説明

マイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル、光学シート及び表皮材

【課題】溶媒中での分散性に優れるとともに、優れた弾力性を有するマイクロカプセルの製造方法を提供する。また、該マイクロカプセルの製造方法によって製造されるマイクロカプセル、塗膜形成用樹脂組成物、塗膜、光学シート及び表皮材を提供する。
【解決手段】単孔構造を有するシェルに、コア剤が内包されたマイクロカプセルを製造する方法であって、非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程及び前記モノマー溶液中のモノマーを重合させる工程を有し、前記モノマー溶液は、全モノマー成分に対して、三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有するマイクロカプセルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒中での分散性に優れるとともに、優れた弾力性を有するマイクロカプセルの製造方法に関する。また、本発明は、該マイクロカプセルの製造方法によって製造されるマイクロカプセル、塗膜形成用樹脂組成物、塗膜、光学シート及び表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子内部に空隙を有する中空粒子は、軽量化、造孔化、断熱性付与、遮音性付与、低誘電性、耐衝撃性付与、剛性改善、風合改良、ひけ防止、塗り性等を改善する目的で射出成形物、押し出し成形物、中空成形物、フィルム成形物等の各種成形体、壁紙、塗料、シーリング剤、粘着剤、靴底、合成皮革、タイヤ、紙、セメント、タイル、建材、人工木材、FRP、多孔質セラミックフィルタ等の極めて広範な分野で利用されている。
【0003】
こうした中空粒子としては、従来、ガラスバルーン、シラスバルーン等の無機マイクロバルーン、特許文献1に記載されているようなニトリル系ポリマーや塩化ビニリデン等のガスバリア性を有する熱可塑性ポリマーを主成分とする発泡樹脂微粒子や、特許文献2に記載の熱可塑性中空樹脂粒子等が知られている。
【0004】
また、シート状成形体等の基材に更に多孔質性の塗膜を形成する場合や、壁紙等のシート状成形体同士を貼り合わせる場合にも、中空粒子が用いられている。具体的には、水系媒体中に液体含浸性のない中空粒子を分散させたスラリーを調製した後、該スラリーを基材に塗工し、水系媒体を乾燥させる方法が知られており、このような方法を用いた場合、基材に断熱性やクッション性等の性能を付与することが可能となる。
【0005】
しかしながら、このような方法では、塗工時に中空粒子がスラリー中で浮遊することによって、中空粒子の分散性が損なわれることから、得られる塗膜に空孔の多い部分や少ない部分が形成され、塗膜の空孔が不均一になるという問題があった。
【0006】
これに対して、スラリー中での粒子の分散性を維持するため、加熱膨張前の発泡樹脂粒子を分散させたスラリーを塗工後に、乾燥、加熱発泡させて多孔質性の塗膜を形成させる方法も提案されているが、粒子の発泡により塗膜の表面平滑性が悪化し、意匠性の悪いシートしか得られないという問題があった。
【0007】
更に、中空粒子の代りに、乾燥工程において除去することが可能な液体を内包させた液体内包型マイクロカプセルを用いる方法が検討されている。
しかしながら、例えば特許文献3に記載の蓄熱粒子を用いた場合、乾燥工程において完全に内包液体を除去することができないなど、従来の液体内包型マイクロカプセルを用いた場合、スラリー中での分散性、乾燥工程後に得られる塗膜の空孔状態、及び、表面の平滑性の何れかが不充分であり、上述した各種の用途に、好適に使用できないものであった。
【0008】
また、特許文献4には、シェルが架橋性モノマーの重合体からなる中空高分子微粒子が記載されている。しかしながら、このような中空高分子微粒子は、空隙率は大きいものの、シェルの架橋度が高すぎるために剛性が高くなりすぎ、つぶれや変形が生じやすいものとなっていた。従って、得られた中空高分子微粒子を用いて各種成形体や塗膜等を製造する場合、所望の剛性改善効果、柔軟性等を充分に実現するには至っていなかった。
【特許文献1】特開平5−285376号公報
【特許文献2】特開2001−213727号公報
【特許文献3】特開平5−237368号公報
【特許文献4】特許第3600845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑み、溶媒中での分散性に優れるとともに、優れた弾力性を有するマイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該マイクロカプセルの製造方法によって製造されるマイクロカプセル、塗膜形成用樹脂組成物、塗膜、光学シート及び表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、単孔構造を有するシェルに、コア剤が内包されたマイクロカプセルを製造する方法であって、非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程及び前記モノマー溶液中のモノマーを重合させる工程を有し、前記モノマー溶液は、全モノマー成分に対して、三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有するマイクロカプセルの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、まず、非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程を行う。
上記非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する方法としては、例えば、上記非重合性物質を上記モノマー溶液中に添加して攪拌することにより、上記モノマー溶液中に上記非重合性物質からなる液滴が分散した一次乳化液を調製し、次いで、得られた一次乳化液を、上記モノマー溶液と不溶な溶液中に添加して攪拌することにより、上記モノマー溶液と不溶な溶液中に、上記非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した二次乳化液(いわゆる、W/O/W型エマルジョン)を調製する方法が挙げられる。
【0012】
上記モノマー溶液は、全モノマー成分に対して、三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有する。上記三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有することにより、適度に架橋されたシェルを形成することができ、その結果、優れた弾力性を有するマイクロカプセルを製造することができる。
