説明

マイクロバブルによる自然水域又は自然水を入れた水槽水の浄化方法及び浄化システム

【課題】簡易な構成で汚染自然水域又は水棲動物棲息汚染水域又は自然水を入れた水槽水を効率的に浄化する。また、簡易・小型な装置を提供する。
また、水の入れ替えなしで、かつ清掃不要で長期間水棲動物を育成することができる水棲動物育成用水槽を提供する。
【解決手段】汚染自然水域から水を連続的に取水してマイクロバブル接触処理槽に導入し、同処理槽内で取水された水にマイクロバブルを接触させて生物曝気処理した後、濾過層を通してから前記自然水域水へ連続的に返送・循環する。
自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって、微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルによる自然水域の浄化方法及び浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水は物を溶かす溶媒として基本的なものであり、一般に化学式HOで示される純粋な水は自然界には存在しない。例えば海水は多くの塩類を含み、陸水においても少量の塩類と有機物などが溶けている。
水中に溶解した酸素は溶存酸素(DO、Dissolved Oxygen)とよばれ、水中生物の生命維持には欠かせない。自然界では化学反応の多くは水溶液中でおこり、物質の溶存状態が反応に影響を与える。
マイクロバブルは、その発生時において気泡径が10〜数10マイクロメートル(μm)のサイズ効果を有する微細な気泡と定義される。(なお、この発生時のマイクロバブルは水中においてその後圧縮されて縮小する)。この気泡中には空気と同じく約20%の酸素と約80%の窒素、微量成分としてアルゴンや炭酸ガス等が含まれている。 そして、このマイクロバブルは普通の気泡(マクロバブル)とは異なった物理的、化学的性質を有している。
【0003】
[マイクロバブルの性質]
水槽容器内で発生した気体のバブル(マクロバブル)は、空気と水の比重差により速やかに上昇し、上層において水圧が減じるにしたがい径が大きくなり水相の表面で破裂する。
一方、装置内で負圧下で生成されたマイクロバブルは水中に比較的長時間留まり、最後には水中で消滅する。マイクロバブルの気泡としての特性をストークス則、ラプラス圧、ヘンリー則から概観する。
気泡の上昇速度はストークスの式(1)
V=(ρs−ρF)gD/18μ 式(1)
で表される。気泡の上昇速度(V)はρs(粒子密度)、ρF(液体密度)、g(重力加速度)、D(粒子径)、μ(液体の粘性係数)で表され1μmの気泡では数10cm/日と非常に遅い。
また、気泡は水中に存在するガス体であり普通は球状の気液界面をもち、マイクロバブルではその気体/液体界面で水の表面張力が作用して内部の気体の圧力が上昇する。気泡の外部と内部との圧力差ΔPはLaplaceの式(2)
ΔP=γ/R 式(2)
で表されγは水の表面張力、Rは気泡の大きさである。直径が1μmの気泡の内部のガス圧は3〜4気圧になる。
Henryの法則では気体の溶解度は圧力に比例して増し、常温での1気圧の大気(酸素の分圧;0.2気圧)の時、DOは約8ppmである。小さな径を持つマイクロバブルは大きな比表面積をもち酸素の溶解速度が速く、その近傍では酸素の局所濃度は増加していると考えられる。また、マイクロバブル表面は負(蒸留水で−35mV)に帯電しており、ゼータ電位は強アルカリ性で−100mV、pH3以下の酸性ではプラスの電位を示す。水中に溶存した酸素は酸化的に、逆にマイナスの帯電は還元的であり、マイクロバブル表面は酸化と還元両方の雰囲気をもつ可能性がある。
これらのマイクロバブルの効果は、反応速度が速く大きな自由エネルギー変化を伴う直接的な化学反応と、比較的穏やかな反応である生物学的反応に区別する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマクロバブルによる汚染自然水域又は自然水を入れた水槽水の浄化処理システムでは、長時間と大型の装置を必要とし、高コストとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は前記課題を解決するもので、下記構成の発明である。
