マイクロリアクター
【課題】複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成できるようにすることにある。
【解決手段】主流用流路1と、複数本の副流用流路2A,2Bと、少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部7a、7bが前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部7cが前記主流用流路に連通する副流合体用流路7と、を具えてなるマイクロリアクターである。
【解決手段】主流用流路1と、複数本の副流用流路2A,2Bと、少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部7a、7bが前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部7cが前記主流用流路に連通する副流合体用流路7と、を具えてなるマイクロリアクターである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ化学プロセスにおいて使用される微細流路構造を持つ「マイクロリアクター」や、さらにその機能を集積した「Lab−on−a−Chip」、マイクロ分析システムに使用される「μ−TAS(Micro Total Analysis Systemの略)」の機能に関し、特には、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを任意の断面形状で生成する「マイクロリアクター」、「μ−TAS」、「Lab−on−a−Chip」に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品や化粧品、さらには食品の分野においては近年、マイクロリアクター等を利用して単成分の微液滴やマイクロカプセルを生成する研究が進められており、このようにマイクロリアクター等を利用して単成分の微液滴やマイクロカプセルを生成する方法としては、例えば「交差流路を用いる方法」(特許文献1参照)や「微小孔噴出方法」等が提案されている。
【0003】
交差流路を用いる方法としては例えば、図13(a)に示す如き、T字型交差流路を用いるものや、図13(b)に示す如き、Y字型交差流路を用いるもの、そして図13(c)に示す如き、フォーク状交差流路を用いるものが知られており、T字型交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とがT字型に交差した流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するものである。
【0004】
また、Y字型交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とがY字型に交差した流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、T字型と比較すると微液滴形状の安定性が低い。
【0005】
さらに、フォーク状交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とが三股のフォーク状に交差した流路を形成し、両外側の主流用流路1に主流3を通すとともに中央の副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、Y字型と比較すると微液滴形状の安定性が改善されている。
【0006】
一方、微小孔噴出方法は、例えば図14に示す如き、主流用流路1と副流用流路2とが並行していて、主流用流路1に副流用流路2の端部が微小孔6を介して連通した構造の流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、微小孔6から主流3内に噴出する副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、微小孔6を多数設けることで微液滴やマイクロカプセルを量産することができる。
【特許文献1】特開2006−051410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこれら「交差流路を用いる方法」や「微小孔噴出方法」では単成分の微液滴しか生成できず、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成する方法は未だ提案されていない。
【0008】
複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成することが可能になれば、微液滴やマイクロカプセルの機能(例えばDDS(ドラッグデリバリーシステム)の徐効性や複合機能等)を飛躍的に向上させることが可能であり、将来、薬品、化粧品、食品等の分野で不可欠な技術となると予測される。
【0009】
それゆえこの発明は、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成することが可能なマイクロリアクターの構造を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決するものであり、この発明のマイクロリアクターは、主流用流路と、複数本の副流用流路と、少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部が前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部が前記主流用流路に連通する副流合体用流路と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる構成にあっては、副流合体用流路の少なくとも一端部の開口部を含む複数の開口部を介して複数本の副流用流路から副流合体用流路に流入した複数成分の副流が、それらの開口部の配置に応じた構成や構造で合体して副流合体用流路の他端部から主流用通路の主流内に流入し、主流で断続的に引きちぎられることで、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルが生成される。
【0012】
従ってこの発明のマイクロリアクターによれば、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で生成することができるとともに、その副流合体用流路を多数設けることで容易に、上記複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)は、この発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す縦断面図、図1(b)は、図1(a)中のA−A線に沿う断面図であり、図中符号1は主流用流路、2A,2Bは副流用流路、3は主流、4A,4Bは副流、5は微液滴をそれぞれ示す。
【0014】