上記三官能以上の架橋性モノマーの添加量が全モノマー成分に対して55重量%未満であると、得られるマイクロカプセルのシェルの架橋が不充分となり、強度が不充分となるため、単孔構造のシェルを有するマイクロカプセルを作製できない。また、加熱等を行った場合に、つぶれやへたりが生じたり、揮発したコア剤により粒子が熱膨張を起こしてしまう。上記三官能以上の架橋性モノマーの添加量が全モノマー成分に対して90重量%を超えると、シェルの架橋が進みすぎ、得られるマイクロカプセルの弾力性が損なわれ、つぶれやすくなる。
上記三官能以上の架橋性モノマーの添加量は、全モノマー成分に対して、好ましい下限は60重量%、好ましい上限は88重量%である。
【0013】
上記三官能以上の架橋性モノマーとしては、例えば、三つ以上の重合性不飽和結合を有する架橋性モノマーが挙げられる。上記三つ以上の重合性不飽和結合を有する架橋性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
これら三官能以上の架橋性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記モノマー溶液は、上記三官能以上の架橋性モノマーのほか、単官能性モノマー、二官能性モノマー等の重合性モノマーを含有することが好ましい。
【0015】
上記単官能性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸及びマレイン酸等の重合性不飽和結合を有するカルボン酸、カルボン酸エステル及びカルボン酸塩や、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びスチレンスルホン酸等の重合性不飽和結合を有するスルホン酸、スルホン酸エステル及びスルホン酸塩や、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これら単官能性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0016】
上記二官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0017】
上記非重合性物質としては、上記三官能以上の架橋性モノマーと上記重合性モノマーとの反応温度において液状であり、重合反応によって重合せず、かつ、加熱等により容易に蒸散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、水、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、オクタノール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、アニリン、2−ピロリドン、水等が挙げられる。
【0018】
上記非重合性物質の添加量は、上記モノマー溶液100重量部に対して好ましい下限が100重量部、好ましい上限が1900重量部である。上記非重合性物質の添加量が100重量部未満であると、得られるマイクロカプセルのシェルが厚くなり、得られるマイクロカプセルの空隙率が低下することがある。上記非重合性物質の添加量が1900重量部を超えると、マイクロカプセルの形状が維持できなかったり、弾力性又は強度を確保できなかったりすることがある。
【0019】
上記モノマー溶液は、重合開始剤を含有することが好ましい。
上記重合開始剤としては特に限定されず、用いるモノマー成分の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、レドックス開始剤等が挙げられる。
【0020】
上記モノマー溶液は、親油性乳化剤を含有することが好ましい。上記親油性乳化剤は、得られる乳化液の乳化安定性をより向上させる役割を有する。
上記親油性乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0021】
上記モノマー溶液と不溶な溶液としては、上記非重合性物質と同様のものを用いることができる。なお、上記非重合性物質と異なるものを用いてもよい。
【0022】
上記非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程においては、上記モノマー溶液中のモノマーが油滴以外の場所で重合することによる新粒子の発生を抑制するために、上記モノマー溶液や上記モノマー溶液と不溶な溶液に無機塩や水溶性重合禁止剤を添加してもよい。
上記無機塩はモノマー成分の溶解度を低下させ、重合を抑制する働きがある。上記無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記水溶性重合禁止剤は、溶媒での重合を抑制する目的で添加するものであり、具体的には例えば、亜硫酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、塩化チタン、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0023】
上記非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程において、攪拌する方法としては特に限定されず、例えば、ホモミキサー、バイオミキサー、オムニミキサー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等を用いる従来公知の方法が挙げられる。
【0024】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、次いで、上記モノマー溶液中のモノマーを重合させる工程を行う。これにより、マイクロカプセルのシェルの部分が形成される。
上記モノマー溶液中のモノマーを重合させる方法としては特に限定されず、上記三官能以上の架橋性モノマーや、上記重合性モノマーの種類により適宜最適な方法を選択すればよいが、通常は加熱することが好ましい。
【0025】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、上記モノマー溶液中のモノマーを重合させる工程を行うことにより、単孔構造を有するシェルに、コア剤として上記非重合性物質が内包されたマイクロカプセルが、上記モノマー溶液と不溶な溶液中に分散したスラリーが得られるが、その後、上記モノマー溶液と不溶な溶液を除去する工程を行ってもよい。
上記モノマー溶液と不溶な溶液を除去する方法としては特に限定されず、例えば、加熱によって乾燥する方法、系全体を減圧する方法等が挙げられる。
【0026】
このような本発明のマイクロカプセルの製造方法によると、単孔構造を有するシェルに、コア剤が内包されたマイクロカプセルを製造することができる。このようなマイクロカプセルもまた本発明の1つである。
【0027】
本発明のマイクロカプセルは、コア剤を有する。
