説明

マイクロホンユニット

【課題】汎用性に優れ、製造コストの低下を図れるマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット1は、音圧によって変位する振動板112を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部11と、電気音響変換部11を収容する収容空間25、及び、外部の音を音孔21、22から振動板112へと導く音道41、42が形成される筐体と、を備える。筐体の音孔21、22が形成される第1の外面20a、及び、筐体の第1の外面20aに対して反対側にある第2の外面30bには、実装基板の接続端子に接続するために使用される同一機能の外部接続用電極27a〜27d、32a〜32dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、といった音声入力装置にマイクロホンユニットが適用されている(例えば、特許文献1参照)。音声入力装置にマイクロホンユニットを適用する場合、音声入力装置が備える実装基板の上面側にマイクロホンユニットが搭載されることもあれば、下面側にマイクロホンユニットが搭載されることもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
図11は、マイクロホンユニットが実装基板の上面側に搭載された場合の従来の構成例を示す断面図である。図11に示す構成では、マイクロホンユニット100は、音声入力装置200のケース上部201及び実装基板301に挟まれるように配置されている。マイクロホンユニット100の筐体101上面側には、音声入力装置200のケース上部201に形成される導入孔202と対向するように音孔102が設けられる。また、マイクロホンユニット100の筐体101下面側には、実装基板301の上面に形成される接続パッド302に電気的に接続される外部接続用電極103が形成される。なお、符号104は、音圧によって変位する振動板104aを有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部である(後述の図12でも同様)。
【0004】
図12は、マイクロホンユニットが実装基板の下面側に搭載された場合の従来の構成例を示す断面図である。図12に示す構成では、実装基板301が音声入力装置200のケース上部201及びマイクロホンユニット100に挟まれるように配置されている。実装基板301には、音声入力装置200のケース上部201に形成される導入孔202と対向するように貫通孔303が設けられる。そして、マイクロホンユニット100の筐体101の上面側には、この貫通孔303と対向するように音孔102が形成されると共に、実装基板301の下面に形成される接続パッド302に電気的に接続される外部接続用電極103が形成される。なお、実装基板301とマイクロホンユニット100との間には、音漏れ防止用のガスケット401が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135777号公報
【特許文献2】特開2008−67173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、マイクロホンユニットについて、実装基板の上面側に搭載する構成のものと、実装基板の下面側に搭載する構成のものと、を異なる製品として作り分けると、作業面や製品管理の面等で負担が大きくなってしまう。その結果、マイクロホンユニットの製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、汎用性に優れ、製造コストの低下を図れるマイクロホンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のマイクロホンユニットは、音圧によって変位する振動板を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部と、前記電気音響変換部を収容する収容空間、及び、外部の音を音孔から前記振動板へと導く音道が形成される筐体と、を備えるマイクロホンユニットであって、前記筐体の前記音孔が形成される第1の外面、及び、前記筐体の前記第1の外面に対して反対側にある第2の外面には、実装基板の接続端子に接続するために使用される同一機能の外部接続用電極が形成されていることを特徴としている。
【0009】
本構成によれば、マイクロホンユニットが備える筐体の表裏の関係にある2つの外面に、実装基板の接続端子に接続するために使用される同一機能の外部接続用電極が形成される構成となっている。このために、本構成のマイクロホンユニットは、実装基板の上面側に搭載することも可能であるし、実装基板の下面側に搭載することも可能である。すなわち、1種類のマイクロホンユニットを生産することで、2種類分に相当するマイクロホンユニットを生産することになるために、マイクロホンユニットの製造コストを低下することが可能である。
