説明

ポータブル電子デバイスのガラスカバーを強化する技術

電子デバイスの薄いガラスカバーの強度を向上する装置、システム及び方法が開示される。一実施形態において、ガラス部材の縁部を所定の形状に整形すること及び/又は縁部を化学強化処理することによりガラス部材の強度を向上できる。有利なことに、ガラス部材は薄いだけではなく、損傷を受けにくくするために適切な強度も有することができる。一実施形態において、ガラス部材は、電子デバイスの筐体のガラスカバーに適応されてもよい。ガラスカバーは、液晶ディスプレイ(LCD)表示装置などのディスプレイを覆うように配置されるか又はディスプレイと一体に形成されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ハンドヘルド電子デバイスなどの省スペースデバイスは、従来、種々の層を含むディスプレイ構成を有する。通常、種々の層は、少なくとも1つの表示技術層を含み、表示技術層を覆うように配設された感知構成及び/又はカバー窓を更に含んでもよい。一例として、表示技術層は、液晶モジュール(LCM)を含む液晶ディスプレイ(LCD)を含むか又はLCDに関連してもよい。一般にLCMは、液晶層を間に挟む上部ガラスシート及び下部ガラスシートを含む。感知構成は、タッチスクリーンを製造するために使用されるような接触感知構成であってもよい。例えば、容量性感知タッチスクリーンは、ガラス(又はプラスチック)のシート全体に分散配置された複数のほぼ透明な感知ポイント又は感知ノードを含んでもよい。更にガラスカバー窓は、通常、積層構造の外側保護バリアとして設計される。
【0002】
省スペースデバイスのガラスカバー窓、すなわちガラスカバーはプラスチック又はガラスからから製造可能である。プラスチックは高い耐久性を有するが、引っ掻き傷ができやすい。ガラスは引っ掻き傷には強いが、脆い。一般にガラスは、厚くなるほど強度が増す。しかし、ガラスカバーは相対的に薄い場合が多く、特に縁部においてデバイス構造のうち弱い部品となりうる。例えば、ポータブル電子デバイスが応力を受けるか又は著しく大きな力を受ける場所に置かれた場合、ガラスカバーは損傷しやすい。ガラスの強度を向上するために化学強化処理が使用されている。この方法は一般に効果をあげているが、ガラスカバーを強化する方法を提供する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一般にガラスの強度を向上することに関する。強度を向上させたガラスは、薄いにも関わらず、ポータブル電子デバイスなどの電子デバイスで使用するのに適する十分な強度を有することができる。
【0004】
本発明の実施形態は、電子デバイスの薄いガラス部材の強度を向上する装置、システム及び方法に関する。一実施形態において、ガラス部材の縁部を所定の形状に整形することによりガラス部材の強度は向上する。別の実施形態において、ガラス部材の縁部を所定の形状に整形するだけでなく、化学強化処理によっても縁部におけるガラス部材の強度を向上できる。ガラス部材の縁部を所定の形状に整形することにより、化学強化処理の有効性も向上できる。ガラス部材は薄いばかりではなく、ガラス部材を損傷しにくくする適切な強度を有する。
【0005】
一実施例において、ガラス部材は電子デバイスの外面であってもよい。例えばガラス部材は、電子デバイスの表示領域の一部を形成するのに有用な(すなわち、ディスプレイとは別の部品としてディスプレイの前方に配置されるか又はディスプレイの中に一体に形成される)ガラスカバーに相当してもよい。その代わりに又はそれに加えて、ガラス部材は筐体の一部を形成してもよい。例えばガラス部材は、表示領域以外の場所で外面を形成してもよい。
【0006】
薄いガラスの強度を向上する装置、システム及び方法は、ハンドヘルド電子デバイス(例えば、移動電話、メディアプレーヤ、パーソナルデジタルアシスタント、リモートコントロールなど)のような小さいフォームファクタの電子デバイスに組み込まれるガラスカバー又はディスプレイ(例えば、LCDディスプレイ)に本質的に適している。そのような小さいフォームファクタのデバイスの実施形態において、ガラスは3mm未満、更に特定すれば0.5〜2.5mm程度の薄さであってもよい。装置、システム及び方法は、比較的大きいフォームファクタの電子デバイス(例えば、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ディスプレイ、モニタ、テレビなど)を含むが、それらに限定されない他のデバイスのガラスカバー又はディスプレイとしても使用可能である。そのような大きいフォームファクタの実施形態においても、ガラスは5mm未満、更に特定すれば0.5〜3mm程度の薄さであってもよい。
【0007】
本発明は、方法、システム、デバイス又は装置を含む多くの態様で実現可能である。本発明のいくつかの実施形態は以下に説明される。
【0008】
消費者電子製品として、例えば一実施形態は、前面、背面及び側面を有する筐体と、少なくとも一部が筐体の内部に配置され、少なくともコントローラ、メモリ及び筐体の前面に又は前面に隣接して配置されるディスプレイを含む複数の電気部品と、ディスプレイを覆うように筐体の前面に又は前面の上に重ねて配置されたカバーガラスとを少なくとも含んでもよい。ガラスカバーの縁部を所定の縁部形状に対応するように整形し且つガラスカバーの縁部を化学処理することにより、カバーガラスを強化できる。
【0009】
ハンドヘルド電子デバイスの筐体に装着するのに適するカバーガラス部材として、例えば各々がハンドヘルド電子デバイスの露出面を覆うように配置されるのに適する大きさを有し且つ縁部及び少なくとも1つの縁部ではない部分を有する複数のカバーガラス部材を形成することと、ガラスシートを入手することと、各々がハンドヘルド電子デバイスの露出面を覆うように配置されるのに適する大きさである複数のカバーガラス部材としてガラスシートを個別化することとを少なくとも含んでもよい処理により、カバーガラス部材は製造され且つ強化されてもよい。処理は、ガラスカバーを強化するために選択された所定の縁部形状に対応するように各カバーガラス部材の縁部を加工することを更に含んでもよい。更に処理は、少なくとも縁部の組成が少なくとも1つの縁部ではない部分の組成とは異なるように少なくとも縁部の組成を化学的に変化させることにより、各カバーガラス部材の少なくとも縁部を化学的に強化することを含んでもよい。一実施形態において、縁部を含むが、それに限定されないカバーガラス部材のすべての面を強化するように作用可能な化学溶液の中にカバーガラス部材を浸漬することにより、カバーガラス部材は化学的に強化される。
【0010】
消費者電子製品の露出面を覆うガラスカバーを製造する方法として、一実施形態は、例えば、ガラスシートを入手する動作と、各々が消費者電子製品の露出面を覆うように配置されるのに適する大きさを有する複数のガラスカバーとしてガラスシートを個別化する動作と、所定の縁部形状に対応するように各ガラスカバーの縁部を加工する動作とを少なくとも含んでもよい。所定の縁部形状はガラスカバーを強化するように選択される。一実施形態において、方法は、イオン溶液中のイオンがガラスカバーの中に有効に拡散することによりガラスカバーを化学的に強化するように、ガラスカバーをある特定の時間だけイオン溶液に浸漬することを更に含んでもよい。
【0011】
ポータブル電子デバイスとして、一実施形態は、例えば、前面、背面及び側面を有する筐体と、少なくとも一部が筐体の内部に配置され、少なくともコントローラ、メモリ及び筐体の前面に又はそれに隣接して配置されるディスプレイを含む複数の電気部品と、ディスプレイを覆うように筐体の前面に又は前面の上に重ねて配置されたカバーガラスとを少なくとも含んでもよい。所定の縁部形状に対応するようにガラスカバーの縁部を整形すること及び場合によってはガラスカバーの縁部を化学処理することにより、ガラスカバーを強化してもよい。また、ガラスカバーの縁部の化学処理後、カバーガラスは、縁部を含むカバーガラスの表面全体にわたりほぼ均一な強度を有してもよい。
【0012】
本発明の他の態様及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面に関連して以下の詳細な説明を読むことにより本発明は容易に理解されるだろう。図中、同様の図中符号は同様の構造要素を示す。
【0014】
【図1A】一実施形態に係るガラス部材を示す斜視図である。
【図1B】一実施形態に係る電子デバイスの簡略図である。
【図2】一実施形態に係るガラスカバー処理を示すフローチャートである。
【図3A】種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図3B】種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図3C】種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図3D】種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図3E】種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図4A】別の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図4B】参考実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図5A】一実施形態に係る加工中の電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図5B】別の実施形態に係る加工中の電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。
