説明

マイクロリアクタ流体分配のための装置および方法

マイクロリアクタ(10)は、m個のプロセスユニット(102)に配列された複数の相互接続された微小構造(14,50,40)を備え、これらのプロセスユニット(102)は並列に一緒に動作可能なように構成されている。m個のプロセスユニット(102)の各々は、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)を有し、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のy個は、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプ(20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D)に個別に接続されており、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のn−y個は、マニホールド(80)を介して、それぞれのマニホールド化された流体ポンプ(20,22,24,26,28,30)に接続されており、yは1からn−1までの整数である。

【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、「マイクロリアクタ流体分配のための装置および方法」と題する2008年11月28日に出願された欧州特許出願第08305873.5号、および「マイクロリアクタ流体分配のための装置および方法」と題する2009年4月30日に出願された欧州特許出願第09305384.1号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本出願は、マイクロリアクタ内の流体分配のための装置および方法に関し、より詳しくは、特に、ガラス、セラミック、およびガラスセラミックからなる微小構造を使用したマイクロリアクタにおける、プロセス流体および熱制御流体の両方の所望の流れを提供するための装置および方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のある態様によれば、マイクロリアクタ(10)は、m個のプロセスユニット(102)に配列された複数の相互接続された微小構造(14,50,40)を備え、これらのプロセスユニット(102)は並列に一緒に動作可能なように構成されている。m個のプロセスユニット(102)の各々は、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)を有し、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のy個は、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプ(20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D)に個別に接続されており、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のn−y個は、マニホールド(80)を介して、それぞれのマニホールド化された流体ポンプ(20,22,24,26,28,30)に接続されており、yは1からn−1までの整数である。
【0004】
本発明の追加の変種および特徴は、図面と関連して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】層状マイクロ流体装置210の形態にある微小構造14の断面を示す断面図
【図2】図1の微小構造14の別の断面を示す断面図
【図3】ハニカム体形一体式マイクロ流体装置312の形態にある微小構造14の別の例の斜視図
【図4】流体接続されている、図3のものに似たハニカム体形マイクロ流体装置312の形態にある微小構造14の断面図
【図5】多数の多層マイクロ流体装置210の形態にある3つの一体式微小構造を備えた微小構造14の斜視図
【図6】2つの多層マイクロ流体装置210および1つのハニカム体形マイクロ流体装置312を備えたハイブリッドまたはコンビネーション式微小構造14の斜視図
【図7】多数の微小構造14を備えたマイクロリアクタ10の説明図
【図8】多数の微小構造14を備えた別のマイクロリアクタ10の説明図
【図9】熱制御流体およびプロセス流体の両方が流体接続されているのが示されている、図7のマイクロリアクタ10の説明図
【図10】本発明のある態様による、2つのプロセスユニット102を有し、熱制御流体Hの経路にマニホールド60を有する、マイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図
【図11】本発明の別の態様による、並列に配列された4つのプロセスユニット102を備えたマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図
