説明

マイクロホンユニット

【課題】運搬時や実装工程等においてダストの侵入を防止できるとともに、リフロー工程を行っても性能の劣化が生じにくいマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット1は、音圧によって振動する振動板(MEMSチップ12に含まれる)と、前記振動板を収容する内部空間111と、内部空間111を外部に連通して音孔となる開口部112とが設けられる筐体11と、通気性がない材料で形成され、開口部112を覆うように筐体11に接合されるフィルム14と、を備える。フィルム14は、マイクロホンユニット1が実装対象に実装された後に取り除かれるものであり、フィルム14には内圧調整部141が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器等に、入力音を電気信号に変換して出力する機能を備えたマイクロホンユニットが適用されている。特に近年においては、振動膜にMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を使用したマイクロホン、いわゆるMEMSマイクロホン(マイクロホンユニット)が急速に伸展してきている。MEMSマイクロホンは、振動膜がシリコン等の無機材料で形成されているため高耐熱性を持ち、リフロー耐性を有するため、特に携帯電話等の携帯機器において急速に広がってきている。
【0003】
このようなマイクロホンユニットは、音孔から内部にダストが入り込むと動作不良を発生する場合がある。このために、マイクロホンユニットは、例えば運搬時や実装対象(携帯電話機の基板等)に実装する工程等において、その内部にできる限りダストが入り込まないようにすることが望まれる。
【0004】
この点、特許文献1に、液体や粉体が音孔に侵入するのを防ぐことができるマイクロホン(マイクロホンユニット)が開示される。具体的には、音孔を通じてマイクロホンの内部に液体等が侵入しないように、マイクロホンの音孔を、通気性を有する不織布で被覆する技術が開示される。また、音孔を通じてマイクロホンの内部に液体等が侵入しないように、たるみを有するか或いはエンボス加工が施された、通気性のないフィルムで、マイクロホンの音孔を隙間無く被覆する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−11340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不織布で音孔を被覆してダストの侵入を防止する構成の場合、その貼り付け工程で不織布の切断面(端面)から発生する比較的大きな繊維状のダストが、音孔からマイクロホン内部に侵入してしまうといった問題がある。また、通気性のないフィルムで音孔を被覆してダストの侵入を防止する構成の場合、MEMSマイクロホンを実装対象(携帯電話機の基板等)に実装する場合に次のような問題が生じる。
【0007】
MEMSマイクロホンを実装対象に実装する場合、リフロー工程が実施されるのが一般的である。通気性のないフィルムで音孔を完全に密封して被覆した場合、このリフロー工程(例えばリフロー温度180〜260℃程度)における温度上昇時に、マイクロホン内の空間の空気が膨張して内圧が上昇(例えば1.8倍程度)し、音孔を被覆するために接着固定された通気性のないフィルムが破裂する場合がある。フィルムの破裂が生じると、その衝撃で振動膜がダメージを受けてマイクロホンに動作不良が生じたり、また、比較的大きな孔が形成されてマイクロホン内部に、性能にダメージを及ぼすような大きなダストが入り込んだりするといった問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、運搬時や実装工程等においてダストの侵入を防止できるとともに、リフロー工程を行っても性能の劣化が生じにくいマイクロホンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明のマイクロホンユニットは、音圧によって振動する振動板と、前記振動板を収容する内部空間と、該内部空間を外部に連通して音孔となる開口部とが設けられる筐体と、通気性がない材料で形成され、前記開口部を覆うように前記筐体に接合されるフィルムと、を備えるマイクロホンユニットであって、前記フィルムには内圧調整部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
なお、前記フィルムは、マイクロホンユニットが実装対象に実装された後に取り除かれるものである。また、通気性のない材料からなる前記フィルムは耐熱性を有するのが好ましい。具体的には、前記フィルムは、180℃以上の温度に耐えられるものであるのが好ましく、更には、260℃以上の温度に耐えられるものであることが好ましい。このような通気性のない耐熱性フィルムとして、例えばポリイミド系のフィルムを使用することができる。
【0011】
本構成によれば、音孔となる開口部を、通気性がない材料からなるフィルムで覆っているために、マイクロホンユニットの運搬時やマイクロホンユニットを実装する工程等において、マイクロホンユニット内部にダストが侵入するのを防止できる。また、フィルム貼り付け時に、不織布の場合のようにダストが入り込むことがない。更に、ダストの侵入防止に使用されるフィルムに内圧調整部が設けられているために、リフロー工程時にフィルムが破裂してマイクロホンユニットの性能にダメージを与えることを防止できる。
【0012】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記フィルムは、前記開口部を取り囲むように設けられる第1の粘着部によって前記筐体に接着されており、前記内圧調整部は、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記第1の粘着部より内側に設けられていることとしてもよい。
【0013】
本構成によれば、フィルムに簡単な加工を加えることで、運搬時や実装工程等においてダストの侵入を防止できるとともに、リフロー工程を行っても性能の劣化が生じにくいマイクロホンユニットの提供が可能となる。
【0014】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記内圧調整部は、前記フィルムを貫通する少なくとも1つの内圧調整孔であることとしてもよい。内圧調整のための貫通孔は、その開口径が小さくてもその機能を十分得られるために、この孔を設けたことによってマイクロホンユニットの性能にダメージを及ぼすような大きなダスト(例えば100μm以上)が入り込むという事態は避けられる。すなわち、本構成でも十分にダストの侵入防止機能を得られる。
【0015】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記内圧調整孔は、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記開口部と重なる位置に設けられてもよいし、前記開口部と重ならない位置に設けられてもよい。後者によれば、マイクロホンユニットの内圧が上昇していない場合(減圧時も含む)に、内圧調整孔と開口部との間が塞がれた状態を得られ、ダストの侵入確率をより低く抑えられる。
【0016】
