説明

ポンプ及びこれを搭載した機器

【課題】本発明は、射出成型による成型用ゲート痕によってポンプ室内に乱流が発生することを抑制して、ポンプ効率の低下を抑制できるポンプ及びこれを搭載した機器を提供すること。
【解決手段】本発明のポンプ及びこれを搭載した機器は、対向配置したポンプケース2と分離板3との間にポンプ室10を形成している。ポンプケース2と分離板3のうち少なくとも一方が、ポンプ室10の外周側の対向面20(30)に成型用ゲート痕4を備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来から、ポンプは、ポンプケースと、分離板と、羽根車と、ロータと、ステータと、制御基盤とを備えて構成されている(特許文献1等参照)。
【0002】
こういったポンプでは、対向配置したポンプケースと分離板との間にポンプ室が形成され、このポンプ室内に羽根車が配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−38069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したポンプケースや分離板は、全体重量の軽減化や部品コストの低廉化を図るため、ピンポイントゲートなどで樹脂成型されることが多い。
【0005】
このようにピンポイントゲートによって射出成型されると、射出成型金型の離型時にピンポイントゲートの切り離し痕(成形用ゲート痕)が残ることがある。
【0006】
この切り離し痕が、ポンプケースや分離板のうち、ポンプ室に臨む箇所に残ると、ポンプ室内の流体の流れに乱流が発生する要因となり、吐出性能(ポンプ効率)が低下するといった問題がある。
【0007】
そこで、上記事情を鑑みて、本発明は、射出成型による成型用ゲート痕によってポンプ室内に乱流が発生することを抑制して、ポンプ効率の低下を抑制できるポンプ及びこれを搭載した機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願発明のポンプは、対向配置したポンプケースと分離板との間にポンプ室を形成したポンプにおいて、前記ポンプケースと前記分離板のうち少なくとも一方が、前記ポンプ室の外周側の対向面に成型用ゲート痕を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記成型用ゲート痕は、前記対向面に形成した凹部の底部から突出したものであることが好ましい。
【0010】
また、前記ポンプケースと前記分離板のうち、一方の前記成型用ゲート痕と対向する他方の箇所には、対向凹部を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記凹部は、側面視矩形状の断面形状を有することが好ましい。
【0012】
また、前記凹部は、側面視円弧状の断面形状を有することが好ましい。
【0013】
また、前記凹部は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部と側部と底部の周縁部とが滑らかな曲線状であることが好ましい。
【0014】
また、前記対向凹部は、側面視矩形状の断面形状を有することが好ましい。
【0015】
また、前記対向凹部は、側面視円弧状の断面形状を有することが好ましい。
【0016】
また、前記対向凹部は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部と側部と底部の周縁部とが滑らかな曲線状であることが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するための本願発明の機器は、上述したポンプを搭載した機器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポンプ及びこれを搭載した機器は、射出成型による成型用ゲート痕によってポンプ室内に乱流が発生することを抑制して、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図である。
【図2】同上のポンプのポンプ室を示す断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図である。
【図4】(a)は同上のポンプケースの対向面側を示す説明図であり、(b)は同上の分離板の対向面側を示す説明図である。
【図5】(a)は本発明の第三実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図であり、(b)は本発明の第四実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図である。
【図6】(a)は本発明の第五実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図であり、(b)は本発明の第六実施形態のポンプのポンプケースと分離板と成型用ゲート痕とを示す断面図である。
【図7】本発明の各実施形態のポンプを搭載した食器洗浄機の構成図である。
【図8】本発明の各実施形態のポンプを搭載した給湯ユニットの構成図である。
【図9】本発明の各実施形態のポンプを搭載した洗濯機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0021】
本発明の第一実施形態のポンプ1は、モータを駆動源とするポンプ1であり、図2に示すように、ポンプケース2と、分離板3と、羽根車11と、ロータ(図示せず)と、ステータ(図示せず)と、制御基盤(図示せず)とを備えて構成される。ポンプケース2と分離板3とは、例えば、PPS樹脂のような樹脂材料で射出成型用のピンポイントゲートによって形成される。
【0022】
ポンプケース2と分離板3とは対向配置して結合しており、この間にポンプ室10を形成している。ポンプ室10には、羽根車11がロータに一体化された状態で回転自在に収容されている。そして、ロータの周囲には、分離板3を挟んで外側にステータが対向配置されている。ポンプケース2は、ポンプ室10内に液体を吸入するための吸入口12と、ポンプ室10内の液体を吐出するための吐出口13とを備えている。制御基盤によってステータの磁界を変化させることによって、ロータと一体の羽根車11が回転し、これにより、吸入口12からポンプ室10内へと液体を吸い込むとともに、吸い込んだ液体に遠心力を加えて吐出口13からポンプ1外へと排出することができる。
【0023】
ポンプ室10よりも外周側には、図1に示すように、ポンプケース2の対向面20と分離板3の対向面30とが互いに対向しており、この対向面20と対向面30との間に微小間隙部14が存在する。この微小間隙部14は、上下幅が例えば、0.2mm程度であり、吸入口12から吐出口13に至るポンプ機能に関する通水路とは別のものである。なお、この微小間隙部14よりもさらに外周側では、ポンプケース2と分離板3とは隙間なく結合しており、この部分がシール部15となっている。
【0024】
第一実施形態では、図1に示すように、射出成型時に残る成型用ゲート痕4を、ポンプケース2のポンプ室10の外周側の対向面20に備えている。さらに詳しくは、この対向面20を凹ませて形成した凹部21の底部22の中央部に、成型用ゲート痕4を備えている。成型用ゲート痕4は、凹部21の底部22から対向側(分離板3の対向面30)に向けて突出している。凹部21は、側面視矩形状の断面形状を有し、例えば、直径2mm、深さ0.5mmで形成される。なお、第一実施形態では、対向面20に複数の成型用ゲート痕4を備えている。
【0025】
このようにポンプ室10の外周側に成型用ゲート痕4を備えることで、第一実施形態では、成型用ゲート痕4によってポンプ室10内に乱流が発生することを抑制して、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【0026】
さらに、第一実施形態では、成型用ゲート痕4を、対向面20を凹ませて形成した凹部21の底部22に備えている。このようにしたことで、第一実施形態では、成型用ゲート痕4が凹部21内に収納されるため、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを抑えられ、これにより、シール性能の低下を抑制できる。また、成型用ゲート痕4が対向側と接触することを防止するためにこの成型用ゲート痕4の突出長さを削って減らすという二次的加工の必要性が減少するため、生産効率も向上する。
【0027】
また、第一実施形態では、成型用ゲート痕4を取り囲む凹部21を、側面視矩形状の断面形状にしたことで、容易な加工で凹部21を形成できる。
【0028】
また、成型用ゲート痕4をポンプ室10とシール部15との間に設けるようにすることで、射出成型の際に、ゲート位置を成型品の中心に近い位置にできる。これにより、樹脂流動性が低下することを抑制でき、隣接するゲート位置間にウェルドラインが発生することを抑制できる。
【0029】
なお、上記第一実施形態では、ポンプケース2の対向面20の凹部21に成型用ゲート痕4を備えた例を説明したが、分離板3の対向面30に凹部を形成して、その凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。また、ポンプケース2と分離板3の両方が、対向面の凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。
【0030】
続いて、本発明の第二実施形態のポンプ1について説明する。なお、第一実施形態のポンプ1と同じ構成については図面に同じ符号をつけて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0031】
第二実施形態では、図3に示すように、ポンプケース2の凹部21の成型用ゲート痕4と対向する箇所(分離板3の対向面30)に、対向凹部31を備えている。対向凹部31は、対向面30を凹ませて形成したものであり、側面視矩形状の断面形状を有し、例えば、直径2mm、深さ0.5mmで形成される。
【0032】
凹部21と対向凹部31とはそれぞれ、図4(a),図4(b)に示すように、ポンプケース2と分離板3とに複数(図では3つ)設けられている。各凹部21と各対向凹部31とは、ポンプケース2と分離板3とを結合させた際に、対向する箇所に位置している。
【0033】
上述したように、第二実施形態では、成型用ゲート痕4と対向する箇所に対向凹部31を設けている。そのため、第二実施形態では、第一実施形態の作用効果に加えて、射出成型用の金型が磨耗することによって、成型用ゲート痕4の肥大化が発生した場合における、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを低減させることができる。これにより、第二実施形態では、シール性能の低下をさらに抑制できる。
【0034】
また、第二実施形態では、対向凹部31を、側面視矩形状の断面形状にしたことで、容易な加工で対向凹部31を形成できる。
