説明

マイクロ波無電極ランプ、照明装置、プロジェクタ

【課題】長寿命で、発光効率が高く、高輝度が得られるマイクロ波無電極ランプを提供する。
【解決手段】マイクロ波無電極ランプ10は、非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間21を有し、外周部から封入空間21に入り込む窪みとしての溝26が設けられた透明容器20と、溝26の内部に先端部31a,32aが挿入される電気的に独立した導電体31,32と、これら導電体の周囲が絶縁体22,23によって封止され、導電体31,32を含む絶縁体22,23の長手方向周囲に導電性材料からなるコイル41,42が巻回されている。マイクロ波無電極ランプ10は封入空間21内に封止された発光物質にマイクロ波を照射して高効率で発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光物質にマイクロ波を照射して発光するマイクロ波無電極ランプと、このマイクロ波無電極ランプを備える照明装置と、この照明装置を備えるプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号に応じた画像または映像情報を投写するプロジェクタは、プレゼンテーションや、シアタなどに多く用いられている。これらプロジェクタの光源には、速やかに明るい投写映像を得るために、素早く点灯し、高輝度で安定した光量を確保することができること、発光スペクトルを変えずに光量を調整可能であること、ランプが長寿命であることが期待されている。このような光源としてマイクロ波無電極ランプ及びマイクロ波無電極ランプを用いた照明装置が提案されている。
【0003】
マイクロ波無電極ランプ及び照明装置としては、膨出部とそれに連設する細管部を有する放電容器と、細管部に支持されて先端部が膨出部の放電空間内に臨む放電コンセントレータ(内部導電体)とからなるランプがあり、このランプの細管部外周に挿着される筒状の外部導電体に、上述の放電コンセントレータに放電を励起するエネルギーを供給する高周波電源を接続してなる照明装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、マイクロ波発生器に一端が接続される同軸伝送線にアンテナを結合し、このアンテナを介して同軸伝送線に結合された同軸共振器が設けられ、同軸共振器を構成する軸状の内導体の周囲を取り巻くドーナツ形状のランプ、または内導体の先端部が埋没する窪みを有するランプを備えた照明装置というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−102005号公報(第3頁、図2)
【特許文献2】特開2000−348684号公報(第3、4頁、図1,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1では、内部導電体の外周に筒状の外部導電体を設け、外部導電体に高周波電源を接続し、電界を発光部に集中させて輝度を高めている。しかしながら、このようなランプでは、発光効率が充分ではなく、供給するエネルギーに対して高い輝度が得られないという課題がある。
【0007】
また、特許文献2によれば、マイクロ波発生器に接続される同軸伝送線にアンテナを接続し、アンテナを介して同軸伝送線に結合する同軸共振器が設けられている。同軸共振器に備えられる内導体は放電開始補助体と考えられ、電界をランプ内に効率よく集中できないという課題を有している。また、発光領域が広く点光源にはなりにくいという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決することを要旨とし、長寿命で、発光効率が高く、高輝度が得られるマイクロ波無電極ランプと、瞬時点灯、省電力が可能な照明装置と、この照明装置を搭載する利便性が高いプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマイクロ波無電極ランプは、発光物質にマイクロ波を照射して発光するマイクロ波無電極ランプであって、非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、前記窪みの内部に先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、マイクロ波無電極ランプ(以降、単にランプと表すことがある)にマイクロ波を照射したとき、導電体にマイクロ波の電界成分が集中する。この導電体の先端部を、発光物質が封入される封入空間内に入り込む窪みの内部に挿入しているので、導電体が電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、しかも導電体は複数備えられているので、マイクロ波の電界成分を導電体の先端部に集中してランプの発光効率を高めることができる。
【0011】
さらに、発光物質は、複数の導電体に挟まれた領域に電界がより集中し強く発光するので、後述するプロジェクタにおいて好ましい点光源に近づく。
【0012】
また、複数の導電体それぞれを電気的に独立させていることから、旧来の放電電極を有するランプ、あるいは、内部導電体または外部導電体に直接電界を与えるランプに比べ、ランプの長寿命化を実現できる。
【0013】
また、本発明のランプは、後述する照明装置に対して電気的に接続しないため、支持構造等に制約が少なく、支持構造、配設位置などの自由度が高いという利点がある。
【0014】
また、前記窪みが、前記透明容器の外周に設けられた溝であることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、透明容器は溝によってくびれた略瓢箪状となる。複数の導電体をこの溝に向かって配設することから、導電体の数や配設位置の自由度が高くなるという効果がある。
【0016】
また、前記窪みが、複数の凹部であることが望ましい。
【0017】
窪みを凹部にすることで、窪みを上述した溝としたときと同様な効果が得られる他、透明容器の表面全体の任意の位置に窪みを形成することができ、導電体の配設の自由度をさらに高めることができる。
【0018】
また、前記導電体が、絶縁性材料によって被覆されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、導電体の全表面を絶縁していることから、複数の導電体間のショート、導電体と後述する照明装置とのショートを防止することができる。
