説明

ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)に基づく膜

架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、非多孔質または細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する高分子膜が開示されている。また、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含み、かつ第2のポリアミンを含む高分子膜であって、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)と第2のポリアミンが互いに架橋している高分子膜も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その両方の中身がここに引用される、2007年10月29日に出願された米国仮特許出願第61/000816号および2008年4月30日に出願された米国特許出願第12/112535号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、膜に関し、より詳しくは、例えば、分子レベルの分離に使用できるポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)に基づく膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CO2、H2およびCOを含むガス流を生成する、石炭ガス化、バイオマスガス化、炭化水素の水蒸気改質、天然ガスの部分酸化などの工業プロセスが数多くある。例えば、隔離目的のためにCO2を捕捉し、H2またはH2の豊富なガス生成物を生成するために、それらの混合ガスからCO2を除去することがしばしば望ましい。
【0004】
それらの混合ガスからCO2を除去するために、今日、工業界で一般に用いられているあるプロセスは、アミン系ガスの洗浄塔の使用を含む。これらの洗浄塔において、混合ガスは、アミン含有有機溶媒またはアミン含有溶液と接触させられる。CO2およびH2Sなどの他の酸性分子は、アミン溶液中に選択的に吸収される。このプロセスは、塩基であるアミンと酸であるCO2との間の強力な相互作用を利用して、図1に示されるようなカルバミン酸塩を形成する。
【0005】
しかしながら、アミンの吸収技法には、顕著な欠点と効率の悪さがある。例えば、アミンの吸収技法では、多量のアミン水溶液が必要とされる。この技法では、アミン溶液が一旦飽和したら、その溶液を再活性化させる必要があるので、ポンプとアミン/CO2再生システムも必要である。再活性化は、溶液中のアミノ基から結合したCO2を除去する工程を含み、このプロセスは、多量のエネルギーを消費する。さらに、アミンの吸収技法により設備が腐食することがあり、アミン溶液は短期間で活性を失ってしまう。
【0006】
高分子膜技術により、アミノ基とCO2分子との間の化学的性質をまだ利用しながら、そのプロセスがより簡単になる。高分子膜技術の使用により、上述したような複雑なシステムが不要になるだけでなく、再生の必要性とアミン溶液の活性の損失に関連する問題も克服される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したことに鑑みて、分子レベルの分離のために使用できる高分子膜が必要とされており、本発明は、少なくとも一部には、この必要性に対処することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、非多孔質であるかまたは細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質である高分子膜に関する。
【0009】
本発明は、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含み、かつ第2のポリアミンを含む高分子膜であって、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)と第2のポリアミンが互いに架橋している高分子膜にも関する。
【0010】
本発明は、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、非多孔質であるかまたは細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質である高分子膜を調製する方法にも関する。この方法は、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を提供し;膜前駆体組成物を薄膜の形態に流延し;架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で薄膜を硬化させる各工程を有してなる。
【0011】
本発明は、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンを含む高分子膜であって、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)と第2のポリアミンが互いに架橋している高分子膜を調製する方法にも関する。この方法は、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を提供し;膜前駆体組成物を薄膜の形態に流延し;架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で薄膜を硬化させる各工程を有してなり、膜前駆体組成物が第2のポリアミンを含み、薄膜が、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で硬化される。
【0012】
本発明はまた、複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体;
必要に応じての、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
本発明による高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備えない場合、無機多孔質支持体の内部通路の表面が500ナノメートル以下の中間細孔サイズを有し、かつ高分子膜が無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆し;複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備える場合、高分子膜が1つ以上の無機中間層の表面を被覆する複合膜構造に関する。
【0013】
本発明はまた、複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体;
必要に応じての、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、非多孔質であるかまたは細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質である高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備えない場合、高分子膜が無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆し;複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備える場合、高分子膜が1つ以上の無機中間層の表面を被覆する複合膜構造に関する。
【0014】
本発明はまた、複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体;
必要に応じての、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含み、かつ第2のポリアミンをさらに含む高分子膜であって、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)と第2のポリアミンが互いに架橋している高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備えない場合、高分子膜が無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆し;複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備える場合、高分子膜が1つ以上の無機中間層の表面を被覆する複合膜構造に関する。
【0015】
本発明はまた、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)、第2のポリアミン、および架橋剤を含む膜前駆体組成物に関する。
【0016】
本発明は、複合膜構造を製造する方法にも関する。この方法は、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体を提供する工程;
必要に応じての、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を施す工程であって、1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されていない場合、無機多孔質支持体の内部通路の表面が500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有し、かつ膜前駆体組成物が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され;1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されている場合、膜前駆体組成物が1つ以上の無機中間層の表面に施される工程;および
架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる。
【0017】
本発明は、複合膜構造を製造する方法にも関する。この方法は、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体を提供する工程;
必要に応じて、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)、第2のポリアミン、および架橋剤を含む膜前駆体組成物を施す工程であって、1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されていない場合、膜前駆体組成物が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され;1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されている場合、膜前駆体組成物が1つ以上の無機中間層の表面に施される工程;および
架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる。
【0018】
本発明はまた、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)、第2のポリアミン、および架橋剤を含む膜前駆体組成物に関する。
【0019】
本発明は、複合膜構造を製造する方法にも関する。この方法は、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体を提供する工程;
必要に応じて、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を施す工程であって、1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されていない場合、膜前駆体組成物が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され;1つ以上の無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されている場合、膜前駆体組成物が1つ以上の無機中間層の表面に施される工程;および
架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を、非多孔質であるかまたは細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質である膜に架橋させるのに効果的な条件下で膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる。
【0020】
本発明のこれらと追加の特徴および実施の形態は、以下の図面と詳細な説明により完全に説明され、論じられている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CO2とアミンとの間の一般的な相互作用を示す反応式
【図2A】本発明による複合膜構造の斜視図
【図2B】図2Aの面Aを通ってとられた図2Aに示された複合膜構造の縦断面図
【図3】本発明のよる複合膜構造の縦断面図
【図4A】ガス分離用途における使用を示す、本発明による複合膜構造の説明図
【図4B】本発明による高分子膜を使用した、供給ガスからCO2を分離するための可能な機構を示す概略図
【図5】本発明の膜、膜前駆体組成物、および複合膜構造の調製に使用できる様々な材料の化学構造を示す構造式
【図6】図7A〜7Cおよび図8A〜8Dに示されたSEM画像に関する切断面と撮像方向を示す、実施例4において製造された高分子膜被覆セラミックモノリスの斜視図
【図7A】40倍の倍率でのPVAAm/PAAm/CARBODILITE(商標)V−02膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図7B】400倍の倍率でのPVAAm/PAAm/「CARBODILITE」V−02膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図7C】5000倍の倍率でのPVAAm/PAAm/「CARBODILITE」V−02膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図8A】100倍の倍率でのPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図8B】500倍の倍率でのPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図8C】10000倍の倍率でのPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図8D】20000倍の倍率でのPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜により被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像
【図9】セラミックモノリスの通路内の表面上の、本発明による膜前駆体組成物を流延するための真空流し塗り装置および方法の説明図
【図10】PVAAmと「CARBODILITE」V−02との間の反応の反応速度を示す、様々な温度での時間の関数としてのカルボジイミド帯(2119cm-1)の正規化赤外線ピーク強度をプロットしたグラフ
【図11】膜中のアミノ基の存在を確認する、本発明のPAAm/PVAAm系高分子膜のFTIRスペクトル
【図12A】1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸のアルコール官能基との反応を示す反応式
【図12B】1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸のアミン官能基との反応を示す反応式
【発明を実施するための形態】
【0022】
図に示された実施の形態は、本質的に実例であり、特許請求の範囲により定義された本発明を制限することを意図するものではない。図面と本発明の個々の特徴は、以下の詳細な説明により完全に論じられている。
【0023】
本発明のある態様は、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜に関する。
【0024】
本発明の高分子膜に使用できる適切な架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)の例としては、以下の式
【化1】

【0025】
を有するものであって:
1モル%から99モル%のビニルアミンを含むもの;2モル%から90モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から80モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から75モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から70モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から60モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から50モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から40モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から30モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から20モル%のビニルアミンを含むもの;5モル%から15モル%のビニルアミンを含むもの;10モル%から50モル%のビニルアミンを含むもの;10モル%から40モル%のビニルアミンを含むもの;10モル%から30モル%のビニルアミンを含むもの;10モル%から20モル%のビニルアミンを含むもの;10モル%から15モル%のビニルアミンを含むもの;6モル%のビニルアミンを含むもの;12モル%のビニルアミンを含むもの;および/または13モル%のビニルアミンを含むものが挙げられる。ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)は、ランダムコポリマー、シーケンシャルコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、またはそれらの組合せであって差し支えない。
【0026】
ある実施の形態において、高分子膜はさらに第2のポリアミンを含み、このポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンは、互いに架橋している。
【0027】
ここに用いたように、「ポリアミン」は、繰返し第一級アミン、繰返し第二級アミン、繰返し第三級アミン、繰返し第四級アミン、またはそれらの組合せなどの繰返しアミンを含む任意の高分子を称することを意味する。この繰返しアミンは、高分子主鎖に直接結合していても(例えば、ポリビニルアミンの場合におけるように);または繰返し官能基内に含まれていても(例えば、ポリアリルイミンの場合や、ポリエチレンアミン内の第一級アミンの場合におけるように);または主鎖の一部であっても(例えば、ポリエチレンイミン内の第二級アミンの場合におけるように)差し支えない。
【0028】
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)はポリアミンであるので、「第2のポリアミン」は、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)以外の任意のポリアミンを称することを意味する。
【0029】
適切な「第2のポリアミン」の例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)およびポリ(4−ビニルピリジン))、およびポリアミノアルキルメタクリレート(例えば、ポリアミノエチルメタクリレートおよびポリジメチルアミノエチルメタクリレート並びに他のポリジアルキルアミノエチルメタクリレート)が挙げられる。他の適切な「第2のポリアミン」の例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、および塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムや式:
【化2】

【0030】
を有するものなどの第四級アンモニウム塩を含む高分子が挙げられる。さらに他の適切な「第2のポリアミン」の例としては、ポリ(ジメチルアミノプロリルメタクリルアミド−コ−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、および以下の式:
【化3】

【0031】
ここで、Xは、例えば、OまたはNHであり得、yは、例えば、2または3であり得る;
を有するコポリマーなどの異なるアミノ官能化モノマーのコポリマー(ランダムコポリマー、シーケンシャルコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど);並びに式:
【化4】