【0035】
なお、上記第二実施形態では、ポンプケース2の対向面20の凹部21に成型用ゲート痕4を備え、この成型用ゲート痕4に対向する箇所(分離板3の対向面30)に対向凹部31を備えたものであったが、その逆であってもかまわない。すなわち、分離板3の対向面30に形成した凹部に成型用ゲート痕4を備え、この成型用ゲート痕4に対向する箇所(ポンプケース2の対向面20)に対向凹部を備えるようにしてもよい。
【0036】
続いて、本発明の第三実施形態のポンプ1について説明する。なお、第一実施形態のポンプ1と同じ構成については図面に同じ符号をつけて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0037】
第三実施形態では、図5(a)に示すように、凹部21が、側面視円弧状の断面形状を有し、例えば、直径2mm、深さ0.5mmで形成される。
【0038】
このように成型用ゲート痕4を取り囲む凹部21を、側面視円弧状の断面形状にしたことで、第三実施形態では、第一実施形態の作用効果に加えて、成型用ゲート痕4を凹部21内に収納可能としたうえで、急激な流路断面積の変化が抑えられる。そのため、負圧によるキャビテーションを抑制でき、騒音の発生を低減できる。
【0039】
なお、上記第三実施形態においても、第一実施形態と同様に、分離板3の対向面30に凹部を形成して、その凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。また、ポンプケース2と分離板3の両方が、対向面の凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。
【0040】
続いて、本発明の第四実施形態のポンプ1について説明する。なお、第三実施形態のポンプ1と同じ構成については図面に同じ符号をつけて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0041】
第四実施形態では、図5(b)に示すように、ポンプケース2の凹部21の成型用ゲート痕4と対向する箇所(分離板3の対向面30)に、対向凹部31を備えている。対向凹部31は、対向面30を凹ませて形成したものであり、側面視円弧状の断面形状を有し、例えば、直径2mm、深さ0.5mmで形成される。
【0042】
上述したように、第四実施形態では、成型用ゲート痕4と対向する箇所に対向凹部31を設けている。そのため、第四実施形態では、第三実施形態の作用効果に加えて、射出成型用の金型が磨耗することによって、成型用ゲート痕4の肥大化が発生した場合における、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを低減させることができる。これにより、第四実施形態では、シール性能の低下をさらに抑制できる。
【0043】
なお、上記第四実施形態においても、第二実施形態と同様に、分離板3の対向面30に形成した凹部に成型用ゲート痕4を備え、この成型用ゲート痕4に対向する箇所(ポンプケース2の対向面20)に対向凹部を備えるようにしてもよい。
【0044】
続いて、本発明の第五実施形態のポンプ1について説明する。なお、第一実施形態のポンプ1と同じ構成については図面に同じ符号をつけて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0045】
第五実施形態では、図6(a)に示すように、凹部21の断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部24と側部25と底部22の周縁部26とが滑らかな曲線状である。凹部21は、例えば、最大開口幅が2mmで、深さ0.5mm、開口の周縁部24と側部25の接続箇所を滑らかな曲線R0.5mm、側部25と底部22の周縁部26の接続箇所を滑らかな曲線R0.25mmとして形成される。
【0046】
このような断面形状としたことで、第五実施形態では、第一実施形態の作用効果に加えて、成型用ゲート痕4を凹部21内に収納可能としたうえで、急激な流路断面積の変化も抑えられる。加えて、凹部容積が小さくなるため、微小間隙部14及び凹部21に流れ込む流量を減少できる。そのため、シール性能低下の抑制とキャビテーションの抑制を図ったうえで、微小間隙部14及び凹部21に流れ込む流量の減少に伴う流路損失の低減を図ることができる。
【0047】
なお、上記第五実施形態においても、第一実施形態と同様に、分離板3の対向面30に凹部を形成して、その凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。また、ポンプケース2と分離板3の両方が、対向面の凹部に成型用ゲート痕4を備えるようにしてもよい。
【0048】
続いて、本発明の第六実施形態のポンプ1について説明する。なお、第五実施形態のポンプ1と同じ構成については図面に同じ符号をつけて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0049】
第六実施形態では、図6(b)に示すように、ポンプケース2の凹部21の成型用ゲート痕4と対向する箇所(分離板3の対向面30)に、対向凹部31を備えている。対向凹部31は、対向面30を凹ませて形成したものであり、対向凹部31の断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部34と側部35と底部32の周縁部36とが滑らかな曲線状である。対向凹部31は、例えば、最大開口幅が2mmで、深さ0.5mm、開口の周縁部34と側部35の接続箇所を滑らかな曲線R0.5mm、側部35と底部32の周縁部36の接続箇所を滑らかな曲線R0.25mmとして形成される。
