説明

マイクロコンピュータ

【課題】リセット期間中の消費電力を削減する。
【解決手段】マイクロコンピュータは、プロセッサと、第1発振周波数の第1発振信号を出力する第1発振回路と、第1発振周波数より低い第2発振周波数の第2発振信号を出力する第2発振回路と、通常状態または初期化状態の何れか一方を指示するリセット信号に基づいて、通常状態の場合は第1発振信号をプロセッサの動作用の動作クロックとして出力し、初期化状態の場合は第2発振信号を初期化処理用の初期化クロックとして出力するクロック選択回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロコンピュータでは、動作状態に応じてクロックの周波数を切り替えることが一般的に行われている(例えば、特許文献1)。例えば、マイクロコンピュータでは、内蔵のRC発振回路で発振信号が生成されるとともに、セラミックフィルタや水晶発振器等の外部発振回路からの発振信号が入力されることがある。このようなマイクロコンピュータでは、起動後、外部発振回路からの発振信号が安定するまでの間、RC発振回路からの発振信号がクロックとして利用される。そして、外部発振回路からの発振信号が安定した後には、クロックの精度を高めたり、処理に応じてクロックの周波数を高めたりするために、外部発振回路からの発振信号をクロックとして選択することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−217689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなマイクロコンピュータでは、例えば、電源電圧が低下して初期化状態になった場合、起動時と同様に、内蔵のRC発振回路からの発振信号が、初期化処理用のクロックとして用いられる。この内蔵のRC発振回路からの発振信号は、初期化状態だけではなく、通常状態においてもクロックとして用いられるため、例えば1MHz等、ある程度高い周波数となっている。また、リセット期間中は、初期化処理が行われるため、例えば、クロックの周波数切り替えプログラム等のユーザプログラムを実行することができない。そのため、例えばマイクロコンピュータが電池を電源とする装置に用いられる場合、電池の残量が少なくなって初期化状態になったとしても、ある程度高い周波数のクロックで電力が消費され続けてしまう。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、リセット期間中の消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係るマイクロコンピュータは、プロセッサと、第1発振周波数の第1発振信号を出力する第1発振回路と、前記第1発振周波数より低い第2発振周波数の第2発振信号を出力する第2発振回路と、通常状態または初期化状態の何れか一方を指示するリセット信号に基づいて、前記通常状態の場合は前記第1発振信号を前記プロセッサの動作用の動作クロックとして出力し、前記初期化状態の場合は前記第2発振信号を初期化処理用の初期化クロックとして出力するクロック選択回路と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
リセット期間中の消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態であるマイクロコンピュータの構成を示す図である。マイクロコンピュータ10は、RC発振回路12,14、クロック選択回路16、制御レジスタ18、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)24を含んで構成されており、例えば、ラジオ受信機の制御回路として用いられる。
【0008】
RC発振回路12(第1発振回路)は、抵抗とコンデンサによって構成される発振回路であり、例えば1MHzの周波数(第1発振周波数)の発振信号FAST(第1発振信号)を出力する。なお、RC発振回路12は、リセット端子Rから入力されるリセット信号RESが通常状態を示す論理レベル(本実施形態ではHレベル)になると発振を開始し、リセット信号RESが初期化状態を示す論理レベル(本実施形態ではLレベル)になると発振を停止する。
【0009】
RC発振回路14(第2発振回路)は、抵抗とコンデンサによって構成される発振回路であり、発振信号FASTよりも低い、例えば50kHzの周波数(第2発振周波数)の発振信号SLOW(第2発振信号)を出力する。なお、RC発振回路14は、リセット信号RESが初期化状態を示す論理レベルになると発振を開始し、リセット信号RESが通常状態を示す論理レベルになると発振を停止する。
【0010】
クロック選択回路16は、リセット信号RESの論理レベル及び制御レジスタ18の設定内容に基づいて、RC発振回路12から出力される発振信号FAST、RC発振回路14から出力される発振信号SLOW、及び外部発振回路36で生成され、端子Cを介して入力される発振信号OUTの何れか一つをマイクロコンピュータ10で用いられるクロックCLKとして選択する。具体的には、リセット信号RESが通常状態を示す論理レベルの場合は制御レジスタ18の設定内容に応じて発振信号FAST及び発振信号OUTの何れか一方を出力する。また、リセット信号RESが初期化状態を示す論理レベルの場合は発振信号SLOWを出力する。