【0032】
ここで、Rは、例えば、H、アルキル、アリール、OHなどを表してよい;
を有するものなどの、アミノ・デンドリマー/星形高分子およびコポリマーが挙げられる。
【0033】
さらに他の適切な「第2のポリアミン」の例としては、ポリ−L−アルギニン、ポリ−D−リシン、ポリ−DL−オルニチン、ポリ−L−ヒスチジンなどのそのままのまたは塩(例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩など)形態の、ポリアミノ酸、並びにそのコポリマー(例えば、ランダムコポリマー、シーケンシャルコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)が挙げられる。
【0034】
さらに他の適切な「第2のポリアミン」としては、N−複素環またはヒドラジンを含有する高分子が挙げられる。第2のポリアミンの例としては、塩化ポリ(アクリルアミド−コ−ジアリルジメチルアンモニウム)
【化5】

【0035】
ポリ[N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミン−コ−2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン]
【化6】

【0036】
およびアルコキシル化ポリアミン、例えば、ポリエチレンイミン、エトキシル化
【化7】

【0037】
が挙げられる。これらのまたは他の「第2のポリアミン」の組合せを使用しても差し支えない。
【0038】
例示したように、ある実施の形態において、本発明の高分子膜はポリアリルアミンをさらに含み、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)およびポリアリルアミンは互いに架橋している。
【0039】
本発明の高分子膜は他の材料(すなわち、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および随意的な「第2のポリアミン」に加えて)を含んで差し支えない。例として、ある実施の形態において、高分子膜は移動性(mobile)非高分子アミンをさらに含む。ここに用いたように、「移動性非高分子アミン」は、1つ以上のアミン官能基を含有する低分子量化学物質(例えば、400g/モル未満、300g/モル未満、200g/モル未満、100g/モル未満などの500g/モル未満の分子量)を称することを意味する。アミン官能基は、第一級アミン官能基、第二級アミン官能基、または第三級アミン官能基であって差し支えなく、移動性非高分子アミンは、これらの種類のアミン官能基の組合せを含有して差し支えない。例えば、ある実施の形態において、非高分子アミンは非高分子第三級アミンである(すなわち、アミン官能基は第三級アミンである、または非高分子アミンが複数のアミン官能基を含有する場合には、アミン官能基の全てが第三級アミンである)。例示したように、適切な移動性非高分子アミンとしては、グリシン、グリシン塩(例えば、グリシンナトリウム塩、グリシンカリウム塩など)、ヘキシルジアミン、およびN,N−ジメチルエチルジアミンが挙げられる。他の適切な移動性非高分子アミンとしては、アラニン、グリシン、ジメチルグリシン、アルギニン、ヒスチジン、リシンなどのアミノ酸(そのままの形態または塩の形態)が挙げられる。これらのまたは他の移動性非高分子アミンの組合せを使用しても差し支えない。
【0040】
移動性非高分子アミンは、高分子膜内の吸収剤の移動相として働くことができ、これは、高分子膜が特定の用途(例えば、供給ガスからのCO2の分離のため)に使用される場合に特に有用であり得ると考えられる。
【0041】
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)(および高分子膜中に含まれる場合には、随意的な「第2のポリアミン」)は、任意の適切な架橋剤により架橋させることができる。適切な架橋剤としては、熱架橋剤(例えば、熱の印加により活性化されるもの)、光架橋剤(例えば、UV照射線または他の電磁照射線などの照射線の印加により活性化されるもの)、および熱または照射線もしくはその両方により活性化される架橋剤が挙げられる。適切な架橋剤の例としては、マイケル付加生成物が挙げられる。適切な架橋剤のさらに別の例としては、アルデヒド、エポキシ、イミデート、イソシアネート、メラミン、ホルムアルデヒド、エピクロロヒドリン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、および2−(4−ジメチルカルバミル−ピリジノ)エタン−1−スルホネートが挙げられる。適切な架橋剤のさらに別の例としては、以下の式:
【化8】

【0042】
(ここで、波線は、図示された2つの部分(例えば、2つのイソシアネート部分、2つのアルデヒド部分など)を結合させる、直接または間接結合もしくは一連の結合(例えば、共有結合)を表す)
を有するものが挙げられ、その例としては、グルタルアルデヒド、マロンアルデヒド、グリオキサール、p−フタルアルデヒド、グリセロール、ジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、および1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。適切な架橋剤のさらにまた別の例としては、例えば、アルデヒド、エポキシ、イミデート、イソシアネート、およびそれらの組合せから選択される反応性部分を複数含有する高分子またはオリゴマー化合物などの高分子架橋剤が挙げられる。実例として、適切な高分子架橋剤としては、ポリ(N−ビニルホルムアルデヒド)、酸化デンプン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド共重合ポリビニルアルコール、コポリ(ビニルアセテート)−(N−ビニル−ピロリドン)、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−無水マレイン酸)、およびポリ(イソブテン−alt−無水マレイン酸)並びにその部分塩(例えば、その部分アンモニウム塩)が挙げられる。適切な架橋剤のさらに別の例としては、アンモニウムジルコニウムカーボネート(例えば、BACOTE(商標)20)などの無機架橋剤;テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−5−メチル−2(1H)−ピリミジノンポリマー(例えば、SUNREZ(商標)700)のタイプのアルデヒドなどのブロックされたアルデヒド官能基を含有する架橋剤;およびポリアミド−エピクロロヒドリンのタイプの樹脂に基づく架橋剤(例えば、POLYCUP(商標)172)が挙げられる。
【0043】
実例として、ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)はアルデヒドにより架橋され;ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)はホルムアルデヒドにより架橋され;ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)はポリカルボジイミド架橋剤により架橋され;ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)はポリ酸架橋剤により架橋される。これらと他の架橋剤の組合せを同様に使用しても差し支えない。
【0044】
ここに用いたように、「ポリカルボジイミド架橋剤」は、各分子内に2つ以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含む架橋剤を称することを意味する。あるポリカルボジイミド架橋剤が、一般に2つ以上のカルボジイミド基を有するオリゴマーまたはポリマーとして市販されている。ある実施の形態において、カルボジイミド基(−N=C=N−)の各々は、例えば、架橋剤が式:−−Ar−R−N=C=N−R−Ar−−を有する2つ以上の基を含む場合であって、Arがアリール基(例えば、未置換フェニル基または置換フェニル基(フェニル基がメチルまたは他のアルキル置換基もしくはアリール置換基を担持する場合におけるように)を表し、Rがアルキル基(例えば、−R−が−C(CH32−基を表す場合などのように)を表す)の場合におけるように、アラルキル部分に結合されている。ある実施の形態において、ポリカルボジイミド架橋剤葉、以下の構造−[−N=C=N−R−Ar−R’−]−を有する繰返し単位を含有し、ここで、−Ar−は置換または未置換フェニル基または他のアリール基を表し、RおよびR’は、独立して、アルキル基(例えば、−R−および−R’−の各々が−C(CH32−基を表す場合などのように、置換または未置換メチル)を表す。適切なポリカルボジイミド架橋剤の例としては、「CARBODILITE」E−01、「CARBODILITE」E−02、「CARBODILITE」V−02、「CARBODILITE」V−02−L2、「CARBODILITE」V−04、「CARBODILITE」V−06(日本国、東京都所在の日清紡績株式会社により製造されている)が挙げられる。ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)は、以下の式:
【化9】

【0045】
を有するポリカルボジイミド架橋剤により架橋される。
【0046】
ここに用いたように、「ポリ酸架橋剤」は、各分子中に3つ以上の酸基(例えば、3つのカルボン酸基、4つのカルボン酸基、5つのカルボン酸基など)を含む架橋剤を称することを意味する。適切なポリ酸架橋剤の例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(「BTCA」)、クエン酸、およびエチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)が挙げられる。適切なポリ酸架橋剤の他の例としては、ポリアクリル酸およびマレイン酸ターポリマーなどの、3つ以上の酸基を含有するオリゴマーおよびポリマーが挙げられる。
【0047】
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)(および高分子膜に含まれる場合には、随意的な「第2のポリアミン」、例えば、ポリビニルアルコール含有ポリマー)は、架橋剤の添加の有無にかかわらず、熱処理(熱架橋)により架橋しても差し支えない。例としての熱処理は、数分間に渡る150℃以上の温度での加熱である。
【0048】
ある実施の形態において、高分子膜の厚さは、1マイクロメートルから60マイクロメートルである。ある実施の形態において、高分子膜の厚さは1マイクロメートルから30マイクロメートルである。高分子膜の適切な厚さの他の例としては、2±1マイクロメートル、5±2マイクロメートル、10±5マイクロメートル、20±5マイクロメートル、30±5マイクロメートル、40±5マイクロメートル、50±5マイクロメートル、および/または55マイクロメートルから60マイクロメートルが挙げられる。
【0049】
他の実施の形態において、高分子膜の厚さは、1マイクロメートル未満、例えば、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、また100nm以下である。
【0050】
ある実施の形態において、高分子膜の厚さは、高分子膜の厚さが膜の面積の90%以上(例えば、95%以上、98%以上など)に渡り50%未満(例えば、40%未満、30%未満、20%未満)しか高分子膜の平均厚から変動しない場合のように、実質的に均一である。ある実施の形態において、高分子膜は、実質的に均一な厚さであり、その厚さは1マイクロメートルから60マイクロメートルである。
【0051】
ある実施の形態において、高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、高分子膜は、高分子膜が250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む場合におけるように、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む。
【0052】
本発明の高分子膜は、どのような適切な方法によって調製しても差し支えない。本発明が関係する適切な方法の1つを以下に述べる。
【0053】
本発明はまた、架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜を調製する方法に関する。この方法は、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を提供する工程;薄膜の形態で膜前駆体組成物を流延する工程;および架橋剤にポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で薄膜を硬化させる工程を有してなる。
【0054】
上述したように、膜前駆体組成物はポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む。適切なポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)の例としては、上述したものが挙げられる。ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)は、5モル%から80モル%のビニルアミンを含むものである。ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)は、5モル%から20モル%のビニルアミンを含むものである。ある実施の形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)は12モル%のビニルアミンを含むものである。
【0055】
ある実施の形態において、本発明の方法により製造された高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、本発明の方法により製造された高分子膜は、高分子膜が250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む場合におけるように、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む。
【0056】
ある実施の形態において、膜前駆体組成物は第2のポリアミンをさらに含む。膜前駆体組成物が第2のポリアミンをさらに含む場合には、薄膜は、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で硬化させられる。ある実施の形態において、膜前駆体組成物は第2のポリアミンをさらに含み、この第2のポリアミンは、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、およびそれらの組合せからなる群より選択される。例えば、ある実施の形態において、膜前駆体組成物はポリアリルアミンをさらに含み、薄膜は、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)およびポリアリルアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で硬化させられる。第2のポリアミンは、そのままの塩基形態であっても、または塩の形態であっても差し支えない。上述したように、複数のポリアミンを使用して差し支えなく(例えば、膜前駆体組成物がポリアリルアミンおよびポリビニルアミンを含む場合におけるように)、「第2のポリアミン」は、そのような組合せを包含することを意味する。
【0057】
上述したように、膜前駆体組成物も架橋剤を含む。適切な架橋剤の例としては、先に検討したものが挙げられる。ある実施の形態において、架橋剤は、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドである。ある実施の形態において、架橋剤は、以下の式:
【化10】

