説明

マイクロプレートの搬送装置

【課題】生化学試験のための一連の作業処理を行う試験処理システムにおいて、ハイスループットとシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することができるマイクロプレートの搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マイクロプレート2を対象として作業モジュールによって一連の作業を行う試験処理システムに用いられるマイクロプレートの搬送装置において、マイクロプレート2を搬送するコンベア式搬送機構14A、14Bを複数並列したプレート搬送部14と、マイクロプレート2をコンベアと作業モジュールとの間で移送するロボットアーム17と、当該搬送装置の台部10を前後左右に位置する他装置と連結するための連結プレート12、13とを備えた構成とする。これにより、マイクロプレートの搬送処理効率の向上およびシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的な試験研究を行う分野で用いられるマイクロプレートを搬送するマイクロプレートの搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
創薬スクリーニングや医学研究などの分野においては、物質の生化学的反応などの試験が多数の検体を対象として系統的に行われる。これらの試験は、検体となる試料を収納したマイクロプレートを分注装置やインキュベータなど複数の試験装置に順次搬送し、各試験装置において所定の試験作業をマイクロプレートに対して実行することにより行われる。このような試験作業を自動的に行うためのシステムとして、従来より種々の形態の試験装置や処理システムが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、個々の試験作業を行う複数の作業部をマイクロプレートの搬送系とともに同一装置内に組み込んだ一体型の分注装置の例が示されており、1つの基台上にマイクロプレートを載置するステージや分注ティップ装着用のステージなど各種の作業を実行するためのステージを設け、これらのステージの上方に設けられたロボットハンドによって、マイクロプレートの搬送を行うようにしている。このような一体型の構成を採用することにより、装置のコンパクト化が実現出来るという利点がある。
【0004】
また特許文献2には、ライン型の分注システムの例が示されており、複数レーンのベルトコンベアを備えたレーン部に沿って、ドロッパーや分注部などの作業部を配置した構成となっている。このような構成により、複数のプレートを同時並行的に搬送することができ、短時間で効率よく分注を行うことができるという利点がある。
【特許文献1】特開2002−333450号公報
【特許文献2】特開2004−85521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創薬スクリーニングの分野においては、膨大な数量の試料を対象として各種の生化学試験をより迅速に処理することが要請されており、このような試験作業に使用される処理システムには、ハイスループットを実現するためマイクロプレートの搬送における搬送処理効率の向上とともに、試験の目的に応じて構成を自由に設定・変更可能なフレキシビリティがより強く求められるようになってきている。
【0006】
しかしながら、上述の特許文献例に示す従来技術においては、上述の搬送処理効率の向上とシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することが困難であった。すなわち特許文献1に示すような一体型では、試験目的によって新たな作業機能を有するモジュールを追加したいような場合においても、装置のプラットフォームとなる基台のサイズや形状が予め制約されており、拡張性に難点がある。そして新たにモジュールを追加する場合においても、マイクロプレートの搬送手順が最適な形となるような配置でモジュールを追加配置できるとは限らず、搬送処理効率の向上は必ずしも担保されない。また特許文献2に示すようなライン型においても、レーン部の構成は予め固定されているため、新たなモジュールの追加を自由に行うことはできず、フレキシブルな構成を実現することが難しい。このようにマイクロプレートに収納された試料を対象として各種の生化学試験のための一連の作業処理を行う試験処理システムにおいては、ハイスループットとシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、生化学試験のための一連の作業処理を行う試験処理システムにおいて、ハイスループットとシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することができるマイクロプレートの搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマイクロプレートの搬送装置は、マイクロプレートを対象として生化学試験のための所定の作業を行う複数の作業モジュールを備え、これらの作業モジュールによって前記マイクロプレートを対象として一連の作業を行う試験処理システムにおいて、前記作業モジュールに前記マイクロプレートを搬送するマイクロプレートの搬送装置であって、前記マイクロプレートをコンベア上に載置して第1方向に搬送するコンベア式搬送機構を複数並列したプレート搬送部と、前記マイクロプレートをピックアップして移動させることにより、前記コンベアと前記作業モジュールに設けられたプレート受渡部との間でマイクロプレートを移送するピックアンドプレース式搬送機構と、前記プレート搬送部およびピックアンドプレース式搬送機構が上面に設けられた台部と、前記台部において前記第1方向の両端面および第1方向と直交する第2方向の両端面にそれぞれ設けられ、前記台部を前記第1方向に連結された他のマイクロプレートの搬送装置の台部と連結するための第1方向連結部および前記台部を前記第2方向に隣接して配置された前記作業モジュールの台部と連結するための第2方向連結部とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロプレートを対象として一連の作業を行う試験処理システムに用いられ作業モジュールにマイクロプレートを搬送するマイクロプレートの搬送装置において、マイクロプレートをコンベア上に載置して第1方向に搬送するコンベア式搬送機構を複数並列したプレート搬送部と、マイクロプレートをコンベアと作業モジュールとの間で移送するピックアンドプレース式搬送機構と、当該搬送装置の台部を前後左右に位置する他装置と連結するための第1方向連結部および第2方向連結部とを備えた構成とすることにより、生化学試験のための一連の作業処理を行う試験処理システムにおいてマイクロプレートの搬送処理効率を向上させることができ、ハイスループットとシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の試験処理システムの構成を示す平面図、図2は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおいて使用される搬送モジュールの斜視図、図3は本発明の一実施の形態における搬送モジュールに備えられたロボットアームの斜視図、図4は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける搬送モジュールと作業モジュールとの間のマイクロプレートの受渡形態の説明図、図5は本発明の一実施の形態の試験処理システムの通信ネットワークの構成を示すブロック図、図6は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける管制モジュールの制御系の構成を示すブロック図、図7は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける搬送モジュールの制御系の構成を示すブロック図、図8は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける作業モジュールの制御系の構成を示すブロック図、図9は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理のコマンド配列を示す図、図10は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理の手順を時系列的に示すガントチャート、図11は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理の手順説明図、図12は本発明の一実施の形態の試験処理システムにおいて実行される搬送可否確認処理の説明図である。
【0011】
まず図1を参照して、試験処理システム1の構成を説明する。試験処理システム1は、創薬スクリーニングや医学研究分野などにおいて、マイクロプレート2に収納された試料を対象として生化学試験を実行するために用いられるものである。ワークであるマイクロ
プレート2は、液体の試料を収納するためのウェル2aが格子配列で形成された樹脂製の矩形の箱状部品であり(図3参照)、試験処理システム1の両端部に備えられたストッカ3A、3Bに収納される。
【0012】
ストッカ3A、3Bのいずれかから取り出されたマイクロプレート2は、複数の搬送モジュールCV1,CV2,CV3を直列に連結して形成された搬送ラインによってX方向(第1方向)に搬送される。この搬送過程においてマイクロプレート2は、以下に説明する作業モジュールに受渡され、これらの作業モジュールによって所定の試験作業が各マイクロプレート2を対象として実行される。そして作業完了後のマイクロプレート2は、ストッカ3A、3Bのいずれかに回収される。
【0013】
搬送モジュールCV1のY方向(第2方向)の両側には、それぞれ作業モジュールA、作業モジュールDが隣接して配置されており、また搬送モジュールCV2の両側には作業モジュールB、作業モジュールEが、さらに搬送モジュールCV3の両側には、作業モジュールC、作業モジュールFがそれぞれ隣接して配置されている。これらの作業モジュールは、マイクロプレート2を対象として生化学試験のための所定の作業を行う機能を有しており、標準化された寸法形状の共通の台部上に設けられた作業テーブルに、それぞれの作業を実行する作業部を配置した構成となっている。なお、本実施の形態においてはこれら各モジュールの位置関係を特定するために方向の定義をしている。すなわち図1における右側を前側、左側を後ろ側としてY方向における前後を定義し、図1における上側を左側、下側を右側として左右方向を定義している。
【0014】
作業モジュールA(分注モジュール)は、マイクロプレート2のウェル2a内に薬液や検体などの液体を各ウェル2a毎に所定量だけ吐出し、またウェル2aからこれらの液体を吸引する機能を有する。作業モジュールB(プレートストックモジュール)は、試験の過程においてマイクロプレート2をストックして保持する機能を有する。作業モジュールC(ドロッパーモジュール)は、同一種類の液体をディスペンサによってマイクロプレート2の各ウェル2aに規定量だけ供給する機能を有する。
【0015】
作業モジュールD(インキュベータモジュール)は、液体が分注された後のマイクロプレート2を所定環境条件下で保持することにより、生化学反応を進行させる機能を有する。作業モジュールE(ウオッシャモジュール)は、試験の過程においてウェル2a内に洗浄液を注入・撹拌・除去することにより、不要物を除去する機能を有する。そして作業モジュールF(計測モジュール)は、生化学反応後のウェル2a内を対象として、カメラによる試料の観察や分光分析などの各種の分析手法を用いた計測処理などを行う。なお図1では、各作業モジュールにおいてこれらの機能を実行する作業部の図示は省略している。
【0016】
試験処理システム1はこれらの各モジュールの動作制御を行う管制モジュール4を備えており、管制モジュール4は上述の各モジュールと通信ネットワークによって接続されている(図5参照)。管制モジュール4は各種のデータ入力や指示入力のためのキーボード6および入力時の案内画面などを表示する表示パネル5を備えており、試験担当者は管制モジュール4によって生化学試験のためにマイクロプレート2を各作業モジュールに適正な順序で搬送して効率よく試験処理を遂行するためのプログラミングを、自動的に行うことができるようになっている。
【0017】