【図6A】一実施形態に係る電子デバイスを示す概略図である。
【図6B】一実施形態に係る電子デバイスを示す概略図である。
【図7A】別の実施形態に係る電子デバイスを示す概略図である。
【図7B】別の実施形態に係る電子デバイスを示す概略図である。
【図8】一実施形態に係るガラス、例えばガラスカバーを化学的に強化する方法を示すフローチャートである。
【図9A】一実施形態に従って化学的に処理されたガラスカバーを示す横断面図である。
【図9B】一実施形態に従ってカリウムイオンが注入された化学処理部分を含むものとして示される化学処理済みガラスカバーを示す横断面図である。
【図10】一実施形態に従ってガラスカバーをイオン浴に浸漬することを含む化学処理過程を示す概略図である。
【図11】一実施形態に係るガラスの表面における応力低減を示す例示的なグラフである。
【図12A】縁部/縁部付近のガラス部材の圧縮応力プロファイルを示す例示的な図である。
【図12B】縁部/縁部付近のガラス部材の圧縮応力プロファイルを示す例示的な図である。
【図12C】縁部/縁部付近のガラス部材の圧縮応力プロファイルを示す例示的な図である。
【図12D】縁部/縁部付近のガラス部材の圧縮応力プロファイルを示す例示的な図である。
【図13】種々の縁部プロファイルを有するガラス部材の曲げ強さを示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、一般にガラスの強度を向上することに関する。強度を向上させたガラスは、薄いにも関わらず、ポータブル電子デバイスなどの電子デバイスで使用するのに適する十分な強度を有することができる。
【0016】
以下の詳細な説明は単に例を示すだけであり、本発明を限定することをまったく意図しない。本明細書の開示内容を利用する当業者であれば、他の実施形態は容易に明らかとなるだろう。次に、添付の図面に示されるような実現例を参照して詳細に説明する。図面及び以下の詳細な説明において、同一の図中符号は一貫して同一又は同様の部分を示すために使用される。図面は一般に縮尺通りに示されておらず、理解を助けるために図面の少なくともいくつかの特徴が誇張して示される場合があることを理解すべきである。
【0017】
明確にするため、本明細書において説明される実現例の一般的特徴のすべてが図示され且つ説明されるとは限らない。そのような実際の実現例の開発中、用途及び業務に関連する制約に準拠することなどの開発者の特定の目標を達成するためにその実現例に固有の多くの決定が実行されなければならないこと、並びに開発者の特定の目標が実現例ごとに、また、開発者ごとに異なることはもちろん理解されるだろう。更に、そのような開発の努力は複雑で長い時間を要するが、本明細書を利用する当業者には設計の日常的な業務であることも理解されるだろう。
【0018】
本発明の実施形態は、電子デバイスの薄いガラス部材の強度を向上する装置、システム及び方法に関してもよい。一実施形態において、ガラス部材の縁部を所定の形状に整形することにより、ガラス部材の強度は向上されている。別の実施形態において、ガラス部材の縁部を所定の形状に整形するだけでなく、化学強化処理によってもガラス部材を縁部で強化できる。ガラス部材の縁部を所定の形状に整形することにより、化学強化処理の有効性を増すこともできる。ガラス部材は薄いだけではなく、ガラス部材を損傷しにくくする適切な強度を示すという利点を有する。
【0019】
一実施例において、ガラス部材は電子デバイスの外面であってもよい。例えばガラス部材は、電子デバイスの表示領域の一部を形成するのに有用な(すなわち、別の部品としてディスプレイの前方に配置されるか又はディスプレイの中に一体に形成される)ガラスカバーに相当してもよい。その代わりに又はそれに加えて、ガラス部材は筐体の一部を形成してもよい。例えばガラス部材は、表示領域以外の場所で外面を形成してもよい。
【0020】
薄いガラスの強度を向上する装置、システム及び方法は、ハンドヘルド電子デバイス(例えば、移動電話、メディアプレーヤ、パーソナルデジタルアシスタント、リモートコントロールなど)のような小さいフォームファクタの電子デバイスに組み込まれるガラスカバー又はディスプレイ(例えば、LCDディスプレイ)に特に適している。そのような小さいフォームファクタのデバイスの実施形態において、ガラスは3mm未満、更に特定すれば0.5〜2.5mm程度の薄さであってもよい。相対的にさほど薄型ではない電子デバイス(例えば、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ディスプレイ、モニタ、テレビなど)を含むが、それらには限定されない他のデバイスにも、装置、システム及び方法が使用されてもよい。そのような比較的大きいフォームファクタのデバイスの実施形態において、ガラスは5mm未満、更に特定すれば0.5〜3mm程度の薄さであってもよい。
【0021】
ガラスカバーの縁部を所定の形状に整形し且つガラスカバーに対して化学強化処理を実行することにより、ガラスカバーの縁部の付近の応力を減少できる。その結果、電子デバイスを落とした場合のように著しく大きな異常な力を受けたとき、縁部は制御されないほどの亀裂又は破損を生じにくくなる。
【0022】
一実施形態において、特定の所定の形状に対応するように縁部を整形すること及び化学強化処理を実行することにより、ガラスカバーの縁部の付近の圧縮を増加できる。いくつかの実施形態において、最大圧縮は縁部から表面下に入った場所(すなわち表面からわずかに内側の場所)で起こる。従って、ガラスカバーの縁部に特定の所定の形状を与えることによりガラスカバーの強度を向上できる。一実施形態において、ガラスカバーの表面、例えば縁部は化学処理により強化されてもよい。一実施形態において、縁部形状は、角部のような尖った移行部分を減少するか又は滑らかにするように設定される。一実施形態において、縁部形状は滑らかにされた角部であってもよく、その場合、例えば、上面/底面とそれにほぼ垂直である側面との間のような第1の面と第2の面との間の角部の尖った形状を滑らかにすることができる。これは、例えば一方の面を曲線によって他方の面につなげることによって実現されてもよい。一例として、角部は丸形にされてもよい。例えば、1つの面から別の面へ更に連続性をもって接続するようにするために、角部のような尖った縁部は削られるか又は滑らかにされてもよい。例えば、第1の面(例えば、上面又は底面)とそれに対して垂直である第2の面(例えば、側面)との間の縁部は尖らないようにされてもよい。別の例として、上面から側面への移行部分又は底面から側面への移行部分は尖らないようにされるか又は滑らかにされてもよい。尚、この尖らないようにすること又は滑らかにすることにも関わらず、移行部分又は縁部をμm単位で観察すると、ごく微小な亀裂又は表面の凹凸が見られるかもしれないことに留意する。
【0023】
一実施形態において、ガラスカバーは、保護受け溝又は他のバリアなしで電子デバイスの筐体の端まで延出してもよい。一実施形態において、ガラスカバーは、その縁部を取り囲む受け溝を含んでもよい。いずれの場合にも、縁部を特定の形状に整形し且つ/又は化学強化処理を実行することにより縁部の強度はより向上する。ガラスカバーは、液晶ディスプレイ(LCD)表示装置などのディスプレイを覆うように配置されるか又はディスプレイと一体に形成されてもよい。
【0024】
図1〜図13を参照して実施形態を以下に説明する。しかし、本発明は以下に示される限定された実施形態を超える範囲を有するので、これらの図面に関して以下に提示される詳細な説明は単なる例示を目的とするものであることが当業者には容易に理解されるだろう。
【0025】
図1Aは、一実施形態に係るガラス部材10を示す斜視図である。ガラス部材10は薄いガラスシートである。例えばガラスの厚さは、多くの用途で3mm以下である。ガラス部材10の長さ、幅又は面積は用途によって異なる。ガラス部材10の用途の1つは、ポータブル電子デバイス又はハンドヘルド電子デバイスなどの電子デバイスの筐体を覆うガラスカバーとしての使用である。図1Aに示されるように、ガラス部材10は、前面12、背面14、上面16、底面18及び側面20を含んでもよい。強度を向上するために、縁部又は側面(上下左右を含む)は所定の形状に従って整形される。縁部の所定の形状は、縁部におけるガラス部材10の強度を増加できる。ガラス部材10の表面は、更に化学的に強化処理されてもよい。所定の形状を使用することにより、縁部の化学強化処理を実行しやすくなる。ガラス部材10の化学強化処理は、例えば、イオン交換などによりガラス部材10と相互に作用可能である化学溶液の中にガラス部材10を浸漬することにより実行されてもよい。以下に説明するように、縁部は尖った角部を含むのではなく、滑らかに形状が変わるように(例えば、湾曲、丸形)規定されてもよい。一実施形態において、ガラス部材は、消費者向け電子デバイスと共に又は消費者向け電子デバイス用に提供されるガラス構造である。ガラス部材は消費者向け電子デバイスの外面又は内面に設けられてもよい。一般にガラス構造は、ガラス製の消費者向け電子デバイスのどの部分であってもよい。一実施形態において、ガラス構造は、消費者向け電子デバイスの筐体の少なくとも一部分(例えば、外面)である。
【0026】
