説明

ポンプ用の容器体

【課題】口頸部に装着したポンプの吸上げパイプにより収容液を吸引し、ポンプの吐出口より吐出するポンプ用の容器体であって、ブロー成形等により形成することができて生産性が良く、廉価なコストでの製造が可能であり、しかも残液を極力なくすことができるポンプ用の容器体を提案する。
【解決手段】胴部10の下端縁より延設した反転壁13の下端縁より傾斜板状の底壁形成壁15を延設し、反転壁13は、胴部10の下端縁に連続する上縁と、胴部10の下端縁の一端部から対向端部に向かって傾斜下降し、且つ胴部下端縁と同じ平面視形状をなす下端縁とを備えた筒状形態をなし、底壁形成壁15の押し上げにより反転壁13を上方へ反転させ、底壁形成壁が胴部の下端縁の一端部を中心に回動上昇して上げ底状の底壁14を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ用の容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
有底筒状の胴部より肩部を介して口頸部を起立した形態をなし、口頸部に装着したポンプの操作により収容液を汲み上げてポンプの吐出口より吐出する如く構成したポンプ容器が種々提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
これらのポンプ容器に使用されている容器体として、例えば、特許文献1に記載された容器体は、有底筒状の胴部の上端より肩部を介して口頸部を起立し、全体を一体に形成している。また、底部は中央部が隆起してその周縁部に環状の凹部が存在する形態をなしている。これらの容器体は一般にブロー成形により形成される場合が多く、その場合底部のピンチオフによりその中央が隆起する傾向となる。
【特許文献1】特開平08−230961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1にある如き一般的なポンプ用容器体は、生産性の良さ或いはコストの低減を図る等の目的でブロー成形により形成されるものが好ましく、その場合上記した底部中央部が隆起する傾向があるため、その周囲の環状の凹部に残液が生じる虞があった。これらの容器体に使用するポンプは、容器体内に吸上げ用のパイプを垂下させ、その下端を底面近傍に開口してそこから液を吸い上げる如く構成している。吸上げ用のパイプの開口が隆起部分上であれば隆起部分周囲の液はそのまま残液となり、また、吸上げ用のパイプを弯曲させてその先端を容器体底部縁部に開口する如く構成した場合でも、パイプの先端角度或いはパイプの太さ、或いは隆起部分周縁部の溝の幅などの関連で、溝部分に液が残る結果を招く場合が多々あった。
【0005】
また、容器体を射出成形等の複雑な形状を現出可能な成形方法で形成すれば、比較的自由な形態の底部を形成でき、残液の解消を図ることができるが、コストがかかり生産性も低下する等の他の問題が生じる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、ブロー成形等により形成することができ、従来の生産性の良さ或いは廉価なコストを維持できるとともに、残液を極力なくすことができるポンプ用容器体を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポンプの容器体は、合成樹脂により一体に形成されたもので、特にブロー成形等による形成が可能である。その形態は、有底筒状の胴部から肩部を介して口頸部を起立した形態であり、少なくとも胴部の下端部を円筒状,楕円筒状或いは多角形筒状等に形成したものである。従って、胴部の上部を下端部の形状と異なる形状にしたものであっても、或いは胴部全体が同一筒状形態のものであっても良い。また、胴部の下端部には反転壁を介して傾斜下降する底壁を備えている。
【0008】
