説明

マイクロバルブ

【課題】低コストで高精度な流量制御を可能とするマイクロバルブを提供する。
【解決手段】弁体形成基板20は、フレーム部21の内側に、フレーム部21と連続し弁座基板10との間に流入口11に連通する流入口2次側空間41を形成する第1のダイヤフラム部22およびフレーム部21と連続するとともに弁体部24が連続一体に設けられ弁座基板10との間に流出口12に連通する流出口1次側空間42を形成する第2のダイヤフラム部23が配置され、第1のダイヤフラム部22が流量検出用可動電極28を兼ね、弁体部24に駆動用可動電極25が形成されている。固定電極形成基板30は、弁体形成基板20との間に第1のダイヤフラム部22の変位を可能とする基準圧力空間52を弁体部変位空間55とともに形成する形で弁体形成基板20に固着され、且つ、流量検出用可動電極28に対向する流量検出用固定電極32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御するマイクロバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロエレクトロニクス分野や医療用のエレクトロニクス分野などにおいて、微量な流体の流れを制御するデバイスとして、シリコン基板のような半導体基板をマイクロマシンニング技術により加工して形成した構造体を用いたマイクロバルブが各所で研究開発されており、例えば、構造体に形成した弁体部を、静電引力を利用して駆動する静電型アクチュエータが一体化されたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この種のマイクロバルブは、例えば、図6に示すように、流体の流入口11’および流出口12’が厚み方向に貫設された弁座基板10’と、弁座基板10’の一表面側に固着されるフレーム部21’およびフレーム部21’の内側に配置され流出口12’を開閉する弁体部24’を有し弁体部24’における弁座基板10’とは反対側に駆動用可動電極25’が形成された弁体形成基板20’と、弁体形成基板20’との間に弁体部24’の変位を可能とする弁体部変位空間55’を形成する形で弁座基板10’とは反対側に固着されるとともに駆動用可動電極25’に対向する駆動用固定電極35’が形成された固定電極形成基板30’とを備えている。また、弁体形成基板20’は、フレーム部21’の内側に、フレーム部21’と連続し弁座基板10’との間に流入口11’に連通する流入口2次側空間41’を形成する第1のダイヤフラム部22’およびフレーム部21’と連続するとともに弁体部24’が連続一体に設けられ弁座基板10’との間に流出口12’に連通する流出口1次側空間42’を形成する第2のダイヤフラム部23’が配置されている。
【0004】
上述の図6に示した構成のマイクロバルブは、駆動用可動電極25’に電気的に接続されたパッドP1’と駆動用固定電極35’に電気的に接続されたパッド(図示せず)との間に電圧を印加したときに駆動用可動電極25’と駆動用固定電極35’との間に発生する静電力によって流出口12’を開放する向きに弁体部24’を変位させるようになっている。すなわち、上述のマイクロバルブは、駆動用可動電極25’と駆動用固定電極35’との間に電圧を印加していない状態では、図6に示すように弁体部24’により流出口12’が閉止されている。これに対して、駆動用可動電極25’と駆動用固定電極35’との間に駆動電圧源から規定電圧以上の電圧を印加すると、弁体部24’が流出口12’から離れる向きに変位して流出口12’が開放され、流入口11’を通して第1のダイヤフラム部22’と弁座基板10’との間の空間へ導入された流体が流出口12’を通って流出することとなる。
【0005】
また、上述のマイクロバルブでは、駆動電圧源から駆動用可動電極25’と駆動用固定電極35’との間に電圧パルスを周期的に印加するようにし、デューティ比(1周期の時間に対する電圧パルスのパルス幅の割合)を制御回路で制御することにより、流体の流量を任意の流量に制御することができる。
【特許文献1】特開2004−176802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6に示した構成のマイクロバルブにおいて、上述のデューティ比を制御するためには、流体の流量を検出する流量センサを当該マイクロバルブとは別途に設けて、流量センサの出力を制御回路へフィードバックしなければ、高精度な流量制御ができなかった。要するに、上述のマイクロバルブを用いて高精度な流量制御を行うためには、別途に流量センサを用意する必要があり、コストが高くなってしまう。