(1)汚染自然水域から水を連続的に取水してマイクロバブル接触処理槽に導入し、同処理槽内で取水された水にマイクロバブルを接触させて生物曝気処理した後、濾過層を通してから前記自然水域水へ連続的に返送・循環することを特徴とするマイクロバブルによる自然水域水又は自然水を入れた水槽水の浄化方法。
(2)自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって、微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化することを特徴とする前記(1)記載のマイクロバブルによる自然水域水の浄化方法。
(3)水棲動物が棲息する汚染自然水域から水を連続的に取水してマイクロバブル接触処理槽に導入し、同処理槽内で取水された水にマイクロバブルを接触させて微生物曝気処理した後、濾過層を通してから前記自然水域水へ連続的に返送すること又は自然水を入れた水槽水を循環することを特徴とするマイクロバブルによる水棲動物の育成方法。
(4)自然水域又は自然水を入れた水槽水に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって、微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化することを特徴とする前記(3)記載のマイクロバブルによる水棲動物の育成方法。
(5)水棲動物が棲息する汚染自然水域又は自然水を入れた水槽水の水を連続的に取水する取水手段と、同取水手段により取り出された水にマイクロバブルを接触させて微生物曝気処理するマイクロバブル接触処理槽と、同処理槽から導出された微生物曝気処理済水を濾過する濾過装置と、同濾過装置から導出された浄化水を前記自然水域水へ連続的に返送・循環する浄化水返送手段とからなることを特徴とするマイクロバブルによる自然水域水又は自然水を入れた水槽水の浄化システム。
(6)マイクロバブル接触処理槽において、自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化するようにしたことを特徴とする前記(5)記載のマイクロバブルによる自然水域水又は自然水を入れた水槽水の浄化システム。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の方法によれば、簡易な構成で汚染自然水域又は水棲動物棲息汚染水域又は自然水を入れた水槽水を効率的に浄化することができる。
また、本願発明のシステムによれば、簡易・小型な装置構成で、汚染自然水域又は水棲動物棲息汚染水域を効率的に浄化することができる。
そして、本願発明システムを水棲動物育成用水槽に適用すれば、水の入れ替えなしで、かつ清掃不要で長期間水棲動物を育成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本願発明の実施の形態について説明する。
まず、マイクロバブルを使用して各種実験した結果について説明する。
[マイクロバブル実験と測定]
マイクロバブル処理(以下MB処理と略す)にはM2型バブル発生装置(商品名:株式会社ナノプラネット研究所製の平均気泡粒径10〜20ミクロンのマイクロバブルを発生する旋回式マイクロバブル発生装置)と30L、20Lあるいは5L(リットル)の水槽を用い、空気量は100〜1000mL/分とし、室温(20〜30℃)で行った。
池の水に塩化アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、あるいは市販の界面活性剤(SDS;ドデシル硫酸ナトリウム、SDBS;ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)を添加したものを試料として用い、特に栄養塩類は加えなかった。 マイクロバブルの代わりに普通のマイクロバブルを通じた実験をB処理とする。対照実験として水道水をイオン交換、活性炭ろ過、フィルター処理をした水を用いた。
この水は塩類や菌類を含まないので便宜上蒸留水と表記する。アンモニアの測定はインドフェノール吸光光度法、硝酸と亜硝酸の測定はイオンクロマトグラフ法を用い、界面活性剤の定量はエチルバイオレットを用いるトルエン抽出−吸光光度法およびTOC測定を行った。
【0008】
[窒素の酸化]
1.窒素の酸化還元方法
酸化とは窒素に酸素がつく反応であり、還元では水素が反応する。この時酸素は−2価、水素は+1価として計算し窒素原子の酸化数を求める。
図1に示すように窒素分子(N)の窒素の酸化数を0として、還元反応により酸化数−3のアンモニア(NH)もしくはアンモニアイオン(NH)になる。一方、酸化反応により酸化数+3の亜硝酸(HNO、亜硝酸イオン;NO)、+5の硝酸(HNO、硝酸イオン;NO)になる。
この酸化還元反応の電位はネルンストの式であらわされる。
E=E0−0.0591/nlog([還元体]/[酸化体])25℃ 式(3)
なお、Eは系の電位、Eは反応に関与する化学種に固有の標準酸化還元単位、nは反応に関与する電子数である。
系中で酸化反応により電位の高い酸化剤が消費されると電位が下がり、逆に還元反応では還元剤が消費されると電位が上がる。溶液のpHや存在状態により異なるが酸化還元電位はO/HO(1.23V)、亜硝酸/アンモニア/(0.86V)、硝酸/亜硝酸(0.94V)である。また、電位は反応の自由エネルギーと関係があり微生物が関与する反応も分子レベルでは化学反応である。
【0009】
2.無機態窒素
窒素は生物にとって必須元素であり人間の体をつくるたんぱく質に多く含まれている。自然界では大気中の窒素ガスを微生物が窒素固定をおこない、食物連鎖をとおして動植物が利用している。
自然界では、窒素分子→「窒素固定」→アンモニア→「硝化」→亜硝酸→「硝化」→硝酸→「脱窒」→窒素分子、の循環がバランスされている。たんぱく質などが分解されて生じた無機態窒素の大部分(90%以上)はアンモニアであり、プラスの帯電を帯びた土壌粒子に吸着され、植物の肥料として利用される。好気性の条件では硝化菌によりアンモニアは亜硝酸、硝酸へと酸化される。
マイナスの電荷をもつ硝酸イオンは土壌から溶出して水に溶け、過剰の存在は河川、湖沼、地下水の汚染の原因となる。
近代ではボルン・ハーバー法により水素と窒素からアンモニアが工業的につくられているが、過剰の化学肥料の使用は富栄養化など環境問題の原因となる。
硝酸、亜硝酸はメトヘモグロビン症の原因となるため飲料水では10mg/L(地下水環境基準;1999年、水道法に基づく水質基準に関する省令;2003年)されており、水質汚染の観点から事業所等からの排水についても無機態窒素として100mg/Lの排水基準(水質汚濁防止法)が定められている。
【0010】
3.マイクロバブルによる窒素の酸化
蒸留水にアンモニアおよび亜硝酸を加え、マイクロバブルおよび対照実験としてマクロバブル処理をおこなったが、90時間後において変化がなかった(図2)。
この結果はマイクロバブルによる無機態窒素の化学的酸化が起こっていないか、検出できるほどの還元形窒素の生成及び酸化形窒素の減少がないことを示すものである。
一方、池の水には2〜3ppmの硝酸、0.5ppmの亜硝酸、微量のアンモニア(冬季)が含まれていたが、この水に窒素の各塩を添加して試料水とし用いた。
図3に示すように池の水にMB処理をおこなうと、処理直後からアンモニアは減少し、20時間後に消失した。亜硝酸は減少→増加→減少→消失し、硝酸は増加後一定の値となった。独立栄養細菌である硝化菌は栄養として有機物を必要としないが、アンモニアの酸化速度は遅く、排水処理のプラントでは水温20〜30度、pH=6.8〜8.5で曝気処理することが多い。池の水についてはB処理によるアンモニアの減少速度はMB処理に比べて遅かった。
硝化菌は、その菌種に応じた特別な化学物質により酵素反応が阻害され活性を失う。この方法は菌の存在の間接的な証明に用いることができる。池の水をMB処理前にアリルチオ尿素を添加するとアンモニアの亜硝酸への酸化反応が阻害され、硝酸は生成しなかった。アンモニア酸化細菌の働きにより生成した亜硝酸は、亜硝酸酸化細菌により硝酸へと酸化される。この反応は塩素酸により阻害される。塩素酸ナトリウムを添加するとアンモニア酸化細菌によりアンモニアが亜硝酸に酸化されるため、最初アンモニアは減少して亜硝酸は増加する。しかし、塩素酸により亜硝酸酸化細菌による亜硝酸から硝酸への酸化が阻害されるため酸化は亜硝酸の段階でとまり、亜硝酸濃度は一定となった。
これらの結果はマイクロバブルによるアンモニア酸化細菌(nitrosomonas)と亜硝酸酸化細菌(nitrobactor)などの微生物によるアンモニアの硝酸への酸化反応の活性化を示唆し、従来の方法に比べてMB処理はアンモニアの硝酸への酸化速度を速める効果がある。
【0011】
4.脱窒とマイクロバブル
