説明

ポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物、及びそれからなる押出成型体

【課題】 優れた耐衝撃性及び表面外観を有するとともに、押出成形の際のフィッシュアイの発生が抑制され、押出成形性の改善されたポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ポリ乳酸樹脂10〜30質量%と、
(B)ポリオレフィン樹脂65〜89.8質量%と、
(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体0.2〜5質量%と
を含有することを特徴とするポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリ乳酸と化石資源由来のポリオレフィンとの混合樹脂からなる押出成形体、特にその押出成形性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシ等の植物を原料とするバイオマス由来のプラスチックであり、化石資源を使用しないカーボンニュートラルな素材として知られている。また、ポリ乳酸樹脂は、他の樹脂と比べて生分解性が高く、環境に優しい樹脂として、幅広い分野での普及が期待される樹脂である。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、耐熱性や耐衝撃性、柔軟性に乏しいため、非常に脆く、加工性に問題があることから、工業的用途が限定されている。
【0003】
そこで、耐衝撃性や加工性に優れたポリオレフィン系樹脂にポリ乳酸を添加することによって、良好な物性を有するとともに、化石資源の使用量を低減したポリ乳酸/ポリオレフィンの混合樹脂を得る試みが行われている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は極性が高い高分子であるため、極性の低いポリオレフィン樹脂との相溶性がない。このため、ポリ乳酸樹脂とをポリオレフィン樹脂とを単にブレンドしても、互いに非相溶であるために均一性がなく、耐衝撃性に劣り、また、成形体表面の平滑性が得られず、外観が不良となってしまうという問題がある。
【0004】
これに対して、不飽和カルボン酸等により変性されたポリオレフィン樹脂を添加することによって、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶性を改善したポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物の提案がなされている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、変性ポリオレフィン樹脂を添加することによって、ポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂の相溶性は向上するものの、このポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂は、押出成形した際にフィッシュアイ(押出成型時に溶けきれずに出てきた樹脂の塊)が生じてしまい、生産性を著しく損なうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9―316310号公報
【特許文献2】特開2007−308638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の背景に鑑みなされたものであって、その解決すべき課題は、優れた耐衝撃性及び表面外観を有するとともに、押出成形の際のフィッシュアイの発生が抑制され、押出成形性の改善されたポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリ乳酸とポリオレフィンとの混合樹脂に対し、特定量のポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体を添加することによって、押出成形の際のフィッシュアイの発生が抑えられ、優れた耐衝撃性及び表面外観を有するとともに、押出成形性の著しく改善されたポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸樹脂10〜30質量%と、(B)ポリオレフィン樹脂65〜89.8質量%と、(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体0.2〜5質量%とを含有することを特徴とするものである。
また、前記ポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂製押出成形体において、(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレートの含有量が、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量に対して、質量比で1/5〜1/50倍量であることが好適である。
【0009】
また、本発明にかかる押出成形体は、前記ポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物からなり、下記(1)に基づいて測定した表面粗さが0.1〜1μmRa、及び下記(2)に基づいて測定した引張破断ひずみが230%以上であることを特徴とするものである。
(1)シート状に押出成形した成形体の表面粗さ(TD方向)を、表面粗さ計を用いて、トレーシングスピード0.3mm/min,カットオフ0.8,測定距離1cmの条件で測定する。