そして、前記内圧調整孔が、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記開口部と重ならない位置に設けられる場合において、前記内圧調整孔は前記開口部近傍に設けられていることとしてもよいし、前記開口部より外側の離れた位置に設けられていることとしてもよい。
【0017】
前者の構成によれば、内圧が上昇した時に内圧調整孔と開口部とが連通する構成を得やすい。また、後者の構成によれば、開口部と内圧調整孔との距離が長くなる分、内圧調整孔から侵入したダストがマイクロホンユニット内部に入り込む可能性を低減できる。
【0018】
そして、上記後者の構成においては、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記開口部と前記第1の粘着部との間のうち、少なくもと前記内圧調整孔より内側の位置には、前記開口部を取り囲むように設けられて前記第1の粘着部よりも弱い粘着力で前記フィルムと前記筐体とを接着する第2の粘着部が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、原則として第2の粘着部によって筐体とフィルムとが接着されているために、内圧調整孔からダストがマイクロホンユニット内部に入り込むことがない。一方、リフロー工程において内圧が上昇した場合には、その圧力で弱い粘着力の第2の粘着部による接着は簡単に剥離し、内圧調整孔から空気を逃がすことができるために、フィルムの破裂を防止できる。
【0019】
また、上記後者の構成においては、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記開口部と前記第1の粘着部との間には、一部分を除いて前記開口部を取り囲むように設けられて前記フィルムと前記筐体とを接着する第2の粘着部が設けられており、前記内圧調整孔は、前記第1の粘着部と前記第2の粘着部との間の位置、且つ、前記一部分から離れた位置に設けられていることしてもよい。このように構成することで、内圧調整孔から開口部に至る経路長を長くすることができ、内圧調整孔から侵入したダストがマイクロホンユニット内部に入り込む可能性を低減できる。
【0020】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記内圧調整部は、前記フィルムに圧力が加わった場合に微小貫通孔に変化する、前記フィルムの薄肉部であることとしてもよい。本構成によれば、原則として、フィルムに貫通孔がないためにダストが入り込まない。また、フィルムの薄肉部は、その薄さ故に内圧の上昇によって微小貫通孔に簡単に変化できるので、マイクロホンユニット内部に大きな衝撃を与えることなく、内圧調整機能を発揮できる。
【0021】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記フィルムの一方の面には凹凸形状を有する粘着層が形成され、前記粘着層が前記内圧調整部として機能することとしてもよい。本構成によれば、フィルム自体に加工を加えることなく、運搬時や実装工程等においてダストの侵入を防止できるとともに、リフロー工程を行っても性能の劣化が生じにくいマイクロホンユニットの提供が可能となる。
【0022】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記振動板と、前記振動板とともにコンデンサを形成する固定電極と、を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップが、前記内部空間に収容されていることとしてもよい。MEMSチップはダストに弱く、ダスト対策を施した本構成は、MEMSチップを使用するマイクロホンユニットに好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、運搬時や実装工程等においてダストの侵入を防止できるとともに、リフロー工程を行っても性能の劣化が生じにくいマイクロホンユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用された第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図2】第1実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図
【図3】第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示すブロック図
【図4】第1実施形態のマイクロホンユニットをフィルムが設けられる側(上側)から平面視した場合を想定した模式図
【図5】本発明が適用された第2実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図6】本発明が適用された第3実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図7】第3実施形態のマイクロホンユニットの変形例を示す図
【図8】本発明が適用された第4実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す図
【図9】本発明が適用された第5実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す図
【図10】本発明が適用された第6実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図11】本発明が適用された第7実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図
【図12】第7実施形態のマイクロホンユニットが備えるフィルムが有する粘着層の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用されたマイクロホンユニットの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面中の各部材の大きさや厚み等は、本発明の理解を容易とする目的で描かれており、必ずしも実際の寸法に従って描かれたものではない。また、各部材や孔等の形状は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0026】
(第1実施形態)
まず、図1から図4を参照しながら第1実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図1は、本発明が適用された第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図である。図2は、第1実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップの構成を示す概略断面図である。図3は、第1実施形態のマイクロホンユニットの構成を示すブロック図である。図4は、第1実施形態のマイクロホンユニットをフィルムが設けられる側(上側)から平面視した場合を想定した模式図で、内圧調整孔、筐体の開口部、及び粘着部(第1の粘着部)の関係を示す図である。
【0027】
