説明

マイクロチップ

【課題】本発明は、キュベット部を通過する透過光を精度良く制御し、かつ製造工程の簡単化及び製造コストの低下を図ることができるマイクロチップを提供することを目的とする。
【解決手段】基板内部に形成され、試料が導入される検出路23と、検出路23の一端の基板により形成され、検出路23に光を入射する入射端部29と、検出路23の他端の基板により形成され、検出路23を通過後の光を基板外部に出射する出射端部31とを含み、出射端部31は、検出路23の一端に対応する基板の外壁の切り欠き部33を有して形成されており、切り欠き部33及は、検出路23から出射される光の出射面積を制限するマイクロチップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療、食品、創薬等の分野で、数mm、数cmの大きさの基板上で、酵素、タンパク質、ウィルス、細胞などの生体物質を分離、反応、混合、測定及び検出等するLab on a Chipと呼ばれる技術が近年注目されている。Lab on a Chipで用いられるチップは一般にマイクロチップと呼ばれており、例えば、臨床分析チップ、環境分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、たんぱく質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップなどがある。
【0003】
マイクロチップを用いた試料の定量方法の1つに、光の透過量を用いた定量方法がある。このようなマイクロチップには、前述の分離、反応、混合、測定を行うための処理部の他に、光が照射される端部と透過された光を出射する端部とを有するキュベット部が設けられている。そして、マイクロチップを光の透過量を測定する測定装置に設置して、キュベット部を透過する透過光を測定し試料の定量を行う。測定装置にはキュベット部を通過する透過光を制限するためのスリットが設けられており、キュベット部とスリットとを位置あわせしてマイクロチップを設置する。しかし、このように測定装置側に透過光を制限するスリットが設けられていると、マイクロチップと測定装置とを正確に位置あわせできない場合には、キュベット部とスリットとの位置ずれが生じてしまう。そのため、キュベット部を通過する透過光を精度良く制御、つまり透過光を正確に制限することができず、試料の定量を正確に行うことができない。
【0004】
そこで、スリットをマイクロチップ側に設けることで、キュベット部とスリットとの位置ずれを阻止し、キュベット部を通過する透過光を精度良く制御している構成が特許文献1に開示されている。特許文献1のスリットは、キュベット部以外の部分を金属クロム膜で覆うことにより形成されている。
【特許文献1】特開2004−53345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、石英ガラス板上に金属クロム膜をスパッタリングにより成膜し、キュベット部に対応する部分の金属クロム膜をエッチングにより除去することでスリットを形成する。このように特許文献1の方法では、スパッタリング、エッチング等の工程を経る必要があり製造工程が複雑である。また、これらの工程には真空装置などの高価な装置を使用する必要があるため、マイクロチップの低コスト化が困難である。
【0006】
さらに、このようなエッチング工程を、マイクロチップで一般的に用いられているプラスチップ基板に適用することは困難である。これは、エッチング工程で使用するフォトレジストをパターンニングするためには、熱処理やアルカリ液等による薬液処理の工程が必要であり、プラスチック基板に適用した場合には変形やクラックが生じるからである。
また、特許文献1では、スリットを成す金属クロム膜と蓋部をなす石英ガラス基板との材質が異なるため、溶着等の手法で貼り合わせた場合にはマイクロチップの強度が弱くなってしまい、またそもそも貼り合わせが困難である。そのため、金属クロム膜上に石英ガラスをスパッタリングすることで材質を同一にし、両基板の接着性を高める必要がある。このような別途の膜の成膜により製造コストはさらに高くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、キュベット部を通過する透過光を精度良く制御し、かつ製造工程の簡単化及び製造コストの低下を図ることができるマイクロチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1発明は、上記の課題を解決するために、基板内部に形成され、定量対象の試料が導入される検出路と、前記検出路の一端の基板により形成され、検出路に光を入射する入射端部と、前記検出路の他端の基板により形成され、前記検出路を通過後の光を前記基板外部に出射する出射端部とを含み、前記検出路から出射される光の出射面積を制限するために、前記出射端部の前記検出路の一端に対応する基板外壁の切り欠き部及び前記入射端部の検出路内壁の面取り部の少なくともいずれかが形成されている、マイクロチップを提供する。
【0009】
光の透過量は検出路に導入される試料の性質に依存すべきであるが、光の透過量はそれが出射される出射面積によっても変動する。本発明では、前述の構成により、出射端部から出射される光の出射面積を所望の面積に制限する。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。また、光の出射面積を制限する入射端部及び出射端部が、検出路と一体に基板から形成されているため、光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部又は入射端部の面取り部と、検出路を通過する光の光軸との位置ずれがない。これによっても、透過光の出射面積を正確に所望の面積に制限して、試料を正確に定量することができる。以上より、本発明の構成によれば、微量の試料であっても誤差を少なくして正確に定量することができる。
【0010】
光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部及び/又は入射端部の面取り部は、検出路と同一基板を切り欠いて形成されるため、射出成形を用いて検出路と同一工程で一度に形成可能である。よって、製造面からも光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部及び/又は入射端部の面取り部と検出路との位置ずれを防止することができる。
また、出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部の形成と検出路の形成とが同一工程のため、出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部を形成するための特別な工程が不要であり製造コストの低下を図ることができる。さらに、射出成形でのマイクロチップの製造には、フォトレジストをパターンニングするための熱処理、アルカリ溶液等を用いたウェットエッチングやドライエッチング等のエッチング工程が不要である。そのため、エッチングに対する耐性が比較的弱い材料よってもキュベット部を形成可能である。例えば、プラスチック基板等のガラス基板以外への適用を検討できる。また、射出成形は、前述のようなエッチング工程と比較して低コストであるため、マイクロチップを安価に製造することが可能となる。
【0011】
本願第2発明は、第1発明において、前記出射端部の切り欠き部及び/又は前記入射端部の面取り部は、前記検出路の断面方向の中央部分を通過した光が選択的に出射されるように、光の出射方向を制御するマイクロチップを提供する。
検出路の内壁には、検出路への試料の導入の際などに気泡が発生する場合がある。この検出路内壁に付着した気泡により、検出路の内壁付近を通過した光は散乱され、出射端部から検出される光の透過量に変動を与える可能性がある。本発明の出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部は、検出路の内壁付近を通過し気泡により乱反射されるなど影響を受けた光が出射端部から出射されるのを阻止し、検出路の中央部分を通過した光のみを出射させる。これにより、検出路の内壁に付着した気泡に起因した光の透過量の変動をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0012】
本願第3発明は、第1発明において、前記出射端部には、前記検出路の一端に対応する基板外壁に切り欠き部が形成されており、前記出射端部の切り欠き部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されているマイクロチップを提供する。
【0013】
出射端部の外壁において凹部の開口が底面に向かうほど狭まるとは、光の出射方向に凹部の開口が徐々に広がるように形成されていることを意味する。つまり、出射端部の切り欠き部を形成する凹部の傾斜面は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面に対して光軸から離れるように傾斜する。よって、検出路を通過した光のうち、出射端部の切り欠き部の傾斜面に入射された光は、傾斜面で反射されて出射端部から基板外部に出射されない。一方、検出路を通過した光のうち、光軸と概ね垂直な底面に入射された光は、出射端部の切り欠き部の底面を通過して基板外部に出射される。よって、出射端部から基板外部に出射される光の出射面積を、出射端部の切り欠き部を形成する凹部の底面の面積に制限することができる。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0014】
また、検出路の内壁付近を通過し気泡より乱反射されるなど影響を受けた光は、出射端部の切り欠き部の傾斜面により反射されるため、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。さらに、出射端部の切り欠き部の傾斜面が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面に入射された光は検出路の外側方向に反射され、検出路内部に向かわない。そのため、傾斜面で反射された光が凹部の底面に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0015】
本願第4発明は、第3発明において、前記出射端部の切り欠き部の底面と傾斜面とがなす角θ1(θ1<90°)は、下記式(1)で表される臨界角θxよりも大きいマイクロチップを提供する。
【0016】
【数1】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率。
出射端部の切り欠き部の底面と傾斜面とがなす角θ1が関係式(1)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、出射端部の切り欠き部の傾斜面に入射された光は全反射される。よって、出射端部の切り欠き部がこのような傾斜面を有する場合には、検出路を通過した光のうち出射端部の切り欠き部の傾斜面に入射された光は検出路の外側に全反射され、切り欠き部の底面に入射された光は出射端部から基板外部に出射される。このようにして、出射端部から出射される光の出射面積を所定面積に制限することで、試料を正確に定量することができる。
【0017】
本願第5発明は、第3発明において、前記出射端部には、前記検出路内壁に面取り部がさらに形成されており、前記出射端部の面取り部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されているマイクロチップを提供する。
【0018】
出射端部側の検出路の内壁において凹部の開口が底面に向かうほど狭まるとは、光の出射方向に沿って凹部の開口が徐々に狭まるように形成されていることを意味する。つまり、出射端部の面取り部を形成する凹部の傾斜面は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面に対して光軸に近づくように傾斜する。よって、検出路を通過した光のうち、出射端部の面取り部の傾斜面に入射された光は光軸から離れるように屈折されて出射端部内を進み、切り欠き部の傾斜面に入射される。結局、出射端部側において、面取り部の傾斜面に入射され屈折された光は、切り欠き部の傾斜面で反射されて出射端部から基板外部に出射されない。このように出射端部の面取り部の傾斜面で光軸から離れるように光を屈折させた後に、出射端部の切り欠き部の傾斜面に入射することで、切り欠き部の底面及び傾斜面がなす角θ2(θ2<90°)を小さくすることができる。これは、面取り部の傾斜面で屈折された光を切り欠き部の傾斜面に入射することで、切り欠き部の傾斜面への光の入射角が大きくなり、角θ2を小さくしても切り欠き部の傾斜面での光の反射条件を維持することができるからである。これにより、出射端部と透過光の検出器との距離を、より近づけることができ埃等によるノイズの除去が期待できる。
【0019】
本願第6発明は、第5発明において、前記出射端部における切り欠き部の底面及び傾斜面がなす角θ2(θ2<90°)は、前記出射端部における面取り部の底面及び傾斜面がなす角θ3(θ3<90°)との関係が下記式(2)で表される臨界各θxよりも大きいマイクロチップを提供する。
【0020】
【数2】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率。
【0021】
出射端部の切り欠き部の底面と傾斜面とがなす角θ2が関係式(2)を満たす臨界角θxよりも大きくなるように設計することで、光の出射面積を所定面積に制限にして試料を正確に定量することができるとともに、出射端部と透過光の検出器との距離を近づけて埃等によるノイズの除去が期待できる。
本願第7発明は、第1発明において、前記入射端部には、前記検出路内壁に面取り部が形成されており、前記入射端部の面取り部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されているマイクロチップを提供する。
【0022】
入射端部側の検出路の内壁において凹部の開口が底面に向かうほど狭まるとは、光の出射方向に沿って凹部の開口が徐々に広がるように形成されていることを意味する。つまり、入射端部の面取り部を形成する凹部の傾斜面は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面に対して光軸から離れるように傾斜する。よって、入射端部に入射された光のうち、入射端部の面取り部の傾斜面に入射された光は、傾斜面で反射されて検出路に入射されない。一方、入射端部に入射された光のうち、光軸と概ね垂直な底面に入射された光は、入射端部の面取り部の底面を通過して検出路に入射される。よって、出射端部から出射される光の出射面積を、入射端部の面取り部を形成する凹部の底面の面積に制限することができる。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0023】
また、入射端部の面取り部を形成する凹部の底面に入射された光を検出路に入射するため、光は検出路の中央部分を通過する。よって、検出路の内壁付近を通過し気泡により乱反射されるなど、気泡に起因した透過量の変動をなくすことができる。
さらに、入射端部の傾斜面が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面に入射された光は検出路の外側方向に反射され、検出路内部に向かわない。そのため、傾斜面で反射された光が凹部の底面に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0024】
本願第8発明は、第7発明において、前記入射端部の面取り部の底面と傾斜面とがなす角θ4(θ4<90°)は、下記式(3)で表される臨界各θxよりも大きいマイクロチップを提供する。
【0025】
【数3】