【図12】図11の実施の形態に関連して、プロセス流体の異なる1つがマニホールド化されていないポンプにより押し出される、本発明の別の態様によるマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図
【図13】複数のプロセス流体マニホールド化されていないポンプにより押し出される本発明のさらに別の態様によるマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図
【図14】本発明のさらに別の態様によるマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の部分的な説明図
【図15】マニホールド化されていないポンプおよびマニホールド化されたポンプの内の一方または両方からの流れがモニタされるおよび/またはフィードバック制御される本発明のさらに別の態様によるマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0006】
同じまたは同様の部品を称するために、図面全体に亘り同じ参照番号ができる限り使用される。望ましいと記載された特徴は、好ましいが随意的であり、本発明の変種を表す。
【0007】
この文献において、「一体式微小構造」は、数ミリメートルまたはミリメートル未満の範囲に特徴的な断面寸法を有する内部通路を備えた、一体成形のまたは他の様式で一般に永久的に組み付けられたマイクロ流体装置を称する。一体式微小構造の例としては、その中に開示された方法または他の方法により製造されたか否かにかかわらず、「Microfluidic Device and Manufacture Thereof」と題する米国特許第7007709号に開示され記載されたものと類似の装置およびそれを含む装置が挙げられる。一体式微小構造は、その中に開示された方法または他の方法により製造されたか否かにかかわらず、「Extruded Body Devices and Methods for Fluid Processing」と題する国際公開第2008/121390号パンフレットに開示され記載されたものと類似の装置およびそれを含む装置も含む。「微小構造」は、流体分配のためのユニットとして処理されるまたは処理可能な、一体式および他の両方の微小構造および近接して接合または相互接続された微小構造の組合せを称する。「マイクロリアクタ」は、化学的または物理的プロセスもしくはそれらの組合せを実行するための装置を称し、この装置は、この文献の情況において、1つ以上の製造ユニットに配列された関連する流体接続部を有する2つ以上の微小構造を含む。「製造ユニット」は、微小構造に沿ったまたはそれを通る1つの主要通路に沿ったものであって、多数の微小構造を並列に通る多数の並列の主要通路に沿ってではない、所望の反応またはプロセスを実行できるように配列された関連する流体接続部を有する微小構造の組合せを称する。「フロー・バランス(flow balance)」または「フロー釣り合い(flow balancing)」は、単なる等しい流れではなく、多数の流体供給物の間でまたは中で任意の特定の所望の流動比を達成することに関する。
【0008】
図1は、本発明に使用できる一体式微小構造または一体式多層マイクロ流体装置210の形態にある微小構造14の一例の断面図である。マイクロ流体装置210は、図1の上部に示されているように多数の、一般に少なくとも4つの基板220から構成されてもよいが、図1の左端に付されているように、合計で「k」まで、所望であればより多くが含まれていてもよい。多数の基板220の各隣接する対の間で、多数の層230が、一般に少なくとも3つ、必要に応じて、図1の右端に付されているように合計でk−1の層までのより多くが存在するように、装置210の層230が画成される。基板220は、互いに接合され、壁234(見易くするために、全てに付されていない)により互いに対して支持されており、その内のいくつかが、平行斜線により示されるように、図の断面により切断されている。1つ以上の基板220を通って延在してもよい入口穴264と出口穴265は、1つ以上の層230内またはそれを通って、この場合には層230の内の2つの層232を通って、画成された熱制御流体通路240への外部アクセスを提供する。所望であれば、穴264の代わりにまたはそれに加え、壁234を通る穴または間隙(図示せず)などによる、代わりのアクセス経路を使用してもよい。
【0009】
図2は、図1の面とは異なる平行な面でとられた、図1の微小構造14またはマイクロ流体装置210の別の断面である。図2の断面において、この装置の1つ以上の層230を通じて、この場合には1つの層231を通じて画成されたプロセス流体通路250への、基板220を通るアクセスを提供する入口穴282と出口穴283が見える。プロセス流体通路250は、1つ以上の追加の入口ポートまたは穴282(図1および2に示されていない断面において)を備え、よって2種類以上のプロセス流体を、プロセス流体通路250内で一緒に接触および/または混合および/または反応させることができる。所望であれば、プロセス流体通路250の出口端に複数の出口ポートまたは穴283を設け、それによって、装置210を出る際にプロセス流体を分割してもよい。
