説明

マイクロシステム用ベローズ型貯留槽

【課題】ごく小さな容器において、揮発性及び/又はクリーピング性の物質を含有する液体を、数ヶ月の長期に亘って、好ましくは少なくとも1年間保存することを可能とし、比較的僅かな技術的努力の下に前記液体を自動的に投与することを可能とすること。
【解決手段】容器として構成されるベローズが提供される。このベローズ型容器は、一旦充填されると、気密及び液密に密封、好ましくは溶接される。このベローズ型容器は、同時に投与デバイスとしても機能する。容器の内容物は、比較的単純な手段によって自動的に送出することが可能である。このために、容器は、例えば、デバイスに固定され、前記デバイスは、ベローズを圧縮する、すなわち、中空針−カニューレ又は皮下針とも呼ばれる−または、相当手段の方向にベローズを圧縮する。その過程において、中空針又は相当手段は容器壁を貫通する。次に、容器内容物は、中空針又は相当手段を通じて自動的に送出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロシステムに使用される保存及び投与容器、及び、マイクロシステムにおいて使用される液体を保存し、投与するための方法に関する。マイクロシステムとは、例えば、化学的又は生物学的分析を実行するために、少量の液体を操作するデバイスである。したがって、そのようなマイクロシステムは、短径のチャンネル管を含む。1 mmを超えない直径、特に150μmを超えない直径が普通である。
【背景技術】
【0002】
バッファー液は、生物工学の分野では、サンプルの分析、又は、サンプルからの細胞成分、遺伝物質などの精製に使用される。一方、バッファー液は、通常、アルコール、例えば、エタノールを含む。さらに、このようなバッファー液は、クリーピング物質、例えば塩溶液を含む場合がある。
【0003】
バッファー液のこれらの構成成分に関わる問題点は、バッファー液を保存する場合、それらが、緊密な密閉容器を必要とすることである。なぜならアルコール類はきわめて揮発性が高く、クリーピング物質は、簡単に容器から出て行くことが可能だからである。特に、夏期又は熱帯地方で起こると予想される高温下では、アルコールの揮発性は特別の問題となる。
【0004】
マイクロシステム用バッファー液は、ごく少量、例えば、ほんの1ミリリットルが必要とされるに過ぎない。経済的には、1リットルで始まる、それよりもはるかに大量のものが生産可能とされるので、例えば、1リットルのバッファー液の生産量を、ごく小さな容器、例えば、1ミリリットルの容器に充填する必要が生じる。あるバッファー液は滅多に必要とされることがなく、そのため、保存目的のために生産量が充填される容器は、保存が数ヶ月、場合によっては数年間可能となるように製造されなければならない。
【0005】
特許文献1から、バッファー液又は分析のために必要とされるその他の液体を、円筒形容器、及び、該容器の中に可動的に配置されるプランジャーを含むシリンジにおいて保存することが知られている。シリンジの出口開口は、ボールによって密封される。さらに、本文献は、それを用いると、シリンジの内容物が、自動的、用量的に引き出し可能になるデバイスを開示する。
【0006】
しかしながら、基本的には、シリンジは、きわめて長い保存時間を可能とするほど十分に密閉的ではない。このようなシリンジは、保存時間を延長するために、好ましくは低温で、例えば、4℃で保存されるけれども、例えば、2年間の保存時間を実現することは不可能である。さらに、シリンジを4℃で保存することは比較的高価である。なぜなら、保存のために冷却チェンバーを準備しなければならないからである。
【0007】
シリンジでは所望の保存寿命が達成されないのであれば、その場合は、従来技術によれば、それに代わるやり方として、バッファー液を容器に充填し、次いで、溶接又は封印形成によって密封する。投与時には、シリンジを用いて、この溶接容器から規定用量が取り出され、次いで再び規定的に投与される。このようなプロセスは比較的複雑である。シリンジによる取り出し及び投与は、不釣り合いに高度の技術的努力を払った末にやっと自動的に実行可能になる。
【0008】
唾液を受容し、投与するためのデバイスが特許文献2から知られる。唾液サンプルは、容器として構成されるベローズによって受容される。このベローズを圧縮することによって、以前に取り込まれたサンプルが再び投与される。この文献から知られる容器は、少なくとも数ヶ月の長期に亘って、揮発性又はクリーピング性の物質を伴う溶液を保存するのに好適となるように意図されたものでもなければ、そのような保存に好適なものでもない。
【0009】
特許文献3から、比較的大量の流体の用量投与のためにベローズを使用することが知られている。
【0010】