ここで、n1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率である。
入射端部の面取り部の底面と傾斜面とがなす角θ4が関係式(3)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、入射端部の面取り部の傾斜面に入射された光は全反射される。よって、入射端部の面取り部がこのような傾斜面を有する場合には、入射端部に入射された光のうち入射端部の面取り部の傾斜面に入射された光は検出路の外側方向に全反射され、面取り部の底面に入射された光は検出路に入射される。このようにして、出射端部から出射される光の出射面積を所定面積に制限することで、試料を正確に定量することができる。
【0026】
本願第9発明は、第7発明において、前記入射端部には、前記検出路の他端に対応する基板外壁に切り欠き部がさらに形成されており、前記入射端部の切り欠き部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されているマイクロチップを提供する。
【0027】
入射端部の外壁において凹部の開口が底面に向かうほど狭まるとは、光の出射方向に凹部の開口が徐々に狭まるように形成されていることを意味する。つまり、入射端部の切り欠き部を形成する凹部の傾斜面は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面に対して光軸に近づくように傾斜する。よって、入射端部の外壁に入射された光のうち、入射端部の切り欠き部の傾斜面に入射された光は、光軸から離れるように屈折されて入射端部内を進み、面取り部の傾斜面に入射される。結局、入射端部側において、切り欠き部の傾斜面に入射され屈折された光は、面取り部の傾斜面で反射されて検出路内に入射されない。このように入射端部の切り欠き部の傾斜面で光軸から離れるように光を屈折させた後に、入射端部の面取り部の傾斜面に入射することで、面取り部の底面及び傾斜面がなす角θ5(θ5<90°)を小さくすることができる。これは、切り欠き部の傾斜面で屈折された光を面取り部の傾斜面に入射することで、面取り部の傾斜面への光の入射角が大きくなり、角θ5を小さくしても面取り部の傾斜面での光の反射条件を維持することができるからである。これにより、入射端部の面取り部の底面から検出路に入射された光が、面取り部の傾斜面に付着した気泡により乱反射されるのが抑制され得る。
【0028】
本願第10発明は、第9発明において、前記入射端部における面取り部の底面及び傾斜面がなす角θ5(θ5<90°)は、前記入射端部における切り欠き部の底面及び傾斜面がなす角θ6(θ6<90°)との関係が下記式(4)で表される臨界各θxよりも大きいマイクロチップを提供する。
【0029】
【数4】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率である。
【0030】
入射端部の面取り部の底面と傾斜面とがなす角θ5が関係式(4)を満たす臨界角θxよりも大きくなるように設計することで、光の出射面積を所定面積に制限にして試料を正確に定量することができるとともに、入射端部の面取り部の底面から検出路に入射された光が、面取り部の傾斜面に付着した気泡により乱反射されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、キュベット部を通過する透過光を精度良く制御し、かつ製造工程の簡単化及び製造コストの低下を図ることができるマイクロチップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<発明の概要>
マイクロチップ内に形成される本発明に係るキュベット部は、検出路、入射端部及び出射端部により形成される。検出路は、基板内部に形成され、定量対象の試料が導入される。入射端部は、検出路の一端の基板により形成され、検出路に光を入射する。出射端部は、検出路の他端の基板により形成され、検出路を通過後の光を基板外部に出射する。ここで、キュベット部は、出射端部の切り欠き部又は入射端部の面取り部の少なくともいずれかを有して形成されている。出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部は、検出路から出射される光の出射面積を制限する。
【0033】
ここで、光の透過量は検出路に導入される試料の性質に依存すべきであるが、光の透過量はそれが出射される出射面積によっても変動する。本発明では、前述の構成により、出射端部から出射される光の出射面積を所望の面積に制限する。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。また、光の出射面積を制限する入射端部及び出射端部が、検出路と一体に基板から形成されているため、光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部又は入射端部の面取り部と、検出路を通過する光の光軸との位置ずれがない。これによっても、透過光の出射面積を正確に所望の面積に制限して、試料を正確に定量することができる。以上より、本発明の構成によれば、微量の試料であっても誤差を少なくして正確に定量することができる。
【0034】
光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部及び/又は入射端部の面取り部は、検出路と同一基板を切り欠いて形成されるため、射出成形を用いて検出路と同一工程で一度に形成可能である。よって、製造面からも光の出射面積を制限する出射端部の切り欠き部及び/又は入射端部の面取り部と検出路との位置ずれを防止することができる。
また、出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部の形成と検出路の形成とが同一工程のため、出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部を形成するための特別な工程が不要であり製造コストの低下を図ることができる。さらに、射出成形でのマイクロチップの製造には、フォトレジストをパターンニングするための熱処理、アルカリ溶液等を用いたウェットエッチングやドライエッチング等のエッチング工程が不要である。そのため、エッチングに対する耐性が比較的弱い材料よってもキュベット部を形成可能である。例えば、プラスチック基板等のガラス基板以外への適用を検討できる。また、射出成形は、前述のようなエッチング工程と比較して低コストであるため、マイクロチップを安価に製造することが可能となる。
【0035】
以上のように、本発明のマイクロチップを用いれば正確に試料の定量を行いつつ、またそのマイクロチップを容易に製造することができる。
なお、出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部は、検出路の断面方向の中央部分を通過した光が選択的に出射されるように、光の出射方向を制御することもできる。検出路の内壁には、検出路への試料の導入の際などに気泡が発生する場合がある。この検出路内壁に付着した気泡により、検出路の内壁付近を通過した光は散乱され、出射端部から検出される光の透過量に変動を与える可能性がある。本発明の出射端部の切り欠き部及び入射端部の面取り部は、検出路の内壁付近を通過し気泡により乱反射されるなど影響を受けた光が出射端部から出射されるのを阻止し、検出路の中央部分を通過した光のみを出射させる。これにより、検出路の内壁に付着した気泡に起因した光の透過量の変動をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0036】
<第1実施形態例>
(1)マイクロチップの全体構成
図1は、本発明の第1実施形態例に係るキュベット部を含むマイクロチップの全体斜視図である。
マイクロチップ100は、基板である上部基板100aと下部基板100bとで形成されている。マイクロチップ100の下部基板100bは、対象成分を含む試料の取込口1、遠心分離管3、保持部5、計量部7、廃液溜9、試薬が貯蔵される試薬溜(11a、11b)11、1次混合部13、ミキサ部からなる2次混合部15、取出口17、検出路19を含むキュベット部20及びこれらの各部を接続するマイクロ流路を有している。また、マイクロチップ100の上部基板100aは、下部基板100bを覆い、試料の取込口1や取出口17などの基板外部に貫通する開口を有している。このマイクロチップ100は、図1に示すように、中心1及び中心2を中心する回転により対象成分を分離、秤量及び試薬との混合を行う。以下に、マイクロチップ100に導入する試料を血液とし、血漿中に定量対象の成分が含まれるものとして、各部の説明を行う。
【0037】
取込口1は、マイクロチップ100外部から血液を取り込む。
遠心分離管3は、中心1に対して開口を有するように概ねU字形をしており、一方の開口した端部は計量部7に、他方の開口した端部は取込口1に接続されている。また、遠心分離管3は、中心1を中心とする回転により取込口1から血液を取り込み、かつ血液から対象成分を含む血漿を遠心分離する。ここで、中心1を中心とする回転とは、中心1を中心としてマイクロチップ100を回転し、マイクロチップ100内部の液体に所定方向の遠心力を印加することを意味する。中心2及び中心3についても同様である。
【0038】
保持部5は、遠心分離管3のU字形の底部に設けられており、中心1とする遠心分離により、血液から対象成分以外の成分である血球を分離し保持する。保持部5を設けることにより、対象成分を含む血漿と非対象成分である血球とを効率よく分離することができる。
計量部7は、遠心分離管3と接続されており、遠心分離管3から血液中の血漿が導入される。また、計量部7は廃液溜9と接続されており、所定の容積を有する。よって、所定の容積を超える過剰量の血漿が導入されると、廃液溜9に排出される。
【0039】
廃液溜9は、計量部7に接続されており、前述のように過剰量の血漿を保持する。
試薬溜11a、11bは、1次混合部13に接続されており、マイクロチップ100の使用前に試薬が予め導入されている。試薬溜11a、11b内の試薬は、遠心分離の際の中心1を中心とする回転により1次混合部13に導入される。
1次混合部13は、マイクロ流路を介して計量部7に接続されており、計量部7から血漿が導入される。さらに、1次混合部13は、試薬が蓄積された試薬溜11と接続されており、試薬が導入される。そのため、1次混合部13では血漿及び試薬が合流、混合される。
【0040】
2次混合部15は、1次混合部13と接続されており、1次混合部13で混合された混合試料が導入される。2次混合部15は、H字形状のミキサ部が複数直列に接続されて形成されており、1次混合部13から導入された混合試料はこのミキサ部を通過してその流れ方向が変化させられることでさらに混合される。
検出路19は、キュベット部20に形成されており、2次混合部15に接続されて、試薬と血漿との混合試料が導入される。混合試料の定量を光学的に行う場合には、キュベット部20の一端から検出路19に光を導入し、検出路19を通過後の光を他端から取り出す。そして、光の透過量を測定することで、血液成分の定量を行う。
【0041】
取出口17は、検出路19内の混合試料をマイクロチップ100外部に取り出す。
(2)キュベット部の各種構成
以下に、キュベット部20の構成について各種例を挙げて説明する。
(2−1)パターンA
(i)構成
図2は、パターンAのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図2(a)はパターンAのキュベット部20Aの斜視図であり、図2(b)は同図(a)のA1−A1’断面図であり、図2(c)は同図(b)のA2−A2’断面図である。
【0042】
キュベット部20Aは、上部基板21a及び下部基板21bから形成されている。キュベット部20Aは、検出路23と、検出路23に血漿及び試薬の混合試料を導入する導入路25及び混合試料を検出路23から排出する排出路27と、基板外部から光が入射される入射端部29と、検出路23を通過後の光を基板外部に出射する出射端部31とを含む。
【0043】
検出路23は、下部基板21b内部の溝と、上部基板21aの下面とにより囲まれて形成されている。また、入射端部29は検出路23の一端の基板により形成され、出射端部31は検出路23の他端の基板により形成されている。入射端部29は基板外部から光が照射される入射端部外壁面29aを有しており、出射端部31は基板外部に光を出射する出射端部外壁面を有している。ここで、検出路23に光を入射する入射面23aは入射端部29の入射端部内壁面を兼ねており、検出路23を通過した光が出射される出射面23bは出射端部31の出射端部内壁面を兼ねている。
【0044】
出射端部31の出射端部外壁には、切り欠き部33が形成されている。切り欠き部33は、検出路23を通過する光の光軸と概ね垂直な底面33−2と、底面33−2を囲む3面の傾斜面33−1及び1面の上部基板21aの下面を含む側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面33−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、切り欠き部33を形成する凹部の傾斜面33−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面33−2に対して光軸から離れるように傾斜している。
【0045】
(ii)キュベット部での光の挙動
検出路23に血漿及び試薬の混合試料を導入後、入射端部29の入射端部外壁面29aに光が照射され、入射端部29に光が入射される。光は、入射端部29を通過し、入射面23aから検出路23に導入され、混合試料で満たされた検出路23内部を通過する。そして、検出路23の内部を通過した光は、出射面23bから出射端部31に導入される。次に、出射端部31を通過した光は、出射端部31外壁の切り欠き部33に導入される。ここで、切り欠き部33を形成する凹部の底面33−2は検出路23を通過する光の光軸と垂直であり、底面33−2を囲む傾斜面33−1は底面33−2に対して光軸から離れるように傾斜している。よって、検出路23を通過した光のうち傾斜面33−1に入射された光は反射されて出射端部31から基板外部に出射されない。一方、検出路23を通過した光のうち、光軸と概ね垂直な底面33−2に入射された光は、底面33−2を通過して基板外部に出射される。よって、出射端部31から基板外部に出射される光の出射面積を、出射端部31における凹部の底面33−2の面積に制限することができる。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、定量対象の血液成分を正確に定量することができる。
【0046】
また、検出路23の内壁には、検出路23への試料の導入の際などに気泡がする場合がある。しかし、検出路23の内壁付近を通過し気泡より乱反射されるなど影響を受けた光は、凹部の底面33−2を囲む傾斜面33−1により反射されるため、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。
さらに、切り欠き部33の傾斜面33−1が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面33−1に入射された光は検出路23の外側方向に反射され、検出路23内部に向かわない。よって、傾斜面33−1で反射された光が凹部の底面33−2に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0047】
(iii)全反射の条件
図3は、光が全反射されるための条件を示す説明図である。
切り欠き部33の底面33−2と傾斜面33−1とがなす角θa(θa<90°)は、下記式(5)で表される臨界角θxよりも大きい(θa>θx)。
【0048】
【数5】

