説明

マイクロレンズアレイ成形型の作製方法およびマイクロレンズアレイ成形型

【課題】マイクロレンズアレイ成形型の作製コストを削減することができると共に、マイクロレンズアレイ成形型によって成形されるマイクロレンズアレイの精度を向上させる。
【解決手段】複数のレンズ部16を有するマイクロレンズアレイ15を成形するマイクロレンズアレイ成形型14の作製方法であって、マイクロレンズアレイ成形型14を構成する型基板11の平坦面11aに溝部12を形成する溝形成工程と、溝部12により区画形成される区画平面11bにレンズ部16を成形するための凹状のレンズ型部13を形成するレンズ型部形成工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ成形型の作製方法およびマイクロレンズアレイ成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばイメージスキャナー等には、原稿からの反射光を集光し、光電変換素子に結像するためにマイクロレンズアレイが用いられている。特許文献1には、マイクロレンズアレイ成形用金型の作製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−277543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のマイクロレンズアレイ成形用金型の作製方法は、金型基板に凹部を形成する凹部形成工程と、凹部形成工程で形成された凹部周囲の隆起部を研磨により除去する研磨工程と、凹部形成工程で設けられた凹部に対してポンチを押し込むようにするレンズ型形成工程とを有するものである。特許文献1の作製方法のようにレンズ型形成工程の前に、凹部形成工程および研磨工程を行うことにより、レンズ型形成工程の際にポンチにより押しのけられて形成される金属隆起部をレンズに影響を与えない程度まで低減される。しかしながら、特許文献1の作製方法では、多数の工程を必要とするために、マイクロレンズアレイ成形用金型の作製に時間を要すると共に、マイクロレンズアレイ成形用金型のコストが上昇してしまうという問題がある。
【0005】
更に、本発明者らは、上述したようなポンチを所望のピッチで断続的に押し込むことによって各レンズ型を形成する作製方法では、特許文献1に開示されている問題点以外にも、レンズ型に影響を与える新たな問題点があることを見出した。すなわち、マイクロレンズアレイ成形用金型を作製する場合、ポンチを押し込んだときの押圧力が金型基板の内部を伝わり、既に形成されている隣接するレンズ型の形状を変形させていた。特に、マイクロレンズアレイ成形用金型は複数のレンズ型が密集して形成されることも、この変形の大きな要因になっている。
【0006】
変形が生じたレンズ型を用いてマイクロレンズアレイを成形するとレンズ自体が歪んでしまい、レンズの性能を低下させてしまうという問題点がある。なお、上述した特許文献1の作製方法であっても、凹部形成工程および研磨工程を行ったとしても、レンズ型形成工程の際に、ポンチを押し込んだときの押圧力が金型基板の内部を伝わり、既に形成されている隣接するレンズ型を歪ませてしまい、問題点を解決することができない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロレンズアレイ成形型の作製コストを削減することができると共に、マイクロレンズアレイ成形型によって成形されるマイクロレンズアレイの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマイクロレンズアレイ成形型の作製方法は、複数のレンズ部を有するマイクロレンズアレイを成形するマイクロレンズアレイ成形型の作製方法であって、前記マイクロレンズアレイ成形型を構成する型基板の平坦面に溝部を形成する溝形成工程と、前記溝部により区画形成される区画平面に前記レンズ部を成形するための凹状のレンズ型部を形成するレンズ型部形成工程と、を有することを特徴とする。
本発明のマイクロレンズアレイ成形型は、複数のレンズ部を有するマイクロレンズアレイを成形するマイクロレンズアレイ成形型であって、前記マイクロレンズアレイ成形型を構成する型基板の平坦面に形成された溝部と、前記溝部により区画形成される区画平面と、前記レンズ部を成形するためのレンズ型部と、を有し、前記レンズ型部は、前記区画平面に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロレンズアレイ成形型の作製コストを削減することができると共に、マイクロレンズアレイ成形型によって成形されるマイクロレンズアレイの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14を作製する工程を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14を作製する工程を説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14によって成形されたマイクロレンズアレイ15を示す斜視図である。