図1Bは、一実施形態に係る電子デバイス100の簡略図である。例えば電子デバイス100は、薄いフォームファクタ(すなわち偏平(ロープロファイル))のポータブル電子デバイス又はハンドヘルド電子デバイスとして具体化されてもよい。例えば電子デバイス100は、ポータブルメディアプレーヤ、メディアストレージデバイス、ポータブルデジタルアシスタント(PDA)、タブレットPC、コンピュータ、移動通信装置(例えば、携帯電話、スマートフォン)、GPS装置及びリモートコントロール装置などに対応してもよい。電子デバイス100は消費者向け電子デバイスと呼ばれてもよい。
【0027】
電子デバイス100は、電子デバイス100の外面として機能する筐体102を含んでもよい。筐体102の内部に電気部品(図示せず)が配設される。電気部品は、コントローラ(又はプロセッサ)、メモリ、バッテリ及びディスプレイ(例えば、LCDディスプレイ)を含んでもよい。電子デバイス100の筐体102の内部に表示領域104が配設される。電子デバイス100は、電子デバイス100の前面のすべてでないとしても、その大半を占めるフルビュー表示領域104又はほぼフルビューの表示領域104を含むことができる。表示領域104は、種々の方法で具体化されてもよい。一実施例において、表示領域104は、フラットパネルディスプレイ、更に特定すればLCDディスプレイなどの少なくとも1つのディスプレイから構成される。更に電子デバイス100は、表示領域104を覆うように配置されたカバーガラス106を有する。カバーガラス106は、電子デバイス100の外面、すなわち電子デバイス100の上面として機能する。カバーガラス106を通して表示領域104を見ることができるように、カバーガラス106はクリア又は透明であってもよい。更にカバーガラス106は、耐引っ掻き特性を有するので、電子デバイス100の筐体102の上面には引っ掻き傷がほとんどできない。
【0028】
上記の構造の代わりに又はそれに加えて、表示領域104は、表示画面を覆うように配置された接触感知装置を含む。例えば表示領域104は、複数の容量性感知ポイントが分散配置された1つ以上のガラス層を含んでもよい。それらの構成要素の各々は、別の層であってもよいが、1つ以上のスタックに集積されてもよい。一実施形態において、カバーガラス106は、表示領域104の最も外側の層として機能してもよい。
【0029】
電子デバイス100のガラス部品はいずれも亀裂及び障害を生じやすい。例えば、電子デバイス100を落とした場合の湾曲及び損傷に対する強度の点で、カバーガラス106は電子デバイス100の弱点となりうる。そのため、例えば電子デバイス100を落とした場合に電子デバイス100が応力を受けると、カバーガラス106は損傷しやすい。一例として、カバーガラス106に対する応力は亀裂又は破損などの損傷を引き起こす可能性がある。製品を小型化し、従って、更に薄型にすることが求められ続ける現在、ガラスが薄くなることによって強度は更に低下するので、損傷の問題は更に重大になっている。
【0030】
更に図1Bに示されるように、カバーガラス106は筐体102の上面全体を覆っていてもよい。そのような場合、カバーガラス106の縁部は筐体102の側部と位置合わせされる。しかし、他の実施形態において、カバーガラス106が筐体102の所定の面の一部のみを覆っていればよい場合もある。いずれにしても、カバーガラス106が相当に薄い(すなわち、数mm未満である)ことを考えれば、損傷に対する感受性を低下させるためにカバーガラス106は強化されてもよい。
【0031】
第1に、カバーガラス106のガラス材料は、強度のより高い利用可能なガラスから選択されてもよい。例えば、カバーガラス106のガラス材料としてアルミノケイ酸塩ガラス(例えば、DVTS)は適切な選択肢である。ガラス材料の他の例はソーダ石灰及びホウケイ酸塩などであるが、それらに限定されない。
【0032】
第2に、ガラス材料は、例えば個別化及び/又は機械加工などの方法により適切な大きさに形成されてもよい。一例として、ガラス材料のシートを複数の個別のカバーガラス片に切断することが可能である。例えば、電子デバイス100の筐体102の上面に適合する適切な大きさにカバーガラス片を形成してもよい。
【0033】
一実施形態において、カバーガラス片の縁部は、特定の所定の形状に対応するように構成されてもよい。特定の所定の形状に対応するようにカバーガラスの縁部を整形(例えば機械加工)することにより、カバーガラス片の強度が向上し、損傷を受けにくくなる。カバーガラスの縁部に適する所定の形状(縁部形状としても既知である)の実施例を以下に説明する。一実施形態において、特定の所定の形状に対応するように縁部を整形(例えば機械加工)することにより、カバーガラス片の縁部の付近の表面下最大圧縮は減少するか又は排除される。一実施例において、縁部形状は、例えば第1の面と第1の面に対して垂直である第2の面との間の境界面のように、一方の面から他方の面へ滑らかに又は徐々に移行する形状を含む。この場合、尖った角部又は縁部の尖りを減少するように、角部又は縁部は湾曲形状又は他の滑らかな形状に形成されてもよい。
【0034】
第3に、更に強度を向上するためにカバーガラス片は化学処理されてもよい。適切な化学処理の1つは、アルカリ金属イオンを含有する高温の化学浴の中にカバーガラス片を所定の時間(例えば数時間)浸漬するという処理である。化学処理の結果、カバーガラス片の表面の圧縮応力が増加することが望ましい。形成されるべき圧縮層の深さは、使用されるガラスの特性及び特定の化学処理の種類によって異なる。例えば、いくつかの実施形態において、形成されるべき圧縮層の深さは、ソーダ石灰ガラスの場合の約10μmからアルミノケイ酸塩ガラスの場合の約50μmまでの範囲であってもよい。しかし、ガラスに適用される特定の化学処理に応じて圧縮層の深さが異なってもよいことを理解すべきである。
【0035】
カバーガラス片の表面はカバーガラス片の縁部を含む。圧縮応力の増加は、カバーガラスの表面又はその付近におけるイオン交換の結果であってもよい。
【0036】
ハンドヘルド電子デバイスなどの小さいフォームファクタのデバイスは、通常、種々の層を含む表示領域(例えば表示領域104)を含む。種々の層は少なくとも1つのディスプレイを含んでもよく、ディスプレイを覆うように配設された(又はディスプレイと一体に形成された)感知構成を更に含んでもよい。場合によっては、それらの層は互いに隣接するように積み重ねられてもよく、積層されることにより1つのユニットを形成してもよい。他の場合には、層のうち少なくともいくつかは空間的に分離され、直接隣接しない。例えば、感知構成とディスプレイとの間に間隙が形成されるように、感知構成はディスプレイの上方に配設されてもよい。一例として、ディスプレイは、液晶モジュール(LCM)を含む液晶ディスプレイ(LCD)を含んでもよい。一般にLCMは、間に液晶層を少なくとも部分的に挟む上部ガラスシート及び下部ガラスシートを少なくとも含む。感知構成は、タッチスクリーンを製造するために使用されるような接触感知構成であってもよい。例えば、容量性感知タッチスクリーンは、1枚のガラスシート(又はプラスチックシート)の全面に分散配置された複数の実質的に透明な感知ポイント又は感知ノードを含んでもよい。カバーガラスは表示領域の外側保護バリアとして機能してもよい。通常カバーガラスは、表示領域に隣接するが、別の層(外側保護層)として表示領域と更に一体に形成されてもよい。
【0037】
図2は、一実施形態に係るガラスカバー処理200を示すフローチャートである。ガラスカバー処理200は、例えば1つ以上のカバーガラス片を形成するために使用できる。ガラスカバー片は、例えば図1Bに示されるカバーガラス106として使用可能である。
【0038】
ガラスカバー処理200は、まずガラスシートを入手すること(202)を含んでもよい。ガラスシートは、例えばアルミノケイ酸塩ガラスである。次に、ガラスシートを個別のガラスカバーへと個別化する(204)ためにガラスシートは処理されてもよい。例えばガラスカバーは、図1Bに示される電子デバイス100等の消費者電子製品で使用される。一実施形態において、ガラスシートを個別のガラスカバーに個別化する(204)ために、ガラスシートは切断される(例えば、カッターの刃、水ジェット又はレーザーによって)。別の実施形態において、ガラスカバーは個別化工程を必要とせずに個別に形成されうる。
【0039】
次に、ガラスカバーの強度を向上するために、所定の形状を有するように個々のガラスカバーの縁部は加工されてもよい(206)。縁部の加工(206)により、縁部は所定の形状に対応する形状になる。例えば加工(206)は、機械加工、研削、切断、エッチング、スクライビング、成形、スランプ又は他の整形方法によってガラスカバーの縁部を所定の形状に整形する。縁部は更に研磨されてもよい。
【0040】
更に、個々のガラスカバーは化学処理により強化されてもよい(208)。一実施形態において、化学強化作用を発生するために、ガラスカバーは化学浴の中に浸漬されてもよい。この種の化学強化の場合、ガラスカバーの表面で、縁部を含む表面における圧縮応力を増加させるように作用するイオン交換過程が発生する。
【0041】