特許文献4には、ベローズのサンプル容器として使用が記載されている。ベローズの二つの開放端を密封するために二つの蓋が備えられている。この二つの蓋は、サンプルの充填プロセス又は取り出し時、中空針によって貫通させることが可能な膜又はホイルであることができる。容器の蓋は、密閉性に関して弱点となる。特許文献4から知られるベローズは、二つの蓋によって密封されることになるから、一つの蓋に付随する、密閉性に関するリスクが二重になる。このためにも、特許文献4から知られる容器は、何ヶ月もの長期に亘って揮発性及び/又はクリーピング性の物質をその中に保存するにはあまり好適ではない。
【0011】
特許文献2から、ベローズ型容器は、その上に設置が可能な閉鎖キャップによって密封されることは明らかである。容器は、その中に唾液を受容し、且つ、それから唾液を投与するのに使用される。閉鎖キャップは単に容器の上に設置されるだけなので、それは、特に高い信頼度で該容器を密封することはできない。この容器は、何ヶ月もの長期に亘って、揮発性及び/又はクリーピング性の物質をその中に保存するように意図されたものでもなければ、そのような保存に好適なものでもない。
【0012】
特許文献5からは、ねじ込み蓋付きベローズ型容器が明白である。この容器の開口は、そうしようと思えば、揮発性及び/又は脱出性物質をその中に何ヶ月もの長期に亘って保存することが可能であろうとされるやり方では密封されていない。
【0013】
さらに、従来技術から、容器の開口辺縁に、該開口を密封するために、ホイルを接着することが知られている。このように密封された容器から液体は比較的容易に脱出することが可能である。なぜなら、液体は、狭小な接着剤ビーズに浸透すればよいだけであるから。この型の閉鎖は、液体の、恒久的な、信頼度の高い保存にはあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 2005/0022729 A1
【特許文献2】DE 197 48 331 C1
【特許文献3】DE 38 00 667 C2
【特許文献4】DE 199 22 285 A1
【特許文献5】EP 0 333 075 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ごく小さな容器において、揮発性及び/又はクリーピング性の物質を含有する液体を何ヶ月もの長期、好ましくは少なくとも1年間保存すること、及び、それを、比較的僅かな技術的努力の下に自動的に投与することを可能とすることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、容器として構成されるベローズであって、充填された後、気密及び液密に密封される、好ましくは溶接されるベローズが提供される。このベローズ容器は、保存容器として、同時に投与容器としても使用される。この容器の内容物は、比較的単純な手段によって自動的に送出される。このために、例えば、容器は、ベローズを圧縮する、すなわち、中空針−別にカニューレ又は皮下針とも呼ばれる−、又はそれに匹敵する手段の方向にベローズを圧縮するデバイス中にクランプされる。プロセスにおいて、中空針又は相当手段は、容器の壁又は容器の蓋を貫通する。したがって、特許文献4とは対照的に、本発明による容器は一つの蓋しか含まず、これは、密閉性に関する問題点を緩和する。次に、容器の内容物は、中空針又は相当手段を通じて自動的に送出される。内容物の送出は、直線的運動の生成を必要とするだけなので、内容物の自動的送出を可能とすることは技術的に比較的単純である。特に、特許文献5から知られる容器とは対照的に、本発明の請求項による容器は、内部に追加のチェンバーを含まず、特許文献2から知られる容器とは対照的に、圧縮絞り出し可能な多孔性部分を含まない。
【0017】
ベローズは、従来技術による投与容器の一部として用量投与目的のために使用されるが、そのような容器は、しかし、投与の直前になって初めて充填される。したがって、それらは、その中に含まれる流体を、数ヶ月、又は場合によっては、例えば、2年間保存するための保存容器として使用されることはない。序文(背景技術)で挙げた理由のために、従来技術において公知の容器は、この目的のために意図されておらず、したがって、適切に密封的に封鎖されていない。したがって、従来技術で公知のベローズ付き容器は、特に、溶接封鎖されることがないか、又は、それに匹敵するやり方で液密に密封されていない。特に、従来技術で公知の、ベローズ装備容器は、一般に、最大2 ml、好ましくは最大1 mlの容量を持たない。容器が大きくなりすぎ、同時に比較的長くなると、ベローズは非常に不安定になり、技術的に単純な手段によって内容物を高信頼度で送出することができなくなる。直径を、実質的に2 mlを超える容器容量が得られるほど大きくなるように選ぶと、ベローズ型容器から、単純な技術的手段を用いて指定用量を用量規定的に投与することが困難となる。用量投与プロセスにおいて比較的大きな変動を許容しなければならない。あまりにも不正確な用量は、望ましくないか、又は、少なくとも、サンプルの精製においてきわめて不利である。