ここで、n0はキュベット部20Aが載置されている雰囲気の屈折率、
1は下部基板21bの屈折率である。
出射端部31の切り欠き部33における底面33−2と傾斜面33−1とがなす角θaが関係式(5)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、切り欠き部33の傾斜面33−1に入射された光は全反射される。よって、出射端部31の切り欠き部33がこのような傾斜面33−1を有する場合には、検出路23を通過した光のうち切り欠き部33の傾斜面33−1に入射された光は検出路23の外側に全反射され、切り欠き部33の底面33−2に入射された光は出射端部31から基板外部に出射される。このようにして、出射端部31から出射される光の出射面積を所定面積に制限することで、試料を正確に定量することができる。
【0049】
ここで、キュベット部20Aを空気中(屈折率n0=1)に載置した場合、キュベット部20Aを形成する基板の屈折率と上記角θaとの関係は、例えば表1のようになる。
【0050】
【表1】

なお、角θaが小さい場合には、キュベット部20Aの出射端部31と、出射端部31に対応するように配置される透過光の検出器(図示せず)との距離を、より近づけることができ埃等によるノイズを除去することができる。これは、同じ出射面積の場合には角θaが小さくなることで、底面33−2から基板外壁までの距離が短くなるためである。
【0051】
(2−2)パターンB
(i)構成
図4は、パターンBのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図4(a)はパターンBのキュベット部20Bの斜視図であり、図4(b)は同図(a)のB1−B1’断面図であり、図4(c)は同図(b)のB2−B2’断面図である。
【0052】
キュベット部20Bは、上部基板41a及び下部基板41bから形成されている。キュベット部20Bは、検出路43と、検出路43に血漿及び試薬の混合試料を導入する導入路45及び混合試料を検出路43から排出する排出路47と、基板外部から光が入射される入射端部49と、検出路43を通過後の光を基板外部に出射する出射端部51とを含む。
【0053】
検出路43は、下部基板41b内部の溝と、上部基板41aの下面とにより囲まれて形成されている。また、入射端部49は検出路43の一端の基板により形成され、出射端部51は検出路43の他端の基板により形成されている。入射端部49は基板外部から光が照射される入射端部外壁面49aを有しており、出射端部51は基板外部に光を出射する出射端部外壁面を有している。ここで、検出路43に光を入射する入射面43aは入射端部49の入射端部内壁面を兼ねており、検出路43を通過した光が出射される出射面は出射端部51の出射端部内壁面を兼ねている。
【0054】
出射端部51の出射端部内壁面には、面取り部43bが形成されている。面取り部43bは、検出路43を通過する光の光軸と概ね垂直な底面43b−2と、底面43b−2を囲む3面の傾斜面43b−1及び1面の上部基板41aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面43b−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、出射端部51の面取り部43bを形成する凹部の傾斜面43b−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面43b−2に対して光軸に近づくように傾斜している。
【0055】
出射端部51の出射端部外壁には、切り欠き部53が形成されている。切り欠き部53は、検出路43を通過する光の光軸と概ね垂直な底面53−2と、底面53−2を囲む3面の傾斜面53−1及び1面の上部基板41aの下面を含む側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面53−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、切り欠き部53を形成する凹部の傾斜面53−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面53−2に対して光軸から離れるように傾斜している。
【0056】
(ii)キュベット部での光の挙動
血漿及び試薬の混合試料で満たされた検出路43内部を通過した光は、出射端部51の面取り部43bに入射される。ここで、面取り部43bを形成する凹部の底面43b−2は検出路43を通過する光の光軸と垂直であり、底面43b−2を囲む傾斜面43b−1は底面43b−2に対して光軸に近づくように傾斜している。よって、検出路43を通過した光のうち、出射端部51の面取り部43bの傾斜面43b−1に入射された光は光軸から離れるように屈折されて出射端部内を進み、切り欠き部53の傾斜面53−1に入射される。結局、出射端部側において、面取り部43bの傾斜面43b−1に入射され屈折された光は、切り欠き部53の傾斜面53−1で反射されて出射端部51から基板外部に出射されない。このように出射端部51の面取り部43bの傾斜面43b−1で光軸から離れるように光を屈折させた後に、出射端部51の切り欠き部53の傾斜面53−1に入射することで、切り欠き部53の底面53−2及び傾斜面53−1がなす角θb(θb<90°)を小さくすることができる。これは、面取り部43bの傾斜面43b−1で屈折された光を切り欠き部53の傾斜面53−1に入射することで、切り欠き部53の傾斜面53−1への光の入射角が大きくなり、角θbを小さくしても切り欠き部53の傾斜面53−1での光の反射条件を維持することができるからである。これにより、出射端部51と透過光の検出器(図示せず)との距離を、より近づけることができ埃等によるノイズの除去が期待できる。
【0057】
なお、面取り部43bの底面43b−2に入射された光は屈折されることなくそのまま出射端部51に入射される。そして、出射端部51に入射された光のうち、切り欠き部53の傾斜面53−1に入射された光は検出路43の外側に反射され、切り欠き部53の底面53−2に入射された光は出射端部51から基板外部に出射される。このようにして、出射端部51から出射される光の出射面積は、切り欠き部53の凹部の底面53−2の面積に制限されるため、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0058】
また、検出路43の内壁には、検出路43への試料の導入の際などに気泡が付着する場合がある。しかし、検出路43の内壁付近を通過し気泡より乱反射されるなど影響を受けた光は、切り欠き部53の傾斜面53−1により反射されるため、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。
さらに、切り欠き部53の傾斜面53−1が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面53−1に入射された光は検出路43の外側方向に反射され、検出路43内部に向かわない。よって、傾斜面53−1で反射された光が凹部の底面53−2に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0059】
なお、面取り部43bの底面43b−2の面積と切り欠き部53の底面53−2の面積とは、光の出射面積を一定にするために同一であるのが好ましい。
(iii)全反射の条件
図5(a)は光が全反射されるための条件を示す説明図、図5(b)は同図(a)の拡大図である。
【0060】
図5(a)において、出射端部51における切り欠き部53の底面53−2及び傾斜面53−1がなす角θb(θb<90°)は、出射端部51における面取り部43bの底面43b−2及び傾斜面43b−1がなす角θc(θc<90°)との関係が下記式(6)で表される臨界各θxよりも大きい(θb>θx)。
【0061】
【数6】