本発明の容器体は当初、胴部の下端縁より下方へ反転壁を延設し、反転壁の下端縁より底壁形成壁を延設した形態で製造される。反転壁は、胴部の下端縁に連続する上縁と、胴部の下端縁の一端部から対向端部に向かって傾斜下降し、且つ、胴部下端縁と同じ平面視形状をなす下端縁とを備えた筒状形態をなしており、その下端縁より延設された底壁形成壁が傾斜板状に形成されている。要は、反転壁及び底壁形成壁が上方に反転した際に胴部下部に傾斜した底壁が形成される。底壁形成壁の傾斜方向は、胴部が円筒状或いは正多角形筒状の場合には方向は問われないが、胴部が楕円筒状の場合には、長軸或いは短軸に沿った方向に傾斜させる。
【0009】
そして、上記の如く形成された容器体を、底壁形成壁を押し上げることで、反転壁を上方へ反転させてその外周面を胴部の内周面下端部に当接させるとともに、底壁形成壁が回動上昇して上げ底状の底壁を形成する。従って、液が少なくなると底壁の下方に液がたまる仕掛けとなっている。そのため、使用するポンプも後述する如き特徴を備えたものが必要となる。
【0010】
反転壁の反転機構としては、反転が可能な程度に反転壁の肉厚を調整すれば良く、例えば、胴部或いは底壁形成壁の厚みと比較して薄肉に形成することで容易な反転が可能となる。尚、胴部或いは底壁形成壁の厚みとしては一般的な合成樹脂ボトルの厚みを対象とする。また、反転壁の厚みをごく薄く形成すると反転後の反転壁の強度、例えば容器体内に液を注入した際の圧力等に対抗する強度に問題が生じる虞がある。本発明では、反転した底壁が傾斜して胴部の横断面積よりやや大きい面積を備えているため、底壁の周縁部と胴部内周との接触縁で上方からの圧力を支持する作用もあり、反転壁を比較的薄く構成しても充分強度を現出できる。反面、反転時に底壁形成壁を強制的に押し上げる必要もある。また、胴部底壁部が多角形筒状の場合にはコーナー部分を他の部分と比較して薄肉に形成することで、より反転し易くなる。
【0011】
上記の要件を満たせば反転壁と底壁形成壁との厚さの大小は、それらが上記機能を発揮する中で適宜選択すれば、どちらが厚い場合も同じ場合も可能ではある。
【0012】
また、本発明の容器体に対応できるポンプとしては、容器体内部に吸上げパイプを垂下させた状態で口頸部に装着し、吸上げパイプより吸引した収容液をポンプの吐出口より吐出する如く構成した公知機構のポンプを採用できる。従って、容器体内の液をそのまま液として吐出口より吐出する場合も、公知の機構により泡として吐出口より吐出する形態のものであっても採用可能である。また、ポンプの吸上げパイプは、中間部で屈曲させる等するとともに、所定の長さに形成して、ポンプを容器体に装着した際にその下端が容器体の底部縁部に、しかも最下方位置の底部縁部に開口する形態のものを採用する。
【0013】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、有底筒状の胴部10より肩部11を介して口頸部12を起立し、口頸部12に装着したポンプBの吸上げパイプ26により収容液を吸引し、ポンプBの吐出口30より吐出するポンプ用の容器体であって、胴部10の下端縁より下方へ反転壁13を延設するとともに、反転壁13の下端開口を閉塞する傾斜板状の底壁形成壁15を反転壁13の下端縁より延設し、反転壁13は、胴部10の下端縁に連続する上縁と、胴部10の下端縁の一端部から対向端部に向かって傾斜下降し、且つ胴部下端縁と同じ平面視形状をなす下端縁とを備えた筒状形態をなし、胴部10の下端縁を中心に反転壁13を上方へ反転可能に形成し、底壁形成壁15の押し上げにより反転壁13を上方へ反転させてその外周面を胴部10の内周面下端部に当接させるとともに、底壁形成壁15が胴部10の下端縁の一端部を中心に回動上昇して上げ底状の底壁14を形成したことを特徴とするポンプ用の容器体。
【0014】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、底壁形成壁15及び胴部10と比較して反転壁13を薄肉に形成した。
