外線吸収差スペクトルを作成し、赤外線吸収差スペクトルから有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値Aを取得する吸光度取得ステップと、取得された吸光度の極大値Aと、試験検体中に含有される有機系結晶造核剤の濃度Cを直交座標系にプロットし、プロットされた各点を線形近似して近似直線を作成する近似ステップと、作成された近似直線を吸光度の極大値Aがゼロとなる座標軸に外挿した値を取得し、この値を、溶融温度Tにおいてポリ乳酸系樹脂組成物を溶融したのち結晶化する際の、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度と判断する評価ステップ、を含むことを特徴とする、前記評価方法。
【0010】
(2) 有機系結晶造核剤が、以下の式(I):
【化1】

(式中、R1はトリメシン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基部分であり;
R2はそれぞれ同一または異なっていて、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を1〜3個有していてもよいシクロヘキシル基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である)
で表されるトリメシン酸トリアミド化合物であることを特徴とする、前記(1)の評価方法。
【0011】
(3) 濃度Cが、ポリ乳酸系樹脂組成物の全重量に対していずれも5重量%以下であることを特徴とする、前記(2)の評価方法。
【0012】
(4) 有機系結晶造核剤の特性吸収帯が1500〜1700 cm-1の領域であることを特徴とする、前記(2)または(3)の評価方法。
【0013】
(5) 試験検体調製ステップおよび対照検体調製ステップにおける溶融温度Tが、いずれも190〜250℃であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれか1の評価方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、結晶化速度を実測することなく、簡便な機器分析によって得られるデータから結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することができる、ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の評価方法によって取得される赤外線吸収スペクトル(溶融温度T=240℃)の一例を示す図である。
【図2】図1の赤外線吸収スペクトルからトリメシン酸トリアミド化合物を含有しない対照検体の赤外線吸収スペクトルを差し引きして作成された赤外線吸収差スペクトル(溶融温度T=240℃)を示す図である。
【図3】溶融温度T=200℃または240℃で調製された試料について、赤外線吸収差スペクトルから取得された吸光度の極大値A(特性吸収帯:1560 cm-1)と、試料中に含有されるトリメシン酸トリアミド化合物の濃度Cのプロット、プロットされた各点を線形近似して作成された近似直線およびその外挿値を、それぞれ比較して示す図である。
【図4】結晶増核剤の添加濃度Cおよび溶融温度T=240℃における結晶化速度Vの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
1.ポリ乳酸系樹脂
本明細書において、「ポリ乳酸系樹脂」は、重合体の構成単位として乳酸残基を含む樹脂を意味する。本発明の評価方法は、当業界で慣用される様々な種類のポリ乳酸系樹脂に適用することができる。
【0018】
本発明の評価方法に適用されるポリ乳酸系樹脂の一例として、ポリ乳酸系樹脂の構成単位である乳酸残基(D-乳酸残基またはL-乳酸残基)の絶対立体配置の割合が、ポリ乳酸系樹脂を構成する全構造単位に対して、好ましくは80〜99.5 mol%のポリ乳酸系樹脂を挙げることができる。ここで、「全構造単位」は、乳酸残基および構成単位として含まれる他のヒドロキシカルボン酸残基の両者を含む。上記のポリ乳酸系樹脂は、高い融点を有することから優れた耐熱性を示すため、当業界で慣用されている。上記のポリ乳酸系樹脂は、D-乳酸、L-乳酸、DL-乳酸、D-ラクチド、L-ラクチド、meso-ラクチドなどを単独もしくは組み合わせて、またはそれらをメチルエステル、エチルエステルなどに誘導体化したものを材料として製造することができる。ここで、上記の材料は、工業的に製造されたものでもよく、植物、微生物などによって生産されたものでもよい。
【0019】
また、本発明の評価方法に適用されるポリ乳酸系樹脂の一例として、乳酸残基以外の他のヒドロキシカルボン酸を追加の構成単位として含むポリ乳酸系樹脂を挙げることもできる。追加の構成単位は、ポリ乳酸系樹脂に賦与すべき特性に応じて適宜加えられる。
【0020】
本発明の評価方法に適用されるポリ乳酸系樹脂は、追加の構成成分として可塑剤、カルボジイミド化合物、他の添加剤、樹脂などを適宜含むものであってもよい。上記の構成成分は、所望の樹脂特性に応じて、その種類および/または配合量が適宜設定される。
