説明

ポリ乳酸系樹脂発泡体およびその製造方法

【課題】無架橋ポリ乳酸を用いた高倍率(20倍以上)発泡成形体の提供。
【解決手段】 無架橋のポリ乳酸系樹脂組成物粒子に、
1)実質的に水を含まない非プロトン系分散媒中で発泡性ガスを含浸させてポリ乳酸系樹脂組成物発泡性粒子とし、
2)該発泡性粒子をその主成分であるポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+10℃〜Tg+35℃となるように温調した気体と接触させて発泡させて発泡粒子とした後、
3)該発泡粒子を型内に充填し、そのポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg−10℃〜Tg+30℃となるように温調した気体と接触させて予熱した後、速やかにTg+30℃〜Tg+60℃に温調した気体と接触させて本加熱することを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体、並びにその製造方法に関する。具体的には、無架橋ポリ乳酸系樹脂を用いた20倍以上の高倍率発泡成形体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油事情、また環境問題といった観点から、従来の合成樹脂製品はリサイクル、リユースされるようになってきている。主に魚箱、家電緩衝材、食品トレー等に用いられる発泡スチロール(発泡ポリスチレン)も例外ではなく、破砕減容して主にマテリアルリサイクルされるようになってきている。
【0003】
しかし、こう言ったマテリアルリサイクルの試みは卸売市場で発生する使用済み魚箱、大型家電の緩衝材等、使用済みのものの回収が容易なものに限られており、一般小売業者、飲食店で発生するものや末端消費者が直接自宅に持ち帰る商品に使用されているものの回収率はきわめて低い。
【0004】
回収が困難な発泡スチロール製品は一般ゴミといっしょに廃棄されることが多いが、相応の設備を有しない焼却処分場では、その高い燃焼熱ゆえに焼却炉を傷めてしまう。
【0005】
本発明者らは、これらの状況に鑑み、燃焼熱が低く炉を傷めず、しかも微生物による分解が可能な発泡資材として、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子およびその成形体を開発し、特許文献1等でその技術を開示している。
【0006】
特許文献1では、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の予備発泡、成形条件幅を広く取るために、ポリメリックイソシアネートなどの架橋剤を用いて、溶融粘度の温度依存性を緩和させるとともに伸張粘度を増大させている。しかし、架橋増粘しているがために熱可塑性樹脂の利点の一つである溶融再利用が難しくなると言う欠点があった。
【0007】
特許文献2では、無架橋のポリ乳酸樹脂発泡性粒子およびそれを予備発泡、成形して得られる耐熱性の改良された発泡成形体について開示されており、特定の溶融粘度範囲(即ち分子量範囲)、かつ30J/g以上の結晶融解エネルギー(ΔHm)を有するポリ乳酸であって、ΔHmの50%に達する温度(T50)と70%に達する温度(T70)の温度差(T70−T50)が6℃以上、好ましくは8℃以上であるポリ乳酸系樹脂を用いることにより、無架橋での発泡が可能でしかも耐熱性に優れる成形体が得られるとしている。
【0008】
しかし、このような物性を有する樹脂は単一のポリ乳酸では達成困難であり、実際には特許文献2の実施例を見ても明らかなように、他成分との共重合や複数の物性・組成の異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドしなければならないため、操作が煩雑で、コストもかかる。
【0009】
また、特許文献2では発泡ガスとして、炭化水素類、フロンガス、水、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等が使用可能としているが、実施例に於いては二酸化炭素を発泡ガスとして用いた例しか開示されていない。
【0010】
二酸化炭素を発泡ガスとして用いる方法は特殊な発泡・成形設備を必要とする為、成形加工業者が発泡・成形する発泡スチロールの代替品として流通するには問題が多い。
【0011】
しかも、ポリ乳酸系樹脂を水中で80℃にもおよぶ温度で含浸しており、このような条件では、加水分解が進んで溶融粘度が低下するとともに、結晶性のポリ乳酸を多く含む特許文献2の処方に於いては結晶化が促進され20倍を超えるような高発泡倍率は望めず、緩衝性を求められる用途には使用できない。
【0012】
また、特許文献3では、特定の粘度範囲(分子量)にあり、結晶融解熱量(ΔHm)が40J/g未満、最も好ましくは20J/g未満であるポリ乳酸100重量部に対して0.5〜40重量部含んでなる無架橋の発泡性粒子について開示されている。
【0013】
特許文献3に於いても特許文献2同様、多様な発泡性ガスが使用可能と記述しているが、実際にはペンタンを発泡ガスとして用いている例が開示されているに過ぎない。