【0010】
ワンピースとして同時に壁と基板を製造する方法を含む、様々な材料および方法を使用して、図1および2に示されたタイプの微小構造14またはマイクロ流体装置210を形成してもよい。追加の方法の例としては、「Method for Making Microfluidic Devices and Devices Produced Thereof」と題する欧州特許第1964817号、および「Powder Injection Molding of Glass and Glass-ceramics」と題する米国特許出願公開第2007/0154666号の各明細書に開示され記載されたものが挙げられる。
【0011】
図3は、ハニカム体形一体式マイクロ流体装置312の形態にある、本発明の情況において使用できる微小構造14の別の例の斜視図である。
【0012】
マイクロ流体装置312はハニカム体320を備えている。ハニカム体320は、壁382により分割された、ハニカム体320の第1の端部332から第2の端部334まで共通方向に平行に延在するセル323を有する。セル323は、ハニカム体の両端で開いた第1の複数のセル322および、1つ以上の栓326により、またはハニカム体の端部かその近くに、必要に応じてセル324内の少なくとも部分的に配置された多かれ少なかれ連続した施栓材料326により、もしくは他の適切な手段により、ハニカム体の一端でまたは両端で閉じられた第2の複数のセル324を含む。第2の複数のセル324(閉じられたセル)は、少なくとも一部に、ハニカム体320を通って延在する1つ以上の通路328を含む。通路328は、図3に示されるような、セル323の共通方向に垂直な面で考えたときに、蛇行形状を有していてよいが、他の通路形状を使用してもよい。所望であれば、ハニカム体320当たり複数の通路328を使用してもよい。
【0013】
図4は、図3のものと似ているが、図示されたタイプの流体接続を備えた、マイクロ流体装置312の形態にあるハニカム体形微小構造14の断面図である。図4において、流体ハウジング340は、シール342によりハニカム体320を支持している。熱制御流体のために典型的に使用される通路348は、ハウジング340と共同して、ハニカム体320の開いたチャンネル322の全てを通って平行に形成されている。ハニカム体320内の通路328は、シール343を通じて導管360を介してアクセスされる。図4の断面に示されるように、ハニカム体320内の通路328は、セル323の共通方向に対して平行な面において蛇行していてよいが、他の通路形状を使用してもよい。
【0014】
ハニカム体320は、耐久性および化学的不活性のために、押出ガラス、ガラスセラミック、またはセラミック材料から形成されることが望ましい。アルミナセラミックは、ガラスおよびある種のセラミックよりも高い熱伝導率、良好な強度、良好な不活性を有するので一般に好ましい。本発明の発明者および/または発明者の同僚により開発された一般材料および製造手法に関するより詳しい詳細は、上述した国際公開第2008/121390号パンフレットに見られるであろう。
【0015】
図1〜4に示されたものなどの一体式微小構造を組み合わせて、図5および6に示されるようなハイブリッドまたはコンビネーション式微小構造を形成してもよい。図5は、任意の適切な手段によって物理的かつ流体的に互いに接続された、多層マイクロ流体装置210の形態にある3つの一体式微小構造を含む微小構造14を示している。図6は、2つの多層マイクロ流体装置210および1つのハニカム体式マイクロ流体装置312を含む、ハイブリッドまたはコンビネーション式微小構造14を示している。
【0016】
マイクロ反応技術の分野では理解されるように、マイクロリアクタ技術の多くの望ましい用途について、所定の組の微小構造内またはその中を通る1つの主要通路を有する1つの製造ユニット内で達成できる製造速度は、工業目的にとっては不十分であろう。このことは、問題の微小構造で、流路における「内部ナンバリング・アップ(internal numbering up)」または内部の並列化として知られることを利用する場合でさえ、当てはまるであろう。この理由のために、並列の微小構造の多数の製造ユニットを動作する、すなわち時々「外部ナンバリング・アップ(external numbering up)」と呼ばれることを使用することが望ましい。
【0017】
本発明の発明者等および/またはその同僚により開発された、流体微小構造のための取付および相互接続システムの一例が、本発明の譲受人に譲渡された欧州特許第1854543号明細書に見られるであろう。微小構造を直列と並列に、直列と並列の構成の組合せで接続することによって、様々なマイクロリアクタ構造を形成するために、そのようなシステムまたは任意の他の適切な手段を使用してもよい。