図1に示すように、第1実施形態のマイクロホンユニット1は、筐体11と、MEMSチップ12と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)13と、フィルム14と、を備える構成となっている。なお、フィルム14は、マイクロホンユニット1を実装対象(例えば携帯電話機等、特定の目的のために音を入力して処理するように設けられる機器に含まれる実装基板。以下同じ。)に実装した後の適当なタイミングで取り外されるものである。
【0028】
筐体11は、その外形が略直方体形状に設けられ、内部にMEMSチップ12及びASIC13が収容される空間(内部空間)111を備える。また、筐体11の上部には、筐体11外部の音を内部空間111へと導く音孔となる平面視略円形状の開口部112が形成されている。本実施形態では、開口部112の位置をマイクロホンユニット1の上面略中央部に設ける構成としているが、開口部112の位置は当然ながら適宜変更して構わない。
【0029】
このような筐体11は、例えば、平面視略長方形状の基板に、外形が略直方体形状であって凹部空間と凹部空間に繋がる開口部とを有するカバーを被せる(接合部分は気密封止する)ことによって得ることができる。この場合、基板としては、例えばガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、シリコン基板、ガラス基板等を用いることができる。カバーは、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer;液晶ポリマ)やPPS(polyphenylene sulfide;ポリフェニレンスルファイド)等の樹脂で構成することができる。なお、導電性を持たせるために、カバーを構成する樹脂にステンレス等の金属フィラーやカーボンを混入しても構わない。また、カバーは、FR−4等、セラミックスの基板材料としても構わない。
【0030】
なお、筐体11を形成するための構成は上記に限定されるものではなく、例えば、箱形状の部材に平板形状の蓋(開口部を有する)を被せる構成等でもよい。
【0031】
筐体11の内部空間111に収容されるMEMSチップ12は、シリコンチップからなって、振動板の振動に基づいて音信号を電気信号に変換する電気音響変換素子として機能する。このMEMSチップ12は、半導体製造技術を用いて製造される小型のコンデンサ型マイクロホンチップで、その外形が略直方体形状となっている。MEMSチップ12は、図2に示すように、絶縁性のベース基板121と、振動板122と、絶縁性の中間基板123と、固定電極124と、を備える。
【0032】
ベース基板121には、その中央部に平面視略円形状の貫通孔121aが形成されている。振動板122は、音圧を受けて振動する(図2において上下方向に振動する。また、本実施形態では略円形部分が振動する)薄膜で、導電性を有して電極の一端を形成している。中間基板123は振動板122の上に配置され、ベース基板121と同様に、その中央部に平面視略円形状の貫通孔123aが形成されている。中間基板123の上に配置される板状の固定電極124は、複数の小径(直径10μm程度)の貫通孔124aが形成されている。中間基板133の存在によって隙間Gpをあけて互いに略平行な関係となるように対向配置される、振動板122と固定電極124とはコンデンサを形成している。
【0033】
MEMSチップ12は、音波の到来により振動板122が振動すると、振動板122と固定電極124との間の電極間距離が変動するために静電容量が変化する。この結果、MEMSチップ12に入射した音波(音信号)を電気信号として取り出せる。なお、MEMSチップ12においては、固定電極124に形成される複数の貫通孔124aの存在により、振動板122の上面は外部(MEMSチップ12外部)の空間と連通している。MEMSチップ12の構成は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜、その構成を変更しても構わない。
【0034】
ASIC13は、MEMSチップ12の静電容量の変化(振動板122の振動に由来する)に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。図3に示すように、ASIC13は、MEMSチップ12にバイアス電圧を印加するチャージポンプ回路131を備える。チャージポンプ回路131は、電源電圧VDDを昇圧して、MEMSチップ12にバイアス電圧を印加する。また、ASIC13は、MEMSチップ12における静電容量の変化を検出するアンプ回路132を備える。アンプ回路132で増幅された電気信号はASIC13から出力される。
【0035】
MEMSチップ12及びASIC13は、筐体11内部の底面11a(以下、搭載面11aという)にダイボンディング及びワイヤボンディングにより実装されている。詳細には、MEMSチップ12は図示しないダイボンド材(例えばエポキシ樹脂系やシリコーン樹脂系の接着剤等)によって、それらの底面と搭載面11aとの間に隙間ができないように接合されている。このように接合することにより、搭載面11aとMEMSチップ12の底面との間にできる隙間から音が漏れ込むという事態が発生しないようになっている。また、MEMSチップ12はASIC13に、ワイヤ16(好ましくは金線)によって電気的に接続されている。
【0036】
ASIC13は、図示しないダイボンド材によってその底面が搭載面11aに接合されている。ASIC13は、ワイヤ16によって搭載面11aに形成される図示しない複数の電極パッドのそれぞれと電気的に接続されている。各電極パッドは、筐体11の底面11bに形成される外部接続用端子17のうちの対応する端子と、貫通配線によって電気的に接続されている。複数の外部接続用端子17には、電源電圧(VDD)入力用の電源用端子、ASIC13のアンプ回路132で増幅処理された電気信号を出力する出力端子、及びグランド接続用のGND端子が含まれる。この外部接続用端子17が、リフロー処理によって実装基板に設けられる電極端子に電気的に接続されて、マイクロホンユニット1は動作可能となる。
【0037】
なお、本実施形態においては、MEMSチップ12及びASIC13がワイヤボンディング実装される構成としたが、MEMSチップ12及びASIC13は搭載面11aにフリップチップ実装しても勿論構わない。
【0038】
フィルム14は、マイクロホンユニット1の運搬時や実装対象への実装工程等において、マイクロホンユニット1の内部にダストD(図1参照)が侵入するのを防止する目的で設けられている。フィルム14は通気性のない材料で形成され、フィルム14の貼り付け時にダストが発生して、マイクロホンユニット1内部にダストが入り込むという状況が発生しにくい。このフィルム14には、個片に切断するときにフィルム端面から発塵することのない単層の材料を選択することが好ましい。
【0039】
また、フィルム14は耐熱性を有する材料で形成されている。これは、マイクロホンユニット1を実装対象に実装する場合にリフロー工程が行われることを考慮するものである。リフロー工程は、例えば鉛フリーはんだを使用する場合には260℃程度、共晶はんだを使用する場合は180℃程度の高温で実施される。このため、フィルム14は、リフロー工程で使用される温度に耐えられることが求められ、180℃以上の温度に耐えられるものが好ましく、更には260℃以上の温度に耐えられるものがより好ましい。
【0040】