その後、ガラスカバーは、対応する消費者電子製品に装着されてもよい(210)。ガラスカバーは、対応する消費者電子製品の外面(例えば筐体の上面)を形成してもよい。装着(210)後、ガラスカバーの縁部は露出されてもよい。ガラスカバーの縁部は露出されてもよいが、縁部を更に保護することも可能である。一例として、消費者電子製品の筐体の外側部から(横方向又は縦方向に)ガラスカバーの縁部をずらして引っ込ませることも可能である。別の実施例として、カバーガラスの縁部の周囲に沿って又は縁部に隣接して配置された別の材料によりガラスカバーの縁部が保護されてもよい。ガラスカバーは、接着剤の使用、接合又は機械装置(例えば、スナップ、ねじなど)の使用を含む種々の方法で装着される(210)。いくつかの実施形態において、ガラスカバーは装着された表示モジュール(例えば、LCM)を有してもよい。ガラスカバーを消費者電子製品に装着した(210)後、ガラスカバー処理200は終了する。
【0042】
尚、ガラスカバーの縁部の加工(206)はガラスカバーのすべての縁部を加工(206)してもよいが、すべての縁部が加工(206)されなくてもよい。言い換えれば、特定の実施形態又は設計に応じて、ガラスカバーの縁部のうち1つ以上の縁部にのみ加工(206)が適用されてもよい。所定の縁部に関して、その縁部の全体又は一部が所定の形状に加工されてもよい。また、それぞれの縁部を異なる方法で加工(206)してもよい(すなわち、縁部はそれぞれ異なる形状を有してもよい)。更に、いくつかの縁部が所定の形状を有するのに対し、他の縁部は尖った形状のままであってもよい。加工(206)されるべき所定の縁部に沿って、複合曲線(例えばS字曲線)のように、所定の形状は変化してもよい。
【0043】
個別のガラスカバーを形成するためのガラスシートの個別化(204)が縁部の微小亀裂及び/又は応力を減少するように実行されることにより、全体的な強度は向上する。使用される個別化技術は様々であり、ガラスシートの厚さに依存してもよい。一実施形態において、ガラスシートは、レーザースクライビング処理を使用して個別化される。別の実施形態において、ガラスシートは、機械切断ホイールが使用されうる場合のように機械スクライビング技術を使用して個別化される。
【0044】
図3A〜図3Eは、種々の実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。横断面図は、電子デバイス筐体に配置されるべきガラスカバーとして使用可能なある特定の所定の縁部形状を示す。図示される縁部形状は単なる例であり、限定するものとして解釈されないことを理解すべきである。図示の便宜上、図3A〜図3Bに示される幅及び厚さは縮尺通りではない。
【0045】
図3Aは、縁部形状302を有するガラスカバー300を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性があることを理解すべきである。縁部形状302は、例えば約0.1mmの小さな湾曲(c)(又は縁部半径)を有してもよい。この場合、縁部形状302の縁部は、カバーガラスの厚さの10%の湾曲(又は縁部半径)となるように丸められる。
【0046】
図3Bは、縁部形状322を有するガラスカバー320を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性がある。縁部形状322は、例えば約0.2mmの湾曲(c)(又は縁部半径)を有してもよい。この場合、縁部形状322の縁部は、カバーガラスの厚さの20%の湾曲(又は縁部半径)となるように丸められる。
【0047】
図3Cは、縁部形状342を有するガラスカバー340を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性がある。縁部形状342は、例えば約0.3mmの中程度の湾曲(c)(又は縁部半径)を有してもよい。この場合、縁部形状342の縁部は、カバーガラスの厚さの30%の湾曲(又は縁部半径)となるように丸められる。
【0048】
図3Dは、縁部形状362を有するガラスカバー360を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性がある。縁部形状362は、例えば約0.4mmの大きな湾曲(c)(又は縁部半径(r))を有してもよい。この場合、縁部形状362の縁部は、カバーガラスの厚さの50%の湾曲(又は縁部半径)となるように丸められる。
【0049】
図3Eは、縁部形状382を有するガラスカバー380を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性があることを理解すべきである。縁部形状382は、例えば約0.5mmの完全湾曲(縁部半径(r))を有してもよい。この場合、縁部形状382の縁部は、カバーガラスの厚さの50%の湾曲(又は縁部半径)となるように丸められる。
【0050】
一般に、図3A〜図3Eに示される所定の縁部形状は、ガラスカバーの縁部に丸みを与えるのに有用である。ガラスカバーの縁部を尖った形状ではなく、丸みを帯びた形にすることにより、ガラスカバーの強度を向上できる。特に、尖った縁部を丸めることにより縁部の強度が向上するので、尖ったままではガラスカバーの損傷を起こしやすい領域になりかねない縁部を強化できる。縁部に至るまで表面全体にわたりガラスカバーの強度がほぼ均一になるように、縁部を強化できる。一般に、縁部半径が大きいほど、縁部強度が高くなることにより、ガラスカバーの面全体の強度もより均一になる。
【0051】
図3A〜図3Eに示される縁部の丸めに加えて、丸め以外の方法でガラスカバーの縁部が加工されてもよい。一例として、縁部形状は縁部を平坦にすることに関連してもよい。別の例として、縁部形状は複合形状であってもよい。複合形状の一例はスプライン曲線である。複合形状の別の例はS字曲線である。
【0052】
図4Aは、面取り縁部形状に関連する付加的な実施形態に係る電子デバイス筐体のガラスカバーを示す横断面図である。更に詳細には、図4Aは、縁部形状402を有するガラスカバー400を示す横断面図である。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmである。縁部形状402は平坦な縁部を有する。縁部形状402は実質的に面取り縁部である。面取り部分は、2つの側部又は面をほぼ結合する斜めの縁部である。一実施形態において、面取り縁部は約0.15mm〜約0.25mmの深さを有してもよい。一例として、縁部形状402は約0.15mmの面取り又は約0.25mmの面取りを含んでもよい。面取り縁部を形成することにより、ほぼ場所405で起こる圧縮応力はほぼ最小になる。ほぼ最小のフォンミーゼス応力の場所に相当する1つの場所は、場所407として示される。一実施形態において、場所407の中心は、縁部形状402と関連する角部から約10μmの位置にある。平坦な縁部を図3A〜図3Eに示される程度に更に丸められると、平坦な縁部(例えば場所405)を強化できる。
【0053】
図4Bは、直線状の角部(すなわち、尖った角部)を含む参考縁部形状422を有するガラスカバー420を示す横断面図である。この縁部形状は、図3A〜図3Eに示されるような所定の縁部形状に見られる強度向上を提供しない。ガラスカバーの厚さ(t)は約1.0mmであるが、厚さ(t)は変動する可能性がある。参考縁部形状422は直線状の角部、例えば約90°の角部である。参考縁部形状422を参照すると、ほぼ最小の圧縮応力が起こる場所は場所425である。ほぼ最小のフォンミーゼス応力の場所に相当する1つの場所は場所427として示される。一実施形態において、場所427の中心は、参考縁部形状422と関連する角部から約10μmの位置にある。図4A及び図4Bのほぼ最小フォンミーゼス応力の場所を比較すると、場所407は場所427より縁部から離れている。
【0054】
図5Aは、一実施形態に係る加工中の電子デバイス筐体500のガラスカバーを示す横断面図である。所定の縁部形状を有する外側縁部504を形成するために、電子デバイス筐体500の外周部に沿って移動するように加工用工具502を制御可能である。加工用工具502は、外側縁部504を加工するために使用される少なくとも1つの加工面506を含む。例えば加工面506は、外側縁部504を所定の縁部形状に研削又は切削してもよい。
【0055】
図5Aにおいて、電子デバイス筐体500は、スピーカ、マイク、ボタンなどを収納するための開口部508を更に含んでもよい。開口部508は、加工用工具512により整形可能な丸形面510を更に有してよい。所定の縁部形状を有する外側縁部504と同様に、丸形面510も強度を向上できる。加工用工具512は、丸形面510を加工するために使用される少なくとも1つの加工面514を含む。例えば加工面514は、所望の丸みを形成するために丸形面510を研削又は切削してもよい。加工用工具512は加工用工具502と同一であってもよいが、異なる加工用工具であってもよい。
【0056】
図5Bは、別の実施形態に係る加工中の電子デバイス筐体520のガラスカバーを示す横断面図である。所定の縁部形状を有する外側縁部524を形成するために、電子デバイス筐体520の外周部に沿って移動するように加工用工具522を制御可能である。加工用工具522は、外側縁部524を加工するために使用される少なくとも1つの加工面526を含む。加工面526は外側縁部524を所定の縁部形状に研削又は切削してもよい。
【0057】
先に述べたように、ハンドヘルド電子デバイスなどの電子デバイスの筐体の各部分の外面としてガラスカバーを使用できる。ハンドヘルド電子デバイスは、例えばメディアプレーヤ、電話、インターネットブラウザ、Eメール装置又は2つ以上のそのような装置の何らかの組み合わせとして機能してもよい。一般にハンドヘルド電子デバイスは、筐体及び表示領域を含む。図5A〜図5Dを参照すると、本発明の実施形態に従って、カバーガラス(又はガラス開口部)を有する種々のハンドヘルド電子デバイスが組み立てられてもよい。一例として、ハンドヘルド電子デバイスは、Cupertino,CAのApple社製造のiPhone(登録商標)又はiPod(登録商標)に対応してもよい。
