説明

マイクロ波処理装置

【課題】反射電力を最小とする2箇所の給電部間の位相差より、被加熱物の配置を検知することで、最適な加熱条件を把握でき、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱し、同時に効率よく動作するマイクロ波処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波は、2波長以下の間隔に配置した2箇所の給電部5a、5bから加熱室8に放射される。加熱室8から戻る反射電力を最小にする位相差より被加熱物の配置を検知して、最適な加熱条件で制御することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱し、同時に効率よく動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生部を備えたマイクロ波処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のマイクロ波処理装置には、半導体発振部と、発振部の出力を増幅する複数の増幅部と、加熱室と、給電部分のインピ−ダンスを検知するインピ−ダンス検知部とを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。ここでは、インピ−ダンス検知部の検知結果により発振周波数を制御して、むらのない安定した調理を可能としている。
【0003】
発振周波数を可変できるマイクロ波加熱電源と、マイクロ波電力を加熱室へ放射するアンテナと、アンテナからの反射電力を検波する検波器とを有するものがある(例えば、特許文献2参照)。ここでは、反射電力が最小となる電源の発振周波数を追尾し、その近傍で電源を駆動し、常に最大の電力効率で駆動できるとしている。
【0004】
半導体発振部と、発振部の出力を複数に分割する分配部と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅部と、増幅部の出力を合成する合成部とを有し、分配部と増幅部との間に位相器を設けた従来技術がある(例えば、特許文献3参照)。ここでは、位相器制御で複数の放射アンテナからの放射電力比率や位相差を任意にかつ瞬時に変化させて、一様性の優れた加熱ができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−165399号公報
【特許文献2】特公昭62−048354号公報
【特許文献3】特開昭56−132793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の複数給電方式における構成では、下記説明のように、加熱室内に収納されたさまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱処理することは難しいという課題を有していた。
【0007】
加熱室のインピーダンスや反射電力の検知結果に従い、発振周波数を最適化して、加熱むらを制御したり、より良い電力効率で動作させたりすることは可能だが、1箇所からのマイクロ波電力給電では、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に対応するには不十分だった。前記従来の構成を複数箇所の給電に応用する場合、加熱室のインピーダンス検知のみでは、給電部間の透過電力の影響が把握できないため、検知誤差が大きくなる。
【0008】
複数箇所の給電を同一発振周波数で動作させて、周波数追尾する制御では、合成された電磁波の分布が固定化され、被加熱物の配置によっては最適な加熱条件が見つからず、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に対応するには不十分となる。
【0009】
複数の放射アンテナからの放射電力比率や位相差を変化させるだけでは、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に加熱処理することは難しく、効率の悪い加熱処理となってしまう。
【0010】
また、複数箇所の給電部への発振周波数制御と位相差制御全ての組み合わせ条件に対して、加熱室のインピーダンスや反射電力の検知を確認するのには時間がかかりすぎるという課題も有している。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物の配置を検知して、被加熱物に合った加熱条件をより早く、精度よく決定でき、決定した情報に基づいて給電場所および出力位相をそれぞれ最適に制御することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱でき、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作するマイクロ波処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波処理装置は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波電力を発生させる発振部と、前記発振部の出力を複数に分配する電力分配部と、前記電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、前記位相可変部および/または前記電力分配部の出力を前記加熱室に給電する複数の給電部と、前記給電部から前記位相可変部または前記電力分配部方向に伝播する反射電力を検出する複数の電力検出部と、前記発振部の発振周波数と前記位相可変部の出力位相を制御する制御部と、前記マイクロ波の2波長以下の間隔のいずれか2箇所の前記給電部の組み合わせを使用し、2箇所の前記給電部の反射電力を最小とする位相差より前記被加熱物の配置を推定する配置検知手段とを備えた構成としたものである。
