説明

マイクログリッドにおける充電設備管理システム

【課題】マイクログリッド内の複数の充電設備を、他車両が有効に利用できるようにする。
【解決手段】マイクログリッドMGに、複数の車両用の充電設備24が構築される。複数の充電設備24の過去一定期間の使用状況に基づいて、複数の充電設備24の空き情報が予測される。予測された空き情報は、マイクログリッドを構築する個別の電力需要家以外が保有する自車両以外となる他車両に提供されて、他車両がマイクログリッドの充電設備24を利用して充電できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクログリッドにおける充電設備管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、個別の住宅、集合住宅、大型店舗、工場等の電力需要家が、個別に充電機器と発電機器とを有して、商用電力を極力利用することなく、電力の需給をまかなうようにするマイクログリッド(マイクログリッドシステム)を構築することが多くなっている。
【0003】
一方、最近では、モータの駆動力を利用して走行する電気自動車やプラグインハイブリッド車などが増加する傾向にあり、この種の車両にあっては大容量の車載蓄電機器を搭載している。車載蓄電機器に蓄電された電気エネルギを利用して走行する車両にあっては、環境問題もあって増加する傾向にあるというものの、その車載蓄電機器に対して充電を行う充電設備というインフラをいかに数多く構築するかが問題となる。
【0004】
特許文献1には、記憶されている充電スタンドの中から、充電を要求する車両に近くにある充電スタンドを抽出して、その位置と充電器の利用可能情報(充電器の空き情報)を提供すると共に、充電予約の受付を行うことが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のものでは、充電設備が現在は空き状況であっても、充電を必要とする車両が充電設備に到着した時点では既に空き状況ではない、ということも生じてしまい、使い勝手の悪いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−262525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マイクログリッドを構築する複数の個別電力需要家が、電気自動車やプラグインハイブリッド車等を保有すると共に、その充電設備を保有していることがある。この場合、充電設備は、もっぱら個別の電力需要家が保有する車両用とされているが、個別の電力需要家が保有する車両を使用している最中は、充電設備が使用されていない空き状況となる。このような空き状況にある充電設備を、個別の電力需要家以外の他車両のための充電設備として有効に利用できれば、マイクログリッド内という比較的狭い地域内にある複数の充電設備を有効に利用することができ、極めて好ましいものとなる。充電設備を他車両にも利用させるということは、充電設備を極力遊ばせることなく有効に活用でき、マイクログリッドを構築する個別の電力需要家にとっても好ましいものとなる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、マイクログリッド内に構築された複数の充電設備を他車両のために有効利用できるようにしたマイクログリッドにおける充電設備管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
マイクログリッドに構築された複数の車両用充電設備の空き情報を管理するマイクログリッドにおける充電設備管理システムであって、
前記複数の充電設備の過去一定期間の使用状況を記憶する使用状況記憶手段と、
前記使用状況記憶手段に記憶されている記憶内容に基づいて、前記複数の充電設備の空き情報を予測する予測手段と、
前記予測された空き情報を、マイクログリッドを構築する個別電力需要家が保有する自車両以外となる他車両へ提供する空き情報提供手段と、
を備えているようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、マイクログリッドに構築された複数の充電設備を有効に利用して、他車両の充電用として活用できる。また、複数の充電設備を扱うと共に過去一定期間の充電設備の使用状況を勘案して空き情報を予測するので、他車両がマイクログリッドに到着した時点で、空き状況の充電設備が存在しないというような事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記自車両の過去一定期間の行動情報を記憶する行動情報記憶手段をさらに備え、