【0021】
上記のポリ乳酸系樹脂は、5,000〜400,000、好ましくは10,000〜200,000の数平均分子量を有する。数平均分子量が5,000より低い場合、得られたポリ乳酸系樹脂の成形品は、強度の低下、または酸成分割合の相対的上昇や加水分解性の増大などに起因する安定性の低下が生じる傾向がある。また、数平均分子量が400,000を超える場合、成形性が悪化する傾向がある。
【0022】
以上のように、様々な構成のポリ乳酸系樹脂が慣用されているが、本発明の評価方法はそのいずれにも適用することができる。これにより、所望の特性を備えたポリ乳酸系樹脂を開発する際に、各々について結晶化速度を実測することなく、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することが可能となる。
【0023】
本明細書において、「結晶造核剤」は、溶融したポリ乳酸系樹脂を成形する際の結晶化速度を向上させるために添加する材料を意味し、「有機系結晶造核剤」は、有機化合物からなる結晶造核剤を意味する。本発明の評価方法に適用される有機系結晶造核剤は、トリメシン酸トリアミド化合物であることが好ましい。本発明の評価方法に適用される有機系結晶造核剤は、以下の式(I):
【化2】

(式中、R1はトリメシン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基部分であり;
R2はそれぞれ同一または異なっていて、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を1〜3個有していてもよいシクロヘキシル基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である)
で表されるトリメシン酸トリアミド化合物であることがより好ましい。
【0024】
前記炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、限定するものではないが、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
【0025】
前記炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を1〜3個有していてもよいシクロヘキシル基は、限定するものではないが、例えばシクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2-エチルシクロヘキシル基、3-エチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、2-n-プロピルシクロヘキシル基、3-n-プロピルシクロヘキシル基、4-n-プロピルシクロヘキシル基、2-イソプロピルシクロヘキシル基、3-イソプロピルシクロヘキシル基、4-イソプロピルシクロヘキシル基、2-n-ブチルシクロヘキシル基、3-n-ブチルシクロヘキシル基、4-n-ブチルシクロヘキシル基、2-イソブチルシクロヘキシル基、3-イソブチルシクロヘキシル基、4-イソブチルシクロヘキシル基、2-sec-ブチルシクロヘキシル基、3-sec-ブチルシクロヘキシル基、4-sec-ブチルシクロヘキシル基、2-tert-ブチルシクロヘキシル基、3-tert-ブチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0026】
本発明の評価方法に適用されるトリメシン酸トリアミド化合物は、N,N’,N’’-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド(商品名:エヌジェスターTF-1;新日本理化(株)製)、N,N’,N’’-トリ(2-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’,N’’-トリ(3-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’,N’’-トリ(4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N,N’,N’’-トリ(2,3-ジメチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドがより好ましく、N,N’,N’’-トリシクロヘキシル-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドが特に好ましい。
【0027】
かかる有機系結晶造核剤をポリ乳酸系樹脂に添加すると、結晶化速度が向上するだけでなく、耐熱性および耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂成形体が得られることから、ポリ乳酸系樹脂の結晶造核剤として慣用されている。上記の有機系結晶造核剤に本発明の評価方法を適用することにより、耐熱性および耐衝撃性に優れたポリ乳酸系樹脂成形体の製造において、簡便な機器分析によって得られるデータから結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することが可能となる。