ここで、n0はキュベット部20Bが載置されている雰囲気の屈折率、
1は下部基板41bの屈折率、
2は検出路43に導入される試料の屈折率である。
【0062】
切り欠き部53の底面53−2と傾斜面53−1とがなす角θbが関係式(6)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、切り欠き部53の傾斜面53−1に入射された光は検出路43の外側に全反射される。よって、光の出射面積を所定面積に制限にして試料を正確に定量することができる。
具体的に、図5(b)を用いて説明する。
【0063】
検出路43と出射端部51との界面に入射される光と、界面から出射端部51に入射された光との屈折率の関係は次式(7)で表される。
【0064】
【数7】

ここで、角θcは、検出路43と出射端部51との界面に入射される光が界面の垂直線となす角であり、前述の面取り部43bの底面43b−2及び傾斜面43b−1がなす角θcと同じである。また、角θdは、界面から出射端部51に入射された光が界面の垂直線となす角である。
【0065】
また、出射端部51と基板外部との界面に入射される光と、界面から基板外部に出射された光との屈折率の関係は次式(8)で表される。
【0066】
【数8】

ここで、角θb+θc−θdは、出射端部51と基板外部との界面に入射される光が界面の垂直線となす角である。また、角θeは、界面から基板外部に出射された光が界面の垂直線となす角である。
【0067】
光が傾斜面53−1で全反射されるためには、上記式(8)において角θeが90°以上である必要がある。よって、式(8)において角θe=90°の場合の角θbを臨界角θxとして、上記式(6)が求まる。
ここで、キュベット部20Bを空気中(屈折率n0=1)に載置し、試料の屈折率をn2=1.33とし、角θc=45°とした場合、キュベット部20Bを形成する基板の屈折率n1と上記角θbとの関係は、例えば表2のようになる。
【0068】
【表2】

なお、角θbが小さい場合には、キュベット部20Bの出射端部51と、出射端部51に対応するように配置される透過光の検出器(図示せず)との距離を、より近づけることができ埃等によるノイズを除去することができる。これは、同じ出射面積の場合には角θbが小さくなることで、底面53−2から基板外壁までの距離が短くなるためである。
【0069】
以上より、切り欠き部53の底面53−2と傾斜面53−1とがなす角θbが関係式(6)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、光の出射面積を所定面積に制限にして試料を正確に定量することができるとともに、出射端部51と透過光の検出器(図示せず)との距離を近づけて埃等によるノイズの除去が期待できる。
なお、前述の通り、出射端部に切り欠き部及び面取り部を設けるパターンBの構成は、出射端部に切り欠き部のみを設けるパターンAの構成よりもノイズの除去が期待できるが、一方でパターンBの面取り部の傾斜面に付着した気泡により検出路内の光が乱反射される可能性がある。しかし、検出路に導入される液体の濡れ性が高く気泡が発生し難い場合や、界面活性剤等が混合され気泡の発生が抑制されている場合などには、パターンBを採用することでノイズの除去という効果をより活用することができる。
【0070】
(2−3)パターンC
(i)構成
図6は、パターンCのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図6(a)はパターンCのキュベット部20Cの斜視図であり、図6(b)は同図(a)のC1−C1’断面図であり、図6(c)は同図(b)のC2−C2’断面図である。
【0071】
キュベット部20Cは、上部基板61a及び下部基板61bから形成されている。キュベット部20Cは、検出路63と、検出路63に血漿及び試薬の混合試料を導入する導入路65及び混合試料を検出路63から排出する排出路67と、基板外部から光が入射される入射端部69と、検出路63を通過後の光を基板外部に出射する出射端部71とを含む。
【0072】
検出路63は、下部基板61b内部の溝と、上部基板61aの下面とにより囲まれて形成されている。また、入射端部69は検出路63の一端の基板により形成され、出射端部71は検出路63の他端の基板により形成されている。入射端部69は基板外部から光が照射される入射端部外壁面69aを有しており、出射端部71は基板外部に光を出射する出射端部外壁面71aを有している。ここで、検出路63に光を入射する入射面は入射端部69の入射端部内壁面を兼ねており、検出路63を通過した光が出射される出射面63bは出射端部71の出射端部内壁面を兼ねている。
【0073】
入射端部69の入射端部内壁面には、面取り部63aが形成されている。面取り部63aは、検出路63を通過する光の光軸と概ね垂直な底面63a−2と、底面63a−2を囲む3面の傾斜面63a−1及び1面の上部基板61aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面63a−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、面取り部63aを形成する凹部の傾斜面63a−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面63a−2に対して光軸から離れるように傾斜している。
【0074】
(ii)キュベット部での光の挙動
検出路63に血漿及び試薬の混合試料を導入後、入射端部69の入射端部外壁面69aに光が照射され、入射端部69に光が入射される。光は、入射端部69を通過し検出路63に入射される。ここで、面取り部63aを形成する凹部の底面63a−2は検出路63を通過する光の光軸と垂直であり、底面63a−2を囲む傾斜面63a−1は底面63a−2に対して光軸から離れるように傾斜している。よって、入射端部69に入射された光のうち傾斜面63a−1に入射された光は、反射されて検出路63に入射されない。そして、入射端部69に入射された光のうち、光軸と概ね垂直な底面に入射された光は、底面63a−2を通過して検出路63に入射される。よって、出射端部71から出射される光の出射面積を、入射端部69の面取り部63aの底面63a−2の面積に制限することができる。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0075】
また、検出路63の内壁には試料の導入の際などに気泡がする場合があるが、面取り部63aの底面63a−2に入射された光を検出路63に入射するため、光は検出路63の中央部分を通過する。よって、検出路63の内壁付近を通過し気泡より乱反射されるなど、気泡に起因した透過量の変動をなくすことができる。
さらに、入射端部69の傾斜面63a−2が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面63a−1に入射された光は検出路63の外側方向に反射され、検出路63内部に向かわない。よって、傾斜面63a−1で反射された光が凹部の底面63a−2に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0076】
なお、上述のように入射端部69の面取り部63aにより光の出射面積を制限する場合には、出射端部の切り欠き部により光の出射面積を制限するよりも、出射端部71と透過光の検出器とをより近づけてノイズのさらなる除去が期待できる。
(iii)全反射の条件
図7は、光が全反射されるための条件を示す説明図である。
【0077】
面取り部63aの底面63a−2と傾斜面63a−1とがなす角θf(θf<90°)は、下記式(9)で表される臨界各θxよりも大きい(θf>θx)。
【0078】
【数9】

ここで、n1は下部基板61bの屈折率、
2は検出路63に導入される試料の屈折率である。
面取り部63aの底面63a−2と傾斜面63a−1とがなす角θfが関係式(9)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、面取り部63の傾斜面63a−1に入射された光は全反射される。よって、入射端部69の面取り部63aがこのような傾斜面63a−1を有する場合には、入射端部69に入射された光のうち面取り部63aの傾斜面63a−1に入射された光は検出路63の外側方向に全反射され、面取り部63aの底面63a−2に入射された光は検出路63に入射される。このようにして、出射端部71から出射される光の出射面積を所定面積に制限することで、試料を正確に定量することができる。
【0079】
ここで、キュベット部20Cを空気中(屈折率n0=1)に載置した場合、キュベット部20Cを形成する基板の屈折率と上記角θfとの関係は、例えば表3のようになる。
【0080】
【表3】