さらに、大直径は、容器が、スペースの理由でマイクロシステムにおける使用にほとんど適していないという結果を生じさせる。なぜなら、マイクロシステムは、極力小型に構築されているので、マイクロシステムに対し一つ以上の容器を接続するのに利用することが可能な空間はほとんど無いからである。したがって、最大1 mlの容量が特に適切であることが見出されている。最大この容量及びそれ以下であれば、ベローズについて要求される安定性は、たとえ、それがプラスチックから製造され、且つ完全に容器の側壁を形成しているとしても、確保される。一方、このようなベローズは、閉鎖すること、又は極力圧縮することが可能であるが、それは、すなわち、上述の技術手段を用いて、そうしなければその中に含まれるバッファー液すなわち流体を+/−5%の精度で自動的に投与可能とするためである。
【0018】
チューブと比べ、ベローズは、容器の内容物が、比較的単純な技術的手段によって規定的に送出可能とされるという利点を有する。内容物を送出するためにプランジャーが円筒容器の中を移動させられるシリンジに比べると、本発明の意図の中に納まるベローズ型容器では、外部に対する密閉性確保が改善した形態で可能であるという利点が得られる。したがって、相当長期の保存期間も可能となる。
【0019】
本発明の一実施態様では、このようなベローズ型容器は、基底領域及び開放領域を有する。基底領域には、容器の内部に進入する陥凹部又はピンが設けられる。基底領域及び開放領域の間の側壁領域は完全にベローズとして構成される。ベローズが完全に圧縮されても、基底領域と開放領域の間にはある距離が残る。なぜなら、ベローズは0 mmとなるまで圧縮することはできないからである。本発明のこの実施態様では、陥凹部又はピンは、開放領域の方向に延び、理想的には、ベローズが可能な最大限度に圧縮された場合、開放領域に達する。したがって、開放領域が中空針又は相当手段によって貫通されると、それに応じて、容器内容物の比較的完全な送出が実現できる。
【0020】
基底領域が陥凹部を有する場合、この陥凹部を用いると、容器を、自動的送出用デバイス中にクランプすることが特に容易に可能となる。その場合、デバイス中に設けられるプラグ、ピン、又はボルトを陥凹部中に押し込むことが可能である。このようにして、ベローズは、自動的用量送出のために、適切なやり方で投与デバイスの中に確実に保持され、ベローズの圧縮中も確実にガイドされる。
【0021】
一実施態様では、ベローズ型容器の開放領域は頚部を含むことが好ましい。この頚部は、中空針のためのガイドとして使用される。したがって、容器は、開放領域の側において、自動的用量送出のための技術的に単純設計のデバイスの中に、高い信頼度で簡単に保持し、固定することが可能である。この場合、基底領域における前述のピン又は前述の陥凹部の大きさ及び形状は、該ピン又は陥凹部が、頚部に到達するか、又は場合によっては頚部中に進入することを可能とするように選ばれる。
【0022】
内膜を伴う頚部領域は既に特許文献4から知られるが、しかし、この頚部の内径は、該文献から知られる中空針の外形とは一致せず、したがって、この頚部は、本発明の意味において針をガイドすることはできない。むしろ、針の外径は、頚部の内径よりも数倍小さい。
【0023】
前述の頚部は、側部外方に突出するカラーに移行することが好ましい。その場合、工具がカラーの背後に届き、プロセス時、蓋をカラーに溶接又は接着することができる。したがって、この形状・配置では、容器を頚部を介して満たし、次いで、簡単に溶接によって液密にそれを密封することが可能である。次いで、容器は、物質対物質結合によって外部に対して完全に密封される。
【0024】
このために、容器を液密に密封する蓋は、容器の内部方向に陥凹部又はピンを有する。したがって、例えば、頚部領域におけるデッドボリュームはさらに減少する。蓋のピン又は陥凹部は、基底領域におけるピン又は陥凹部の代替品として、又はそれに対する付加物として、デッドボリュームを減少させるために設けることができる。ウェブ又は陥凹部の直径は、該ウェブ又は陥凹部がベローズに対して緊密に接触し、それによって不利なデッドボリュームをさらに減少させるように選ばれることが好ましい。
【0025】
溶接は、従来技術において公知であるが、これまで当業者の誰もこのような容器を長期保存のために使用することを考えたことがなかったので、当業者は、蓋を容器に溶接することも思いつかなかった。したがって、当業者は、容器の開口を蓋を用いて密封するという他の選択肢を好んでいた。
【0026】
本発明の一実施態様では、容器のカラー又は頚部は、自動投与デバイスの陥凹部の中に納められ、したがって高い信頼度で固定される。同時に、プラスチック又は金属から成る、例えば、円形の中空針であって、容器の内容物を投与すべき時、リップを簡単に貫通可能となるように、好ましくはその腔が容器の方向に面取りされる針は、蓋の、この陥凹部の中に進入する。蓋が貫通すると、そのようなことがなければその内部に包含されるバッファー液又は流体は、円形、管状の中空針を通じて排出することができる。