前記空き情報予測手段は、前記使用状況記憶手段の記憶内容に加えて、前記行動情報記憶手段に記憶されている記憶内容を加味して空き情報を予測する、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、自車両の行動情報をも考慮して空き情報を予測するので、空き情報の予測精度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0011】
前記空き情報記憶手段は、過去一定期間の使用状況として、長期間の使用状況と短期間の使用状況とを記憶しており、
前記空き情報予測手段は、前記長期間の使用状況と短期間の使用状況との両方に基づいて空き情報を予測する、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、空き情報の予測精度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0012】
前記行動情報記憶手段は、過去一定期間の行動情報として、長期間の行動情報と短期間の行動情報とを記憶しており、
前記空き情報予測手段は、前記長期間の行動情報と短期間の行動情報との両方を加味して空き情報を予測する、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、空き情報の予測精度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0013】
前記空き情報予測手段は、前記複数の充電設備と該複数の充電設備を使用する前記複数の自車両とをそれぞれ群として扱って、空き情報を予測する、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、空き情報の予測精度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0014】
前記空き情報予測手段は、前記複数の充電設備の現在での使用状況を考慮して空き情報を予測する、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、空き情報の予測精度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0015】
前記空き情報予測手段は、予測が外れる可能性をリスクレベルとして算出し、
前記空き情報提供手段は、前記リスクレベルを合わせて提供する、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、他車両つまり充電設備を利用する者が、リスクレベルを考慮して空き情報を提供されている充電設備を利用するか否を判断することができ、他車両への利便性の高いものとなる。
【0016】
前記空き情報予測手段は、前記自車両用の充電設備予約情報を考慮して空き情報を予測する、ようにしてある(請求項8対応)。この場合、自車両の使用を考慮して、空き情報をより精度よく予測する上で好ましいものとなる。
【0017】
前記空き情報予測手段は、充電設備の位置と充電設備の数と充電設備の空き時刻と電力料金を予測する、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、他車両つまり充電設備を利用する者が、空き情報を提供されている充電設備を利用するか否を多くの情報を基に判断することができ、他車両への利便性の高いものとなる。
【0018】
前記電力料金が、マイクログリッド内の電力需給予測を基に設定される、ようにしてある(請求項10対応)。この場合、マイクログリッド内での電力需給に応じた適切な電力料金を設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マイクログリッドに構築された複数の充電設備を他車両の充電用として有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】マイクログリッドの一例を示す系統図。
【図2】空き情報に関連した各種情報伝達の一例を示す図。
【図3】個々の充電設備の使用状況(空き確率)から空き状況の確率を求める一例を示す図。
【図4】自車両の行動情報を予測する一例を示す図。
【図5】群としての複数の充電設備の空き情報を予測する制御例を示すフローチャート。
【図6】空き情報の予測とその提供とを行うための制御例を示すフローチャート。
【図7】提供される空き情報の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、1は商用電力源で、電力会社が所有、管理するものであり、通常の交流電源とされる。この商用電力源1に対して、マイクログリッドMGが接続されている。マイクログリッドMGは、1つの共通電力網10と、複数の個別電力網20とを有する。共通電力網10は、共通蓄電機器11と共通発電機12とを有して、ゲートウエイ13を介して商用電力源1に接続されている。共通蓄電機器11は例えばバッテリとされ、共通発電機12は例えば太陽光発電機やコジェネ等が用いられている(実施形態では太陽光発電機を用いてある)。また、ゲートウエイ13は、商用電力源1との電力の授受を行うためのもので、電力授受のために電圧、周波数および位相を調整する機能を有する。このマイクログリッドMGは、例えばまとまった数十戸の一戸建て住宅の集合地域や、集合マンションの敷地というように、狭い地域に構成されている。