【0058】
を有するものなどのポリカルボジイミド架橋剤である。ある実施の形態において、架橋剤は、BTCAなどのポリ酸架橋剤である。
【0059】
使用される架橋剤の量は、架橋すべき基の反応性、使用すべき架橋条件、使用される架橋剤、および架橋された膜の所望の性質に依存し得る。架橋剤の適切な量の例としては、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)の1質量部当たり0.05質量部から1質量部の架橋剤が挙げられる。架橋剤の量は、反応基に基づいて選択して差し支えない。実例として、使用する架橋剤の量は、膜前駆体組成物中に存在する架橋剤の反応基の数(例えば、グルタルアルデヒドの場合には、膜前駆体組成物中のアルデヒド基の数)が、膜前駆体組成物中に存在する高分子アミン基(例えば、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)およびもしあれば「第2のポリアミン」からの)の数の0.1から10倍(例えば、0.2から10倍、0.2から5倍、0.2から2倍、0.2から1倍、0.3から10倍、0.3から5倍、0.3から2倍、0.3から1倍、0.4から10倍、0.4から5倍、0.4から2倍、0.4から1倍、0.5から10倍、0.5から5倍、0.5から2倍、0.5から1倍)となるように選択して差し支えない。
【0060】
実例として、膜前駆体組成物は以下の方法により調製できる。ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および随意的な「第2のポリアミン」を、必要に応じて、随意的な加熱および撹拌により、適切な溶媒(例えば、水、脱イオン水、アルコールなど)中に別々に溶解させて差し支えない。一般に同じ溶媒が用いられるが、溶解を促進するために、必要であれば、異なる溶媒を用いても差し支えない。異なる溶媒を使用する場合には、様々な溶媒が互いに混和性であることが都合よいであろう。溶液は、必要に応じて、使用前に濾過して差し支えない。1種類以上の「第2のポリアミン」溶液を調製した場合、その1種類以上の「第2のポリアミン」溶液をポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)溶液と組み合わせ、混合する(例えば、撹拌により)。次いで、架橋剤を、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)溶液またはそのままのまたは溶液(例えば、水溶液)の形態いずれかの、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)/「第2のポリアミン」混合物に加えて、膜前駆体組成物を形成することができる。
【0061】
上述した実施の形態の代わりに、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)(および/または高分子膜に含まれる場合には、随意的な「第2のポリアミン」、例えば、ポリビニルアルコール含有ポリマー)が熱処理(熱架橋)により架橋できる場合には、膜前駆体組成物は、架橋剤を含有する必要はない。
【0062】
次いで、膜前駆体組成物は薄膜の形態で流延される。薄膜を流延するために、例えば、浸漬、噴霧、塗装、スピンコーティング、流し塗り、成形などの様々な方法を使用して差し支えない。ドクターブレードまたはバードタイプのアプリケータを使用して差し支えない。薄膜は、有機、無機、または他の基体上に流延して差し支えない。適切な基体の例としては、セラミックモノリス(以下により詳しく検討する)などの無機多孔質支持体が挙げられる。他の適切な基体の例としては、ガラス基体、ポリエステル基体、ポリ塩化ビニル基体、カーボン基体、ポリ塩化ビニリデン基体、アクリル基体、ポリスチレン基体、ポリオレフィン基体、ナイロン基体、ポリイミド基体などが挙げられる。基体は、柔軟性または剛性であって差し支えなく、どのような適切な形状(例えば、実質的に平らなディスク、薄膜、板など、もしくは他の実質的に平らな形状、中空管形状、半楕円形状、球形状、円筒形状など)であっても差し支えない。薄膜は、1マイクロメートルから100マイクロメートル、2マイクロメートルから80マイクロメートル、5マイクロメートルから60マイクロメートル、10マイクロメートルから50マイクロメートルなどの任意の適切な厚さのものであって差し支えない。ある実施の形態において、基体は、例えば、多孔質基体が1マイクロメートル以下の中央細孔サイズを有する場合および/または多孔質基体が500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有する場合、多孔質基体が5ナノメートルから500ナノメートル、5ナノメートルから400ナノメートル、5ナノメートルから300ナノメートル、5ナノメートルから200ナノメートル、5ナノメートルから100ナノメートル、5ナノメートルから50ナノメートルの中央細孔サイズを有する場合におけるように、多孔質基体である。
【0063】
流延された薄膜は、例えば、硬化前に室温で一晩に渡り乾燥して差し支えない。
【0064】
次いで、薄膜を、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)(および「第2のポリアミン」が用いられている場合には、随意的な「第2のポリアミン」)を架橋させるのに効果的な条件下で硬化させる。そのような条件は、薄膜の厚さ、使用される架橋剤の種類と量、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)のアミン含有量、存在するかもしれない任意の「第2のポリアミン」の性質とアミン含有量、薄膜が乾燥される程度などの様々な要因に依存する。実例として、2分から12時間(例えば、3分から12時間、5分から12時間、5分から10時間、5分から8時間、3分から10分、5分間、5分から4時間、1時間から8時間、2時間から8時間、3時間から6時間、4時間など)に渡り、50℃から220℃(例えば、70℃から180℃、90℃から160℃、100℃から150℃、170℃から210℃、180℃から210℃、190℃から200℃など)で薄膜を加熱することが、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させ、それによって、薄膜を硬化させ、高分子膜を製造するのに典型的に効果的である。
【0065】
上述したように、ある実施の形態において、高分子膜は移動性非高分子アミンを含む。移動性非高分子アミンを含む高分子膜は、様々な様式で製造することができる。
【0066】
例えば、非高分子アミンは、薄膜を流延する前に、膜前駆体組成物中に含ませても差し支えない。膜前駆体組成物がポリカルボジイミド架橋剤(例えば、「CARBODILITE」V−02)またはポリ酸架橋剤(例えば、BTCA)を含む場合、非高分子アミンとポリカルボジイミドまたはポリ酸架橋剤との間の相互作用(非高分子アミンの移動性を低減させるか他の様式で悪影響を与え得る)を避けるように、第三級非高分子アミンを使用することが望ましいであろう。
【0067】
加えてまたは代わりに、非高分子アミンは、流延後であるが、硬化前に、薄膜に含ませても差し支えない。これは、例えば、硬化前に、薄膜を非高分子アミンと接触させることによって行うことができる。薄膜は、非高分子アミンが薄膜中に分散するのに効果的な条件下で非高分子アミンと接触させる。実例として、非高分子アミンの性質および接触が乾燥の前または後に行われるか否かに応じて、接触は、液体の形態、蒸気の形態、もしくは溶液、分散液、または懸濁液の形態でそのまま行って差し支えない。例えば、非高分子アミンを含有する非高分子アミンの溶液、分散液、または懸濁液は、浸漬、噴霧、塗装、スピンコーティング、流し塗りなどによって薄膜と接触させることができる。ポリカルボジイミド架橋剤(例えば、「CARBODILITE」V−02)またはポリ酸架橋剤(例えば、BTCA)を使用する場合、硬化プロセス中の非高分子アミンとポリカルボジイミドまたはポリ酸架橋剤との間の相互作用(上述したように、非高分子アミンの移動性に悪影響を与え得る)を避けるように、第三級非高分子アミンを使用することが望ましいであろう。
【0068】
さらにそれに加えまたは代わりに、非高分子アミンを、硬化後に薄膜に含ませても差し支えない。これは、例えば、非高分子アミンが硬化膜中に分散するのに効果的な条件下で、薄膜を、硬化後に、非高分子アミンと接触させることによって行うことができる。実例として、非高分子アミンの性質および硬化した薄膜の膨潤特徴に応じて、接触は、液体の形態、蒸気の形態、もしくは溶液、分散液、または懸濁液の形態でそのまま行って差し支えない。架橋した薄膜は、典型的に、水または他の適切な溶媒中で膨潤し、この性質は、非高分子アミンの硬化した薄膜中への分散を行うために容易に利用できる。例えば、非高分子アミンを含有する非高分子アミンの溶液、分散液、または懸濁液は、浸漬、噴霧、塗装、スピンコーティング、流し塗りなどによって薄膜と接触させることができる。非高分子アミンは、第三級非高分子アミンであって差し支えなく、または第一級および/または第二級アミン官能基を含有する非高分子アミンであっても差し支えない。
【0069】
本発明は、上述したように、膜前駆体組成物にも関し、本発明の膜前駆体組成物は、例えば、先に述べた方法によって調製することができる。
【0070】
本発明の高分子膜および本発明の方法により調製された高分子膜は、供給ガスからCO2および/またはH2Sを分離するプロセス、浸透気化法、または液体分離プロセス(ナノ濾過プロセスまたは分子サイズまたは形状に基づく液液分離など)などの様々な分子分離プロセスに使用できる。実例として、非多孔質であるか、または中央細孔サイズが1ナノメートル以下(例えば、0.3ナノメートル以下の中央細孔サイズを有する)の細孔を含む高分子膜は、浸透気化法およびガス分離プロセスに使用できるのに対し、中央細孔サイズが2ナノメートルから300ナノメートルの細孔を含む高分子膜は、液体分離プロセスに使用できる。
【0071】
本発明はまた、複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体;
必要に応じての、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
本発明による高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備えない場合、高分子膜が無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆し;複合膜構造が1つ以上の無機中間層を備える場合、高分子膜が1つ以上の無機中間層の表面を被覆する複合膜構造にも関する。
【0072】
適切な無機多孔質支持体材料としては、セラミック、ガラスセラミック、ガラス、金属、粘土、およびそれらの組合せが挙げられる。無機多孔質支持体がそれから製造できるか、または無機多孔質支持体中に含めることのできるこれらと他の材料の例には、実例として、金属酸化物、アルミナ(例えば、アルファアルミナ、デルタアルミナ、ガンマアルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ゼオライト、金属(例えば、ステンレス鋼)、セリア、マグネシア、タルク、ジルコニア、ジルコン、ジルコン酸塩、ジルコニア・スピネル、スピネル、ケイ酸塩、ホウ化物、アルミノケイ酸塩、磁器、アルミノケイ酸リチウム、長石、アルミノケイ酸マグネシウム、溶融シリカ、炭化物、窒化物、炭化ケイ素、窒化ケイ素などがある。
【0073】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体は、アルミナ(例えば、アルファアルミナ、デルタアルミナ、ガンマアルミナ、またはそれらの組合せ)、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、金属(例えば、ステンレス鋼)、炭化ケイ素、セリア、またはそれらの組合せから主に製造されるか、さもなければそれらを含む。
【0074】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体はガラスである。別の実施の形態において、無機多孔質支持体はガラスセラミックである。別の実施の形態において、無機多孔質支持体はセラミックである。別の実施の形態において、無機多孔質支持体は金属である。さらに別の実施の形態において、無機多孔質支持体は、カーボン、例えば、硬化樹脂を炭化させることによって、樹脂を炭化させることにより得られたカーボン支持体である。
【0075】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体はハニカムモノリスの形態にある。ハニカムモノリスは、例えば、混合バッチ材料をダイに通して押し出して未焼成体を形成し、当該技術分野において公知の方法を利用して熱を印加することによって、未焼成体を焼結することによって、製造できる。
【0076】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体はモノリス、例えば、セラミックモノリスの形態にある。ある実施の形態において、モノリス、例えば、セラミックモノリスは、複数の平行な内部通路を備えている。
【0077】
無機多孔質支持体は、500m2/m3より大きい、750m2/m3より大きい、1000m2/m3より大きい表面積充填密度(surface area packing density)などの高い表面積充填密度を有して差し支えない。
【0078】
上述したように、無機多孔質支持体は、多孔質壁により画成された表面を有する複数の内部通路を備えている。
【0079】
内部通路の数、間隔、および配列は、特に重要ではない。例えば、通路の数は、5から500、5から50、5から40、5から30、10から50、10から40、10から30などの、2から1000以上に及び得、これらの通路は、実質的に同じ断面形状(例えば、円形、楕円形など)であってもなくても差し支えない。通路は、無機多孔質支持体の断面において実質的に均一に分散していても、そうでなくても(例えば、通路が、無機多孔質支持体の中心よりも、外縁に近いように配列されている場合におけるように)差し支えない。通路は、あるパターンで(例えば、行と列、ずれた行と列、無機多孔質支持体の中心の周りの同心円など)配列されても差し支えない。
【0080】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体の内部通路は、無機多孔質支持体の内部通路が、1±0.5ミリメートル、2±0.5ミリメートル、2.5ミリメートルから3ミリメートル、および/または0.8ミリメートルから1.5ミリメートルの水力内径を有する場合におけるように、0.5ミリメートルから3ミリメートルの水力内径を有する。ある実施の形態において、無機多孔質支持体の内部通路は、2ミリメートル未満の水力内径を有する。明確にするために、この文脈に用いられている内径の「径(diameter)」は、内部通路の断面寸法を称し、内部通路の断面が非円形である場合には、非円形の内部通路の断面積と同じ断面積を有する仮定上の円の直径を称することが意図されていることに留意されたい。