【0018】
多くのプロセスに関して、プロセス流体および熱制御流体の多数の流れを各製造ユニットに供給するための多数のポンプを含む、製造ユニットの全ての部品を複製することによって、外部ナンバリング・アップを達成することは、十分に経済的ではない。このことは、図7〜9に示されたマイクロリアクタ10から認識されるであろう。これらの図の各々は、1つのプロセスユニット102または1つのプロセスユニット102の一部を一緒に形成する微小構造14の相互接続された網目構造12からなるマイクロリアクタ10の例を示している。
【0019】
実質的に無限の可能性のある構成の中でも、マイクロリアクタ10の2つの構成の説明図が、微小構造14の相互接続された網目構造12の形態で、図7および8に示されている。各微小構造14は、必須ではないが典型的に、その中にプロセス流体通路または熱制御流体通路の両方を含み、それゆえ、1つ以上のプロセス流体供給と、典型的に1つの(しかしことになるとそれより多くの)熱制御流体供給が提供される。図7および8において、プロセス流体供給のみ、すなわちプロセス流体A〜Fの供給のみが示されている。熱制御流体供給は、見易くするために、図7および8においては省かれている。
【0020】
微小構造14は、混合または接触微小構造などの、2つ以上のプロセス流体入力を有する微小構造40、および熱制御または滞留時間または触媒反応微小構造などの唯一のプロセス流体入力を有する微小構造50、もしくはプロセス流体入力と出力の様々な組合せを有する様々な他の微小構造のいずれの形態をとってもよい。図7に示された実施の形態において、プロセス流体Aはポンプ20により、プロセス流体Bはポンプ22により、流体が組み合わされ混合される、第1の微小構造40に直接、送り込まれる。プロセス流体Cはポンプ24により、流体が、第2の微小構造40に入る前に予熱または予冷されて、混合流体AとBの混合物または生成物と組み合わされ混合される微小構造50を通して送り込まれる。連続したプロセス流体D,EおよびFは同様にポンプ26,28および30によって加えられ、得られた流体生成物が出力Oで供給される。
【0021】
図8のマイクロリアクタは、プロセス流体D,EおよびFの各々の追加の最初の組合せと混合後、プロセス流体流が、追加の滞留時間および熱制御能力を提供するそれぞれの熱微小構造50を通過するように、マイクロリアクタが配列されていることを除いて、図7のものと同一であり、同様に動作するであろう。
【0022】
図9は図7のマイクロリアクタ10を示しているが、熱制御流体供給が加えられている。2種類以上の熱制御流体を使用してもよい。この実施の形態において、2種類の熱制御流体GおよびHが使用され、マイクロリアクタ10のそれぞれの関連する部分において、2つの異なる温度に到達または維持することができる。熱制御流体Gは、微小構造50を通じてポンプ32により送り込まれ、流体戻りRGに排出され、ここで、流体は、所望であれば、任意の必要な加熱または冷却後に、同じループを通じて再循環してもよい。熱制御流体Hは、ポンプ34により送り込まれるが、分岐62を有するマニホールド60を介して、5つの微小構造40に並列に供給される。収集マニホールド70は、熱制御流体Hを収集し、流体戻りRHで戻す。効率、コスト、および信頼性の観点から、熱制御流体のそのような並列供給が、可能であれば、望ましい。
【0023】
熱制御流体が、図9におけるポンプ34などにより、並列に供給される場合、そのように供給される各微小構造40は、熱制御流体の必要な量の流体を受け取るべきである。熱制御流体の流れが不適切であると、反応の制御が不十分になるか、または制御不能状態に至ることもある。
【0024】
図9のマイクロリアクタ10は、1つのプロセスユニット102のみ、すなわち、多数の微小構造内またはそれを通る1つの主要プロセス通路、多数の主要プロセス通路を形成するように並列に微小構造が使用されていないプロセス通路を有するマイクロリアクタを構成する。図9のマイクロリアクタにおいて、1つのプロセスユニット102は、6種類のプロセス流体供給A〜Fおよび2種類の熱制御流体供給GとHを有する。実行すべき反応に応じて、より多くのプロセス流体供給、より多くの熱制御流体供給、および/または微小構造14のより複雑な網目構造12が必要とされるかもしれない。
【0025】
図9から(また熱制御流体供給が省かれている図8から)、1つのプロセスユニット102のみからなるマイクロリアクタ10がかなり複雑になり得ることが認識されるであろう。それにもかかわらず、要求されるであろう高い生産量を満たすために、多数のプロセスユニット102が並列で動作することが望ましい。プロセスユニット102全体を並列に複製することが可能であるが、様々な流体接続および流体取扱構成要素により、特にポンプにより、コストが嵩み、多数のプロセスユニットに亘り図9の8個のポンプを複製することは、多くのプロセスにとってひどく高価であろう。したがって、可能な程度まで、各供給について、1つのポンプから並列に多数のプロセスユニット102を動作することが望ましい。