この実施形態のマイクロリアクターは、SBS(サイドバイサイド)型の微液滴を生成するためのもので、互いに重ねられて固定されたベースプレートP1,オリフィスプレートP2,スペーサープレートP3,カバープレートP4の四枚のプレートを具えており、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の図では上面に図では紙面と直角方向に互いに並行して延在するよう形成されてオリフィスプレートP2で蓋をされた二本の溝によって二本の副流用流路2A,2Bが設けられている。
【0015】
オリフィスプレートP2には、そのオリフィスプレートP2の図1(a)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、図1(a)では紙面と直角方向に並んだ複数本(図では四本)の副流合体用流路7が設けられ、ここで、各副流合体用流路7の下端部は二本の副流用流路2A,2Bに跨るように拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに横並びに位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7a,7bを有している。
【0016】
スペーサープレートP3には、図1(a)では紙面と直角方向の中央部に図1(a)では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2とカバープレートP4とにより上下を蓋された空間により一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。
【0017】
かかる実施形態のマイクロリアクターにあっては、図中矢印で示すように、二本の副流用流路2A,2Bの端部にそれぞれ設けられた副流入口2a,2bから互いに成分が異なる副流4A,4Bが二本の副流用流路2A,2Bに流入すると、それらの副流4A,4Bが副流用流路2A,2Bから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7a,7bを介して流入し合体して平行流となり、各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図1(c)に示すように、二成分で構成されるSBS型の微液滴5が生成される。なお、ここでは副流合体用流路7が複数本(図では四本)並んでいるので、同時に複数個(図示例では四個)ずつ微液滴5が生成される。
【0018】
従って、この実施形態のマイクロリアクターによれば、二成分で構成されるSBS型の微液滴5を多量に生成することができる。
【0019】
図2(a)は、上記実施形態の一変形例を示す縦断面図、図2(b)は、図2(a)中のB−B線に沿う断面図であり、図中、先の実施形態と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0020】
この変形例のマイクロリアクターは、副流用流路2A,2Bが交互に四本ずつ設けられて、二本の副流用流路2A,2Bの組が七組作られ、各組に対して五本または四本ずつ副流合体用流路7が設けられることで、合計三十二本の副流合体用流路7が並べられて設けられている点のみ先の実施形態と異なっており、他の点では同様に構成されている。
【0021】
この変形例のマイクロリアクターによれば、図2(c)に示すように、二成分で構成されるSBS型の微液滴5が三十二個同時に生成されるので、微液滴5をより多量に生成することができる。
【0022】
図3(a)は、この発明のマイクロリアクターの他の一実施形態を示す縦断面図、図3(b)は、図3(a)中のC−C線に沿う断面図、図3(c)は、図3(a)中のD−D線に沿う断面図であり、図中、先の実施形態と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0023】
この実施形態のマイクロリアクターは、SC(シース/コア)型の微液滴を生成するためのもので、互いに重ねられて固定されたベースプレートP1,二枚のオリフィスプレートP2A,P2B,スペーサープレートP3,カバープレートP4の五枚のプレートを具えており、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の図では上面に図では左端から中央部にかけて延在するよう形成されてオリフィスプレートP2Bで蓋をされた溝によって扇状に広がる副流用流路2Bおよび矩形の副流溜め部2Cが設けられている。
【0024】
二枚のオリフィスプレートP2A,P2Bのうち下側のオリフィスプレートP2Bには、そのオリフィスプレートP2Bの図3(a)では上面に同図では右端から中央部にかけて延在するよう形成されてオリフィスプレートP2Aで蓋をされた溝によって扇状に広がる副流用流路2Aおよび矩形の副流溜め部2Dが設けられている。また、このオリフィスプレートP2Bには、そのオリフィスプレートP2Bを図3(a)では上下方向に貫通する貫通孔によって、各々ベースプレートP1の副流溜め部2Cに開口する下端部と当該オリフィスプレートP2Bの副流溜め部2Dに開口する上端部とを有して当該オリフィスプレートP2Bの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の連通路2Eが設けられており、各連通路2Eの上端部は縮径されている。
【0025】
二枚のオリフィスプレートP2A,P2Bのうち上側のオリフィスプレートP2Aには、そのオリフィスプレートP2Aの図3(a)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、当該オリフィスプレートP2Aの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の副流合体用流路7が設けられ、これらの副流合体用流路7は、図3(d)にその一本分を示すように、オリフィスプレートP2Bの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の連通路2Eと、図3(a)では上下方向にそれぞれ整列して互いに同心に位置している。そして、各副流合体用流路7の下端部は拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに同心に位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7d,7eを有している。
【0026】
スペーサープレートP3には、図3(a)では紙面と直角方向の中央部に図3(a)では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2AとカバープレートP4とにより上下を蓋された空間により一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。
【0027】
かかる実施形態のマイクロリアクターにあっては、図中矢印で示すように、二本の副流用流路2A,2Bの端部にそれぞれ設けられた副流入口から互いに成分が異なる副流4A,4Bが二本の副流用流路2A,2Bに流入すると、副流4Aが副流用流路2Aを経て副流溜め部2Dから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7dを介して流入し、同時に副流4Bが副流用流路2Bを経て副流溜め部2Cから各連通路2Eを通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し合体して同心流となり、各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図3(f)に示すように、二成分で構成されるSC型の微液滴5またはマイクロカプセルが生成される。なお、ここでは副流合体用流路7が複数本(図では十二本)並んでいるので、同時に複数個(図示例では十二個)ずつ微液滴5やマイクロカプセルが生成される。