【0015】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段に於いて、屈曲形成された吸上げパイプ26を備え、口頸部12外周に装着筒23を螺着させることで装着固定するポンプBに対して、装着筒23の口頸部12への螺着時に、屈曲した吸上げパイプ26の下端開口を底壁14の最下方位置に開口するための位置決め手段を、口頸部12と装着筒23との間に設けた。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、底壁14が傾斜しているため、吸上げパイプ26の下端開口を底壁14の最下方位置に開口すれば、底壁14上に残液が発生することを極力防止でき、しかもブロー成形等により成形してもその構造上の理由で底部中央を隆起させなければならないという不都合を回避できるため、ブロー成形等による成形が可能で、生産性が良く、低コストでの製造が可能となる。
【0017】
底壁形成壁15及び胴部10と比較して反転壁13を薄肉に形成した場合には、反転壁13の反転が容易となる利点がある。
【0018】
屈曲形成された吸上げパイプ26を備え、口頸部12外周に装着筒23を螺着させることで装着固定するポンプBに対して、装着筒23の口頸部12への螺着時に、屈曲した吸上げパイプ26の下端開口を底壁14の最下方位置に開口するための位置決め手段を、口頸部12と装着筒23との間に設けた場合には、吸上げパイプ26の下端開口を確実容易に底壁14の最下方位置に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至図3は容器体AにポンプBを装着したポンプ容器1の一例を示し、容器体Aは合成樹脂を使用してブロー成形により一体に形成されたもので、円筒状の胴部10の上端より肩部11を介して口頸部12を起立し、胴部10の下端部には反転壁13を介して底壁14を延設している。
【0021】
容器体Aは当初図2に示す状態で形成される。図2に於いて、容器体Aは胴部10の下端縁より下方へ反転壁13を一体に延設し、反転壁13の下端縁より底壁形成壁15を一体に延設している。
【0022】
反転壁13は、図2に示す如く、胴部10の下端縁と略同形の円形上縁と、胴部10下端縁の一端部から対向端部に向かって傾斜下降し、且つ、胴部10の下端縁と同じ平面視形状の下端縁とを備えた筒状形態をなし、外周面が胴部10下端部の内周面と略同径程度に形成されている。また、反転壁13は、胴部10及び底壁形成壁15と比較して薄肉に形成している。
【0023】
底壁形成壁15は、反転壁13の下端縁より、反転壁13の下端開口部を閉塞して、一体に延設した傾斜板状をなしている。この底壁形成壁15は反転壁13が反転した際に、胴部10の下端縁を通る面と対称的に反転して底壁14となる。
【0024】
そして、図2の状態から、底壁形成壁15の後部を押し上げると、反転壁13が上方に反転し、図1に示す如く、反転壁13の外周面が胴部10内周下端部に略接触する状態に反転する。その際、底壁形成壁15は前端部を中心に上方へ回動して上げ底状の底壁14を形成する。尚、底壁形成壁15と胴部10の下端開口とでは、底壁形成壁15の方が若干大きくなるが、底壁形成壁15を強制的に押し上げることで、底壁形成壁15を反転位置に押し上げることができる。合成樹脂により形成された容器体Aは弾力性を備えているため、この様な操作が容易に行える。
【0025】
ポンプBは、外周上部にフランジ20を延設し、フランジ20の下面周縁部より環状のシール筒21を垂設したシリンダ22を備え、フランジ20の外周縁部に装着筒23を嵌着固定している。装着筒23は上端より内方へ延設したフランジ状頂板24を、フランジ20と係合手段を持って不動に嵌着固定している。また、シリンダ22内より上方付勢状態で押し込み可能に突出したステムの上端に吐出ヘッド25を嵌着している。更に、シリンダ22の下端部に上端を嵌着した吸上げパイプ26を垂設している。吸上げパイプ26は中間部で屈曲する如く、屈曲形成されている。尚、フランジ状頂板24と、フランジ20との係合手段は、図3に拡大図で示す如く、フランジ20の上面周縁部に周方向多数の放射突条27突設し、一方フランジ状頂板24の下面に外周縁部に周方向多数の放射凹溝28を凹設し、両者を嵌合させて、相互の回動が不能に嵌着固定している。但し、これに代えてシリンダ22と装着筒23とを一体に形成しても良い。
【0026】
