マイクロレンズアレイ用基材、その製造方法、マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型、および、マイクロレンズアレイ
【課題】マイクロレンズアレイ用基材に遮光部を設ける際に、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができるマイクロレンズアレイ用基材を提供する。
【解決手段】複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられている。
【解決手段】複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像入力装置などに用いられるマイクロレンズアレイ用基材、その製造方法、および、マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
物体からの光を結像光学系により結像させ、結像した像を撮像手段によって撮像する画像入力装置は、画像読取装置やデジタルカメラや携帯電話に内蔵されたものが知られている。このような画像入力装置では、如何にして像質のよい画像を得るかが大きな課題となる。
【0003】
再生画像の像質を向上させるには、一般に「結像光学系の光学性能」を高めればよいが、光学性能の高い結像系を、例えば単レンズのような簡単な構成で実現することは、レンズ面に非球面を採用したとしても容易ではない。一方、薄型の画像入力装置として、マイクロレンズアレイなどの複眼光学系を用いて複眼像を結像させて撮像手段により撮像し、個々のマイクロレンズによる個眼像から「単一の再生像」を再構成するものも知られている。
【0004】
しかし、マイクロレンズアレイの場合、フレアやゴーストを抑えた品質のよい画像を得るためには、結像レンズ間の光線のクロストークを防止するために、各結像レンズ間を遮光する遮光手段が必要である。平凸レンズ側に遮光部を設ける方法として、蒸着膜などの成膜法が一般に用いられている。しかし、この方法では、レンズの有効領域のマスキングが必要とされると同時に、成膜工程前後には何回も及ぶ洗浄プロセスが必要となり、工程が煩雑で、しかも有機溶剤など多量に消費され、環境に大きな負担をかけるだけではなく、コスト高にもつながる。このような問題を解決するためには、遮光膜の位置決めをより簡単にできるように、平凸レンズの反対側に遮光膜を設ける技術が開発されている。代表的な例として、特開2004−133154公報(特許文献1)に記載の技術は、マイクロレンズアレイのレンズ部の反対側に遮光部を設ける構造を開示している。しかし、このような構成は、遮光部とレンズ部は両側にあるため、視野角は狭くなり、光学特性を大きく犠牲にすると云う問題点がある。
【0005】
ところで、近年スクリーン印刷などの技法の発展に伴い、遮光部をレンズと同じ側に配置する技術は再び注目されるようになったが、位置あわせ精度の問題や遮光部の塗布ムラ、あるいはスクリーン印刷特有の液漏れ問題などで、しばしばレンズ有効領域部分まで遮光部が塗布されてしまい、全体的に生産歩留まりが悪いという課題がまだまだ残っているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マイクロレンズアレイ用基材に遮光部を設ける際に、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができるマイクロレンズアレイ用基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材である。
【0008】
また、本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ用基材において、遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズアレイ用基材において、前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型は、請求項4に記載の通り、複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型である。
【0011】
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材を用いるマイクロレンズアレイの製造方法であって、液状の遮光部形成剤を前記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有することを特徴とするマイクロレンズアレイの製造方法である。
【0012】
また、本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、請求項6に記載の通り、請求項5に記載のマイクロレンズアレイの製造方法において、前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のマイクロレンズアレイは、請求項7に記載のとおり、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることを特徴とするマイクロレンズアレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、レンズの間の遮光部形成部に設けられていることによって、液状の遮光部形成剤をこの遮光部形成補助溝に供給することにより、液面の高さの差が少なくても、遮光部形成補助溝による毛細管現象により、迅速に、かつ、マイクロレンズアレイ用基材全面に均一に液状の遮光部形成剤を供給することができ、このとき、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができる。
【0015】
請求項2に記載の本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されているために、この遮光部形成剤供給用凹部に液状の遮光部形成剤を供給することができるので、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスがより一層、効果的に防止される。