【0028】
従って、この実施形態のマイクロリアクターによれば、二成分で構成されるSC型の微液滴5またはマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【0029】
図3(e)は、上記実施形態の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図であり、この変形例では、オリフィスプレートP2Bの各連通路2Eの上端部にパイプ8が設けられて、そのパイプ8が各副流合体用流路7の上端部7c付近まで、同図では上下方向に延在しており、このパイプ8により副流Bを、各副流合体用流路7の上端部7c付近まで誘導することができるので、より正確な断面積比で副流4Aと副流4Bとを同心円状にして主流3内に吐出させることができる。
【0030】
図4(a)は、上記実施形態の他の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図であり、この変形例のマイクロリアクターは、SSC(シース/シース/コア)型の微液滴を生成するためのもので、三枚のオリフィスプレートP2A,P2B,P2Cを具える点が先の変形例と異なっており、他の点は同様に構成されている。ここで、オリフィスプレートP2A,P2Bは、図3(a)に示すものと同様に構成され、一番下のオリフィスプレートP2Cは、図3(e)に示すオリフィスプレートP2Bと同様に各連通路2Fの上端部にパイプ8が設けられている。
【0031】
かかる変形例のマイクロリアクターにあっては、三本の副流用流路2A,2B,2Cに互いに成分が異なる副流4A,4B,4Cが流入すると、副流4Aが副流用流路2Aから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7dを介して流入し、同時に副流4Bが副流用流路2Bから各連通路2Eを通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し合体して同心流となり、さらに副流4Cが副流用流路2Gから各連通路2Fおよび各パイプ8を通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し、先の同心流と合体して三重の同心流となり、それが各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図4(b)に示すように、三成分で構成されるSSC型の微液滴5またはマイクロカプセルが生成される。
【0032】
図5(a)〜(g)は、この発明のマイクロリアクターで生成し得る各種微液滴またはマイクロカプセルを例示する断面図であり、図5(a)は、図1および図2に示すマイクロリアクターが生成するサイドバイサイド(SBS)型の微液滴、図5(b)は、図3に示すマイクロリアクターが生成するシース/コア(SC)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(c)は、図3に示すマイクロリアクターが副流4Bとして液体やゲルの代わりに気体を用いて生成する中空シース(FS)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(d)は、図4に示すマイクロリアクターが生成する三成分によるシース/シース/コア(SSC)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(e)は、図3に示すマイクロリアクターが下端部の中心に位置する開口部7eとして円形以外(図示例では十字状)の断面形状の開口部を有して生成する異形コア型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(f)は、図3に示すと同様のマイクロリアクターが各副流合体用流路7の下端部に位置する開口部7eとして複数の開口部を分散して有して生成する海島(SI)型の微液滴またはマイクロカプセル、そして図5(g)は、図3に示すと同様のマイクロリアクターが各副流合体用流路7の下端部に位置する開口部7eとして複数のスリット状開口部を並べて有して生成する多重スリット型の微液滴である。
【0033】
次に、図1に示す実施形態のマイクロリアクターの具体的構成を示す一実施例を、図6〜図12に基づいて説明する。ここに、図6(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターを示す平面図および縦断面図、図7は、その実施例のマイクロリアクターの構成を示す分解斜視図であり、この実施例のマイクロリアクターは、各々ステンレス鋼製の厚板からなるベースプレートP1およびオリフィスプレートP2と、ステンレス鋼製の薄板からなるスペーサープレートP3と、ガラス板からなるカバープレートP4と、そのカバープレートP4を押さえるアルミニウム製の厚板からなる押さえプレートP5との五枚のプレートを具え、それらのプレートは、互いに重ねあわされて図示しない八本のボルトで互いに締結されている。
【0034】
図8(a),(b)は、上記ベースプレートP1を示す平面図および縦断面図、図8(c),(d)は、図8(a)中のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う断面図であり、この図8に示すように、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の上面に互いに並行して延在するよう形成されてオリフィスプレートP2で蓋をされる二本の溝によって二本の副流用流路2A,2Bが設けられる他、主流用流路1の主流入口1aおよび主流出口1bも設けられている。
【0035】
図9(a),(b)は、上記オリフィスプレートP2を示す平面図および縦断面図、図9(c),(d)は、図9(a),(b)中のA−A線に沿う断面およびB部を拡大して示す断面図、図9(e)は、図9(c),(d)に示す各副流合体用流路7の詳細図であり、この図9に示すように、オリフィスプレートP2には、そのオリフィスプレートP2の図9(b)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、オリフィスプレートP2の幅方向に並んだ複数本(図では七本)の副流合体用流路7が設けられ、ここで、各副流合体用流路7の下端部は二本の副流用流路2A,2Bに跨るように拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに横並びに位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7a,7bを有している。またオリフィスプレートP2の、図9(b)では上面には、スペーサープレートP3に設けられた後述の主流用流路1と重なって主流用流路1の下部を形成する、図では右下がりに僅かに深くなる浅い溝1と、ベースプレートP1の主流入口1aおよび主流出口1bにそれぞれ連通する貫通孔1とが設けられており(便宜上それらも符号1で示す)、その溝1は、副流合体用流路7の上端部7cの位置で途切れて、その位置で主流用流路1の厚さをスペーサープレートP3の厚さまで薄くしている。