【図4】図4は、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14によって成形されたマイクロレンズアレイ18を示す斜視図である。
【図5】図5は、マイクロレンズアレイ18を上下に重ねて構成されたマイクロレンズアレイユニット19を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型24を作製する工程を説明するための図である。
【図7】図7は、第2の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型24を作製する工程を説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型24によって成形されたマイクロレンズアレイ25を示す斜視図である。
【図9】図9は、第3の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型34を示す平面図である。
【図10】図10は、他の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型44を示す平面図である。
【図11】図11は、第1の実施形態の変形例を示すマイクロレンズアレイ成形型54の断面図である。
【図12】図12は、マイクロレンズアレイ成形型54によって成形されたマイクロレンズアレイ55を示す斜視図である。
【図13】図13は、マイクロレンズアレイ成形型54によって成形されたマイクロレンズアレイ58を示す斜視図である。
【図14】図14は、第2の実施形態の変形例を示すマイクロレンズアレイ成形型64の断面図である。
【図15】図15は、マイクロレンズアレイ成形型64によって成形されたマイクロレンズアレイ65を示す斜視図である。
【図16】図16は、他の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型を作製する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るマイクロレンズアレイ成形型の作製方法の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、一次元マイクロレンズアレイを射出成形するマイクロレンズアレイ成形型14の作製方法について説明する。通常、マイクロレンズアレイ成形型は、一対の成形型(例えば固定型と可動型)によって構成される。ここでは、一対の成形型のうち、マイクロレンズアレイ15のレンズ部16を成形する側の成形型を取り上げて説明する。
まず、マイクロレンズアレイ成形型14の型基板11を用意する。ここでは、型基板11は加工の容易性を考慮してアルミニウム合金を用いる。
【0012】
次に、型基板11の平坦面11aに直線状の溝部12をそれぞれ、例えば等間隔で平行に複数形成する(溝形成工程)。この工程により、平坦面11aは溝部12により、複数の区画平面11bが独立して区画形成される。すなわち、溝部12は、それぞれの区画平面11bと他の区画平面11bとが連続しないように形成される。
図1(a)は、型基板11の平坦面11aに溝部12を形成した状態を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)に示すI−I線を切断した断面図である。このような溝部12は、放電加工、ワイヤカット加工、フライス加工、エッチング等どのような方法によって形成されても構わないが、型基板11に変形・損傷・歪等が発生しないことが望ましい。溝部12間の寸法は、次に形成するレンズ型部13の直径よりもやや長い寸法である。
【0013】
また、溝部12の深さ寸法D1は、レンズ型部13の深さ寸法dよりも大きく形成される(図2(b)を参照)。さらに、溝部12の内壁12aには、図1(b)に示す勾配αが形成されている。勾配αは、後述するようにレンズ型部13を形成するときのポンチ1の押圧力による変形の伝搬が溝部12を潰し、溝部12の対向する内壁12a間が小さくなったときでも成形品を型基板11から取り出せる角度に形成されることで、成形型の抜き勾配を確保できる。また、溝部12内の体積は、レンズ型部13を形成するときのポンチ1の押圧力による変形の伝搬が溝部12内で収まる体積に形成される。
【0014】
次に、複数の溝部12を形成した型基板11に、凹状のレンズ型部13を形成する(レンズ型部形成工程)。図2(a)は、区画平面11bにレンズ型部13を形成している状態を示す平面図である。図2(b)は、図2(a)に示すII−II線を切断した断面図である。なお、図2(a)、図2(b)では、これから形成するレンズ型部13を二点鎖線で示している。凹状のレンズ型部13は球面または非球面の球状であって、マイクロレンズアレイ15を成形したときの後述するレンズ部16に相当する。このレンズ型部13は、図2(b)に示すような先端形状が球面または非球面の球状のポンチ1によって型基板11の区画平面11bを垂直に押圧することによって形成される。本実施形態では、溝部12は直線状であり、形成されるレンズ型部13の外周は円形状であるために、レンズ型部13にそれぞれ隣接する側の溝部12の内壁12aとレンズ型部13の外周との間はそれぞれ異なる距離である。