本発明のマイクロカプセルは、上記コア剤を有することから、中空粒子と比較して溶媒及び組成物中での分散性に優れる。従って、例えば、本発明のマイクロカプセルを含有する塗膜形成用樹脂組成物を基材に塗工した後、乾燥工程により上記コア剤を除去させることによって、均一な空孔を有する所望の塗膜を形成することができる。ただし、本発明のマイクロカプセルに内包されたコア剤を加熱等により蒸散させた後、得られた乾燥マイクロカプセルを含有する塗膜形成用樹脂組成物を基材に塗工して、塗膜を形成してもよい。
上記コア剤としては、加熱等により容易に蒸散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、上述した上記非重合性物質と同様のものを用いることができる。
【0028】
上記コア剤は、沸点の好ましい下限が30℃、好ましい上限が200℃である。沸点が30℃未満であると、常温においてコア剤の沸騰が起こり、極めてハンドリング性の悪いものとなることがある。沸点が200℃を超えると、例えば、本発明のマイクロカプセルを用いて塗膜を形成する場合、沸点が高すぎるために乾燥工程でコア剤が完全に除去されず、空孔の形成が不充分となることがある。上記コア剤の沸点のより好ましい下限は50℃、より好ましい上限は160℃である。
なお、本明細書において、沸点とは1atmでの沸点のことをいう。
【0029】
本発明のマイクロカプセルにおける上記コア剤の含有量の好ましい下限は50重量%である。上記コア剤の含有量が50重量%未満であると、例えば、本発明のマイクロカプセルを塗膜形成用樹脂組成物に含有した場合に、マイクロカプセルが浮遊して、マイクロカプセルの分散性が著しく損なわれることがある。上記コア剤の含有量の好ましい上限は95重量%である。
【0030】
本発明のマイクロカプセルを構成するシェルは、単孔構造を有する。
上記単孔構造を有することにより、上記シェルの内部に形成された空隙は密閉性に優れたものとなり、各種用途に本発明のマイクロカプセルを用いる場合に、空隙内にバインダー成分や他の成分が侵入して、空孔の割合が低下するといった不具合を防止することができる。
なお、本明細書において、「単孔構造」とは、多孔質状等のように複数の空隙を有する場合は含まず、ただ1つの閉じた空隙を有する構造のことをいう。
【0031】
上記シェルの材質としては、全モノマー成分に対して、上記三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有するモノマー溶液中のモノマーを重合して得られるポリマーであって、単孔構造とすることができ、かつ、後述する範囲内の平均粒子径、アスペクト比等を実現可能であれば特に限定されない。上記シェルの材質が、全モノマー成分に対して、上記三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有するモノマー溶液中のモノマーを重合して得られるポリマーであって、適度に架橋されていることによって、本発明のマイクロカプセルは優れた弾力性を有する。
上記シェルの材質としては、例えば、上記三官能以上の架橋性モノマーに由来するセグメントと上記重合性モノマーに由来するセグメントとを有する共重合体等が挙げられる。
【0032】
本発明のマイクロカプセルの平均粒子径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。平均粒子径が1μm未満であると、本発明のマイクロカプセル同士の凝集が発生して取扱い性に劣ることがある。平均粒子径が20μmを超えると、例えば、本発明のマイクロカプセルを用いて塗膜を形成する場合、得られる塗膜の平滑性が低下することがある。本発明のマイクロカプセルは、平均粒子径のより好ましい下限が1.5μm、より好ましい上限が10μmである。
【0033】
本発明のマイクロカプセルは、アスペクト比(短径の長さに対する長径の長さの比)の好ましい下限が1、好ましい上限が1.1である。アスペクト比が上記範囲外であると、例えば、本発明のマイクロカプセルを用いて塗膜を形成する場合、塗膜を形成する過程においてマイクロカプセルにつぶれやへたりが生じたり、得られる塗膜の平滑性が低下したりすることがある。本発明のマイクロカプセルのアスペクト比のより好ましい下限は1.00、より好ましい上限は1.05である。
なお、上記アスペクト比は、長径の長さを短径の長さで割った値であり、その値が1に近いほど、形状は真球に近くなる。
【0034】
本発明のマイクロカプセルは、30〜200℃の所定の温度にて10分間加熱した後の平均粒子径の変化率が100±5%以内であることが好ましい。
上記平均粒子径の変化率が100±5%以内であることは、30〜200℃において加熱膨張することなく、平均粒子径が変化しないことを意味する。30〜200℃において加熱膨張してしまうようなマイクロカプセルを使用すると、例えば、マイクロカプセルを含有する塗膜形成用樹脂組成物を塗工した塗膜を乾燥してコア剤を除去し、多孔性塗膜を得る場合、膨張した粒子によって塗膜の平滑性が失われることがある。
なお、30〜200℃の所定の温度にて加熱する際、上記温度以外の条件については、一般的なシート用乾燥機の運転条件を適用する。
【0035】
本発明のマイクロカプセルは、23℃における直径が10%変位したときの圧縮弾性率(以下、10%K値ともいう)の好ましい下限が1N/mm、好ましい上限が1000N/mmである。10%K値が1N/mm未満であると、例えば、マイクロカプセルを含有する塗膜形成用樹脂組成物を塗工して多孔性の塗膜を形成する場合、塗工工程や塗膜の乾燥工程でマイクロカプセルが潰れることがある。10%K値が1000N/mmを超えると、例えば、マイクロカプセルを用いて塗膜を形成する場合、塗膜の柔軟性が失われて塗膜にひびが入ったり、塗膜に印刷やエンボス加工を施したりする際に、転写性が悪くなることがある。
【0036】
なお、上記10%K値とは、微小圧縮試験機(例えば、島津製作所社製「PCT−200」等)を用いてダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑端面で、マイクロカプセルを圧縮速度0.27g/秒、最大試験荷重10gで圧縮し、下記式により求められる値である。
10%K値=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2
式中、Fはマイクロカプセルの10%圧縮変形における荷重値(kg)を表し、Sはマイクロカプセルの10%圧縮変形における圧縮変位(mm)を表し、Rはマイクロカプセルの半径(mm)を表す。
【0037】
本発明のマイクロカプセルは、空隙率の好ましい下限が50体積%、好ましい上限が95体積%である。上記空隙率が50体積%未満であると、得られるマイクロカプセルを用いてなる成形体等に軽量化、造孔化、断熱性付与、遮音性付与、クッション性等を充分に付与できないことがある。上記空隙率が95体積%を超えると、マイクロカプセルの形状が維持できなかったり、強度を確保できなかったりすることがある。