【0011】
制御レジスタ18(選択データ記憶部)には、クロックCLKの周波数を選択するためのデータ(選択データ)が格納される。なお、制御レジスタ18へのデータ格納は、マイクロコンピュータ10が通常状態の間にCPU20がプログラムを実行することにより行われる。
【0012】
CPU20は、ROM22に格納されている各種プログラムを実行することによりマイクロコンピュータ10の全体を統括制御するプロセッサである。また、CPU20は、リセット信号RESが初期化状態を示す論理レベルになると、例えばROM22の所定領域に格納されている初期化プログラムを実行することにより、マイクロコンピュータ10を初期化する。初期化処理では、各種レジスタの初期化や制御レジスタ18の設定等が行われる。例えば、制御レジスタ18に発振信号FASTまたは発振信号OUTを選択するための適切なデータが格納されていない場合には、発振信号FASTを選択するデータが制御レジスタ18に設定される。これは、電源投入後に制御レジスタ18が一度も設定されていない場合や、外部発振回路36が接続されない場合においても、初期化状態が解除された後にクロックCLKが確実に供給されるようにするためである。
【0013】
ROM22は、不揮発性のメモリであり、初期化プログラムやユーザプログラム等が格納されている。なお、ROM22はマイクロコンピュータ10の外部に設けることも可能である。また、ROM22は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリのように、書き換え可能なメモリとしてもよい。
【0014】
RAM24は、揮発性のメモリであり、CPU20によって生成されるデータ等が格納される。例えば、マイクロコンピュータ10がラジオ受信機の制御回路として用いられる場合、ユーザが設定した周波数を示すデータ、すなわちプリセットデータを格納することができる。なお、RAM24に格納されているデータは、マイクロコンピュータ10の初期化処理ではリセットされない。
【0015】
パワーオンリセット(Power On Reset)回路30は、マイクロコンピュータ10の電源端子Vに印加される電源電圧VDDが投入されると、初期化処理に必要となる所定期間、マイクロコンピュータ10を初期化状態とするための信号を出力する。本実施形態では、パワーオンリセット回路30の出力信号はAND回路34を介してリセット端子Rに入力されている。つまり、本実施形態では、POR回路30の出力信号は、電源電圧が投入されてから所定期間Lレベルとなる。
【0016】
低電圧検出回路32は、例えば電池から供給される電源電圧VDDが所定レベル以下であることを検出すると、マイクロコンピュータ10を初期化状態とするための信号を出力する。本実施形態では、低電圧検出回路32の出力信号はAND回路34を介してリセット端子Rに入力されている。つまり、本実施形態では、低電圧検出回路32の出力信号は、電源電圧VDDが所定レベル以下の場合にLレベルとなる。
【0017】
外部発振回路36は、例えば水晶発振子やセラミック発振子による発振回路であり、RC発振回路12,14とは異なる周波数(第3発振周波数)の発振信号OUT(第3発振信号)を出力する。なお、外部発振回路36は、RC発振回路12,14よりも精度の高い発振信号OUTを出力することができるが、RC発振回路12,14と比較すると発振が安定するまでには時間を要することが多い。
【0018】
図2は、電源電圧VDDが所定レベル以下に低下した場合のクロックCLKの変化の一例を示すタイミングチャートである。初期状態では、電源電圧VDDが所定レベルVlowより高くなっており、リセット信号RESはHレベルである。リセット信号RESがHレベルであるため、RC発振回路12及び外部発振回路36は発振しており、発振信号FAST及び発振信号OUTが、それぞれの周波数で変化している。なお、図2の例では、発振信号OUTの周波数は発振信号FASTよりも高くなっている。一方、RC発振回路14は、リセット信号RESがHレベルであるため発振を停止しており、発振信号SLOWは一定のレベル(本実施形態ではLレベル)のままとなっている。そして、クロック選択回路16は、リセット信号RESがHレベルであるため、制御レジスタ18の設定に従って、発振信号FASTまたは発振信号OUTをクロックCLK(動作クロック)として出力する。図2の例では、発振信号FASTを選択するデータが制御レジスタ18に設定されている場合は発振信号FASTがクロックCLK(1)として出力され、発振信号OUTを選択するデータが制御レジスタ18に設定されている場合は発振信号OUTがクロックCLK(2)として出力されている。
【0019】
その後、例えば電池から供給される電源電圧VDDが低下していき、所定レベルVlow以下になると、低電圧検出回路32から出力される信号がLレベルとなり、リセット信号RESがLレベルとなる。リセット信号RESがLレベルになると、RC発振回路14は直ちに発振を開始し、所定周波数で変化する発振信号SLOWが出力される。また、リセット信号RESがLレベルになることにより、RC発振回路12及び外部発振回路36は発振を停止し、発振信号FAST及び発振信号OUTは一定のレベル(本実施形態ではLレベル)のままとなる。そして、クロック選択回路16は、リセット信号RESがLレベルであるため、発振信号SLOWをクロックCLK(初期化クロック)として出力する。これにより、発振信号FAST及び発振信号OUTよりも周波数の低い発振信号SLOWによって初期化処理が実行される。この発振信号SLOWは、リセット信号RESがLレベルの間、すなわち初期化状態の間、初期化クロックとして供給され続ける。