【0050】
上述したように、第六実施形態では、成型用ゲート痕4と対向する箇所に対向凹部31を設けている。そのため、第六実施形態では、第五実施形態の作用効果に加えて、射出成型用の金型が磨耗することによって、成型用ゲート痕4の肥大化が発生した場合における、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを低減させることができる。これにより、第六実施形態では、シール性能の低下をさらに抑制できる。
【0051】
なお、上記第六実施形態においても、第二実施形態と同様に、分離板3の対向面30に形成した凹部に成型用ゲート痕4を備え、この成型用ゲート痕4に対向する箇所(ポンプケース2の対向面20)に対向凹部を備えるようにしてもよい。
【0052】
図7〜図9には、本発明のポンプ1を搭載したポンプ駆動機器の例を示している。図7に示すポンプ駆動機器は食器洗浄器であり、図8に示すポンプ駆動機器は給湯機器であり、図9に示すポンプ駆動機器は洗濯機である。いずれの例においても、本発明の第一乃至第六実施形態のポンプ1が用いられる。
【0053】
図7の食器洗浄器では、本発明のポンプ1を洗浄ポンプ50及び排水ポンプ51として用いる。洗浄ポンプ50によって貯水漕52からノズル53へと水または温水を送り、これをノズル53から噴射することで食器洗浄器内に設置した食器54を洗浄する。洗浄後の水または温水は、下方に落下して貯水漕52に溜められ、洗浄ポンプ50によって再度ノズル53に送られる。所定時間洗浄した後に、洗浄ポンプ50を停止して排水ポンプ51を駆動させ、貯水漕52の水を排水する。
【0054】
次に、再び貯水漕52内に水または温水を供給したうえで、洗浄ポンプ50によって濯ぎを行い、洗浄ポンプ50を停止して排水ポンプ51により排水を行う。以上の動作を繰り返し行い、食器洗浄が行われる。
【0055】
図8の給湯機器は、ヒートポンプユニット、貯湯ユニット、風呂、床暖房、追い炊き熱交換器、暖房熱交換器等を備えた給湯ユニットであり、本発明のポンプ1が給湯ユニット用のポンプ60として複数配置される。この給湯ユニットには、台所や洗面用の湯水蛇口や、お湯を貯める補助タンク61が設けられており、更に、給水口62の下流には減圧弁63が設けられ、床暖房には熱動弁64が設けられている。更に、それぞれの配管には、複数の混合弁65や安全弁66が設けられている。この給湯ユニットでは、複数のポンプ60を駆動させるとともに各弁を制御することで、湯水蛇口等に水やお湯を所望の温度及び流量で供給する。
【0056】
図9の洗濯機では、本発明のポンプ1を循環ポンプ70として用いる。この洗濯機では、洗濯漕71がモータ(図示略)によって回転されるとともに、循環ポンプ70によって洗濯漕71内の水が循環され、衣類等の洗濯が行われる。
【0057】
図8〜図9のいずれの例においても、本発明の第一乃至第六実施形態のポンプ1を用いることで、ポンプを高効率かつ堅牢にできるため、機器の高効率化や、対振動・衝撃性の向上が可能となる。
【0058】
以上まとめると、上述した第一乃至第六実施形態のポンプは、対向配置したポンプケース2と分離板3との間にポンプ室10を形成したポンプ1である。このポンプ1は、ポンプケース2と分離板3のうち少なくとも一方が、ポンプ室10の外周側の対向面20に成型用ゲート痕4を備える。
【0059】
このような構成とすることで、成型用ゲート痕4がポンプ室10の外周側に位置するため、この成型用ゲート痕4によってポンプ室10内の流れが乱されて乱流が起こることを抑制できる。これにより、ポンプ1のポンプ効率の低下を抑制できる。
【0060】
また、上述した第一乃至第六実施形態のポンプは、成型用ゲート痕4が、対向面20に形成した凹部21の底部22から突出したものである。
【0061】
このような構成とすることで、成型用ゲート痕4がポンプケース2の凹部21内に収納されるため、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを抑えられる。これにより、シール性能の低下を抑制できる。また、成型用ゲート痕4が対向側と接触することを防止するためにこの成型用ゲート痕4の突出長さを削って減らすという二次的加工が必要なくなるため、生産効率も向上する。
【0062】
また、上述した第一,第三及び第五実施形態のポンプでは、ポンプケース2の成型用ゲート痕4と対向する分離板3の箇所には、対向凹部31を備える。
【0063】
このような構成とすることで、射出成型用の金型が磨耗することによって、成型用ゲート痕4の肥大化が発生した場合における、成型用ゲート痕4が対向側(分離板3の対向面30)と接触するリスクを低減させることができる。これにより、シール性能の低下をさらに抑制できる。
【0064】
また、上述した第一及び第二実施形態のポンプでは、凹部21は、側面視矩形状の断面形状を有する。
【0065】
このような構成とすることで、容易な加工で凹部21を形成できる。
【0066】
また、上述した第三及び第四実施形態のポンプでは、凹部21は、側面視円弧状の断面形状を有する。
【0067】
このような構成とすることで、成型用ゲート痕4を凹部21内に収納可能としたうえで、急激な流路断面積の変化が抑えられる。そのため、負圧によるキャビテーションを抑制でき、騒音の発生を低減できる。
