説明

マイクロ構造化された化学的なセンサ

基板(1)に配置された第1のメタライゼーション平面と、この第1のメタライゼーション平面に被着された、コンタクト孔(7)によって構造化されたパッシベーション層(6)と、このパッシベーション層(6)にかつコンタクト孔(7)内に厚膜技術で形成された感応性のセラミックス層(9)とを備えたセンサにおいて、セラミックス層(9)の固着を改善するために、第2のメタライゼーション平面として形成されていて、パッシベーション層(6)とセラミックス層(9)との間に配置された定着剤層(8)が設けられていることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的なセンサであって、基板に配置された、電極構造体が形成された第1のメタライゼーション平面と、該第1のメタライゼーション平面に被着された、コンタクト孔によって構造化されたパッシベーション層と、該パッシベーション層にかつコンタクト孔内にディスペンサ法、スクリーン印刷法またはインキジェット法によって、次いで、焼結によって形成された感応性のセラミックス層とが設けられている形式のものに関する。
【0002】
たいてい金属酸化物を含む感応性の層の電気抵抗が、評価構造体である電極によって評価可能となる化学的なセンサは、特にガスセンサまたは湿度センサとして多数の構成で知られている。ガス検知のための感応性の層として、一般的に多孔質のセラミックス層、たとえばSnOまたはWOが使用される。このセラミックス層の電気的な表面伝導度は、ガスの吸着時に変化する。多孔質のセラミックス層は、ドーピング物質によって選択的に特定のガスに対して感応性にすることができる。
【0003】
このようなセラミックスの抵抗性は極めて高い。これによって、測定抵抗も同じく大きくなる。したがって、評価構造体は、通常、櫛型構造体(IDT;「Interdigitated Transducers」)、すなわち、指状に噛み合う2つの共面電極から成っている。これは、それぞれ異なる極性の個々の指状体の間に横方向で形成された抵抗の並列接続ひいては減じられたセンサ内部抵抗もしくは高められたセンサの感度に相当している。
【0004】
しばしば、電極および加熱抵抗のほかに、さらに、温度測定抵抗がセンサに設けられる。この場合、たとえば白金から成るメタライゼーション層の全てのエレメントは1つのメタライゼーション平面に構造化され得る。特に温度測定抵抗の「後時効」を阻止するために、メタライゼーション平面にしばしばパッシベーション層、典型的には酸化ケイ素が設けられる。このパッシベーション層は、電極と、パッシベーション層に被着される感応性の層との間のコンタクトを可能にするために、コンタクト孔によって構造化され得る。
【0005】
メタライゼーション層の構造体と感応性の層とが、慣用の形式では、酸化アルミニウム基板に被着されるのに対して、その間には、シリコン基板をベースとしてマイクロマシニング技術により製造されたダイヤフラムセンサも知られている。ダイヤフラムに配置されたセンサ構造体を基板から熱的に分離することによって、センサの減じられた出力消費が得られる。
【0006】
SiO、Siから成るダイヤフラムに被着された感応性の層を備えたマイクロ構造化されたシリコンダイヤフラムセンサは、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19710358号明細書に基づき公知である。しかし、この公知のセンサでは、冒頭で述べた形式のセンサと異なり、加熱構造体と温度測定構造体としか酸化ケイ素層によって不動態化されない。その後、この酸化ケイ素層に三次元的な櫛型の電極構造体が被着される。この電極構造体内には、感応性の層がスクリーン印刷技術により充填される。
【0007】
一般的に、感応性のセラミックス層のスクリーン印刷技術による形成時には、このセラミックス層が厚膜ペーストとしての被着後にさらに焼結されなければならない。この場合に生ぜしめられるかまたは残される機械的な応力、特に界面張力は、層材料の剥離およびパーティクル発生を生ぜしめ得る。別のマイクロマシニングプロセスへの、たとえばSnOまたはWOの影響は不明瞭であり、これによって、一般的に汚染危険が存在している。焼結時に形成された金属酸化物セラミックスの多孔性は一方で所望されている。なぜならば、セラミックスの高い感度が、体積に対する表面の高い比によって好都合に生ぜしめられるからである。しかし、同時に多孔性は層の機械的な安定性にネガティブな影響を与える。この安定性に課せられる最も重要な要求は、セラミックス層が基礎と電極とにセンサの寿命にわたって固着していることにある。さらに、セラミックスと電極との電気的なコンタクトが変質してはならない。
【0008】
現在、セラミックス層は直接パッシベーション層に形成される。この場合、セラミックスの固着がしばしば不十分であることが分かった。本発明の課題は、固着に関する状況を改善することにある。
【0009】
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の化学的なセンサによって解決される。改良形および有利な手段は従属請求項から明らかである。
【0010】
本発明は、第2のメタライゼーション平面として形成されていて、パッシベーション層とセラミックス層との間に配置された定着剤層が設けられていることによって、冒頭で述べた形式の化学的なセンサに基づいている。
【0011】
2つの層に被着された上側のメタライゼーション層によって、多孔質の感応性のセラミックス層を、パッシベーション層によって付与された基礎により良好に結合することが可能となる。同時に、上側の平面でそれぞれ2つのコンタクト孔開口の間に配置された金属製の定着剤層は、電気力線ひいては2つの櫛型電極指の間の電流路の著しい空間的な制限を生ぜしめる。これによって、最終的に、感応性のセラミックスにおける活性の領域の著しい制限が生ぜしめられている。このことは、たとえばシリコーンによるセンサ被毒に対する改善された防護の利点を随伴する。さらに、本発明によれば、第2のメタライゼーション平面のアクティブな電気的な利点の可能性が、しかし、それどころか、特にセンサ電極に相俟って開ける。ちなみに、定着剤層は、ボンディング材料として適している場合には、センサのボンディング領域に使用されてもよい。