その他、以下の説明で明らかになるように、フィルム14はある程度の柔軟性を有するものであるのが好ましく、粘着材料を塗付しやすいものであるのが好ましく、更には孔を開け易いものであるのが好ましい。これらの点を考慮して、特に限定されるものではないが、本実施形態では、フィルム14としてポリイミド系のフィルムを用いている。例えばポリイミドフィルムを用いる場合、その厚みは、柔軟性を確保するため50μm以下のものを選択することが好ましい。
【0041】
フィルム14は、上述のように、開口部112から内部にダストDが侵入しないように設けられるものである。このために、フィルム14は、開口部112を覆うことができる必要があり、本実施形態では筐体11の上面と略同サイズとしている。また、フィルム14は、ダストの侵入防止を確実なものとするべく、開口部112を取り囲むように筐体11に気密接着されている。
【0042】
開口部112を取り囲むようにフィルム14を筐体11に気密接着するにあたっては、例えば図4(a)に示すように、開口部112の周縁部のみに粘着部15(本発明の第1の粘着部に該当)を設ける構成としてもよい。また、別の形態として、図4(b)に示すように、開口部112の周縁部のみならず、その他の部分にも粘着部15(これも本発明の第1の粘着部に該当)を設ける構成としても構わない。
【0043】
図4(a)に示す例では、開口部112の形状に合わせて、フィルム14の下面に設ける粘着部15をリング状としている。また、図4(b)に示す例では、フィルム14の下面に設ける粘着部15を、ほぼ開口部112に面する部分以外に設ける構成としている。なお、図4は、フィルム14を上から見ているにもかかわらず、説明の便宜上、粘着部15や開口部112が見えるように扱っている点を断っておく。
【0044】
上述のように、フィルム14は実装対象に実装した後の適当なタイミングで取り外されるものである。このために、粘着部15は、フィルム14を取り外す際に粘着力を低下させられるものであるのが好ましい。例えば、粘着部15は、加熱によって粘着力が低下するようなもの(いわゆる加熱剥離シートと呼ばれるようなもの等)が好ましい。そして、粘着部15は、リフロー時に加えられる熱によって粘着力が低下し(勿論、リフロー工程時に内圧が加わった程度では剥がれないものである必要がある)、マイクロホンユニット1の実装後に例えば手で簡単に引き剥がせるようなものであるのが好ましい。他の例として、粘着部15は、例えば紫外線照射によって粘着力が低下するようなもの(いわゆる紫外線硬化型粘着材とよばれるようなもの等)であってもよい。
【0045】
また、図4に示すように、フィルム14には、それを厚み方向に貫通する平面視略円形状の内圧調整孔141(内圧調整部の実施形態)が設けられている。この内圧調整孔141は小さな貫通孔であって、例えばレーザ等を用いて形成することができる。また、内圧調整孔141は、マイクロホンユニット1を上から(フィルム14が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112と重なる位置に形成されている。
【0046】
マイクロホンユニット1を実装対象に実装する場合、上述のようにリフロー工程が行われ、マイクロホンユニット1は高温下(例えば260℃程度)に晒されることになる。内圧調整孔141が無い場合には、マイクロホンユニット1の内部空間の空気の膨張により内圧が上昇(約1.8倍)し、フィルム14に大きな力が加わってフィルム14あるいは粘着部15が破裂してしまう。しかし、本実施形態では内圧調整孔141の存在によって、マイクロホンユニット1の内部空間の空気が流動して、マイクロホンユニット1の内部圧と外部圧とを等しくできるために、フィルム14あるいは粘着部15が破裂するのを防止できる。すなわち、マイクロホンユニット1においては、フィルム14によって運搬時や実装工程でダストDが内部に侵入するのを防げるとともに、リフロー工程での内部圧力の上昇によりフィルム14あるいは粘着部15が破裂して急激な圧力変化が振動板122に加わり、振動板122が過大に変位して、振動板を構成する膜自体が破損することを避けられる。
【0047】
一般に、MEMSマイクロホンで使用される振動板122は、例えばシリコン(Si)の1μm程度の非常に薄い膜で構成されており、過大な圧力に耐えることができない。振動板122の表面側と裏面側との間に大きな圧力差が発生すると、振動板122が過大に変位して破損する場合がある。本実施形態では、内圧調整孔141の存在によって、フィルム14あるいは粘着部15の破裂が避けられるために、破裂時の衝撃すなわち急激な圧力変化が振動板122に加わって破損することを防止でき、リフロー工程後にマイクロホンユニット1の性能が劣化するという状況も避けられる。
【0048】
なお、本実施形態では、マイクロホンユニット1を上から平面視した場合に開口部112と重なる位置に形成される内圧調整孔141の数を1つとしているが、場合によっては、このような内圧調整孔141を複数設けても構わない。リフロー工程におけるマイクロホンユニット1の内部圧力は、内圧調整孔141の面積で制御可能である。内圧調整孔141の面積を大きくすると、内圧調整孔141を通過する空気の流量が増加するが、大きなダストDがマイクロホンユニット1の内部に入りやすくなる。一方、微小な内圧調整孔141を複数個設ける構成とすることで、大きなダストDの侵入を防ぎつつ内圧調整孔141を通過するトータルとしての空気流量を確保することができる。
【0049】
また、フィルム14に孔を設けた場合、そこからのダストDの侵入が懸念される。この点、内圧調整孔141は、例えば100μm以下としているために、ダストDの侵入確率が低い。また、仮にダストDが侵入したとしても非常に小さなダストDであるために、そのダストDの侵入によってMEMSチップ12の動作不良が起こる可能性は非常に低くなっている。
【0050】
また、リフロー工程時における内圧の上昇を抑制する内圧調整孔を筐体11に設けることも考えられる。しかし、このような内圧調整孔は音響リークの原因となってマイクロホンユニット1の音響特性を劣化させるものとなる。特に、筐体11での音響リークは、マイクロホンの周波数特性の低周波数域での感度を劣化させるため、筐体11に内圧調整孔を設けることは、好ましくない。このために、本実施形態では、後に取り外されるフィルム14に内圧調整孔141を設ける構成としている。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して第2実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図5は、本発明が適用された第2実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図で、図5(a)は内圧が外部と同等である場合の状態を示し、図5(b)は内圧が上昇した場合の状態を示す。
【0052】
第2実施形態のマイクロホンユニット2は、フィルム24の構成を除いて第1実施形態のマイクロホンユニット1と同様の構成となっている。このため、第1実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0053】