すなわち、試験処理システム1は、ワークであるマイクロプレート2を対象として所定の作業を行う複数の作業モジュールと、作業モジュールとは別個に設けられマイクロプレート2の搬送を行う搬送モジュールと、複数の作業モジュールおよび複数の搬送モジュールを制御する管制モジュールとを有しており、搬送モジュールを複数連結するとともに各搬送モジュールに隣接する位置に作業モジュールを配置し、搬送モジュールによってマイ
クロプレート2を各作業モジュールへ予め定められた順序で移送することにより、マイクロプレート2を対象として複数の作業モジュールによる一連の作業を行う形態となっている。
【0018】
次に図2を参照して、搬送モジュールCV1、CV2,CV3の構造を説明する。これらの搬送モジュールは、いずれも同一構成を有する標準モジュールであり、以下の記述においては、これらの区別する必要がある場合には搬送モジュールCV1、CV2,CV3のように添字を付して記述し、区別する必要がない場合には単に搬送モジュールCVと記述する。搬送モジュールCVは、上述の作業モジュールによってマイクロプレート2を対象として一連の作業を行う試験処理システムにおいて、各作業モジュールにマイクロプレート2を搬送するマイクロプレートの搬送装置となっている。
【0019】
図2において、アジャストボルト11によってフロア面に支持された台部10の上面には、2列のコンベア式搬送機構14A、14Bが並設されている。コンベア式搬送機構14A、14Bは、いずれもX方向(第1方向)に配設された搬送レール15を備えており、ベルトコンベアなどのコンベアをX方向に往復駆動することにより、コンベア上に載置されたマイクロプレート2をX方向に往復移動させて平面的に搬送する。すなわち2列並設されたコンベア式搬送機構14A、14Bは、マイクロプレート2をコンベア上に載置してX方向(第1方向)に搬送するコンベア式搬送機構を複数並列したプレート搬送部14を構成する。そして前述のマイクロプレート2を搬送する搬送ラインは、複数の搬送モジュールCVのコンベア式搬送機構14A,14BをそれぞれX方向に連結することにより構成される。これらの複数の搬送ラインにおけるマイクロプレート2の搬送方向は、それぞれを正逆いずれかの方向に固定して用いてもよく、また必要に応じて正逆切換を行う形態でもよい。
【0020】
なおプレート搬送部14の構成として、ここではコンベア式搬送機構を2列並設した例を示したが、各搬送モジュールCVに3列以上のコンベア式搬送機構を設けることにより、搬送ラインを3列以上並列して配置するようにしてもよい。これにより、各搬送ラインに搬送対象となるマイクロプレートを、種類や搬送経路などの特性に応じて振り分けることができ、搬送処理をより効率的に行うことができる。
【0021】
コンベア式搬送機構14A、14Bの間には、移動テーブル16がX方向に配設されており、移動テーブル16にはロボットアーム17がX方向に移動自在に装着されている。移動テーブル16を駆動することにより、ロボットアーム17は台部10の上面の略全長に亘って移動し、これにより、コンベア式搬送機構14A、14Bのコンベアと作業モジュールに設定されたワーク受渡部(図4に示すワーク受渡ポート9B1,9B2,9E参照)との間でマイクロプレート2をピックアップして移送することができる。すなわち、2列のコンベア式搬送機構14A,14Bの間にX方向に移動自在に配設されたロボットアーム17は、マイクロプレート2をピックアップして移動させることにより、コンベアと作業モジュールに設けられたワーク受渡部との間でマイクロプレート2を移送するピックアンドプレース式搬送機構となっている。
【0022】
台部10において、X方向の前後の端面10xには、平板状の連結プレート12がそれぞれ上下2位置に水平配置で設けられており、それぞれの連結プレート12には、位置決め嵌合部12aが設けられている。また台部10においてY方向の左右の端面10yには、同様に平板状の連結プレート13がそれぞれ上下2位置に水平配置で設けられており、それぞれの連結プレート13には、位置決め嵌合部13aが設けられている。位置決め嵌合部12a、13aとしては、位置決め孔と位置決めピンとを組み合わせた構成や、係合溝と係合部材との組み合わせなど、相互に嵌合または係合することによって位置決めができるものであれば、どのような構造のものであってもよい。
【0023】
連結プレート12は、台部10を他の搬送モジュールCVの台部10とX方向に直列に連結するために設けられており、2つの搬送モジュールCVをX方向に連結する際には、それぞれの搬送モジュールCVの台部10において相互に対向する位置にある2つの連結プレート12を突き合わせ、対応する位置の2つの位置決め嵌合部12aを嵌合もしくは係合させる。これにより、2つの搬送モジュールCVは、X方向について相互に正しい位置関係に位置合わせされた状態で連結される。
【0024】
同様に連結プレート13は、搬送モジュールCVを前述の各作業モジュールとY方向に隣接する位置に連結して配置するために設けられている。すなわち、各作業モジュールの標準化された台部には、搬送モジュールCVの台部10に設けられた連結プレート13と同様の連結プレートがそれぞれ対応する位置に設けられており、搬送モジュールCVといずれかの作業モジュールをY方向に隣接して配置する際には、各作業モジュールと搬送モジュールCVとの組み合わせにおいて相互に対向する位置にある2つの連結プレート13を突き合わせ、対応する位置の2つの位置決め嵌合部13aを嵌合もしくは係合させる。これにより、各作業モジュールと搬送モジュールCVは相互に正しい位置関係に位置合わせされた状態で配置される。
【0025】
すなわち、連結プレート12および連結プレート13は、台部10においてX方向の両端面10x、およびY方向の両端面10yにそれぞれ設けられ、台部10をX方向に連結された他の搬送モジュールCVの台部10と連結するための第1方向連結部および台部10をY方向に隣接して配置された作業モジュールの台部と連結するための第2方向連結部となっている。そして位置決め嵌合部12a、13aは、第1方向連結部および第2方向連結部に設けられ、当該搬送モジュールCVと他の搬送モジュールCVおよび作業モジュールとを位置合わせするための位置合わせ部となっている。
【0026】