【0026】
このために、多数のプロセスユニット102が使用される場合、所望であれば、図10の実施の形態に示されるように、各プロセスユニット内で多数の微小構造40,50に亘りマニホールド化されることに加え、熱制御流体供給を多数のプロセスユニットに亘りマニホールド化してもよい。
【0027】
図10のマイクロリアクタ10は、並列に動作するように構成された、1および2とふられた2つのプロセスユニット102を備えている。重ねて、プロセス流体供給は、見易いように省かれている。マイクロリアクタ10は、2つの熱制御流体ポンプ32,34を備えており、この場合、各々は、それぞれの熱制御流体マニホールド60を介して接続されており、その一方はさらに、サブマニホールド60Aと60Bを備えている。マニホールド60(およびサブマニホールド60A,60B)の各々は、複数の相互接続された微小構造40,50の2つ以上に熱制御流体を提供する。熱制御流体サブマニホールド60Aと60Bの各々は、分岐62を備えている。
【0028】
図1および2の微小構造内の通路240、または図3および4の微小構造内の通路348、および図5および6の微小構造内の通路の組合せなどの、熱制御通路、すなわち個々の微小構造40および50の内部の通路は、比較的低い流動抵抗を有し、所定のマイクロリアクタ内で熱制御流体の比較的多い流量を可能にすることが望ましい。
【0029】
流動抵抗は低いことが望ましいが、層232は、熱制御流体が流れている間に形成されるどの境界層も薄く、良好な伝熱能力を維持するように、一般に0.2から3mmの範囲の、望ましくは0.2から1.5mmの範囲の、より望ましくは0.5から1.0mmの、低い高さ233のものであることも望ましい。望ましい低い流動抵抗は、1から10mm、望ましくは2から5mmの、またはより望ましくは3から5mmの範囲の直径を有する、図1および2の出口穴265によって、大半は達成されるであろう。プロセス流体通路250も大きくはなく、望ましくは0.1から2mmの範囲の通路高さ235を有し、プロセス流体通路250は、略平面の容積または層231内にある。熱制御流体層232は、出口穴265と同じ範囲にある直径を有する入口穴264を有するであろう。
【0030】
伝熱率を最大にしなければならない場合、熱流体通路の高さ233(層232の高さ)は、例えば、0.5〜1.0mmの範囲のように、低く維持すべきである。伝熱率がそれほど重要ではない場合、高さ233は、層232内の通路240の流動抵抗を低くするために、増加させても差し支えない。高さ233においてある程度の融通性が利用できるか否かにかかわらず、入口ポートと出口ポートの直径が、このタイプの微小構造に関する以前の作業に対して増加され、それゆえ、高い伝熱率が要求される場合でさえも、低い流動抵抗の所望の恩恵を提供する。
【0031】
ここに開示されたような、比較的大きい直径のポートまたは穴264,265にもかかわらず、入口および出口ポートまたは穴264,265は、開口の小さな以前の装置に対して、応力の著しい増加を、またはわずかな減少も経験せず、それゆえ、以前に達成されたのと少なくとも同じ圧力抵抗能力を提供する。入口および出口ポートまたは穴のそのような拡大された直径は、所望であれば、プロセス流体通路において適用してもよく、すなわち、入口および出口ポートまたは穴282および283は、1から10mm、望ましくは2から5mm、またはより望ましくは3から5mmの範囲にあり、プロセス流体通路250内で少なくとも同じ圧力抵抗により減少した流動抵抗を可能にすることが望ましい。
【0032】
図10のものと似たマイクロリアクタにおいて、熱制御流体に要求されるポンプの数を減少させることに加え、プロセス流体に要求されるポンプの数も減少させることも望ましい。化学量論における小さな変化に対する多くの反応の感受性のために、プロセス流体の流体釣り合わせは重要であり得る。
【0033】
図11は、本発明によるマイクロリアクタ10の別の実施の形態を示している。図11のマイクロリアクタ10は、並列に配列され、1〜4とふられた4つのプロセスユニット102を備えている。プロセス流体供給ラインのみが示されている。熱制御流体供給ラインは、見易くするために省かれている。
【0034】