【0027】
本発明の一実施態様では、容器の閉鎖部又は蓋は、針が刺入される陥凹部の内壁に、一つ以上の把捉突起を有する。したがって、針は、陥凹部の中を、進行中大きな摩擦力を克服する必要もなく、極めて正確に、高信頼度で導かれる。したがって、操作エラーなどは特に高い信頼度で回避される。
【0028】
このような把捉突起は、容器が自動的送出用又は自動的投与用デバイスにクランプ又は固定される時、中空針に対するストッパーとして作動するような大きさ・形状を持っていることが好ましい。その場合、針は先ず把捉突起に当たり、したがってある程度の抵抗を受ける。したがって、針の閉鎖部に対する貫通が時期尚早に起こることが回避される。さらに大きな力が加えられる時にのみ、針は、各把捉突起を通過し、その時の意図通りに閉鎖部又は蓋を貫通することができる。
【0029】
本発明の一実施態様では、把捉突起及び針は互いに適応的に配置され、その配置は、ストップ位置に達すると、把捉突起は、同時にシールとして働き、針と容器の間の液密接続を現出するように行われる。容器には、突起の代わりに、例えば、環状陥凹部を設けることも可能である。その場合、該環状陥凹部に対し、針の外周に設けられる、突出する、特に環状のビーズが嵌合する。
【0030】
固定された容器の基底領域において、自動的送出用デバイスは、容器基底の陥凹部の中に進入し、内容物送出のためにベローズを圧縮するのに必要な力を及ぼす、タペット又はピンを含むことが可能である。しかしながら、容器を圧縮するための他の代替え手段も利用が可能である。例えば、針の側から見た場合、容器が圧縮され、容器が流出口を下に向けて固定されると、この接続において針は上方に移動させられる。
【0031】
容器内容物を自動的に送出するための、このような投与デバイスでは、ベローズ型容器は、単に該デバイスの中に挿入するだけでよい。次に、容器は、前述の方法の内、一方か又は他方によって圧縮され、したがって、バッファー液などが用量規定的に投与される。したがって、従来技術と比べると、例えば、自動的に用量規定的バッファー液の投与を可能とするために比較的僅かな努力しか必要とされない。保存容器からのバッファー液の取り出しは不要である。
【0032】
投与デバイスは、同時にいくつかの容器を固定し、その内容物を送出することを可能とするために、いくつかの上記針及びタペットなどを含むことができる。しかしながらその場合、内容物の送出は、対応的ベローズ型容器が該投与デバイスに既に挿入されているのであれば、個別に、次から次へ順に、容器毎に実行することが可能である。
【0033】
このような容器の生産のために射出ブロー成形を使用することができる。このために、先ず、射出成形によりブランク金型を生産する。次に、このブランク金型を、ベローズ形状を持つ最終形に仕上げる。ブランク金型を加熱し、次に、金型をブローして、加熱プラスチックを実際形状にブロー成形する。
【0034】
それとは別に、複数成分射出成形プロセスが実行される。ベローズ型容器の個別領域が、セクション毎に射出成形される。このプロセスでは、異なるプラスチック材料を必要に応じて使用することができる。
【0035】
本発明の一実施態様では、閉鎖部は、この射出成形プロセスとの関連において直接射出成形される。次に、容器は、基底領域から充填され、次いで基底部は溶接又は接着によって閉鎖される。それとは別に、実際の流出口を充填のために使用することが可能であり、それから、前述したように溶接によって閉鎖する。このようにして、物質対物質結合によって完全に密封される容器が準備される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ベローズ装備容器を示す。
【図2】ベローズ装備容器の閉鎖部を示す。
【図3】密封された、ベローズ装備容器を示す。
【図4】投与デバイスによって保持される、図3の容器を示す
【図5】投与デバイスの異なる実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、1 mlの容量を持つ容器であって、ベローズ1、基底領域2、及び、頚部3によって形成される開放領域を有する容器の断面図を示す。頚部は、側部外方に突出するカラー4に移行する。基底領域には陥凹部5が設けられる。容器内容物を自動的に送出するためのデバイスのタペット、ピンなどは、陥凹部5の中に陥入することが可能であり、この陥入によって、基底領域2は上記デバイスの中に固定され、基底部はベローズの圧縮中ガイドされる。さらに、陥凹部5は、前述の理由によって、容器をできるだけ完全に空っぽにすることに寄与する。特に、図1に示す容器は、密閉性に関わる問題を最小とするために、プラスチックから一体的に製造される。
【0038】