図3を参照して、ロボットアーム17について説明する。ロボットアーム17は、多関節型ロボットであり、旋回駆動機構20を介して移動テーブル16に装着され、X方向に移動自在となっている。ロボットアーム17は、旋回駆動機構20から上方に延出して設けられた旋回軸20aに、3つの関節部21、23、25および3つの駆動アーム22、24、26を直列に結合した構成となっている。旋回駆動機構20および各関節部21、23、25を駆動することにより、先端部の駆動アーム26を所定の動作範囲内で3次元動作を行わせることができる。駆動アーム26には2つのチャック爪27aを備えたチャック機構27が装着されており、チャック機構27はロボットアーム17による3次元範囲内で移動する。
【0027】
このチャック機構27の移動により、ロボットアーム17は各搬送モジュールCVにおいて、コンベア式搬送機構14A、14Bのコンベア上に載置されたマイクロプレート2を2つのチャック爪27aによって両側から挟んで把持し、隣接して配置された作業モジュールに移送して受渡すことができる。マイクロプレート2には、複数の液体収納用のウェル2aが格子配列で設けられており、各作業モジュールにおいては、ウェル2aを対象として液体の分注やインキュベータによる培養、培養結果の観察・計測などの各種の試験作業が実行される。
【0028】
次に図4を参照して、搬送モジュールCVと各作業モジュールとの間でのマイクロプレート2の受渡しの態様について説明する。なお図4においては、搬送モジュールCV2と作業モジュールB、作業モジュールEとの間におけるマイクロプレート2の受渡しの例を示している。作業モジュールB、作業モジュールEなど各作業モジュールは、作業部が配置された作業テーブル8を備えており、各作業モジュールと搬送モジュールCVとの間のマイクロプレート2の受渡しは、作業テーブル8を介して行われる。
【0029】
コンベア式搬送機構14A、14Bには、ロボットアーム17によってマイクロプレート2を移送するための移載作業ポイント17aが設定されており、コンベア式搬送機構14A、14B上に設定された各移載作業ポイント17aには、コンベアによって搬送されるマイクロプレート2を停止させるためのストッパ機構(図示省略)が設けられている。そしてロボットアーム17は、これらのストッパ機構によって停止した状態のマイクロプレート2をチャック機構27によって把持する。これらのストッパ機構は個別に動作させることができるようになっており、同一のコンベア式搬送機構のコンベア上に載置された複数のマイクロプレート2のうち、特定の移載作業ポイント17aにおいてマイクロプレート2を停留させた状態で、他のマイクロプレート2の搬送を行うことができるようになっている。
【0030】
ロボットアーム17は移動テーブル16によってX方向の任意位置に移動可能であり、本来機能としては作業テーブル8において搬送リーチ内の任意の位置を対象としてマイクロプレート2の移送が可能であるが、本実施の形態においては、コンベア式搬送機構14A、14Bにおける移載作業ポイント17aに対応した隣接位置に、同様の移載作業ポイント17aを固定された標準位置として設定するようにしている。これにより、マイクロプレート2の移送作業におけるロボットアーム17の作業動作の制御パターンを標準化して、プログラミング負荷を低減することが可能となっている。
【0031】
ここで作業テーブル8における移載作業ポイント17aのうち、当該作業モジュールに配置された作業部との関係において、ロボットアーム17によるマイクロプレート2の受渡しに最も適していると判断された移載作業ポイント17aは、当該作業モジュールにおけるマイクロプレート2の受渡しのための受渡ポート9として選定され、ロボットアーム17によるマイクロプレート2の移送は、全て受渡ポート9を経由して行われる。図2に示す例では、作業モジュールBにおいては4つの移載作業ポイント17aが設定され、このうちの2つが受渡ポート9B1,9B2として設定されている。
【0032】
また作業モジュールEにおいては1つの移載作業ポイント17aが設定され、この移載作業ポイント17aが受渡ポート9Eとして設定されている。これらの受渡ポート9は、隣接する位置に配置された搬送モジュールCVとの間でマイクロプレート2の受渡しを、所定位置である特定の移載作業ポイント17aにおいて行うワーク受渡部となっている。すなわち作業モジュールは、隣接する位置に配置された搬送モジュールとの間でマイクロプレート2の受渡しを所定位置である移載作業ポイント17aにて行う受渡ポート9を備えた形態となっている。
【0033】
なお本実施の形態に示す例では、単に作業テーブル8上にマイクロプレート2の移載作業ポイントとして設定された受渡ポート9がワーク受渡部となっているが、ワーク受渡部としては、種々の態様が想定可能である。例えば、当該作業モジュールに備えられた作業部が作業実施のために固有のハンドリング形態を必要とする場合には、その作業部に設けられたプレートハンドリング機構の受渡端末が、ワーク受渡部となる。
【0034】
次に図5を参照して、試験処理システム1の通信ネットワークの構成を説明する。図5に示すように、試験処理システム1は、管制モジュール4と複数の搬送モジュールCV(搬送モジュールCV1、CV2,CV3)および複数の作業モジュール(作業モジュールA,B,C,D,E,F)を、通信ネットワーク7によって相互に接続した構成となっている。これにより、管制モジュール4から搬送モジュールCV1、CV2,CV3および作業モジュールA,B,C,D,E,Fへ、プレート搬送指令や作業実行などの作業指令を送信することができるとともに、管制モジュール4を介することなくこれらモジュール間相互で通信を行うことが可能となっている。
【0035】
次に試験処理システム1を構成する各モジュールの制御系の構成および機能を説明する。まず図6を参照して、管制モジュール4の制御系を説明する。管制モジュール4は、処理・演算部30、記憶部31、通信インターフェイス32、表示部33、操作・入力部34より構成される。処理・演算部30はCPUであり、試験処理システム1を構成する複数のモジュールの処理動作を管制するために必要な演算処理を行う機能要素のほか、各搬送モジュールによるマイクロプレート2の搬送動作のプログラミングを自動的に行うための機能として、スケジューラー30a、コマンド列出力部30bを備えている。
【0036】