【0016】
請求項3に記載の本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であるので、より確実に、かつ、より、迅速に液状の遮光部形成剤を塗布することができる。
【0017】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型によれば、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられているために、切削などの後加工を必要とせずに効率よく上記マイクロレンズアレイ用基材を製造することができる。
【0018】
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によれば、前記マイクロレンズアレイ用基材を用い、かつ、液状の遮光部形成剤をその記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有するために、液面の高さの差が少なくても、遮光部形成補助溝による毛細管現象により、迅速に、かつ、マイクロレンズアレイ用基材全面に均一に液状の遮光部形成剤を供給することができ、このとき、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によれば、前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることにより、塗布終了後、効果に必要な波長の光を照射するだけで、マイクロレンズアレイ用基材に効率よく遮光部を形成することができる。さらにマイクロレンズアレイ用基材が透明であることを利用して裏面側からも光の照射が可能であり、このとき、迅速な硬化が可能となる。
【0020】
本発明のマイクロレンズアレイは、前記マイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることにより、前記遮光部形成補助溝内にも遮光部の凸状畝部が形成され、これらが互いに嵌合しているために、遮光部が基材に対してずれなく配置されて、結果としてフレアやゴーストがなく、明るく、コントラストの高い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)本発明に係るマイクロレンズアレイ用基材αのモデル上面図である。図1(b)図1(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図2】マイクロレンズアレイ用基材αの遮光部形成剤供給用凹部4に液状の遮光部形成剤10を供給したときの状態を示すモデル図である。
【図3】図3(a)遮光部形成補助溝3aによる毛細管現象で液状の遮光部形成剤10がレンズ1間に供給される状態を示すモデル図である。図3(b)図3(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図4】図4(a)遮光部形成補助溝3aから遮光部形成底部3に液状の遮光部形成剤10が広がっていく状態を示すモデル図である。図4(b)図4(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図5】図5(a)図4の状態からさらに液状の遮光部形成剤10が供給されたときの状態を示すモデル図である。図5(b)図5(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図6】図6(a)レンズ周囲段部2にまで液状の遮光部形成剤10が達した状態を示すモデル図である。図6(b)図6(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図7】図7(a)遮光部形成部全体に液状の遮光部形成剤10が塗布された状態を示すモデル図である。図7(b)図7(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図8】直交する遮光部形成補助溝3aが設けられたマイクロレンズアレイ用基材を示す図である。
【図9】シリンダレンズを備えたマイクロレンズアレイの一例を示すモデル図である。図9(a)モデル斜視図である。図9(b)モデル上面図である。図9(c)図9(b)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図10】図10(a)マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを示すモデル断面図である。図10(b)マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを用いた成形時の状態を示すモデル断面図である。図10(c)成形終了後離型した状態を示すモデル断面図である。
【図11】従来技術にかかる、遮光部形成補助溝が備えられていないマイクロレンズアレイ用基材に液状の遮光部形成剤を供給したときの状態を示すモデル上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1(a)に本発明に係るマイクロレンズアレイ用基材αのモデル上面図を、図1(b)には図1(a)のA−A線におけるモデル断面図を示す。この例では、レンズ部1の周囲に、レンズ部1の入射側の開口を確保するためのレンズ周囲段部2が設けられ、このレンズ周囲段部2より低い位置に遮光部形成底部3が設けられていて、さらにこの遮光部形成底部3には(複数のレンズ1の間の遮光部形成底部3には)液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝3aが設けられている。このマイクロレンズアレイ用基材αでは後述するようにレンズ周囲段部2にも遮光部が形成されるので、遮光部形成部は、遮光部形成補助溝3aを含む遮光部形成底部3とレンズ周囲段部2とから構成される。
【0024】
また、この例では、レンズ部1の直径は200μm、レンズ1同士の中心が800μm、遮光部形成補助溝3aは幅が25μm、遮光部形成底部3からの深さは5μmである。ここで、遮光部形成補助溝の深さは遮光部形成補助溝による毛細管現象が発現する程度でよく、また、深過ぎるとマイクロレンズの開口が確保できず得られる像が暗いものとなるので、通常2μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0025】