【0081】
ある実施の形態において、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、25マイクロメートル以下の中央細孔サイズを有する。ある実施の形態において、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、内部通路の表面を画成する多孔質壁が、10±5ナノメートル、20±5ナノメートル、30±5ナノメートル、40±5ナノメートル、50±5ナノメートル、60±5ナノメートル、70±5ナノメートル、80±5ナノメートル、90±5ナノメートル、100±5ナノメートル、100±50ナノメートル、200±50ナノメートル、300±50ナノメートル、400±50ナノメートル、500±50ナノメートル、600±50ナノメートル、700±50ナノメートル、800±50ナノメートル、900±50ナノメートル、1000±50ナノメートル、1±0.5マイクロメートル、および/または2±0.5マイクロメートルの中央細孔サイズを有する場合におけるように、5ナノメートルから25マイクロメートルの中央細孔サイズを有する。ある実施の形態において、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、1マイクロメートル以下の中央細孔サイズを有する。ある実施の形態において、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、内部通路の表面を画成する多孔質壁が、5ナノメートルから500ナノメートル、5ナノメートルから400ナノメートル、5ナノメートルから300ナノメートル、5ナノメートルから200ナノメートル、5ナノメートルから100ナノメートル、5ナノメートルから50ナノメートルの中央細孔サイズを有する場合におけるように、500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有する。明確にするために、この文脈に用いられる「サイズ」は、細孔の断面直径を称することが意図され、細孔の断面が非円形である場合には、その非円形の細孔の断面積と同じ断面積を有する仮定上の円の直径を称することが意図されていることに留意されたい。
【0082】
ある実施の形態において、無機多孔質支持体は、30パーセントから60パーセント、50パーセントから60パーセント、および/または35パーセントから50パーセントなどの20パーセントから80パーセントの気孔率を有する。ステンレス鋼などの金属が無機多孔質支持体として用いられる場合、そのステンレス鋼製支持体の気孔率は、例えば、三次元プリント法、高エネルギー粒子トンネリング、および/または気孔率と細孔サイズを調節するために細孔形成剤を用いた粒子焼結によって製造された設計された細孔または通路を使用して、達成することができる。
【0083】
個々の無機多孔質支持体は、異なる使用条件の必要性を満たす、様々なサイズ、使用期間などを有するより大きな無機多孔質支持体を形成するために、様々な様式で積層または収容できることが理解されよう。
【0084】
上述したように、複合膜構造は、必要に応じて、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を備えていても差し支えない。
【0085】
ある実施の形態において、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を備えず、高分子膜は無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する。ある実施の形態において、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を含まず、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、1マイクロメートル以下の中央細孔サイズを有し、高分子膜は、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する。ある実施の形態において、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を含まず、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、500ナノメートル以下(内部通路の表面を画成する多孔質壁が、5ナノメートルから500ナノメートル、5ナノメートルから400ナノメートル、5ナノメートルから300ナノメートル、5ナノメートルから200ナノメートル、5ナノメートルから100ナノメートル、5ナノメートルから50ナノメートルの中央細孔サイズを有する場合におけるように)の中央細孔サイズを有し、高分子膜が、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する。
【0086】
他の実施の形態において、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を含み、高分子膜は、1つ以上の多孔質無機中間層の表面を被覆する。
【0087】
複合膜構造が1つ以上の多孔質無機中間層を含み、高分子膜がその1つ以上の多孔質無機中間層の表面を被覆する場合には、「1つ以上の多孔質無機中間層の表面」とは、中間層の外面(すなわち、通路に露出している表面)を、または複数の多孔質中間層がある場合には、最も外側の中間層(すなわち、無機多孔質支持体の内部通路の表面から最も離れている中間層)の外面を称することが理解されよう。特に、「高分子膜が1つ以上の多孔質無機中間層の表面を被覆する」という句は、高分子膜が全ての多孔質中間層または全ての多孔質中間層の全ての側を被覆することを必要とするものと解釈されることを意図したものではない。
【0088】
1つ以上の多孔質無機中間層を利用するか否かは、無機多孔質支持体の性質;無機多孔質支持体の内部通路の中央直径;複合膜構造の利用法およびそれが使用される条件(例えば、ガス流量、ガス圧など);内部通路の表面の粗さまたは滑らかさ;内部通路の表面を画成する多孔質壁の中央細孔サイズなどの様々な要因に依存し得る。
【0089】
実例として、ある実施の形態において、無機多孔質支持体の多孔質壁は、高分子膜が内部通路の表面を直接被覆している場合、得られた被膜が滑らかになるように十分に小さい中央細孔サイズを有する。多孔質無機中間層の使用から著しくは恩恵(高分子膜の被膜の滑らかさに関して)を受けないように(少なくともいくつかの用途について)十分に小さいと考えられる中央細孔サイズの例には、約100ナノメートル未満のものがある。中央細孔サイズが約80ナノメートル未満である場合、もっとわずかしか恩恵が受けられず、中央細孔サイズが約50ナノメートル未満(例えば、5ナノメートルから50ナノメートルの範囲)である場合、さらにずっとわずかしか恩恵が受けられない。
【0090】
さらなる実例として、ある実施の形態において、無機多孔質支持体の多孔質壁は、高分子膜が内部通路の表面を直接被覆している場合、得られた被膜が粗くなるように十分に大きい中央細孔サイズを有する。そのような場合、多孔質無機中間層を使用することが都合よいであろう。多孔質無機中間層の使用から著しく恩恵(高分子膜の被膜の滑らかさに関して)を受けるように(少なくともいくつかの用途について)十分に大きいと考えられる中央細孔サイズの例には、約100ナノメートルより大きいものがある。中央細孔サイズが約200ナノメートルより大きい場合、もっと大きい恩恵が受けられ、中央細孔サイズが約300ナノメートルより大きい(例えば、300ナノメートルから50マイクロメートルの範囲)である場合、さらに大きい恩恵が受けられる。
【0091】
実例として、ある実施の形態において、無機多孔質支持体の多孔質壁は、5ナノメートルから100ナノメートル(例えば、5ナノメートルから50ナノメートル)の中央細孔サイズを有し、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を含まず、高分子膜は、無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する。他の実施の形態において、無機多孔質支持体の多孔質壁は、50ナノメートルから25マイクロメートル(例えば、100ナノメートルから15マイクロメートル)の中央細孔サイズを有し、複合膜構造は、1つ以上の多孔質無機中間層を含み、高分子膜は、1つ以上の多孔質無機中間層の表面を被覆する。
【0092】
上述したように、1つ以上の多孔質無機中間層は、高分子膜で被覆される表面の滑らかさを増加させるため(例えば、通路を通過するガスの流れを改善するため);高分子膜の被膜の均一性を改善するため;高分子膜の被膜内の任意の空隙、ピンホール、また他の割れ目の数および/またはサイズを減少させるため;許容できる完全な被覆率(例えば、間隙、ピンホール、また他の割れ目がないまたは許容できるほど少ない数)を有する高分子膜の被膜を達成するのに必要な高分子膜の被膜厚を減少させるために、使用できる。加えてまたは代わりに、1つ以上の多孔質無機中間層は、無機多孔質支持体の内部通路の有効径を減少させるために使用して差し支えない。さらに加えてまたは代わりに、1つ以上の多孔質無機中間層は、高分子膜が被覆する表面の化学的性質、物理的性質、または他の性質を変えるために使用して差し支えない。
【0093】
1つ以上の多孔質無機中間層を製造できる材料の例としては、金属酸化物、セラミック、ガラス、ガラスセラミック、カーボン、およびそれらの組合せが挙げられる。1つ以上の多孔質無機中間層を製造できる材料の他の例としては、コージエライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、炭化ケイ素、およびセリアが挙げられる。ある実施の形態において、1つ以上の多孔質無機中間層は、アルミナ(例えば、アルファアルミナ、デルタアルミナ、ガンマアルミナ、またはそれらの組合せ)、チタニア、ジルコニア、シリカ、またはそれらの組合せから製造され、そうでなければ、それらを含む。
【0094】
ある実施の形態において、1つ以上の多孔質無機中間層の各々の中央細孔サイズは、無機多孔質支持体の多孔質壁の中央細孔サイズより大きい。実例として、1つ以上の多孔質無機中間層は、5ナノメートルから50ナノメートル、5ナノメートルから40ナノメートル、5ナノメートルから30ナノメートル、10±5ナノメートル、20±5ナノメートル、30±5ナノメートル、40±5ナノメートル、50±5ナノメートル、60±5ナノメートル、70±5ナノメートル、80±5ナノメートル、および/または90±5ナノメートルなどの5ナノメートルから100ナノメートルの中央細孔サイズを有し得る。2つ以上の多孔質中間層が存在する場合、この2つ以上の多孔質中間層の各々は、同じ中央細孔サイズを有してしても、またはそれらの内のいくつかまたは全てが異なる中央細孔サイズを有していても差し支えない。
【0095】
ある実施の形態において、複合膜構造は2つ以上の多孔質中間層を含み、無機多孔質支持体に接触する多孔質中間層の中央細孔サイズは、高分子膜と接触する多孔質中間層の中央細孔サイズよりも大きい。実例として、無機多孔質支持体が300nmより大きい(例えば、500nmより大きい、1マイクロメートルより大きい、2マイクロメートルより大きい、3マイクロメートルより大きいなど)中央細孔サイズを有する場合、複合膜構造は、2つの多孔質中間層:すなわち、無機多孔質支持体の中央細孔サイズより小さい中央細孔サイズを有する(例えば、100nmから200nmの中央細孔サイズを有する)第1の層(すなわち、無機多孔質支持体と接触しているもの);および第1の層の中央細孔サイズより小さい中央細孔サイズを有する(例えば、5nmから50nmの中央細孔サイズを有する)第2の層(すなわち、高分子膜と接触しているもの)を備えて差し支えない。そのような構成は、内部通路から、第1の中間層の細孔を通り、第2の中間層のより大きな細孔を通り、無機多孔質支持体のさらに大きな細孔を通り、無機多孔質支持体の外側までの透過性を許容できないほど減少させずに、高分子膜が被覆する滑らかな表面を提供するために使用できる。
【0096】
複合膜構造が1つ以上の多孔質無機中間層を含む場合において、その1つ以上の多孔質中間層は、2マイクロメートルから80マイクロメートル、5マイクロメートルから60マイクロメートル、10マイクロメートルから50マイクロメートルなどの、1マイクロメートルから100マイクロメートルの合計厚を有し得る。
【0097】
上述したように、複合膜構造が1つ以上の多孔質中間層を含むか否かにかかわらず、その複合膜構造は、本発明の高分子膜を含む。複合膜構造が1つ以上の多孔質無機中間層を含まない場合、高分子膜は無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する。複合膜構造が1つ以上の多孔質無機中間層を含む場合、高分子膜は1つ以上の多孔質中間層の表面を被覆する。
【0098】
全ての通路を高分子膜で被覆する必要があるわけではないことが理解されよう。例えば、高分子膜は、無機多孔質支持体の内部通路の表面の全てを被覆して差し支えなく;または高分子膜は、無機多孔質支持体の内部通路の表面のいくらかを被覆しても差し支えなく;「高分子膜が無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する」という句は、両方の状況を包含することが意図されている。同様に、多孔質中間層が用いられる場合、高分子膜は、全ての通路において1つ以上の多孔質中間層の表面を被覆して差し支えなく;または高分子膜は、通路のいくつかにおいて1つ以上の多孔質中間層の表面を被覆して差し支えなく;「高分子膜が1つ以上の多孔質中間層の表面を被覆する」という句は、両方の状況を包含することが意図されている。実例として、無機多孔質支持体における通路の構造と予測される使用条件に応じて、無機多孔質支持体内のある通路を施栓することが望ましかもしれず、これらの通路は、高分子膜で被覆する必要はなく;または無機多孔質支持体内のある通路を施栓せず、これらの通路を高分子膜で被覆しないことが望ましいかもしれず;またはその両方であるかもしれない。
【0099】
本発明の複合膜構造に使用するのに適した高分子膜の例としては、先に記載されたものが挙げられる。ある実施の形態において、高分子膜は1マイクロメートルから60マイクロメートルの厚さを有する。ある実施の形態において、高分子膜は、1マイクロメートルから30マイクロメートルの厚さを有する。高分子膜の適切な厚さの他の例としては、2±1マイクロメートル、5±2マイクロメートル、10±5マイクロメートル、20±5マイクロメートル、30±5マイクロメートル、40±5マイクロメートル、50±5マイクロメートル、および/または55マイクロメートルから60マイクロメートルが挙げられる。