なお、本明細書において、空隙率とは、マイクロカプセルの全体積に占める、コア剤を除いた空隙部分の体積比のことをいい、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した写真をもとに、平均粒子径(外径)及び平均内孔径を測定し、空隙部分の体積とマイクロカプセルの体積との比を算出することにより測定することができる。
【0038】
本発明のマイクロカプセル、バインダー樹脂及び溶媒を含有する塗膜形成用樹脂組成物は、例えば、基材に塗工し、乾燥工程により上記コア剤を除去させた場合、空孔の形状や分布が均一で、表面の凹凸が少なく高精細であり、かつ、柔軟性に優れた塗膜を形成することができる。このような塗膜形成用樹脂組成物もまた本発明の1つである。
また、本発明の塗膜形成用樹脂組成物を用いてなる塗膜もまた、本発明の1つである。
【0039】
本発明の塗膜形成用樹脂組成物において、本発明のマイクロカプセルの含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は90重量%である。本発明のマイクロカプセルの含有量が5重量%未満であると、得られる塗膜の空孔の比率が極めて低くなることがある。本発明のマイクロカプセルの含有量が90重量%を超えると、得られる塗膜の耐久性が低下することがある。
また、上記バインダー樹脂の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記バインダー樹脂の含有量が0.1重量%未満であると、得られる塗膜の耐久性が低下することがある。上記バインダー樹脂の含有量が30重量%を超えると、得られる塗膜の空孔の比率が極めて低くなることがある。
【0040】
本発明の塗膜形成用樹脂組成物の用途としては特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイのバックライトユニット等に用いられる光学シートを製造するための材料、車両内装材等に用いられる表皮材を製造するための材料が挙げられる。本発明の塗膜形成用樹脂組成物は、本発明のマイクロカプセルが溶媒及び組成物中で分散性に優れ、かつ、弾力性に優れることから、基材に塗工し、乾燥工程により上記コア剤を除去させた場合、空孔の形状や分布が均一で、表面の凹凸が少なく高精細であり、かつ、柔軟性に優れた塗膜を形成することができる。
【0041】
本発明のマイクロカプセルを含有する多孔質層を有する光学シートもまた本発明の1つである。
【0042】
本発明の光学シートは、本発明のマイクロカプセルを含有する多孔質層を有する。
上記多孔質層は、本発明のマイクロカプセルを含有するために均一な空孔を有し、充分に低い屈折率を有する。そのため、例えば、上記多孔質層を液晶ディスプレイのバックライトユニットに用いた場合、輝度の低下防止等の効果を良好に発揮させることができる。更に、上記多孔質層は、本発明のマイクロカプセルを含有するために、優れた柔軟性を有する。
【0043】
上記多孔質層は、本発明のマイクロカプセルを分散させる目的、及び、本発明のマイクロカプセル同士や後述する他の層と接着させる目的で、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
上記バインダー樹脂としては、透明かつ成膜可能な材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂等の有機系材料が挙げられる。
【0044】
上記多孔質層において、上記バインダー樹脂の含有量としては特に限定されないが、本発明のマイクロカプセル100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記バインダー樹脂の含有量が0.1重量部未満であると、得られる多孔質層の接着性が失われて、本発明の光学シートの機械強度が低下することがある。上記バインダー樹脂の含有量が50重量部を超えると、充分に低い屈折率を有する多孔質層を得ることができないことがある。
【0045】
上記多孔質層を積層する方法としては特に限定されず、例えば、溶剤に本発明のマイクロカプセル及び上記バインダー樹脂を分散させて樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を一般的な調製法によって分散処理することにより塗工液を作製し、該塗工液を基材又は後述する他の層に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
【0046】
本発明の光学シートは、上記多孔質層に加えて、複数の他の層を有することが好ましい。上記他の層としては特に限定されず、得られる光学シートの性能に合わせて適宜選択すればよいが、例えば、プリズム層、光拡散層、偏光フィルム層等が挙げられる。
【0047】
更に、本発明のマイクロカプセルを含有する表皮材もまた本発明の1つである。
本発明の表皮材は、本発明のマイクロカプセルを含有するために優れた柔軟性を有し、そのため、例えば、車両内装材、人工皮革等として用いることができる。
【0048】
本発明の表皮材を構成する材料としては、透明かつ成膜可能な材料であれば特に限定されず、例えば、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との混合物、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、その他の熱可塑性樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0049】
本発明の表皮材を製造する方法としては特に限定されず、例えば、溶剤に本発明のマイクロカプセル及び上記材料を分散させて樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を一般的な調製法によって分散処理することにより塗工液を作製し、該塗工液を基材に塗布し、乾燥することによってシートを形成する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、溶媒中での分散性に優れるとともに、優れた弾力性を有するマイクロカプセルの製造方法を提供できる。また、該マイクロカプセルの製造方法によって製造されるマイクロカプセル、塗膜形成用樹脂組成物、塗膜、光学シート及び表皮材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート60重量部と、重合性モノマーとしてポリエチレングリコールジメタクリレート(ポリオキシエチレンユニット数=1、日油社製「ブレンマーPDE−50R」)40重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25重量部と、親油性乳化剤としてのグリセリンモノステアレート2重量部とを混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
【0053】