図11の実施の形態において、プロセス流体供給B〜Fの全ては、4つのプロセスユニット102に亘り接続されているそれぞれのマニホールド化されたポンプ22〜30により送り込まれる。流体バランスは、各プロセスユニット102について1つの、マニホールド化されていないポンプ20A〜20Dにより送り込まれる1つのプロセス流体、この場合には、プロセス流体Aを有することによって、大幅に維持される。プロセス流体の流れの内の1つを理想流量で強制的に送り込むことにより、また絞りの少ないマニホールド80を使用することにより、各プロセスユニット102内の下流のばらつきが抑制される。本当に最初のまたはヘッド側のプロセス流体、図面においてはプロセス流体Aは、この場合におけるように、強制されるものである、または以下に説明される図13におけるように、強制されるものの内の少なくとも1つであることが望ましい。言い換えれば、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプに個別に接続されたプロセス流体入口(104)は、ヘッド側のプロセス流体Aのための入口(104)であることが望ましい。
【0035】
図11の実施の形態の代わりとして、図12に示されるように、マニホールド化されていないポンプによって、プロセス流体の内の異なるものを強制的に送り込んでもよい。例えば、特に少ない流量のプロセス流体の流れを強制的に送り込んでも、または反応能力の変動を最大にする、またはそうでなければ所望の結果への作用を最大にする流体の流れを強制的に送り込んでもよい。例えば、流体Bが流体Aよりも少ない流動要件を有する場合、図12のマイクロリアクタ10を使用して、流体Bの導入の厳格な制御を提供することが望ましいであろう。そのように使用される図12のリアクタにおいて、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプに個別に接続されたプロセス流体入口(104)は、流体Aのものよりもは少ない流動要件を有することが望ましいプロセス流体Bの入口(104)である。マニホールド化されていないポンプに接続された流体Bの入口は、そのように接続された唯一の入口であってよく、または別の代替例として、図13のマイクロリアクタ10に示されるように、プロセス流体の2つ以上が強制的に送り込まれる。そのマイクロリアクタ10において、プロセス流体A(ヘッド側流体)およびB(ある望ましい代替例の場合において、より少ない流れの流体)の両方は、それぞれのマニホールド化されていないポンプ20A〜20Dおよび22A〜22Dによって強制的に送り込まれる。他の組合せも、もちろん可能である。
【0036】
図14は、合計でm個のプロセスユニット102を含む、本発明によるマイクロリアクタ10の部分説明図を示している。マイクロリアクタ10は、m個のプロセスユニット102に配列された複数の相互接続された微小構造14(左側にふられたようにこの図面では行として見える)を含み、これらプロセスユニット102は、並列で一緒に動作可能に構成されており、m個のプロセスユニットの各々は、それぞれn個のプロセス流体入口104(上部にふられた列として図面に配列されている)を有する。この図面は行と列で示されているが、この配列は、本発明による構成部材の実際の物理的レイアウトと関係ある必要はほとんどないことに留意されたい。例えば、プロセスユニット102は、直線または一本鎖または行で配列されている必要はない。重要であることは、ここに記載され、図面の助けにより理解された関係が適用できることである。各プロセスユニット102について、n個のそれぞれのプロセス流体入口104の内のy個は、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプに個別に接続されている(見易くするために示されていない)。この特別な場合において、プロセス流体入口の内の3つ、図14の左側のプロセス流体A,BおよびCの入口は、マニホールド化されていないポンプ(Aについて20A〜20D、BとCについては示されていない)に個別に接続されている。n個のそれぞれのプロセス流体入口104のn−y個、プロセス流体EとFの、この場合の図面の右側の少なくとも2つは、マニホールド80を介して、それぞれのマニホールド化された流体ポンプ28,30に接続されており、yは1からn−1までの整数である。それぞれのマニホールド化された流体ポンプから関連するマニホールド80に沿って関連する微小構造14までの流動抵抗は、関連する微小構造14を通る関連するプロセス流体通路150の流動抵抗よりも小さいことが望ましく、または言い換えれば、マニホールド80は、関連する微小構造に対して抵抗が低いマニホールドであることが望ましい。個々のポンプの数を最小にすることも望ましく、よって、yは、たった1または2であることが望ましく、実行すべき所望の反応を適切な制御するのに必要なほど多いだけである。最終的な結果は、全ての微小構造への全ての供給について個々の供給ラインおよびポンプを必要とせずに、外的に数が増加したマイクロリアクタ内で非常に複雑で敏感な反応を実行するために、ガラス、ガラスセラミックおよびセラミック材料からなる微小構造を含む微小構造を使用できることである。
【0037】