【0010】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記筐体は、前記電気音響変換部が搭載される基板と、前記音孔を有すると共に前記基板に被せられて前記収容空間を形成する蓋体と、からなって、前記第1の外面は、前記蓋体の前記基板に対向する面の裏面であり、前記第2の外面は、前記基板の前記蓋体が被せられる面の裏面であることとしてもよい。
【0011】
本構成によれば、同一の機能を有する外部接続用電極を、筐体を構成する別々の部材(蓋体と基板)に形成する構成となっている。この場合、例えば実装基板の上面側に搭載する場合と下面側に搭載する場合とのうち、一方側についてのみ電極配置を変更する必要が生じた場合に、筐体全体の構成を変更するのではなく、蓋体或いは基板の一方の構成だけを設計変更すればよいために便利である。
【0012】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記音孔は、第1音孔と第2音孔との2つの音孔からなって、前記筐体は、前記電気音響変換部が搭載される基板と、前記第1音孔に連通する第1空間及び前記第2音孔に連通する第2空間を有すると共に前記基板に被せられて前記第1空間が前記収容空間を形成する蓋体と、前記基板の前記蓋体が配置される側の反対側に配置されて溝が形成される溝形成部材と、からなって、前記基板には、前記振動板に対向するように設けられる第1貫通孔と、前記第1貫通孔とは別に設けられる第2貫通孔と、が形成され、前記音道は、前記第1音孔から前記収容空間を経て前記振動板の一方の面へと至る第1音道と、前記第2音孔から前記第2空間、前記第2貫通孔、前記溝、前記第1貫通孔を順に経て前記振動板の他方の面へと至る第2音道と、からなって、前記第1の外面は、前記蓋体の前記基板に対向する面の裏面であり、前記第2の外面は、前記溝形成部材の前記基板と対向する面の裏面であることとしてもよい。
【0013】
本構成によれば、振動板の両面に加わる音圧の差に基づいて音信号を電気信号に変換する差動マイクについて、1種類のマイクロホンユニットを生産することで、2種類分に相当するマイクロホンユニットを生産するという効果を得られる。なお、差動マイクは、マイクロホンユニットの遠方に音源を有する背景雑音を除去して、マイクロホンユニットの近傍で発生られた音声を選択的に取得することが可能である。すなわち、本構成によれば、高性能のマイクロホンユニットを低コストで生産可能になるという利点が得られる。
【0014】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記蓋体と前記基板とは同一材料で形成されているのが好ましい。本構成によれば、マイクロホンユニットを音声入力装置の実装基板にリフロー実装する場合において、蓋体と基板との膨張係数の差によって電気音響変換部に不要な応力が加わるという事態を避けられる。また、蓋体を例えばFR−4のような基板と同じ材料を用いて形成することにより、蓋体における外部接続用電極が形成し易い。
【0015】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記第1の外面には、前記音孔を囲むように半田接合可能な接合部が形成されていることとしても良い。
【0016】
本構成によれば、実装基板の下面側にマイクロホンユニットを配置する場合に、実装基板とマイクロホンユニットとの間にガスケットを配置しなくても音漏れを防止することが可能であり、製造し易い。なお、前記接合部を設けずに、ガスケットを設けることとしても勿論構わない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、汎用性に優れ、製造コストの低下を図れるマイクロホンユニットの提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のマイクロホンユニットの外観構成を示す概略斜視図
【図2】図1(a)のA−A位置における概略断面図
【図3】本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す分解斜視図
【図4】本実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップの構成を示す概略平面図
【図5】本実施形態のマイクロホンユニットが備えるマイク基板を上から見た概略平面図
【図6】本実施形態のマイクロホンユニットが備える溝形成部材を上から見た概略平面図
【図7】本実施形態のマイクロホンユニットが備える蓋体を下から見た概略平面図
【図8】本実施形態のマイクロホンユニットが音声入力装置の実装基板に搭載される場合の構成例を示す概略断面図
【図9】本発明が適用されるマイクロホンユニットの他の実施形態を示す概略断面図