容器、又は容器に連結される蓋の断面を図2に示す。既に記述した理由によって、蓋は、陥凹部6及び把捉突起7を含む。蓋の環状辺縁区域は、高い信頼度で容器を気密に密封するために、カラー4に対して溶接又は接着される。図3は、密封された容器を示す。次に、中空針は、内容物送出のために蓋の陥凹部6を貫通する。次に、ベローズは完全に圧縮される。典型的には、このような容器は、+/−5%の精度で80%まで空にすることが可能である。この意味で、投下流体の量について十分に正確な用量投与が好成績で実現される。
【0039】
特に、容器及び蓋は、プラスチック、例えば、ポリプロピレンから成る。製造理由に関する原理的観点から、熱可塑性プラスチックが好ましいと考えられる。中空針は、プラスチック、金属、ガラス、又はセラミック材料から成っていてもよい。
【0040】
図2にその断面が示される、環状に延びる把捉突起7の代わりに、環状に延びる陥凹部又は溝を設けることも可能である。その場合、液体を取り出すために設けられる中空針は、その陥凹部又は溝に対応する、環状に外方に突出する把捉突起を含む。針を、容器の開口を貫いて押し進めると、その溝と陥凹部は互いに噛み合い、そのために、中空針と容器の間に液密接続が実現される。一方、逆に、針において環状溝−それに対し容器の環状把捉突起が噛み合う−を設け、それによって、停止点を設けるだけでなく、同時に液密接続を実現するようにすることができる。
【0041】
図4は、自動的投与用デバイス(以後、「投与デバイス」と呼ぶ)の保持手段8によって保持される、図3の容器を示す。保持手段8は、頚部領域3の外側から容器を掴む。マイクロ流体システム10の中空針9は、頚部3の中に延びる。中空針及びマイクロ流体システムは、投与デバイスの位置づけ手段11によって適切に位置づけられる。このために、位置づけ手段は中空針9の周囲を把持する。位置づけをさらに改善するために、マイクロシステムには、例えば、位置づけ手段11の末端部分の周囲を把持するフック12を設けることができる。
【0042】
投与デバイスは、容器が下方に移動し、そのため、最終的に針が膜6を貫通し、容器の内容物を送出可能とするように構成される。例えば、保持手段8は、その貫通行動のために下方に移動させられる。このようにして、容器の内容物はマイクロシステム中に進入することができる。その場合、把捉突起7は環状シールとして作用し、容器からマイクロシステムへ入る供給物を密封し、そのため液体は外へ脱出することができない。
【0043】
図4に示す投与デバイスは、複数の容器がその中に挿入され、その内容物が調節的にその中に送出されるように製造されることが好ましい。
【0044】
図5は、投与デバイスの異なる実施態様を示す。図4に示す実施態様とは対照的に、位置づけ手段11の側壁は、容器を収容し、ガイドするために使われる。側壁11は、図示のように、容器を保持、ガイドすることを可能とするために、容器に隣接する。投与デバイスのスタンプ又はボルト13は、容器基底部の陥凹部中に延びる。下方に移動することができるスタンプ13によって、先ず、膜6が貫通され、次にベローズが圧縮されて容器を完全に空にする。
【0045】
容器はごく小さいので、ガイド手段として使用される側壁は不要である。それらは、操作をやり易くするだけのものである。したがって、スタンプ13だけで、容器を適切に固定し、移動させるには既に十分である。
【0046】
図1、3から5に示す容器の、一つの特に注目すべき特色は、先ず、ベローズが、唯一の開放領域を持つように製造されるという点にある。膜及びフランジを有する閉鎖部又は蓋は、図2に示すように、この開放領域の上に置かれる。次に、円筒壁によって膜から隔てられるフランジは、ベローズのフランジ4に溶接される。特に、閉鎖部又は蓋は、該蓋に対し容器を簡単にコスト有効的に溶接し、それを密封することが可能となるように、容器と同じ材料、例えば、熱可塑性プラスチックから成る。
【0047】
膜は、開口プロセスを促進するために、指定の破断点を含むことが好ましい。
【0048】
このようにして、膜は、容器の開放チャンネル管の中を移動させられる。蓋の円筒壁は、容器を改善された形態で密封するために、容器の頚部領域3に対して押しつけられるような大きさ・形状を持つことが好ましい。このようにすると、前述のように、円筒壁を針のガイドとして使用することが可能となる。
【0049】
容器の中に配置される膜はさらに、対応的に円筒形の対向要素に対して接着されるホイルによって実現することもでき、その際、対向要素の突起領域は、容器の開放領域の中に押し込まれる。次に、内部に配置される針のためのガイドがある。しかしながら、ホイルの接着プロセスの密封性能は比較的劣悪であるという欠点が残る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器、及び、該容器中に配置される流体、特に、該容器中に配置される液体を含み、
前記容器は流体密閉的に密封されるシステムであって、