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、低コストで高精度な流量制御を可能とするマイクロバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、流体の流入口および流出口が厚み方向に貫設された弁座基板と、半導体基板を用いて形成されて弁座基板の一表面側に固着されるフレーム部およびフレーム部の内側に配置され流出口を開閉する弁体部を有し弁体部における弁座基板とは反対側に駆動用可動電極が形成された弁体形成基板と、弁体形成基板との間に弁体部の変位を可能とする弁体部変位空間を形成する形で弁座基板とは反対側に固着されるとともに駆動用可動電極に対向する駆動用固定電極が形成された固定電極形成基板とを備え、弁体形成基板は、フレーム部の内側に、フレーム部と連続し弁座基板との間に流入口に連通する流入口2次側空間を形成する第1のダイヤフラム部およびフレーム部と連続するとともに前記弁体部が連続一体に設けられ弁座基板との間に流出口に連通する流出口1次側空間を形成する第2のダイヤフラム部が配置され、第1のダイヤフラム部に流量検出用可動電極が形成され、固定電極形成基板は、弁体形成基板との間に第1のダイヤフラム部の変位を可能とする基準圧力空間を前記弁体部変位空間とともに形成する形で弁体形成基板に固着され、且つ、流量検出用可動電極に対向する流量検出用固定電極が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、流入口の2次側の圧力と基準圧力空間の圧力との圧力差分に応じて第1のダイヤフラム部が変位して流量検出用可動電極と流量検出用固定電極との距離が変化し流量検出用可動電極および流量検出用固定電極を含むコンデンサの静電容量が変化するので、例えば基準圧力空間の圧力を流出口の2次側の圧力と等しくすれば、別途に流量センサを用意することなく流体の流量を高精度に検出することが可能となり、しかも、流量検出用可動電極を駆動用可動電極と同時に形成することが可能であるとともに、流量検出用固定電極を駆動用固定電極と同時に形成することが可能なので、製造が容易で低コスト化を図れる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記基準圧力空間の圧力が、前記流出口の2次側の圧力に等しい圧力に設定されてなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記流出口の2次側の圧力を一定として使用する場合、前記基準圧力空間と前記流出口の2次側とを連通させるための構造を設けることなく、前記基準圧力空間の圧力を前記流出口の2次側の圧力と略等しくすることができ、当該構造を設ける場合に比べて小型化を図れるとともに製造が容易になる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記固定電極形成基板に前記基準圧力空間と連通する圧力導入口が厚み方向に貫設され、前記流出口の2次側の圧力を前記基準圧力空間へ伝達して前記基準圧力空間の圧力と前記流出口の2次側の圧力とを等しくする圧力伝達路を備えてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記流出口の2次側の圧力が一定でなく変動するような場合でも、前記基準圧力空間の圧力を前記流出口の2次側の圧力と略等しくすることができ、流体の流量を高精度に検出することが可能となる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記弁座基板は、前記流出口の圧力を前記基準圧力空間へ伝達する経路の一部を構成する圧力導入口が厚み方向に貫設され、流体排出用の配管を接続する接続管が、前記弁体形成基板側とは反対側で前記流出口と圧力導入口とに跨る形で固着され、前記弁体形成基板は、当該圧力導入口と前記基準圧力空間とを連通させる圧力導入用貫通孔が厚み方向に貫設されてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記流出口の2次側の圧力が一定でなく変動するような場合でも、前記基準圧力空間の圧力を前記流出口の2次側の圧力と略等しくすることができ、流体の流量を高精度に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、低コストで高精度な流量制御を可能とすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、本実施形態のマイクロバルブについて図1および図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態のマイクロバルブは、例えば、小型の燃料電池や燃料改質器への液体燃料(例えば、メタノール、純水、メタノール水溶液など)の供給路上に設けて使用することができるが、他の用途への使用も可能である。 本実施形態のマイクロバルブは、流体(例えば、液体燃料)の流入口11および流出口(弁口)12が厚み方向に貫設されるとともに一表面(図1(a)における上面)側において流出口12の周部に弁座13が突設された弁座基板10と、弁座基板10の上記一表面側に固着されるフレーム部21およびフレーム部21の内側に配置され流出口12を開閉する弁体部24を有し弁体部24における弁座基板10側とは反対側に駆動用可動電極25が形成された弁体形成基板20と、弁体形成基板20との間に弁体部24の変位を可能とする弁体部変位空間55を形成する形で弁座基板10とは反対側に固着されるとともに駆動用可動電極25に対向する駆動用固定電極35が形成された固定電極形成基板30とを備えている。