【図10】本実施形態のマイクロホンユニットに変形例を示す図
【図11】マイクロホンユニットが実装基板の上面側に搭載された場合の従来の構成例を示す断面図
【図12】マイクロホンユニットが実装基板の下面側に搭載された場合の従来の構成例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用されたマイクロホンユニットの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態のマイクロホンユニットの概略構成を図1から図4を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のマイクロホンユニットの外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は斜め上方から見た図、図1(b)は斜め下方から見た図である。図2は、図1(a)のA−A位置における概略断面図である。図3は、本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す分解斜視図である。図4は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップの構成を示す概略平面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のマイクロホンユニット1は、大きくは、マイク基板10と、マイク基板10の上面側に被せられる蓋体20と、図1においては図示されない溝が形成されてマイク基板10の下部側に配置される溝形成部材30と、を備える構成となっている。
【0022】
平面視略矩形状に形成されるマイク基板10には、図2及び図3に示すように、平面視略正方形状に形成される第1貫通孔10aと、平面視略長方形状に形成される第2貫通孔10bとが形成されている。マイク基板10を構成する材料は、特に限定されるものではないが、基板材料として公知の材料が好適に使用され、例えばFR−4等が用いられる。
【0023】
マイク基板10の上面には、第1貫通孔10aを覆うようにMEMSチップ11が搭載されている。なお、MEMSチップ11は、図2に示すように音圧によって変位する振動板112を有しており、本発明の音信号を電気信号に変換する電気音響変換部の実施形態である。
【0024】
図4に示すように、シリコンチップからなるMEMSチップ11は、絶縁性のベース基板111と、振動板112と、絶縁層113と、固定電極114と、を有し、コンデンサ型のマイクロホンを構成している。ベース基板111には平面視略円形状の開口111aが形成されている。ベース基板111の上に設けられる振動板112は、音圧を受けて振動(上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有して電極の一端を形成している。固定電極114は、絶縁層113を挟んで振動板112と対向するように配置されている。これにより、振動板112と固定電極114との間で容量が形成される。なお、固定電極114には音波が通過できるように複数の音孔114aが形成されており、振動板112の上部側から来る音波が振動板112の上面112aに到達するようになっている。
【0025】
以上のようにMEMSチップ11は、振動板112の上面112a及び下面112bから音圧が加わるように構成されている。このため、振動板112は、上面112aから加わる音圧pfと、下面112bから加わる音圧pbとの差に応じて振動する。振動板113が振動すると、振動板112と固定電極114との間隔Gpが変化して、振動板112と固定電極114との間の静電容量が変化する。この結果、MEMSチップ11に入射した音波(音信号)を電気信号として取り出せる。
【0026】
なお、電気音響変換部としてのMEMSチップの構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では振動板112の方が固定電極114よりも下となっているが、これとは逆の関係(振動板が上で、固定電極が下となる関係)となるように構成しても構わない。
【0027】
マイク基板10の上面には、図2及び図3に示すように、MEMSチップ11の横にASIC(Application Specific Integrated Circuit)12が搭載されている。ASIC12は、MEMSチップ11の静電容量の変化に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。この信号処理部として機能するASIC12は、MEMSチップ11における静電容量の変化を精密に取得できるようにチャージポンプ回路とオペアンプとを含む構成としても良い。ASIC12で増幅処理された電気信号は、後述の配線構成によってマイクロホンユニット1の外部へと出力されるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、MEMSチップ11及びASIC12はマイク基板10にフリップチップ実装される構成となっている。ただし、この構成に限定される趣旨ではなく、MEMSチップ11及びASIC12がワイヤボンディング技術によってマイク基板10に実装される構成等としても勿論構わない。