図15は、本発明のさらに別の態様によるマイクロリアクタまたはマイクロリアクタの一部の説明図であり、マニホールド化されていないポンプおよび/またはマニホールド化されたポンプの一方または両方からの流れがモニタされるおよび/またはフィードバック制御される。マニホールド化されたポンプからの流れを分割するための厳密に受動的な流れ分割が、要求されるフロー・バランスを維持するのに不十分な場合、1つ以上のマニホールド化されたポンプの出力をモニタするために、適切なタイプの1つ以上の流れモニタ142を使用してもよい。これらの例としては、積極的な転移フローメータ144、または望ましくはロタメータ146が挙げられる。このメータの出力はオペレータによりモニタされてもよく、オペレータは、マイクロリアクタのフロー・バランスを調整するために手動弁162を調節してよい。あるいは、制御システムコンピュータ、工場生産制御システム、マイクロプロセッサまたは同様の装置110が、フロー情報リンク140を介して、フロー情報を受信し、弁制御リンク160を介して、自動制御弁164の調節において受信した情報を利用してもよい。前記制御システムコンピュータ、工場生産制御システム、マイクロプロセッサまたは同様の装置110は、プロセス情報リンク150を介して、個々の微小構造またはそれに関連するセンサから様々な入力も受信し、ポンプ制御リンク170を介して、ポンプ20Dなどのマニホールド化されていないポンプの流量を自動的に調節してもよい。そのようなリンクは配線接続されている必要はないことが理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0038】
ここに開示された使用方法および/または装置は、一般に、微小構造内での、混合、分離、抽出、結晶化、沈殿、または流体の多相混合物を含む流体または流体の混合物、および固体も含有する流体の多相混合物を含む流体または流体の混合物の他の様式での処理を含む任意のプロセスを実行するのに有用である。処理としては、物理プロセス、有機、無機、または有機と無機両方の種の相互変換が生じるプロセスと定義される化学反応、生化学プロセス、または任意の他の処理の形態が挙げられるであろう。開示された方法および/または装置により、反応の以下の非限定的リストを実行してよい:酸化;還元;置換;脱離;付加;配位子交換;金属交換;およびイオン交換。より詳しくは、開示された方法および/または装置により、以下の非限定的リストのいずれの反応を実行してもよい:重合;アルキル化;脱アルキル化;ニトロ化;過酸化;スルホ酸化;エポキシ化;アンモ酸化;水素化;脱水素化;有機金属反応;貴金属化学反応/均一系触媒反応;カルボニル化;チオカルボニル化;アルコキシル化;ハロゲン化;脱ハロゲン化水素;脱ハロゲン化;ヒドロホルミル化;カルボキシル化;脱カルボキシル化;アミノ化;ペプチド結合;アルドール縮合;縮合環化;脱水素環化;エステル化;アミド化;複素環合成;脱水;加アルコール分解;加水分解;アンモニア分解;エーテル化;酵素的合成;ケタール化;鹸化;異性化;四級化;ホルミル化;相転移反応;シリル化;ニトリル合成;ホスホリル化;オゾン分解;アジド化学反応;音位転移;ヒドロシリル化;カップリング反応;および酵素反応。
【符号の説明】
【0039】
10 マイクロリアクタ
14,40,50 微小構造
20,22,24,26,28,30 マニホールド化された流体ポンプ
20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D マニホールド化されていない流体ポンプ
32,34 熱制御流体ポンプ
80 マニホールド
102 プロセスユニット
104 プロセス流体入口
142,144,146 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
m個のプロセスユニット(102)に配列された複数の相互接続された微小構造(14,50,40)を備えたマイクロリアクタ(10)であって、前記プロセスユニット(102)は並列に一緒に動作可能なように構成されており、前記m個のプロセスユニット(102)の各々は、n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)を有し、該n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のy個は、それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプ(20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D)に個別に接続されており、前記n個のそれぞれのプロセス流体入口(104)の内のn−y個は、マニホールド(80)を介して、それぞれのマニホールド化された流体ポンプ(20,22,24,26,28,30)に接続されており、yは1からn−1までの整数であることを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記それぞれのマニホールド