【0036】
図10は、上記スペーサープレートP3を示す平面図であり、この図10に示すように、スペーサープレートP3には、その中央部に図10では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2とカバープレートP4とにより上下を蓋される空間により、一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。なお、スペーサープレートP3の厚さは、例えば0.05mm、0.10mm、0.20mmのうちから選択することができる。
【0037】
図11は、上記カバープレートP4を示す平面図であり、この図11に示すようにカバープレートP4は、主流用流路1を観察できるよう全体に透明とされていて、ボルト孔だけが設けられている。
【0038】
図12は、上記押さえプレートP5を示す平面図であり、この図12に示すように押さえプレートP5は、主流用流路1を観察できるよう、概ね主流用流路1の全体に亘る抜き穴と、ボルト孔とが設けられている。
【0039】
かかる構成を具えるこの実施例のマイクロリアクターによれば、先の図1に示す実施形態と同様にして、二成分で構成されるSBS型の微液滴5を多量に生成することができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば各副流合体用流路の本数や配置は、適宜変更することができる。また、異形コア型の微液滴のコアの断面形状は図示のものに限られず、例えばY字型、T字型、三角形、四角形等であっても良い。そして、この発明のマイクロリアクターの適用対象の流体は、液体に限られず、例えば先の中空シース型の液滴またはマイクロカプセルの場合のように気体(反応用ガスや不活性ガス等)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくしてこの発明のマイクロリアクターによれば、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で生成することができるとともに、その副流合体用流路を多数設けることで容易に、上記複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は、この発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)中のA−A線に沿う断面図、(c)は、その実施形態のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図2】(a)は、上記実施形態の一変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)中のB−B線に沿う断面図、(c)は、その変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図3】(a)は、この発明のマイクロリアクターの他の一実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)中のC−C線に沿う断面図、(c)は、(a)中のD−D線に沿う断面図、(d)は、(a)中の一本の副流合体用流路を示す縦断面図、(e)は、上記実施形態の一変形例を示す、(d)と同様の位置での断面図、(f)は、上記実施形態およびその変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図4】(a)は、上記実施形態の他の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図、(b)は、その変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図5】(a)〜(g)は、この発明のマイクロリアクターで生成し得る各種微液滴またはマイクロカプセルを例示する断面図である。
【図6】(a),(b)は、図1に示す実施形態を具体的に構成したマイクロリアクターの一実施例を示す平面図および縦断面図である。
【図7】上記実施例のマイクロリアクターの構成を示す分解斜視図である。
【図8】(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターのベースプレートを示す平面図および縦断面図、(c),(d)は、(a)中のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う断面図である。
【図9】(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターのオリフィスプレートを示す平面図および縦断面図、(c),(d)は、(a),(b)中のA−A線に沿う断面およびB部を拡大して示す断面図、(e)は、(c),(d)に示す各副流合体用流路の詳細図である。
【図10】上記実施例のマイクロリアクターのスペーサープレートを示す平面図である。
【図11】上記実施例のマイクロリアクターのカバープレートを示す平面図である。
【図12】上記実施例のマイクロリアクターの押さえプレートを示す平面図である。
【図13】(a),(b),(c)は、従来の微液滴を作る方法のうち、T字交差流路を用いる方法、Y字交差流路を用いる方法、フォーク状交差流路を用いる方法をそれぞれ示す説明図である。
【図14】は、従来の微液滴を作る方法のうち、微小孔噴出方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 主流用流路
1a 主流入口
1b 主流出口
2,2A,2B,2G 副流用流路
2a,2b 副流入口
2C,2D 副流溜め部
2E,2F 連通路
3 主流
4,4A,4B,4C 副流
5 微液滴
6
7 副流合体用流路
7a,7b,7d,7e 開口部
7c 上端部
8 パイプ
P1 ベースプレート
P2,P2A,P2B,P2C オリフィスプレート
P3 スペーサープレート
P4 カバープレート
P5 押さえプレート
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ化学プロセスにおいて使用される微細流路構造を持つ「マイクロリアクター」や、さらにその機能を集積した「Lab−on−a−Chip」、マイクロ分析システムに使用される「μ−TAS(Micro Total Analysis Systemの略)」の機能に関し、特には、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを任意の断面形状で生成する「マイクロリアクター」、「μ−TAS」、「Lab−on−a−Chip」に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品や化粧品、さらには食品の分野においては近年、マイクロリアクター等を利用して単成分の微液滴やマイクロカプセルを生成する研究が進められており、このようにマイクロリアクター等を利用して単成分の微液滴やマイクロカプセルを生成する方法としては、例えば「交差流路を用いる方法」(特許文献1参照)や「微小孔噴出方法」等が提案されている。