【0029】
蓋体20は、図1から図3に示すように、外形が略直方体形状に設けられ、上面20aに2つの開口21、22と、下面20bに2つの開口23、24を有する。そして、蓋体20には、上面20aの第1開口21と下面20bの第3開口23とを繋ぐ第1空間25と、上面20aの第2開口22と下面20bの第4開口24とを繋ぐ第2空間26と、が形成されている。この蓋体20をマイク基板10に被せることにより、第1空間25がMEMSチップ11及びASIC12を収容する収容空間を形成する。また、蓋体20は、第2空間26がマイク基板10の第2貫通孔10bと連通するように配置される。
【0030】
なお、蓋体20の上面20aの開口21、22は、外部の音をMEMSチップ11の振動板112に導くための音孔であり、以下、第1開口21を第1音孔21、第2開口22を第2音孔22と表現する場合がある。
【0031】
この蓋体20の上面20a(蓋体20のマイク基板10に対向する面の裏面)には、4つの外部接続用電極27a、27b、27c、27dが設けられている。この4つの外部接続用電極27a〜27dは、マイクロホンユニット1が実装される実装基板の接続端子に接続するために使用される電極である。詳細には、外部接続用電極27aはASIC12への電力供給のための電極である。また、外部接続用電極27bはASIC12からの電気信号を出力するための電極である。更に、外部接続用電極27c、27dは、グランド(GND)接続用の電極である。4つの外部接続用電極27a〜27dのそれぞれは、マイク基板10に形成される配線と繋がっているが、この配線構成の詳細は後述する。
【0032】
また、蓋体20の上面20aには、第1音孔21及び第2音孔22の各周囲を取り囲むように、半田接合可能な半田接合部28が形成されている。この半田接合部28は、外部接続用電極27a〜27dと同一の材料で形成しても構わないし、他の材料で形成しても構わない。同一材料とする方が、マイクロホンユニットの組み立て作業上便利である。この半田接合部28は、後述のように音漏れ防止のために設けられる。
【0033】
蓋体20を構成する材料は、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer;液晶ポリマ)やPPS(polyphenylene sulfide;ポリフェニレンスルファイド)等の樹脂とすることもできるし、例えばFR−4等のマイク基板10と同一の基板材料とすることもできる。本実施形態のマイクロホンユニット1では、蓋体20に電極や配線が形成されるために、マイク基板10と同一の基板材料(例えばFR−4等)とするのが好ましい。なお、蓋体20をLCP等の樹脂で形成する場合には、インサート成形により電極や配線を構成することも可能である。
【0034】
また、蓋体20をマイク基板10と同一材料で形成すると、次のような効果を得られて好ましい。すなわち、両者を同一材料で形成すると、マイクロホンユニット1を実装基板にリフロー実装する場合において、両者の膨張係数差によってマイク基板10に搭載されるMEMSチップ11に不要な応力が加わるという事態を避けられる。
【0035】
溝形成部材30は、図1から図3に示すように、平面視略矩形状の板状部材であり、その上面30aに平面視略矩形状の溝31が形成されている。溝形成部材30は、溝31がマイク基板10に設けられる第1貫通孔10a及び第2貫通孔10bに連通するように配置される。
【0036】
この溝形成部材30の下面30b(溝形成部材30のマイク基板と対向する面の裏面)には、4つの外部接続用電極32a、32b、32c、32dが設けられている。この4つの外部接続用電極32a〜32dは、マイクロホンユニット1が実装される実装基板の接続端子に接続するために使用される電極であり、蓋体20の上面20aに形成される外部接続用電極27a〜27dと同一機能の電極である。すなわち、外部接続用電極32aはASIC12への電力供給のための電極、外部接続用電極32bはASIC12からの電気信号を出力するための電極、外部接続用電極32c、32dは、グランド(GND)接続用の電極となっている。4つの外部接続用電極32a〜32dのそれぞれは、マイク基板10に形成される配線と繋がっているが、この配線構成の詳細は後述する。
【0037】