なお、角θfが小さい場合には、検出路43を通過する光が傾斜面63a−1に付着した気泡により乱反射されるのを抑制することができる。これは、角θfが小さくなることで、検出路に入射された光の光軸と傾斜面63a−1とのなす角が大きくなり、光軸と傾斜面63a−1上の気泡との距離が大きくなり気泡の影響が小さくなるためである。
【0081】
(2−4)パターンD
(i)構成
図8は、パターンDのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図8(a)はパターンDのキュベット部20Dの斜視図であり、図8(b)は同図(a)のD1−D1’断面図であり、図8(c)は同図(b)のD2−D2’断面図である。
【0082】
キュベット部20Dは、上部基板81a及び下部基板81bから形成されている。キュベット部20Dは、検出路83と、検出路83に血漿及び試薬の混合試料を導入する導入路85及び混合試料を検出路83から排出する排出路87と、基板外部から光が入射される入射端部89と、検出路83を通過後の光を基板外部に出射する出射端部91とを含む。
【0083】
検出路83は、下部基板81b内部の溝と、上部基板81aの下面とにより囲まれて形成されている。また、入射端部89は検出路83の一端の基板により形成され、出射端部91は検出路83の他端の基板により形成されている。入射端部89は基板外部から光が照射される入射端部外壁面を有しており、出射端部91は基板外部に光を出射する出射端部外壁面91aを有している。ここで、検出路83に光を入射する入射面は入射端部89の入射端部内壁面を兼ねており、検出路83を通過した光が出射される出射面83bは出射端部91の出射端部内壁面を兼ねている。
【0084】
入射端部89の入射端部外壁には、切り欠き部93が形成されている。切り欠き部93は、検出路83を通過する光の光軸と概ね垂直な底面93−2と、底面93−2を囲む3面の傾斜面93−1及び1面の上部基板21aの下面を含む側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面93−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、入射端部89の切り欠き部93を形成する凹部の傾斜面93−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面93−2に対して光軸に近づくように傾斜している。
【0085】
入射端部89の入射端部内壁面には、面取り部83aが形成されている。面取り部83aは、検出路83を通過する光の光軸と概ね垂直な底面83a−2と、底面83a−2を囲む3面の傾斜面83a−1及び1面の上部基板81aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面83a−2に向かうほど狭まるように形成されている。言い換えれば、面取り部83aを形成する凹部の傾斜面83a−1は、光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面83a−2に対して光軸から離れるように傾斜している。
【0086】
(ii)キュベット部での光の挙動
まず、入射端部89を通過した光は、入射端部89外壁の切り欠き部93に導入される。ここで、切り欠き部83を形成する凹部の底面93−2は光軸と垂直であり、底面93−2を囲む傾斜面93−1は光の出射方向に向かうにつれて凹部の底面93−2に対して光軸に近づくように傾斜している。よって、入射端部89の外壁に入射された光のうち、入射端部89の切り欠き部93の傾斜面93−1に入射された光は、光軸から離れるように屈折されて入射端部内を進み、面取り部83aの傾斜面83a−1に入射される。結局、入射端部側において、切り欠き部93の傾斜面93−1に入射され屈折された光は、面取り部83aの傾斜面83a−1で反射されて検出路83内に入射されない。このように入射端部89の切り欠き部93の傾斜面93−1で光軸から離れるように光を屈折させた後に、入射端部89の面取り部83aの傾斜面83a−1に入射することで、面取り部83aの底面83a−2及び傾斜面83a−1がなす角θg(θg<90°)を小さくすることができる。これは、切り欠き部93の傾斜面93−1で屈折された光を面取り部83aの傾斜面83a−1に入射することで、面取り部83aの傾斜面83a−1への光の入射角が大きくなり、角θgを小さくしても面取り部83aの傾斜面83a−1での光の反射条件を維持することができるからである。これにより、面取り部83aの底面83a−2から検出路83に入射された光が、面取り部83aの傾斜面83a−1に付着した気泡により乱反射されるのが抑制され得る。
【0087】
なお、切り欠き部93の底面93−2に入射された光は屈折されることなくそのまま入射端部89に入射される。そして、入射端部89に入射された光のうち、面取り部83aの傾斜面83a−1に入射された光は検出路83の外側に反射され、面取り部83aの底面83a−2に入射された光が検出路83に入射される。このようにして、出射端部91から出射される光の出射面積は、面取り部83aの底面83a−2の面積に制限されるため、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0088】
また、検出路83の内壁には、検出路83への試料の導入の際などに気泡がする場合がある。しかし、切り欠き部93及び面取り部83aを有する入射端部89により光の出射方向が制限されるため、光は検出路83の光軸の中央部分を通過し、検出路83の内壁付近を通過しない。よって、光は、気泡により乱反射されるなど影響を受けることなく、出射端部91から出射される。これにより、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。
【0089】
さらに、面取り部83aの傾斜面83a−1が光の出射方向に向かうにつれて光軸から離れるように傾斜しているため、傾斜面83a−1に入射された光は検出路83の外側方向に反射され、検出路83内部に向かわない。よって、傾斜面83a−1で反射された光が凹部の底面83a−2に入射される光に影響を与えて、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0090】
なお、上述のように入射端部89の面取り部83aにより光の出射面積を制限する場合には、出射端部の切り欠き部により光の出射面積を制限するよりも、出射端部91と透過光の検出器とをより近づけてノイズのさらなる除去が期待できる。
なお、切り欠き部93の底面93−2の面積と面取り部83aの底面83a−2の面積とは、光の出射面積を一定にするために同一であるのが好ましい。
【0091】
(iii)全反射の条件
図9は光が全反射されるための条件を示す説明図である。
図9において、入射端部93における面取り部83aの底面83a−2及び傾斜面83a−1がなす角θg(θg<90°)は、入射端部93における切り欠き部93の底面93−2及び傾斜面93−1がなす角θh(θh<90°)との関係が下記式(10)で表される臨界各θxよりも大きい(θg>θx)。
【0092】
【数10】

ここで、n0はキュベット部20Dが載置されている雰囲気の屈折率、
1は下部基板81bの屈折率、
2は検出路83に導入される試料の屈折率である。
【0093】
面取り部83aの底面83a−2と傾斜面83a−1とがなす角θgが関係式(10)を満たす臨界角θxよりも大きい場合、面取り部83aの傾斜面83a−1に入射された光は検出路83の外側に全反射される。よって、光の出射面積を所定面積に制限にして試料を正確に定量することができる。上記式の具体的な算出方法は、パターンBのキュベット部20Bで上述したものと同様であるので説明を省略する。
【0094】
ここで、キュベット部20Dを空気中(屈折率n0=1)に載置し、試料の屈折率をn2=1.33とし、角θh=45°とした場合、キュベット部20Dを形成する基板の屈折率n1と上記角θgとの関係は、例えば表4のようになる。
【0095】
【表4】