スケジューラー30aは、マイクロプレート2を対象として特定の試験目的に応じて設定される一連の作業を個々の搬送モジュールおよび作業モジュールに実行させるための動作スケジュールを作成する処理を行う。この動作スケジュールの作成は、上述の一連の作業を個々の作業に細分化し、これらの個々の作業を実行するためのコマンドを生成し、さらにこれらのコマンドを時系列順で配列したコマンド列を生成することによって行われる。このコマンド列を生成する処理は、試験処理システム1のシステム構成を示すシステム構成情報および一連の作業を実行するための作業手順を示す作業手順情報(プロセス情報)に基づいて行われる。
【0037】
ここでシステム構成情報には、試験処理システム1を構成する個々の作業モジュールおよび搬送モジュールを個別に識別する識別情報、およびこれら各モジュールの位置関係を認識するためのモジュール配置情報が含まれる。識別情報は、搬送モジュールCV1、CV2,CV3についてはそれぞれCV1、CV2,CV3がこれらモジュールを個別に識別する識別情報であり、作業モジュールA〜FについてはA〜Fが、これらのモジュールを個別に識別するための識別情報となる。そして図1において各モジュールの位置関係を示す配置情報が、モジュール配置情報となる。
【0038】
作業手順情報は、試験処理を実行するための処理プロセス、すなわちマイクロプレート2を対象として試験作業を実行する作業モジュールおよび作業実行順序を特定する情報である。前述のスケジューラ30aによるコマンド列の生成においてはこの作業手順情報が参照されるが、本実施の形態に示すように複数の作業モジュールを搬送モジュールを介して連結した構成の試験処理システムにおいては、この作業手順情報のみでは試験処理のための作業、すなわち各作業モジュールによる試験作業にマイクロプレート2の搬送作業を加えた全体作業のスケジューリングを行うための情報としては不十分である。
【0039】
このため本実施の形態においては、前述の作業手順情報にシステム構成情報を加味することにより、マイクロプレート2を作業実行対象となる複数の作業モジュールに指定された作業実行順序に従って搬送するための搬送経路を、スケジューラ30aの処理機能によって自動的に特定するようにしている。そしてスケジューラ30aは、このようにして特定された搬送経路に基づいて、関連した搬送モジュールが実行すべき作業を示すコマンドを生成し、各作業モジュールによる試験作業を示すコマンドにこれらの搬送作業を示すコマンドを加え合わせて、前述のコマンド列を生成する。したがってスケジューラー30aは、システム構成情報および作業手順情報に基づいて、上述の一連の作業を実行させるための個々の作業モジュールおよび搬送モジュールの作業手順を、個々の作業に対応したコマンドを時系列順で配列したコマンド列の形態で生成するコマンド列生成部となっている。
【0040】
このように、作業手順情報とシステム構成情報に基づいてコマンド列を生成するスケジューラー30aを備えることにより、システム構成の変更により柔軟に対応することが可能となる。すなわち試験目的に応じて作業モジュールの配置が変更された場合においても、各作業モジュールの物理的な位置関係と以下に説明するシステム構成情報記憶部31b
に記憶されるシステム構成情報とを常に一致させておけば、そのシステム構成に対応したコマンド列をスケジューラー30aによって自動的に生成することができ、作業モジュールの変更の都度煩雑なスケジューリング作業を行う必要がない。
【0041】
コマンド列出力部30bはスケジューラー30aによって生成されて、後述するガントチャート記憶部31cに記憶されたコマンド列を、各モジュールに通信ネットワーク7を介して出力する。出力されるコマンド列には、複数の搬送モジュールのそれぞれにおいて当該搬送モジュールに連結された他の搬送モジュールまたは隣接して配置された作業モジュールとの間でのワーク搬送動作の実行を指令するワーク搬送指令が含まれている。すなわち、コマンド列出力部30bを備えた管制モジュール4は、このワーク搬送指令を通信ネットワーク7を介してそれぞれの搬送モジュールCVに送信する。
【0042】
記憶部31は、プロセス記憶部31a、システム構成情報記憶部31b、ガントチャート記憶部31cを備えている。プロセス記憶部31aは、試験処理を実行するための処理プロセスである前述の作業手順情報を記憶する。すなわちプロセス記憶部31aは、前述の一連の作業の手順に関する作業手順情報を格納した作業手順記憶部となっている。システム構成情報記憶部31bは、前述の識別情報およびモジュール配置情報を含むシステム構成情報を格納する。これらの作業手順情報およびシステム構成情報は、入力用キーボード6によって入力され、スケジューラー30aによるスケジューリング処理においては、これらの情報が記憶部31から読み出されて参照される。
【0043】
ガントチャート記憶部31cはスケジューラー30aによって生成されたコマンド列を、時間軸上に時系列順に配列したガントチャート(図11参照)を記憶する。通信インターフェイス32は、通信ネットワーク7を介して接続された搬送モジュールや作業モジュールとの間の通信処理を行う。表示部33はスケジューラー30aによるスケジューリングに必要なデータ入力時の案内画面や、ガントチャート記憶部31cに記憶されたガントチャートを表示パネル5に表示させる処理を行う。操作・入力部34は、入力用キーボード6によって入力されたデータや指令コマンドを、処理・演算部30や記憶部31に入力するための処理を行う。
【0044】
次に搬送モジュールCVの制御系の構成を、図7を参照して説明する。搬送モジュールCVの制御系は、処理・演算部35、記憶部36、コンベア制御部37、ロボットアーム制御部38、通信インターフェイス39より構成される。処理・演算部35はCPUであり、この搬送モジュールによるマイクロプレート2の搬送動作に必要な処理や演算を実行するための演算機能のほか、搬送可否確認処理部35aを備えている。搬送可否確認処理部35aは、当該搬送モジュールに係るマイクロプレート2の搬送動作が実行可能か否かを確認する搬送可否確認処理を行う。
【0045】
