説明

マイクロスイッチ

【課題】1000℃近くの高温雰囲気でも使用することのできるマイクロスイッチを提供する。
【解決手段】複数の端子2,3,4を装着固定したベース1にカバー体5を装着し、ベース1とカバー体5とで囲まれた空間にスッチング機構6を組み込み、カバー体5に出退可能に装着された押しボタン7の変位作動によってスイッチング機構6の可動片14をスナップ作動させて、端子間の導通切換えを行うよう構成したマイクロスイッチにおいて、スイッチング機構6における可動片14をスナップ作動させるコイルバネ17、および、ベース1をセラミックスで構成し、スイッチング機構6を構成する金属部材、および、端子2,3,4を耐熱合金で構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、製鉄業、治金業、鋳造業、などの高温雰囲気で使用するのに好適なマイクロスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロスイッチとしては、スイッチケース内にスイッチング機構を組み込み、アクチュエータとしての押しボタンの変位作動によってスイッチング機構における可動片をスナップ作動させて、端子間の導通切換えを行うよう構成したものが、広く活用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−215751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成のマイクロスイッチとしては、400℃程度まで使用できるものが開発されているが、1000℃近い超高温環境のもとで機械装置の位置検出に利用することはできないものであった。
【0004】
本発明は、超高温環境のもとでも使用することのできるマイクロスイッチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明のマイクロスイッチは、複数の端子を装着固定したベースにカバー体を装着し、ベースとカバー体とで囲まれた空間にスッチング機構を組み込み、カバー体に出退可能に装着されたアクチュエータの変位作動によって前記スイッチング機構の可動片をスナップ作動させて、端子間の導通切換えを行うマイクロスイッチにおいて、前記スイッチング機構の可動片をスナップ作動させるコイルバネ、および、前記ベースを、セラミックスで構成する一方、前記スイッチング機構を構成する金属部材、および、前記端子を、耐熱合金で構成し、残余の構成部材を、セラミックスまたは耐熱合金で構成している。
【0006】
ベースは、複数の端子が装着固定されるものであり、カバー体は、前記ベースに装着されて該ベースとでスイッチング機構を組み込む空間を形成するものであり、ベースとカバー体とによってスイッチのケース(筐体)を構成するものである。
【0007】
アクチュエータは、外部からの力や動きを内部のスイッチング機構に伝えるものである。
【0008】
耐熱合金としては、ニッケル基耐熱合金が好ましいが、鉄基耐熱合金、コバルト基耐熱合金、あるいは、高融点金属合金などであってもよい。
【0009】
本発明によると、1000℃近くの超高温環境のもとでも、各構成部材は溶融したり変形することがなく、所期の機能を発揮して所望の接点切換え作動を行う。
【0010】
ここで、セラミックスの単位長さ当たりの弾性変位量は僅かであるが、コイルバネにすることでスナップ作動に必要な弾性変位量を確保することができる。
【0011】
(2)本発明のマイクロスイッチの一つの実施形態では、前記スイッチング機構は、遊端部に可動接点を備えた前記可動片と、端子に連結されるとともに可動片の基端を揺動可能に支持する受け部材と、他の端子に連結されるとともに前記可動片の遊端部に対向する固定接点を備えた固定片と、前記受け部材に揺動可能に支持されて前記アクチュエータで揺動操作される作動片と、該作動片と前記可動片とに亘って架設した前記コイルバネとを備えている。
【0012】
この実施形態によると、コイルバネの一端を支持した作動片が変位することで可動片がスナップ作動し、瞬時に接点切換えが適切に行われる。
【0013】
(3)本発明のマイクロスイッチの他の実施形態では、前記コイルバネが引っ張りコイルバネである。
【0014】
この実施形態によると、コイルバネに働く力が常に一直線上にあって、コイルバネの各部が均等に弾性変形することになり、高い耐久性をもたらす。
【0015】
(4)本発明のマイクロスイッチの更に他の実施形態では、前記セラッミクスが窒化珪素系セラッミックスである。
【0016】
この実施形態によると、1000℃近くの超高温域でも強度の低下がなく、特に、スナップ作動用のコイルバネの弾性特性が好適に維持される。