【0058】
図6A及び図6Bは、一実施形態に係る電子デバイス600を示す概略図である。図6Aは電子デバイス600の平面図を示し、図6Bは基準線B‐B'に関する電子デバイス600の横断面側面図を示す。電子デバイス600は、上面としてガラスカバー窓604(ガラスカバー)を有する筐体602を含んでもよい。ガラスカバー窓604を通してディスプレイ構体606を見ることができるように、ガラスカバー窓604は主として透明である。例えばディスプレイ構体606は、ガラスカバー窓604に隣接して配置されてもよい。筐体602は、ディスプレイ構体の他に、例えばコントローラ(プロセッサ)、メモリ、通信回路網などの内部電気部品を更に含んでもよい。例えばディスプレイ構体606は、LCDモジュールを含んでもよい。一例として、ディスプレイ構体606は、液晶モジュール(LCM)を含む液晶ディスプレイ(LCD)を含んでもよい。一実施形態において、ガラスカバー窓604はLCMと一体に形成される。筐体602は、電子デバイス600に電子機能を提供するための内部電気部品を収容する開口部608を更に含んでもよい。一実施形態において、筐体602は、ガラスカバー窓604に対応する受け溝を含まなくてもよい。ガラスカバー窓604の縁部が筐体602の側部と位置合わせされる(又はほぼ位置合わせされる)ように、ガラスカバー窓604は筐体602の上面全体を覆っていてもよい。ガラスカバー窓604の縁部は露出したままであってもよい。ガラスカバー窓604の縁部は図6A及び図6Bに示されるように露出していてもよいが、別の実施形態において、縁部は更に保護されてもよい。一例として、ガラスカバー窓604の縁部を筐体602の外側部にから(横方向又は縦方向に)引っ込まされていてもよい。別の例として、ガラスカバー窓604の縁部の周囲に又はそれに隣接して配置された別の材料により、ガラスカバー窓604の縁部を保護することも可能である。
【0059】
ガラスカバー窓604は、一般に多様な方法で配置又は実現されてもよい。一例として、ガラスカバー窓604は、フラットパネルディスプレイ(例えばLCD)又はタッチスクリーンディスプレイ(例えば、LCD及び接触層)などのガラスカバー窓604の下方に位置するディスプレイ(例えば、ディスプレイ構体606)を覆うように配置された保護ガラス片として構成されてもよい。あるいは、ガラスカバー窓604は、ディスプレイと一体に形成されると効果的である。すなわち、ガラス窓はディスプレイの少なくとも一部であってもよい。更に、ガラスカバー窓604は、タッチスクリーンと関連する接触層などの接触感知装置と実質的に一体に形成されてもよい。場合によっては、ガラスカバー窓604はディスプレイの最も外側の層として機能してもよい。
【0060】
図7A及び図7Bは、本発明の別の実施形態に係る電子デバイス700を示す概略図である。図7Aは電子デバイス700の平面図を示し、図7Bは基準線B‐B'に関する電子デバイス700の横断面側面図である。電子デバイス700は、上面としてガラスガラスカバー窓704(ガラスカバー)を有する筐体702を含んでもよい。本実施形態において、ガラスカバー窓704は筐体702の側面703により保護されてもよい。この場合、ガラスカバー窓704は筐体702の上面全体を覆ってはいない。しかし、側面703の上面はガラスカバー窓704の外面に隣接し且つガラスカバー窓704の外面と縦方向に位置合わせされてもよい。強度を向上するためにガラスカバー窓704の縁部は丸められているので、側面703とガラスカバー窓704の周囲縁部との間に間隙705がある。ガラスカバー窓704は薄い(例えば、3mm未満)ので、通常、間隙705は通常非常に狭くなる。しかし、必要に応じて、間隙705は何らかの材料によって充填されてもよい。この材料は、プラスチック、ゴム、金属などであってもよい。ガラスカバー窓704の周囲縁部に近接する間隙705の部分も含めて電子デバイス700の前面全体を平坦にするように、材料は間隙705の形状に倣って充填されてもよい。間隙705を充填する材料は可撓性であってもよい。間隙705に配置される材料はガスケットを実現してもよい。間隙705を充填することにより、充填を実行しない場合に筐体702に形成されてしまう望ましくない間隙を充填又は密封でき、それにより、間隙705における汚染(例えば塵芥、水)を防止できる。側面703は筐体702と一体であってもよいが、側面703は筐体702とは別であってもよく、例えばガラスカバー窓704の受け溝として使用されてもよい。
【0061】
ガラスカバー窓704を通してディスプレイ構体706を見ることができるように、ガラスカバー窓704は主として透明である。ディスプレイ構体706は、例えばガラスカバー窓704に隣接して位置決めされてもよい。筐体702は、ディスプレイ構体の他に、コントローラ(プロセッサ)、メモリ、通信回路網などの内部電気部品を更に収納してもよい。例えばディスプレイ構体706は、LCDモジュールを含んでもよい。一例として、ディスプレイ構体706は、液晶モジュール(LCM)を含む液晶ディスプレイ(LCD)を含んでもよい。一実施形態において、ガラスカバー窓704はLCMと一体に形成される。筐体702は、電子デバイス700に電子機能を提供するための内部電気部品を収容する開口部708を更に含んでもよい。
【0062】
電子デバイス700の前面は、ユーザインタフェースコントロール708(例えば、クリックホイールコントロール)を更に含んでもよい。本実施形態において、ガラスカバー窓704は電子デバイス700の前面全体を覆ってはいない。電子デバイス700は、本質的に、前面の一部を覆う部分表示領域を含む。
【0063】
一般にガラスカバー窓704は、多様な方法で配置又は具体化されてもよい。一例として、ガラスカバー窓704は、フラットパネルディスプレイ(例えば、LCD)又はタッチスクリーンディスプレイ(例えば、LCD及び接触層)などのガラスカバー窓704の下方に位置するディスプレイ(例えば、ディスプレイ構体706)を覆うように位置決めされた保護ガラス片として構成されてもよい。あるいは、ガラスカバー窓704はディスプレイと一体に構成されると効果的である。すなわち、ガラス窓はディスプレイの少なくとも一部として形成されてもよい。更にガラスカバー窓704は、タッチスクリーンと関連する接触層などの接触感知装置と実質的に一体に形成されてもよい。場合によっては、ガラスカバー窓704は、ディスプレイの最も外側の層として機能してもよい。
【0064】
前述のように、電子デバイスは、ハンドヘルド電子デバイス又はポータブル電子デバイスであってもよい。本発明は、ガラスカバーを薄型にするだけでなく、適切な強度を提供できるようにするために使用されてもよい。ハンドヘルド電子デバイス及びポータブル電子デバイスは移動装置であるので、静止状態で使用される装置が受けないような種々の衝撃や応力を受ける可能性がある。従って、本発明は、薄型設計のハンドヘルド電子デバイス又はポータブル電子デバイスのガラス表面の実現に非常に適している。
【0065】
強化ガラス、例えばガラスカバー又はガラスカバー窓は、薄いガラスが適用される用途で特に有用である。例えば、強化されるべきガラスカバーの厚さは約0.5〜2.5mmである。他の実施形態において、強化処理は、厚さが約2mm未満、更に約1mm未満、更には約0.6mm未満であるようなガラス製品に適する。
【0066】
ガラス、例えばガラスカバー又はガラスカバー窓を強化する技術は、ガラスの縁部の角部に適用される厚さの少なくとも10%の所定の湾曲(又は縁部半径)を有する所定の縁部形状に従って丸められたガラスの縁部に対して特に有用である。他の実施形態において、所定の湾曲はガラスの厚さの20%〜50%であってもよい。所定の湾曲が50%である形状は連続する湾曲であると考えることもでき、その一例を図3Eに示す。あるいは、強化終了後、縁部を含むガラスが全面にわたりほぼ均一な強度を有するものと、強化ガラス、例えばガラスカバー又はガラスカバー窓は特徴付けられうる。例えば、一実施形態において、ガラスの縁部における強度低下は、縁部ではない他の部分におけるガラスの強度の10%以下である。別の例として、別の実施形態において、ガラスの縁部における強度低下は、縁部ではない他の部分におけるガラスの強度の5%以下である。
【0067】
一実施形態において、ガラスカバーの大きさは、関連する電子デバイスの大きさに依存する。例えば、ハンドヘルド電子デバイスの場合、ガラスカバーの大きさは対角線寸法で5インチ(約12.7cm)以下であることが多い。別の例として、小型ポータブルコンピュータ又はタブレットコンピュータなどのポータブル電子デバイスの場合、ガラスカバーの大きさは、対角線寸法で4インチ(約10.2cm)〜12インチ(約30.5cm)であることが多い。更に別の例として、フルサイズポータブルコンピュータ、ディスプレイ又はモニタなどのポータブル電子デバイスの場合、ガラスカバーの大きさは対角線寸法で10インチ(約25.4cm)〜20インチ(約50.8cm)又はそれを超える大きさであることが多い。
【0068】
しかし、画面の大きさが大きいほど、ガラス層を更に厚くしなければならないことを理解すべきである。より大きなガラス層の平坦度を維持するために、ガラス層の厚さを増す必要がある。大画面であってもディスプレイは相対的に薄いままであるが、画面が大きくなるほど最小厚さは大きくなる。例えばガラスカバーの最小厚さは、小型ハンドヘルド電子デバイスの場合に約0.4mmに相当し、小型ポータブルコンピュータ又はタブレットコンピュータの場合に約0.6mmに相当し、フルサイズポータブルコンピュータ、ディスプレイ又はモニタの場合に約1.0mm以上に相当してもよく、この場合も画面の大きさによって決まる。ガラスカバーの厚さは、電子デバイスの用途及び/又は大きさに依存する。