ここで、遮光部形成底部3には液状の遮光部形成剤が徐々に供給されるが、図2に示されるように、この例ではマイクロレンズアレイ用基材αの端部近くに設けられた、遮光部形成補助溝3aに接続する遮光部形成剤供給用凹部4に液状の遮光部形成剤を供給することにより、液状の遮光部形成剤10は遮光部形成剤供給用凹部4の側面と底面とにより毛細管現象により、極めて早くマイクロレンズアレイ用基材αの遮光部形成底部3に到達し(図3(a)および図3(b)参照)、次いで、徐々に遮光部形成部3全体に広がり(図4(a)および図4(b)、図5(a)および図5(b)参照)、さらに、レンズ周囲段部2に達し(図6(a)および図6(b)参照)、最終的にはレンズ周囲段部2を覆い隠して、図7(a)および図7(b)に示されるようにレンズ以外の部分はすべて液状の遮光部形成剤で覆われる。
【0026】
この状態で、液状の遮光部形成剤を硬化させればマイクロレンズアレイが得られるが、マイクロレンズアレイ用基材αが透明なことを利用して液状の遮光部形成剤を光硬化性樹脂から構成することにより、マイクロレンズアレイ用基材αの上下両面から用いる光硬化性樹脂の硬化に適した波長の光を照射するだけで、熱硬化性樹脂などを用いた場合に比べて、極めて短時間で効率よく硬化させることができる。
【0027】
光硬化性樹脂としては、アクリル系、エポキシ径の紫外線硬化樹脂や可視光硬化樹脂などが挙げられるが、マイクロレンズアレイ用基材がアクリル樹脂からなるときには、接着性を勘案するとアクリル系の樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
このような液状の遮光部形成剤は、市販の光硬化性樹脂にたとえば黒色等の色素(顔料や染料)を配合することにより容易に形成することができる。
【0029】
ここで遮光部形成補助溝3aの幅および深さは、上記毛細管現象による効果を得るための重要なファクタであるが、毛細管現象による効果は同時に用いる液状の遮光部形成剤の粘度、種類(マイクロレンズアレイ用基材αとのぬれ性)によっても、左右されるために、あらかじめ検討を行って決定することが必要である。また、加工の容易性を考慮する必要もある。これらを勘案すると通常、1μm以上500μm以下が好ましい。
【0030】
このようなマイクロレンズアレイ用基材を用いて作製されたマイクロレンズアレイは、マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることにより、前記遮光部形成補助溝内にも遮光部の凸状畝部が形成され、これらが互いに嵌合しているために、遮光部が基材に対してずれなく配置されて、結果としてフレアやゴーストがなく、明るく、コントラストの高い画像を得ることができる。
【0031】
上記例では遮光部形成補助溝は平行に形成されていたが、互いに交差するように形成されていてもよい。図8には遮光部形成補助溝3aが互いに直角に交差するように形成されたマイクロレンズアレイ用基材βの例を示した。
【0032】
また、本発明は上記のように一般的な球面状レンズ(一般的な非球面レンズも含む)が設けられたマイクロレンズアレイに限定されず、たとえば図9(a)にモデル斜視図、図9(b)にモデル上面図、図9(c)に図9(b)のA−A線におけるモデル断面図を示したようなシリンダレンズを備えたマイクロレンズアレイであってもよい(図中符号11はレンズ部、12は遮光部形成部、13は遮光部形成補助溝をそれぞれ示す)。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示す。
【0034】
<実施例1>
まず、金型の作製を行った。レンズ用金型材は通常光学鏡面が得られやすいものが一般的に採用される。例えば、無電解めっきで得られるNiP膜や無酸素銅やアルミニウム合金などが挙げられるが、本例では、JIS C1020の無酸素銅を用いた。
【0035】
ダイヤモンドバイトを用いて、金型表面を粗さ20nm Ry程度の鏡面に仕上げ後、ボールエンドミルにより球面半径200μmの球状凹面、縦横4行4列計16箇所、ピッチ間隔800μmを有する球面レンズアレイを削り出した。上記球状凹面レンズ形成部の深さは40μm、開口部直径は約240μmである。
【0036】
次に、各々の球状凹面上部から同心円形状部を削り出した。切り込み深さは10μmで、同心円(レンズ周囲段部)直径は300μmとした。このとき、同心円形状部からの球面レンズ部の深さは30μmで、レンズ開口部直径は約210μmとなった。
【0037】
さらに、遮光部形成補助溝3aを形成するための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が高さ5μm、幅200μmとなるように、さらに、この遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部と連続するように遮光部形成剤供給用凹部を形成する部分として、3mm×5mmの長方形として凸状畝部と同じ高さとなるように残した部分以外を、械加工で除去してマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを得た。ここで、金型γのレンズ形成部付近のモデル断面図を図10(a)に示すように、この金型γの一番高いところは遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部3a’および、図示しない遮光部形成剤供給用凹部であり、次に遮光部形成底部形成部3’、次いで、レンズ周囲段部形成部2’もっとも深い部分はレンズ形成部1’である。
【0038】
次に、上記の金型γを用いて、樹脂によりマイクロレンズアレイ用基材αの成形を行った。用いる樹脂材料は成形特性や光学特性などを総合的に考慮する必要がある。本実施例では金型の素材として無酸素銅を用いたため、ガラス転移点の低い樹脂の使用が望ましく、このためにアクリル(PMMA)樹脂を用いた。
【0039】