【0017】
(5)本発明のマイクロスイッチの好ましい実施形態では、耐熱合金がニッケル基耐熱合金である。
【0018】
この実施形態によると、1000℃近くの超高温域でも強度の低下がないので、接点切換え作動が繰り返し行われても塑性変形してしまうことがなく、部材形状や姿勢が安定維持されて、安定したスイッチング特性を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1000℃近くの高温環境のもとでも使用することのできる耐熱性に優れた超高温仕様のマイクロスイッチを得ることができ、製鉄業界、治金業界、鋳造業界、電気炉内などでの精度の高い位置検出など、従来のマイクロスイッチでは使用できなかった産業分野での直接検出の要望にも応え、FA化の促進に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面によって、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1に、本発明に係るマイクロスイッチの縦断正面図が、また、図2にその分解斜視図がそれぞれ示されている。
【0022】
このマイクロスイッチは、絶縁性のベース1、ベース1に貫通装着された3本の端子2,3,4、ベース1に外嵌装着されたカバー体5、ベース1とカバー体5とで囲まれた空間に組み込まれたスナップ作動式のスッチング機構6、カバー5に出退可能に装着されたアクチュエータとしての押しボタン7、ベース1のスイッチ取付け孔に挿通装着される筒状のホルダー8、等で構成されている。
【0023】
各端子2,3,4は鍔付きの丸軸状に形成されたものであり、ベース1に内方から挿通されて、その突出部に装着したナット2a,3a,4aを締め込むことでベース1に固定される。また、各端子2,3,4の突出端部に装着したナット2b,3b,4bを用いて外部導線を接続するようになっている。
【0024】
スイッチング機構6は、コモン端子となる端子2の内端部にカシメ付け連結された受け部材10、常閉端子となる端子3の内端部にカシメ付け連結された固定片11、常開端子となる端子4の内端部にカシメ付け連結された固定片12、受け部材10の前端に形成した前向きノッチ13に後端が係止された平面形状が二股状の可動片14、受け部材10から延出された支持突起10aの後向きノッチ15に後端が係止された作動片16、および、この作動片16の前端に設けたバネ受け突起16aと可動片14の前端側箇所に設けたバネ受け孔14aとに亘って架設された引っ張りコイルバネ17で構成されている。
【0025】
一対の固定片11,12は前向きノッチ13との係止点pを支点にして上下揺動可能な可動片14の遊端に上下から対向するよう配備されるとともに、可動片14の遊端に備えた上下の可動接点18に対向する固定接点19,20が各固定片11,12に設けられており、可動片14が上下に揺動して可動接点18が固定接点19あるいは固定接点20に接触されることで、端子2と端子3の導通状態、あるいは、端子2と端子4の導通状態が得られるようになっている。
【0026】
押しボタン7はカバー体5に内方から抜出し不能に挿通装着されており、その内端に備えられた操作突起7aが作動片16に対向配備されており、押しボタン7を外部から押し込み変位させることで、作動片16が後向きノッチ15との係止点qを支点にして下方に揺動されるようになっている。
【0027】
スイッチング機構6は以上のように構成されており、押しボタン7に押し込み外力が働かない通常時には、図1に示すように、初期張力をもって架設されたコイルバネ17の張力によって可動片14は上向きの揺動力を受け、可動片14が固定片11に押圧接触されて端子2と端子3が導通された状態で安定している。
【0028】
図1に示す状態から、押しボタン7が外力によって押し込み変位されると、作動片16が係止点qを中心に下方に揺動され、バネ受け突起16aが移動することでコイルバネ17は伸ばされつつ、バネ受け孔14aとの係止箇所を中心に下方に揺動される。バネ受け突起16aが、可動14の係止点pとバネ受け孔14aとを通る仮想線(死点)を下方に通過したとたん、コイルバネ17の張力によって可動片14に与えられる揺動作用が上向きから下向きに反転し、可動片14は瞬時に下方揺動されて固定片12に接触導通され、一瞬にして接点切換えが行われる。
【0029】
押しボタン7の押し込み操作が解除されると作動片16は自由状態となり、コイルバネ17の張力によって作動片16は上方に揺動され、バネ受け突起16aが前記死点を上方に通過することで、可動片14は再び上方への揺動作用を受け、図1に示す元の姿勢に復帰されて接点切換えが行われる。