前記容器が、基底部(2)を備え、蓋によって密封されるベローズ(1)を含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記容器が溶接封鎖されて密封されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記容器の容量が、2ミリリットルを超えないか、又は好ましくは1ミリリットルを超えないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流体が、アルコール含有バッファー液であることを特徴する、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記容器が、基底領域(2)、及び、前記基底領域からベローズ(1)によって隔てられる開放領域を含み、前記基底領域が、前記開放領域の方向に突出するピン、又は、前記開放領域の方向に突出する陥凹部(5)を含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ベローズ(1)が完全に圧縮されるとき、前記ピン又は陥凹部(5)は前記開放領域に到達する、先行請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記容器が、頚部(3)を備える開放領域を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記頚部が、側部外方に突出するカラー(4)に移行する、先行請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記容器が、前記容器の内部に進入するピン、又は、前記容器の内部に延びる陥凹部(6)を含む蓋によって密封される、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記容器の閉鎖部が、その中に内方に突出する把捉突起(7)、又は好ましくは環状の溝又は凹部を有する陥凹(6)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記容器がプラスチックから成る、先行請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
先行請求項のいずれか1項に記載のシステムのための容器であって、密封基底領域及び開放領域を有するベローズ(1)として構成される容器であり、前記容器の容量が2ミリリットルを超えないか、又は、好ましくは1ミリリットルを超えないことを特徴とする、容器。
【請求項13】
前記容器がプラスチックから成ることを特徴とする、先行請求項に記載の容器。
【請求項14】
前記容器の基底領域が、陥凹部(5)、又は前記容器の内部に延びるピンを含むことを特徴とする、先行2項のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
先行請求項のいずれか1項に記載の容器又はシステムを含むデバイスであって、前記ベローズを圧縮するための手段の外、前記容器の開放領域を貫通するための手段を有するデバイス。
【請求項16】
前記貫通手段が中空針である、先行請求項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスが、前記容器に接続することができるマイクロシステムを含み、その接続によって、前記液体が、前記容器から前記マイクロシステムへ供給できるようになる、先行2項のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
先行3項のいずれか1項に記載のデバイスであって、中空針及び前記容器の開放領域に密封手段が設けられ、前記密封手段によって、前記針が前記容器の開放領域を貫通するとき、前記中空針と前記容器の間に液密接続が設けられる、デバイス。
【請求項19】
請求項12から14の前記3項のいずれか1項に記載の容器を充填するための方法であって、容器が流体によって満たされ、次いで、前記容器の各開口が溶接又は接着閉鎖される、方法。
【請求項20】
前記流体をその内部に配置させる前記容器が、閉鎖状態において少なくとも半年、好ましくは少なくとも1年間保存される、先行請求項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509730(P2012−509730A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537924(P2011−537924)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065081
【国際公開番号】WO2010/060807
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】