(2)シート状に押出成形した成形体を、試験部の幅5.0mm、長さ30.0mmのダンベル状に打ち抜いた試験片の引張り破断ひずみを、引張試験機を用いて、JIS K7113に準拠し、25℃環境下、引張速度50mm/minの条件で測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物は、優れた耐衝撃性及び表面外観を有するとともに、押出成形の際のフィッシュアイの発生が抑制され、押出成形性が著しく改善されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明にかかるポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸樹脂10〜30質量%と、(B)ポリオレフィン樹脂65〜89.8質量%と(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体0.2〜5質量%とを含有することを特徴とするものである。
【0012】
(A)ポリ乳酸樹脂
本発明に使用される(A)ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ等の植物デンプンを乳酸化、重合化して得られた樹脂である。(A)ポリ乳酸の構造は、L―乳酸および/又はD―乳酸由来のモノマー単位のみで構成されているポリマー、あるいはこれに別のモノマー単位を少量有する共重合体であってもよい。
【0013】
また、(A)ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、既知の任意の重合方法を採用することができ、例えば、乳酸の無水環状2量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)、あるいは乳酸を直接縮合重合する方法が挙げられる。なお、(A)ポリ乳酸樹脂が、L−乳酸樹脂及び/又はD−乳酸樹脂に由来するモノマー単位のみからなる場合、重合体は結晶性で高融点を有しており、L−乳酸樹脂、D−乳酸樹脂由来のモノマー単位の比率を変化させることにより、結晶性・融点を自在に調節することができる。
【0014】
本発明においては市販の(A)ポリ乳酸樹脂を使用してもよく、例えば、テラマック(ユニチカ(株)製)が挙げられる。
【0015】
本発明の樹脂組成物における(A)ポリ乳酸樹脂の含有量は、10〜30質量%である。(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が10質量%未満であると、相対的に(B)ポリオレフィン樹脂の含有量が多くなるため、機械的特性は十分に保たれるものの、化石資源使用量を低減するという点で望ましくない。一方で、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が30質量%を超えると、樹脂の均一性が低下して表面が粗くなってしまい、外観に劣る場合があるため、好ましくない。
【0016】
(B)ポリオレフィン樹脂
本発明に使用される(B)ポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等のオレフィン、あるいは塩化ビニル、ビニルアルコール又はその誘導体等のオレフィン類を単独重合又は共重合して得られる樹脂である。(B)ポリオレフィン樹脂としては、種々のものが使用でき、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン等のモノオレフィンポリマーあるいはエチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、プロピレン−塩化ビニルコポリマー、あるいはこれらのポリマーの混合物が挙げられる。また、本発明においては市販の各種(B)ポリオレフィン樹脂を使用してもよい。
【0017】
本発明の樹脂組成物における(B)ポリオレフィン樹脂の含有量は、65〜89.8質量%である。(B)ポリオレフィン樹脂の含有量が65質量%未満の場合、相対的に(A)ポリ乳酸の特徴が強くなり、化石資源使用量の削減効果は大きくできるものの、樹脂の均一性が低下して、耐衝撃性等の機械特性に劣ったり、押出成形体の表面が粗くなってしまい、表面外観に劣る場合がある。一方で、(B)ポリオレフィン樹脂の含有量が89.8質量%を超えると、耐衝撃性等の機械特性に優れた押出成形体が得られるものの、化石資源使用量を低減するという点で望ましくない。
【0018】
(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体
本発明に使用される(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体は、エチレンとグリシジルメタクリレートとを共重合して得られるものである。エチレン(E)とグリシジルメタクリレート(GMA)の共重合比は、特に限定されるものではないが、質量比で、E:GMA=95:5〜75:15であることが好ましい。また、分子量も特に限定されるものではないが、メルトフローレイトが1〜100g/10minであることが好ましい。
【0019】
本発明においては市販の(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を使用してもよく、特にボンドファーストE(住友化学(株)製,E:GMA=88:12(質量比),メルトフローレイト3g/10min)を好適に使用することができる。
【0020】
本発明の樹脂組成物における(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の含有量は、0.2〜5質量%である。(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体の含有量が0.2質量%未満の場合、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリオレフィン樹脂との相溶性の向上効果が認められず、表面が粗くなる。一方で、(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体の含有量が5質量%を越えると、樹脂相溶性の向上効果は認められるものの、押出成形の際にフィッシュアイが発生しやすくなり、押出成形体の生産性低下につながる。
【0021】