マイクロホンユニット2におけるフィルム24も、第1実施形態と同様の性質を有する材料からなる。すなわち、フィルム24も、通気性がなく、耐熱性を有する材料からなる。具体的には、第1実施形態のフィルム14と同様に、フィルム24はポリイミド系のフィルムで構成されている。また、第1実施形態同様に、フィルム24は筐体11の上面と略同サイズとなっている。また、フィルム24は、ダストの侵入防止を確実なものとするべく、開口部112を取り囲むように筐体11に気密接着されている。
【0054】
なお、フィルム24を筐体11に気密接着するための粘着部(本発明の第1の粘着部)は、図5(a)に破線矢印で示す範囲に設けられている。すなわち、図4(b)の場合と同様に、開口部112の周縁部のみならず、その他の部分にも粘着部が設けられた構成となっている。ただし、詳細は後述するように、フィルム24に設けられる内圧調整孔241は第1実施形態の内圧調整孔141が設けられる位置とは異なるために、粘着部が設けられる範囲は、図4(b)と全く同じではない。また、図5(a)に示す粘着部を設ける範囲は一例であり、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔241より外側に設けられていれば、リング状等、他の構成でも構わない。
【0055】
フィルム24に設けられる内圧調整孔241は、第1実施形態の場合と同様に、フィルム24を厚み方向に貫通する平面視略円形状の小さな貫通孔である。第1実施形態の場合と異なり、内圧調整孔241は、マイクロホンユニット2を上から(フィルム24が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112と重ならない位置に形成されている。より詳細には、内圧調整孔241は開口部112の端面から外側に僅かにずれた位置(開口部112の近傍)に設けられている。なお、マイクロホンユニット2を上から平面視した場合に、内圧調整孔241は粘着部よりも内側に設けられている。
【0056】
このようにフィルム24を設けた場合にも、運搬時や実装対象への実装時においてマイクロホンユニット2の内部にダストDが入り込むのを防止できる。特に、マイクロホンユニット2を上から平面視した場合に、内圧調整孔241が開口部112と重ならない位置にあるために、仮に内圧調整孔241からダストDが侵入したとしても(内圧の低下により内部に空気が吸引される場合に起こり易い)、筐体11及びフィルム24によってダストDの内部への侵入が邪魔される。このために、マイクロホンユニット2は、第1実施形態の場合に比べてダストDの侵入確率を低下できる構成となっている。
【0057】
また、リフロー工程においてマイクロホンユニット2の内圧が上昇するとフィルム24が持ち上がる(図5(b)参照)。これにより、内圧調整孔241と開口部112とが連通し、マイクロホンユニット1の内部圧と外部圧とを等しくできるために、内圧が必要以上に上昇することはなく、リフロー工程においてフィルム24あるいは粘着部15が破裂することはない。なお、内圧調整孔241を開口部112近傍に設けているために、内圧の上昇によって内圧調整孔241と開口部112とが連通する構成を得やすい。
【0058】
また、本実施形態では、マイクロホンユニット2を上から平面視した場合に開口部112と重ならず、且つ、開口部112の近傍に設けられる内圧調整孔241の数を1つとしているが、場合によっては、このような内圧調整孔を複数設けても構わない。
【0059】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して第3実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図6は、本発明が適用された第3実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図で、図6(a)は内圧が外部と同等である場合の状態を示し、図6(b)は内圧が上昇した場合の状態を示す。
【0060】
第3実施形態のマイクロホンユニット3は、フィルム34の構成を除いて第1及び第2実施形態のマイクロホンユニット1、2と同様の構成となっている。このため、第1及び第2実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0061】
第3実施形態のマイクロホンユニット3は、第2実施形態のマイクロホンユニット2とほとんど同様の構成であり、フィルム34に設けられる内圧調整孔341の位置及び粘着部(本発明の第1の粘着部)が設けられる範囲(図6(a)に破線矢印で示す)が異なるのみである。粘着部が設けられる範囲の違いは、内圧調整孔341の位置が異なることに伴うものである。
【0062】
詳細には、内圧調整孔341は、マイクロホンユニット3を上から(フィルム34が設けられる側から)平面視した場合に、第2実施形態と同様に、開口部112と重ならない位置に形成されている。ただし、内圧調整孔341は、開口部112の近傍ではなく、開口部112の端面から外側に離れた位置に設けられている。
【0063】
このようにフィルム34を設けた場合にも、運搬時や実装対象への実装時においてマイクロホンユニット3の内部にダストDが入り込むのを防止できる。そして、第2実施形態の場合と同様に、仮に内圧調整孔341にダストDが侵入したとしても、筐体11及びフィルム34によってダストDの内部への侵入が邪魔されるために、マイクロホンユニット3内部へのダストDの侵入確率を低いものとできる。特に、第2実施形態の場合と比べて、内圧調整孔341から開口部112までの距離が長いためにダストDの内部への侵入を更に高い確率で抑制できる。
【0064】
また、リフロー工程においてマイクロホンユニット3の内圧が上昇するとフィルム34が持ち上がる(図6(b)参照)。これにより、内圧調整孔341と開口部112とが連通するために、内圧が必要以上に上昇することはなく、リフロー工程においてフィルム34あるいは粘着部15が破裂することはない。
【0065】
また、本実施形態では、マイクロホンユニット3を上から平面視した場合に開口部112と重ならず、且つ、開口部112から離れた位置に設けられる内圧調整孔341の数を1つとしている。しかし、この構成に限らず、例えば図7に示すように内圧調整孔341を複数(図7では4つ)設けても構わない。
【0066】
図7は、第3実施形態のマイクロホンユニットの変形例を示す図で、図7(a)は変形例のマイクロホンユニット3の概略断面図、図7(b)は変形例のマイクロホンユニット3をフィルム34が設けられる側(上側)から平面視した場合を想定した模式図で、内圧調整孔341、筐体の開口部112、及び粘着部15(第1の粘着部)の関係を示す図である。なお、図7(b)は、フィルム34を上から見ているにもかかわらず、説明の便宜上、粘着部15や開口部112が見えるように扱っている点を断っておく。
【0067】
変形例のマイクロホンユニット3では、粘着部15はリング状とされているが、粘着部15の構成はこれに限定されない。すなわち、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔341より外側に設けられていれば、他の構成(例えば図7(b)のリング状部分の外側全部に粘着部が設けられている構成等)でも構わない。
【0068】
(第4実施形態)