なお、角θgが小さい場合には、検出路83を通過する光が傾斜面83a−1に付着した気泡により乱反射されるのを抑制することができる。これは、角θgが小さくなることで、検出路に入射された光の光軸と傾斜面83a−1とのなす角が大きくなり、光軸と傾斜面83a−1上の気泡との距離が大きくなり気泡の影響が小さくなるためである。
【0096】
また、入射端部に切り欠き部及び面取り部を設けるパターDの構成は、入射端部に面取り部のみを設けるパターンCの構成よりも面取り部の傾斜面に付着した気泡により光が乱反射され難いので好ましい。しかし、パターンDの場合、入射光をキュベット部に照射する装置から切り欠き部の底面までの距離が、切り欠き部を有している分だけパターンCの構成よりも長くなってしまう。そのため、入射光が埃等によるノイズの影響を受けてしまう場合がある。このようなノイズの影響が小さい場合には、パターンDを採用することで光が乱反射され難いという効果をより活用することができる。
【0097】
(2−5)パターンE
(i)構成
図10は、パターンEのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図10(a)はパターンEのキュベット部20Eの斜視図であり、図10(b)は同図(a)のE1−E1’断面図であり、図10(c)は同図(b)のE2−E2’断面図である。
【0098】
このパターンEのキュベット部20Eは、前述のパターンAのキュベット部20AとパターンCのキュベット部20Cの組み合わせであり、以下に簡単に構成を説明する。
キュベット部20Eは、上部基板101a及び下部基板101bから形成されている。キュベット部20Eは、検出路103、導入路105、排出路107、検出路103の一端の基板により形成されている入射端部109、及び検出路103の他端の基板により形成されている出射端部111を含む。
【0099】
出射端部111の出射端部外壁には、切り欠き部113が形成されている。切り欠き部113は、検出路103を通過する光の光軸と概ね垂直な底面113−2と、底面113−2を囲む3面の傾斜面113−1及び1面の上部基板101aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面113−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0100】
入射端部109の入射端部内壁面には、面取り部103aが形成されている。面取り部103aは、光軸と概ね垂直な底面103a−2と、底面103a−2を囲む3面の傾斜面103a−1及び1面の上部基板101aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面103a−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0101】
なお、パターンEの場合に入射端部及び出射端部で光を全反射させるためには、パターンA及びCでの各関係式を満たす必要がある。
(ii)キュベット部での光の挙動
キュベット部20Eでの光の挙動は、前述のパターンAのキュベット部20A及びパターンCのキュベットCと同様である。そして、このキュベット部20E構成では、パターンAのキュベット部20A及びパターンCのキュベット部20Cそれぞれにより得られる作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。
【0102】
キュベット部20Eでは、出射端部113から出射される光の出射面積は、まず入射端部109の面取り部103aの凹部の底面103a−2の面積に制限され、さらに出射端部111の切り欠き部113の凹部の底面113−2の面積に制限される。よって、入射端部109の面取り部103aで光の出射面積が制限された後、検出路103及び出射端部111を通過している間に光が光軸と離れるように広がった場合でも、再度切り欠き部113により出射面積が制限される。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0103】
また、光は、入射端部109における面取り部103aの底面103a−2を通過することで、検出路103の中央部分を通過する。ここで、光は、検出路103を通過している間に検出路103の内壁に近づく場合もある。しかし、検出路103の内壁に近づいた光は、出射端部111における切り欠き部113の傾斜面113−1により反射されるため、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。
【0104】
また、面取り部103aを形成する凹部の開口及び切り欠き部113を形成する凹部の開口は、ともに光の出射方向に徐々に広がるように形成されている。よって、まず傾斜面103a−1に入射された光は基板の外側方向に反射され、検出路103内部に向かわない。さらに、光が検出路103及び出射端部111を通過している間に光軸と離れるように広がった場合でも傾斜面113−1に入射された光は検出路43の外側方向に反射され、検出路43内部に向かわない。よって、傾斜面103a−1及び傾斜面113−1に反射された光が、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0105】
(iii)設計の一例
図11は、パターンEにおけるキュベット部20Eの設計の一例を示す説明図である。ここで、キュベット部20Eの各部の寸法は、次の通りである。
a(入射端部外壁面109a〜底面103a−2)=0.5mm
b(傾斜面103a−1の傾斜している距離)=0.7mm
c(検出路の長さ:底面103a−2〜出射端部内壁面103b)=10.0mm
d(出射端部内壁面103b〜底面113−2)=0.5mm
e(底面113−2〜入射端部外壁面)=0.5mm
f(底面103a−2及び底面113−2の幅)=0.7mm
g(切り欠き部113の開口の最大幅)=1.9mm
h(検出路103の幅)=1.5mm
i(検出路103の深さ)=1.5mm
W(基板外部から入射端部外壁面109aに入射される入射光の幅)=1.0mm
ここで、上述のような本発明の効果を得るためには、W>fである必要がある。
【0106】
なお、上記寸法は、あくまで一例であり上記寸法に限定されない。
(2−6)パターンF
(i)構成
図12は、パターンFのキュベット部の一例を示す構成図である。ここで、図12(a)はパターンFのキュベット部20Fの斜視図であり、図12(b)は同図(a)のF1−F1’断面図であり、図12(c)は同図(b)のF2−F2’断面図である。
【0107】
このパターンFのキュベット部20Fは、前述のパターンBのキュベット部20BとパターンDのキュベット部20Dの組み合わせであり、以下に簡単に構成を説明する。
キュベット部20Fは、上部基板121a及び下部基板121bから形成されている。キュベット部20Eは、検出路123、導入路125、排出路127、検出路123の一端の基板により形成されている入射端部129、及び検出路123の他端の基板により形成されている出射端部131を含む。
【0108】
入射端部129の入射端部外壁には、切り欠き部143が形成されている。切り欠き部143は、検出路123を通過する光の光軸と概ね垂直な底面143−2と、底面143−2を囲む3面の傾斜面143−1及び1面の上部基板121aの下面を含む側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面143−2に向かうほど狭まるように形成されている。また、入射端部129の入射端部内壁面には、面取り部123aが形成されている。面取り部123aは、光軸と概ね垂直な底面123a−2と、底面123a−2を囲む3面の傾斜面123a−1及び1面の上部基板121aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面123a−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0109】
出射端部131の出射端部内壁面には、面取り部123bが形成されている。面取り部123bは、光軸と概ね垂直な底面123b−2と、底面123b−2を囲む3面の傾斜面123b−1及び1面の上部基板121aの下面を含む側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面123b−2に向かうほど狭まるように形成されている。また、出射端部131の出射端部外壁には、切り欠き部133が形成されている。切り欠き部133は、光軸と概ね垂直な底面133−2と、底面133−2を囲む3面の傾斜面133−1及び1面の上部基板21aの下面を含む側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面133−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0110】
なお、パターンFの場合に入射端部及び出射端部で光を全反射させるためには、パターンB及びDでの各関係式を満たす必要がある。
(ii)キュベット部での光の挙動
キュベット部20Fでの光の挙動は、前述のパターンBのキュベット部20B及びパターンDのキュベット部20Dと同様である。そして、このキュベット部20F構成では、パターンBのキュベット部20B及びパターンDのキュベット部20Dそれぞれにより得られる作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。
【0111】
キュベット部20Fでは、出射端部113から出射される光の出射面積は、入射端部129の面取り部123aの凹部の底面123a−2の面積及び出射端部111の切り欠き部133の凹部の底面133−2の面積に制限される。つまり、光が光軸と離れるように広がった場合でも、広がった光が常に反射されて除去されるため、出射端部131での光の出射面積が制限される。これにより、光の出射面積が異なることによる光の透過量の誤差をなくし、試料を正確に定量することができる。
【0112】
また、光は、入射端部129における面取り部123aの底面123a−2を通過することで、検出路123の中央部分を通過する。ここで、光は、検出路123を通過している間に検出路103の内壁に近づく場合もある。しかし、検出路123の内壁に近づいた光は、出射端部131における切り欠き部133の傾斜面133−1により反射されるため、気泡に起因した光の透過量の変動をなくすことができる。
【0113】
また、入射端部129の面取り部123a及び出射端部131の切り欠き部133は、その開口が光の出射方向に徐々に広がるように形成されている。よって、まず傾斜面123a−1に入射された光は検出路123の外側方向に反射され、検出路123内部に向かわない。さらに、光が検出路123及び出射端部131を通過している間に光軸と離れるように広がった場合でも傾斜面133−1に入射された光は検出路123の外側方向に反射され、検出路123内部に向かわない。よって、傾斜面123a−1及び傾斜面133−1に反射された光が、光の透過量に変動を与えるのを阻止することができる。
【0114】
(iii)設計の一例
図13は、パターンFにおけるキュベット部20Fの設計の一例を示す説明図である。ここで、キュベット部20Fの各部の寸法は、次の通りである。
a(入射端部外壁面〜底面143−2)=0.5mm
b(底面143−2〜底面123a−2)=0.5mm
c(傾斜面123a−1の傾斜している距離)=0.2mm
d(傾斜面123b−1の傾斜している距離)=0.2mm
e(底面123b−2〜底面133−2)=0.5mm
f(傾斜面133−1の傾斜している距離)=0.5mm
g(切り欠き部133の開口の最大幅)=1.5mm
h(底面143−2及び底面123a−2の幅)=0.5mm
i(検出路123の幅)=0.9mm
j(底面123b−2及び底面133−2の幅)=0.5mm
k(切り欠き部133の開口の最大幅)=1.9mm
l(検出路の長さ:底面123a−2〜底面123b−2)=10.0mm
m(検出路123の深さ)=0.9mm
W(基板外部から入射端部外壁面に入射される入射光の幅)=0.9mm
ここで、上述のような本発明の効果を得るためには、W>h及びW>jである必要がある。
【0115】
なお、上記寸法は、あくまで一例であり上記寸法に限定されない。
(2−7)その他のパターン
その他、パターンAのキュベット部20A及びパターンDのキュベット部20Dを組み合わせても良い。これらを組み合わせたキュベットは、キュベット部20Aに示す切り欠き部33を有する出射端部と、キュベット部20Dに示す切り欠き部93及び面取り部83aを有する入射端部とを含む。この場合には、キュベット部20A及びキュベット部20Dの効果を奏するキュベット部を形成することができる。
【0116】
また、パターンBのキュベット部20B及びパターンCのキュベット部20Cを組み合わせても良い。これらを組み合わせたキュベット部は、キュベット部20Bに示す面取り部43b及び切り欠き部53を有する出射端部と、キュベット部20Cに示す面取り部63aを有する入射端部とを含む。この場合には、キュベット部20B及びキュベット部20Cの効果を奏するキュベット部を形成することができる。
【0117】
なお、前述のパターンA〜パターンDで述べた関係式(5)〜(10)から求まる角度、つまり光の出射面積を制限するための傾斜角度は、各キュベット部20A〜20Dの寸法には依存しない。パターンE及びFについても同様である。ただし、本発明の効果を得るためには、検出路の幅が凹部の底面の幅よりも大きく、かつ入射される入射光の凹部の幅が底面の幅より大きい必要がある。
【0118】
(2−8)各パターンの比較
出射面積を確実に制限する構成としては、パターンA、B、E、Fのように出射端部外壁面に切り欠き部を設けている構成が好ましい。透過光の検出器に最も近接した出射端部を加工して光の出射面積を制限するので、確実に出射面積を制限することができる。特に、パターンAのキュベット部20Aでは、入射端部及び出射端部に面取り部が形成されていないため、面取り部の傾斜面に付着した気泡により光が乱反射されることがないので好ましい。なお、検出路に導入される液体の濡れ性が高く気泡が発生し難い場合や、界面活性剤等が混合され気泡の発生が抑制されている場合などには、面取り部が設けられているパターンB、E、Fのような構成であっても面取り部の傾斜面に気泡が付着し難い。
【0119】
また、出射端部に切り欠き部及び面取り部を設けるパターンBの構成は、出射端部に切り欠き部のみを設けるパターンAの構成よりもノイズの除去が期待できるが、一方でパターンBの面取り部の傾斜面に付着した気泡により検出路内の光が乱反射される可能性がある。しかし、検出路に導入される液体の濡れ性が高く気泡が発生し難い場合や、界面活性剤等が混合され気泡の発生が抑制されている場合などには、パターンBを採用することでノイズの除去という効果をより活用することができる。
【0120】
また、入射端部に切り欠き部及び面取り部を設けるパターDの構成は、入射端部に面取り部のみを設けるパターンCの構成よりも面取り部の傾斜面に付着した気泡により光が乱反射され難いので好ましい。しかし、パターンDの場合、入射光をキュベット部に照射する装置から切り欠き部の底面までの距離が、切り欠き部を有している分だけパターンCの構成よりも長くなってしまう。そのため、入射光が埃等によるノイズの影響を受けてしまう場合がある。よって、このようなノイズの影響が小さい場合には、パターンDを採用することで光が乱反射され難いという効果をより活用することができる。
【0121】
また、入射端部に面取り部を設けるパターンC及びDの構成は、入射端部に面取り部が無いパターンA及びBの構成よりも、面取り部により検出路内を進む光のビーム幅が制限されるので好ましい。しかし、面取り部上の気泡により光が乱反射される可能性があるため、パターンC及びDの構成は気泡の発生が少ない場合に有効である。
以上より、流体の性質及び透過光の測定環境等に応じて各パターンのキュベット部を選択的に適用するのが良い。
【0122】
(3)製造方法
次に、上記キュベット部20を有するマイクロチップ100の製造方法について説明する。マイクロチップ100は、当該分野で公知の射出成形を用いることにより、簡便に製造することができる。
下部基板100bに各部を射出成形により形成し、上部基板100aには基板外部から試料を導入するための開口や排出するための開口を射出成形により形成する。そして、これらの上部基板100a及び下部基板100bを互いに貼り合わせることでマイクロチップ100が完成する。