【0022】
個別電力網20は、個別蓄電機器21と、個別発電機22と、車載蓄電機器23(自車両V1あるいはV2に搭載されている)とを有する。なお、図1では、一部の個別電力網20については、個別蓄電機器21、個別発電機22、車載蓄電機器23を省略してある。個別蓄電機器21は例えばバッテリとされ、個別発電機22は例えば太陽光発電機やコジェネ等が用いられている(実施形態では太陽光発電機を用いてある)。また、車載蓄電機器23は、プラグインハイブリッド車や電気自動車に搭載された例えばバッテリとされ、これらの車両V(V1またはV2)が個別電力網20に接続される。勿論、車両が個別の電力需要家の需要に応じて走行に使用されたときは、車載蓄電機器23は個別電力網20から離脱されるものであり、図1では、充電設備24に接続された車両が符合V1で示され、充電設備24から離脱した車が符合V2で示される。なお、充電設備24は、全ての個別電力網20に設置する必要がないものである。また、マイクログリッドMG全体としては、充電設備24を数十基(例えば50基)程度有するものとされている。
【0023】
個別電力網20は、個別の電力需要家用となるもので、複数(例えば1戸建て住宅の場合は数十戸)設置される。そして、共通蓄電機器11および共通発電機12は、複数の個別電力網20用となることから、個別蓄電機器21や個別発電機22よりも大型(大容量)とされている。各個別の電力需要家は、例えば、照明、空調等の各種の電力消費器具を有していて、その電力需要を自立運転させるために、共通電力網10に接続されたHEMS(Home Energy Management Systemで、マイクロコンピュータを利用して構成)25を備えている。このHEMS25は、基本的に、各個別電力網20の電力需要が極力自立運転されるように個別蓄電機器21,個別発電機22および車載蓄電機器23を制御すると共に、余剰電力が生じたときは共通電力網10へ放電し、不足電力が生じたときは共通電力網10から不足電力の供給を受けるように制御する。
【0024】
図1中CMは、マイクロコンピュータを利用して構成された制御手段としての中央管理センターである。この中央管理センターCMは、マイクログリッドMG全体の電力需要を制御する。すなわち、マイクログリッドMG全体で余剰電力が生じたときは、共通蓄電機器11,個別蓄電機器21,車載蓄電機器23への充電を行う一方、これらへの充電でも不十分な場合に、ゲートウエイ13を介して商用電力源1へ放電させる。また、マイクログリッド全体で電力不足が生じたときは、共通蓄電機器11,個別蓄電機器21,車載蓄電機器23の優先順で放電を行わせる一方、これらの放電でも不十分な場合に、ゲートウエイ13を介して商用電力源1から電力を調達する。
【0025】
中央管理センターCMは、マイクログリッドMGについて、極力自立運転できるように(商用電力源1との間で電力の授受が極力行われないよう)制御すると共に、後述するように、複数の充電設備24の空き状況を予測して、予測した空き情報を、他車両(個別電力網20を構築する個々の電力需要家が保有する自車両以外となる車両)に提供して、他車両に充電設備24の利用を積極的に促すようにしている。
【0026】
中央管理センターCMによる複数の充電設備24の空き情報の予測について説明する。まず、図2において、自車両がV(V1あるいはV2)として示され、他車両が符合VXで示される。充電設備24は、当然のことながら充電設備24を利用する車両の駐車場に隣接して設置される。中央管理センターCMは、充電設備24との間で信号を授受することにより、各充電設備24についてその使用状況(換言すれば空き状況)を記憶、更新している。この記憶内容は、過去一定期間となる長期間(例えば1年)と短期間(例えば1ヶ月)との2種類の空き状況を記憶している(各月について、毎曜日毎に、各時刻毎に記憶している)。
【0027】
また、中央管理センターCMは、自車両Vとの間で、無線やインターネット等を通じて、その行動情報を記憶している。記憶している行動情報としては、図4に示すように、充電設備24からの距離とされ、長期間(例えば1年)と短期間(例えば1ヶ月)との2種類とされている(各月について、毎曜日毎に、空き時刻毎に記憶している)。また、中央管理センターCMは、充電設備24の利用を欲する他車両VXとの間で無線やインターネット等を通じて情報のやりとりをして、他車両VXの位置を特定したり、他車両VXに対して、充電設備24の空き確率等の情報を提供する。
【0028】