また、装着筒23の口頸部12への螺着時に、屈曲した吸上げパイプ26の下端開口を底壁14の最下方位置に開口するための位置決め手段を、口頸部12と装着筒23との間に設けている。位置決め手段は、口頸部12の外周下端部に周方向等間隔に多数突設した縦突条16の一部と、装着筒23の内周下端部の対向位置に一対突設した係合突条29で構成している。尚、位置決め手段を構成する縦突条16は上記多数のものの一部であり、縦突条16は上記の如く周方向多数突設する必要はなく、係合突条29の数に併せて必要な数だけ突出しても良い。
【0027】
ポンプBを容器体Aに装着する際は、シリンダ22及び吸上げパイプ26を容器体A内に垂下しつつ、容器体口頸部12外周に装着筒23を螺着させ、シール筒21を口頸部12内周に密嵌させる。シール筒21によりこの部分の液密性を図っている。また、その際、装着筒23の螺着終点時に装着筒23内面の係合突条29が、口頸部12外周の所定の縦突条16間に係合し、その時点で図1に示す如く吸上げパイプ26の先端が底壁14の最下方位置に開口している。尚、図1は吐出ヘッド25を押し下げた状態でシリンダ22の上端部に螺着した状態を示す。
【0028】
上記の如く構成したポンプ容器は、図1の状態から、吐出ヘッド25をシリンダ22から螺脱して上昇させ、その状態から吐出ヘッド25を上下動させることで、内臓ポンプ機構の作用で吸上げパイプ26の下端開口より容器体A内液を吸上げ吐出ヘッド25の吐出口30より吐出する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ポンプを装着した容器体の縦断面図である。(実施例1)
【図2】底部反転前の容器体の縦断面図である。(実施例1)
【図3】ポンプを装着した容器体の要部拡大図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0030】
A…容器体
10…胴部,11…肩部,12…口頸部,13…反転壁,14…底壁,15…底壁形成壁,
16…縦突条
B…ポンプ
20…フランジ,21…シール筒,22…シリンダ,23…装着筒,24…フランジ状頂板,
25…吐出ヘッド,26…吸上げパイプ,27…放射突条,28…放射凹溝,29…係合突条
30…吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の胴部10より肩部11を介して口頸部12を起立し、口頸部12に装着したポンプBの吸上げパイプ26により収容液を吸引し、ポンプBの吐出口30より吐出するポンプ用の容器体であって、胴部10の下端縁より下方へ反転壁13を延設するとともに、反転壁13の下端開口を閉塞する傾斜板状の底壁形成壁15を反転壁13の下端縁より延設し、反転壁13は、胴部10の下端縁に連続する上縁と、胴部10の下端縁の一端部から対向端部に向かって傾斜下降し、且つ胴部下端縁と同じ平面視形状をなす下端縁とを備えた筒状形態をなし、胴部10の下端縁を中心に反転壁13を上方へ反転可能に形成し、底壁形成壁15の押し上げにより反転壁13を上方へ反転させてその外周面を胴部10の内周面下端部に当接させるとともに、底壁形成壁15が胴部10の下端縁の一端部を中心に回動上昇して上げ底状の底壁14を形成したことを特徴とするポンプ用の容器体。
【請求項2】
底壁形成壁15及び胴部10と比較して反転壁13を薄肉に形成した請求項1記載のポンプ用の容器体。
【請求項3】
屈曲形成された吸上げパイプ26を備え、口頸部12外周に装着筒23を螺着させることで装着固定するポンプBに対して、装着筒23の口頸部12への螺着時に、屈曲した吸上げパイプ26の下端開口を底壁14の最下方位置に開口するための位置決め手段を、口頸部12と装着筒23との間に設けた請求項1又は請求項2のいずれかに記載のポンプ用の容器体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−149923(P2010−149923A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333028(P2008−333028)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】