【0028】
2.評価方法の概要
本発明の評価方法は、結晶造核剤として有機系結晶造核剤を使用する。有機系結晶造核剤の融点は一般に180〜380℃程度であり、ポリ乳酸系樹脂の融点(通常は145〜180℃)と比較してかなり高い。このため、両化合物を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を加熱した場合、該組成物の温度がポリ乳酸系樹脂の融点に達した時点でポリ乳酸系樹脂が溶融し、その後、溶融したポリ乳酸系樹脂中に有機系結晶造核剤が溶解する。ここで、有機系結晶造核剤を種々の濃度で含む複数のポリ乳酸系樹脂組成物を調製した後、各組成物を加熱して溶融過程を観察すると、低濃度で有機系結晶造核剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物の場合には、有機系結晶造核剤は溶融したポリ乳酸系樹脂に直ちに溶解し、均一な溶液状態となる。これに対して、一定濃度を超えて有機系結晶造核剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物の場合には、有機系結晶造核剤は飽和状態となって溶融したポリ乳酸系樹脂にもはや溶解できず、凝集体を形成する。
【0029】
有機系結晶造核剤による結晶化促進の詳細な機構は未だ明らかではないが、溶融後のポリ乳酸系樹脂組成物を冷却すると、ポリ乳酸系樹脂に溶解した有機系結晶造核剤の各分子は、溶融したポリ乳酸系樹脂の分子鎖に分散吸着して結晶核となるか、または微細に析出して数多くの結晶核となり、ポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行すると考えられる。一方、凝集体を形成した有機系結晶造核剤は、ポリ乳酸系樹脂の結晶核となるがその数が少ないため、凝集体を形成しない場合に比べてポリ乳酸系樹脂の結晶化速度は速くないと考えられる。それ故、有機系結晶造核剤の添加濃度に応じて、溶融したポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が一定の割合で向上することはなく、特定の添加濃度で結晶化速度は極大値を示すこととなる。ここで、溶融したポリ乳酸系樹脂に対する有機系結晶造核剤の溶解挙動と、有機系結晶造核剤の添加濃度およびポリ乳酸系樹脂の結晶化速度の関係とを対比すると、有機系結晶造核剤が溶融したポリ乳酸系樹脂に溶解できなくなる濃度(臨界濃度)は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が極大値を示す有機系結晶造核剤の添加濃度と良く一致することが見出された。この発見に基づき、簡便な機器分析によって得られるデータから有機系結晶造核剤の臨界濃度を推定することができれば、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる、有機系結晶造核剤の最適な添加濃度を予測できると考えられた。
【0030】
なお、本明細書において、「臨界濃度」は、有機系結晶造核剤が、溶融したポリ乳酸系樹脂に溶解できなくなる飽和濃度を意味する。かかる濃度は、使用される有機系結晶造核剤の種類だけでなく、ポリ乳酸系樹脂の構成、配合量やその溶融温度にも依存する。
【0031】
有機化合物の機器分析法として、赤外分光法がある。一般に、赤外線吸収(IR)スペクトル中に観測される特性吸収帯は、観測対象となる化合物に含まれる各種の官能基に由来する。しかしながら、前記特性吸収帯は、同一化合物であっても測定試料の物理的状態、すなわち固体であるか、または液体であるかによって変化し、また、測定試料に含まれる対象化合物の量によっても変化する。複数の成分からなる樹脂(固体状態)の場合、少量の対象化合物が樹脂中に分散して存在している状態と、樹脂中で凝集体を形成している状態とでは、対象化合物同士の分子間相互作用に差が生じるため、特性吸収帯の吸収領域および/または吸光度にも差が生じる。
【0032】
上記の条件、すなわち測定試料の物理的状態および分子間相互作用の状態が実質的に同一であれば、各特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値は、測定試料に含まれる対象化合物の量と一定の相関が認められる。それ故、観測する波数領域を注意深く設定することで、測定試料に含まれる、同一状態の対象化合物のみに由来する吸収ピークの吸光度の極大値を取得することができる。さらに、対象化合物の濃度が異なる複数の測定試料を調製し、それぞれの試料から取得した吸光度の極大値から、対象化合物の濃度と吸光度の極大値との関係を比較することができる。
【0033】