【0100】
他の実施の形態において、高分子膜は、1マイクロメートル未満の厚さ、例えば、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下の厚さを有する。
【0101】
ある実施の形態において、高分子膜の厚さは実質的に均一である。ある実施の形態において、高分子膜は、実質的に均一な厚さであり、1マイクロメートルから60マイクロメートルの厚さを有する。ある実施の形態において、高分子膜は、実質的に均一な厚さであり、1マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0102】
ある実施の形態において、高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、高分子膜は、高分子膜が、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を備えている場合におけるような、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を備えている。
【0103】
ある実施の形態において、複合膜構造は1つ以上の多孔質無機中間層を含まず、高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、複合膜構造は1つ以上の多孔質無機中間層を含まず、高分子膜は、高分子膜が、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を備えている場合におけるような、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を備えている。
【0104】
高分子膜が細孔を備えた場合、高分子膜の中央細孔サイズは、それが被覆する表面の(例えば、無機多孔質支持体の内部通路の表面の、または複合膜構造が1つ以上の多孔質無機中間層を含む場合には、1つ以上の多孔質中間層の表面の)中央細孔サイズよりも小さくて差し支えない。
【0105】
ある実施の形態において、高分子膜はさらに(すなわち、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)に加え)、第2のポリアミンを備え、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンは互いに架橋している。
【0106】
ある用途について、高分子膜が、例えば、内部通路内で供給ガス(例えば、H2、COなど)のガス状成分が全くまたは実質的に全く(例えば、20%未満しか、10%未満しか、5%未満しか、1%未満しか、0.1%未満しか、0.01%未満しかなど)無機多孔質支持体の外側に透過しないほど、多孔質中間層の全表面または無機多孔質支持体の内部通路の全表面を被覆することが望ましいであろう。さらに説明するように、ある用途について、高分子膜の被膜における任意の間隙、ピンホール、または他の割れ目の数および/またはサイズが、少なく、小さい(例えば、高分子膜の被膜に間隙、ピンホール、または他の割れ目がない場合、または高分子膜の被膜における任意の間隙、ピンホール、または他の割れ目の全体の面積が、高分子膜の被膜により被覆される全表面積の1%未満(0.1%、0.01%未満などの)である場合におけるような)ことが望ましいであろう。
【0107】
本発明のある実施の形態には、例えば、耐久性および/または強度に関して;再生または改修に関して;および/または透過流束に関して(ガス分離用途に使用すべき構造について)、従来技術の高分子膜および従来技術の無機膜より優れた利点がある。
【0108】
実例として、本発明の複合膜構造のある実施の形態において、無機多孔質支持体構造は、表面積の中心となる支え、機械的強度、および耐久性を提供でき;無機多孔質支持体を使用することにより、純粋な高分子膜に匹敵する表面積充填密度を提供しながら、いくつかの純粋な高分子膜に関連する熱的および化学的安定性の課題を克服できる。
【0109】
その上または代わりに、本発明の複合膜構造のある実施の形態において、無機多孔質支持体構造は、複合膜構造の再生または改修を容易にできる。実例として、無機多孔質支持体は、複合膜構造の製造における主要なコスト要因であり得るのに対し、高分子膜の被膜の調製自体は著しくコストが安くつき得る。無機多孔質支持体構造は、全ての有機材料が燃え尽きる高温(例えば、900℃より高いか焼温度)での熱安定性を提供できる。この特徴のために、無機多孔質支持体構造(1つ以上の無機中間層の有無にかかわらず)を再利用することが可能になる。例えば、複合膜構造が劣化したときに、高分子膜層(および存在するかもしれない任意の他の高分子層)を燃やし尽くすことができ、無機多孔質支持体構造(および無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する随意的な1つ以上の多孔質無機中間層)は、新たな高分子膜層(および所望であれば、他の高分子層)で容易に改修できる。
【0110】
さらにその上、または代わりに、本発明の複合膜構造のある実施の形態において、無機多孔質支持体は、その無機多孔質支持体の通路の表面に実質的に均一な細孔構造を有することができる(または実質的に均一な細孔構造が、随意的な1つ以上の多孔質無機中間層の使用によって生成することができる)。これにより、薄く耐久性のある高分子膜層の成膜が可能になり(例えば、溶液化学反応による単純な被覆プロセスによって);この薄い高分子膜層は、高い透過流束を提供できる。それゆえ、複合膜構造は、従来技術の無機膜を製造するコストに対して、製造コストにおける大きな潜在的な利点を提供できる。
【0111】
上述した利点の全て、いくつか、またはいずれも、本発明の特定の複合膜構造において達成されてもされなくてもよいことが明らかである。例えば、本発明の特定の複合膜構造は、他の検討事項を考慮して設計してもよく、これらの他の検討事項によって、上述した利点または他の利点のいくつかまたは全てが低減するか、または打ち消されてしまうかもしれない。上述した利点は、制限するものと意図されておらず;それらは、本発明の範囲を制限するものと決して解釈されるものではない。
【0112】
図2Aおよび2Bを参照すると、例示の複合膜構造2が示されている。図2Aは斜視図であり、図2Bは、図2Aの面Aを通ってとられた図2Aに示された複合膜構造の縦断面図である。この実施の形態において、複合膜構造2は、無機多孔質支持体4および高分子膜6を備えており、この実施の形態においては、多孔質無機中間層は用いられていない。無機多孔質支持体4は、第1の端部8、第2の端部10、および第1の端部8から第2の端部10まで無機多孔質支持体4を通って延在する複数の内部通路12を備えるものとして示されている。内部通路12は、多孔質壁16により画成された表面14を有し、高分子膜6は内部通路12の表面14を被覆している。
【0113】
別の例示の複合膜構造22が図3に示されている。この実施の形態において、複合膜構造22は、無機多孔質支持体24、高分子膜26、および多孔質無機中間層27を備えている。無機多孔質支持体24は、第1の端部28、第2の端部30、および第1の端部28から第2の端部30まで無機多孔質支持体24を通って延在する複数の内部通路32を備えるものとして示されている。内部通路32は、多孔質壁36により画成された表面34を有し、多孔質無機中間層27が内部通路32の表面34を被覆している。高分子膜26は、多孔質無機中間層27の表面38を被覆している。
【0114】
本発明の複合膜構造は、例えば、以下に記載する方法などの様々な方法により調製できる。
【0115】
本発明は、複合膜構造を製造する方法にも関する。その方法は:
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、第1の端部から第2の端部まで支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた支持体を提供する工程;
必要に応じて、無機多孔質支持体の内部通路の表面に1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
膜前駆体組成物を施す工程であって、1つ以上の多孔質無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されていない場合、膜前駆体組成物が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され;1つ以上の多孔質無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されている場合、膜前駆体組成物が1つ以上の多孔質無機中間層の表面に施される工程;および
架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる。
【0116】
本発明の方法の実施に使用できる適切な無機多孔質支持体として、先に挙げられたものが挙げられる。
【0117】
例えば、ある実施の形態において、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、内部通路の表面を画成する多孔質壁が、5ナノメートルから500ナノメートル、5ナノメートルから400ナノメートル、5ナノメートルから300ナノメートル、5ナノメートルから200ナノメートル、5ナノメートルから100ナノメートル、5ナノメートルから50ナノメートルなどの中央細孔サイズを有する場合におけるように、500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有する。実例として、ある実施の形態において、1つ以上の多孔質無機中間層は無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されず、膜前駆体組成物が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され、内部通路の表面を画成する多孔質壁は、内部通路の表面を画成する多孔質壁が、5ナノメートルから500ナノメートル、5ナノメートルから400ナノメートル、5ナノメートルから300ナノメートル、5ナノメートルから200ナノメートル、5ナノメートルから100ナノメートル、5ナノメートルから50ナノメートルなどの中央細孔サイズを有する場合におけるように、500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有する。
【0118】
無機多孔質支持体は様々な異なる様式で提供できる。例えば、その支持体は、市販のものを得ても差し支えない。あるいは、支持体は、当業者によく知られた方法によって調製することもできる。
【0119】
実例として、適切な無機多孔質支持体は、ここに引用する、2006年12月11日に出願された同時係属出願である米国仮特許出願第60/874070号、ここに引用する、ラッチマン(Lachman)等の米国特許第3885977号、およびここに引用する、バグリー(Bagley)等の米国特許第3790654号の各明細書に記載されている方法にしたがって調製するすることができる。
【0120】
例えば、無機多孔質支持体は、60質量%から70質量%のアルファアルミナ(5マイクロメートルから30マイクロメートルの範囲の粒径を有する)、30質量%の有機細孔形成剤(7マイクロメートルから45マイクロメートルの範囲の粒径を有する)、10質量%の焼結助剤、および他のバッチ成分(例えば、架橋剤など)を組み合わせることによって、製造できる。組み合わされた成分を混合し、ある期間(例えば、8から16時間)に亘り浸す。次いで、混合物を押出しにより未焼成体に成形する。その結果得られた未焼成体を焼結して(例えば、8から16時間などの適切な期間に亘り、1500℃以上の温度で)、無機多孔質支持体を形成する。
【0121】
上述したように、本発明の方法は、必要に応じて、1つ以上の多孔質無機中間層を無機多孔質支持体の内部通路の表面に施す工程を含んでも差し支えない。随意的な多孔質無機中間層および多孔質無機中間層を製造できる適切な材料を使用したいような状況としては、先に述べた状況が挙げられる。
【0122】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質無機中間層を無機多孔質支持体の内部通路の表面に施す工程を含む状況において、その1つ以上の多孔質無機中間層は、どのような適切な方法を用いて内部通路の表面に施しても差し支えない。実例として、多孔質無機中間層は、適切なサイズ(例えば、数ナノメートルから数十ナノメートル程度)のセラミックまたは他の無機粒子を無機多孔質支持体の内部通路の表面上に被覆する(例えば、適切な液体における流し塗り)ことによって施して差し支えない。次いで、セラミックまたは他の無機粒子が被覆された無機多孔質支持体を乾燥し、焼成して、セラミックまたは他の無機粒子を焼結し、それゆえ、多孔質無機中間層を形成する。追加の多孔質無機中間層を、典型的に、各層を施した後に乾燥および焼成を行って、上述したプロセスを繰り返すことによって(例えば、異なる無機粒子について)、被覆済み無機多孔質支持体に施しても差し支えない。
【0123】
乾燥および焼成スケジュールは、無機多孔質支持体に用いられる材料および多孔質無機中間層に用いられる材料に基づいて調節することができる。例えば、アルファアルミナ多孔質支持体に施されたアルファアルミナ中間層は、適切な期間(例えば、5時間)に亘り適切な温度(例えば、120℃)を維持しながら、湿度と酸素が制御された環境において乾燥させて差し支えなく、一旦乾燥したら、アルファアルミナ中間層を、例えば、制御されたガス環境下で900℃から1200℃の温度でなどの、有機成分を除去し、中間層のアルファアルミナ粒子を焼結するのに効果的な条件下で焼成して差し支えない。
【0124】
セラミックまたは他の無機粒子を無機多孔質支持体の内部通路の表面上に被覆し、それらを多孔質無機中間層に形成する適切な方法が、例えば、ここに引用する、2007年3月29日に出願された米国特許出願第11/729732号、ここに引用する、2007年7月19日に出願された米国特許出願第11/880066号、およびここに引用する、2007年7月19日に出願された米国特許出願第11/880073号の各明細書に記載されている。
【0125】
本発明の方法が、1つ以上の多孔質無機中間層を無機多孔質支持体の内部通路の表面に施す随意的な工程を含むか否かにかかわらず、この方法は、膜前駆体組成物の施用も含む。1つ以上の多孔質無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されていない場合には、膜前駆体組成物は、無機多孔質支持体の内部通路の表面に施される。1つ以上の多孔質無機中間層が無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されている場合には、膜前駆体組成物は、1つ以上の多孔質中間層の表面に施される。