次に、図8を参照して第4実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図8は、本発明が適用された第4実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す図で、図8(a)は第4実施形態のマイクロホンユニットの概略断面図、図8(b)は第4実施形態のマイクロホンユニットをフィルムが設けられる側(上側)から平面視した場合を想定した模式図である。
【0069】
第4実施形態のマイクロホンユニット4は、フィルム44の構成を除いて第1から第3実施形態のマイクロホンユニット1〜3と同様の構成となっている。このため、これらの実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0070】
第4実施形態のマイクロホンユニット4は、第3実施形態の変形例のマイクロホンユニット3(図7参照)とほとんど同様の構成であり、フィルム44の筐体11への接着構成のみ異なる。第4実施形態のマイクロホンユニット4では、マイクロホンユニット4を上から(フィルム44が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔441より外側に設けられるリング状の粘着部15(第1の粘着部)によって、フィルム44が筐体11に気密接着されている(図8(b)参照)。この点は、第3実施形態の変形例のマイクロホンユニット3と同様である。
【0071】
しかし、開口部112と内圧調整孔441との間に、更に、開口部112を取り囲むようにリング状の第2の粘着部45が設けられている(図8(b)参照)点で、第3実施形態の変形例のマイクロホンユニット3とは構成が異なる。第2の粘着部45は、第1の粘着部15より弱い粘着力でフィルム44と筐体11とを気密接着している。なお、図8(b)は、フィルム44を上から見ているにもかかわらず、説明の便宜上、第1の粘着部15、第2の粘着部45、開口部112が見えるように扱っている点を断っておく。
【0072】
第2の粘着部45の粘着力は、マイクロホンユニット4の内圧が上昇してフィルム44に所定の圧力(これはフィルム44に破裂が生じないように低い値に設定される)を超える力が加わると簡単に剥がれるようになっている。なお、第1の粘着部15の粘着力は、マイクロホンユニット4の内圧が上昇してフィルム44に圧力が加わっても簡単に剥がれないように設定されている。ここで、第2の粘着部45の粘着力が第1の粘着部15の粘着力よりも低くなるようにするための方法として、粘着力自体を変える方法あるいはリングの幅を変える方法等がある。第1の粘着部15と第2の粘着部45とを同一の接着層を使用する場合、第2の粘着部45のリングの幅は第1の粘着部15のリングの幅よりも狭くなるように形成すれば良い。
【0073】
このように構成されるマイクロホンユニット4においても、フィルム44によって運搬時や実装対象への実装時において内部にダストDが入り込むのを防止できる。そして、内圧調整孔441の内側に第2の粘着部45が設けられているために、内圧調整孔441を介してマイクロホンユニット4内部にダストDが入るという事態が避けられるようになっている。また、内圧調整孔441が開口部112から離れた位置に設けられるために、粘着力の弱い第2の粘着部45が仮に剥がれても、第3実施形態の場合と同様に、マイクロホンユニット4内部へのダストDの侵入確率を低いものとできる。
【0074】
また、リフロー工程においてマイクロホンユニット4の内圧が上昇すると、粘着力の弱い第2の粘着部45による筐体11とフィルム44との接着は剥がれる。これにより、図6(b)の場合と同様に、フィルム44の第1の粘着部15より内側の部分が持ち上がり、内圧調整孔441と開口部112とが連通し、マイクロホンユニット1の内部圧と外部圧とを等しくできる。このために、マイクロホンユニット4内部の圧力が必要以上に上昇することはなく、リフロー工程においてフィルム44あるいは粘着部15が破裂することはない。
【0075】
なお、本実施形態では内圧調整孔の数を複数(具体的には4つ)としたが、1つでも構わない。また、開口部112を取り囲むように設けられる第2の粘着部45の配置範囲は、マイクロホンユニット4を上から(フィルム44が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112と第1の粘着部15との間のうち、少なくとも内圧調整孔441より内側の位置にあればよく、その範囲は適宜変更可能である。例えば、図8(b)において、第2の粘着部45の範囲が第1の粘着部15との境界まで拡がるような構成でも構わない。このような構成の場合、第2の粘着部45が内部調整孔441を塞がないようにする必要がある。
【0076】
また、第1の粘着部15はリング状とされているが、第1の粘着部15の構成はこれに限定されない。すなわち、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔441より外側に設けられていれば、他の構成(例えば図8(b)のリング状部分の外側全部に粘着部が設けられている構成等)でも構わない。
【0077】
(第5実施形態)
次に、図9を参照して第5実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図9は、本発明が適用された第5実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す図で、図9(a)は第5実施形態のマイクロホンユニットの概略断面図、図9(b)は第5実施形態のマイクロホンユニットをフィルムが設けられる側(上側)から平面視した場合を想定した模式図である。
【0078】
第5実施形態のマイクロホンユニット5は、フィルム54の構成を除いて第1から第4実施形態のマイクロホンユニット1〜4と同様の構成となっている。このため、これらの実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0079】
第5実施形態のマイクロホンユニット5は、第3実施形態のマイクロホンユニット3と同様に、内圧調整孔541が、マイクロホンユニット5を上から(フィルム54が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112と重ならず、且つ、開口部112から離れた位置に設けられている。ただし、第3実施形態の場合と、フィルム54を筐体11に取り付ける構成が異なっている。
【0080】
図9(b)に示すように、マイクロホンユニット5を上から平面視した場合に、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔541より外側に設けられるリング状の粘着部15(第1の粘着部)によって、フィルム54は筐体11に気密接着されている。また、開口部112と内圧調整孔541との間には、一部を除いて開口部112を取り囲むリング状の第2の粘着部55が設けられている。第1の粘着部15と第2の粘着部55とは粘着力が同等となっている。
【0081】
なお、図9(b)は、フィルム54を上から見ているにもかかわらず、説明の便宜上、第1の粘着部15、第2の粘着部55、開口部112が見えるように扱っている点を断っておく。
【0082】