中央管理センターCMは、上述のように記憶されている充電設備24の空き状況と自車両Vとの行動情報とに基づいて、充電設備24の空き情報を予測する。以下、この空き情報の予測の点について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でSはステップを示す。
【0029】
まず、図6のS1において、時刻毎の空き確率が、基本確率として短期間(1ヶ月)の空き状況に基づいて決定される。また、S1では、長期間(1年)の空き状況と短期間(1ヶ月)の空き状況との差分の所定割合(実施形態では1/2)がリスクとして設定されて、このリスク分が上記基本確率より加算される(図3参照)。この空き確率は、複数の充電設備24を群として扱う場合は、複数の充電設備24についての平均値とされる。すなわち、S1に対応した図5のS11に示すように、複数の充電設備24の空き確率の平均値が算出される。
【0030】
S1の後、S2において、充電設備24の付近に位置する他車両VXが充電設備24へ到着予想する時刻が予測されて、この到着予測時刻から他車両VXの充電が完了するまでの時間帯での空き確率が抽出される。そして、S3において、上記抽出された空き確率のうち、他車両VXの到着時間からその充電完了時間までの間でもっとも小さい空き確率が選択される。このS2,S3の処理は、つまるところ、他車両VXが確実に充電できるようにするためのものである(他車両VXが充電設備24に到着してから充電完了するまでの間は、充電設備24が空いている必要性がある)。
【0031】
上記S3の後、S4において、S3で抽出された空き確率が例えば5段階にランク付けされる。例えば、空き確率が80%〜100%の間であればAランクとされ、空き確率が60〜80%の間であればBランクとされ、空き確率が40〜60%の間であればCランクとされ、空き確率が20〜40%の間であればDランクとされ、空き確率が0〜20%の間であればEランクとされる。
【0032】
上記S4の後、S5において、充電設備24から離脱している自車両Vについて、現在位置が1週間平均の離脱距離と1ヶ月平均の離脱距離との間となる中間の離脱距離にあるか否かが判別される。すなわち、中央管理センターCMは、図4での自車両Vの行動情報以外に、より短期間となる1週間の距離を記憶、更新している(各月毎の各曜日毎について各時刻毎に記憶している)。このS5の判別でYESのときは、後述するように、S8において、他車両VXに対して、充電設備24の空き情報が提供される。
【0033】
上記S5の判別でNOのときは、S6において、充電設備24から離脱している自車両Vの現在位置が、S5での「中間の離脱距離」よりも遠いか(大きいか)否かが判別される。この判別でYESのときは、S8に移行される。また、S6の判別でNOのときは、自車両Vが充電設備24に戻ってくるまでの時間が早まるリスクということで、S7において、S4で設定された空き確率のランクが1段階下げられた後、S8へ移行される。このS7の処理も、他車両VXが充電設備24に到着してから充電完了するまでの間は、充電設備24が空いている必要性があるということからの要請に基づく処理となる。
【0034】
ここで、複数の充電設備24や複数の自車両Vは、それぞれ群として扱う場合は、図5のS11に示すように、空き確率の算出は、個々の充電設備24の空き確率を平均した処理となる(リスクも平均した処理となる)。また、複数の自車両Vが充電設備24に戻ってくる到着時間は、図5のS12に示すように、マイクログリッドMGの中心位置へ到着する時間とされる。空き確率も、自車両VがマイクログリッドMGの中心位置に戻ってくる時間からその充電完了時間までの間でもっとも小さい空き確率が抽出される。なお、自車両Vの戻り位置としては、自車両Vにもっとも近いマイクログリッドMGの端部位置としたり、自車両Vの運転者が設定した場所にする等、適宜設定できる。また、戻ってくる自車両Vの充電開始時間から充電完了時間までの時間は、例えば、自車両Vが戻ってきた時点で予測されるバッテリ残量から満充電にするための時間を予測して行われる。
【0035】
上記S8の空き情報の提供は、他車両VXの例えばナビゲーション用表示画面に対して行われ、その表示例が図7に示される。この図7において表示部H1は、マイクログリッドMGの位置と個々の充電設備24の位置を示すものである。また、表示部H1には、マイクログリッドMG内における個々の充電設備24の位置とその空き確率とが表示される。空き確率は、前述空き確率に応じて、色分け表示される(例えばAランクは緑色、Bランクは黄緑色、CランクKは黄色、Dランクは赤色、Eランクは白色)。なお、表示部H5においては、A〜Eのランクと空き確率との対応関係が表示される。
【0036】