【0126】
膜前駆体組成物は、通路の全てに施す必要はないのが理解されよう。例えば、膜前駆体組成物は、無機多孔質支持体の内部通路の表面の全てに施して差し支えなく;または膜前駆体組成物は、無機多孔質支持体の内部通路の表面のいくつかに施して差し支えなく;「膜前駆体組成物は、無機多孔質支持体の内部通路の表面に施される」という句は、両方の状況を包含することが意図されている。同様に、多孔質中間層が用いられる場合には、膜前駆体組成物は、全ての通路の1つ以上の多孔質中間層の表面に施しても差し支えなく;または膜前駆体組成物は、通路のいくつかの1つ以上の多孔質中間層の表面に施して差し支えなく;「膜前駆体組成物は、1つ以上の多孔質中間層の表面に施される」という句は、両方の状況を包含することが意図されている。実例として、無機多孔質支持体内の通路の形状および予測される使用条件に応じて、無機多孔質支持体中の特定の通路を施栓することが望ましく、膜前駆体組成物は、これらの通路に施す必要はなく;または無機多孔質支持体内の特定の通路を施栓せず、これらの通路内に高分子膜を有さないことが望ましいかもしれず;またはその両方であってもよい。
【0127】
膜前駆体組成物の施用(すなわち、無機多孔質支持体の内側通路の表面への、または1つ以上の多孔質中間層の表面への)は、どのような適切なプロセスによって実施しても差し支えない。
【0128】
実例として、膜前駆体組成物は、例えば、本出願の実施例4に記載されたような、真空下または擬似真空下での浸漬コーティングを含む手法;または、例えば、ここに引用する、2007年3月29日に出願された米国特許出願第11/729732号明細書に記載された流し塗り装置を用いた本出願の実施例7に記載されたような、流し塗り手法などの浸漬コーティングによって、無機多孔質支持体の内部通路の表面上に、または1つ以上の多孔質中間層の表面上に施しても差し支えない。
【0129】
本発明の方法の実施に使用できる適切な膜前駆体組成物としては、先に述べたものが挙げられる。その膜前駆体組成物の適切な厚さおよび他の適切な特徴も、先に論じられており、ここでは繰り返さない。
【0130】
本発明の方法は、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋するのに効果的な条件下で膜前駆体組成物を硬化させる工程も含む。適切な硬化条件としては、先に記載されたものが挙げられる。ある実施の形態において、膜前駆体組成物を硬化させることによって製造された高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、膜前駆体組成物を硬化させることによって製造された高分子膜は、高分子膜が250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む場合におけるものなどの、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む。
【0131】
ある実施の形態において、1つ以上の多孔質無機中間層は無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されておらず、膜前駆体組成物は無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され、膜前駆体組成物を硬化することによって製造された高分子膜は非多孔質である。ある実施の形態において、1つ以上の多孔質無機中間層は無機多孔質支持体の内部通路の表面に施されておらず、膜前駆体組成物は無機多孔質支持体の内部通路の表面に施され、膜前駆体組成物を硬化することによって製造された高分子膜は、高分子膜が250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.4nm以下、0.3nm以下、0.2nm以下、0.1nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む場合におけるものなどの、300nm以下の中央細孔サイズを有する細孔を含む。
【0132】
ある実施の形態において、膜前駆体組成物はさらに第2のポリアミンを含む。膜前駆体組成物が第2のポリアミンをさらに含む場合において、この膜前駆体組成物は、架橋剤がポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および第2のポリアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で硬化される。
【0133】
本発明の複合膜構造および本発明の方法により製造された複合膜構造は、ガス流中の二酸化炭素含有量を減少させる方法などの様々な用途に使用することができる。例えば、ガス流中の二酸化炭素含有量は、二酸化炭素を含む供給ガスを本発明の複合膜構造の第1の端部に導入する工程;および複合膜構造の第2の端部から、供給ガスよりも二酸化炭素の含有量の少ない保持(retentate)ガス流を収集する工程を含む方法によって減少させることができる。このプロセスが図4Aに示されている。供給ガス52が複合膜構造56の第1の端部54に導入され、通路58を通過する。供給ガス52中の二酸化炭素分子のいくらかは、通路58内に配置された高分子膜60を通り抜け、無機多孔質支持体62に入り、無機多孔質支持体62の細孔を通過した後、複合膜構造56の外面64から放出される。そのような二酸化炭素分子の経路が矢印66aおよび66bにより表されている。供給ガス52の残りは、通路58内に留まり、保持ガス流70として複合膜構造56の第2の端部68から出ることができる。複合膜構造56の第2の端部68から収集される保持ガス流70は、供給ガス52よりも二酸化炭素の含有量が少ない。用途および関連する供給ガスの性質に応じて、収集されたガスは、貯蔵しても、さらに別のプロセスの供給ガスとして使用しても、または大気中に排出しても差し支えない。複合膜構造56の外面64から放出される二酸化炭素は、収集し、貯蔵しても、ある他のプロセスに使用しても、大気中に排出しても差し支えない。供給ガスはさらに(すなわち、二酸化炭素に加え)、水素、水蒸気、一酸化炭素、窒素、炭化水素、およびそれらの組合せなどの1種類以上の他のガスを含んでも差し支えない。
【0134】
図4Bは、本発明による高分子膜(80)を用いた、供給ガスからCO2を分離するための可能な機構を示す概略図である。
【0135】
本発明を、以下の非制限的実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0136】
実施例1−材料
これらの実施例に記載された作業において、以下の材料を用いた:ポリアリルアミン(「PAAm」):そのままの酸の形態、15%の水溶液、Mn約15000、ベックマン・ケミカル社(Bechmann Chemical Corp, Inc.)。ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)(「PVAAm」):Mn30000〜50000、Erkol 12、12モル%のビニルアミンを含有、セラニーズ社(Celanese Corporation)。「CARBODILITE」V−02:オリゴマー、日本国、東京所在の日清紡績株式会社。ホルムアルデヒド:アルドリッチ社(Aldrich)。PAAm、PVAAm、および「CARBODILITE」V−02の化学構造が図5に示されている。
【0137】
実施例2−ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)水溶液の調製
1000mlのメイソンジャーに549.0gの脱イオン(「DI」)水を装填し、次いで、メイソンジャーを高温(85℃)のグリコール浴中に入れた。次いで、機械式撹拌機を取り付け、撹拌を300rpmに設定した。次いで、ジャーに51.0gのPVAAm樹脂を装填した。撹拌速度は600rpmまで徐々に上昇させ、2時間に亘り維持した。その後、メイソンジャーを高温浴から取り出し、不溶性残留物を除去するために、溶液を青色のペーパータオルに通すことによって、この溶液を濾過した。濾過された溶液は、室温への冷却後に、使用の準備ができた。
【0138】
実施例3−膜溶液の調製およびPVAAm/PAAm/「CARBODILITE」V−02膜の製造
20mlのバイアルに5.0gの8%のPVAAm水溶液(実施例2において調製した)および6.0gの15%のPAAm溶液を装填し、これを撹拌によりよく混合した。次いで、この溶液に、0.15gの「CARBODILITE」V−02を加え、これを撹拌によりよく混合した。混合後、この溶液は、PVC薄膜基体上に溶液を流延することによって膜を製造する準備ができた。バードタイプの薄膜アプリケータを用いて、膜を流延した。流延された膜溶液を室温で一晩乾燥させ、次いで、炉内に入れ、4時間に亘り150℃で硬化させた。その結果得られた薄膜は、約50マイクロメートルの厚さを有した。
【0139】
実施例4−膜溶液の調製およびPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜の製造
20mlのバイアルに5.0gの8%のPVAAm水溶液(実施例2において調製した)および0.36gのホルムアルデヒド(18.5%の水溶液)を装填し、これを撹拌によりよく混合した。次いで、この溶液に、5.0gの15%のPAAm水溶液を加え、これを撹拌によりよく混合した。ほんの始めのうちは濁った溶液が観察されたが、数分の撹拌後に、濁りは消えた。その後、この溶液は膜の製造の準備ができた。膜は、膜溶液をガラス基体またはポリエステル薄膜基体上に流延することによって製造した。バードタイプの薄膜アプリケータを用いて、膜を流延した。流延された薄膜を室温で一晩乾燥させ、次いで、炉内に入れ、4時間に亘り100℃で硬化させた。その結果得られた薄膜は、約50マイクロメートルの厚さを有した。
【0140】
実施例5−セラミックモノリス通路壁への高分子膜の被覆
この実施例5に記載した実験に、アルファアルミナ系セラミックモノリス膜支持体を用いた。この支持体は、押出しにより製造し、約3.5マイクロメートルの平均細孔サイズ、45%の気孔率、9.7mmの外径、および131mmの長さを有した。アルファアルミナ系セラミックモノリス膜支持体は、断面に亘り均一に分布した19個の丸形通路(平均直径は約0.75mm)を備えていた。最初に、約100nmの平均細孔サイズを有するアルファアルミナ改質被覆層を約10マイクロメートルの厚さで支持体上に堆積させ、さらに、平均細孔サイズが約5nmのガンマアルミナ層を約1〜2マイクロメートルの厚さで堆積させた。
【0141】
乾燥したセラミックモノリスの質量を測定した。次いで、セラミックモノリスをテフロン(登録商標)テープでくるみ、質量を再度測定した。セラミックモノリスの一端に疑似真空システム(シリンジ)を接続した。次いで、セラミックモノリスの他端を、シリンジから吸引しながら膜溶液中に浸漬した。シリンジに接続されたモノリスの端部から溶液が10秒間出てきた後、その溶液を押し出し、セラミックモノリスを、約500rpmで45秒間に亘り前方回転させて、セラミックモノリスの通路から余分な溶液を除去した。被覆したセラミックモノリスを2時間に亘り空気乾燥し、次いで、乾燥機に入れた。PVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜について、乾燥機は100℃に余熱し、硬化は4時間に亘り行った。PVAAm/PAAm/「CARBODILITE」V−02膜について、乾燥機は150℃に余熱し、硬化は4時間に亘り行った。室温まで冷却した後、質量を測定し、質量増加を計算した。
【0142】
図6は、高分子膜で被覆されたセラミックモノリスの斜視図である。この高分子膜で被覆されたセラミックモノリスは、この実施例4において製造したものと外観が似ているが、通路の数が少ない。図7A〜7Cおよび8A〜8Dに示されたSEM画像に関する視点を提供するために、切断面(82)および撮像方向(矢印84)が示されている。
【0143】
図7A〜7Cは、それぞれ、40倍、400倍、および5000倍の倍率でのPVAAm/PAAm/「CARBODILITE」V−02膜で被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像である。図7Aにおいて、通路86およびセラミックモノリス基体88が確認される。図7Bにおいて、セラミックモノリス基体90、アルファアルミナ中間層92、ガンマアルミナ中間層94、および高分子膜96が確認される。図7Cにおいて、アルファアルミナ中間層98、ガンマアルミナ中間層100、高分子膜102、および高分子膜の表面104が確認される。
【0144】
図8A〜8Dは、それぞれ、100倍、500倍、10000倍、および20000倍の倍率でのPVAAm/PAAm/ホルムアルデヒド膜で被覆されたセラミックモノリスの断面のSEM画像である。図8Aにおいて、セラミックモノリス基体106およびアルファアルミナ中間層108が確認され、矢印110が、通路の表面上の高分子膜を指している。図8Cにおいて、セラミックモノリス基体114、アルファアルミナ中間層116、ガンマアルミナ中間層118、および高分子膜120が確認される。図8Dにおいて、ガンマアルミナ中間層122、および高分子膜124が確認される。
【0145】
実施例6−溶解度テスト
非架橋PVAAm系薄膜およびPVAAm膜(「CARBODILITE」V−02と架橋した)定性的溶解度テストを行った。それに加え、PAAmにより製造した非架橋薄膜(先に示したように、PVAAm系膜における共成分として使用できる)およびPAAmにより製造した膜(「CARBODILITE」V−02と架橋した)について、溶解度テストを行った。
【0146】
溶解度テストのための膜および薄膜は以下のように調製した。20mlのバイアルに5.0gの8%のPVAAm水溶液および0.1gの「CARBODILITE」V−02を装填し、これを撹拌によりよく混合した。この後、この溶液は、膜を製造する準備ができた。この溶液を、バードタイプの膜薄アプリケータを用いて、ガラス基体上に薄膜を流延した。流延された薄膜を空気中において50℃で一晩乾燥させ、次いで、これを炉内に入れ、5分間に亘り150℃で硬化させて、膜を製造した。その結果得られた薄膜は、約50マイクロメートルの厚さを有した。20mlのバイアルに3.0gの15%のPAAm水溶液および0.2gの「CARBODILITE」V−02を装填したことを除いて、同じ工程を用いて、PAAm膜を製造した。同じ工程を用いて、ガラス基体上に純粋なPVAAmおよびPAAm溶液の薄膜を調製した(すなわち、「CARBODILITE」V−02を含まない溶液)。
【0147】
薄膜または膜(ガラス基体を伴う)をビーカー中に垂直に配置することによって、溶解度テストを行った。次いで、薄膜または膜の半分が水中に沈み、薄膜または膜の残りの半分が空気中にあるように、水をビーカーに加えた。室温での薄膜または膜の溶解度を観察し、記録した。その結果が表1に示されている。
【表1】