【0018】
ここにおいて、弁体形成基板20は、フレーム部21の内側に、フレーム部21と連続し弁座基板10との間に流入口11に連通する流入口2次側空間41を形成する第1のダイヤフラム部22およびフレーム部21と連続するとともに弁体部24が連続一体に設けられ弁座基板10との間に流出口12に連通する流出口1次側空間42を形成する第2のダイヤフラム部23が配置されている。
【0019】
なお、本実施形態のマイクロバルブは、弁体形成基板20が半導体基板(本実施形態では、低不純物濃度のp形のシリコン基板)を用いて形成されるとともに、弁座基板10がパイレックス(登録商標)からなる第1のガラス基板を用いて形成され、固定電極形成基板30がパイレックス(登録商標)からなる第2のガラス基板を用いて形成されており、弁体形成基板20と弁座基板10とが陽極接合により固着されるとともに、弁体形成基板20と固定電極形成基板30とが陽極接合により固着されている。
【0020】
ここにおいて、弁体形成基板20に形成された駆動用可動電極25は、高濃度の不純物拡散層(例えば、ボロンを高濃度に拡散した不純物拡散層)により構成され、固定電極形成基板30に形成された駆動用固定電極35は、金属膜(例えば、白金膜とクロム薄膜との積層膜)により構成されている。なお、駆動用固定電極35を構成する金属膜の材料は白金やクロムに限らず、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、金などを採用してもよい。
【0021】
ここで、駆動用可動電極25および駆動用固定電極35は、固定電極形成基板30に形成されたパッドP1,P2と金属配線36,38を介して電気的に接続されている。したがって、駆動用可動電極25に電気的に接続されたパッドP1と駆動用固定電極35に電気的に接続されたパッドP2との間に電圧を印加したときに駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との間に発生する静電力によって流出口12を開放する向きに弁体部24を変位させるようになっている。すなわち、本実施形態のマイクロバルブの基本的な動作原理は図6に示した従来例と同じであり、駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との間に電圧を印加していない状態では、図1(a)のように弁体部24により流出口12が閉止されている。これに対して、駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との間に駆動電圧源から規定電圧以上の電圧を印加すると、弁体部24が流出口12から離れる向きに変位して図1(b)のように流出口12が開放される。要するに、本実施形態のマイクロバルブは、ノーマリクローズ型のマイクロバルブを構成している。なお、弁体形成基板20における駆動用可動電極25上には、駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との接触を禁止して駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との導通を防止する絶縁膜からなるストッパ29が設けられている。
【0022】
また、本実施形態のマイクロバルブでは、流出口12が弁体部24により閉止された状態において、流入口11を通して弁座基板10と第2のダイヤフラム部23との間の流出口1次側空間42に流れ込んだ流体の圧力により弁体部24が浮き上がって流出口12が開放されるのを防止するために、弁体部変位空間55には、例えば、不活性ガスや空気などの気体が所定圧力で封入されている。ここにおいて、本実施形態のマイクロバルブは、固定電極形成基板30が弁体形成基板20との間に第1のダイヤフラム部22の変位を可能とする基準圧力空間52を弁体部変位空間55とともに形成する形で弁体形成基板20に固着されており、弁体部変位空間55と基準圧力空間52とが連通している。
【0023】
したがって、本実施形態のマイクロバルブでは、駆動用可動電極25と駆動用固定電極35との間に電圧を印加していない状態(つまり、弁体部24を変位させていない状態)で流入口11を通して弁座基板10と第1のダイヤフラム部22との間の流入口2次側空間41へ流入した流体の圧力を受けて、第1のダイヤフラム部22が撓む(固定電極形成基板30側へ凸となる形で変形する)ことによって弁体部24が流出口12を閉止する向きの力である閉止力が作用する。
【0024】
以下、弁座基板10、弁体形成基板20、固定電極形成基板30それぞれについて詳述する。
【0025】