【0014】
また、特許文献3は、発泡性粒子の調製と発泡というプロセスを取っているものの、発泡成形体の製造を目的としたものではなく、発泡体をそのままバラ状緩衝材として使用することを前提としており、金型成形に於ける成形性にまでは言及されておらず、単純に同方法を適用すれば、高倍率かつ成形性に優れた発泡体が得られると言うものではない。
【0015】
【特許文献1】国際公開99/21915号パンフレット
【特許文献2】特開2002−20525号公報
【特許文献3】特開2002−20526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、無架橋のポリ乳酸を用いて、20倍を超える発泡倍率の発泡成形体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく、従来発泡には適さないとされてきた無架橋のポリ乳酸について、発泡・成形を行い、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0018】
すなわち、乳酸成分の光学異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92かつ重量平均分子量が50,000〜300,000の実質的に単一のポリ乳酸樹脂を主たる樹脂成分とする、無架橋のポリ乳酸系樹脂組成物粒子に、
1)実質的に水を含まない非プロトン系分散媒中で発泡性ガスを含浸させてポリ乳酸系樹脂組成物発泡性粒子とし、
2)該発泡性粒子をその主成分であるポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+10℃〜Tg+35℃となるように温調した気体と接触させて発泡させて発泡粒子とした後、
3)該発泡粒子を型内に充填し、そのポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg−10℃〜Tg+30℃となるように温調した気体と接触させて予熱した後、速やかにTg+30℃〜Tg+60℃に温調した気体と接触させて本加熱する
ことにより、20倍を超える高発泡倍率の発泡成形体が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、無架橋のポリ乳酸からなる高倍率発泡の発泡成形体が得られるようになり、マテリアルリサイクルが容易でありながら、緩衝性能を要求される用途への利用が可能で、低コストなポリ乳酸系発泡成形体が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ポリ乳酸は結晶性であり、溶融粘度の温度依存性が大きく扱い難い為、発泡資材に限らず、粘度挙動の調整のために架橋を行う場合が多いことは、前述のとおりである。
【0021】
本研究者らもまた、これまで汎用性を重視し、従来の発泡スチロールの予備発泡機、成形機をそのまま用いることが可能なポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の開発を目的としていたため、ポリ乳酸の溶融粘度の温度依存性を緩和し、広い温度範囲で発泡に適した溶融粘度(溶融張力)を得る為に架橋剤によって増粘させる手法を取ってきた。
【0022】
本発明では、各種ポリ乳酸樹脂の溶融粘度の温度依存性、各種温度における結晶化速度、水存在下における加水分解挙動などを詳細に検討した結果、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用い、実質的に水を含まない分散媒系にて含浸し、特定の温度条件で予備発泡・成形することが必須であるという結論に達した。
【0023】
本発明における実質的に単一のポリ乳酸系樹脂とは、架橋剤を含まず、ポリ乳酸のリサイクル性を損なうことのない程度のポリ乳酸樹脂を示すものであり、マテリアルリサイクルとしての活用を考える場合、本発明に用いるポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分は、樹脂組成物としての溶融粘度、ガスバリア性を損なわない範囲で、共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオールを含んでいても構わない。しかし、ケミカルリサイクルも含めたリサイクル性を考える場合、共重合成分を全く含まないポリ乳酸が好ましい。
【0024】
ポリ乳酸としては、それを構成する乳酸の光学異性体比率(D体/L体)が8/92〜92/8の範囲にあるものが必要である。この範囲に無いものは、発泡させることは可能だが、発泡時に結晶化が進む為、成形が困難である。また、安定的に高発泡かつ成形性に優れたものを得る為には、10/90〜90/10であることが更に好ましく、自然環境下に放置された際の生分解性や醗酵法によるモノマーの製造コスト等を考慮に入れると、最も好ましくは10/90〜20/80である。
【0025】