【0003】
交差流路を用いる方法としては例えば、図13(a)に示す如き、T字型交差流路を用いるものや、図13(b)に示す如き、Y字型交差流路を用いるもの、そして図13(c)に示す如き、フォーク状交差流路を用いるものが知られており、T字型交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とがT字型に交差した流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するものである。
【0004】
また、Y字型交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とがY字型に交差した流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、T字型と比較すると微液滴形状の安定性が低い。
【0005】
さらに、フォーク状交差流路を用いる方法は、パイプまたは溝を利用して主流用流路1と副流用流路2とが三股のフォーク状に交差した流路を形成し、両外側の主流用流路1に主流3を通すとともに中央の副流用流路2に副流4を通して、副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、Y字型と比較すると微液滴形状の安定性が改善されている。
【0006】
一方、微小孔噴出方法は、例えば図14に示す如き、主流用流路1と副流用流路2とが並行していて、主流用流路1に副流用流路2の端部が微小孔6を介して連通した構造の流路を形成し、主流用流路1に主流3を通すとともに副流用流路2に副流4を通して、微小孔6から主流3内に噴出する副流4を主流3で断続的に引きちぎるようにして微液滴5やマイクロカプセルを生成するもので、微小孔6を多数設けることで微液滴やマイクロカプセルを量産することができる。
【特許文献1】特開2006−051410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこれら「交差流路を用いる方法」や「微小孔噴出方法」では単成分の微液滴しか生成できず、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成する方法は未だ提案されていない。
【0008】
複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成することが可能になれば、微液滴やマイクロカプセルの機能(例えばDDS(ドラッグデリバリーシステム)の徐効性や複合機能等)を飛躍的に向上させることが可能であり、将来、薬品、化粧品、食品等の分野で不可欠な技術となると予測される。
【0009】
それゆえこの発明は、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で多量に生成することが可能なマイクロリアクターの構造を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決するものであり、この発明のマイクロリアクターは、主流用流路と、複数本の副流用流路と、少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部が前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部が前記主流用流路に連通する副流合体用流路と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる構成にあっては、副流合体用流路の少なくとも一端部の開口部を含む複数の開口部を介して複数本の副流用流路から副流合体用流路に流入した複数成分の副流が、それらの開口部の配置に応じた構成や構造で合体して副流合体用流路の他端部から主流用通路の主流内に流入し、主流で断続的に引きちぎられることで、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルが生成される。
【0012】
従ってこの発明のマイクロリアクターによれば、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で生成することができるとともに、その副流合体用流路を多数設けることで容易に、上記複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)は、この発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す縦断面図、図1(b)は、図1(a)中のA−A線に沿う断面図であり、図中符号1は主流用流路、2A,2Bは副流用流路、3は主流、4A,4Bは副流、5は微液滴をそれぞれ示す。
【0014】
この実施形態のマイクロリアクターは、SBS(サイドバイサイド)型の微液滴を生成するためのもので、互いに重ねられて固定されたベースプレートP1,オリフィスプレートP2,スペーサープレートP3,カバープレートP4の四枚のプレートを具えており、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の図では上面に図では紙面と直角方向に互いに並行して延在するよう形成されてオリフィスプレートP2で蓋をされた二本の溝によって二本の副流用流路2A,2Bが設けられている。
【0015】
オリフィスプレートP2には、そのオリフィスプレートP2の図1(a)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、図1(a)では紙面と直角方向に並んだ複数本(図では四本)の副流合体用流路7が設けられ、ここで、各副流合体用流路7の下端部は二本の副流用流路2A,2Bに跨るように拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに横並びに位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7a,7bを有している。
【0016】
スペーサープレートP3には、図1(a)では紙面と直角方向の中央部に図1(a)では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2とカバープレートP4とにより上下を蓋された空間により一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。
【0017】
かかる実施形態のマイクロリアクターにあっては、図中矢印で示すように、二本の副流用流路2A,2Bの端部にそれぞれ設けられた副流入口2a,2bから互いに成分が異なる副流4A,4Bが二本の副流用流路2A,2Bに流入すると、それらの副流4A,4Bが副流用流路2A,2Bから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7a,7bを介して流入し合体して平行流となり、各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図1(c)に示すように、二成分で構成されるSBS型の微液滴5が生成される。なお、ここでは副流合体用流路7が複数本(図では四本)並んでいるので、同時に複数個(図示例では四個)ずつ微液滴5が生成される。