【0123】
なお、射出成形は、各部に対応する形状を有する金型を準備しておき、基板に金型を押し当てることにより行われる。
例えば、金型としては三菱レーヨン製ダイアナイトMA521を用い、基板としてPET(poly ethylene terephthalate)を用いた。また、PET及び三菱レーヨン製ダイアナイトMA521を熱風式乾燥機により150℃で5〜10時間乾燥して除湿し、成形温度(シリンダー温度)275℃、樹脂圧15kg/cm2により射出成形を行った。さらに、第3基板25〜第1基板21の貼り合わせには熱圧着を用い、例えば基板上下側から加圧する金属プレートの温度を80℃に設定し、0.1MPaで3〜5分加圧して基板を貼り合わせた。
【0124】
基板材料としては、PET基板以外に、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PAR(ポリアリレート樹脂)、ABS(アクリルにトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PVC(塩化ビニル樹脂)、PMP(ポリメチルペンテン樹脂)、PBD(ポリブタジエン樹脂)、BP(生物分解性ポリマー)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などを使用しても良い。
【0125】
また、基板の貼り合わせには、粘着材、接着剤を用いても良く、超音波及びレーザー法による融着法を用いても良い。
(4)マイクロチップの動作
次に、マイクロチップの使用方法及びマイクロチップ内での各種処理の手順を説明する。図14は、マイクロチップでの使用方法及びマイクロチップ内での各種処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0126】
(a)血液導入
マイクロチップ100の試薬溜11a、11bには、予め試薬が保持されている。まず、取込口1に血液が導入される。次に、中心1を中心とする回転により、マイクロチップ100内の液体に矢印方向(同図(a)参照)の遠心力を印加する。これにより、まず、血液は、取込口1から遠心分離管3に導入される。この中心1と中心とする遠心分離の際に、試薬溜11a、11bに保持されている試薬が1次混合部13に導入される。
【0127】
(b)血球/血漿分離
さらなる中心1を中心とする回転により、血液中の血球は保持部5の底部に導入され、血漿が上澄みとして分離される(同図(b)参照)。
(c)血漿の計量
次に、中心2を中心とする回転により矢印方向(同図(c)参照)の遠心力を印加し、遠心分離管3内の血漿を計量部7に導入する。血球は、保持部5に保持され計量部7には導入されない。計量部7に導入された血漿のうち計量部7の容積を超える過剰量の血漿は、計量部7から廃液溜9に廃棄される。
【0128】
(d)1次混合
次に、中心1を中心とする回転により矢印方向(同図(d)参照)の遠心力を印加し、計量部7で計量された血漿を1次混合部13に導入し、血漿と試薬とを混合する。
(e)2次混合
取出口17にポンプを接続して吸引することで、1次混合部13で混合された混合試料を2次混合部15に導入し、さらに混合試料を混合する(同図(e)参照)。
【0129】
(f)比色測定
さらに、ポンプで吸引して混合試料を検出部20に導入する(同図(f)参照)。そして、混合試料が導入されたキュベット部20に光を透過させて、キュベット部20を通過後の光の透過量を測定することで、血液成分の定量を行う。
上記で、試料及び定量対象の対象成分を血液及び血液成分としたが、マイクロチップに導入される試料等はこれらに限定されない。また、出射端部の切り欠き部の傾斜面及び/又は入射端部の面取り部の傾斜面により、出射端部から基板外部に出射される光の出射面積を所望の面積に制限できれば良く、傾斜面の面数は限定されない。例えば、底面を囲む面の一部のみを傾斜面で形成しても良いし、底面を囲む全面を傾斜面で形成しても良い。よって、上記のように傾斜面の面数は3面に限られず、全面が傾斜していても良い。
【0130】
<第2実施形態例>
(1)マイクロチップの全体構成
図15は、本発明の第2実施形態例に係るキュベット部を含むマイクロチップの全体斜視図である。
マイクロチップ200は、基板である第1基板200a、第2基板200b及び第3基板200cで形成されている。このように、第2実施形態例のマイクロチップ200は3枚の基板から形成されている点が第1実施形態例と異なる。その他の構成は同様であるので、以下に簡単に説明する。
【0131】
マイクロチップ200の第2基板200bは、対象成分を含む試料の取込口201、遠心分離管203、保持部205、計量部207、廃液溜209、試薬が貯蔵される試薬溜(211a、211b)211、1次混合部213、ミキサ部からなる2次混合部215、取出口217、検出路219を含むキュベット部220及びこれらの各部を接続するマイクロ流路を有している。また、マイクロチップ200の第1基板200aは、第2基板200bの一面を覆い、試料の取込口201や取出口217などの基板外部に貫通する開口を有している。また、第3基板200cは第2基板200bの他面を覆う。このように、第3基板200cが第2基板200bの他面を覆うように形成されるため、第2基板200bに形成される各部は、第2基板を貫通するように深さが深く形成されても良い。よって、3枚の基板を用いた場合には、深さ方向に各部を形成してチップの平面積を小さくし、マイクロチップを小型化することができる。
【0132】
(2)キュベット部の各種構成
以下に、キュベット部220の構成について各種例を挙げて説明する。
(2−1)パターンA
(i)構成
図16は、パターンAのキュベット部の一例を示す斜視図、図17は図16のパターンAのキュベット部の各断面図である。このパターンAのキュベット部220Aは、第1実施形態例のパターンEのキュベット部20E構成と同様に、出射端部に切り欠き部を有し、入射端部に面取り部を有する。ここで、パターンAのキュベット部220Aは、検出路が第2基板の深さ方向に形成されているという点と、切り欠き部及び面取り部が円錐状に形成されている点とにおいて、第1実施形態例のパターンEのキュベット部20Eと異なるのみでその他の構成は同様の構成である。よって、以下に簡単にのみ説明を行う。
【0133】
キュベット部220Aは、第1基板221a、第2基板221b及び第3基板221cから形成されている。キュベット部220Aは、検出路223、導入路225、排出路227、検出路223の一端の基板により形成されている入射端部229、及び検出路223の他端の基板により形成されている出射端部231とを含む。
出射端部231の出射端部外壁には、切り欠き部233が形成されている。切り欠き部233は、検出路223を通過する光の光軸と概ね垂直な底面233−2と、底面233−2を囲む円錐状の傾斜面233−1である側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面233−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0134】
入射端部229の入射端部内壁面には、面取り部223aが形成されている。面取り部223aは、光軸と概ね垂直な底面223a−2と、底面223a−2を囲む円錐状の傾斜面223a−1である側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面223a−2に向かうほど狭まるように形成されている。
(ii)キュベット部での光の挙動
キュベット部220Aでは、第3基板221c側の入射端部229から光が照射され、第1基板221a側の出射端部231から光が出射される。キュベット部220Aでの光の挙動は、第1実施形態例のパターンEのキュベット部20Eと同様であるので説明を省略する。
【0135】
(iii)設計の一例
図18は、パターンAにおけるキュベット部220Aの設計の一例を示す説明図である。ここで、キュベット部220Aの各部の寸法は、次の通りである。
a(入射端部外壁面〜底面223a−2)=0.5mm
b(傾斜面223a−1の傾斜している距離)=0.5mm
c(検出路の長さ:底面223a−2〜出射端部内壁面)=5.0mm
d(出射端部内壁面〜底面233−2)=0.5mm
e(底面233−2〜入射端部外壁面)=0.5mm
f(底面223a−1及び底面233−2の幅)=0.5mm
g(切り欠き部233の開口の最大幅)=1.6mm
h(検出路223の幅)=0.9mm
W(基板外部から入射端部外壁面に入射される入射光の幅)=0.7mm
ここで、上述のような本発明の効果を得るためには、W>hである必要がある。
【0136】
なお、上記寸法は、あくまで一例であり上記寸法に限定されない。
(2−2)パターンB
(i)構成
図19は、パターンBのキュベット部の一例を示す斜視図、図20は図19のパターンBのキュベット部の各断面図である。このパターンBのキュベット部220Bは、第1実施形態例のパターンFのキュベット部20F構成と同様に、出射端部及び入射端部ともに、面取り部及び切り欠き部を有する。ここで、パターンBのキュベット部220Bは、検出路が第2基板の深さ方向に形成されているという点と、切り欠き部及び面取り部が円錐状に形成されている点とにおいて、第1実施形態例のパターンFのキュベット部20Fと異なるのみでその他の構成は同様の構成である。よって、以下に簡単にのみ説明を行う。
【0137】
キュベット部220Bは、第1基板241a、第2基板241b及び第3基板241cから形成されている。キュベット部20Eは、検出路243、導入路245、排出路247、検出路243の一端の基板により形成されている入射端部249、及び検出路243の他端の基板により形成されている出射端部251を含む。
入射端部249の入射端部外壁には、切り欠き部263が形成されている。切り欠き部263は、検出路243を通過する光の光軸と概ね垂直な底面263−2と、底面263−2を囲む円錐状の傾斜面263−1である側面と、からなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面263−2に向かうほど狭まるように形成されている。また、入射端部249の入射端部内壁面には、面取り部243aが形成されている。面取り部243aは、光軸と概ね垂直な底面243a−2と、底面243a−2を囲む円錐状の傾斜面243a−1である側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面243a−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0138】
出射端部251の出射端部内壁面には、面取り部243bが形成されている。面取り部243bは、光軸と概ね垂直な底面243b−2と、底面243b−2を囲む円錐状の傾斜面243b−1である側面と、からなる凹部を有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面243b−2に向かうほど狭まるように形成されている。また、出射端部251の出射端部外壁には、切り欠き部253が形成されている。切り欠き部253は、光軸と概ね垂直な底面253−2と、底面253−2を囲む円錐状の傾斜面253−1である側面とからなる凹部有するように形成されている。この凹部は、凹部の開口が底面253−2に向かうほど狭まるように形成されている。
【0139】
(ii)キュベット部での光の挙動
キュベット部220Bでは、第3基板241c側の入射端部249から光が照射され、第1基板241a側の出射端部251から光が出射される。キュベット部220Bでの光の挙動は、第1実施形態例のパターンFのキュベット部20Fと同様であるので説明を省略する。
【0140】
(iii)設計の一例
図21は、パターンBにおけるキュベット部220Bの設計の一例を示す説明図である。ここで、キュベット部220Bの各部の寸法は、次の通りである。
a(入射端部外壁面〜底面263−2)=0.5mm
b(底面263−2〜底面243a−2)=0.5mm
c(傾斜面243a−1の傾斜している距離)=0.2mm
d(傾斜面243b−1の傾斜している距離)=0.2mm
e(底面243b−2〜底面253−2)=0.5mm
f(傾斜面253−1の傾斜している距離)=0.5mm
g(切り欠き部253の開口の最大幅)=1.5mm
h(底面263−2及び底面243a−2の幅)=0.5mm
i(検出路243の幅)=0.9mm
j(底面243b−2及び底面253−2の幅)=0.5mm
k(切り欠き部253の開口の最大幅)=1.9mm
l(検出路の長さ:底面243a−2〜底面243b−2)=10.0mm
W(基板外部から入射端部外壁面に入射される入射光の幅)=0.9mm
ここで、上述のような本発明の効果を得るためには、W>h及びW>jである必要がある。
【0141】
なお、上記寸法は、あくまで一例であり上記寸法に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、医療、食品、創薬等の分野で使用される、臨床分析チップ、環境分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、たんぱく質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップなどと称される気体及び液体等に適用することができる種々の基板に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1実施形態例に係るキュベット部を含むマイクロチップの全体斜視図。
【図2】(a)パターンAのキュベット部20Aの斜視図。 (b)同図(a)のA1−A1’断面図。 (c)同図(b)のA2−A2’断面図。
【図3】光が全反射されるための条件を示す説明図
【図4】(a)パターンBのキュベット部20Bの斜視図。 (b)同図(a)のB1−B1’断面図。 (c)同図(b)のB2−B2’断面図。
【図5】(a)光が全反射されるための条件を示す説明図。 (b)は同図(a)の拡大図
【図6】(a)パターンCのキュベット部20Cの斜視図。 (b)同図(a)のC1−C1’断面図。 (c)同図(b)のC2−C2’断面図。
【図7】光が全反射されるための条件を示す説明図。
【図8】(a)パターンDのキュベット部20Dの斜視図。 (b)同図(a)のD1−D1’断面図。 (c)同図(b)のD2−D2’断面図。
【図9】光が全反射されるための条件を示す説明図。
【図10】(a)パターンEのキュベット部20Eの斜視図。 (b)同図(a)のE1−E1’断面図。 (c)同図(b)のE2−E2’断面図。
【図11】パターンEにおけるキュベット部20Eの設計の一例を示す説明図。
【図12】(a)パターンFのキュベット部20Fの斜視図。 (b)同図(a)のF1−F1’断面図。 (c)同図(b)のF2−F2’断面図。
【図13】パターンFにおけるキュベット部20Fの設計の一例を示す説明図。
【図14】マイクロチップでの使用方法及びマイクロチップ内での各種処理の手順を示すフローチャートの一例。
【図15】本発明の第2実施形態例に係るキュベット部を含むマイクロチップの全体斜視図。
【図16】パターンAのキュベット部の一例を示す斜視図。
【図17】図16のパターンAのキュベット部の各断面図。
【図18】パターンAにおけるキュベット部220Aの設計の一例を示す説明図。
【図19】パターンBのキュベット部の一例を示す斜視図。
【図20】図19のパターンBのキュベット部の各断面図。
【図21】パターンBにおけるキュベット部220Bの設計の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0144】
取込口:1、201
遠心分離管:3、203
保持部:5、205
計量部:7、207
廃液溜:9、209
試薬溜:11a 、11b、211a、211b
1次混合部:13、213
2次混合部:15、215
取出口:17、217
検出路:19、219
キュベット部:20A、20B、20C、20E、20F、220A、220B
検出路:23、43、63、83、103、123、223、243
入射端部:29、49、69、89、109、129、229、249
出射端部:31、51、71、91、111、131、231、251
切り欠き部:33、53、93、113、133、143、233、253、263
面取り部:43、63a、83a、103a、123a、123b、223a、243a
マイクロチップ:100、200