また、本発明に用いるポリ乳酸の分子量は、低すぎると本発明の加工条件を適用しても満足する結果を得ることが出来ない。具体的には重量平均分子量が50,000〜300,000の範囲にないと、目的とする発泡倍率と成形性を確保することが出来ず、さらに溶融混練時の作業性を考慮すると重量平均分子量は250,000以下であることが好ましく、より高倍率の発泡が必要であれば重量平均分子量は70,000以上であることが好ましく、最も好ましい重量平均分子量の範囲は70,000〜250,000である。
【0026】
もちろん、特許文献2にもあるように広い温度域で安定した粘度挙動を示す樹脂を用いるほうが安定した発泡体が得られることは周知であり、本発明に於いても同様であるが、本発明では特に工業的に入手可能な多分散度1.5〜3程度の比較的分子量分布の狭いポリ乳酸樹脂であっても用いることが出来る。
【0027】
本発明の樹脂組成物に対しては、ポリ乳酸系樹脂以外に、発泡セルのサイズを調整する目的で、タルク、マイカ、シリカ、モンモリロナイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの発泡核剤を発泡性、成形性、リサイクル性を損なわない範囲で添加しても良い。
【0028】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、柔軟剤、制電剤、ブロッキング防止剤等を発泡性、成形性、リサイクル性を損なわない範囲で添加しても良い。
【0029】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を発泡成形に適した粒子形状にする方法としては、特に限定されないが、例えば、2軸押出機または単軸押出機を用いて溶融押出しし、ストランドカットする方法もしくは水中カッターを用いる方法等が利用可能だが、粒子形状を真円に近い形にすることができ、金型充填効率が向上する事により、細かな成形体を作ることが可能であるという点から、水中カッターの方が有用である。
【0030】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に発泡性ガスを含浸する方法としては、分散媒として、実質的に水を含まない溶剤を用いる。実質的にという意味は、積極的に水を加えないと言う意味であり、操作上、あるいは原料等に由来する水分等はこれに含まない。
【0031】
具体的に使用可能な分散媒としては、ポリ乳酸を積極的に溶解したり加水分解を促進しなければ特に限定されない。
【0032】
具体的な例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等のアルカン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、石油エーテル、石油ベンジン、軽油、灯油、シクロヘキサノン、などが挙げられる。特にポリ乳酸系樹脂組成物粒子の沈降・膠着が設備的に回避できるのであれば、発泡性ガスをそのまま分散媒として用いたほうが発泡性ガスの回収再利用が容易であり、好ましい。
【0033】
発泡性ガスとしては、プロパン、ブタン(イソ、ノルマル)、ペンタン、ヘキサンなどが好ましく用いられ、より高い発泡倍率を得たい場合には特にブタン類が好ましく、最も好ましくはイソブタンである。
【0034】
発泡性ガスを含浸する際には、樹脂組成物粒子の分散性を改善し、膠着を防ぐ目的で分散助剤を添加しても良い。分散助剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類などの高分子物質を用いることも可能だが、界面活性剤、特に非イオン系界面活性剤の添加が好ましい。
【0035】
非イオン系界面活性剤系の分散助剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やTween(ICI社 商標)20,40,60,80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、Span(ICI社 商標)20,60,80などのソルビタン脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0036】
発泡性ガスの含浸は、通常、80℃〜120℃の範囲で行われる。樹脂組成物の膠着が起きない限り高温で含浸したほうが、より多くの発泡性ガスが含浸され、高い発泡倍率が得られるが、設備上の限界と含浸する発泡性ガスの蒸気圧、安全性、用いるポリ乳酸の融点や耐熱性を考慮して、80℃〜120℃で行うことが好ましく、さらに好ましくは80℃〜110℃である。
【0037】
発泡性ガスを含浸したポリ乳酸系樹脂組成物粒子の発泡に際しては、ポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+10℃〜Tg+35℃となるように温調した気体と接触させる。
【0038】
例えば樹脂組成物中がポリ乳酸樹脂の物性に支配されている場合、そのTgは60℃弱であるので、発泡は70℃〜95℃で行うのが好ましく、発泡粒子のブロッキング(相互融着)を抑制し、高発泡倍率を得る為には、75℃〜85℃がさらに好ましい。