【0068】
また、上述した第五及び第六実施形態のポンプでは、凹部21は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部24と側部25と底部22の周縁部26とが滑らかな曲線状である。
【0069】
このような構成とすることで、成型用ゲート痕4を凹部21内に収納可能としたうえで、急激な流路断面積の変化も抑えられる。加えて、凹部容積が小さくなるため、対向面20,30間に流れ込む流量を減少できる。そのため、シール性能の低下の抑制とキャビテーションの抑制を図ったうえで、対向面20,30間に流れ込む流量の減少に伴う流路損失の低減を図ることができる。
【0070】
また、上述した第一及び第二実施形態のポンプでは、対向凹部31は、側面視矩形状の断面形状を有する。
【0071】
このような構成とすることで、容易な加工で対向凹部31を形成できる。
【0072】
また、上述した第三及び第四実施形態のポンプでは、対向凹部31は、側面視円弧状の断面形状を有する。
【0073】
このような構成とすることで、急激な流路断面積の変化が抑えられる。そのため、負圧によるキャビテーションを抑制でき、騒音の発生を低減できる。
【0074】
また、上述した第五及び第六実施形態のポンプでは、対向凹部31は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部34と側部35と底部32の周縁部36とが滑らかな曲線状である。
【0075】
このような構成とすることで、急激な流路断面積の変化を抑えられる。加えて、凹部容積が小さくなるため、対向面20,30間に流れ込む流量を減少できる。そのため、シール性能の低下の抑制とキャビテーションの抑制を図ったうえで、対向面20,30間に流れ込む流量の減少に伴う流路損失の低減を図ることができる。
【0076】
また、上述したポンプを搭載した機器とすることで、高効率かつ堅牢なポンプ1を搭載できるため、機器の高効率化や、対振動・衝撃性の向上が可能となる。
【0077】
なお、上述した各実施形態においては、成型用ゲート痕4を、ポンプ室10の外周側の対向面20に形成した凹部21の底部22に備えていたが、成型用ゲート痕4は、微小間隙部14内に収まるサイズであれば、対向面20に直接備えてもよい。このようにしても、成型用ゲート痕4によってポンプ室10内で乱流が発生して、ポンプ効率が低下することを抑制できる。
【0078】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 ポンプ
10 ポンプ室
2 ポンプケース
20 ポンプ室の外周側の対向面
21 凹部
22 凹部の底部
24 開口の周縁部
25 側部
26 底部の周縁部
3 分離板
30 ポンプ室の外周側の対向面
33 対向凹部
34 開口の周縁部
35 側部
36 底部の周縁部
4 成型用ゲート痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置したポンプケースと分離板との間にポンプ室を形成したポンプにおいて、
前記ポンプケースと前記分離板のうち少なくとも一方が、前記ポンプ室の外周側の対向面に成型用ゲート痕を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記成型用ゲート痕は、前記対向面に形成した凹部の底部から突出したものであることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ポンプケースと前記分離板のうち、一方の前記成型用ゲート痕と対向する他方の箇所には、対向凹部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記凹部は、側面視矩形状の断面形状を有することを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
【請求項5】
前記凹部は、側面視円弧状の断面形状を有することを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
【請求項6】
前記凹部は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部と側部と底部の周縁部とが滑らかな曲線状であることを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
【請求項7】
前記対向凹部は、側面視矩形状の断面形状を有することを特徴とする請求項3に記載のポンプ。
【請求項8】
前記対向凹部は、側面視円弧状の断面形状を有することを特徴とする請求項3に記載のポンプ。
【請求項9】
前記対向凹部は、断面形状が、底側ほど開口幅が減少するとともに開口の周縁部と側部と底部の周縁部とが滑らかな曲線状であることを特徴とする請求項3に記載のポンプ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のポンプを搭載した機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72323(P2013−72323A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210862(P2011−210862)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】