【0020】
その後、例えば、電池が充電されたり商用電源に接続されたりすることにより、電源電圧VDDが所定レベルVlowより高くなると、低電圧検出回路32から出力される信号がHレベルとなり、リセット信号RESがHレベルとなる。リセット信号RESがHレベルになると、RC発振回路12及び外部発振回路36が発振を再開し、RC発振回路14が発振を停止する。そして、クロック選択回路16は、制御レジスタ18の設定に従って、発振信号FASTまたは発振信号OUTをクロックCLKとして出力する。
【0021】
このようなマイクロコンピュータ10によれば、初期化状態の間は通常状態の場合よりも低い周波数でマイクロコンピュータ10が動作することとなる。したがって、初期化状態における消費電力を削減することが可能となる。
【0022】
また、マイクロコンピュータ10では、リセット信号RESに基づいて、初期化状態の場合はRC発振回路12及び外部発振回路36が発振を停止し、通常状態の場合はRC発振回路14が発振を停止する。すなわち、不要な発振が停止されることにより、マイクロコンピュータ10での消費電力を削減することが可能となる。
【0023】
また、マイクロコンピュータ10は、初期化処理ではデータがリセットされないRAM24を備えている。したがって、例えば、マイクロコンピュータ10の電源電圧VDDが電池から供給される構成においては、電源電圧VDDが低下して初期化状態となった場合、クロックCLKの周波数も低下して消費電力が削減され、例えばRAM24に格納されているプリセットデータが揮発することなくマイクロコンピュータ10をより長く稼動させ続けることが可能となる。
【0024】
また、マイクロコンピュータ10では、通常状態において制御レジスタ18の設定を変更することにより、例えば処理負荷等に応じてクロックCLKの周波数を調整することができる。すなわち、クロックCLKの周波数を適切に調整することにより、消費電力を削減することが可能となる。
【0025】
なお、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態であるマイクロコンピュータの構成を示す図である。
【図2】電源電圧が所定レベル以下に低下した場合のクロックの変化の一例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0027】
10 マイクロコンピュータ
12,14 RC発振回路
16 クロック選択回路
18 制御レジスタ
20 CPU
22 ROM
24 RAM
30 パワーオンリセット回路
32 低電圧検出回路
34 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
第1発振周波数の第1発振信号を出力する第1発振回路と、
前記第1発振周波数より低い第2発振周波数の第2発振信号を出力する第2発振回路と、
通常状態または初期化状態の何れか一方を指示するリセット信号に基づいて、前記通常状態の場合は前記第1発振信号を前記プロセッサの動作用の動作クロックとして出力し、前記初期化状態の場合は前記第2発振信号を初期化処理用の初期化クロックとして出力するクロック選択回路と、
を備えることを特徴とするマイクロコンピュータ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロコンピュータであって、
前記第1発振回路は、
前記リセット信号に基づいて、前記初期化状態の場合は発振を停止し、
前記第2発振回路は、
前記リセット信号に基づいて、前記通常状態の場合は発振を停止すること、
を特徴とするマイクロコンピュータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマイクロコンピュータであって、
前記初期化処理ではデータがリセットされない揮発性メモリを更に備え、
電源電圧が所定レベル以下の場合に前記初期化状態を指示する前記リセット信号が入力されること、
を特徴とするマイクロコンピュータ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロコンピュータであって、
前記通常状態における前記プロセッサの処理により、前記動作クロックの周波数を選択するための選択データが格納される選択データ記憶部を更に備え、
前記クロック選択回路は、
前記通常状態において、前記選択データ記憶部に格納されている前記選択データに基づいて、前記第2発振信号または前記第2発振周波数と異なる第3発振周波数の第3発振信号の何れか一方を前記動作クロックとして出力すること、
を特徴とするマイクロコンピュータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−66809(P2010−66809A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229970(P2008−229970)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】