【0012】
第2のメタライゼーション平面として形成された定着剤層が、コンタクト孔内で第1のメタライゼーション平面に位置することになるように被着されていると有利である。
【0013】
別のパッシベーション層が、定着剤層とセラミックス層との間に配置されていて、定着剤層が部分不動態化されているように構造化されていると有利であり得る。
【0014】
第1のメタライゼーション平面の電極構造体に2つの共面電極が構造化されており、第2のメタライゼーション平面が、規定された電位にないことが提案されていてよい。この事例では、等電位面による機能性のセラミックス領域の固着および制限の改善に関する上述した利点が結果的に生ぜしめられる。
【0015】
しかし、択一的には、第1のメタライゼーション平面の電極構造体が、第1の電極を形成しており、第2のメタライゼーション平面が、第2の電極として形成されていて、規定された電位にあり、これによって、感応性のセラミックス層が、鉛直な電極装置を備えていることが提案されていてもよい。これによって、その他の点で通常の、リソグラフィ技術により設定された横方向の電極間隔に比べて、著しく短縮された電極間隔が得られる。他方では、これによって、セラミックス層の横方向の延在長さももはや測定技術的な要求によって設定されておらず、場合により減じることができる。
【0016】
これに相俟って、電極を櫛型電極として形成すると有利である。しかし、このことは、あらゆる別の構成でも可能である。
【0017】
第1のメタライゼーション平面に電極構造体に対して付加的に加熱構造体と温度測定構造体とが形成されていると有利である。
【0018】
メタライゼーション層の構造体が、ダイヤフラムを有するSi基板の表面に被着されていると有利である。
【0019】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0020】
図1には、シリコン基板1が示してある。このシリコン基板1には、たとえば基板1の裏面からの空洞2のエッチングによって、誘電性のダイヤフラム3が形成されている。このダイヤフラム3は、たとえば二酸化ケイ素および窒化ケイ素の層順序から成っていてよい。ダイヤフラム3の上方には、たとえば白金材料から成る第1のメタライゼーション平面が位置している。このメタライゼーション層は、化学的なセンサのための加熱構造体4と、それぞれ異なる極性の櫛型電極指IDT1,IDT2と、場合により温度抵抗5とが形成されているように構造化されている。第1のメタライゼーション平面の白金メタライゼーション層のより良好な固着のために、一番上側のダイヤフラム層、ここでは窒化ケイ素を表面的に酸化ケイ素層3′に変換すると有利である。
【0021】
第1のメタライゼーション平面の上方には、たとえばCVD酸化物、CVD窒化物またはCVD酸窒化物から成るパッシベーション層6(中間絶縁層)が位置している。このパッシベーション層6には孔7が位置している。この孔7は、セラミックス層9とボンディングランドとのコンタクティングのために働く。パッシベーション層6には、第2のメタライゼーション平面である定着剤層8が位置している。この定着剤層8は、セラミックス層9に対する定着のために働き、さらに以下で図3に相俟って説明するように、規定された電位に最適に置くことができ、この場合、第2の櫛型電極IDT2として働くことができる。この場合、この事例では、第1のメタライゼーション平面が、評価構造体に関して、同じ極性の櫛型電極指IDT1しか有していない。
【0022】
図2に示したように、第2のメタライゼーション平面として形成された定着剤層8は、コンタクト孔開口7内で第1のメタライゼーション平面に位置することになるように被着されていてよい。別のパッシベーション層10が、選択的に第2のメタライゼーション層8に位置していてよい。パッシベーション層10もやはり接続目的のための孔を有している。
【0023】
本発明によるセンサを製作するためには、シリコン未加工ウェーハがまず熱酸化される。次いで、LPCVD窒化物の析出もしくは酸化物の形成が行われる。その後、ウェーハの表面で、第1のメタライゼーション層の析出と、ヒータ4、温度フィーラ5および櫛型電極IDTへの第1のメタライゼーション層の構造化が行われる。その後、パッシベーション層6、たとえばCVD酸化物が被着される。ウェーハの裏面には、ダイヤフラム3を形成するための空洞エッチングに用いられるエッチングマスクが規定される。減じられた熱導出によって、センサがより迅速に制御可能となる。引き続き、たとえば材料Au、Cr/Au、Pt、Pd、WまたはSnから成る定着剤層8もしくは第2のメタライゼーション平面の被着が行われる。これに続いて、定着剤層8が、櫛型電極指の間の領域にしか残らないように構造化される。のちに、この領域ならびに場合により、さらに、ボンディングランドにはセラミックスが固着されるようになっている。
【0024】
その後、ウェーハの表面でコンタクト孔7がパッシベーション層6にエッチングされる。この場合、定着剤層8は部分的にエッチングマスクとして働くことができる。定着剤層8の被着とコンタクト孔7のエッチングとは逆の順序で行われてもよい。次いで、表面に防護ラッカが塗布され、空洞2が背後から異方性のエッチングによって製作される。次いで、ペーストドットが塗布され、炉内で焼結されて、多孔質のセラミックス層9が形成される。自体公知の方法ステップに対するさらなる詳細は、上述したドイツ連邦共和国特許出願公開第19710358号明細書から知ることができる。
【0025】
図3には、本発明によるセンサの、改善された定着を上回る機能を説明するために、センサの横断面の一部が示してある。z軸目盛りは著しく過剰に高められて図示してある。また、図面をより見やすくするために、セラミックス性の機能層9も図示していない。