弁座基板10の外周形状は矩形状であり、弁座基板10の上記一表面には、流入口11と流出口12との間において流体の流路となる流路用凹部15が流入口11および流出口12を囲むように形成されており、流入口2次側空間41と流出口1次側空間42とが連通するようになっている。ここで、流入口11および流出口12の開口形状は円形状とし、流路用凹部15の内周形状は矩形状としてある。また、弁座基板10における流出口12の周部には、上述の弁座13が流路用凹部15の内底面よりも突出する形で連続一体に形成されており、弁座13の表面には、弁体形成基板20のフレーム部21と弁座基板10とを陽極接合により固着する際に、弁体部24と弁座13とが接合されるのを防止する金属薄膜(例えば、クロム薄膜)からなる接合防止膜14が形成されている。
【0026】
弁体形成基板20の外周形状は、弁座基板10と同じ外形サイズの矩形状としてある。弁体形成基板20は、上述の半導体基板をマイクロマシンニング技術により加工することで形成してあり、具体的には、リソグラフィ技術、エッチング技術などを利用してあり、弁体部24が第2のダイヤフラム部23を介してフレーム部21に支持されている。ここで、弁体部24は、弁座13に近づくにつれて断面積が徐々に小さくなる形状に形成されている。
【0027】
また、弁体形成基板20は、弁座基板10側とは反対の一表面側に高濃度の不純物拡散層(例えば、ボロンを高濃度に拡散した不純物拡散層)204が形成されており、当該不純物拡散層204のうち弁体部24に形成された部位が駆動用可動電極25を構成し、第1のダイヤフラム部22の全体に亘って形成されている部位が流量検出用可動電極28を構成している(第1のダイヤフラム部22が流量検出用可動電極28を兼ねている)。したがって、駆動用可動電極25と流量検出用可動電極28とは同時に形成されており、同電位となる。ここにおいて、駆動用可動電極25および流量検出用可動電極28は、固定電極形成基板30に形成されている上述の金属配線36を介してパッドP1と電気的に接続されている。また、各ダイヤフラム部22,23は、コルゲート板状に形成されており、固定電極形成基板30との対向面側にそれぞれ複数の環状の凹溝22a,23aが同心的に形成されている。なお、本実施形態では、各ダイヤフラム部22,23をコルゲート板状とすることで各ダイヤフラム部22,23それぞれが平板状である場合に比べて、より小さな圧力で各ダイヤフラム部22,23が撓みやすくなるようにしてあるが、平板状であっても設計を最適化することによって同様に撓みやすくすることができる。
【0028】
固定電極形成基板30の外周形状は、矩形状に形成されているが、弁体形成基板20に固着した状態において上述の各パッドP1,P2および後述の流量検出用固定電極32に金属配線37を介して電気的に接続されたパッドP3が露出するように、長辺の寸法(図2(a)における左右方向の寸法)が弁体形成基板20の長辺の寸法(図2(b)における左右方向の寸法)よりも長く設定されている。
【0029】
ここにおいて、固定電極形成基板30は、弁体形成基板20との対向面に、上述の基準圧力空間52を形成するための第1の空間形成用凹部30aと、上述の弁体部変位空間55を形成するための第2の空間形成用凹部30bとが形成されており、第1の空間形成用凹部30aの内底面に、流量検出用固定電極32が形成され、第2の空間形成用凹部30bの内底面よりも突出した部位の表面に駆動用固定電極35が形成されている。したがって、固定電極形成基板30を弁体形成基板20に固着した状態においては、流量検出用固定電極32が流量検出用可動電極28に対向するとともに、駆動用固定電極35が駆動用可動電極25に対向するようになっている。ここで、流量検出用固定電極32と駆動用固定電極35とは同じ金属材料を採用するとともに膜厚を同じ値に設定してあり、同時に形成してある。なお、各空間形成用凹部30a,30bは円形状に開口されており、流量検出用固定電極32および駆動用固定電極35は円形状に形成されている。
【0030】
また、固定電極形成基板30における弁体形成基板20との対向面には、各空間形成用凹部30a,30bの他に、両空間形成用凹部30a,30bを連通させる連通用凹部30cと、第2の空間形成用凹部30bに連続して形成される溝であって駆動用固定電極35に接続された金属配線38および流量検出用固定電極32に接続された金属配線37が内底面に設けられる配線形成用溝30dとが形成されており、弁体形成基板20と固定電極形成基板30とを固着した状態において配線形成用溝39dにより形成される通気路は、樹脂(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)からなる封止部(図示せず)により封止される。したがって、上述の基準圧力空間52と弁体部変位空間55とは同じ圧力になる。
【0031】
本実施形態のマイクロバルブでは、流出口12が開放された状態で流出口12を流れる流体の流量をQ、流出口12の1次側(入口側)の圧力をPin、流出口12の2次側(出口側)の圧力をPoutとすると、流出口12の前後の圧力差と流量との関係は、マイクロバルブの流路構造で決まる比例定数をCとすれば、下記数1で表される。
