説明

マイクロ波プラズマ処理装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマイクロ波プラズマ処理装置に係り、特に半導体基板等のアッシング処理に好適なマイクロ波プラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のマイクロ波プラズマ処理装置としては、例えば、特開昭63−122123号公報に記載のように、試料台が設けられた処理室につながりプラズマ発生室となる円形導波管の下側開口部に取り付けられた小径の孔を複数個有する反射端と、マイクロ波の導波管がつながる円形導波管の上側開口部に取り付けられた試料台と平行な凹面を有する放電管との間隔を、マイクロ波の管内波長の1/8以上とすることにより、効率の良いプラズマの発生を行わせ、反射端とウエハとの面を平行に設けることによって、ウエハの全面にわたって均一なアッシング処理が行えるようにし、ウエハを早くしかも均一に処理できるようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、導波管内でのマイクロ波の制御の点について配慮されておらず、プラズマ発生室へのマイクロ波の伝達効率が十分高められたものでなく、アッシング処理速度、アッシグ処理速度の面内均一性の点で十分なものが得られなかった。
【0004】本発明の目的は、導波管内でのマイクロ波の制御を行うことにより、プラズマ発生室へのマイクロ波の導入を効率良く行いプラズマ発生効率を高め、アッシング処理速度が高く、しかもアッシグ処理速度の面内均一性が良いマイクロ波プラズマ処理装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、プラズマ発生室と、プラズマ発生室に処理ガスを供給する手段と、プラズマ発生室の一端にパンチングメタルを介して接続された処理室と、処理室内を真空排気する手段と、プラズマ発生室の他端にマイクロ波導入窓を介して接続されプラズマ発生室の接続部に所定の大きさを有する拡大された空間を有し矩形導波管を介して伝送されたマイクロ波が導入される円形断面の拡大導波管とを具備し、拡大導波管の拡大された導波管内壁面に縦横の内径比が異なり矩形導波管断面の長辺と直行させて孔を縦長配置したリング状の仕切板を設けることにより、達成される。
【0006】
【作用】拡大導波管の仕切板が設けられた空間に、マイクロ波発生源からのマイクロ波を導く。拡大導波管の拡大された空間内では、仕切板を挟んで軸方向にマイクロ波の共振空間が形成され、拡大導波管の空間内部に強い電界が発生し、該強い電界のマイクロ波がマイクロ波導入窓に入射される。これによりプラズマ発生室内に強いプラズマが発生する。また、仕切板の形状を縦横の内径比が異なるリング状とし最適化することにより、拡大導波管の空間内に均一な電界が形成されプラズマ発生室内に均一なプラズマが発生する。これにより、被処理物のアッシング速度とアッシング処理速度の面内均一性が向上する。
【0007】
【実施例】本発明の一実施例を図1〜図5により説明する。図1は、本発明のマイクロ波プラズマ処理装置を示す。プラズマ発生室は、放電ブロック10、パンチングメタル12及びマイクロ波導入窓9で囲まれて形成される。マイクロ波導入窓9として、マイクロ波が透過可能でプラズマ発生室を形成しうる石英板(この他に、アルミナ等も使用できる。)を使用している。パンチングメタル12は、小径の孔を複数個有するもので特開昭63−122123号公報に記載のようにマイクロ波導入窓9との間隔をマイクロ波の管内波長の1/8波長以上としている。放電ブロック10には処理ガス供給装置(図示省略)につながる処理ガス供給口11が設けてある。
【0008】パンチングメタル12を介してプラズマ発生室に連通するプラズマ処理室13中には、被処理物であるウエハ14を配置するための試料台15がマイクロ波導入窓9と平行に設けてある。ヒータ16は、試料台15の下部に設けられ、ウエハ14を間接的に加熱している。プラズマ処理室13の下部には排気装置(図示省略)がつなげられており、プラズマ処理室13およびプラズマ発生室を所定の圧力に減圧排気している。
【0009】マイクロ波導入窓9を介してプラズマ発生室には拡大導波管が接続してある。拡大導波管は、この場合、導波管2,アイソレータ3,直角変換器4,整合器5,導波管6および7から成る。マイクロ波の発生源となるマグネトロン1は、この場合、周波数2.45GHzのものであり、マグネトロン1が取り付けられた矩形導波管2は、この場合、TE10モードのマイクロ波が伝送できる標準寸法としてある。3は矩形導波管2内を戻る反射波を吸収するためのアイソレータである。直角変換器4はマイクロ波の進行方向を直角に変換するためのものである。5は矩形導波管2を伝送されるマイクロ波の反射をなくすための負荷のインーピーダンス整合を行うスタブ式整合器である。