本発明の評価方法は、上記の原理に基づくものである。すなわち、本発明によって提供されるポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法は、ポリ乳酸系樹脂のIRスペクトルにおいて、有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値を指標として、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することを特徴とする。
【0034】
本発明の評価方法を構成する各ステップについて、さらに説明する。
【0035】
2.1.試験検体調製ステップおよび対照検体調製ステップ
試験検体調製ステップで調製される試験検体は、ポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤を含有するポリ乳酸系樹脂組成物からなる。これに対して、対照検体調製ステップで調製される対照検体は、ポリ乳酸系樹脂のみからなり、有機系結晶造核剤を含有しない。ここで、試験検体調製ステップおよび対照検体調製ステップで使用されるポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤は、上記で説明した構成の樹脂およびトリメシン酸トリアミド化合物であることが好ましい。
【0036】
試験検体に含有される有機系結晶造核剤の濃度Cは、溶融温度Tにおける、溶融したポリ乳酸系樹脂に対する飽和濃度(臨界濃度)を実際に含む必要はなく、ポリ乳酸系樹脂の製造の際に慣用される添加濃度の範囲で任意に設定することができる。それ故、有機系結晶造核剤の濃度Cは、ポリ乳酸系樹脂組成物の全重量に対して0重量%より大きくかつ5重量%以下の範囲で任意に設定することができる。試験検体調製ステップで調製される試験検体は、有機系結晶造核剤の濃度Cが異なる複数の試験検体からなることが好ましい。
【0037】
なお、本明細書において、「溶融温度T」は、固体状態のポリ乳酸系樹脂を加熱して、液体状態に溶融させる処理時の温度を意味する。かかる温度は、使用されるポリ乳酸系樹脂の構成成分およびその融点に依存して決定される。
【0038】
また、本明細書において、「有機系結晶造核剤の濃度C」は、ポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤を含有するポリ乳酸系樹脂組成物中における有機系結晶造核剤の濃度を意味し、ポリ乳酸系樹脂組成物の全重量に対する有機系結晶造核剤の重量百分率(重量%)で表される。
【0039】
上記の構成の試験検体および対照検体を用いることにより、以下で説明するステップにおいて、結晶化速度が最大となる結晶造核剤の添加濃度を予測することが可能となる。
【0040】
本ステップで調製されるポリ乳酸系樹脂組成物は、上記の好適な構成のポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤を、溶媒を用いた溶媒キャスト法、溶融混練法、ドライブレンド法などの公知の方法を用いて混練することにより、調製することができる。溶媒キャスト法の場合、溶媒としてはクロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはベンジルアルコールなどを使用し、混合後乾燥処理を行ってポリ乳酸系樹脂組成物を得ることが好ましい。前記乾燥処理の温度は、室温〜100℃であることが好ましい。また、前記乾燥処理の時間は、8〜24時間であることが好ましい。
【0041】
上記の方法で調製されたポリ乳酸系樹脂組成物は、場合により40〜150℃で1〜10時間さらに乾燥させた後、ホットプレス、押出フィルムなどの公知の成形法で、IRスペクトル測定に適した形状、好ましくはフィルム状の測定試料に成形することができる。ホットプレス成形の場合、加熱温度は190〜240℃であることが好ましく、成形後の形状は50〜150μmのフィルム状であることが好ましい。上記の条件でポリ乳酸系樹脂組成物を混練および成形することにより、各試験検体および対照検体について、IRスペクトル測定に適した測定試料を調製することが可能となる。
【0042】
上記の方法で成形された試験検体および対照検体の測定試料を、IRスペクトル測定に先立ち、溶融温度Tにおいて溶融した後に冷却し固化させる。溶融温度Tは、ポリ乳酸系樹脂の融点以上の温度であって、190〜250℃であることが好ましい。また、溶融温度Tにおいて測定試料を溶融させる時間は、1〜5分間であることが好ましい。
【0043】
上記の方法で溶融させた試験検体および対照検体の測定試料を、直ちに冷却することで固化させることができる。なお、試験検体および対照検体の測定試料は、あらかじめ成形された形状を保持したまま溶融するため、冷却した後でさらに成形することなく次の測定ステップに用いることができる。本ステップにおいて、固化温度は特に限定されるものではなく、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。かかる処理は、温度制御機能を備えた冷却装置を用いても良いが、氷浴または液体窒素中で行っても良い。
【0044】
上記の方法により、IRスペクトルの測定試料に対する溶融および結晶化処理を迅速に行うことが可能となる。