【0032】
【数1】

【0033】
また、第1のダイヤフラム部22全体により構成される流量検出用可動電極28の面積をS、流量検出用可動電極28の剛性をk、流体の圧力による流量検出用可動電極28の変位量をxとし、基準圧力空間52の圧力がPbで一定であるとすると、流量検出用可動電極28にかかる圧力と剛性との関係は下記数2で表される。
【0034】
【数2】

【0035】
また、流量検出用可動電極28と流量検出用固定電極32との間の初期間隙(流入口11を通して流入口2次側空間41へ流体が導入されていない状態での間隙)をd、流体の圧力による流量検出用可動電極28の変位量をx、基準圧力空間52中の媒質の誘電率をε、流量検出用可動電極28と流量検出用固定電極32とで構成されるコンデンサの静電容量をCとすれば、静電容量Cは下記数3で表される。
【0036】
【数3】

【0037】
上述の数1〜3から、流量Qは下記数4で表すことができる。
【0038】
【数4】

【0039】
上記数4から分かるように、上記コンデンサの静電容量Cを用いて流体Qの流量を求めることができる。
【0040】
上述の数2および数4は、基準圧力空間52の圧力をPbと仮定したときの数式であるが、本実施形態のマイクロバルブは流出口12の2次側の圧力を一定として使用するものであり、基準圧力空間52の圧力を流出口12の2次側の圧力Poutに等しい圧力に設定してあるので、流量検出用可動電極28にかかる圧力と剛性との関係は下記数5で表される。
【0041】
【数5】

【0042】
上述の数1、数3、数5から、流量Qは下記数6で表すことができる。
【0043】
【数6】

【0044】
しかして、本実施形態のマイクロバルブは、流出口12の2次側の圧力を一定として使用するものであって、基準圧力空間52の圧力を流出口12の2次側の圧力と同じ圧力に設定してあり、流入口11の2次側の圧力(流入口2次側空間41の圧力)と基準圧力空間52の圧力との圧力差分に応じて第1のダイヤフラム部22が変位して流量検出用可動電極28と流量検出用固定電極32との距離が変化し流量検出用可動電極28および流量検出用固定電極32を含むコンデンサの静電容量Cが変化するので、別途に流量センサを用意することなく流体の流量Qを高精度に検出することが可能となり、しかも、流量検出用可動電極28を駆動用可動電極25と同時に形成することが可能であるとともに、流量検出用固定電極32を駆動用固定電極35と同時に形成することが可能なので、製造が容易で低コスト化を図れる。なお、本実施形態では、流出口12の2次側の圧力を一定として使用するものであり、基準圧力空間52の圧力を流出口12の2次側の圧力Poutに等しい圧力に設定してあが、基準圧力空間52の圧力Pbが一定であれば、上述の数4から流量Qを求めることができる。
【0045】
また、本実施形態のマイクロバルブでは、基準圧力空間52の圧力が流出口12の2次側の圧力に設定されているので、基準圧力空間52と流出口12の2次側とを連通させるための構造を設ける必要がなく、当該構造を設ける場合に比べて小型化を図れるとともに製造が容易になる。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態のマイクロバルブの基本構成は実施形態1と略同じであって、図3に示すように、固定電極形成基板30に、基準圧力空間52と連通する圧力導入口33が厚み方向に貫設されており、流出口12の2次側の圧力を基準圧力空間52へ伝達して基準圧力空間52の圧力と流出口12の2次側の圧力とを等しくする圧力伝達路を備えている点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。ここで、図3中の矢印は流体の流れる方向を示している。
【0047】
本実施形態のマイクロバルブでは、弁座基板10における弁体形成基板20側とは反対側で流入口11の周部に、流体供給用の配管91を接続する接続管81が固着され、流出口12の周部に、流体排出用の配管92を接続する接続管82が固着されている。また、固定電極形成基板30における弁体形成基板20側とは反対側で圧力導入口33の周部に、配管92から分岐された圧力分配管93を接続する接続管83が固着されている。なお、本実施形態では、圧力分配管93と接続管83とで圧力伝達路を構成している。
【0048】
しかして、本実施形態のマイクロバルブでは、流出口12の2次側の圧力が一定でなく変動するような場合でも、基準圧力空間52の圧力を流出口12の2次側の圧力と略等しくすることができ、流体の流量を高精度に検出することが可能となる。
【0049】
(実施形態3)