樹脂成形は熱プレス成形法によった。厚み1mmのPMMAブランク板材を上記の金型の上に載せ、120℃まで昇温させた後、プレスを行い、金型形状を転写した(図10(b)参照)。転写後に離型させると、マイクロレンズアレイ用基材αの金型接触面には図10(c)にモデル的に示すように金型γの形状が転写された。
【0040】
このようにして得たマイクロレンズアレイ用基材αを用い、その遮光部形成剤供給用凹部にシリンジを用いて、遮光性成分として、黒UVインク(ティーアンドケイ東華社製UVインク(UV STP 墨 W)を希釈剤(同社製UV DGレジューサー)に配合させてなる液状の遮光部形成剤(粘度:約20CPa(25℃))を供給して、必要部分にこの液状の遮光部形成剤を塗布した。(希釈剤としてNo.2UVコンテックスを用いてもよく、粘度は通常20〜50CPaの範囲に調整することが取り扱い上、好ましい)。
【0041】
このとき、液状の遮光部形成剤は遮光部形成補助溝を伝わってレンズの間に導かれ、迅速に塗布必要箇所に塗布された。その後、マイクロレンズアレイ用基材αの両面へ紫外線を照射強度:130W、照射時間:3分の条件で照射して硬化させた。得られたマイクロレンズアレイについて顕微鏡を用いて観察を行ったが、遮光部は必要箇所にはもれなく形成されており、かつ、レンズ上に塗布されている箇所はなかった。
【0042】
また、同様に、ただし遮光部形成補助溝の幅が、100μmおよび400μmとなるようにしてマイクロレンズアレイ用基材を作製し、上記液状の遮光部形成剤を用いて、塗布・遮光部形成を行ったが、上記同様に容易に、かつ、不良箇所のない遮光部が形成された。
【0043】
<実施例2>
実施例1と同様に、金型の作製を行った。レンズ用金型材としてマルテンサイト系ステンレス合金鋼を母材とし、その表面に無電解めっきによりNiP(ニッケルリン)膜を厚み200μmとなるように形成した。
【0044】
このNiP層に対して、ダイヤモンドバイトを用いて、シェーパー工法(引き切り加工)で金型表面を円筒半径R100μm、深さ約14μm、開口部約100μm、ピッチ距離200μm、長手方向30mmを有するシリンダレンズ面形成部を150箇所形成した。次いで、同じくシューパ工法で、各々のシリンダレンズ面形成部同士の間に遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部を幅50μm、高さ3μmとなるように形成した。またこの凸状畝部に接続する遮光部形成剤供給用凹部形成部も凸状畝部と同じ高さになるようにして形成した。
【0045】
次に、上記の金型を用いて、樹脂成形を行った。樹脂としては日本ゼオン株式会社製シクロオレフィンポリマー ZEONEX(ゼオネックス)を用いて射出成形を行い、マイクロレンズアレイ用基材を得た。
【0046】
このマイクロレンズアレイ用基材を用い、その遮光部形成剤供給用凹部にシリンジを用いて、実施例1同様に液状の遮光部形成剤を供給して、必要部分にこの液状の遮光部形成剤を塗布した。このとき、液状の遮光部形成剤は遮光部形成補助溝を伝わって迅速に塗布必要箇所に塗布された。その後、マイクロレンズアレイ用基材αの両面へ紫外線を照射強度:130W、照射時間:3分の条件で照射して硬化させた。得られたマイクロレンズアレイについて顕微鏡を用いて観察を行ったが、遮光部は必要箇所にはもれなく形成されており、かつ、レンズ上に塗布されている箇所はなかった。
【0047】
<比較例>
実施例1同様に、ただし、遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部を形成しない金型を作製し、この金型を用いる熱プレス成形法で、マイクロレンズアレイ用基材(遮光部形成補助溝が形成されていない)を得た。このマイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成剤供給用凹部に実施例1同様の液状の遮光部形成剤を用いて、塗布を行ったところ、図11にモデル的に上面図を示すように、液状の遮光部形成剤10は遮光部形成部14に広がりにくく、その一部はレンズ部1に及んでしまい、良好なマイクロレンズアレイを得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0048】
1 レンズ部
2 レンズ周囲段部
3 遮光部形成底部
3a 遮光部形成補助溝
4 遮光部形成剤供給用凹部
10 液状の遮光部形成剤
α、β 本発明にかかるマイクロレンズアレイ用基材
γ 本発明にかかるマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2004−133154公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像入力装置などに用いられるマイクロレンズアレイ用基材、その製造方法、および、マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
物体からの光を結像光学系により結像させ、結像した像を撮像手段によって撮像する画像入力装置は、画像読取装置やデジタルカメラや携帯電話に内蔵されたものが知られている。このような画像入力装置では、如何にして像質のよい画像を得るかが大きな課題となる。
【0003】
再生画像の像質を向上させるには、一般に「結像光学系の光学性能」を高めればよいが、光学性能の高い結像系を、例えば単レンズのような簡単な構成で実現することは、レンズ面に非球面を採用したとしても容易ではない。一方、薄型の画像入力装置として、マイクロレンズアレイなどの複眼光学系を用いて複眼像を結像させて撮像手段により撮像し、個々のマイクロレンズによる個眼像から「単一の再生像」を再構成するものも知られている。
【0004】