【0018】
従って、この実施形態のマイクロリアクターによれば、二成分で構成されるSBS型の微液滴5を多量に生成することができる。
【0019】
図2(a)は、上記実施形態の一変形例を示す縦断面図、図2(b)は、図2(a)中のB−B線に沿う断面図であり、図中、先の実施形態と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0020】
この変形例のマイクロリアクターは、副流用流路2A,2Bが交互に四本ずつ設けられて、二本の副流用流路2A,2Bの組が七組作られ、各組に対して五本または四本ずつ副流合体用流路7が設けられることで、合計三十二本の副流合体用流路7が並べられて設けられている点のみ先の実施形態と異なっており、他の点では同様に構成されている。
【0021】
この変形例のマイクロリアクターによれば、図2(c)に示すように、二成分で構成されるSBS型の微液滴5が三十二個同時に生成されるので、微液滴5をより多量に生成することができる。
【0022】
図3(a)は、この発明のマイクロリアクターの他の一実施形態を示す縦断面図、図3(b)は、図3(a)中のC−C線に沿う断面図、図3(c)は、図3(a)中のD−D線に沿う断面図であり、図中、先の実施形態と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0023】
この実施形態のマイクロリアクターは、SC(シース/コア)型の微液滴を生成するためのもので、互いに重ねられて固定されたベースプレートP1,二枚のオリフィスプレートP2A,P2B,スペーサープレートP3,カバープレートP4の五枚のプレートを具えており、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の図では上面に図では左端から中央部にかけて延在するよう形成されてオリフィスプレートP2Bで蓋をされた溝によって扇状に広がる副流用流路2Bおよび矩形の副流溜め部2Cが設けられている。
【0024】
二枚のオリフィスプレートP2A,P2Bのうち下側のオリフィスプレートP2Bには、そのオリフィスプレートP2Bの図3(a)では上面に同図では右端から中央部にかけて延在するよう形成されてオリフィスプレートP2Aで蓋をされた溝によって扇状に広がる副流用流路2Aおよび矩形の副流溜め部2Dが設けられている。また、このオリフィスプレートP2Bには、そのオリフィスプレートP2Bを図3(a)では上下方向に貫通する貫通孔によって、各々ベースプレートP1の副流溜め部2Cに開口する下端部と当該オリフィスプレートP2Bの副流溜め部2Dに開口する上端部とを有して当該オリフィスプレートP2Bの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の連通路2Eが設けられており、各連通路2Eの上端部は縮径されている。
【0025】
二枚のオリフィスプレートP2A,P2Bのうち上側のオリフィスプレートP2Aには、そのオリフィスプレートP2Aの図3(a)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、当該オリフィスプレートP2Aの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の副流合体用流路7が設けられ、これらの副流合体用流路7は、図3(d)にその一本分を示すように、オリフィスプレートP2Bの左右方向および奥行き方向に並んだ複数本(図では十二本)の連通路2Eと、図3(a)では上下方向にそれぞれ整列して互いに同心に位置している。そして、各副流合体用流路7の下端部は拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに同心に位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7d,7eを有している。
【0026】
スペーサープレートP3には、図3(a)では紙面と直角方向の中央部に図3(a)では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2AとカバープレートP4とにより上下を蓋された空間により一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。
【0027】
かかる実施形態のマイクロリアクターにあっては、図中矢印で示すように、二本の副流用流路2A,2Bの端部にそれぞれ設けられた副流入口から互いに成分が異なる副流4A,4Bが二本の副流用流路2A,2Bに流入すると、副流4Aが副流用流路2Aを経て副流溜め部2Dから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7dを介して流入し、同時に副流4Bが副流用流路2Bを経て副流溜め部2Cから各連通路2Eを通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し合体して同心流となり、各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図3(f)に示すように、二成分で構成されるSC型の微液滴5またはマイクロカプセルが生成される。なお、ここでは副流合体用流路7が複数本(図では十二本)並んでいるので、同時に複数個(図示例では十二個)ずつ微液滴5やマイクロカプセルが生成される。
【0028】
従って、この実施形態のマイクロリアクターによれば、二成分で構成されるSC型の微液滴5またはマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【0029】
図3(e)は、上記実施形態の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図であり、この変形例では、オリフィスプレートP2Bの各連通路2Eの上端部にパイプ8が設けられて、そのパイプ8が各副流合体用流路7の上端部7c付近まで、同図では上下方向に延在しており、このパイプ8により副流Bを、各副流合体用流路7の上端部7c付近まで誘導することができるので、より正確な断面積比で副流4Aと副流4Bとを同心円状にして主流3内に吐出させることができる。
【0030】
図4(a)は、上記実施形態の他の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図であり、この変形例のマイクロリアクターは、SSC(シース/シース/コア)型の微液滴を生成するためのもので、三枚のオリフィスプレートP2A,P2B,P2Cを具える点が先の変形例と異なっており、他の点は同様に構成されている。ここで、オリフィスプレートP2A,P2Bは、図3(a)に示すものと同様に構成され、一番下のオリフィスプレートP2Cは、図3(e)に示すオリフィスプレートP2Bと同様に各連通路2Fの上端部にパイプ8が設けられている。
【0031】