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板内部に形成され、定量対象の試料が導入される検出路と、
前記検出路の一端の基板により形成され、検出路に光を入射する入射端部と、
前記検出路の他端の基板により形成され、前記検出路を通過後の光を前記基板外部に出射する出射端部とを含み、
前記検出路から出射される光の出射面積を制限するために、前記出射端部の前記検出路の一端に対応する基板外壁の切り欠き部及び前記入射端部の検出路内壁の面取り部の少なくともいずれかが形成されている、マイクロチップ。
【請求項2】
前記出射端部の切り欠き部及び/又は前記入射端部の面取り部は、前記検出路の断面方向の中央部分を通過した光が選択的に出射されるように、光の出射方向を制御する、請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記出射端部には、前記検出路の一端に対応する基板外壁に切り欠き部が形成されており、
前記出射端部の切り欠き部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されている、請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記出射端部の切り欠き部の底面と傾斜面とがなす角θ1(θ1<90°)は、下記式(1)で表される臨界角θxよりも大きい、請求項3に記載のマイクロチップ
【数1】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率である。
【請求項5】
前記出射端部には、前記検出路内壁に面取り部がさらに形成されており、
前記出射端部の面取り部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されている、請求項3に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記出射端部における切り欠き部の底面及び傾斜面がなす角θ2(θ2<90°)は、前記出射端部における面取り部の底面及び傾斜面がなす角θ3(θ3<90°)との関係が下記式(2)で表される臨界各θxよりも大きい、請求項5に記載のマイクロチップ
【数2】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率である。
【請求項7】
前記入射端部には、前記検出路内壁に面取り部が形成されており、
前記入射端部の面取り部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されている、請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項8】
前記入射端部の面取り部の底面と傾斜面とがなす角θ4(θ4<90°)は、下記式(3)で表される臨界各θxよりも大きい、請求項7に記載のマイクロチップ
【数3】

ここで、n1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率である。
【請求項9】
前記入射端部には、前記検出路の他端に対応する基板外壁に切り欠き部がさらに形成されており、
前記入射端部の切り欠き部は、前記検出路を通過する光の光軸と概ね垂直な底面と、前記底面を囲む少なくとも1面の傾斜面を含む側面と、からなる凹部を形成し、前記凹部は、前記凹部の開口が前記底面に向かうほど狭まるように形成されている、請求項7に記載のマイクロチップ。
【請求項10】
前記入射端部における面取り部の底面及び傾斜面がなす角θ5(θ5<90°)は、前記入射端部における切り欠き部の底面及び傾斜面がなす角θ6(θ6<90°)との関係が下記式(4)で表される臨界各θxよりも大きい、請求項9に記載のマイクロチップ
【数4】

ここで、n0は基板が載置されている雰囲気の屈折率、
1は前記基板の屈折率、
2は前記検出路に導入される試料の屈折率である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−298474(P2007−298474A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128589(P2006−128589)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】