硝酸および亜硝酸は脱窒細菌により窒素分子あるいは窒素酸化物のガスとして系から除かれる。この菌は従属栄養細菌であり、メタノールや糖などエネルギーと菌の骨格をつくる炭素を必要とし、好気的条件では酸素を利用、嫌気性雰囲気では硝酸を利用する。10ppmになるように硝酸カリウムを添加し、ブドウ糖を加えた池の水についてMB処理をおこなったが、硝酸の減少はなかった。従って空気−マイクロバブルは溶存酸素を利用する酸化反応には有効であるが、脱窒のような嫌気性雰囲気の還元反応への適用には限界がある。
【0012】
[界面活性剤]
1.界面活性剤の性質
水と油、水と空気など異なる2相が接するとき、どちらかの相に溶けていた物質が2相の接触面(界面)に吸着して2相界面の面積をできるだけ小さくする力である界面張力(相の一方が気体のときは表面張力ともいう)が働く。この界面張力を低下させる作用を界面活性と称し、少量で著しい効果を持つ物質を界面活性剤という。例えば界面活性剤を含む洗剤の水溶液が泡立つのは空気と水との間の界面張力が低下するからである。界面活性剤は分子内に性質の異なる2つの部分をもつ。水に溶け難く油になじみ易い部分は親油基と称され、主として長鎖の脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素からなる。一方、水と結合する部分は親水基と称されカルボン酸、スルフォン酸、アンモニウムイオンなど水和しやすい基からなる。水に油を加えると互いに溶け合わないため2相に分離する。これに界面活性剤を添加すると親油基が油滴に溶け、親水基は油滴の表面を覆い結果として油滴は水に溶ける(可溶化)、あるいは分散(乳化)する。親水基がイオン性であれば油滴のひょうめんは電荷をおび、同じ荷電の粒子となるため凝集し難くなる。石鹸や洗剤など界面活性剤は日常生活において広く使われており、その使用目的に応じて種々のものが合成・販売されている。
【0013】
2.分解のメカニズム
今回、分解試験に用いたSDSは式(4)(5)に示すように高級アルコールであるドデカノールと硫酸のエステルであり、アルカリ性や酸性の条件下では比較的速やかに加水分解して、原料のアルコールと硫酸になる。
1225OH+HSO ⇔ C1225OSOH+H
式(4)
1225OSOH+NaOH=C1225OSONa(固体、SDS)+H
式(5)
【0014】
池の水ほど顕著でないが、蒸留水に添加したSDSはMB処理をすると一次分解による濃度の減少があり、化学的に一部加水分解されていると考えられる。
一次分解 C1225OSONa+HO → C1225OH+NaHSO
式(6)
二次分解 C1225OH+18O → 12CO+13H
式(7)
しかし、洗濯用の合繊洗剤などに多く使われているベンゼン環に直接結合したスルフォン基を持つSDBSは安定であり化学的方法ではその分解は困難である。蒸留水中でのMB処理によるSDBSの分解は観測されなかった。
界面活性剤の疎水部分は炭化水素からできており、容易に微生物に分解される。 生分解とは有機炭素化合物が、微生物の作用によって細胞物質への転化やエネルギー源として利用されるときに二酸化炭素と水に分解される現象のことをいう。この過程は、
1)一次的な分解:物質の特性を変えるのに必要な最小限の分解作用、
2)環境が受け入れるまでの分解:環境上好ましくない性質を失うまでの分解作用、
3)最終的な分解:二酸化炭素、水、親水部分の塩など無機質にする分解作用、
に分けられる。
自然界の実際の反応は複雑であり、SDBSの生分解は微生物のつくる酵素による a.アルキル鎖の切断とカルボン酸への酸化、b.ベンゼン環の開裂、c.スルフォン基の脱離、d.小さくなった有機炭素化合物の水と二酸化炭素への無機化と微生物内への取り込み、からなるが詳細は不明である。
今回は、一般的な洗剤の生分解試験法(JIS K3363等)によらず、池の水をMB処理して、メチレンブルー活性(界面活性を失う一次分解に対応)に相当するエチル・バイオレットを対イオンとしたトルエン抽出−吸光光度による測定、およびTOC測定による二次分解(有機炭素の無機化)の経時変化を調べた。池の水のMB処理した時のSDSの一次分解の経時変化図5に示す。池の水のMB処理では18時間後、B処理では24時間後、放置では68時間後に一次分解が終了した。溶存酵素はMB処理、B処理ともに飽和値、放置では時間による変化があり容器内全体の好気性が維持され難い条件下にあった。
図6に全有機炭素(TOC)の測定結果を示す。池の水のもともと含まれているTOCは3.3ppm、蒸留水でほぼ0ppmである。池の水のTOCのベースラインを考慮するとSDSはMB処理では18時間後にほぼ無機化されており、B処理では一部有機炭素成分が残る。