【0010】拡大導波管の拡大空間である共振室17は、導波管6,7及びマイクロ波導入窓9によって形成され、室内にはマイクロ波を共振させるための仕切板8を設けてある。仕切板8は、図2に示すように孔形が縦Aと横Bで異なるリング状に形成してある。また、仕切板8の孔は長い方が、導波管2の矩形の長辺と直交するように配置される。
【0011】上記のように構成された装置をアッシング装置として用いた場合について説明する。ホトレジストのアッシングを行うウエハ14を公知の搬送技術によりヒータ16で温度が200℃に保たれた試料台15上に載置し、処理ガス導入口11よりO2ガス1400sccmを供給しプラズマ発生室及びプラズマ処理室13の圧力を133paにして、マグネトロン1からマイクロ波を発生させ測定を行った。この場合、導波管7の径をφ234mm、仕切板8の孔形を縦A=140mm、横B=200mm、仕切板8とマイクロ波導入窓9の間隔を55mmとし、導波管6と仕切板8の間隔lを変化させることによりアッシングを行ったところ図3に示すように間隔lを112mmとした時に高いアッシング速度と、良好なアッシング速度面内均一性が得られた。
【0012】図4は、仕切板8の孔形を横B/縦Aの寸法比で変化させ、そのときのアッシング速度とウエハ内の均一性を表わしたものであり、寸法比B/Aが、約1.4のときにアッシング速度もウエハ内均一性も一番良くなった。
【0013】これは、導波管6と仕切板8の間隔lを112mmにすることによる共振と仕切板8とマイクロ波導入窓9の空間による共振とを組み合わせたことで、マイクロ波の電界が強くなりプラズマの発生効率が高まったと考えられる。これにより、アッシング速度の向上が得られ、且つ、均一な電界分布を作り出すことによりアツシング速度の面内均一性が向上したものと考えられる。
【0014】また、間隔lを112mmとし、パンチングメタル12を設置した場合と設置しない場合を比較した。これを図5に示す。
【0015】以上、本実施例によれば、拡大導波管の拡大空間に縦横比の異なる孔を有するリング状の仕切板を設けることにより、拡大導波管内のマイクロ波を電界が強くほぼ均一なものとすることができ、プラズマ放電室で密度が高くほぼ均一なプラズマを生成することができる。これにより、アッシング速度の向上およびアッシング速度の面内均一性の向上が図れる。
【0016】なお、本実施例ではウエハのアッシングの場合について述べたが、プラズマを用いて所定の形状にエッチングする場合や、ウエハ上にデポジションを生じさせる場合にも応用可能である。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、導波管内に仕切板を設置することにより強い電界を生じさせ、プラズマ発生室での活性粒子を効率的に発生でき、アッシング処理速度、アッシング処理速度面内均一性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるマイクロ波プラズマ処理装置を示す構成図である。
【図2】図1の装置における仕切板を示す平面図である。
【図3】図1の装置における仕切板位置とアッシング速度との関係を示す図である。
【図4】図1の装置における仕切板の形状とアッシング速度およびアッシング処理速度面内均一性の関係を示す図である。
【図5】図1の装置におけるパンチングメタルの設置の有無によるアッシング速度の比較を示した特性図である。
【符号の説明】
1…マグネトロン、6,7…導波管、8…仕切板、9…マイクロ波導入窓、10…放電ブロック、12…パンチングメタル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】プラズマ発生室と、前記プラズマ発生室に処理ガスを供給する手段と、前記プラズマ発生室の一端にパンチングメタルを介して接続された処理室と、前記処理室内を真空排気する手段と、前記プラズマ発生室の他端にマイクロ波導入窓を介して接続され前記プラズマ発生室の接続部に所定の大きさを有する拡大された空間を有し矩形導波管を介して伝送されたマイクロ波が導入される円形断面の拡大導波管とを具備し、前記拡大導波管の拡大された導波管内壁面に縦横の内径比が異なり前記矩形導波管断面の長辺と直行させて孔を縦長配置したリング状の仕切板を設けたことを特徴とするマイクロ波プラズマ処理装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【特許番号】第2972507号
【登録日】平成11年(1999)8月27日
【発行日】平成11年(1999)11月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−278085
【出願日】平成5年(1993)11月8日
【公開番号】特開平7−135095
【公開日】平成7年(1995)5月23日
【審査請求日】平成10年(1998)6月19日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390010973)日立笠戸エンジニアリング株式会社 (20)
【参考文献】
【文献】特開 平5−283196(JP,A)