リング状の第2の粘着部55には、一部に開口55aが設けられている。内圧調整孔541は、第2の粘着部55に設けられる開口55aからなるべく離れた位置となるように設けられている。具体的には、内圧調整孔541は、第2の粘着部55の、開口55aが設けられる位置と開口部112を挟んで対向する位置の近傍に設けられている。
【0083】
このように構成されるマイクロホンユニット5においても、フィルム54によって運搬時や実装対象への実装時において内部にダストDが入り込むのを防止できる。そして、開口55aを有する第2の粘着部55を設けることによって、開口部112と内圧調整孔541との距離を、第3実施形態の場合よりも長くできるようになっている。このために、マイクロホンユニット5内部へのダストDの侵入確率をかなり低いものとできる。
【0084】
また、リフロー工程においてマイクロホンユニット5の内圧が上昇すると、第1の粘着部15と第2の粘着部55との間の部分が持ち上がり、内圧調整孔541と開口部112とが連通する。このために、マイクロホンユニット5内部の圧力が必要以上に上昇することはなく、リフロー工程においてフィルム54あるいは粘着部15、55が破裂することはない。
【0085】
なお、本実施形態では、内圧調整孔541の数を1つとしたが複数としても構わない。この場合においても、各内圧調整孔541は開口55aからなるべく離れた位置に設けるのが好ましい。また、第1の粘着部15はリング状とされているが、第1の粘着部15の構成はこれに限定されない。すなわち、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、内圧調整孔541より外側に設けられていれば、他の構成(例えば図9(b)のリング状部分の外側全部に粘着部が設けられている構成等)でも構わない。
【0086】
(第6実施形態)
次に、図10を参照して第6実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図10は、本発明が適用された第6実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図で、図10(a)は内圧が外部と同等である場合の状態を示し、図10(b)は内圧が上昇した場合の状態を示す。
【0087】
第6実施形態のマイクロホンユニット6は、フィルム64の構成を除いて第1から第5実施形態のマイクロホンユニット1〜5と同様の構成となっている。このため、これらの実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0088】
マイクロホンユニット6におけるフィルム64も、第1実施形態等と同様の性質を有する材料からなる。すなわち、フィルム64も、通気性がなく、耐熱性を有する材料からなり、具体的には、フィルム64はポリイミド系のフィルムで構成されている。また、第1実施形態等と同様に、フィルム64は筐体11の上面と略同サイズとなっている。また、フィルム64は、ダストの侵入防止を確実なものとするべく、開口部112を取り囲むように筐体11に気密接着されている。
【0089】
なお、フィルム64を筐体11に気密接着するための粘着部(本発明の第1の粘着部)は、図10(a)に破線矢印で示す範囲であり、図4(b)の場合と同様に、開口部112の周縁部のみならず、その他の部分にも粘着部が設けられた構成となっている。ただし、図10(a)に示す粘着部を設ける範囲は一例であり、開口部112を取り囲むように設けられ、且つ、後述の内圧調整部641より外側に設けられていれば、リング状等、他の構成でも構わない。
【0090】
内圧調整部641は、マイクロホンユニット6を上から(フィルム64が設けられる側から)平面視した場合に、開口部112と重なる位置(より詳細にはフィルム64の略中央部)に形成されている。内圧調整部641はフィルム64の一部を例えばレーザ等で薄くすることによって得られる薄肉部である。この薄肉部641は、フィルム64に小さな圧力が加わった場合に簡単に破れるように設けられている。また、破れた際にできる貫通孔の開口径が小さくなるように、薄肉部641のサイズは小さくされている。なお、薄肉部641が破れて形成される貫通孔の開口径は100μm以下となるのが好ましい。また、フィルム64の薄肉部641は、薬品等によってフィルム64の一部を溶かす等によって得ても構わない。
【0091】
このようにフィルム64を設けた場合にも、運搬時や実装対象への実装時においてマイクロホンユニット6の内部にダストDが入り込むのを防止できる。特に、フィルム64の内圧調整部641は貫通孔ではなく、原則として閉じられた状態であるために、第1実施形態のように内圧調整孔141を設ける場合に比べて、マイクロホンユニット6内部にダストDが入り込む可能性を小さくできる。
【0092】
また、リフロー工程においてマイクロホンユニット6の内圧が上昇するとフィルム64に圧力がかかり、図10(b)に示すように内圧調整部(薄肉部)641が簡単に破れるようになっている。内圧調整部641は簡単に破れるために、内圧調整部641を設けない構成において内圧上昇によりフィルムが破裂するほどの衝撃がなく、MEMSチップ12に動作不良が発生する可能性は低い。そして、薄肉部641が破れた場合の孔の開口径が小さくなるようにしているために、薄肉部641が破れた後においても、マイクロホンユニット6内部にダストDが侵入し難くなっている。
【0093】
なお、本実施形態では、マイクロホンユニット6を上から平面視した場合に開口部112と重なる位置に内圧調整部(薄肉部)641を設ける構成としているが、場合によっては、開口部112と重ならない位置に設けても構わない。
【0094】
(第7実施形態)
次に、図11及び図12を参照して第7実施形態のマイクロホンユニットについて説明する。図11は、本発明が適用された第7実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略断面図である。図12は、第7実施形態のマイクロホンユニットが備えるフィルムが有する粘着層の構成を示す図で、図12(a)は粘着層を下から見た場合の概略平面図、図12(b)は図12(a)のA−A位置における断面図である。
【0095】
第7実施形態のマイクロホンユニット7は、フィルム74の構成を除いて第1から第6実施形態のマイクロホンユニット1〜6と同様の構成となっている。このため、これらの実施形態と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、なるべく異なる部分に絞って説明する。
【0096】
フィルム74も、通気性がなく、耐熱性を有する材料からなっており、例えばポリイミド系のフィルムで構成される。フィルム74は筐体11の上面と略同サイズとなっている。フィルム74の下面(筐体11と対向する面)全体には粘着層75が設けられている。この粘着層75のフィルム74と反対側面には、例えば溝加工あるいはエンボス加工等(その他、レーザ加工等を用いてもよい)によって凹凸が形成されている。図12(a)において、太い実線で示した部分が凹部75aに該当する。
【0097】
マイクロホンユニット7においては、凹部75aは格子状に形成され、いずれの凹部75aも、その両端が粘着層75の端部まで延びている。すなわち、筐体11にフィルム74が貼り付けられた状態において、筐体11内部は、開口部112及び粘着層75の凹部75aによって外部と連通した状態となっている。