【0039】
ポリ乳酸系樹脂組成物発泡性粒子の発泡に用いる温度制御された気体としては、発泡に
必要なエネルギーを蓄えた気体であれば特に限定されないが、通常、バッファタンクを擁し、エアと高圧飽和水蒸気を混合して温調することが可能な発泡スチロール用予備発泡機を用いて、所定の温度に調整した高湿度の空気(水蒸気)を導入して発泡させる。
【0040】
ポリ乳酸系樹脂組成物発泡粒子の成形は、該発泡粒子を型内に充填し、そのポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg−10℃〜Tg+30℃となるように温調した気体と接触させて予熱した後、速やかにTg+30℃〜Tg+60℃に温調した気体と接触させて本加熱することにより行う。
【0041】
ポリ乳酸樹脂は、Tg近傍で急速に軟化して溶融張力が低下する為、急速な温度上昇は、急激な内部気体の膨張に伴なう内部圧の上昇が重なると一気に膨張し、型内部への温調気体の進入を妨げるので内部融着不良の原因となる。
【0042】
このため、通常、発泡スチロールの成形で行われるような100℃を超える水蒸気を最初から接触させずに、一旦熱膨張があまり起きない程度に予熱した後、高温気体を導入して本加熱を行う方法を用いる。
【0043】
成形時の予熱に用いる気体の温度としては、Tg−10℃〜Tg+30℃が必要である。設備的に可能であればTg〜Tg+20℃であると予熱時間が長く取れ、均一に予熱されるので好ましい。
【0044】
成形時の本加熱に用いる気体の温度は、発泡粒子を再発泡化し、融着させるに十分な温度と熱量が必要であり、Tg+30℃〜Tg+60℃(ポリ乳酸が樹脂組成物の物性を支配している場合は、90℃〜120℃)が好ましく、確実な融着と表面の仕上がりが求められる場合は、Tg+40℃〜Tg+50℃(ポリ乳酸が樹脂組成物の物性を支配している場合は、100℃〜110℃)がさらに好ましい。
【0045】
このような成形方法は、通常の発泡スチロール用の成形機では困難であるが、予備発泡機と同じく、バッファタンクでエアと高温高圧の水蒸気を混合して100℃以下の温調高湿度空気を調整し、供給できるような別ラインを設ける程度の比較的軽微な改造を行うことにより、発泡スチロール、ポリ乳酸のいずれの成形にも使用できるようになる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
【0047】
[製造例1]
D体比率10%、数平均分子量10万、重量平均分子量21万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−1)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEM35B、L/D=35)を用いて溶融押出し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0048】
[製造例2]
D体比率12%、数平均分子量8万、重量平均分子量15万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−2)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEM35B、L/D=35)を用いて溶融押出し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0049】
[製造例3]
D体比率4.5%、数平均分子量11万、重量平均分子量22万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−3)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEM35B、L/D=35)を用いて溶融押出し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0050】
[製造例4]
D体比率7.5%、数平均分子量11万、重量平均分子量22万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−4)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEM35B、L/D=35)を用いて溶融押出し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0051】
[製造例5]
D体比率12%、数平均分子量1万、重量平均分子量3万、残留ラクチド0.2%のポリ乳酸(PLA−5)を二軸押出機(東芝機械(株)製 TEM35B、L/D=35)を用いて溶融押出し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂組成物とした。
【0052】
(実施例1、2および比較例1〜3)