なお、フィッシュアイとは、樹脂を押出成型した際に溶けきれずに出てくる樹脂の塊を意味し、押出成形体の外観を著しく損なうため、問題となっている。本発明において、フィッシュアイの発生原因は必ずしも定かではないが、(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が単独で、あるいは他の樹脂を伴って凝集することにより発生しているものと考えられる。
【0022】
また、本発明の樹脂組成物において、(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の含有量が、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量に対して、質量比で1/5〜1/50倍量の範囲であることが好ましい。(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレートの含有量が、(A)ポリ乳酸樹脂に対して1/5倍量よりも多いと、フィッシュアイが発生しやすくなる傾向にあり、一方で1/50倍量よりも少ないと、樹脂相溶性の向上効果が十分に得られず、樹脂の均一性が得られ難くなるため、好ましくない。
【0023】
本発明の樹脂組成物においては、必要に応じて、顔料、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、艶消剤、劣化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、滑剤、結晶核剤、金属粉、無機フィラー、カーボンブラック、増粘剤、粘度安定剤等を、任意の割合で添加してもよい。これら添加剤の添加量は、通常、5質量%以下が望ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、特に押出成形体としての用途に好適に使用することができる。押出成形方法は、特に限定されるものではないが、連続的に処理できる成形機を使用することが、工業的に有利であるため好ましい。具体的には、例えば、以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
(1)各種樹脂のペレットを所定比率で混合し、そのまま押出成型機のホッパー内に樹脂ペレットを投入して、溶融し、直ちに成型する方法。
(2)それぞれの樹脂を2軸押出成型機にて溶融混合した後、一旦ペレット化し、得られたペレットを押出成型機のホッパー内に投入し、溶融し、成型する方法。
【0025】
前記(1)の方法は、樹脂の熱劣化を少なくすることができ、工程的にも一括して成型を行なうことができるため、成型によるコストも低く抑えられるものの、樹脂組成物の均一分散性の点では(2)に及ばない。一方で、前記(2)の方法は、樹脂組成物の均一分散性には優れているものの、押出成型を行なう前に、一旦溶融押出にて樹脂のペレット化を行なうため、ポリマーの劣化、変質を生じる可能性があり、さらに2段階の成形工程を行なう必要があるため、成型におけるコストアップにつながる。
このため、使用する樹脂の種類や成形品の形態等に応じて、上記(1),(2)のうちから、より適切な方法を選択して成形を行なうことが望ましい。
【0026】
なお、前記方法における溶融混合時の加熱温度は、混合する樹脂あるいは添加物の種類に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは180〜200℃の範囲内で行なう。220℃以上、例えば、250℃程度で溶融混合を行なうと、(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の凝集が生じて、フィッシュアイが発生しやすくなる場合がある。
【0027】
本発明の樹脂組成物からなる押出成形体は、概略以上のようにして得られるものであり、その表面粗さが0.1〜1μmRa、及び引張破断ひずみが230%以上の、優れた耐衝撃性及び表面外観を有するものである。ここで、上記押出成形体の表面粗さ及び引っ張り破断ひずみの測定条件は、それぞれ下記(1),(2)に示すとおりである。
(1)シート状に押出成形した成形体の表面粗さ(TD方向)を、表面粗さ計を用いて、トレーシングスピード0.3mm/min,カットオフ0.8,測定距離1cmの条件で測定する。
(2)シート状に押出成形した成形体を、試験部の幅5.0mm、長さ30.0mmのダンベル状に打ち抜いた試験片の引張り破断ひずみを、引張試験機を用いて、JIS K7113に準拠し、25℃環境下、引張速度50mm/minの条件で測定する。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
本発明者らは、ポリ乳酸、ポリエチレン及び各種相溶化剤を、下記表1〜3に示す組成にて、ラボプラストミル(東洋精機製作所(株)製,50MR,L/D=25)にて混合し、各実施例及び比較例の樹脂組成物を調製した。また、得られた各種樹脂組成物について、それぞれ下記評価方法に基づいて評価を行なった。
【0030】
なお、各実施例及び比較例において用いた樹脂は以下のとおりである。
(A)ポリ乳酸:テラマックTP4000(ユニチカ(株)社製)
(B)ポリエチレン:ミラソン50((株)プライムポリマー社製)
(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレート:ボンドファーストE(住友化学(株)社製)
ポリエチレン−無水マレイン酸グラフトコポリマー:モディックL513(三菱化学(株)社製)
ポリエチレン−エチルアクリレート−メチルメタクリレートグラフトコポリマー:モディパーA5300(日本油脂(株)社製)
【0031】
〈評価方法〉
(1)表面粗さ
下記表に示す組成の各種樹脂をラボプラストミルを用いてスクリュー回転数120〜130rpm(実施例1〜8及び比較例1〜6:製造温度180〜200℃,比較例7〜8:製造温度220℃)にて混練し、Tダイ押出物を冷却ロールによって巻き取ったシートを3cm四方に切り取り、試験片とした。各実施例及び比較例の試験片について、その表面粗さ(TD方向)を、表面粗さ計((株)東京精密社製,サーフコム550A)を用いて、トレーシングスピード0.3mm/min,カットオフ0.8,測定距離1cmにて測定した。