溝形成部材30を構成する材料は、例えばLCPやPPS等の樹脂とすることもできるし、例えばFR−4等のマイク基板10と同一の基板材料とすることもできる。本実施形態のマイクロホンユニット1では、溝形成部材30をマイク基板10と同一の材料で形成している。このため、本実施形態のマイクロホンユニット1では、マイク基板10と溝形成部材30とを纏めて1つのマイク基板と見なすこともできる(このように見なした場合、外部接続用電極32a〜32bは、マイク基板10の蓋体20が被せられる面の裏面に形成されているとも言える)。そして、本実施形態のように、マイク基板10と溝形成部材30とを同一の材料とすることで、上述の蓋体20とマイク基板10とを同一とした場合と同様の効果を得られる。
【0038】
なお、本実施形態では、溝部形成部材30を平板としているが、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えばマイク基板10及び蓋体20を収容する収容凹部を有する箱状等としても構わない。このように構成することで、マイク基板10及び蓋体20の位置合わせを容易とでき、マイクロホンユニット1の組み立てが容易となる。
【0039】
以上のマイク基板10、蓋体20、溝形成部材30を例えば接着剤等を用いて貼り合わせることで、図2に示すように、MEMSチップ11及びASIC12が収容される収容空間、及び、外部の音を音孔21、22から振動板112へと導く音道41、43が形成される筐体が得られる。
【0040】
なお、第1音道41は、第1音孔21からMEMSチップ11及びASIC12が収容される第1空間(収容空間)25を経て振動板112の上面112aへと至る音道である。また、第2音道42は、第2音孔22から第2空間26、第2貫通孔10b、溝31、第1貫通孔10aをこの順で経て振動板112の下面112bへと至る音道である。マイク基板10に搭載されるMEMSチップ11のベース基板111(図4参照)は、その下面全体がマイク基板10に密着されており、収容空間25から振動板112の下面112bへと音が漏れることはないようになっている。
【0041】
また、蓋体20の上面20aは、本発明における第1の外面の実施形態に該当する。更に、溝形成部材30の下面30bは、本発明における第2の外面の実施形態に該当する。
【0042】
次に、マイクロホンユニット1に形成される配線構成について、図5から図7を参照しながら説明する。図5は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるマイク基板を上から見た概略平面図である。図6は、本実施形態のマイクロホンユニットが備える溝形成部材を上から見た概略平面図である。図7は、本実施形態のマイクロホンユニットが備える蓋体を下から見た概略平面図である。なお、図5から図7においては、MEMSチップ11との位置関係を理解しやすいように、MEMSチップ11を破線で示している。
【0043】
図5に示すようにマイク基板10の上面には、MEMSチップ11で発生した電気信号を取り出すための出力用パッド13aと、MEMSチップ11をマイク基板10に接合すると共にGND接続するために用いられる額縁状のGND接続用パッド13bと、が形成される。また、マイク基板10の上面には、ASIC12に電源電力を入力するための電源電力入力用パッド14aと、ASIC12で処理された信号を出力するための出力用パッド14bと、ASIC12をGND接続するための2つのGND接続用パッド14cと、MEMSチップ11からの信号をASIC12に入力するための入力用パッド14dと、が形成されている。
【0044】
また、マイク基板10の上面には、ASIC12に電源電力を入力するための電源電力入力用パッド14aに電気的に接続される電源用中継パッド15aと、ASIC12で処理された信号を出力するための出力用パッド14bに電気的に接続される信号出力用中継パッド15bと、MEMSチップ11及びASIC12のGND接続用パッド13b、14cに電気的に接続されるGND用中継パッド15c、15dと、が形成されている。
【0045】
なお、マイク基板10の上面に形成される出力用パッド13aと、入力用パッド14dとは、マイク基板10の内部に形成される図示しない内部配線によって電気的に接続されている。また、マイク基板10の下面には、マイク基板10の上面に形成される、各中継パッド15a〜15dに貫通配線で電気的に接続される中継パッドが形成されている。
【0046】
図6を参照して、溝形成部材30の上面30aには、マイク基板10と溝形成部材30とが接合された状態で、マイク基板10に形成される電源用中継パッド15aに電気的に接続される電源用中継パッド33aが形成されている。同様に、溝形成部材30の上面30aには、マイク基板10に形成される信号出力用中継パッド15bに電気的に接続される信号出力用中継パッド33bと、マイク基板10に形成されるGND用中継パッド15c、dに電気的に接続されるGND用中継パッド33c、33dと、が形成されている。
【0047】