イオン交換水に、塩化ナトリウムを1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%の濃度となるように添加した塩化ナトリウム−亜硝酸ナトリウム水溶液を調製した。次いで、得られたモノマー溶液に、塩化ナトリウム−亜硝酸ナトリウム水溶液100重量部を添加した後、攪拌分散装置により攪拌し、油中水滴(W/O)型エマルジョンの一次乳化液を調製した。
【0054】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液600重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に水を内包する油滴が分散された(W/O/W)型複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0055】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。4時間重合させた後、80℃に昇温し、1時間の熟成期間をおいた後、重合器を室温まで冷却して、水内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、水内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0056】
(2)塗工サンプルの作製
得られた水内包マイクロカプセル含有スラリー300重量部(マイクロカプセル129重量部、固形分58重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0057】
(実施例2)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート40重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート30重量部と、重合性モノマーとしてポリエチレングリコールジメタクリレート(ポリオキシエチレンユニット数=1、日油社製「ブレンマーPDE−50R」)30重量部と、非重合性物質として酢酸エチル50重量部及びシクロヘキサン350重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、酢酸エチル−シクロヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0058】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液370重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に酢酸エチル−シクロヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0059】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。4時間重合させた後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0060】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー200重量部(マイクロカプセル57重量部、固形分12重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0061】
(実施例3)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート60重量部と、重合性モノマーとしてアクリロニトリル40重量部と、非重合性物質として酢酸エチル40重量部及びヘプタン120重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、酢酸エチル−ヘプタン分散型の一次乳化液を調製した。
【0062】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に酢酸エチル−ヘプタンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0063】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。4時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られた溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを、噴霧乾燥機を用いて乾燥することにより、粉体状の乾燥マイクロカプセルを得た。
【0064】
(2)塗工サンプルの作製
得られた乾燥マイクロカプセル100重量部と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0065】
(実施例4)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート35重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート50重量部と、重合性モノマーとしてメタクリル酸メチル15重量部と、非重合性物質として酢酸エチル10重量部、シクロヘキサン40重量部及びノルマルヘキサン150重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、酢酸エチル−シクロヘキサン−ノルマルヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0066】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に酢酸エチル−シクロヘキサン−ノルマルヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0067】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。4時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0068】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー210重量部(マイクロカプセル95重量部、固形分29重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0069】
(比較例1)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート10重量部、重合性モノマーとしてポリプロピレングリコールジメタクリレート(ポリオキシプロピレンユニット数=約7、日油社製「ブレンマーPDP−400」)60重量部及びメタクリル酸メチル30重量部と、非重合性物質としてヘプタン100重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、ヘプタン分散型の一次乳化液を調製した。