かかる変形例のマイクロリアクターにあっては、三本の副流用流路2A,2B,2Cに互いに成分が異なる副流4A,4B,4Cが流入すると、副流4Aが副流用流路2Aから各副流合体用流路7内に下端部の開口部7dを介して流入し、同時に副流4Bが副流用流路2Bから各連通路2Eを通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し合体して同心流となり、さらに副流4Cが副流用流路2Gから各連通路2Fおよび各パイプ8を通り各副流合体用流路7内に下端部の開口部7eを介して流入し、先の同心流と合体して三重の同心流となり、それが各副流合体用流路7の上端部7cで絞られて主流用通路1の主流3内に吐出され、主流3で断続的に引きちぎられることで、図4(b)に示すように、三成分で構成されるSSC型の微液滴5またはマイクロカプセルが生成される。
【0032】
図5(a)〜(g)は、この発明のマイクロリアクターで生成し得る各種微液滴またはマイクロカプセルを例示する断面図であり、図5(a)は、図1および図2に示すマイクロリアクターが生成するサイドバイサイド(SBS)型の微液滴、図5(b)は、図3に示すマイクロリアクターが生成するシース/コア(SC)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(c)は、図3に示すマイクロリアクターが副流4Bとして液体やゲルの代わりに気体を用いて生成する中空シース(FS)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(d)は、図4に示すマイクロリアクターが生成する三成分によるシース/シース/コア(SSC)型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(e)は、図3に示すマイクロリアクターが下端部の中心に位置する開口部7eとして円形以外(図示例では十字状)の断面形状の開口部を有して生成する異形コア型の微液滴またはマイクロカプセル、図5(f)は、図3に示すと同様のマイクロリアクターが各副流合体用流路7の下端部に位置する開口部7eとして複数の開口部を分散して有して生成する海島(SI)型の微液滴またはマイクロカプセル、そして図5(g)は、図3に示すと同様のマイクロリアクターが各副流合体用流路7の下端部に位置する開口部7eとして複数のスリット状開口部を並べて有して生成する多重スリット型の微液滴である。
【0033】
次に、図1に示す実施形態のマイクロリアクターの具体的構成を示す一実施例を、図6〜図12に基づいて説明する。ここに、図6(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターを示す平面図および縦断面図、図7は、その実施例のマイクロリアクターの構成を示す分解斜視図であり、この実施例のマイクロリアクターは、各々ステンレス鋼製の厚板からなるベースプレートP1およびオリフィスプレートP2と、ステンレス鋼製の薄板からなるスペーサープレートP3と、ガラス板からなるカバープレートP4と、そのカバープレートP4を押さえるアルミニウム製の厚板からなる押さえプレートP5との五枚のプレートを具え、それらのプレートは、互いに重ねあわされて図示しない八本のボルトで互いに締結されている。
【0034】
図8(a),(b)は、上記ベースプレートP1を示す平面図および縦断面図、図8(c),(d)は、図8(a)中のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う断面図であり、この図8に示すように、ベースプレートP1には、そのベースプレートP1の上面に互いに並行して延在するよう形成されてオリフィスプレートP2で蓋をされる二本の溝によって二本の副流用流路2A,2Bが設けられる他、主流用流路1の主流入口1aおよび主流出口1bも設けられている。
【0035】
図9(a),(b)は、上記オリフィスプレートP2を示す平面図および縦断面図、図9(c),(d)は、図9(a),(b)中のA−A線に沿う断面およびB部を拡大して示す断面図、図9(e)は、図9(c),(d)に示す各副流合体用流路7の詳細図であり、この図9に示すように、オリフィスプレートP2には、そのオリフィスプレートP2の図9(b)では下面から上面まで貫通するよう形成された貫通孔によって、オリフィスプレートP2の幅方向に並んだ複数本(図では七本)の副流合体用流路7が設けられ、ここで、各副流合体用流路7の下端部は二本の副流用流路2A,2Bに跨るように拡径され、これにより各副流合体用流路7の下端部は、互いに横並びに位置して二本の副流用流路2A,2Bにそれぞれ連通する開口部7a,7bを有している。またオリフィスプレートP2の、図9(b)では上面には、スペーサープレートP3に設けられた後述の主流用流路1と重なって主流用流路1の下部を形成する、図では右下がりに僅かに深くなる浅い溝1と、ベースプレートP1の主流入口1aおよび主流出口1bにそれぞれ連通する貫通孔1とが設けられており(便宜上それらも符号1で示す)、その溝1は、副流合体用流路7の上端部7cの位置で途切れて、その位置で主流用流路1の厚さをスペーサープレートP3の厚さまで薄くしている。
【0036】
図10は、上記スペーサープレートP3を示す平面図であり、この図10に示すように、スペーサープレートP3には、その中央部に図10では左右方向へ延在するよう形成されてオリフィスプレートP2とカバープレートP4とにより上下を蓋される空間により、一本の扁平な主流用流路1が設けられ、各副流合体用流路7の上端部7cは縮径されて、その主流用流路1に連通している。なお、スペーサープレートP3の厚さは、例えば0.05mm、0.10mm、0.20mmのうちから選択することができる。
【0037】
図11は、上記カバープレートP4を示す平面図であり、この図11に示すようにカバープレートP4は、主流用流路1を観察できるよう全体に透明とされていて、ボルト孔だけが設けられている。
【0038】
図12は、上記押さえプレートP5を示す平面図であり、この図12に示すように押さえプレートP5は、主流用流路1を観察できるよう、概ね主流用流路1の全体に亘る抜き穴と、ボルト孔とが設けられている。
【0039】