【0032】
(2)引張破断ひずみ
下記表に示す組成で混練して得られた各種樹脂組成物をホットプレスして約0.5mm厚のシートを作成し、試験部幅を5.0mm、長さを30.0mmのダンベル状に打ち抜いたものを試験片とした。各実施例及び比較例の試験片について、その引張破断ひずみを、引張試験機((株)東洋精機製作所製,STROGRAPH V10−C)を用い、JIS K7113に準拠して測定を行なった。なお、25℃環境下、引張速度は50mm/min、試験片の支点間距離は5mmとして測定を行なった。
【0033】
(3)フィッシュアイの発生
下記表に示す組成の各種樹脂をラボプラストミルを用いてスクリュー回転数120〜130rpm(実施例1〜8及び比較例1〜6:製造温度180〜200℃,比較例7〜8:製造温度220℃)にて混練し、Tダイ押出物を冷却ロールによってシート状に巻き取った。得られた各実施例及び比較例のシート表面のフィッシュアイの発生状況を、下記評価基準に基づいて目視により評価した。
A:フィッシュアイがほとんど発生しておらず、外観が良好であった。
B:フィッシュアイがやや発生しているものの、外観はほぼ良好であった。
C:フィッシュアイが大量に発生しており、外観が不良であった。
【0034】
【表1】

【0035】
上記表1に示されるように、ポリエチレンのみからなる比較例1の樹脂組成物は、表面粗さ、引張ひずみともに良好であり、また、フィッシュアイの発生も生じていない。一方で、ポリエチレンに対して10%のポリ乳酸を混合した比較例2の樹脂組成物においては、樹脂の均一性が悪化して、表面が粗くなっていることがわかる。また、ポリエチレン−グリシジルメタクリレートを0.1質量%添加した比較例3の樹脂組成物においても、その表面粗さは若干改善されているとはいえ、十分なものとは言えない。
【0036】
これに対して、ポリ乳酸を10%配合した上で、ポリエチレン−グリシジルメタクリレートを0.2〜5%添加した実施例1〜3の樹脂組成物においては、表面粗さが1μmRa以下まで改善され、特に5%配合した実施例3の樹脂組成物では、表面粗さの測定値っが非常に小さく、きわめて外観に優れた樹脂組成物が得られた。また、比較的硬くて脆いポリ乳酸を配合することで引張ひずみ値は低下する傾向が見られるものの、実施例1〜3の樹脂組成物においては高い引張ひずみ値を維持しており、通常、製品に要求される程度の耐衝撃性を満たすものであった。なお、ポリエチレン−グリシジルメタクリレート5%を添加した実施例3では押出成形の際に少量のフィッシュアイの発生が確認されたものの、実施例1〜3の樹脂組成物における押出成形性は、概ね良好なものであった。
【0037】
【表2】

【0038】
上記表2に示されるように、ポリ乳酸を20〜30%配合し、さらにポリエチレン−グリシジルメタクリレートを5%添加した実施例4,5の樹脂組成物においては、表面粗さ、引張りひずみともに良好であり、また、フィッシュアイの発生も少ないものであった。
【0039】
これに対して、ポリエチレン−グリシジルメタクリレートを10%添加した比較例4,5の樹脂組成物では、押出成形の際に大量のフィッシュアイが発生することが明らかとなった。加えて、より多くのポリエチレン−グリシジルメタクリレートを添加しているにもかかわらず、引張りひずみが低下し、耐衝撃性が悪化していた。また、ポリ乳酸を40%配合し、ポリエチレン−グリシジルメタクリレート5%を添加した比較例6では、フィッシュアイの発生は生じていないものの、ポリ乳酸の割合が多くなりすぎて、樹脂の均一性が悪化してしまい、表面粗さ、引張ひずみともに十分なものとは言い難かった。
【0040】
【表3】

【0041】
上記表3に示されるように、樹脂相溶化剤として一般に用いられているポリエチレン−無水マレイン酸グラフトコポリマー、及びポリエチレン−エチルアクリレート−メチルメタクリレートグラフトコポリマーを、ポリ乳酸/ポリエチレン樹脂に対して5%添加した比較例7,8の樹脂組成物では、樹脂を十分に均一化することができておらず、特に表面粗さの点で劣っていた。また、実施例3と同量の相溶化剤を配合しているにもかかわらず、押出成形の際に大量のフィッシュアイが発生しており、押出成形には適さないものであることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸樹脂10〜30質量%と、
(B)ポリオレフィン樹脂65〜89.8質量%と、
(C)ポリエチレン―グリシジルメタクリレート共重合体0.2〜5質量%と
を含有することを特徴とするポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂製押出成形体において、(C)ポリエチレン−グリシジルメタクリレートの含有量が、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量に対して、質量比で1/5〜1/50倍量であることを特徴とするポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリ乳酸/ポリオレフィン樹脂組成物からなり、下記(1)に基づいて測定した表面粗さが0.1〜1μmRa、及び下記(2)に基づいて測定した引張破断ひずみが230%以上であることを特徴とする押出成形体。
(1)シート状に押出成形した成形体の表面粗さ(TD方向)を、表面粗さ計を用いて、トレーシングスピード0.3mm/min,カットオフ0.8,測定距離1cmの条件で測定する。
(2)シート状に押出成形した成形体を、試験部の幅5.0mm、長さ30.0mmのダンベル状に打ち抜いた試験片の引張り破断ひずみを、引張試験機を用いて、JIS K7113に準拠し、25℃環境下、引張速度50mm/minの条件で測定する。


【公開番号】特開2011−201980(P2011−201980A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69147(P2010−69147)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】