【0148】
我々の研究により、「CARBODILITE」V−02が100℃を超える温度で十分に分解し、PVAAmおよびPAAmと反応して架橋を行う活性部位を生成することが示された。表1に示された定性的溶解度テストの結果は、PVAAmおよびPAAmのための架橋剤としての「CARBODILITE」V−02の有効性を示している。
【0149】
実施例7−流し塗り装置を用いた、セラミックモノリスの通路壁への高分子膜の被覆
乾燥したセラミックモノリスの質量を測定した。次いで、セラミックモノリスを「テフロン」テープでくるみ、質量を再度測定した。「テフロン」でくるんだセラミックモノリスを、図9に示したような流し塗り装置(その詳細は、ここに引用する、2007年3月29日に出願された米国特許出願第11/729732号明細書に記載されている)内に取り付けた。一般に、図9を参照して、装置の上部が真空130に引かれ、この真空により、高分子膜溶液132がセラミックモノリス134を通って引き込まれる。ここで、約150mmHgの圧力が達成されるまで、真空に引いた。次いで、PVAAm系膜前駆体溶液を被覆装置の下に置き、このPVAAm系膜前駆体溶液が被覆装置に入るように弁を回した。PVAAm系膜前駆体溶液がセラミック基体の上部から流れ出て、その後10秒経つまで真空を維持した。この10秒の期間の後、真空を開放し、PVAAm系膜前駆体溶液を貯留槽に戻らせた。次いで、被覆されたセラミックモノリスを被覆装置から取り出し、この被覆されたセラミックモノリスを回転装置内で45秒間に亘り約500rpmで回転させることによって、過剰な溶液を除去した。被覆したセラミックモノリスの質量を測定し、次いで、「テフロン」のくるみを取り外した。被覆したセラミックモノリスを6時間に亘り80℃の最終温度で、プログラム乾燥させた。次いで、乾燥された被覆セラミックモノリスを15分間に亘り150℃の温度で硬化させた。セラミックモノリス(今では高分子膜により被覆されている)の質量を測定し、質量増加を計算した。
【0150】
実施例8−架橋剤としてのポリカルボジイミドの使用についての議論
実施例4に述べたように、ホルムアルデヒドをPVAAm水溶液に加えた場合、その溶液は濁り、その濁りは、数分の撹拌後に消えた。このことは、ホルムアルデヒドが、PVAAmが溶液中にある間でさえもPVAAmと反応し、ある程度の溶液相の架橋の証拠であろうことを示唆している。溶液相の架橋は、最終的な膜の形成に影響ないようであるが、ホルムアルデヒドの使用には、膜前駆体溶液の粘度に潜在的な影響があり、これは転じて、被覆プロセスにも影響し得る(例えば、膜前駆体溶液を所望の厚さの薄膜に予測可能におよび/または再現可能に流延することを難しくすることによって)。粘度の変化は、膜前駆体溶液を、セラミックモノリスの通路内などの、狭い直径の管状構造内で薄膜に流延すべき場合に、特に問題となり得る。
【0151】
「CARBODILITE」V−02および他のポリカルボジイミド架橋剤が働くであろう任意の理論または機構によって制限することを意図するものではないが、潜在的な粘度の問題は、ポリカルボジイミド架橋剤(例えば、「CARBODILITE」V−02)を使用することによって避けられると考えられる。より詳しくは、「CARBODILITE」V−02などのポリカルボジイミド架橋剤は、溶液中において低温では機能しないが、溶媒が一旦除去され、温度が上昇すると、うまく機能すると考えられる。それゆえ、「CARBODILITE」V−02を架橋剤として使用する場合、膜前駆体溶液の粘度は、膜前駆体溶液が薄膜に流延され、乾燥および/または加熱される後まで、不変のままである。このことは、ホルムアルデヒドとは異なり、「CARBODILITE」V−02は、PVAAm水溶液に加えられたときに濁りを生じなかったという観察結果と一致する。図10は、様々な温度での時間の関数としてのカルボジイミド帯(2119cm-1)の正規化赤外線ピーク強度をプロットしたグラフであり、PVAAmと「CARBODILITE」V−02との間の反応に関する反応速度を示している。このグラフは、反応速度が温度の上昇と共に著しく上昇することを示している。
【0152】
また、「CARBODILITE」V−02を架橋剤として使用した場合、膜前駆体溶液(流延と硬化の前)のpH値が約12〜13であることが観察された。流延と硬化の後、膨潤した「CARBODILITE」V−02架橋膜(膜を水中に浸漬した後に得られた)のpH値は約11〜12であった。それゆえ、材料のpHは、架橋プロセスによりわずかしか変わらない(膨潤した膜が実際の溶液ではないことを考えると、わずかに低いpHは適切ではないわけではない)。「CARBODILITE」V−02および他のポリカルボジイミド架橋剤が働くであろう任意の理論または機構によって制限することを意図するものではないが、「CARBODILITE」V−02および他のポリカルボジイミド架橋剤の反応により、グアニジンが形成され、これは強アルカリ性であり、このことは転じて、膜の基本的性質および架橋後の最小のpH変化を説明するであろうと考えられる。PAAm/PVAAm系膜のFTIRスペクトルにより、膜内のアミノ基の存在が確認される。このことが図11に示されており、ここでは、矢印136が、アミノ基に帰する帯を指している。
【0153】
実施例9−架橋剤としてのポリ酸の使用
膜溶液および膜の調製が以下に記載されている。20mlのバイアルに5.0gの8%のPVAAm水溶液(図2に記載したように調製した)および0.2gの15%のBTCA(アルドリッチ社)溶液を装填し、これを撹拌によりよく混合した。一旦溶液が混合されたら、この溶液は膜の製造の準備ができていた。膜は、バードタイプの薄膜アプリケータを用いて、溶液をガラス基体上に流延することによって調製した。流延された膜溶液を一晩空気中において50℃で乾燥させ、次いで、炉内に入れ、3〜5分間に亘り195℃で硬化させた。その結果得られた膜は、約50マイクロメートルの厚さを有した。同じ手法を用いて、BCTAの不在下で純粋なPVAAmの薄膜を調製し、BTCAの存在下と不在下の両方において、純粋なPAAmおよびPAAmとPVAAmとの混合物の膜と薄膜を調製した。
【0154】
以下の手法を用いて、溶解度についてこれらの膜と薄膜をテストした。薄膜または膜(ガラス基体を伴う)をビーカー中に垂直に配置した。次いで、薄膜または膜の半分が水中に沈み、薄膜または膜の残りの半分が空気中にあるように、水をビーカーに加えた。室温での薄膜または膜の溶解度を観察し、記録した。その結果が表2に示されている。
【表2】