【0026】
両櫛型電極IDT1,IDT2の間に電圧が印加される。測定信号は電流として検出される。上側の第2のメタライゼーション平面、すなわち、構造化された定着剤層8が、規定された電位にない、すなわち、変動する事例では、両IDTは下側の第1のメタライゼーション平面に実現されている。付加的な第2のメタライゼーション層もしくは定着剤層8がないと、図3に破線の矢印によって示したように、両IDTの間の電流路が専らセラミックス層を介して延びる恐れがある。これに対して、本発明による定着剤層8によって、電流路は、図示のように、定着剤層8と両IDTとの間で延びている。この場合、電流路はコンタクト孔7以外で定着剤層8を介して延びている。たとえば被毒によるセラミックスドットもしくはセラミックス層9の外周面における伝導度の変化は、この構成では、有利には実際にもはや問題にならない。なぜならば、電気力線ひいては電流路が著しく空間的に制限されているからである。
【0027】
上側の第2のメタライゼーション平面(定着剤層8)が、規定された電位(たとえば0V)に置かれる事例では、第2のメタライゼーション平面がIDT2として使用され得る。電極間隔は、この事例では、変動する定着剤層8の場合の効果的にほぼ半分の大きさである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるセンサの断面図である。
【図2】同じ図面で、センサの変化形を示す図である。
【図3】同じ図面で、図1もしくは図2による横断面の概略的な一部を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基板、 2 空洞、 3 ダイヤフラム、 3′ 酸化ケイ素層、 4 ヒータ、 5 温度フィーラ、 6 パッシベーション層、 7 孔、 8 定着剤層、 9 セラミックス層、 10 パッシベーション層、 IDT1,IDT2 櫛型電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的なセンサであって、基板(1)に配置された、電極構造体(IDT)が形成された第1のメタライゼーション平面と、該第1のメタライゼーション平面に被着された、コンタクト孔(7)によって構造化されたパッシベーション層(6)と、該パッシベーション層(6)にかつコンタクト孔(7)内に形成された感応性のセラミックス層(9)とが設けられている形式のものにおいて、
第2のメタライゼーション平面として形成されていて、パッシベーション層(6)とセラミックス層(9)との間に配置された定着剤層(8)が設けられていることを特徴とする、化学的なセンサ。
【請求項2】
第2のメタライゼーション平面として形成された定着剤層(8)が、コンタクト孔(7)内で第1のメタライゼーション平面に位置することになるように被着されている、請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
別のパッシベーション層(10)が、定着剤層(8)とセラミックス層(9)との間に配置されていて、定着剤層(8)が部分不動態化されているように構造化されている、請求項1または2記載のセンサ。
【請求項4】
第1のメタライゼーション平面の電極構造体(IDT)に2つの共面電極(IDT1,IDT2)が構造化されており、第2のメタライゼーション平面が、規定された電位にない、請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項5】
第1のメタライゼーション平面の電極構造体(IDT)が、第1の電極(IDT1)を形成しており、第2のメタライゼーション平面が、第2の電極(IDT2)として形成されていて、規定された電位にあり、これによって、感応性のセラミックス層(9)が、鉛直な電極装置を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項6】
電極(IDT1,IDT2)が、櫛型電極として形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項7】
第1のメタライゼーション平面に電極構造体(IDT)に対して付加的に加熱構造体(4)と温度測定構造体(5)とが形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項8】
メタライゼーション層の構造体(4,5,IDT)が、ダイヤフラム(3)を有するSi基板(1)の表面に被着されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項9】
第2のメタライゼーション平面のための材料が、Au、Cr/Au、Pt、Pd、WまたはSnを含んでいる、請求項1から8までのいずれか1項記載のセンサ。
【請求項10】
感応性のセラミックス層(9)の被着が、スクリーン印刷法、ディスペンサ法またはインキジェット法によって行われるようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−528767(P2006−528767A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520669(P2006−520669)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001647
【国際公開番号】WO2005/012893
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504085808)パラゴン アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】paragon AG
【住所又は居所原語表記】Schwalbenweg 29, D−33129 Delbrueck, Germany
【Fターム(参考)】