【0070】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液400重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中にヘプタンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0071】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0072】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー300重量部(マイクロカプセル129重量部、固形分58重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0073】
(比較例2)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート25重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート25重量部と、重合性モノマーとしてアクリロニトリル10重量部、メタクリロニトリル10重量部、メタクリル酸メチル20重量部及びポリエチレングリコールジメタクリレート(ポリオキシエチレンユニット数=1、日油社製「ブレンマーPDE−50R」)10重量部と、非重合性物質としてシクロヘキサン110重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、シクロヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0074】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量%を含有するイオン交換水溶液1133重量部に加え、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌することにより、水媒体中にシクロヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0075】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0076】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー400重量部(マイクロカプセル138重量部、固形分66重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0077】
(比較例3)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート25重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート25重量部と、重合性モノマーとしてアクリロニトリル10重量部、メタクリロニトリル10重量部、メタクリル酸メチル20重量部及びポリエチレングリコールジメタクリレート(ポリオキシエチレンユニット数=1、日油社製「ブレンマーPDE−50R」)10重量部と、非重合性物質としてシクロヘキサン110重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、シクロヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0078】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液455重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中にシクロヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0079】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られた溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを、噴霧乾燥機を用いて乾燥することにより、粉体状の乾燥マイクロカプセルを得た。
【0080】
(2)塗工サンプルの作製
得られた乾燥マイクロカプセル129重量部と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0081】
(比較例4)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート5重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート10重量部と、重合性モノマーとしてメタクリル酸メチル35重量部及びポリプロピレングリコールジメタクリレート(ポリオキシプロピレンユニット数=約7、日油社製「ブレンマーPDP−400」)50重量部と、非重合性物質として酢酸エチル50重量部及びシクロヘキサン50重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5重量部とを混合、攪拌し、酢酸エチル−シクロヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0082】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液455重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に酢酸エチル−シクロヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0083】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0084】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー310重量部(マイクロカプセル140重量部、固形分70重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0085】