表示部H2は、充電設備24を利用したときの料金を示すものであり、実施形態では、基本料と充電した電力量に比例した料金となる電力料の2種類が表示される。表示部H3には、他車両VXからマイクログリッドMGの中心位置までの距離が表示される。表示部H4には、マイクログリッドMGにおいて他車両VXが利用可能な(充電可能な)充電設備24の総数(例えば9基)と、利用可能な複数の充電設備24全体としての空き確率とが表示される。さらに、表示部H6においては、予測される空き状況の時間帯(例えば現在時刻から1時間後の時間帯まで等)が表示される。他車両VXの運転者のマニュアル操作によって、この予測時間帯を変更することができ、例えば現在時刻をt時点としたとき、「t+30分」から「t+60分」までの時間帯に変更することができる。
【0037】
なお、図7においては、表示部H1が小さく表示されているが、実際には、この表示部H1をもっとも大きく表示して、他の表示部H2〜H6は小さい表示とされる。
【0038】
ここで、表示部H2に表示される料金については、マイクログリッドMGでの電力需給予測に基づいて設定することができる。例えば、マイクログリッドMG全体として電力不足と予測されるときは、基本料金よりも高い料金に設定する(基本料、電力料の少なくとも一方を高くする)。また、マイクログリッドMG全体として電力余剰のときは、基本料金よりも安い料金に設定する。なお、マイクログリッドMG全体としての電力需給予測は、例えば各個別電力網20での電力需給予測の加算値に基づいて行うことができ、この各個別電力網20での電力需給予測に、共通蓄電機器11の充電量および共通発電機12の発電能力を加味することによりさらに精度良くマイクログリッドMG全体としての電力需給を予測することができる。なお。個別電力網20での電力需給の予測は、例えば、過去一定期間の電力需給の実績を記憶、更新しておき、この記憶内容に基づいて決定することができる(図3,図4で示すのと同様の手法で予測する)。
【0039】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。
(1)共通電力網10に車載蓄電機器23が接続される形式、つまり充電設備24が共通電力網10に接続される形式であってもよい。
(2)充電設備24の一部については、個々の電力需要家の要求に応じて(例えばマニュアル選択によって)、他車両への充電を禁止する設定を行うこともできる。
(3)図7に示されるような空き確率等の情報提供を受けた他車両VXからは、予約情報を中央管理センターCMに送信するようにしてもよい。この場合、中央管理センターCMは、予約の受け付けに応じて、空き確率を低減する処理を行えばよい。
(4)マイクログリッドMG全体としての電力需要予測は、各個別電力網20での電力需要予測の加算値として行うのみならず、適宜の手法によって行うことができる。例えば、共通蓄電機器11の過去の充放電量のデータに基づいて行うこともできる(長期間のデータと短期間のデータとに基づいての予測が好ましい)。また、上記に加えて、実際に商用電力源1と電力のやりとりをしたときのデータを蓄積して、この蓄積データをも加味することにより、マイクログリッドMG全体の電力不足あるいは電力余剰を予測することもできる。
(5)長期間のデータと短期間のデータとに基づいて各種の予測を行う場合に、短期間のデータとしては、長期間のデータ(の平均値)から大きく逸脱(相違)したデータのみを用いるようにしてもよい(短期間のデータを、突発的事態に対応したものに限定する)。
【0040】
(6)図3,図4等で示したリスク(リスク値)は、長期間の平均値から短期間の平均値を差し引いた値そのものを利用してもよい(差し引いた値へ乗算される重み付け係数を実施形態では1/2に設定したが、1に設定することの意味であり、この重み付け係数は適宜の値に設定できる)。また、過去一定期間の分散をリスクとして扱うようにしてもよい。
(7)自車両Vの行動情報としては、距離の他に、例えば、1回あたりの充電量を含めるようにすることもでき、また、個別電力網20における電力機器の使用状態に基づいて行動情報の予測(特に予測の補正)を行うようにしてもよい。
(8)充電設備24の使用状況の蓄積データが極めて短期間(例えば1〜2ヶ月程度)しか存在しない場合は、リスクの設定をしないようにすることもでき、また他車両には使用させないようにすることもできる。
(9)充電設備24は、自車両Vの使用を優先するため、充電設備24を離脱している自車両Vからの充電予約を最優先で受け付けるようにしてもよい。また、充電設備24を予約受付機能を有するように設定して、自車両V(つまり充電設備24)を保有する者のマニュアル設定によって、あらかじめ自車両V用の充電時間を充電設備24そのものに予約設定可能として、この予約設定された時間内は他車両VXへの充電を禁止するようにしてもよい(充電設備24毎に、他車両VXが使用不可な時間帯が強制設定される)。