【0013】
これによって、被加熱物の配置が短時間に検知でき、検知配置より被加熱物に合った加熱条件をより早く、精度よく決定でき、給電場所および出力位相をそれぞれ最適に制御することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱でき、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマイクロ波処理装置は、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱し、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波処理装置の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図
【図4】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における給電部の配置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波電力を発生させる発振部と、発振部の出力を複数に分配する電力分配部と、電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、位相可変部および/または電力分配部の出力を加熱室に給電する複数の給電部と、給電部から位相可変部または電力分配部方向に伝播する反射電力を検出する複数の電力検出部と、発振部の発振周波数と位相可変部の出力位相を制御する制御部と、マイクロ波の2波長以下の間隔のいずれか2箇所の給電部の組み合わせを使用し、2箇所の給電部の反射電力を最小とする位相差より被加熱物の配置を推定する配置検知手段とを備えた構成としたものである。
【0017】
本発明によれば、複数の給電部から2箇所の給電部に絞ることで、配置検知を簡略化で
き、被加熱物の配置を検知するのに適した給電部の組合せを使用することで、精度良く位置検知ができ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0018】
第2の発明は、特に第1の発明において、配置検知に使用する給電部の少なくとも1箇所は、被加熱物を設置できる範囲の外郭に接した位置または接した位置より外側に設置する構成としたとしたものである。
【0019】
本発明によれば、被加熱物配置より外側に位置する給電部と組み合わせて使用することで、より広範囲に精度良く被加熱物の配置検知を行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0020】
第3の発明は、特に第1の発明において、給電部の一方から被加熱物の位置を経て、他方の給電部に至る伝播総距離が、最小となる給電部の組み合わせを、配置検知により検知した被加熱物の位置より判定し、判定された給電部の組み合わせを使用して配置検知を行い、被加熱物の位置を再度検知する構成としたものである。
【0021】
本発明によれば、被加熱物に近い給電部を使用することで、被加熱物の配置検知をより高精度で行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0022】
第4の発明は、特に第1の発明において、配置検知に使用する給電部の組み合わせは、給電部近傍に発生する電界方向を一致させた構成としたものである。
【0023】
本発明によれば、電界方向の一致により2箇所の給電部間の相互干渉が強くなり、被加熱物の配置検知をより高精度で行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0024】
第5の発明は、特に第1の発明において、配置検知に使用する給電部の組み合わせへは、同じ周波数のマイクロ波を供給する構成としたものである。
【0025】
本発明によれば、周波数の一致により2箇所の給電部間の相互干渉が強くなり、被加熱物の配置検知をより高精度で行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0026】
第6の発明は、特に第1の発明において、制御部は、異なる給電部の組み合わせを使用した配置検知を追加して実施する構成としたものである。
【0027】
本発明によれば、被加熱物の配置検知を異なる角度から複数回行うことで、より高精度に被加熱物の配置を検知でき、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く判断できる。
【0028】
第7の発明は、特に第1の発明において、制御部は、同じ給電部の組み合わせを使用した配置検知を複数回実施する構成としたものである。
【0029】
本発明によれば、被加熱物の配置検知を繰り返し行なうことで、加熱による被加熱物の変化を把握でき、より被加熱物に適した条件の修正が行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く実施できる。