【0045】
2.2.測定ステップ
本ステップで使用されるフーリエ変換型赤外線(FT-IR)分光計は、差スペクトル作成機能を備えた装置であれば、特に限定されるものではない。当業界で慣用される様々な機種を使用することができる。
【0046】
本ステップにおいて、IRスペクトルの測定には、フィルム状、ペースト状または加圧錠剤などのIRスペクトル測定に慣用される形状に調製された検体を使用することができる。上記の試験検体調製ステップおよび対照検体調製ステップで得られた50〜150μmのフィルム状の試験検体および対照検体を使用することが好ましい。
【0047】
IRスペクトルの測定条件は、使用される測定試料の状態に応じて適宜設定することができるが、得られたスペクトル間で吸光度を比較する場合には、各試験検体および対照検体の測定試料を同一の条件で測定する必要がある。それ故、本ステップにおいて、複数の試験検体および対照検体のIRスペクトル測定は、いずれも同一の条件を設定して測定することが好ましい。
【0048】
上記の条件でIRスペクトルの測定を行うことにより、以下の近似ステップで正確な近似直線を得ることが可能となる。
【0049】
2.3.吸光度取得ステップ
上記の測定ステップで取得された各試験検体のIRスペクトルをそのまま使用することもできるが、IRスペクトル中にはポリ乳酸系樹脂に含まれる構成成分に由来する吸収帯が多数観測される。このため、測定ステップで取得された各試験検体のIRスペクトルから対照検体のIRスペクトルを差し引きして作成された、IR差スペクトルを使用することが好ましい。IR差スペクトルを使用することにより、有機系結晶造核剤に由来する吸収ピークの吸光度の極大値Aをより正確に取得することが可能となる。
【0050】
なお、本明細書において、「吸光度の極大値A」は、有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値を意味する。
【0051】
上記で述べたように、IRスペクトル中に観測される特性吸収帯は、観測対象となる有機系結晶造核剤に含まれる各種の官能基に由来する。例えば、トリメシン酸トリアミド化合物は、特性吸収帯を示す共通の部分構造としてアミドおよび芳香環を有する。このうち、非環式第二級アミドのC-N-H結合に由来するN-H変角振動(δN-H)とC-N伸縮振動(νC-N)の相互作用による吸収帯のピーク、ならびにC=O結合に由来するC=O伸縮振動(νC=O)による吸収帯のピークは、他の吸収帯との重複が少なくかつ強い吸収であるため、本発明の評価方法の指標に好適である。それ故、本ステップにおいて、IR差スペクトルから有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値Aを取得することが好ましい。有機系結晶造核剤がトリメシン酸トリアミド化合物である場合、上記の方法で作成されたIR差スペクトルから、1500〜1700 cm-1の領域、好ましくは1530〜1590 cm-1または1600〜1660 cm-1の領域、より好ましくは1,560 cm-1または1,630 cm-1の領域に観測される吸収ピークから、吸光度の極大値Aを取得することが好ましい。
【0052】
上記の方法で吸光度の極大値を取得することにより、簡便かつ短時間で実施可能なIRスペクトルの測定結果から、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度を正確に予測することが可能となる。
【0053】
2.4.近似ステップ
上記のステップにおいて取得された吸光度の極大値Aと、試験検体中に含有される有機系結晶造核剤の濃度Cを直交座標系にプロットし、プロットされた各点を線形近似して近似直線を作成することができる。ここで、吸光度の極大値Aが0またはそれ以下の試験検体は、溶融温度Tにおいて有機系結晶造核剤が完全または略完全に溶解している検体であるため、線形近似の分析から除外する。また、前記線形近似は、例えば最小二乗法などの公知の分析方法によって行うことが好ましい。
【0054】
上記の方法で近似直線を作成することにより、少数の試験検体であっても、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度を正確に予測することが可能となる。
【0055】
2.5.評価ステップ
上記の近似ステップで作成された近似直線を、吸光度の極大値Aがゼロとなる座標軸に外挿することで、溶融したポリ乳酸系樹脂に対する有機系結晶造核剤の飽和濃度(臨界濃度)を取得することができる。以下に述べる実施例で示すように、前記臨界濃度は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の濃度と良く一致することから、かかる濃度を、溶融温度Tにおいてポリ乳酸系樹脂組成物を溶融したのち結晶化する際の、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度と判断することができる。
【0056】