【0069】
前述のように、ガラスの表面が効果的に強化されるように、ガラスカバー、更に一般的にガラス片は化学処理されてもよい。化学強化処理によって、薄いガラス片を消費者向け電子デバイスと共に使用できる程度までガラス片の強度を向上できる。十分な強度を有する薄いガラスにより、消費者向け電子デバイスは更に薄型になる。
【0070】
図8は、一実施形態に係るガラス片の表面を化学処理する処理800を示す。ガラス片の表面、例えば縁部を化学処理する処理800は、ガラス片を入手するステップ802から始まってもよい。一実施形態において、ガラスシートを複数個のガラス片、例えばガラスカバーに個別化し且つガラス片の縁部を所定の形状に加工した後にガラス片は入手されてもよい。しかし、化学処理されるべきガラス片はあらゆる適切な供給元から入手されてもよいことを理解すべきである。
【0071】
ステップ804において、ガラス片はラックに載置されてもよい。通常、ラックは、化学処理中にそのガラス片及び他のガラス片を支持するように構成される。ガラス片がラックに載置された後、ステップ806において、ラックは加熱イオン浴の中に浸漬されてもよい。加熱イオン浴は、一般に、ある濃度のイオン(例えば、リチウム、セシウム又はカリウムなどのアルカリ金属イオン)を含む浴であってもよい。浴中のイオンの濃度を変化させることによりガラスの表面に加わる圧縮応力を調整できるので、イオン濃度を変化させてもよいことを理解すべきである。イオン交換を容易にするために、加熱イオン浴はいずれかの適切な温度まで加熱されてもよい。
【0072】
ラックが加熱イオン浴の中に浸漬された後、ステップ808において、イオン浴とラックに保持されたガラス片との間でイオン交換が起こる。一般にNaイオンを含むガラス片とイオン浴との間で拡散交換が起こる。拡散交換中、Naイオンより大きいアルカリ金属イオンは、ガラス片の中のNaイオンと効果的に交換される。一般に、ガラス片の表面領域付近のNaイオンはアルカリイオンと交換されるかもしれないが、表面領域以外のガラスの部分ではNaイオンはアルカリイオンとほとんど交換されない。ガラス片中のNaイオンとアルカリイオンが交換されることによって、ガラス片の表面付近に圧縮層が有効に形成される。アルカリ金属イオンによりガラス片から放出されたNaイオンは、イオン溶液の一部になる。
【0073】
ステップ810において、加熱イオン浴にラックを浸漬する時間が終了したかに関して判定が実行されてもよい。ラックを浸漬する時間の長さは実現例によって大きく異なってもよいことを理解すべきである。通常、ラックを浸漬する時間が長いほど、すなわち、アルカリ金属イオンとNaイオンとの交換時間が長いほど、化学強化層の深さは増す。例えば、1mm程度の厚さのガラスシートの場合、イオン浴中で実行される化学処理(すなわち、イオン交換)は、ガラス片の表面から10μm以上の深さまで達してもよい。例えば、ガラス片がソーダ石灰ガラスから形成されている場合、イオン交換による圧縮層の深さは約10μmであってもよい。別の例として、ガラス片がアルミノケイ酸塩ガラスから形成されている場合、イオン交換による圧縮層の深さは約50μmであってもよい。
【0074】
ステップ810において、加熱イオン浴にラックを浸漬する時間がまだ終了していないと判定された場合、処理800の流れはステップ817に戻り、イオン浴とガラス片との間の化学反応を続行させる。これに対し、浸漬時間が終了したと判定された場合、ステップ812において、ラックはイオン浴から取り出されてもよい。イオン浴からラックを取り出した後、ステップ814において、ラックからガラス片が取り外されてもよく、ここでガラス片の表面を化学処理する処理800は終了してもよい。しかし、必要に応じてガラス片は研磨されてもよい。例えば、化学処理後にガラス片に残留している異物を研磨によりすべて除去できる。
【0075】
化学強化処理を受けた後のガラスカバーは、前述のように一般に化学強化層を含む。図9Aは、一実施形態に従って化学強化層が形成されるように化学処理されたガラスカバーを示す横断面図である。ガラスカバー900は、化学強化層928及び非化学強化部分926を含む。一実施形態において、ガラスカバー900全体が化学処理を受けるが、強化を受けるのは外表面である。強化は、非化学強化部分926が引っ張り状態にあるのに対して、化学強化層928は圧縮状態にあるという効果をもたらす。ガラスカバー900は、丸められた縁部形状902を有するものとして示されるが、一般にガラスカバー900は、ガラスカバー900の縁部の強度を向上するために選択された形状のような何らかの縁部形状を有してもよいことを理解すべきである。丸められた縁部形状902は一例として示され、限定することを目的としない。
【0076】
化学強化層928の厚さ(y)は、ガラスカバー900が利用されるべき特定のシステムの条件に応じて変更されてもよい。一般に非化学強化部分926は、Naイオン934を含むが、アルカリ金属イオン936を含まない。化学強化処理により、化学強化層928は、化学強化層928がNaイオン934及びアルカリ金属イオン936の双方を含むように形成される。一実施形態において、化学強化層928は、Naイオン934及びアルカリ金属イオン936の双方を含む化学強化層928の内側部分より、化学強化層928の外側部分が相当に多くのNaイオン934を含むような層であってもよい。
【0077】
図10は、一実施形態に従ってガラスカバーをイオン浴の中に浸漬することを含む化学処理を示す概略図である。一部が横断面で示されているガラスカバー1000が加熱イオン浴1032の中に浸漬されると、拡散が起こる。図示されるように、ガラスカバー1000の中に存在するアルカリイオン金属1034はイオン浴1032の中へ拡散し、イオン浴1032の中のアルカリ金属イオン1036(例えばカリウム(K))はガラスカバー1000の中へ拡散する。その結果、化学強化層1028が形成される。言い換えれば、イオン浴1032からのアルカリ金属イオン1036はNaイオン1034と交換され、化学強化層1028を形成できる。通常、アルカリ金属イオン1036は、ガラスカバー1000の中心部分1026までは拡散しないと考えられる。化学強化処理の持続時間(すなわち、時間)、温度及び/又はイオン浴1032中のアルカリ金属イオン1036の濃度を調整することにより、化学強化層1028の厚さ(y)が実質的に調整されてもよい。
【0078】
ガラスカバーがイオン浴に浸漬されている間に、イオン浴中のアルカリ金属イオンの濃度は変更されてもよい。言い換えれば、ガラスカバーがイオン浴に浸漬されている間、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなくイオン浴中のアルカリ金属イオンの濃度はほぼ一定に維持されてもよく、増加されてもよく且つ/又は減少されてもよい。例えば、アルカリ金属イオンがガラス中のNaイオンと交換されるにつれて、Naイオンはイオン浴の一部になる。従って、イオン浴にアルカリ金属イオンが更に追加されなければ、イオン浴中のアルカリ金属イオンの濃度は変化する。
【0079】
図11は、一実施形態に係るガラスの表面における応力減少を示す例示的なグラフ1100である。この場合、ガラスは、ある特定の形状の縁部を有し、強度を向上するために化学処理(すなわち、化学強化処理)される。グラフ1100の縦軸は表面応力の減少を示し、横軸は半径/厚さ(R/T)を示す。本実施例において、化学強化による層の深さ(DOL)は、約1mmの厚さのガラスについて55μmである。グラフ1100は、複数の異なる縁部半径に対する圧縮応力減少の実験データを示す。縁部半径が大きいほど、ガラスの縁部の強度は高くなる。言い換えれば、縁部が尖っているほど、縁部における圧縮応力の減少は大きくなる。すなわち、尖った縁部では化学強化の効果は著しく低減する。従って、縁部を丸めることにより、縁部を含むガラスの面全体で化学強化処理はより均一に効果をあらわすことになる。
【0080】
ガラス部材の縁部における圧縮応力は、ガラス部材の強度を向上するため望ましい。図12A〜図12Dは、ガラス部材の縁部に近接する場所における圧縮応力プロファイルを示す例示的な図である。これらの図は、縁部領域の圧縮応力を変化させるために種々の縁部プロファイルを使用できることを示す。
【0081】
図12Aは、一実施形態に係る尖った縁部プロファイル(例えば、直角の縁部)の場合の圧縮応力と距離との関係を示すグラフである。示される圧縮応力は、角部におけるガラス部材の上面に関する値である。図12Aに示される距離は、角部から内側に向かう距離である。圧縮応力はガラス部材の角部で最小である。角部における圧縮応力減少は約22%である。
【0082】
図12Bは、一実施形態に係る面取り縁部プロファイル(例えば、面取りされた縁部)の場合の圧縮応力と距離との関係を示すグラフである。示される圧縮応力は、角部から内側へ0.15mm面取りされた角部におけるガラス部材の上面に関する値である。図12Bに示される距離は、側部から内側に向かう距離である。圧縮応力は面取り部分の角部で最小である。面取り部分の角部における圧縮応力減少は約16%であり、これは側部から内側へほぼ15mmの距離である。
【0083】