【0030】
第8の発明は、特に第1の発明において、配置検知により検知した被加熱物の位置情報
より、少なくとも被加熱物の加熱に使用する給電部および/または、位相可変部の出力位相を確定する構成としたものである。
【0031】
本発明によれば、被加熱物の配置情報を使用して被加熱物に適した加熱条件を判断することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く実施できる。
【0032】
第9の発明は、特に第1の発明において、制御部は、配置検知を被加熱物の加熱を開始する前に行う構成としたものである。
【0033】
本発明によれば、加熱開始前に配置検知による被加熱物に適した加熱条件を判断することで、被加熱物の加熱処理全般を通して、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱条件を短時間でより精度良く実施できる。
【0034】
第10の発明は、特に第1の発明において、給電部の近傍に発生する電界方向が、配置検知に使用する給電部と異なる給電部有し、制御部は、配置検知の実施と同時に、異なる電界方向の給電部へマイクロ波電力の供給を行う構成としたものである。
【0035】
本発明によれば、被加熱物の配置検知と別の給電部組合せを使用して、被加熱物の配置検知または/および、被加熱物の加熱を平行して行なえ、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物に適した加熱を短時間でより精度良く実施できる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波処理装置の概略構成図である。図1において、マイクロ波発生部は半導体素子を用いて構成した発振部1a、1b、発振部1a、1bの出力を2分配する電力分配部2a、2b、電力分配部2a、2bそれぞれの出力を増幅する半導体素子を用いて構成した増幅部4a〜4d、増幅部4a〜4dによって増幅されたマイクロ波出力を加熱室8内に給電する給電部5a〜5d、および電力分配部2a、2bと増幅部4a〜4dを接続するマイクロ波伝播路に挿入され、入出力に任意の位相差を発生させる位相可変部3a〜3d、増幅部4a〜4dと給電部5a〜5dを接続するマイクロ波伝播路に挿入され、給電部5a〜5d側から戻ってくるマイクロ波電力を検出する電力検出部6a〜6d、電力検出部6a〜6dによって検出される反射電力に応じて発振部1a、1bの発振周波数と位相可変部3a〜3dの出力位相を制御する制御部7とで構成している。
【0038】
以上のように構成されたマイクロ波処理装置について、以下その動作、作用を説明する。まず、被加熱物10を加熱室8に収納し、その加熱設定を操作部(不図示)から入力し、加熱を開始する。加熱開始信号を受けた制御部7は、加熱条件確定の後、加熱条件に従い制御出力信号を出し、マイクロ波発生部が動作を開始する。制御部7は、駆動電源(不図示)を動作させて、発振部1a、1bに電力を給電する。
【0039】
この時、発振部1a、1bの周波数は、例えば2450MHzに設定する電圧信号を供給し、発振が開始する。発振部1a、1bを動作させると、その出力は電力分配部2a、2bにて各々略1/2分配され、4つのマイクロ波電力となる。以降、駆動電源を制御して増幅部4a〜4dを動作させる。
【0040】
それぞれのマイクロ波電力は並列動作する増幅部4a〜4d、電力検出部6a〜6d、
給電部5a〜5dを経て加熱室8内に給電される。加熱室8内へ給電されたマイクロ波電力の内、被加熱物10などに吸収されなかったマイクロ波電力は、給電部5a〜5dを通じて戻り、給電部5a〜5d個々の反射電力が電力検出部6a〜6dにて検出され、その反射電力量に比例した信号は制御部7に送られ、給電部5a〜5d夫々の反射電力が把握される。
【0041】
制御部7は、マイクロ波加熱に移る前に、給電部5a〜5dの中から2箇所の組合せ、例えば給電部5a、5bの位相差に対する反射電力を検出する。位相差に対する反射電力の検出は、例えば位相可変部3a、3bによって生じる位相差を0度から360度まで、10度ピッチで変化させ、給電部5a、5b側から戻ってくる反射電力を電力検出部6a、6bによって検出して、位相差に対する反射電力値を把握する。
【0042】
把握した反射電力を最小にする位相差より、被加熱物10の配置を検知する配置検知を行なう。加熱を開始する前に、配置検知を行い検知した被加熱物の位置より、加熱に使用する給電部および、位相値を選択し、加熱条件の確定を行なうことで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱でき、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作させることができる。
【0043】
次に、位相差と被加熱物配置の関係を説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図である。給電部5a、5bは、2波長の間隔で設置され、この給電部5a、5bから放射されたマイクロ波は、電波伝播11a、11bのように広がってゆく。
【0044】