溝形成部材30の上面30aに形成される各中継パッド33a〜33dは、溝形成部材30に形成される貫通配線を介して、溝形成部材30の下面30bに形成される外部接続用電極32a〜32dのそれぞれに電気的に接続される。詳細には、電源用中継パッド33aが外部接続用電極32aに、信号出力用中継パッド33bが外部接続用電極32bに、GND用中継パッド33cが外部接続用電極32cに、GND用中継パッド33dが外部接続用電極32dに、それぞれ接続される。
【0048】
図7を参照して、蓋体20の下面20bには、蓋体20がマイク基板10に被せられた状態(接合された状態)で、マイク基板10に形成される電源用中継パッド15aに電気的に接続される電源用中継パッド29aが形成されている。同様に、蓋体20の下面20bには、マイク基板10に形成される信号出力用中継パッド15bに電気的に接続される信号出力用中継パッド29bと、マイク基板10に形成されるGND用中継パッド15c、dに電気的に接続されるGND用中継パッド29c、29dと、が形成されている。
【0049】
蓋体20の下面20bに形成される各中継パッド29a〜29dは、蓋体20に形成される貫通配線を介して、蓋体20の上面20aに形成される外部接続用電極27a〜27dのそれぞれに電気的に接続される。詳細には、電源用中継パッド29aが外部接続用電極27aに、信号出力用中継パッド29bが外部接続用電極27bに、GND用中継パッド29cが外部接続用電極27cに、GND用中継パッド29dが外部接続用電極27dに、それぞれ接続される。
【0050】
以上のように、マイクロホンユニット1には、蓋体20の上面20a(筐体の第1の外面)と溝形成部材30の下面30b(筐体の第2の外面)とに同一機能の外部接続用電極が形成される構成となっている。このために、マイクロホンユニット1は、音声入力装置の実装基板の上面側に搭載される構成にも、実装基板の下面側に搭載される構成にも対応できる。すなわち、本実施形態のマイクロホンユニット1を生産することで、2種類分に相当するマイクロホンユニットを生産することになるために、マイクロホンユニットの製造コストを低下することが可能である。
【0051】
ここで、本実施形態のマイクロホンユニット1が音声入力装置の実装基板の上面側及び下面側に実装される場合の構成例を、図8を参照しながら説明しておく。図8は、本実施形態のマイクロホンユニットが音声入力装置の実装基板に搭載される場合の構成例を示す概略断面図で、図8(a)はマイクロホンユニットが実装基板の上面側に搭載される場合の図で、図8(b)はマイクロホンユニットが実装基板の下面側に搭載される場合に図である。
【0052】
マイクロホンユニット1が音声入力装置の実装基板51の上面51a側に搭載される場合(図8(a)の場合)、マイクロホンユニット1の溝形成部材30の下面30bに設けられる外部接続用電極32a〜32dが、実装基板51の上面51aに設けられる接続端子52に半田等を用いて電気的に接続される。
【0053】
この構成では、マイクロホンユニット1の2つの音孔21、22が音声入力装置のケース上部50の導入孔50aに連通するように配置される。また、音声入力装置のケース上部50とマイクロホンユニット1との間には、音漏れ防止や、音声入力装置のケースの振動がマイクロホンユニット1に伝わり難くなること等を狙って2つの貫通孔53aを有する弾性体53が配置される。なお、この構成では、マイクロホンユニット1の蓋体20の上面20aに設けられる外部接続用電極27a〜27d及び半田接合部28は使用されず、単に絶縁性の弾性体22に当接した状態となっている。
【0054】
一方、マイクロホンユニット1が音声入力装置の実装基板51の下面51b側に搭載される場合(図8(b)の場合)、マイクロホンユニット1の蓋体20の上面20aに設けられる外部接続用電極27a〜27dが、実装基板51の下面51aに設けられる接続端子52に半田等を用いて電気的に接続される。また、マイクロホンユニット1の蓋体20の上面20aに設けられる半田接合部28が、実装基板51の下面51aに設けられる接続パッド54に半田を用いて電気的に接続される。この半田接合部28と接続パッド54との半田接続は、実装基板51とマイクロホンユニット1との間に形成される隙間によって音漏れが発生するのを防止するものである。
【0055】
また、図8(b)の構成では、マイクロホンユニット1の2つの音孔21、22が、それぞれ実装基板51に設けられる貫通孔51cに連通している。そして、この貫通孔51cが実装基板51の上側に設けられる弾性体53の貫通孔53aに連通し、更には、弾性体53の貫通孔53aが音声入力装置のケース上部50の導入孔50aに連通している。これにより、マイクロホンユニット1の2つの音孔21、22は、それぞれ外部に連通している。
【0056】
なお、弾性体53は、図8(a)の場合と同様の理由で配置されている。また、この構成では、マイクロホンユニット1の溝形成部材30の下面30bに設けられる外部接続用電極32a〜32dは使用されない。
【0057】