【0030】
以上のように構成されたマイクロスイッチの耐熱性を高めるために、各部材の材料が以下のように設定されている。
【0031】
つまり、ベース1、押しボタン7、および、コイルバネ17がセラミックスで形成されるとともに、端子2,3,4、カバー体5、受け部材10、固定片11、可動片14、作動片16、ナット2a,2b,3a,3b,4a,4b、ホルダー8、ホルダー用座金8a、などの金属製の部材が全て耐熱合金で形成されている。また、可動接点18および固定接点19,20には白金系の合金が使用されている。
【0032】
ここで、セラミックスとしては、窒化珪素(シリコンナイトライド)系セラッミクスが好適である。因みに、図3に示すように、窒化珪素系セラッミクスは、ステンレス鋼SUS304、インコネル、PSZ(部分安定化ジルコニア)に比べて1000℃近くまで強度の低下がなく、コイルバネを高温雰囲気でも所期の弾性機能を好適に発揮させることができる。
【0033】
耐熱合金としては、1200℃まで強度と耐酸化性を有する固溶強化型の耐熱合金の一種であるニッケル基耐熱合金、例えば、成分(Ni47.5,Cr21.8,Mo9.0,Fe18.5,Co1.5,その他W0.6)であるハステロイ(商標)が好適である。
【0034】
(他の実施例)
カバー体5に大きい外力がかかるおそれのない箇所で使用されるマイクロスイッチにおいては、カバー体5をセラミックスで形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、マイクロスイッチやリミットスイッチとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】マイクロスイッチの縦断正面図である。
【図2】マイクロスイッチの分解斜視図である。
【図3】各種材料の「温度−強度」特性線図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ベース
2,3,4 端子
5 カバー体
6 スイッチング機構
7 押しボタン
11,12 固定片
14 可動片
16 作動片
17 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子を装着固定したベースにカバー体を装着し、ベースとカバー体とで囲まれた空間にスッチング機構を組み込み、カバー体に出退可能に装着されたアクチュエータの変位作動によって前記スイッチング機構の可動片をスナップ作動させて、端子間の導通切換えを行うマイクロスイッチにおいて、
前記スイッチング機構の可動片をスナップ作動させるコイルバネ、および、前記ベースを、セラミックスで構成する一方、前記スイッチング機構を構成する金属部材、および、前記端子を、耐熱合金で構成し、残余の構成部材を、セラミックスまたは耐熱合金で構成することを特徴とするマイクロスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロスイッチにおいて、
前記スイッチング機構は、遊端部に可動接点を備えた前記可動片と、端子に連結されるとともに可動片の基端を揺動可能に支持する受け部材と、他の端子に連結されるとともに前記可動片の遊端部に対向する固定接点を備えた固定片と、前記受け部材に揺動可能に支持されて前記アクチュエータで揺動操作される作動片と、該作動片と前記可動片とに亘って架設した前記コイルバネとを備えることを特徴とするマイクロスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2記載のマイクロスイッチにおいて、
前記コイルバネが引っ張りコイルバネであることを特徴とするマイクロスイッチ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロスイッチにおいて、
前記セラッミクスが窒化珪素系セラッミックスであることを特徴とするマイクロスイッチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロスイッチにおいて、
耐熱合金がニッケル基耐熱合金であることを特徴とするマイクロスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−234510(P2007−234510A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57532(P2006−57532)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】