図12Cは、一実施形態に係る丸形縁部プロファイル(例えば、丸められた縁部)の場合の圧縮応力と距離との関係を示すグラフである。示される圧縮応力は、ガラス部材の厚さ(t)の約25%である縁部半径(r)で丸められた角部におけるガラス部材の上面に関する値である。図12Cに示される距離は、側部から内側に向かう距離である。圧縮応力は、丸められた角部及び対応する側部からの移行部分の角部から内側において最小である。移行部分における圧縮応力減少は約4%である。
【0084】
図12Dは、一実施形態に係る丸形縁部プロファイル(例えば、丸められた縁部)の場合の圧縮応力と距離との関係を示すグラフである。示される圧縮応力は、ガラス部材の厚さ(t)の約50%である縁部半径(r)で丸められた角部におけるガラス部材の上面に関する値である。図12Dに示される距離は、側部から内側に向かう距離である。圧縮応力は、丸められた角部及び対応する側部からの移行部分の角部から内側において最小である。移行部分における圧縮応力減少は約2%である。
【0085】
図12C及び図12Dに示される丸形縁部の圧縮応力減少の量は、図12Aの直角の縁部又は図12Bの面取り縁部の場合と比べて著しく少ない。しかし、図12Bの面取り縁部は、図12Aの直角縁部と比較して向上している。更に、丸形縁部(図12C及び図12D)における圧縮強度は、直角縁部(図12A)又は面取り縁部(図12B)の圧縮応力より高い。従って、ガラス部材の縁部を丸めることにより、縁部における圧縮応力減少は著しく減少され、ガラス部材の強度は全体的に向上する。尚、丸形縁部の場合、ガラス部材の表面全体の圧縮応力プロファイルは、他の形状と比べてガラス部材の表面に沿って非常により均一になる(図12C及び図12Dを参照)。
【0086】
ガラス部材の強度(又は全体強度)は、測定可能な曲げ強さであってもよい。例えば、ASTM Standard C158‐02:Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure(湾曲によるガラス強度の標準試験法)に従って4点曲げ試験(four−point bending test)が実施されてもよい。図13は、4つの異なる縁部プロファイルを有するガラス部材の曲げ強さを示す例示的な図である。これらの縁部プロファイルは、図12A〜図12Dに示された例示的なプロファイルと同一である。この図は、種々の縁部プロファイルが圧縮応力と同様に曲げ強さにも影響が及ぶことを示す。すなわち、丸形縁部は、直角縁部(図12A)又は面取り縁部(図12B)より大きい曲げ強さを有する。
【0087】
尚、縁部プロファイルが異なれば、整形時に発生する傷の縁部からの深さも異なる。多くの傷は、湾曲部分とまっすぐな面との間などの移行部分に現れる。例えば研磨などによって縁部の仕上げをより滑らかに(すなわち、表面の凹凸が少なく)整形された縁部プロファイルでは、傷を小さくすることができる。
【0088】
本明細書において説明される技術はガラスの縁部の強度を相当に向上することができ、ガラスが薄くなるほど、強度の向上は特に重要である。例えば、縁部を所定の形状で丸形に整形することにより、ガラスの縁部の強度は相当に向上する。縁部の所定の形状に著しく大きな湾曲(例えば、ガラスの厚さの少なくとも20%)を加えられると、ガラスの他の面と同様に縁部も強化できるので、提供される化学強化処理は、更に均一になる。一例として、図3Eに示される丸形縁部を有する所定の形状を使用した場合、本明細書において規定される強化処理を実行することにより、例えば相当に強度の高いガラス縁部を得ることができる。例えば、完全湾曲(例えば図3E)で形成された縁部の所定の形状を有するガラスの強度の向上は、湾曲をほぼ含まない縁部、すなわち直角の縁部(例えば図4B)より20%程度大きくなる。
【0089】
本明細書において説明される技術は、ハンドヘルド電子デバイス、ポータブル電子デバイス及びほぼ静止状態で使用される電子デバイスを含む多様な電子デバイスのいずれにも使用されるガラス面に適用されてもよい。なお、電子デバイスはここで挙げた装置に限定されない。電子デバイスの例は、ディスプレイを含むあらゆる既知の消費者向け電子デバイスを含む。一例として、電子デバイスは、メディアプレーヤ、移動電話(例えば、携帯電話)、PDA、リモートコントロール、ノートブック、タブレットPC、モニタ及びオールインワンコンピュータなどに対応してもよいが、それらに限定されない。
【0090】
本発明は、(I)本明細書に参照として組み込まれる、2008年8月16日に出願された米国特許出願第12/193,001号「METHODS AND SYSTEMS FOR STRENGTHENING LCD MODULES(LCDモジュールを強化する方法及びシステム)」及び(II)本明細書に参照として組み込まれる、2008年7月11日に出願された米国特許出願第12/172,073号「METHODS AND SYSTEMS FOR INTEGRALLY TRAPPING A GLASS IN A METAL BEZEL(ガラスを金属受け溝に一体的に止める方法及びシステム)」を更に参照する。
【0091】
上述された本発明の種々の態様、特徴、実施形態又は実現例は単独で使用されてもよく、あるいは種々の組み合わせで使用されてもよい。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態のみを説明したが、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明が他の多くの特定の形態で実現されてもよいことを理解すべきである。一例として、本発明の方法と関連するステップは広範囲に変更されてもよい。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、ステップの追加、省略、変更、組み合わせ及び置き換えが行われてもよい。同様に、動作が図面に特定の順序で示されているが、これは、所望の結果を達成するために、そのような動作が図示される特定の順序で又は順次実行されなければならない、あるいは図示されるすべての動作が実行されなければならないと理解されるべきではない。
【0093】
本明細書は多くの特定の事項を含むが、それらの事項は開示内容又は特許請求される内容の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、開示される特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別々の実施形態の説明に関連して記載されるある特定の特徴が組み合わせて更に実現されてもよい。逆に、1つの実施形態の説明に関連して記載される種々の特徴が複数の実施形態において別個に実現されてもよく、あるいはそれらの特徴の一部が何らかの適切な組み合わせで実現されてもよい。更に、特徴はある特定の組み合わせで動作するものとして上述されたかもしれないが、特許請求された組み合わせのうちの1つ以上の特徴が、いくつかの場合にはこの組み合わせから削除されてもよく、また、特許請求される組み合わせが一部組み合わせ又は一部組み合わせの変形に向けられていてもよい。
【0094】
本発明をいくつかの実施形態に関連して説明したが、本発明の範囲内に含まれる変更、置き換え及び均等物が存在する。尚、本発明の方法及び装置を実現する方法は他にも多くある。従って、以下の添付の請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内のそのような変更、置き換え及び均等物のすべてを含むものとして解釈されることを意図する。
【0095】
他出願へのクロスリファレンス
本願は、2009年3月2日に提出された「可搬電子デバイスのガラスカバーを強化する技術(Techniques for Strengthening Glass Covers for Portable Electronic Devices)」と題する米国特許仮出願第61/156803号への優先権を主張し、この米国特許仮出願の全体が参照により本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面、背面、及び側面を有する筐体と、
少なくとも部分的に前記筐体の内部に備えられた、コントローラとメモリとディスプレイとを少なくとも含む電気部品と、
前記ディスプレイを覆うように、前記筐体の前記前面に又は前記前面を覆って備えられたカバーガラスと、を備え、
前記ディスプレイは前記筐体の前記前面に備えられ又は前記前面に隣接して備えられ、
前記カバーガラスは、前記ガラスカバーの縁部を所定の縁部形状に対応させること、及び前記ガラスカバーの前記縁部を化学処理することによって、強化されている
ことを特徴とする消費者電子製品。
【請求項2】
前記カバーガラスの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記カバーガラスの少なくとも複数の前記縁部が少なくとも0.1mmの縁部半径を有することを確保する
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カバーガラスの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記カバーガラスの少なくとも複数の前記縁部が少なくとも0.2mmの縁部半径を有することを確保する
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カバーガラスの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記カバーガラスの前記縁部の角部に適用された前記厚さの少なくとも20%の所定の湾曲を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項5】