【0015】
具体的にレンズ型部13を形成する工程を説明する。まず、型基板11の一方の端部側であって溝部12に隣接する区画平面11bをポンチ1の直下に移動させる。次に、ポンチ1を垂直に降下させて、型基板11の区画平面11bを押圧する。このポンチ1の押圧によって型基板11の区画平面11bが塑性変形し球状の凹部、すなわちレンズ型部13aが区画平面11bに対して1対1に形成される。次に、先程形成したレンズ型部13aに近接した溝部12を隔てた区画平面11bをポンチ1の直下に移動させる。このとき、図2(b)に示すように、ポンチ1の直下に溝部12間の中心が位置するように型基板11を水平に移動させる。同様に、ポンチ1を垂直に降下させて、型基板11の区画平面11bを押下する。このポンチ1の押下によって型基板11の区画平面11bが塑性変形し、2つ目のレンズ型部13bが形成される。
【0016】
このとき、従来であれば、この2つ目のレンズ型部13bを形成したときに、ポンチ1の押圧力による変形が型基板11の内部を伝搬し、既に形成したレンズ型部13aを変形させてしまう。ところが、本実施形態では、既に形成したレンズ型部13aとこれから形成するレンズ型部13bとの間に溝部12が形成されている。そのため、ポンチ1の押圧力を溝部12に逃がすことができる。したがって、ポンチ1の押圧力による変形の伝搬は、隣接するレンズ型部13aまで到達せずに溝部12を潰すことで停止する。すなわち、ポンチ1の押圧力は溝部12の内壁12aを変形させるに過ぎず、溝部12は既に形成したレンズ型部13aの変形を防止することができる。
【0017】
また、従来であればレンズ型部13を形成したときに、ポンチ1によって型基板11が押しのけられ、レンズ型部13の周囲に隆起部が発生してしまう。ところが、本実施形態では、溝部12内の体積はレンズ型部13を形成するときのポンチ1の押圧力による変形の伝搬が溝部12内で収まる体積に形成されているので、溝部12の内壁12aが対向する内壁12a側に隆起するに過ぎない。すなわち、溝部12はレンズ型部13の周囲の隆起部の発生をも防止することができる。
【0018】
以降も同様に、ポンチ1は型基板11の他方の端部側まで溝部12を挟んだ両側にレンズ型部13を形成する。これによって、形成した全てのレンズ型部13には変形が伴わず、かつレンズ型部13の周囲に隆起部を発生させることがないマイクロレンズアレイ成形型14を作製することができる。上述した作製方法によって作製されたマイクロレンズアレイ成形型14を用いて、マイクロレンズアレイ15を成形する場合、溶融されたアクリル樹脂をレンズ型部13などに充填した後、離型することでマイクロレンズアレイ15を成形する。
【0019】
図3は、マイクロレンズアレイ成形型14を用いて成形されたマイクロレンズアレイ15の一例を示す斜視図である。図3に示すマイクロレンズアレイ15は上述したように変形がないレンズ型部13によって成形しているので、マイクロレンズアレイ15のレンズ部16は歪みが発生せず精度に優れたものである。なお、隣接するレンズ部16の間には、溝部12によって成形された凸部17が形成される。凸部17の高さはレンズ部16の高さよりも高いために、マイクロレンズアレイ15の保管時および組立作業時等にレンズ部16が作業台等に直接触れることを予防できるためレンズ部16の保護が可能となる。なお、凸部17は必要に応じて削除しても構わない。また、マイクロレンズアレイ成形型14を作製した後、溝部12を塞ぐ等により凸部17が形成されないようにしても構わない。
【0020】
なお、上述した説明では、一対の成形型のうち一方の成形型を図2に示すようなマイクロレンズアレイ成形型14にする場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、他方の成形型も図2に示すようなマイクロレンズアレイ成形型14に作製することができる。図4は、一対の成形型の両方とも図2に示すようなマイクロレンズアレイ成形型14にして成形されたマイクロレンズアレイ18の一例を示す斜視図である。図4に示すマイクロレンズアレイ18の上下のレンズ部16は歪みが発生せず精度に優れたものである。以下の実施形態でも同様に一対の成形型の両方にレンズ部を成形する成形型とすることができる。また、図5は、図4に示すマイクロレンズアレイ18を上下に重ねて構成されたマイクロレンズアレイユニット19を示す図である。各マイクロレンズアレイ18の対向する凸部17同士によって、マイクロレンズアレイユニット19は各マイクロレンズアレイ18間の光軸方向の間隔を容易に決めることができる。また、凸部17にそれぞれ嵌合部を設けた場合には、各マイクロレンズアレイ18間の光軸方向と直交する方向の位置を容易に決めることができる。すなわち、凸部17は位置決め部材として用いることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、二次元マイクロレンズアレイを射出成形するマイクロレンズアレイ成形型24の作製方法について説明する。ここでは、第1の実施形態と同様に、一対の成形型のうち、マイクロレンズアレイのレンズ部を成形する側の成形型を取り上げて説明する。