【0155】
表2に示された定性的溶解度テストの結果は、PVAAmおよびPAAmのための架橋剤としてのBTCAの有効性を示している。
【0156】
上述した架橋反応は、架橋触媒の不在下で行ったことに留意すべきである。次亜リン酸ナトリウム水和物(例えば、NaH2PO2・H2O)などの架橋触媒を使用すると、反応を加速させることができる。さらに、架橋反応は195℃で行ったが、150℃から210℃の温度またはポリ酸の融点よりわずかに高い温度などの、他の温度で架橋反応を行っても差し支えない。
【0157】
BTCAまたは他のポリ酸架橋剤の働く任意の理論または機構により制限することを意図するものではないが、BTCAは、それぞれ、図12Aおよび12Bに示したように、アルコール官能基およびアミン官能基と反応できると考えられる。
【0158】
さらに、重ねて、ポリ酸架橋剤の働く任意の理論または機構により制限することを意図するものではないが、ポリ酸架橋剤を使用すると、ホルムアルデヒドの使用に関連する潜在的な粘度の問題(実施例8に記載されたような)を避けられると考えられる。より詳しくは、ポリカルボジイミド架橋剤とは異なり、ポリ酸架橋剤は、溶液中において低温では機能しないが、一旦溶媒が除去され、温度が上昇すると、うまく機能すると考えられる。それゆえ、ポリ酸を架橋剤として使用する場合、膜前駆体溶液の粘度は、膜前駆体溶液が薄膜に流延され、乾燥および/または加熱される後まで、不変のままである。
【0159】
好ましい実施の形態をここに表現し、詳しく説明してきたが、本発明の精神から逸脱せずに、様々な改変、追加、置換などが可能であり、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0160】
2,22,56 複合膜構造
4,24,62 無機多孔質支持体
6,26,60,96,102,120,124 高分子膜
8,28,54 第1の端部
10,30,68 第2の端部
12,32,58 内部通路
16,36 多孔質壁
52 供給ガス
70 保持ガス流
88,90,106,114 セラミックモノリス基体
92,98,108,116 アルファアルミナ中間層
94,100,118,122 ガンマアルミナ中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、前記膜が非多孔質であるか、または細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質であることを特徴とする高分子膜。
【請求項2】
前記高分子膜が第2のポリアミンを含み、前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および該第2のポリアミンが互いに架橋していることを特徴とする請求項1記載の高分子膜。
【請求項3】
前記第2のポリアミンが、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の高分子膜。
【請求項4】
前記高分子膜がポリアリルアミンをさらに含み、前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および該ポリアリルアミンが互いに架橋していることを特徴とする請求項1記載の高分子膜。
【請求項5】
移動性非高分子アミンをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の高分子膜。
【請求項6】
前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)がポリ酸架橋剤と架橋していることを特徴とする請求項1記載の高分子膜。
【請求項7】
前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と架橋していることを特徴とする請求項1記載の高分子膜。
【請求項8】
架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜であって、該高分子膜が第2のポリアミンをさらに含み、前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および該第2のポリアミンが互いに架橋していることを特徴とする高分子膜。
【請求項9】
複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体;
必要に応じての、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
架橋ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を含む高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
前記複合膜構造が前記1つ以上の多孔質無機中間層を備えない場合、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面が500ナノメートル以下の中間細孔サイズを有し、かつ前記高分子膜が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆し;前記複合膜構造が前記1つ以上の多孔質無機中間層を備える場合、前記高分子膜が前記1つ以上の多孔質無機中間層の表面を被覆することを特徴とする複合膜構造。
【請求項10】
複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体;
必要に応じての、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
請求項1記載の高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
前記複合膜構造が前記1つ以上の無機中間層を備えない場合、前記高分子膜が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆し;前記複合膜構造が前記1つ以上の無機中間層を備える場合、前記高分子膜が前記1つ以上の無機中間層の表面を被覆することを特徴とする複合膜構造。
【請求項11】
複合膜構造において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体;
必要に応じての、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層;および
請求項8記載の高分子膜;
を備えた複合膜構造であって、
前記複合膜構造が前記1つ以上の無機中間層を備えない場合、前記高分子膜が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆し;前記複合膜構造が前記1つ以上の無機中間層を備える場合、前記高分子膜が前記1つ以上の無機中間層の表面を被覆することを特徴とする複合膜構造。
【請求項12】
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)、
第2のポリアミン、および
架橋剤、
を含む膜前駆体組成物。
【請求項13】
複合膜構造を製造する方法において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体を提供する工程;
必要に応じて、前記無機多孔質支持体の内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を施す工程であって、前記1つ以上の多孔質無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されていない場合、該無機多孔質支持体の該内部通路の表面が500ナノメートル以下の中央細孔サイズを有し、かつ前記膜前駆体組成物が該無機多孔質支持体の該内部通路の表面に施され;前記1つ以上の多孔質無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されている場合、前記膜前駆体組成物が該1つ以上の多孔質無機中間層の表面に施される工程;および
前記架橋剤が前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を架橋させるのに効果的な条件下で前記膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる方法。
【請求項14】
複合膜構造を製造する方法において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体を提供する工程;
必要に応じて、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
請求項12記載の膜前駆体組成物を施す工程であって、前記1つ以上の無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されていない場合、前記膜前駆体組成物が該無機多孔質支持体の該内部通路の表面に施され;前記1つ以上の無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されている場合、前記膜前駆体組成物が該1つ以上の該無機中間層の表面に施される工程;および
前記架橋剤が前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および前記第2のポリアミンを互いに架橋させるのに効果的な条件下で前記膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる方法。
【請求項15】
複合膜構造を製造する方法において、
無機多孔質支持体であって、第1の端部と、第2の端部と、多孔質壁により画成された表面を有し、前記第1の端部から前記第2の端部まで該支持体を通って延在する複数の内部通路とを備えた無機多孔質支持体を提供する工程;
必要に応じて、前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面を被覆する1つ以上の多孔質無機中間層を施す工程;
ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)および架橋剤を含む膜前駆体組成物を施す工程であって、前記1つ以上の無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されていない場合、前記膜前駆体組成物が該無機多孔質支持体の該内部通路の表面に施され;前記1つ以上の無機中間層が前記無機多孔質支持体の前記内部通路の表面に施されている場合、前記膜前駆体組成物が該1つ以上の無機中間層の表面に施される工程;および
前記架橋剤が前記ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアミン)を、非多孔質であるかまたは細孔が300nm以下の中央細孔サイズを有する多孔質である膜に架橋させるのに効果的な条件下で前記膜前駆体組成物を硬化させる工程;
を有してなる方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate


【公表番号】特表2011−502750(P2011−502750A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532015(P2010−532015)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/011988
【国際公開番号】WO2009/058206
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】