製造例1〜5の樹脂組成物粒子への発泡性ガスの含浸は、各熟成ビーズを各々10L回転ドラム型密閉容器に4.3kg仕込み、ビーズの重量を100部として、イソブタン40部、Tween(ICI社 商標)80相当品(和光(株))(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を1部添加して、89℃にて2時間含浸を行い、常温で通気風乾して発泡性粒子を得た。
【0053】
製造例1〜5から得られたポリ乳酸系樹脂発泡性樹脂粒子を各々順に実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3とした。
【0054】
(実施例3〜実施例5)
製造例1で得られたポリ乳酸系樹脂粒子について、発泡性ガスとして、ノルマルブタン、混合ブタン(ノルマル/イソ=70:30)、ペンタンを用いる以外は実施例1と同様にして発泡性粒子を得、各々、得られた発泡性粒子を実施例3〜実施例5とした。
【0055】
(比較例4)
製造例1のポリ乳酸系樹脂組成物粒子3kgを10Lドラム回転式含浸機に入れ、粒子を100重量部として、イソブタンを25部、蒸留水を100部、DO−1000(三洋化成(株)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)を0.7部仕込んだ。
【0056】
さらに、50℃から83℃まで1時間掛けて昇温し、83℃にて2時間保持して含浸を行い、冷却後排出して、常温で通気風乾して発泡性粒子を得た。
【0057】
[予備発泡]
実施例1〜5、比較例1〜4のポリ乳酸系樹脂組成物発泡性粒子を各々発泡スチロール用予備発泡機(ダイセン工業(株)製 DYHL−300)にて予備発泡した。発泡温度は70℃〜90℃の範囲で発泡温度を2℃刻みで変えて行い、発泡粒子同士の融着(ブロッキング)が起こらず、最も発泡倍率の高いものを用いて成形テストを実施した。
【0058】
[成形]
予備発泡した発泡粒子は、24時間以上常温で保管・熟成した後、各々発泡スチロール用成型機(ダイセン工業(株)製 VS−300L−MC)を一部改良し、蒸気とエアを混合して100℃以下の蒸気の導入が可能なようにした装置を用い、140mm×110mm×15mm厚のボードに成形した。
【0059】
実施例1〜5、比較例1〜4の結果を表1に示す。
なお、成形性の評価は以下のように行った。
(成形性の評価)
◎:良好
○:成形可能
△:収縮気味
×:不良
【0060】
【表1】

【0061】
また、実施例1で得られた発泡性粒子を発泡して得られた発泡粒子について、成形条件を変化させた結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表1から明らかなように、無架橋のポリ乳酸系樹脂異性体比率(D体/L体)が8/92〜92/8の低結晶性もしくは実質的に非晶性のポリ乳酸を用い、本願発明の製造方法を用いた場合に限り、20倍以上の高倍率の発泡成形体が得られる。
【0064】
また、表2から明らかなように、本発明の成形方法を用いた場合に限り、良好な成形性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物発泡体は、高倍率の発泡成形体でありながら、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルが容易であり、広い用途への展開が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸成分の光学異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92かつ、重量平均分子量が50,000〜300,000の実質的に単一のポリ乳酸系樹脂を主たる成分とする、無架橋のポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
【請求項2】
無架橋のポリ乳酸系樹脂組成物粒子に、
1)実質的に水を含まない非プロトン系分散媒中で発泡性ガスを含浸させてポリ乳酸系樹脂組成物発泡性粒子とし、
2)該発泡性粒子をその主成分であるポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+10℃〜Tg+35℃となるように温調した気体と接触させて発泡させて発泡粒子とした後、
3)該発泡粒子を型内に充填し、そのポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg−10℃〜Tg+30℃となるように温調した気体と接触させて予熱した後、速やかにTg+30℃〜Tg+60℃に温調した気体と接触させて本加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2006−111704(P2006−111704A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299652(P2004−299652)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】