しかし、マイクロレンズアレイの場合、フレアやゴーストを抑えた品質のよい画像を得るためには、結像レンズ間の光線のクロストークを防止するために、各結像レンズ間を遮光する遮光手段が必要である。平凸レンズ側に遮光部を設ける方法として、蒸着膜などの成膜法が一般に用いられている。しかし、この方法では、レンズの有効領域のマスキングが必要とされると同時に、成膜工程前後には何回も及ぶ洗浄プロセスが必要となり、工程が煩雑で、しかも有機溶剤など多量に消費され、環境に大きな負担をかけるだけではなく、コスト高にもつながる。このような問題を解決するためには、遮光膜の位置決めをより簡単にできるように、平凸レンズの反対側に遮光膜を設ける技術が開発されている。代表的な例として、特開2004−133154公報(特許文献1)に記載の技術は、マイクロレンズアレイのレンズ部の反対側に遮光部を設ける構造を開示している。しかし、このような構成は、遮光部とレンズ部は両側にあるため、視野角は狭くなり、光学特性を大きく犠牲にすると云う問題点がある。
【0005】
ところで、近年スクリーン印刷などの技法の発展に伴い、遮光部をレンズと同じ側に配置する技術は再び注目されるようになったが、位置あわせ精度の問題や遮光部の塗布ムラ、あるいはスクリーン印刷特有の液漏れ問題などで、しばしばレンズ有効領域部分まで遮光部が塗布されてしまい、全体的に生産歩留まりが悪いという課題がまだまだ残っているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マイクロレンズアレイ用基材に遮光部を設ける際に、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができるマイクロレンズアレイ用基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材である。
【0008】
また、本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のマイクロレンズアレイ用基材において、遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマイクロレンズアレイ用基材は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズアレイ用基材において、前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型は、請求項4に記載の通り、複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型である。
【0011】
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材を用いるマイクロレンズアレイの製造方法であって、液状の遮光部形成剤を前記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有することを特徴とするマイクロレンズアレイの製造方法である。
【0012】
また、本発明のマイクロレンズアレイの製造方法は、請求項6に記載の通り、請求項5に記載のマイクロレンズアレイの製造方法において、前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のマイクロレンズアレイは、請求項7に記載のとおり、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることを特徴とするマイクロレンズアレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、レンズの間の遮光部形成部に設けられていることによって、液状の遮光部形成剤をこの遮光部形成補助溝に供給することにより、液面の高さの差が少なくても、遮光部形成補助溝による毛細管現象により、迅速に、かつ、マイクロレンズアレイ用基材全面に均一に液状の遮光部形成剤を供給することができ、このとき、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができる。
【0015】
請求項2に記載の本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されているために、この遮光部形成剤供給用凹部に液状の遮光部形成剤を供給することができるので、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスがより一層、効果的に防止される。
【0016】
請求項3に記載の本発明のマイクロレンズアレイ用基材によれば、前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であるので、より確実に、かつ、より、迅速に液状の遮光部形成剤を塗布することができる。
【0017】
本発明のマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型によれば、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられているために、切削などの後加工を必要とせずに効率よく上記マイクロレンズアレイ用基材を製造することができる。
【0018】
本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によれば、前記マイクロレンズアレイ用基材を用い、かつ、液状の遮光部形成剤をその記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有するために、液面の高さの差が少なくても、遮光部形成補助溝による毛細管現象により、迅速に、かつ、マイクロレンズアレイ用基材全面に均一に液状の遮光部形成剤を供給することができ、このとき、マスキングなどの前処理を不要としながら、塗布むらやレンズ有効領域部分への塗布ミスなしに歩留まりよく、しかも、効率よく遮光部を設けることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の本発明のマイクロレンズアレイの製造方法によれば、前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることにより、塗布終了後、効果に必要な波長の光を照射するだけで、マイクロレンズアレイ用基材に効率よく遮光部を形成することができる。さらにマイクロレンズアレイ用基材が透明であることを利用して裏面側からも光の照射が可能であり、このとき、迅速な硬化が可能となる。
【0020】