SDBSについてはMB処理により約50時間後の一次処理された。しかしTOCについては気泡形成のために正確な測定はできなかった。
【実施例】
【0015】
次に本願発明の自然水域水の浄化処理システムをいくつかの実施例図面によって具体的に説明する。
実施例1:
図7は水棲動物(魚)の水槽水に本願発明を適用した例であり、
水槽2の有機性汚染水(池から取水した自然水域水)中に埋設されたマイクロバブル発生装置1からマイクロバブルを含んだ水が噴出され、有機性汚染水にマイクロバブルが接触し、水中溶存酸素量が増加する。
すると、水中に存在する微生物が増殖して有機性汚染物質が消費される結果、同汚染水が浄化される。
また、マイクロバブルに接触された水は仕切壁2’の上端を越えて(オーバーフロー)、濾過装置室3に入り、そこで濾過材6によって微生物の死骸等の固形物が捕捉・濾過され、管路5を経由し、途中のポンプ4を介して再びマイクロバブル発生装置1に導入される。
以上のようにして、有機性汚染水が浄化システム内に循環され、常に浄化水が水棲動物10環境水として供給される。
【0016】
実施例2:
図8は水棲動物(魚)の水槽水に本願発明を適用した他の例であり、
水槽2の有機性汚染水(池から取水した自然水域水)中に埋設されたマイクロバブル発生装置1からマイクロバブルを含んだ水が噴出され、有機性汚染水にマイクロバブルが接触し、水中溶存酸素量が増加する。
すると、水中に存在する微生物が増殖して有機性汚染物質が消費される結果、同汚染水が浄化される。
また、マイクロバブルに接触された水は埋設されたストレーナ7により濾過され、そこで微生物の死骸等の固形物が捕捉・濾過され、管路5を経由し、途中のポンプ4を介して再びマイクロバブル発生装置1に導入される。
以上のようにして、有機性汚染水が浄化システム内に循環され、常に浄化水が水棲動物10環境水として供給される。
【0017】
実施例3:
図9は水棲動物(魚)の水槽水に本願発明を適用した他の例であり、
水槽2の有機性汚染水(池から取水した自然水域水)中に埋設されたマイクロバブル発生装置1からマイクロバブルを含んだ水が噴出され、有機性汚染水にマイクロバブルが接触し、水中溶存酸素量が増加する。
すると、水中に存在する微生物が増殖して有機性汚染物質が消費される結果、同汚染水が浄化される。
また、マイクロバブルに接触された水は濾材製仕切壁8により濾過され、そこで微生物の死骸等の固形物が捕捉・濾過され、貯留室に貯留された後、管路5を経由し、途中のポンプ4を介して再びマイクロバブル発生装置1に導入される。
以上のようにして、有機性汚染水が浄化システム内に循環され、常に浄化水が水棲動物10環境水として供給される。
【0018】
実施例4:
図10は水棲動物(魚)の水槽水に本願発明を適用した他の例であり、
水槽2中に、水中溶存酸素量が増加した浄化水が供給されている。
水槽2の下底部から有機性汚染水(池から取水した自然水域水)が取水され、管路5を経て有機性汚水処理補助装置9に導入される。
有機性汚水処理補助装置9にはマイクロバブル発生装置1と濾過材6が取り付けられており、そこでマイクロバブルを含んだ水が噴出され、有機性汚染水にマイクロバブルが接触し、水中溶存酸素量が増加し、微生物が増殖して有機性汚染物質が消費される結果、同汚染水が浄化される。
そこでマイクロバブルに接触された水は濾濾過材6により濾過され、そこで微生物の死骸等の固形物が捕捉・濾過され、管路5を経由し水槽2へ導出される。
以上のようにして、有機性汚染水が浄化システム内に循環され、常に浄化水が水棲動物10環境水として供給される。
【0019】
以上の実施例によれば、アンモニア性窒素が急減して、硝化による水質改善がなされ、自然水域や水槽内の魚介類や水棲生物(海洋生物を含む)の長期生育が可能となった。
そして、水槽が汚れず、清掃も不要となり、水の入れ替えも必要としなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
工場や事業所の生産活動に伴う排水など汚染源を特定できるPoint汚染と、肥料や農薬あるいは家庭排水などの汚染源の特定が困難で影響が広範囲にわたるNonpoint汚染では、取り扱う量と処理物の濃度に大きな違いがある。Point汚染では比較少量の高濃度排水を処理する必要がある。