記憶部36は、コマンド列一時記憶部36a、連結情報記憶部36bを備えている。コマンド列一時記憶部36aは、管制モジュール4のコマンド列出力部30bから通信ネットワーク7を介して送信されたコマンド列を一時的に記憶する。連結情報記憶部36bは、連結情報、すなわち連結された他の搬送モジュールの識別情報および隣接する作業モジュールの識別情報を記憶する。例えば、図12(b)に示すように、搬送モジュールCV2の例では、連結情報として、SideL(左側方)、SideR(右側方)に作業モジュールB、作業モジュールEがそれぞれ隣接して配置され、Fwd(前側)、Back(後側)に搬送モジュールCV3、搬送モジュールCV1がそれぞれ連結されていることを示すデータが記憶される。同様に搬送モジュールCV3の例では、連結情報として、SideL(左側方)、SideR(右側方)に作業モジュールC、作業モジュールFがそれぞれ隣接して配置され、Back(後側)に搬送モジュールCV2が連結されていることを示すデータが記憶される。
【0046】
コンベア制御部37、ロボットアーム制御部38は、当該搬送モジュールCVに備えられたコンベア式搬送機構14A、14Bおよびロボットアーム17の動作をそれぞれ制御する。この動作制御は、コマンド列一時記憶部36aに記憶されたコマンド列にしたがって実行される。通信インターフェイス39は、通信ネットワーク7を介して接続された管制モジュール4、他の搬送モジュールや作業モジュールとの間の通信処理を行う。
【0047】
作業モジュールA〜Fの構成を図8を参照して説明する。作業モジュールA〜Fは、処理・演算部40、記憶部41、制御部42、通信インターフェイス43より構成される。処理・演算部40はCPUであり、当該作業モジュールによるマイクロプレート2を対象とした作業動作に必要な処理や演算を実行するための演算機能のほか、搬送可否確認処理部40aを備えている。搬送可否確認処理部40aは、当該作業モジュールを対象として搬送モジュールによって実行されるワーク搬送動作が実行可能か否かを確認する搬送可否確認処理を行う。
【0048】
記憶部41は、コマンド列一時記憶部41a、連結情報記憶部41bを備えている。コマンド列一時記憶部41aは、管制モジュール4のコマンド列出力部31bから送信されたコマンド列を一時的に記憶する。連結情報記憶部41bは、連結情報、すなわち隣接して配置された搬送モジュールの識別情報を記憶する。例えば、図12(b)に示すように、作業モジュールA、作業モジュールB、作業モジュールCの例では、連結情報として、搬送モジュールCV1、搬送モジュールCV2、搬送モジュールCV3がそれぞれ隣接して配置されていることを示すデータが記憶される。
【0049】
制御部42は、当該作業モジュールに備えられた作業部による処理動作を制御する。ここで、同一モジュール内に複数の作業部が設けられている場合には、それぞれの作業部に制御部42が設けられる。通信インターフェイス43は、通信ネットワーク7を介して接続された管制モジュール4、他の搬送モジュールや作業モジュールとの間の通信処理を行う。
【0050】
次に、試験処理システム1による生化学試験処理におけるスケジューリングの一例について説明する。ここでは、図1に示すモジュール配置で作業モジュールが配列された構成の試験処理システム1を用い、C−D−A−D−Fの作業手順で一連の作業を実行する例を示す。この作業手順を示す作業手順情報は、予め管制モジュール4の入力用キーボード6より入力され、プロセス記憶部31aに格納される。
【0051】
この試験プロセスにおいては、まず作業モジュールDにマイクロプレート2を搬送して、ディスペンサによって細胞溶液をマイクロプレート2の各ウェル2aに分注する。次いで分注後のマイクロプレート2を作業モジュールDに搬送し、ここで所定環境雰囲気下で所定時間培養を行い、この後、培養後のマイクロプレート2は作業モジュールAに送られ、各ウェル2a内で培養された細胞に対して、分注装置によって薬液が分注される。次に、マイクロプレート2は再び作業モジュールDに送られ、ここで再び所定時間の培養が行われた後、マイクロプレート2は作業モジュールFに送られて所定項目についての観察および計測が実行される。
【0052】
図9,図10,図11は、上述の試験処理の処理手順のうち、C−Dの範囲についてのスケジューリングを詳述するものである。このスケジューリングは、スケジューラ30aによって行われる。すなわちスケジューラ30aは、作業手順情報に基づいてスケジューリング対象となる作業モジュールC,Dを特定し、さらに作業モジュールCと作業モジュールDの位置関係を、システム構成情報記憶部31bに記憶されたシステム構成情報を参照して認識する。そして認識結果より、作業モジュールCから作業モジュールDへマイク
ロプレート2を搬送するための搬送経路を特定する。ここに示す例では、スケジューラ30aは図1に示す配置情報から、作業モジュールCから作業モジュールDに至る搬送経路が、CV3−CV2−CV1であることを特定する。そしてこのようにして特定された搬送経路に基づいて、マイクロプレート2を搬送するためのコマンド列を生成する。
【0053】
ここで図9は、これらの一連の作業を試験処理システム1の各モジュールによって実行する際の、各モジュールが実行すべき単位作業を示すコマンドを、実行順に配列したコマンド列を示している。ここでは、搬送モジュールCVによって実行される搬送動作に対応するコマンドを[Act]で示し、作業モジュールによって実行される作業処理を[Op]で示している。
【0054】
上述の試験処理を実行するには、まず作業モジュールCにマイクロプレート2を搬送する必要があることから、作業モジュールCに隣接する搬送モジュールCV3からマイクロプレート2をロボットアーム17によって作業モジュールCの受渡ポート9C1に搬入するためのコマンド[CV3:Act1]が生成される。次いで、作業モジュールCにて、細胞試料を2段階で分注するための2つのコマンド[C:Op(C1)]および[C:Op(C2)]が生成される。次いで、作業モジュールCにて作業が完了したマイクロプレート2を、受渡ポート9C2から搬送モジュールCV3にロボットアーム17によって移送するためのコマンド[CV3:Act2]が生成される。
【0055】
そしてこれ以降、このマイクロプレート2を作業モジュールDまで搬送するためのコマンドが生成される。すなわち、マイクロプレート2をまず搬送モジュールCV2に渡すためのコマンド[CV3:Act3]が、次いで搬送モジュールCV2に渡されたマイクロプレート2をさらに搬送モジュールCV1に渡すためのコマンド[CV2:Act4]が生成される。次いで、マイクロプレート2を渡された搬送モジュールCV1において、マイクロプレート2を作業モジュールDにおける受渡ポート9Dの直近位置の移載作業ポイント17aまで搬送するためのコマンド[CV1:Act5]が生成され、次いで、マイクロプレート2を作業モジュールDの受渡ポート9Dまでロボットアーム17によって移送するためのコマンド[CV1:Act6]が生成される。