本実施形態のマイクロバルブの基本構成は実施形態1と略同じであって、図4および図5に示すように、弁座基板10および弁体形成基板20に相違点がある。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態における弁座基板10は、流出口12の圧力を基準圧力空間52へ伝達する経路の一部となる圧力導入口16が厚み方向に貫設され、弁体形成基板20側とは反対側で流入口11の周部に、流体供給用の配管91(実施形態2にて説明した図3参照)を接続する接続管81が固着され、流体排出用の配管92(実施形態2にて説明した図3参照)を接続する接続管82が流出口12と圧力導入口16とに跨る形で固着されている。
【0051】
また、本実施形態における弁体形成基板20は、圧力導入口16と基準圧力空間52とを連通させる圧力導入用貫通孔26が厚み方向に貫設されている。
【0052】
しかして、本実施形態のマイクロバルブでは、流出口12の2次側の圧力が一定でなく変動するような場合でも、基準圧力空間52の圧力を流出口12の2次側の圧力と略等しくすることができ、流体の流量を高精度に検出することが可能となる。また、実施形態2のように配管92から圧力分配管93を分岐させて引き回す必要がないので、実施形態2に比べて、小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1を示し、(a)は概略断面図、(b)は動作説明図である。
【図2】同上を示し、(a)は固定電極形成基板の概略下面図、(b)は弁体形成基板の概略平面図、(c)は弁座基板の概略平面図である。
【図3】実施形態2を示す概略断面図である。
【図4】実施形態3を示す概略断面図である。
【図5】同上を示し、(a)は固定電極形成基板の概略下面図、(b)は弁体形成基板の概略平面図、(c)は弁座基板の概略平面図である。
【図6】従来例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 弁座基板
11 流入口
12 流出口
13 弁座
15 流路用凹部
20 弁体形成基板
21 フレーム部
22 第1のダイヤフラム部
23 第2のダイヤフラム部
24 弁体部
25 駆動用可動電極
28 流量検出用可動電極
30 固定電極形成基板
32 流量検出用固定電極
35 駆動用固定電極
41 流入口2次側空間
42 流出口1次側空間
52 基準圧力空間
55 弁体部変位空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口および流出口が厚み方向に貫設された弁座基板と、半導体基板を用いて形成されて弁座基板の一表面側に固着されるフレーム部およびフレーム部の内側に配置され流出口を開閉する弁体部を有し弁体部における弁座基板とは反対側に駆動用可動電極が形成された弁体形成基板と、弁体形成基板との間に弁体部の変位を可能とする弁体部変位空間を形成する形で弁座基板とは反対側に固着されるとともに駆動用可動電極に対向する駆動用固定電極が形成された固定電極形成基板とを備え、弁体形成基板は、フレーム部の内側に、フレーム部と連続し弁座基板との間に流入口に連通する流入口2次側空間を形成する第1のダイヤフラム部およびフレーム部と連続するとともに前記弁体部が連続一体に設けられ弁座基板との間に流出口に連通する流出口1次側空間を形成する第2のダイヤフラム部が配置され、第1のダイヤフラム部に流量検出用可動電極が形成され、固定電極形成基板は、弁体形成基板との間に第1のダイヤフラム部の変位を可能とする基準圧力空間を前記弁体部変位空間とともに形成する形で弁体形成基板に固着され、且つ、流量検出用可動電極に対向する流量検出用固定電極が形成されてなることを特徴とするマイクロバルブ。
【請求項2】
前記基準圧力空間の圧力が、前記流出口の2次側の圧力に等しい圧力に設定されてなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。
【請求項3】
前記固定電極形成基板に前記基準圧力空間と連通する圧力導入口が厚み方向に貫設され、前記流出口の2次側の圧力を前記基準圧力空間へ伝達して前記基準圧力空間の圧力と前記流出口の2次側の圧力とを等しくする圧力伝達路を備えてなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。
【請求項4】
前記弁座基板は、前記流出口の圧力を前記基準圧力空間へ伝達する経路の一部を構成する圧力導入口が厚み方向に貫設され、流体排出用の配管を接続する接続管が、前記弁体形成基板側とは反対側で前記流出口と圧力導入口とに跨る形で固着され、前記弁体形成基板は、当該圧力導入口と前記基準圧力空間とを連通させる圧力導入用貫通孔が厚み方向に貫設されてなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−162760(P2007−162760A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356995(P2005−356995)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】