(10)図7に示す表示例において、最低ランクのEランクの充電設備24をも表示するようにしたが、ランクの高い充電設備24(例えばAランク〜Cランクのみ表示するようにしてもよい。この場合、表示部H4においては、A〜Cランクの充電設備24の数と、Aランク〜Cランクの充電設備24全体の空き確率とが表示されることになる。
(11)充電設備24の現在の使用状況(空き状況)を加味して空き確率を決定(補正)することもできる。特に、現在使用中の充電設備24が多いということは、他車両VXを含めて利用車両数が多いということ、つまり予約なして充電設備24に到着している車両が多いということであり、この場合は、空き確率を低くする処理を行うのが好ましい(使用中の充電設備数が少なくときはこの逆の処理を行えばよい)。
(12)本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、マイクログリッドに構築された充電設備を他車両が有効に利用でき、また電気自動車の普及促進等にも貢献できる。
【符号の説明】
【0042】
MG:マイクログリッド
CM:中央管理センター
V(V1、V2):自車両
VX:他車両
1:商用電力源
10:共通電力網
11:共通蓄電機器
12:共通発電機
13:ゲートウエイ
20:個別電力網
21:個別蓄電機器
22:個別発電機
23:車載蓄電機器
24:充電設備
25:HEMS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドに構築された複数の車両用充電設備の空き情報を管理するマイクログリッドにおける充電設備管理システムであって、
前記複数の充電設備の過去一定期間の使用状況を記憶する使用状況記憶手段と、
前記使用状況記憶手段に記憶されている記憶内容に基づいて、前記複数の充電設備の空き情報を予測する予測手段と、
前記予測された空き情報を、マイクログリッドを構築する個別電力需要家が保有する自車両以外となる他車両へ提供する空き情報提供手段と、
を備えていることを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記自車両の過去一定期間の行動情報を記憶する行動情報記憶手段をさらに備え、
前記空き情報予測手段は、前記使用状況記憶手段の記憶内容に加えて、前記行動情報記憶手段に記憶されている記憶内容を加味して空き情報を予測する、
ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記空き情報記憶手段は、過去一定期間の使用状況として、長期間の使用状況と短期間の使用状況とを記憶しており、
前記空き情報予測手段は、前記長期間の使用状況と短期間の使用状況との両方に基づいて空き情報を予測する、
ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記行動情報記憶手段は、過去一定期間の行動情報として、長期間の行動情報と短期間の行動情報とを記憶しており、
前記空き情報予測手段は、前記長期間の行動情報と短期間の行動情報との両方を加味して空き情報を予測する、
ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記空き情報予測手段は、前記複数の充電設備と該複数の充電設備を使用する前記複数の自車両とをそれぞれ群として扱って、空き情報を予測する、ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記空き情報予測手段は、前記複数の充電設備の現在での使用状況を考慮して空き情報を予測する、ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記空き情報予測手段は、予測が外れる可能性をリスクレベルとして算出し、
前記空き情報提供手段は、前記リスクレベルを合わせて提供する、
ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記空き情報予測手段は、前記自車両用の充電設備予約情報を考慮して空き情報を予測する、ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、
前記空き情報予測手段は、充電設備の位置と充電設備の数と充電設備の空き時刻と電力料金を予測する、ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記電力料金が、マイクログリッド内の電力需給予測を基に設定される、ことを特徴とするマイクログリッドにおける充電設備管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−103741(P2011−103741A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258126(P2009−258126)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】