【0022】
まず、マイクロレンズアレイ成形型24の型基板21を用意し、型基板21の平坦面21aに枝分かれした溝部22を形成する(溝形成工程)。この工程により、平坦面21aは溝部22により、複数の区画平面21bが独立して区画形成される。図6(a)は、型基板21の平坦面21aに溝部22を形成した状態を示す平面図である。図6(b)は、図6(a)に示すIII−III線を切断した断面図である。図6(a)に示すように、溝部22は、型基板21の短手方向に延出した後、2つに分岐した後、更に型基板21の短手方向に延出している。
したがって、溝部22は、複数の直線が所定の角度を有して繋げられた形状に形成されている。また、溝部22によって区画平面21bは、平面視で五角形状に区画形成されている。
【0023】
次に、溝部22を形成した型基板21に、凹状のレンズ型部23を形成する(レンズ型部形成工程)。図7(a)は、区画平面21bにレンズ型部23を形成した状態を示す平面図である。図7(b)は、図7(a)に示すIV−IV線を切断した断面図である。本実施形態では、溝部22は複数の直線が繋げられた形状であり、形成されるレンズ型部23の外周は円形状であるために、レンズ型部23にそれぞれ隣接する側の溝部22の内壁22aとレンズ型部23の外周との間はそれぞれ異なる距離である。
レンズ型部23を形成する場合、型基板21の一方の端部側の区画平面21bの五角形状の略中央をポンチ1の直下に移動させる。次に、ポンチ1を垂直に降下させて、型基板21の区画平面21bを押圧することで、レンズ型部23aが形成される。次に、型基板21を斜めに移動させて、先程形成したレンズ型部23aの斜めに隣接する区画平面21bの五角形状の略中央をポンチ1の直下に移動させ、同様にポンチ1を垂直に降下させて、型基板21の区画平面21bを押下して、レンズ型部23bが形成される。以後、型基板21をいわゆる千鳥状に移動させていきながら、溝部22を挟んだ両側にレンズ型部23を形成する。
【0024】
このとき第1の実施形態と同様、ポンチ1の押圧力による変形の伝搬は、溝部22までしか到達せず、既に形成したレンズ型部23の変形を防止することができる。また、溝部22によりレンズ型部23の周囲の隆起部の発生を防止することができる。すなわち、形成した全てのレンズ型部23には変形が伴わず、かつレンズ型部23の周囲に隆起部を発生させることがないマイクロレンズアレイ成形型24を作製することができる。
【0025】
図8は、マイクロレンズアレイ成形型24を用いて成形されたマイクロレンズアレイ25の一例を示す斜視図である。図8に示すマイクロレンズアレイ25は上述したように変形がないレンズ型部23によって成形しているので、マイクロレンズアレイ25のレンズ部26は歪みが発生せず精度に優れたものである。なお、隣接するレンズ部26の間には、溝部22によって成形された凸部27が形成される。
【0026】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、マイクロレンズアレイ成形型に形成する溝部の他の形状について説明する。ここでは、3列の二次元マイクロレンズアレイを射出成形するマイクロレンズアレイ成形型34について説明する。ここでも、第1および第2の実施形態と同様に、一対の成形型のうち、マイクロレンズアレイのレンズ部を成形する側の成形型を取り上げて説明する。
図9は、型基板31の平坦面31aに溝部32を形成し、溝部32によって区画形成された区画平面31bにレンズ型部33を形成した状態を示す平面図である。図9に示す溝部32は、複数の直線が所定の角度を有して繋げられた形状に形成されている。本実施形態では、溝部32は複数の直線が繋げられた形状であり、形成されるレンズ型部33の外周は円形状であるために、レンズ型部33にそれぞれ隣接する側の溝部32の内壁32aとレンズ型部33の外周との間はそれぞれ異なる距離である。また、図9に示すように、型基板31の長手方向に沿って3列配列されているレンズ型部33のうち、中央の一列のレンズ型部33aの周囲に形成されている溝部32は、平面視で多角形状である正六角形(ハニカム状)に形成されている。このように、いわゆるハニカム状の溝部32を形成することで溝部32の加工を容易にでき、加工コストを低減させることができる。
【0027】
なお、第3の実施形態では、3列のうち中央の一列のレンズ型部33aの周囲にハニカム状の溝部32を形成する場合について説明したが、この場合に限られず、3列のうち中央以外のレンズ型部33の周囲にもハニカム状の溝部32を形成することができる。また、3列以上であっても同様に、ハニカム状の溝部32を形成することができる。