加熱室8の壁面ではマイクロ波の反射があるため、電波伝播11a、11bの広がりは複雑になるが、加熱室8の壁面での反射を経て被加熱物に届くマイクロ波は、伝播経路が長くて電力が小さくなるので、被加熱物が吸収する電力を見る場合は、給電部から被加熱物に直接吸収されるマイクロ波の伝播経路が支配的になる。
【0045】
電波伝播11a、11bが同位相で重なる同相干渉位置12a、12b、12cでは、マイクロ波電力がほぼ合算され、この位置に被加熱物が配置されると強く加熱され、反射電力も小さくなる。
【0046】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図である。給電部5a、5bからある位相差で放射されたマイクロ波は、電波伝播11a、11bのように広がってゆく。マイクロ波放射時の位相差により電波伝播11a、11bが同位相で重なる同相干渉位置12a、12b、12cは、図2の位置からずれる。
【0047】
このように、2箇所の給電部組合せから放射するマイクロ波の位相差を変化させることで、同相干渉位置12a、12b、12cを移動させることができ、反射電力を最小にする位相差を見極めることで、2箇所の給電部を結ぶ線上方向に対する被加熱物配置の位置関係を検知することができる。
【0048】
なお、同相干渉位置12b、12cは、それぞれ給電部5a、5bの一方に近く、この付近に置かれた被加熱物は、給電部5a、5bの一方から多くのマイクロ波電力を吸収するため、反射電力も一方に偏るので、同相干渉位置12aと識別できる。
【0049】
図4、図5は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波の伝播の様子を示す図である。図4は給電部5a、5bの間隔が2波長を越える場合の、図5は給電部5a、5bの間隔が2波長未満の場合のマイクロ波の伝播の様子を示す図をそれぞれ示す。図2、図4、図5を比較すると、給電部5a、5bの間隔により同相干渉位置12b、12cの位
置がずれることが分かる。
【0050】
図4の給電部5a、5bの間隔が2波長を越える場合、同相干渉位置12b、12cは、給電部5a、5bの内側となり、同相干渉位置12aと識別が困難となる。図5の給電部5a、5bの間隔が2波長未満の場合、同相干渉位置12b、12cは、それぞれ給電部5a、5bの一方から更に遠くなり、給電部5a、5bの反射電力の偏りにより、同相干渉位置12aと識別できる。
【0051】
給電部5a、5bの間隔が1波長近くになると同相干渉位置12b、12cは、棚板14の上側に現れなくなり、同相干渉位置12aのみで被加熱物配置の位置関係を検知することができる。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施の形態における給電部の配置を示す図である。給電部5a〜5dは、図1の給電部5a、5bのように加熱室8の棚板14の下側に配置され、被加熱物10は棚板14の上側に置かれる。被加熱物の水平方向配置は、被加熱物設置範囲13内で任意の場所に配置され、給電部5aの水平方向配置は被加熱物設置範囲13の外側に設置されている。
【0053】
被加熱物配置の位置関係を検知できる範囲は、使用する2箇所の給電部の設置間隔により変わるが、給電部近傍からその間となる。被加熱物が被加熱物設置範囲13ぎりぎりに置かれた場合は、給電部5aのように被加熱物設置範囲13近傍から外側に配置された給電部を使用することで、被加熱物配置の位置関係を検知することができる。
【0054】
前述のように、被加熱物配置の位置関係を検知できる範囲は、給電部近傍からその間となるため、2箇所の給電部5a、5bを結ぶ配置間方向線15から離れる方向への位置検知はできないので、異なる2箇所の給電部組み合わせ5c、5dを使用して異なる方向への配置検知を行なうことで、被加熱物の位置がより明確に検知できる。
【0055】
被加熱物配置の位置関係の検知に使用する給電部の一方から、被加熱物の位置を経て他方の給電部に至る伝播総距離が長くなると、被加熱物に届くマイクロ波電力が小さくなったり、加熱室8の壁面での反射による影響がでたりするため、配置検知を複数回行う中で、伝播総距離が最小となる給電部の組み合わせを使用することで検知位置の精度が向上する。
【0056】
被加熱物配置の位置関係の検知は、2箇所の給電部から放射されたマイクロ波の相互干渉を利用しているので、給電部から放射されるマイクロ波は、給電部近傍に発生する電界方向を一致させ、供給するマイクロ波を同じ周波数にすることで、より強く相互干渉させることができ、検知精度も向上する。
【0057】
例えば、図1の給電部5a、5bはその近傍の励振電界9aが一致するので、この2箇所の給電部5a、5bに発振部1aから同じ周波数のマイクロ波を供給して、位相可変部3a、3bにより位相差を制御しながら、電力検出部6a、6bにて反射電力を検出することで、反射電力を最小にする位相差を精度良く測定できる。
【0058】
加熱中に被加熱物が変形したり、マイクロ波を良く吸収する部分が移動したりした場合、そのままの条件では、最適な加熱を行なえないので、再度配置検知を行ない、加熱条件を更新することで、本発明のマイクロ波処理装置は、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱でき、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作させることができる。
【0059】