本発明のマイクロレンズアレイは、前記マイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることにより、前記遮光部形成補助溝内にも遮光部の凸状畝部が形成され、これらが互いに嵌合しているために、遮光部が基材に対してずれなく配置されて、結果としてフレアやゴーストがなく、明るく、コントラストの高い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)本発明に係るマイクロレンズアレイ用基材αのモデル上面図である。図1(b)図1(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図2】マイクロレンズアレイ用基材αの遮光部形成剤供給用凹部4に液状の遮光部形成剤10を供給したときの状態を示すモデル図である。
【図3】図3(a)遮光部形成補助溝3aによる毛細管現象で液状の遮光部形成剤10がレンズ1間に供給される状態を示すモデル図である。図3(b)図3(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図4】図4(a)遮光部形成補助溝3aから遮光部形成底部3に液状の遮光部形成剤10が広がっていく状態を示すモデル図である。図4(b)図4(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図5】図5(a)図4の状態からさらに液状の遮光部形成剤10が供給されたときの状態を示すモデル図である。図5(b)図5(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図6】図6(a)レンズ周囲段部2にまで液状の遮光部形成剤10が達した状態を示すモデル図である。図6(b)図6(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図7】図7(a)遮光部形成部全体に液状の遮光部形成剤10が塗布された状態を示すモデル図である。図7(b)図7(a)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図8】直交する遮光部形成補助溝3aが設けられたマイクロレンズアレイ用基材を示す図である。
【図9】シリンダレンズを備えたマイクロレンズアレイの一例を示すモデル図である。図9(a)モデル斜視図である。図9(b)モデル上面図である。図9(c)図9(b)のA−A線におけるモデル断面図である。
【図10】図10(a)マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを示すモデル断面図である。図10(b)マイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを用いた成形時の状態を示すモデル断面図である。図10(c)成形終了後離型した状態を示すモデル断面図である。
【図11】従来技術にかかる、遮光部形成補助溝が備えられていないマイクロレンズアレイ用基材に液状の遮光部形成剤を供給したときの状態を示すモデル上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1(a)に本発明に係るマイクロレンズアレイ用基材αのモデル上面図を、図1(b)には図1(a)のA−A線におけるモデル断面図を示す。この例では、レンズ部1の周囲に、レンズ部1の入射側の開口を確保するためのレンズ周囲段部2が設けられ、このレンズ周囲段部2より低い位置に遮光部形成底部3が設けられていて、さらにこの遮光部形成底部3には(複数のレンズ1の間の遮光部形成底部3には)液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝3aが設けられている。このマイクロレンズアレイ用基材αでは後述するようにレンズ周囲段部2にも遮光部が形成されるので、遮光部形成部は、遮光部形成補助溝3aを含む遮光部形成底部3とレンズ周囲段部2とから構成される。
【0024】
また、この例では、レンズ部1の直径は200μm、レンズ1同士の中心が800μm、遮光部形成補助溝3aは幅が25μm、遮光部形成底部3からの深さは5μmである。ここで、遮光部形成補助溝の深さは遮光部形成補助溝による毛細管現象が発現する程度でよく、また、深過ぎるとマイクロレンズの開口が確保できず得られる像が暗いものとなるので、通常2μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0025】
ここで、遮光部形成底部3には液状の遮光部形成剤が徐々に供給されるが、図2に示されるように、この例ではマイクロレンズアレイ用基材αの端部近くに設けられた、遮光部形成補助溝3aに接続する遮光部形成剤供給用凹部4に液状の遮光部形成剤を供給することにより、液状の遮光部形成剤10は遮光部形成剤供給用凹部4の側面と底面とにより毛細管現象により、極めて早くマイクロレンズアレイ用基材αの遮光部形成底部3に到達し(図3(a)および図3(b)参照)、次いで、徐々に遮光部形成部3全体に広がり(図4(a)および図4(b)、図5(a)および図5(b)参照)、さらに、レンズ周囲段部2に達し(図6(a)および図6(b)参照)、最終的にはレンズ周囲段部2を覆い隠して、図7(a)および図7(b)に示されるようにレンズ以外の部分はすべて液状の遮光部形成剤で覆われる。
【0026】
この状態で、液状の遮光部形成剤を硬化させればマイクロレンズアレイが得られるが、マイクロレンズアレイ用基材αが透明なことを利用して液状の遮光部形成剤を光硬化性樹脂から構成することにより、マイクロレンズアレイ用基材αの上下両面から用いる光硬化性樹脂の硬化に適した波長の光を照射するだけで、熱硬化性樹脂などを用いた場合に比べて、極めて短時間で効率よく硬化させることができる。
【0027】
光硬化性樹脂としては、アクリル系、エポキシ径の紫外線硬化樹脂や可視光硬化樹脂などが挙げられるが、マイクロレンズアレイ用基材がアクリル樹脂からなるときには、接着性を勘案するとアクリル系の樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