化された流体ポンプから関連する前記マニホールド(80)に沿って関連する微小構造(14,40,50)までの流動抵抗が、関連するプロセス流体通路(250,328)の関連する前記微小構造(14,40,50)を通る流動抵抗よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記マイクロリアクタ(10)が、熱制御流体マニホールド(60,60A,60B)を介して前記複数の相互接続された微小構造(14,40,50)の内の2つ以上に接続された少なくとも1つの熱制御流体ポンプ(32,34)を備えることを特徴とする請求項1または2記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
前記複数の相互接続された微小構造(14,40,50)の内の2つ以上が、1から10mmの範囲の直径を有する熱制御流体の出口穴(265)を含むことを特徴とする請求項3記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
前記複数の相互接続された微小構造(14,40,50)の内の2つ以上が、2から5mmの範囲の直径を有する熱制御流体の出口穴(265)を含むことを特徴とする請求項4記載のマイクロリアクタ。
【請求項6】
前記複数の相互接続された微小構造(14,40,50)の内の2つ以上が、2から5mmの範囲の直径を有する熱制御流体の入口穴(264)を含むことを特徴とする請求項4または5記載のマイクロリアクタ。
【請求項7】
前記微小構造(14,40,50)が、ガラス、セラミック、およびガラスセラミックの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項8】
前記微小構造(14,40,50)が、少なくとも1つの多層マイクロ流体装置(210)を含むことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項9】
前記微小構造(14,40,50)が、少なくとも1つのハニカム体形マイクロ流体装置(312)を含むことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項10】
yが2であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項11】
yが1であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項12】
前記それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプ(20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D)に個別に接続されたプロセス流体入口(104)がヘッド側流体(A)の入口(104)であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項13】
前記それぞれのマニホールド化されていない流体ポンプ(20A,20B,20C,20D;22A,22B,22C,22D;24A,24B,24C,24D)に個別に接続されたプロセス流体入口(104)が、ヘッド側流体(A)の入口(104)より低い流れ要件を有する流体(B)の入口(104)であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項14】
前記それぞれのマニホールド化された流体ポンプ(20,22,24,26,28,30)の出口における流量をモニタするための1つ以上の流量計(142,144,146)をさらに含むことを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載のマイクロリアクタ。
【請求項15】
マイクロリアクタのフロー・バランスを調整する方法において、
請求項1から14いずれか1項記載のマイクロリアクタを提供する工程であって、該マイクロリアクタが、1つ以上の流量計142および1つ以上の手動弁162をさらに備えるものである工程、
前記1つ以上の流量計142をモニタする工程、および
前記1つ以上の手動弁162を調節して、前記マイクロリアクタのフロー・バランスを調整する工程、
を有してなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−510360(P2012−510360A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538664(P2011−538664)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065650
【国際公開番号】WO2010/062882
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】