被加熱物配置の位置関係の検知は、2箇所の給電部から放射されたマイクロ波の相互干渉を利用しているので、給電部近傍に発生する電界方向が異なる給電部から放射されるマイクロ波との相互干渉は弱くて影響がないので、給電部近傍に発生する電界方向が異なる給電部の組合せを同時に使用して、複数方向の被加熱物配置の位置関係の検知や加熱を同時進行できる。
【0060】
例えば、図1の給電部5a、5bはその近傍の励振電界9aが一致し、給電部5c、5dはその近傍の励振電界9bが励振電界9aと異なる方向で一致するので、給電部5a、5bの組合せと、給電部5c、5dの組み合わせを使用して、同時に2方向の被加熱物配置の位置関係の検知を行える。
【0061】
以上のように、被加熱物配置の位置関係の検知により最適な加熱条件を確定し、使用する給電部や、マイクロ波電力出力位相を制御することで、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を短時間で所望の状態に加熱することができ、同時に加熱室から戻るマイクロ波電力を低く抑えて効率よく動作させることができる。
【0062】
なお、上記の説明では、給電部の組み合わせを加熱室の1壁面に設置した例で説明したが、複数の壁面に配置して構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかるマイクロ波処理装置は複数の給電部を有し、給電するマイクロ波電力の発振周波数や給電部間の位相差を変化させる装置を提供できるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1a、1b 発振部
2a、2b 電力分配部
3a〜3d 位相可変部
4a〜4d 増幅部
5a〜5d 給電部
6a〜6d 電力検出部
7 制御部
8 加熱室
9 励振電界
10 被加熱物
11a、11b 電波伝播
12a〜12c 同相干渉位置
13 被加熱物配置範囲
14 棚板
15 配置方向線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、マイクロ波電力を発生させる発振部と、前記発振部の出力を複数に分配する電力分配部と、前記電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、前記位相可変部および/または前記電力分配部の出力を前記加熱室に給電する複数の給電部と、前記給電部から前記位相可変部または前記電力分配部方向に伝播する反射電力を検出する複数の電力検出部と、前記発振部の発振周波数と前記位相可変部の出力位相を制御する制御部と、前記マイクロ波の2波長以下の間隔のいずれか2箇所の前記給電部の組み合わせを使用し、2箇所の前記給電部の反射電力を最小とする位相差より前記被加熱物の配置を推定する配置検知手段とを備えたマイクロ波処理装置。
【請求項2】
前記配置検知に使用する前記給電部の少なくとも1箇所は、前記被加熱物を設置できる範囲の外郭に接した位置または前記接した位置より外側に設置する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
前記給電部の一方から前記被加熱物の位置を経て、他方の前記給電部に至る伝播総距離が、最小となる前記給電部の組み合わせを、前記配置検知により検知した前記被加熱物の位置より判定し、判定された前記給電部の組み合わせを使用して前記配置検知を行い、前記被加熱物の位置を再度検知する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項4】
前記配置検知に使用する前記給電部の組み合わせは、前記給電部近傍に発生する電界方向を一致させた構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項5】
前記配置検知に使用する前記給電部の組み合わせへは、同じ周波数のマイクロ波を供給する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、異なる前記給電部の組み合わせを使用した前記配置検知を追加して実施する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、同じ前記給電部の組み合わせを使用した前記配置検知を複数回実施する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項8】
前記配置検知により検知した前記被加熱物の位置情報より、少なくとも前記被加熱物の加熱に使用する前記給電部および/または、前記位相可変部の出力位相を確定する構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記配置検知を前記被加熱物の加熱を開始する前に行う構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項10】
前記給電部の近傍に発生する電界方向が、前記配置検知に使用する前記給電部と異なる前記給電部有し、前記制御部は、前記配置検知の実施と同時に、前記異なる電界方向の前記給電部へマイクロ波電力の供給を行う構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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