なお、本発明の評価方法の効果を検証するためには、上記の試験検体を用いて結晶化速度Vを実測し、結晶化速度Vと試験検体中に含まれる有機系結晶造核剤の濃度Cとの関係を確認すればよい。この場合において、結晶化速度Vは、試験検体調製ステップの項で説明した溶融および結晶化の工程において、各試験検体のXRDを測定することで取得される、ポリ乳酸結晶の(110)面に相当するピーク面積の経時変化に基づき算出することができる。また、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて結晶化に起因する発熱を経時的に測定することで取得される、結晶化完了時間(結晶化に起因する発熱が完了するまでの時間)に基づき算出することもできる。かかる方法によって結晶化速度を実測することにより、本発明の評価方法の効果を検証することが可能となる。
【0057】
以上述べたように、本発明のポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法は、結晶化速度を実測することなく、結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度を予測することができる。これにより、ポリ乳酸系樹脂製造の際に必要となる、配合条件の検討に要する労力を大幅に削減することが可能となり、かつ有機系結晶造核剤の使用量を最少化して、ポリ乳酸系樹脂の製造コスト削減を図ることが可能となる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
[材料]
ポリ乳酸系樹脂:レイシアH100(三井化学(株)製)
有機系結晶造核剤:エヌジェスターTF-1(新日本理化(株)製)
【0060】
[検体の調製]
ポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤からなるポリ乳酸系樹脂組成物を含有する試験検体を調製するために、上記のポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤をクロロホルムに溶解し、混合した。その後、室温で24時間放置することでクロロホルムを揮発させた。 各試験検体に含有される有機系結晶造核剤の濃度Cは、以下の試験区を設定した。なお、有機系結晶造核剤の濃度Cは、試験検体に含有されるポリ乳酸系樹脂組成物の全重量に対する有機系結晶造核剤の重量百分率として表わされた値である。
【0061】
濃度C:0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1.0, 5.0重量%
【0062】
上記の試験検体を70℃で4時間更に乾燥させた後、210℃でホットプレスして厚さ100μmのフィルム状の測定試料を調製した。得られたフィルム状の測定試料を、溶融温度T=200℃または240℃で1分間加熱して、試験検体に含有されるポリ乳酸系樹脂を溶融させた後、氷浴または液体窒素中で急速冷却して、フィルム状のポリ乳酸系樹脂の測定試料を得た。
【0063】
なお、有機系結晶造核剤を含有しないポリ乳酸樹脂を対照検体とし、上記と同様の方法でフィルム状の測定試料を調製した。
【0064】
[FT-IR測定]
上記の方法で調製した溶融温度T=240℃における各試験検体および対照検体のフィルム状の測定試料について、FT-IR分光計を用いて1,700〜1,500 cm-1の波数領域のIRスペクトルを測定した(図1)。各試験検体のIRスペクトルから、有機系結晶造核剤TF-1を含有しない対照検体のIRスペクトルをブランクとして差し引き、IR差スペクトルを作成した(図2)。得られた各試験検体の差スペクトルにおいて、有機系結晶造核剤TF-1(トリメシン酸トリアミド化合物)に由来する、非環式第二級アミドのC-N-H結合による吸収帯のピーク(1,560 cm-1)の吸光度の極大値Aを取得した。
【0065】
取得された各試験検体の吸光度の極大値Aと、試験検体中に含有される有機系結晶造核剤TF-1の濃度Cをグラフにプロットし、プロットされた各点を線形近似処理した。得られた近似直線を外挿して、吸光度がゼロとなる有機系結晶造核剤の濃度を臨界濃度として決定した。溶融温度T=240℃および200℃の場合の結果を図3に示す。
【0066】
図3に示すように、取得された各試験検体の吸光度の極大値Aと、試験検体中に含有される有機系結晶造核剤TF-1の濃度Cとの間には、一次線形の相関が認められた。吸光度ゼロにおける外挿値として、溶融温度T=240℃の場合には0.37重量%、溶融温度T=200℃の場合には0.15重量%が得られたので、これらの値をそれぞれの溶融温度における臨界濃度として決定した。
【0067】
[結晶化速度の測定]
上記の方法で調製した各試験検体について、光源波長0.1 nmの単色X線を用いてXRDを測定し、ポリ乳酸結晶の(110)面に相当するピーク面積の経時変化を記録した。
【0068】
記録されたピーク面積の経時変化に基づき、ピーク面積の飽和値を100%として相対結晶化度(%)を算出し、相対結晶化度が50%に到達した時間を各試験検体の半結晶化時間(t1/2)とした。また、半結晶化時間の逆数を結晶化速度(V=1/t1/2)とし、各試験検体の結晶化の指標とした。