このような液状の遮光部形成剤は、市販の光硬化性樹脂にたとえば黒色等の色素(顔料や染料)を配合することにより容易に形成することができる。
【0029】
ここで遮光部形成補助溝3aの幅および深さは、上記毛細管現象による効果を得るための重要なファクタであるが、毛細管現象による効果は同時に用いる液状の遮光部形成剤の粘度、種類(マイクロレンズアレイ用基材αとのぬれ性)によっても、左右されるために、あらかじめ検討を行って決定することが必要である。また、加工の容易性を考慮する必要もある。これらを勘案すると通常、1μm以上500μm以下が好ましい。
【0030】
このようなマイクロレンズアレイ用基材を用いて作製されたマイクロレンズアレイは、マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることにより、前記遮光部形成補助溝内にも遮光部の凸状畝部が形成され、これらが互いに嵌合しているために、遮光部が基材に対してずれなく配置されて、結果としてフレアやゴーストがなく、明るく、コントラストの高い画像を得ることができる。
【0031】
上記例では遮光部形成補助溝は平行に形成されていたが、互いに交差するように形成されていてもよい。図8には遮光部形成補助溝3aが互いに直角に交差するように形成されたマイクロレンズアレイ用基材βの例を示した。
【0032】
また、本発明は上記のように一般的な球面状レンズ(一般的な非球面レンズも含む)が設けられたマイクロレンズアレイに限定されず、たとえば図9(a)にモデル斜視図、図9(b)にモデル上面図、図9(c)に図9(b)のA−A線におけるモデル断面図を示したようなシリンダレンズを備えたマイクロレンズアレイであってもよい(図中符号11はレンズ部、12は遮光部形成部、13は遮光部形成補助溝をそれぞれ示す)。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示す。
【0034】
<実施例1>
まず、金型の作製を行った。レンズ用金型材は通常光学鏡面が得られやすいものが一般的に採用される。例えば、無電解めっきで得られるNiP膜や無酸素銅やアルミニウム合金などが挙げられるが、本例では、JIS C1020の無酸素銅を用いた。
【0035】
ダイヤモンドバイトを用いて、金型表面を粗さ20nm Ry程度の鏡面に仕上げ後、ボールエンドミルにより球面半径200μmの球状凹面、縦横4行4列計16箇所、ピッチ間隔800μmを有する球面レンズアレイを削り出した。上記球状凹面レンズ形成部の深さは40μm、開口部直径は約240μmである。
【0036】
次に、各々の球状凹面上部から同心円形状部を削り出した。切り込み深さは10μmで、同心円(レンズ周囲段部)直径は300μmとした。このとき、同心円形状部からの球面レンズ部の深さは30μmで、レンズ開口部直径は約210μmとなった。
【0037】
さらに、遮光部形成補助溝3aを形成するための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が高さ5μm、幅200μmとなるように、さらに、この遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部と連続するように遮光部形成剤供給用凹部を形成する部分として、3mm×5mmの長方形として凸状畝部と同じ高さとなるように残した部分以外を、械加工で除去してマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型γを得た。ここで、金型γのレンズ形成部付近のモデル断面図を図10(a)に示すように、この金型γの一番高いところは遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部3a’および、図示しない遮光部形成剤供給用凹部であり、次に遮光部形成底部形成部3’、次いで、レンズ周囲段部形成部2’もっとも深い部分はレンズ形成部1’である。
【0038】
次に、上記の金型γを用いて、樹脂によりマイクロレンズアレイ用基材αの成形を行った。用いる樹脂材料は成形特性や光学特性などを総合的に考慮する必要がある。本実施例では金型の素材として無酸素銅を用いたため、ガラス転移点の低い樹脂の使用が望ましく、このためにアクリル(PMMA)樹脂を用いた。
【0039】
樹脂成形は熱プレス成形法によった。厚み1mmのPMMAブランク板材を上記の金型の上に載せ、120℃まで昇温させた後、プレスを行い、金型形状を転写した(図10(b)参照)。転写後に離型させると、マイクロレンズアレイ用基材αの金型接触面には図10(c)にモデル的に示すように金型γの形状が転写された。
【0040】
このようにして得たマイクロレンズアレイ用基材αを用い、その遮光部形成剤供給用凹部にシリンジを用いて、遮光性成分として、黒UVインク(ティーアンドケイ東華社製UVインク(UV STP 墨 W)を希釈剤(同社製UV DGレジューサー)に配合させてなる液状の遮光部形成剤(粘度:約20CPa(25℃))を供給して、必要部分にこの液状の遮光部形成剤を塗布した。(希釈剤としてNo.2UVコンテックスを用いてもよく、粘度は通常20〜50CPaの範囲に調整することが取り扱い上、好ましい)。
【0041】
このとき、液状の遮光部形成剤は遮光部形成補助溝を伝わってレンズの間に導かれ、迅速に塗布必要箇所に塗布された。その後、マイクロレンズアレイ用基材αの両面へ紫外線を照射強度:130W、照射時間:3分の条件で照射して硬化させた。得られたマイクロレンズアレイについて顕微鏡を用いて観察を行ったが、遮光部は必要箇所にはもれなく形成されており、かつ、レンズ上に塗布されている箇所はなかった。
【0042】
また、同様に、ただし遮光部形成補助溝の幅が、100μmおよび400μmとなるようにしてマイクロレンズアレイ用基材を作製し、上記液状の遮光部形成剤を用いて、塗布・遮光部形成を行ったが、上記同様に容易に、かつ、不良箇所のない遮光部が形成された。
【0043】
<実施例2>
実施例1と同様に、金型の作製を行った。レンズ用金型材としてマルテンサイト系ステンレス合金鋼を母材とし、その表面に無電解めっきによりNiP(ニッケルリン)膜を厚み200μmとなるように形成した。