【0056】
そして作業モジュールDにて、マイクロプレート2をインキュベータ内に搬入して所定時間保持して細胞を培養する作業を行うためのコマンド[D:Op(D)]が生成される。次いで、作業モジュールDにて所定時間の培養が完了したマイクロプレート2を受渡ポート9Dから搬送モジュールCV1にロボットアーム17によって移送するためのコマンド[CV1:Act7]が生成される。これ以降、図9においては省略されているD−A−D−Fの一連の作業についても、同様にコマンドが生成され、これらのコマンドを作業手順に従って時系列順に配列したコマンド列が生成される。
【0057】
図10は、これらのコマンドを作業処理が開始した時刻からの経過時間を示すシステム時刻に合わせて表示したガントチャートを示している。試験担当者が管制モジュール4によって試験処理作業のスケジューリングを実行する際には、入力用キーボード6に表示されるスケジューリング画面上で各コマンドを作業点順にしたがって配列するとともに、各コマンドにおける作業開始タイミングをシステム時刻の時間軸上に割り付ける操作を行う。これにより、生化学試験における一連の作業の手順および実行タイミングを視覚的に確認しながら、スケジューリングを効率よく且つ正確に実行することができるようになっている。
【0058】
そしてこのようにしてスケジューリングされたコマンド列がコマンド列出力部30bから通信ネットワーク7を介して各モジュールに送信されることにより、図11に示すマイクロプレート2の処理動作が実行される。すなわちコマンド[CV3:Act1]が搬送
モジュールCV3によって実行されることにより、搬送モジュールCV3のコンベア式搬送機構14Aからマイクロプレート2がロボットアーム17によって作業モジュールCの受渡ポート9C1に搬入され、次いでコマンド[C:Op(C1)]および[C:Op(C2)]を作業モジュールCが順次実行することにより、作業モジュールCにて細胞試料を分注する作業が2段階で実行され、作業実行後のマイクロプレート2は、受渡ポート9C2から搬送モジュールCV3のコンベア式搬送機構14Bにロボットアーム17によって移送される。
【0059】
そしてこれ以降、コマンド[CV3:Act3]、[CV2:Act4]を実行することにより、マイクロプレート2は搬送モジュールCV2のコンベア式搬送機構14Bを経由して搬送モジュールCV1に渡され、さらにコマンド[CV1:Act5]を実行することにより、マイクロプレート2は作業モジュールDにおける受渡ポート9Dの直近位置の移載作業ポイント17a(図4参照)まで搬送される。
【0060】
次いでコマンド[CV1:Act6]を実行することにより、マイクロプレート2は受渡ポート9Dまでロボットアーム17によって移送される。この後、コマンド[D:Op(D)]を実行することにより、作業モジュールDにてマイクロプレート2をインキュベータ内に搬入して細胞を培養する作業が行われ、さらにコマンド[CV1:Act7]を実行することにより、所定時間の培養が完了したマイクロプレート2は、受渡ポート9Dから搬送モジュールCV1のコンベア式搬送機構14Bにロボットアーム17によって移送される。
【0061】
次に図12を参照して、上述試験処理のマイクロプレート2の搬送において実行される搬送可否確認処理について説明する。搬送可否確認処理は、搬送モジュール相互または搬送モジュールと作業モジュールとの間で通信ネットワーク7を介して実行される処理である。まず図12(a)に示すように、搬送モジュールにおいては相手側状態確認を実行する(ST1)。すなわち、連結情報記憶部36bに記憶された連結情報を参照して、搬送の対象となる作業モジュールに状態確認を促す信号を送信する。
【0062】
この信号を受けた作業モジュールは状態確認を実行する(ST11)。この状態確認は、例えば当該作業モジュールの動作状態が正常であるか否か、また当該作業モジュールの受渡ポート9が他のマイクロプレート2によって占有された状態となっているか否かなどを確認することによって行われる。そして当該作業モジュールは、確認結果を相手方の搬送モジュールに返信し(ST12)、返信を受けた搬送モジュールは、その返信の結果にしたがって搬送可否を判定する(ST2)。ここで搬送不可と判定された場合には、(ST1)に戻って相手側状態確認を反復しながら待機し、(ST2)にて搬送可と判断されたならば、ワーク搬送指令に基づいたワーク搬送動作を実行する(ST3)。
【0063】
すなわち搬送モジュールは、当該搬送モジュールに係るワーク搬送動作が実行可能か否かを確認する搬送可否確認処理を、連結された他の搬送モジュールまたは隣接して配置された作業モジュールとの間で通信ネットワーク7を介して実行し、搬送可否確認処理の処理結果にしたがって、管制モジュール4から送信されたワーク搬送指令に基づくワーク搬送動作を実行する。
【0064】
この搬送可否確認処理は、それぞれのモジュールの連結情報記憶部に記憶された連結情報を参照することによって実行される。例えば図12(b)に示すように、搬送モジュールCV3と作業モジュールCとの間でマイクロプレート2を受け渡しする場合には、管制モジュール4を介することなく、搬送モジュールCV3と作業モジュールCとの間で、図12(a)に示す処理を実行する。このとき、それぞれの連結情報記憶部に記憶された連結情報、すなわち連結もしくは隣接して配置されたモジュールを示す識別情報によって特
定される他の作業モジュールもしくは搬送モジュールとの間で、搬送可否確認処理が実行される。このような構成を採用することにより、管制モジュール4の制御処理負荷を軽減して、処理効率を向上させることが可能となっている。
【0065】
上記説明したように、本実施の形態に示す試験処理システムは、マイクロプレートの搬送を行う搬送モジュールを複数連結してプレート搬送ラインを構成するとともに、マイクロプレートを対象として作業を行う複数の作業モジュールを搬送モジュールに隣接させて配置し、さらにこれらのモジュールを通信ネットワークを介して管制モジュールに接続し、搬送モジュールによる各作業モジュールへのワーク搬送指令を管制モジュールによって各搬送モジュールに送信するとともに、各モジュール間において通信ネットワークを介して搬送可否確認処理を行う構成としたものである。