以上に示したマイクロホンユニット1は本発明の実施形態の一例を示したものであり、本発明の適用範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態について種々の変更を行っても構わない。
【0058】
例えば、以上に示したマイクロホンユニット1における外部接続用電極27a〜27d、32a〜32dの数は一例であり、その必要に応じて外部接続用電極の数は増減して構わない。また、外部接続用電極の位置について、本実施形態のマイクロホンユニット1では、筐体の上面及び下面のいずれにおいても、長手方向の中央部寄りに配置しているが、端部寄りに配置しても構わない。また、外部接続用電極の位置について、筐体上面及び下面で設ける位置を異なる位置(例えば、上面を中央寄り、下面を端部寄り等)としても構わない。
【0059】
また、以上に示した実施形態では、マイクロホンユニットが振動板の両面に加わる音圧の差に基づいて音信号を電気信号に変換する差動マイクであることとした。しかし、本発明は、差動マイクに限らず、図9に示すような構成のマイクロホンユニットにも適用可能である。
【0060】
図9に示すマイクロホンユニット60では、マイク基板61上面にMEMSチップ11(電気音響変換部)及びASIC12が搭載されている。そして、このマイク基板61の上面に1つの音孔63を有する蓋体62が被せられて、MEMSチップ11及びASIC12が収容される収容空間が形成されている。MEMSチップ11の振動板112は、音孔63から収容空間を通って振動板112の上面112aへと至る音道を通る音波によってのみ振動し、振動板112の下面112bからは音波は入射しないようになっている。
【0061】
マイクロホンユニット60では、蓋体62の上面62a(蓋体62のマイク基板61に対向する面の裏面)、及び、マイク基板61の下面61a(マイク基板61の蓋体62が被せられる面の裏面)に同一機能を有する外部接続用電極63が形成されている。また、蓋体62の上面62aには、音孔63を囲むように半田接続可能な半田接合部28が形成されている。これにより、以上に説明したマイクロホンユニット1と同様に、音声入力装置の実装基板の上面側に搭載される構成にも、実装基板の下面側に搭載される構成にも対応できる。すなわち、マイクロホンユニット60を生産することで、2種類分に相当するマイクロホンユニットを生産することになるために、マイクロホンユニットの製造コストを低下することが可能である。
【0062】
また、以上に示した実施形態の場合、マイクロホンユニット1を例えば携帯電話等の音声入力装置に実装した場合に、使用しない側の外部接続用電極が音声入力装置内の他の部品に接触してショートを起こし、部品の破損や誤作動が発生する可能性がある。また、使用しない側の外部接続用電極に静電気が入り、ASIC12等の内部回路を破損させたり、誤作動を起こさせたりする可能性がある。このような事態を防止するために、次のような構成を採用してもよい。
【0063】
すなわち、例えば、マイクロホンユニット1を実装基板の上面側及び下面側のいずれに搭載するかを決定した段階で、使用しない側の外部接続用電極を非導電性の絶縁材で被覆する構成を採用してもよい。絶縁には、例えばレジストや絶縁テープ(エポキシ樹脂やポリイミド樹脂製等)等を用いればよい。なお、マイクロホンユニット1の上面側の外部接続用電極27が使用されない側の電極である場合、半田接合部28も絶縁材で被覆するのが好ましい。
【0064】
また、上記事態を防止する他の構成として、例えば、図10に示すように外部接続用電極27、32とASIC12とを電気的に接続する配線の少なくとも一部に切断部70を設けておく構成を採用してもよい。マイクロホンユニット1をこのように構成しておけば、マイクロホンユニット1が実装基板の上面側及び下面側のいずれに搭載されるかが決定された段階で、使用しない側の外部接続用電極(図10では半田接合部28も含まれている)とASIC12との電気的な接続を簡単に絶つことができる。切断部70での切断方法としては、例えばレーザカットやルータ加工等が挙げられる。
【0065】
なお、図10(a)は、切断部70が形成されたマイクロホンユニット1を上面側から見た概略平面図で、図10(b)は、切断部70が形成されたマイクロホンユニット1を下面側から見た概略平面図である。図10(a)においては、理解を容易とするために、下段に切断部70による切断が実行された状態を示している。
【0066】
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ11とASIC12とは別チップで構成したが、ASIC12に搭載される集積回路はMEMSチップ11を形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
【0067】