【0044】
このNiP層に対して、ダイヤモンドバイトを用いて、シェーパー工法(引き切り加工)で金型表面を円筒半径R100μm、深さ約14μm、開口部約100μm、ピッチ距離200μm、長手方向30mmを有するシリンダレンズ面形成部を150箇所形成した。次いで、同じくシューパ工法で、各々のシリンダレンズ面形成部同士の間に遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部を幅50μm、高さ3μmとなるように形成した。またこの凸状畝部に接続する遮光部形成剤供給用凹部形成部も凸状畝部と同じ高さになるようにして形成した。
【0045】
次に、上記の金型を用いて、樹脂成形を行った。樹脂としては日本ゼオン株式会社製シクロオレフィンポリマー ZEONEX(ゼオネックス)を用いて射出成形を行い、マイクロレンズアレイ用基材を得た。
【0046】
このマイクロレンズアレイ用基材を用い、その遮光部形成剤供給用凹部にシリンジを用いて、実施例1同様に液状の遮光部形成剤を供給して、必要部分にこの液状の遮光部形成剤を塗布した。このとき、液状の遮光部形成剤は遮光部形成補助溝を伝わって迅速に塗布必要箇所に塗布された。その後、マイクロレンズアレイ用基材αの両面へ紫外線を照射強度:130W、照射時間:3分の条件で照射して硬化させた。得られたマイクロレンズアレイについて顕微鏡を用いて観察を行ったが、遮光部は必要箇所にはもれなく形成されており、かつ、レンズ上に塗布されている箇所はなかった。
【0047】
<比較例>
実施例1同様に、ただし、遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部を形成しない金型を作製し、この金型を用いる熱プレス成形法で、マイクロレンズアレイ用基材(遮光部形成補助溝が形成されていない)を得た。このマイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成剤供給用凹部に実施例1同様の液状の遮光部形成剤を用いて、塗布を行ったところ、図11にモデル的に上面図を示すように、液状の遮光部形成剤10は遮光部形成部14に広がりにくく、その一部はレンズ部1に及んでしまい、良好なマイクロレンズアレイを得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0048】
1 レンズ部
2 レンズ周囲段部
3 遮光部形成底部
3a 遮光部形成補助溝
4 遮光部形成剤供給用凹部
10 液状の遮光部形成剤
α、β 本発明にかかるマイクロレンズアレイ用基材
γ 本発明にかかるマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2004−133154公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項2】
遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項3】
前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項4】
複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材を用いるマイクロレンズアレイの製造方法であって、液状の遮光部形成剤を前記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有することを特徴とするマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることを特徴とする請求項5に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【請求項1】
複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝が、遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項2】
遮光部形成剤供給用凹部が設けられ、かつ、該遮光部形成剤供給用凹部が前記遮光部形成補助溝に接続されていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項3】
前記遮光部形成補助溝の幅が1μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズアレイ用基材。
【請求項4】
複数のレンズが設けられたマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型において、液状の遮光部形成剤を前記レンズの間に導くための遮光部形成補助溝形成用の凸状畝部が、前記マイクロレンズアレイ用基材の遮光部形成部に設けられていることを特徴とするマイクロレンズアレイ用基材の成形用金型。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材を用いるマイクロレンズアレイの製造方法であって、液状の遮光部形成剤を前記遮光部形成補助溝が設けられた部分に供給する工程を有することを特徴とするマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
前記液状の遮光部形成剤が、光硬化性樹脂から構成されていることを特徴とする請求項5に記載のマイクロレンズアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ用基材の前期遮光部形成部に、遮光部が形成されてなることを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−59185(P2011−59185A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205968(P2009−205968)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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