前記カバーガラスの前記化学強化によって生じる圧縮層の深さが少なくとも10μmであることを特徴とする、請求項4に記載の消費者電子製品。
【請求項6】
前記カバーガラスは、前記筐体の前記前面の少なくとも一部を通って、前記前面と1以上の前記側面との間の1以上の縁部へと延びていることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項7】
前記消費者電子製品が、1以上の前記縁部において前記カバーガラスのためのへり又は受け溝を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項8】
前記ガラスのシートがアルミノケイ酸塩ガラスであるであることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項9】
前記ディスプレイが接触感知ディスプレイであることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項10】
前記消費者電子製品がハンドヘルド電子デバイスであることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項11】
前記ディスプレイが液晶ディスプレイ(LCD)であることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項12】
前記カバーガラスの厚さが2mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の消費者電子製品。
【請求項13】
ハンドヘルド電子デバイスの筐体に取り付けるのに適したカバーガラス部材であって、
前記カバーガラス部材は、
それぞれが消費者電子製品の露出する表面に備えられるように適切な大きさとされており、それぞれが縁部と少なくとも1つの縁部ではない部分とを含む、複数のカバーガラス部材を形成し、
前記カバーガラス部材のそれぞれの縁部を、前記ガラスカバーを強化するように選択された所定の縁部形状に対応するように処理し、及び
前記カバーガラス部材のそれぞれの少なくとも前記縁部を化学処理する
処理によって製造及び強化されており、
前記カバーガラス部材のそれぞれの少なくとも前記縁部を化学処理することには、少なくとも前記縁部の組成が前記少なくとも1つの縁部ではない部分の組成とは異なるように、少なくとも前記縁部の組成を変化させることを含む
ことを特徴とする、カバーガラス部材。
【請求項14】
前記カバーガラスの厚さが1mm以下であることを特徴とする、請求項13に記載のカバーガラス部材。
【請求項15】
前記化学処理の後で、前記カバーガラス部材のそれぞれが、前記縁部を含む前記カバーガラス部材の前記表面にわたって実質的に一様である強度を有することを特徴とする、請求項13に記載のカバーガラス部材。
【請求項16】
前記ガラスカバー部材の前記縁部における強度低下が10%を超えないことを特徴とする、請求項15に記載のカバーガラス部材。
【請求項17】
前記カバーガラス部材のそれぞれの少なくとも前記縁部の化学強化には、前記カバーガラス部材のそれぞれの少なくとも前記縁部にある第1タイプの複数のイオンを、第2タイプの複数のイオンで置き換えることを含むことを特徴とする、請求項13に記載のカバーガラス部材。
【請求項18】
消費者電子製品の露出する表面のガラスカバーを製造する方法であって、
ガラスのシートを得る工程と、
前記ガラスのシートを、それぞれが前記消費者電子製品の前記露出する表面に備えられるように適切な大きさとされている、複数のガラスカバーへと個別化する工程と、
前記ガラスカバーのそれぞれの縁部を、前記ガラスカバーを強化するように選択された所定の縁部形状に対応するように処理する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記個別化する工程は、前記ガラスのシートを前記複数のガラスカバーへと切断する工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラスのシートの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記ガラスカバーの少なくとも複数の前記縁部が少なくとも0.1mmの縁部半径を有することを確保する
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ガラスのシートの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記ガラスカバーの少なくとも複数の前記縁部が少なくとも0.2mmの縁部半径を有することを確保する
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ガラスのシートの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記ガラスカバーの前記縁部の角部に適用された前記厚さの少なくとも20%の所定の湾曲を有する
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記処理する工程は、前記所定の縁部形状に対応するように、前記ガラスカバーのそれぞれの前記縁部を丸める工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記処理する工程は、前記所定の縁部形状に対応するように、前記ガラスカバーのそれぞれの前記縁部を磨く工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
その後に前記ガラスカバーを化学的に強化する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記ガラスカバーを化学的に強化する前記工程によって生じる圧縮層の深さが少なくとも10μmであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ガラスカバーを化学的に強化する前記工程が、
イオン溶液の少なくとも1つの成分が前記ガラスカバーへと拡散するように、前記ガラスカバーをある期間前記イオン溶液に配置する工程
を含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法がさらに、その後前記ガラスカバーのそれぞれを前記消費者電子製品のうちの対応する1つに取り付ける工程を含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ガラスカバーが前記対応する消費者電子製品に取り付けられた後に、前記ガラスカバーの少なくとも1つの前記縁部が露出されたままであることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ガラスカバーが消費者電子製品のうちの前記対応する1つに取り付けられた後に、前記ガラスカバーの前記縁部が露出されたままであり、
前記方法は、前記カバーガラスの前記少なくとも1つの前記縁部の周りにへり又は受け溝を結合させないことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記所定の縁部形状は、前記ガラスカバーの前記縁部の角部に適用される所定の湾曲を有することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前面、背面、及び側面を有する筐体と、
少なくとも部分的に前記筐体の内部に備えられた、コントローラとメモリとディスプレイとを少なくとも含む電気部品と、
前記ディスプレイを覆うように、前記筐体の前記前面に又は前記前面を覆って備えられたカバーガラスと、を備え、
前記ディスプレイは前記筐体の前記前面に備えられ又は前記前面に隣接して備えられ、
前記カバーガラスは、前記ガラスカバーの縁部を所定の縁部形状に対応させること、及び前記ガラスカバーの前記縁部を化学処理することによって、強化されており、
前記ガラスカバーの前記縁部を前記化学処理した後で、前記カバーガラスが、前記縁部を含む前記カバーガラスの表面にわたって実質的に一様な強度を有する
ことを特徴とする、可搬電子デバイス。
【請求項33】
前記カバーガラスの厚さはおおよそ0.5mmから2.5mmの間にあり、
前記所定の縁部形状は、前記カバーガラスの少なくとも複数の前記縁部が少なくとも0.2mmの縁部半径を有することを確保する
ことを特徴とする、請求項32に記載の可搬電子デバイス。
【請求項34】
前記ガラスカバーの前記縁部ではない部分の強度からの、前記ガラスカバーの前記縁部における低下が10%を超えないことを特徴とする、請求項32に記載の可搬電子デバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−519344(P2012−519344A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553057(P2011−553057)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/025979
【国際公開番号】WO2010/101961
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】