【0098】
このように構成されるマイクロホンユニット7においても、フィルム74によって運搬時や実装対象への実装時において内部にダストDが入り込むのを防止できる。なお、マイクロホンユニット7では、その側面からダストDが粘着層75の凹部75aに入り込む可能性がある。しかし、このようなダストDは、マイクロホンユニット7の内部に至るまでに粘着層75にくっつく可能性が高く、ほとんどマイクロホンユニット7の内部に至らない。このために、マイクロホンユニット7内部へのダストDの侵入確率を低いものとできる。
【0099】
また、本実施形態では粘着層75の凹部75aの存在によって、マイクロホンユニット7の内部圧と外部圧を等しくできるために、リフロー工程においてフィルム74あるいは粘着層75が破裂するのを防止できる。すなわち、マイクロホンユニット7においては、粘着層75が内圧調整部として機能している。ここで、凹部75aの高さは50μm以上500μm以下に設定することが好ましい。
【0100】
なお、本実施形態では粘着層75に格子状の凹部75aを設ける構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えば、粘着層75に、単に縦方向、横方向、斜め方向に延びる少なくとも1つの凹部を設ける構成等としてもよい。
【0101】
また、本実施形態では粘着層75に格子状の凹部75aを設ける構成としたが、粘着層75に凹部を設けることなくフィルム74に凹凸を設けることにより、フィルム74の凹凸が粘着層75に転写される構成としても構わない。
【0102】
(その他)
以上に示した実施形態は本発明の適用例を示したものであり、本発明の適用範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態について種々の変更を行っても構わない。
【0103】
例えば、以上に示した実施形態では、MEMSチップ12とASIC13とは別チップで構成したが、ASIC13に搭載される集積回路はMEMSチップ12を形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
【0104】
また、以上に示した実施形態では、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ12を筐体11内に収容する構成のマイクロホンユニットに本発明が適用される場合を示した。しかし、本発明の適用範囲は、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えばエレクトレック膜を使用したコンデンサ型マイクロホンユニットに対しても適用可能である。
【0105】
更に、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用でき、例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに好適である。
【符号の説明】
【0107】
1、2、3、4、5、6、7 マイクロホンユニット
11 筐体
14、24、34、44、54、64、74 フィルム
15 粘着部(第1の粘着部)
45、55 第2の粘着部
75 接着層
75a 凹部
111 内部空間
112 開口部
122 振動板
124 固定電極
141、241、341、441、541 内圧調整孔
641 薄肉部(内圧調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音圧によって振動する振動板と、
前記振動板を収容する内部空間と、該内部空間を外部に連通して音孔となる開口部とが設けられる筐体と、
通気性がない材料で形成され、前記開口部を覆うように前記筐体に接合されるフィルムと、
を備えるマイクロホンユニットであって、
前記フィルムには内圧調整部が設けられていることを特徴とするマイクロホンユニット。
【請求項2】
前記フィルムは、前記開口部を取り囲むように設けられる第1の粘着部によって前記筐体に接着されており、
前記内圧調整部は、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記第1の粘着部より内側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記内圧調整部は、前記フィルムを貫通する少なくとも1つの内圧調整孔であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記内圧調整孔は、前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、前記開口部と重ならない位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記内圧調整孔は、前記開口部近傍に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記内圧調整孔は、前記開口部より外側の離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロホンユニット。
【請求項7】
前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、
前記開口部と前記第1の粘着部との間のうち、少なくとも前記内圧調整孔より内側の位置には、前記開口部を取り囲むように設けられて前記第1の粘着部よりも弱い粘着力で前記フィルムと前記筐体とを接着する第2の粘着部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロホンユニット。
【請求項8】
前記フィルムが設けられる側から前記マイクロホンユニットを平面視した場合に、
前記開口部と前記第1の粘着部との間には、一部分を除いて前記開口部を取り囲むように設けられて前記フィルムと前記筐体とを接着する第2の粘着部が設けられており、前記内圧調整孔は、前記第1の粘着部と前記第2の粘着部との間の位置、且つ、前記一部分から離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロホンユニット。
【請求項9】
前記内圧調整部は、前記フィルムに圧力が加わった場合に微小貫通孔に変化する、前記フィルムの薄肉部であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項10】
前記フィルムの一方の面には凹凸形状を有する粘着層が形成され、前記粘着層が前記内圧調整部として機能することを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項11】
前記振動板と、前記振動板とともにコンデンサを形成する固定電極と、を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップが、前記内部空間に収容されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマイクロホンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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