(比較例5)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート0.003重量部と、重合性モノマーとしてアクリロニトリル90重量部及びメタクリロニトリル10重量部と、非重合性物質としてノルマルヘキサン200重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、ノルマルヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0086】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液455重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中にノルマルヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0087】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0088】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー200重量部(マイクロカプセル150重量部、固形分68重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られたマイクロカプセル組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0089】
(比較例6)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート20重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート10重量部と、重合性モノマーとしてメタクリル酸メチル60重量部及びポリプロピレングリコールジメタクリレート(ポリオキシプロピレンユニット数=約7、日油社製「ブレンマーPDP−400」)10重量部と、非重合性物質としてシクロヘキサン400重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、シクロヘキサン分散型の一次乳化液を調製した。
【0090】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液455重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中にシクロヘキサンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0091】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られた溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを、噴霧乾燥機を用いて乾燥することにより、粉体状の乾燥マイクロカプセルを得た。
【0092】
(2)塗工サンプルの作製
得られた乾燥マイクロカプセル67重量部と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0093】
(比較例7)
(1)マイクロカプセルの調製
三官能以上の架橋性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート40重量部及びトリメチロールプロパントリアクリレート60重量部と、非重合性物質として酢酸エチル50重量部及びヘプタン140重量部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部とを混合、攪拌し、酢酸エチル−ヘプタン分散型の一次乳化液を調製した。
【0094】
その後、得られた一次乳化液を、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を1重量%、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウムを0.02重量%含有するイオン交換水溶液455重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌することにより、水媒体中に酢酸エチル−ヘプタンを内包する油滴が分散された複合エマルジョンからなる二次乳化液を得た。
【0095】
攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して重合器内部を窒素雰囲気とした。その後、二次乳化液を一括投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始させた。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルを含有するスラリーを得た。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてイソプロパノール(IPA)に置換し、溶剤内包マイクロカプセルのイソプロパノール(IPA)分散スラリーを得た。
【0096】
(2)塗工サンプルの作製
得られた溶剤内包マイクロカプセル含有スラリー280重量部(マイクロカプセル100重量部、固形分35重量部)と、アクリル系樹脂を10重量%含有するトルエン溶液500重量部とを混合することにより塗膜形成用樹脂組成物を得た。得られた塗膜形成用樹脂組成物を、基材としてのPETシート上にグラビアコートを用いて15μm(固形分)の厚さに塗工した後、熱風ドライヤーにて120℃、1分間加熱乾燥を行うことにより、塗膜を形成した。
【0097】
(評価)
(1)内孔構造状態の観察
各実施例及び比較例で得られたマイクロカプセルのコア剤を除去した後、エポキシ樹脂に包埋して切削し、その断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
【0098】
(2)平均粒子径、加熱後の平均粒子径の変化率、アスペクト比
各実施例及び比較例で得られたマイクロカプセル、及び、同サンプルを内温200℃のオーブンで10分間加熱した後のマイクロカプセルを投下型電子顕微鏡で写真撮影し、得られた写真から350個分の写真を無作為に抽出し、長径及び短径を計測した。
そして、長径を粒子径とし、その数平均を平均粒子径とした。また、長径を短径で割ることにより、アスペクト比を算出し、その数平均を計算した。
また、加熱による平均粒子径変化率を下記式(1)を用いて算出した。
200℃10分間加熱後の平均粒子径変化率(%)
=(加熱後の平均粒子径/加熱前の平均粒子径)×100 (1)
【0099】
(3)10%K値
島津製作所社製「PCT−200」を用い、各実施例及び比較例で得られたマイクロカプセルの10%K値を下記式(2)により求めた。
10%K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2 (2)
F:マイクロカプセルの10%圧縮変形における荷重値(N)
S:マイクロカプセルの10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:マイクロカプセルの半径(mm)
【0100】
(4)空隙率
各実施例及び比較例のマイクロカプセルを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、得られた写真から350個分の写真を無作為に抽出し、粒子内孔径を測定し、その数平均を求めた。