また、以上に示した実施形態では、音圧を電気信号に変換する電気音響変換部が、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ11である構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、電気音響変換部はエレクトレック膜を使用したコンデンサマイクロホン等であっても構わない。
【0068】
また、以上の実施形態では、マイクロホンユニットが備える電気音響変換部(本実施形態のMEMSチップ11が該当)の構成として、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを採用した。しかし、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用できる。例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも本発明は適用できる。
【0069】
その他、マイクロホンユニットの形状は本実施形態の形状に限定される趣旨ではなく、種々の形状に変更可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに好適である。
【符号の説明】
【0071】
1、60 マイクロホンユニット
10、61 マイク基板(筐体の構成要素)
10a 第1貫通孔
10b 第2貫通孔
11 MEMSチップ(電気音響変換部)
20、62 蓋体(筐体の構成要素)
20a、62a 蓋体の上面(第1の外面)
21、22、62a 音孔
25 第1空間(収容空間)
26 第2空間
27a〜27d、32a〜32d、63 外部接続用電極
28 半田接合部
30 溝形成部材(筐体の構成要素)
30b 溝形成部材の下面(第2の外面)
41 第1音道
42 第2音道
51 実装基板
52 実装基板の接続端子
61b マイク基板の下面(第2の外面)
112 振動板
112a 振動板の上面(振動板の一方の面)
112b 振動板の下面(振動板の他方の面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音圧によって変位する振動板を有して音信号を電気信号に変換する電気音響変換部と、
前記電気音響変換部を収容する収容空間、及び、外部の音を音孔から前記振動板へと導く音道が形成される筐体と、を備えるマイクロホンユニットであって、
前記筐体の前記音孔が形成される第1の外面、及び、前記筐体の前記第1の外面に対して反対側にある第2の外面には、実装基板の接続端子に接続するために使用される同一機能の外部接続用電極が形成されていることを特徴とするマイクロホンユニット。
【請求項2】
前記筐体は、前記電気音響変換部が搭載される基板と、前記音孔を有すると共に前記基板に被せられて前記収容空間を形成する蓋体と、からなって、
前記第1の外面は、前記蓋体の前記基板に対向する面の裏面であり、
前記第2の外面は、前記基板の前記蓋体が被せられる面の裏面であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記音孔は、第1音孔と第2音孔との2つの音孔からなって、
前記筐体は、前記電気音響変換部が搭載される基板と、前記第1音孔に連通する第1空間及び前記第2音孔に連通する第2空間を有すると共に前記基板に被せられて前記第1空間が前記収容空間を形成する蓋体と、前記基板の前記蓋体が配置される側の反対側に配置されて溝が形成される溝形成部材と、からなって、
前記基板には、前記振動板に対向するように設けられる第1貫通孔と、前記第1貫通孔とは別に設けられる第2貫通孔と、が形成され、
前記音道は、前記第1音孔から前記収容空間を経て前記振動板の一方の面へと至る第1音道と、前記第2音孔から前記第2空間、前記第2貫通孔、前記溝、前記第1貫通孔を順に経て前記振動板の他方の面へと至る第2音道と、からなって、
前記第1の外面は、前記蓋体の前記基板に対向する面の裏面であり、
前記第2の外面は、前記溝形成部材の前記基板と対向する面の裏面であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記蓋体と前記基板とは同一材料で形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記第1の外面には、前記音孔を囲むように半田接合可能な接合部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマイクロホンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−114506(P2011−114506A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268194(P2009−268194)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】