かかる構成を具えるこの実施例のマイクロリアクターによれば、先の図1に示す実施形態と同様にして、二成分で構成されるSBS型の微液滴5を多量に生成することができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば各副流合体用流路の本数や配置は、適宜変更することができる。また、異形コア型の微液滴のコアの断面形状は図示のものに限られず、例えばY字型、T字型、三角形、四角形等であっても良い。そして、この発明のマイクロリアクターの適用対象の流体は、液体に限られず、例えば先の中空シース型の液滴またはマイクロカプセルの場合のように気体(反応用ガスや不活性ガス等)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくしてこの発明のマイクロリアクターによれば、複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを所望の構成や構造で生成することができるとともに、その副流合体用流路を多数設けることで容易に、上記複数成分で構成される微液滴やマイクロカプセルを多量に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は、この発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)中のA−A線に沿う断面図、(c)は、その実施形態のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図2】(a)は、上記実施形態の一変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)中のB−B線に沿う断面図、(c)は、その変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図3】(a)は、この発明のマイクロリアクターの他の一実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)中のC−C線に沿う断面図、(c)は、(a)中のD−D線に沿う断面図、(d)は、(a)中の一本の副流合体用流路を示す縦断面図、(e)は、上記実施形態の一変形例を示す、(d)と同様の位置での断面図、(f)は、上記実施形態およびその変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図4】(a)は、上記実施形態の他の一変形例を示す、図3(d)と同様の位置での断面図、(b)は、その変形例のマイクロリアクターが生成する微液滴を示す平面図である。
【図5】(a)〜(g)は、この発明のマイクロリアクターで生成し得る各種微液滴またはマイクロカプセルを例示する断面図である。
【図6】(a),(b)は、図1に示す実施形態を具体的に構成したマイクロリアクターの一実施例を示す平面図および縦断面図である。
【図7】上記実施例のマイクロリアクターの構成を示す分解斜視図である。
【図8】(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターのベースプレートを示す平面図および縦断面図、(c),(d)は、(a)中のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う断面図である。
【図9】(a),(b)は、上記実施例のマイクロリアクターのオリフィスプレートを示す平面図および縦断面図、(c),(d)は、(a),(b)中のA−A線に沿う断面およびB部を拡大して示す断面図、(e)は、(c),(d)に示す各副流合体用流路の詳細図である。
【図10】上記実施例のマイクロリアクターのスペーサープレートを示す平面図である。
【図11】上記実施例のマイクロリアクターのカバープレートを示す平面図である。
【図12】上記実施例のマイクロリアクターの押さえプレートを示す平面図である。
【図13】(a),(b),(c)は、従来の微液滴を作る方法のうち、T字交差流路を用いる方法、Y字交差流路を用いる方法、フォーク状交差流路を用いる方法をそれぞれ示す説明図である。
【図14】は、従来の微液滴を作る方法のうち、微小孔噴出方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 主流用流路
1a 主流入口
1b 主流出口
2,2A,2B,2G 副流用流路
2a,2b 副流入口
2C,2D 副流溜め部
2E,2F 連通路
3 主流
4,4A,4B,4C 副流
5 微液滴
6
7 副流合体用流路
7a,7b,7d,7e 開口部
7c 上端部
8 パイプ
P1 ベースプレート
P2,P2A,P2B,P2C オリフィスプレート
P3 スペーサープレート
P4 カバープレート
P5 押さえプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流用流路と、
複数本の副流用流路と、
少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部が前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部が前記主流用流路に連通する副流合体用流路と、
を具えてなる、マイクロリアクター。
【請求項2】
前記複数の開口部は、前記副流合体用流路の前記一端部に互いに横並びに位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項3】
前記複数の開口部は、前記副流合体用流路の前記一端部に互いに同心に位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項4】
前記複数の開口部は、互いに同心に位置しており、
前記複数の開口部の少なくとも一つは、前記副流合体用流路の前記一端部に位置し、他の少なくとも一つは、前記一端部よりも前記他端部寄りに位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項5】
前記同心に位置する複数の開口部のうち中心に位置する開口部の断面形状は、円形以外の断面形状であることを特徴とする、請求項3または4記載のマイクロリアクター。
【請求項6】
前記複数の開口部は、互いに海島形に位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項1】
主流用流路と、
複数本の副流用流路と、
少なくとも一端部に位置する所定配置の複数の開口部が前記複数本の副流用流路に連通するとともに他端部が前記主流用流路に連通する副流合体用流路と、
を具えてなる、マイクロリアクター。
【請求項2】
前記複数の開口部は、前記副流合体用流路の前記一端部に互いに横並びに位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項3】
前記複数の開口部は、前記副流合体用流路の前記一端部に互いに同心に位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項4】
前記複数の開口部は、互いに同心に位置しており、
前記複数の開口部の少なくとも一つは、前記副流合体用流路の前記一端部に位置し、他の少なくとも一つは、前記一端部よりも前記他端部寄りに位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【請求項5】
前記同心に位置する複数の開口部のうち中心に位置する開口部の断面形状は、円形以外の断面形状であることを特徴とする、請求項3または4記載のマイクロリアクター。
【請求項6】
前記複数の開口部は、互いに海島形に位置していることを特徴とする、請求項1記載のマイクロリアクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−238146(P2008−238146A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86917(P2007−86917)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】
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