【0069】
各試験検体に含有される有機系結晶造核剤TF-1の濃度Cと、算出された各試験検体の結晶化速度Vをグラフにプロットした。溶融温度T=240℃の場合の結果を図4に示す。
【0070】
図4に示すように、本試験において結晶化速度Vが極大となる有機系結晶造核剤TF-1の濃度Cは0.4重量%であり、FT-IR測定によって決定された臨界濃度と良く一致した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法は、有機系結晶造核剤の濃度が異なる複数の試験検体のIRスペクトル測定を行うことにより、それぞれについて結晶化速度を実測することなく、結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の濃度を予測することができる。有機系結晶造核剤の臨界濃度は、有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値と試験検体中に含まれる有機系結晶造核剤の濃度との関係を線形近似処理した近似直線の外挿値として取得できるので、該臨界濃度に相当する検体が試験検体に含まれている必要はない。それ故、有機系結晶造核剤の濃度段階は任意に設定することができ、かつ数段階で足りる。また、得られた試料の結晶化速度を実測する必要がないため、条件検討に要する労力を大幅に削減することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂の結晶化に用いる結晶造核剤の添加濃度の評価方法であって、
ポリ乳酸系樹脂および有機系結晶造核剤を含有する、有機系結晶造核剤の濃度Cが異なる複数のポリ乳酸系樹脂組成物を調製し、各組成物を溶融温度Tにおいて溶融した後に冷却し固化させ、有機系結晶造核剤の濃度Cが異なる複数の試験検体を調製する試験検体調製ステップと、
有機系結晶造核剤を含有しないポリ乳酸系樹脂を、溶融温度Tにおいて溶融した後に冷却し固化させ、対照検体を調製する対照検体調製ステップと、
フーリエ変換型赤外線分光計を用いて、複数の試験検体および対照検体の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ測定する測定ステップと、
各試験検体の赤外線吸収スペクトルから対照検体の赤外線吸収スペクトルを差し引きして赤外線吸収差スペクトルを作成し、赤外線吸収差スペクトルから有機系結晶造核剤の特性吸収帯に観測される吸収ピークの吸光度の極大値Aを取得する吸光度取得ステップと、
取得された吸光度の極大値Aと、試験検体中に含有される有機系結晶造核剤の濃度Cを直交座標系にプロットし、プロットされた各点を線形近似して近似直線を作成する近似ステップと、
作成された近似直線を吸光度の極大値Aがゼロとなる座標軸に外挿した値を取得し、この値を、溶融温度Tにおいてポリ乳酸系樹脂組成物を溶融したのち結晶化する際の、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が最大となる有機系結晶造核剤の添加濃度と判断する評価ステップ、
を含むことを特徴とする、前記評価方法。
【請求項2】
有機系結晶造核剤が、以下の式(I):
【化1】

(式中、R1はトリメシン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基部分であり;
R2はそれぞれ同一または異なっていて、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を1〜3個有していてもよいシクロヘキシル基、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である)
で表されるトリメシン酸トリアミド化合物であることを特徴とする、請求項1の評価方法。
【請求項3】
濃度Cが、ポリ乳酸系樹脂組成物の全重量に対していずれも0重量%より大きくかつ5重量%以下であることを特徴とする、請求項2の評価方法。
【請求項4】
有機系結晶造核剤の特性吸収帯が1500〜1700 cm-1の領域であることを特徴とする、請求項2または3の評価方法。
【請求項5】
試験検体調製ステップおよび対照検体調製ステップにおける溶融温度Tが、いずれも190〜250℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−47658(P2011−47658A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193947(P2009−193947)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物 :繊維学会予稿集 2009 第64巻 第1号 発行日 :平成21年6月10日 発行者 :社団法人 繊維学会 講演番号 :3E02
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】