【0066】
これにより、マイクロプレートの搬送を効率的に行って試験処理システム全体の処理効率を向上させることができ、試験処理システムのハイスループットを実現することが可能となっている。また対象となる試験目的に応じて新たな作業機能が必要とされる場合には、搬送モジュールを追加してプレート搬送ラインを延長するとともに、必要とされる作業機能を備えた作業モジュールを搬送モジュールに隣接して配置することにより、システムの拡張を高い自由度で行うことができシステム構成におけるフレキシビリティの向上が実現される。
【0067】
なお本実施の形態においては、ワークの処理システムの例として、マイクロプレートを対象として生化学試験を行う試験処理システムの例を示したが、本発明の適用はこのような試験処理システムには限定されるものではない。例えば、電子機器製造分野において、ワークとしての基板を搬送モジュールによって搬送し、この基板を対象として、複数の作業モジュールによって順次作業を行う構成においても、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のワークの処理装置は、ハイスループットとシステム構成におけるフレキシビリティの向上をともに実現することができるという効果を有し、マイクロプレートを対象として生化学的試験を実行する試験処理システムなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施の形態の試験処理システムの構成を示す平面図
【図2】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおいて使用される搬送モジュールの斜視図
【図3】本発明の一実施の形態における搬送モジュールに備えられたロボットアームの斜視図
【図4】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける搬送モジュールと作業モジュールとの間のマイクロプレートの受渡形態の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の試験処理システムの通信ネットワークの構成を示すブロック図
【図6】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける管制モジュールの制御系の構成を示すブロック図
【図7】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける搬送モジュールの制御系の構成を示すブロック図
【図8】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおける作業モジュールの制御系の構成を示すブロック図
【図9】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理のコマンド配列を示す図
【図10】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理の手順を時系列的に示すガントチャート
【図11】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおけるマイクロプレートの搬送処理の手順説明図
【図12】本発明の一実施の形態の試験処理システムにおいて実行される搬送可否確認処理の説明図
【符号の説明】
【0070】
1 試験処理システム
2 マイクロプレート
3A,3B ストッカ
4 管制モジュール
7 通信ネットワーク
8 作業テーブル
9B1,9B2,9C1,9C2,9D,9E 受渡ポート
10 台部
12,13 連結プレート
12a,13a 位置合わせ嵌合部
14 プレート搬送部
14A,14B コンベア式搬送機構
17 ロボットアーム
17a 移載作業ポイント
CV1,CV2,CV3 搬送モジュール
A,B,C,D,E,F 作業モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレートを対象として生化学試験のための所定の作業を行う複数の作業モジュールを備え、これらの作業モジュールによって前記マイクロプレートを対象として一連の作業を行う試験処理システムにおいて、前記作業モジュールに前記マイクロプレートを搬送するマイクロプレートの搬送装置であって、
前記マイクロプレートをコンベア上に載置して第1方向に搬送するコンベア式搬送機構を複数並列したプレート搬送部と、
前記マイクロプレートをピックアップして移動させることにより、前記コンベアと前記作業モジュールに設けられたプレート受渡部との間でマイクロプレートを移送するピックアンドプレース式搬送機構と、
前記プレート搬送部およびピックアンドプレース式搬送機構が上面に設けられた台部と、
前記台部において前記第1方向の両端面および第1方向と直交する第2方向の両端面にそれぞれ設けられ、前記台部を前記第1方向に連結された他のマイクロプレートの搬送装置の台部と連結するための第1方向連結部および前記台部を前記第2方向に隣接して配置された前記作業モジュールの台部と連結するための第2方向連結部とを備えたことを特徴とするマイクロプレートの搬送装置。
【請求項2】
前記プレート搬送部は前記コンベア式搬送機構を2列並設して成り、前記ピックアンドプレース式搬送機構は、前記2列のコンベア式搬送機構の間に前記第1方向に移動自在に配設されたロボットアームであることを特徴とする請求項1記載のマイクロプレートの搬送装置。
【請求項3】
前記第1方向連結部および第2方向連結部には、当該マイクロプレートの搬送装置と前記他のマイクロプレートの搬送装置および前記作業モジュールとを位置合わせするための位置合わせ部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のマイクロプレートの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−241513(P2008−241513A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83715(P2007−83715)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】