そして、得られたマイクロカプセルを真球と仮定して、平均粒子径(外径)及び平均内孔径からそれぞれ体積を求めた後、{(空孔の体積/マイクロカプセルの体積)×100}を算出することにより、空隙率を求めた。
【0101】
(5)塗膜形成用樹脂組成物の状態
各実施例及び比較例で得られた塗膜形成用樹脂組成物の溶液状態を目視にて確認した。
【0102】
(6)塗膜の断面状態
各実施例及び比較例で得られた塗膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、塗膜中の空孔の状態を評価した。
【0103】
(7)塗膜の表面状態(平滑性)
各実施例及び比較例で得られた塗膜の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、表面の平滑性を評価した。平滑性を有する場合を○、平滑性を有しない場合を×とした。
【0104】
(8)圧縮変形回復率
微小圧縮試験機(島津製作所社製「PCT−200」)を用いてダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑端面で、各実施例及び比較例で得られた塗膜上の10個の測定箇所を圧縮速度0.27g/秒、最大試験荷重10gで圧縮し、10mNまで荷重をかけた後、1mNまで除荷した。各測定箇所について、10mN荷重時の変位と1mN荷重時の変位とを用いて下記式(3)により圧縮変形回復率を算出し、その数平均を計算した。
圧縮変形回復率(%)
=100−(1mN荷重時の変位/10mN荷重時の変位)×100 (3)
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示すように、実施例1〜4で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、均一な空孔を有し、表面平滑性に優れ、かつ、柔軟性(圧縮変形回復率)に優れていた。
一方、比較例1で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、マイクロカプセルが多孔構造であり、シェル内部にバインダー樹脂の含浸が起こることによって、空孔を保持することができず、表面平滑性も悪かった。
比較例2で得られたマイクロカプセルは、平均粒子径が小さすぎるために塗膜形成用組成物中で凝集が起こり、また、シェルが薄いためにつぶれが生じた。そのため、比較例2で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、空孔形状が不均一となっていた。
比較例3で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、マイクロカプセルの平均粒子径が大きすぎることによって、表面平滑性が悪かった。
比較例4で得られたマイクロカプセルは、シェルを形成するポリマーの架橋度が不足することによって、溶媒置換後、乾燥時に扁平状に変形し、つぶれが生じた。そのため、比較例4で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、空孔が保持されなかった。
比較例5で得られたマイクロカプセルは、シェルを形成するポリマーの架橋度が大幅に不足することによって、ポリマー重合中に扁平状に変形し、つぶれが生じた。そのため、比較例5で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、空孔が保持されなかった。
比較例6で得られたマイクロカプセルを用いて得られた塗膜は、マイクロカプセルの10%K値が非常に低いことによって、充分な柔軟性(圧縮変形回復率)が得られなかった。
比較例7で得られたマイクロカプセルは、シェルを形成するポリマーの架橋度が高すぎることによって、脆化してしまった。そのため、充分な柔軟性(圧縮変形回復率)が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、溶媒中での分散性に優れるとともに、優れた弾力性を有するマイクロカプセルの製造方法を提供することができる。また、該マイクロカプセルの製造方法によって製造されるマイクロカプセル、塗膜形成用樹脂組成物、塗膜、光学シート及び表皮材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単孔構造を有するシェルに、コア剤が内包されたマイクロカプセルを製造する方法であって、
非重合性物質を内包するモノマー溶液からなる液滴が分散した乳化液を調製する工程及び前記モノマー溶液中のモノマーを重合させる工程を有し、
前記モノマー溶液は、全モノマー成分に対して、三官能以上の架橋性モノマーを55〜90重量%含有する
ことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法により製造されたことを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項3】
平均粒子径が1〜20μm、アスペクト比が1〜1.1、かつ、30〜200℃の所定の温度にて10分間加熱した後の平均粒子径の変化率が100±5%以内であることを特徴とする請求項2記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
コア剤を50重量%以上含有することを特徴とする請求項2又は3記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
23℃における10%K値が1〜1000N/mmであることを特徴とする請求項2、3又は4記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
請求項2、3、4又は5記載のマイクロカプセル、バインダー樹脂及び溶媒を含有することを特徴とする塗膜形成用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2、3、4又は5記載のマイクロカプセルを5〜90重量%、バインダー樹脂を0.1〜30重量%含有することを特徴とする請求項6記載の塗膜形成用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7記載の塗膜形成用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする塗膜。
【請求項9】
請求項2、3、4又は5記載のマイクロカプセルを含有する多孔質層を有することを特徴とする光学シート。
【請求項10】
請求項2、3、4又は5記載のマイクロカプセルを含有することを特徴とする表皮材。

【公開番号】特開2010−149024(P2010−149024A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328512(P2008−328512)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】