【0028】
また、平面視で見た溝部32の形状はハニカム状の溝部32に限られない。例えば、レンズ型部43の周囲を取り囲む環状の溝部42であってもよい。図10は、型基板41の平坦面41aに環状の溝部42を形成し、溝部42によって区画形成された区画平面41bにレンズ型部43を形成した状態を示す平面図である。ここでは、溝部42は、レンズ型部43ごとに形成されている。図10に示すマイクロレンズアレイ成形型44では、溝部42は環状であり、形成されるレンズ型部43の外周は円形状であるために、溝部42の内壁42aとレンズ型部43の外周との間はそれぞれ一定の距離である。また、図10に示すマイクロレンズアレイ成形型44では、ポンチ1の押圧力は円状に広がるため、溝部42を環状にすることで、押圧力は環状の溝部42に均等に伝搬する。したがって、ポンチ1の押圧力の影響をより低減させることができる。
【0029】
このように、第1〜第3の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型の作製方法では、型基板の平坦面に溝部を形成する溝形成工程と、溝部を形成することで前記平坦面が区画形成される区画平面に凹状のレンズ型部を形成するレンズ型部形成工程とを有する。すなわち、少ない工程で、マイクロレンズアレイ成形型を作製することができるので、作製する時間を短縮させると共に、作製コストを削減させることができる。また、形成した全てのレンズ型部には変形が伴わず、かつレンズ型部の周囲に隆起部を発生させることがないマイクロレンズアレイ成形型を作製することができる。
【0030】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば、上述した第1から第3の実施形態では、隣接するレンズ型部の間に1つまたは2つの溝部が形成されている場合について説明したが、この場合に限られず、2本以上の溝部が形成されていてもよい。
【0031】
また、第1から第3の実施形態では、溝部の深さがレンズ型部の深さよりも大きい場合について説明したが、この場合に限られず、溝部の深さがレンズ型部の深さより小さい場合であってもよい。
例えば、図11は、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14の変形例を示すマイクロレンズアレイ成形型54の断面図である。ここでは、第1の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型14と同一の構成は、同一符号を付している。図11に示すように、溝部52の深さ寸法D2は、レンズ型部13の深さ寸法dよりも小さく形成されている。図12は、図11に示すマイクロレンズアレイ成形型54を用いて成形されたマイクロレンズアレイ55の一例を示す斜視図であり、溝部52によって成形された凸部57が形成されている。図13は、一対の成形型の両方とも図11に示すようなマイクロレンズアレイ成形型54にして成形されたマイクロレンズアレイ58の斜視図である。
【0032】
また、例えば、図14は、第2の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型24の変形例を示すマイクロレンズアレイ成形型64の断面図である。ここでは、第2の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型24と同一の構成は、同一符号を付している。図14に示すように、溝部62の深さ寸法は、レンズ型部23の深さ寸法よりも小さく形成されている。図15は、図14に示すマイクロレンズアレイ成形型64を用いて成形されたマイクロレンズアレイ65の一例を示す斜視図であり、溝部62によって成形された凸部67が形成されている。
【0033】
なお、マイクロレンズアレイを成形する場合に、溝部に黒色の成形材料を充填した後、レンズ型部にレンズ用の成形材料を充填することで、マイクロレンズアレイを成形してもよい。この場合、溝部によって成形された黒色の凸部は、隣接するレンズ部に迷光が入り込むのを防止する遮光部として機能させることができる。凸部を遮光部として機能させる場合には、マイクロレンズアレイ成形型の溝部の深さをレンズ型部の深さよりも小さく形成しても、大きく形成しても、何れの場合であってもよい。
【0034】
また、第1から第3の実施形態では、ポンチ1の押圧力による変形の伝搬が溝部内を変形させて、レンズ型部の周囲の隆起部の発生を防止する場合について説明したが、隆起部の発生の防止は溝部のみに限られない。例えば、図16に示すように、第1の実施形態の型基板11では、溝部12を形成する前、または溝部12を形成した後に、レンズ型部13を形成する位置の底面に窪み部20を設けている。この場合、ポンチ1の押圧力による変形の伝搬が溝部12と窪み部20とを変形させることから、溝部12内の体積を大きくしなくとも、レンズ型部13の周囲の隆起部の発生を防止することができる。例えば、レンズ型部13が密集して形成され溝部12を大きくすることが困難な場合には、窪み部20を形成することでレンズ型部13の間隔を変更などすることなくレンズ型部13の周囲の隆起部の発生を防止することができる。この窪み部20は、第1から第3の実施形態のマイクロレンズアレイ成形型(変形例を含む)に形成することができる。