一方、Nonpoint汚染は汚染物質の濃度は低いが広範囲にわたるため、膨大な量を処理する必要があり自然界の生物による浄化サイクルが重要となる。マイクロバブル技術の適応として、今回は比較的低濃度の化学種を扱った。マイクロバブルの反応に対する直接的な化学的効果は検出することができなかったが、微生物を利用した生物学的反応に対してマイクロバブルは有用である。自然の空気を利用したマイクロバブルは、開放系の自然環境中で好気性雰囲気での処理反応に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【0022】
【図1】窒素の酸化と還元状態の説明図。
【図2】マイクロバブル処理(20−23℃)による各種無機態窒素の変化を示すグラフ図。
【図3】マクロバブル処理(27−29℃)による各種無機態窒素の変化を示すグラフ図。
【図4】マイクロバブル処理(26−30℃)による各種無機態窒素の変化を示すグラフ図。
【図5】SDS含有水に対するマイクロバブル処理効果を示すグラフ図。
【図6】SDS含有水に対するマイクロバブル処理効果、マクロバブル処理効果を示すグラフ図。
【図7】マイクロバブルによる水棲生物水槽の浄化システムの一例の説明図。
【図8】マイクロバブルによる水棲生物水槽の浄化システムの他例の説明図。
【図9】マイクロバブルによる水棲生物水槽の浄化システムの他例の説明図。
【図10】マイクロバブルによる水棲生物水槽の浄化システムの他例の説明図。
【符号の説明】
【0023】
1:マイクロバブル発生装置、 2:水槽、 3:濾過装置室、
4:ポンプ、 5:管路、 6:濾過材、
7:ストレーナ、 8:濾材製仕切壁、
9:有機性汚水処理補助装置、 10:水棲動物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染自然水域から水を連続的に取水してマイクロバブル接触処理槽に導入し、同処理槽内で取水された水にマイクロバブルを接触させて生物曝気処理した後、濾過層を通してから前記自然水域水へ連続的に返送・循環することを特徴とするマイクロバブルによる自然水域水の浄化方法。
【請求項2】
自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって、微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化することを特徴とする請求項1記載のマイクロバブルによる自然水域水の浄化方法。
【請求項3】
水棲動物が棲息する汚染自然水域から水を連続的に取水してマイクロバブル接触処理槽に導入し、同処理槽内で取水された水にマイクロバブルを接触させて微生物曝気処理した後、濾過層を通してから前記自然水域水へ連続的に返送・循環することを特徴とするマイクロバブルによる水棲動物の育成方法。
【請求項4】
自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって、微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化することを特徴とする請求項3記載のマイクロバブルによる水棲動物の育成方法。
【請求項5】
水棲動物が棲息する汚染自然水域から水を連続的に取水する取水手段と、同取水手段により取り出された水にマイクロバブルを接触させて微生物曝気処理するマイクロバブル接触処理槽と、同処理槽から導出された微生物曝気処理済水を濾過する濾過装置と、同濾過装置から導出された浄化水を前記自然水域水へ連続的に返送・循環する浄化水返送手段とからなることを特徴とするマイクロバブルによる自然水域水浄化システム。
【請求項6】
マイクロバブル接触処理槽において、自然水域に棲息している微生物にマイクロバブルを接触させることによって微生物増殖速度を高め、活性化し、アンモニア性窒素を亜硝酸化又は硝酸化するようにしたことを特徴とする請求項5記載のマイクロバブルによる自然水域水浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−272307(P2006−272307A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125635(P2005−125635)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(504361872)株式会社 ナノプラネット研究所 (6)
【Fターム(参考)】