【0035】
また、上述した第1から第3の実施形態(変形例を含む)では、マイクロレンズアレイ成形型にアルミニウム合金を用いる場合について説明したが、この場合に限られず、他の材質を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のマイクロレンズアレイ成形型は、イメージスキャナー、ファクシミリ、複写機、液晶パネル等に用いられるマイクロレンズアレイを成形する場合に用いられる。
【符号の説明】
【0037】
1:ポンチ 11:型基板 11a:平坦面 11b:区画平面 12:溝部 13:レンズ型部 14:マイクロレンズアレイ成形型 15:マイクロレンズアレイ 16:レンズ部 17:凸部 18:マイクロレンズアレイ 20:窪み部 21:型基板 21a:平坦面 21b:区画平面 22:溝部 23:レンズ型部 24:マイクロレンズアレイ成形型 25:マイクロレンズアレイ 26:レンズ部 27:凸部 31:型基板 31a:平坦面 31b:区画平面 32:溝部 33:レンズ型部 34:マイクロレンズアレイ成形型 41:型基板 41a:平坦面 41b:区画平面 42:溝部 43:レンズ型部 44:マイクロレンズアレイ成形型 52:溝部 54:マイクロレンズアレイ成形型 55:マイクロレンズアレイ 57:凸部 58:マイクロレンズアレイ 62:溝部 64:マイクロレンズアレイ成形型 65:マイクロレンズアレイ 67:凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ部を有するマイクロレンズアレイを成形するマイクロレンズアレイ成形型の作製方法であって、
前記マイクロレンズアレイ成形型を構成する型基板の平坦面に溝部を形成する溝形成工程と、
前記溝部により区画形成される区画平面に前記レンズ部を成形するための凹状のレンズ型部を形成するレンズ型部形成工程と、
を有することを特徴とするマイクロレンズアレイ成形型の作製方法。
【請求項2】
前記レンズ型部形成工程では、前記区画平面に前記レンズ型部を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズアレイ成形型の作製方法。
【請求項3】
前記レンズ型部は、前記溝形成工程によって前記溝部が形成された後に、前記レンズ型部形成工程によって形成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズアレイ成形型の作製方法。
【請求項4】
複数のレンズ部を有するマイクロレンズアレイを成形するマイクロレンズアレイ成形型であって、
前記マイクロレンズアレイ成形型を構成する型基板の平坦面に形成された溝部と、
前記溝部により区画形成される区画平面と、
前記レンズ部を成形するためのレンズ型部と、
を有し、
前記レンズ型部は、前記区画平面に形成される
ことを特徴とするマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項5】
前記溝部は、前記レンズ型部からの距離が一定でない
ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項6】
前記溝部は、前記型基板を平面で見て、互いに等間隔に平行に形成される直線状である
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項7】
前記溝部は、前記型基板を平面で見て、複数の直線を繋げた形状である
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項8】
前記複数の直線を繋げた形状が、多角形状である
ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項9】
前記溝部は、前記レンズ型部からの距離が一定である
ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項10】
前記溝部は、前記型基板を平面で見て、環状である
ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロレンズアレイ成形型。
【請求項11】
前記溝部の深さは、前記レンズ型部の深さよりも大きいことを特徴とする請求項4ないし10の何れか1項に記載のマイクロレンズアレイ成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−46995(P2013−46995A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140924(P2012−140924)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】