【0020】
また、前記導電体が、絶縁性材料からなる筒状部材に挿入されていることが望ましい。
【0021】
導電体を絶縁性材料からなる筒状部材に挿入することで、上述した絶縁性材料で封止する構造と同等な効果を有し、そのうえ筒状部材は容易に製造でき、導電体に筒状部材を挿着することも容易であるという効果がある。
【0022】
また、前記透明容器が、該透明容器の外周から突設される細管部を有し、前記細管部が、前記透明容器との接続部において、前記窪みに相当する位置を封止した穴を有し、前記穴に前記導電体が挿入されていることが望ましい。
【0023】
このようにすれば、導電体を透明容器に一体に形成された細管部に挿入しているため、構造を簡単にすることができる。
【0024】
また、前記透明容器が、該透明容器の外周から突設され、前記透明容器を照明装置に固定する支持柱を備えていることが好ましい。
【0025】
詳しくは、後述する実施の形態で説明するが、透明容器から突設される支持柱を照明装置に固定することで、ランプの照明装置への固定を容易に行うことができる。
【0026】
また、前記支持柱が、前記透明容器の封入空間に連通する発光物質封入孔を備えていることが望ましい。
【0027】
透明容器には発光物質(具体的には発光ガス)を封入する。この際、支持柱に発光物質封入孔を設けることにより、発光物質の注入及び封止が容易になるという効果がある。
【0028】
また、前記導電体の長手方向周囲に、前記導電体とは離間して配設された外部導電体がさらに備えられていることが好ましい。
【0029】
導電体の外周部にさらに外部導電体を設けることにより、外部導電体が電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、マイクロ波の電界成分を内側の導電体に集中しランプの発光効率をさらに高めることができる。
【0030】
また、前記外部導電体が、該外部導電体の長手方向周囲に巻回される導電性材料からなるコイルであることが好ましい。
【0031】
このように外部導電体をコイルにすれば、電界の集中効果に対応してコイルの断面形状、太さ(断面積)、巻き数など自在に設定することが可能であり、製造しやすく材質も適宜選択することができる。
【0032】
また、前記外部導電体が、前記導電体の外周に挿着される筒状部材であり、側面にスリット状の開口部を有していることが望ましい。
【0033】
外部導電体としてスリット状の開口部を有する筒状部材を用いることにより、上述したコイルを用いる構造と同等な効果が得られ、外部導電体をコイルにすること、スリットを有する筒状部材にすることにより外部導電体を軽量化することができる。
【0034】
また、本発明の照明装置は、非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、前記窪みに先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、を備えていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプと、前記マイクロ波無電極ランプにマイクロ波を照射するマイクロ波発生部と、が備えられていることを特徴とする。
【0035】
この発明によれば、前述した発光効率が高いランプを用いることにより、同じ高周波入射電力を入力すれば高輝度の照明装置を実現できる。つまり、省電力化が図れる。
【0036】
また、前記マイクロ波発生部が、弾性表面波共振子を含む固体高周波発振部と導波部を備えていることが好ましい。
ここで、弾性表面波共振子としては、例えば、ダイヤモンドSAW共振子が代表される。
【0037】
ダイヤモンドSAW共振子は周波数温度特性が優れており、温度変動に対する周波数変動を抑制することができるので、点灯中においてマイクロ波出力を安定させることができる。従って、安定した輝度を維持することができる。
【0038】
さらに、ダイヤモンドSAW共振子は、弾性表面波の位相速度を高速にすることができるという特徴を有し、より高い周波数で励振させることができること、励振信号入力から励振始動が急峻であり、瞬時にランプを点灯させることができる。
【0039】
また、本発明のプロジェクタは、非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、前記窪みに先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、を備えるマイクロ波無電極ランプと、前記マイクロ波無電極ランプにマイクロ波を照射するマイクロ波発生部と、が備えられる照明装置と、前記照明装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、が備えられていることを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、前述した照明装置を採用することにより、ランプ点灯タイミングが早く、しかも高輝度で立ち上がるため、従来のようにスイッチ入力してから所定の輝度にて映像を投写できるまでの長い待ち時間を格段に短縮することができる。
【0041】
また、点灯及び消灯を短時間の内に繰り返すことが可能となり、ユーザーの利便性を向上させることができるという効果がある。
【0042】
さらに、従来の放電式ランプを用いる照明装置を備えたプロジェクタと比較して、照明装置の長寿命化を実現し、照明装置交換の煩わしさを低減し、経済的効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は本発明に係る照明装置、図5〜図13はランプの実施例を示し、図14は、本発明に係るプロジェクタの概略構成を示している。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(照明装置)
【0044】
図1は、本発明に係る照明装置の概略構造を示す模式図である。図1において、照明装置60は、マイクロ波発生部100と、発光部500と、マイクロ波発生部100及び発光部500を収容する遮蔽部としての照明ケース80とを有して構成される。また、発光部500は、ランプ10と反射器71とリフレクタ70と支持部90とを有して構成される。
【0045】
マイクロ波発生部100は、リフレクタ70の背面側に配置接続されている。
なお、一般に、マイクロ波帯としての慣用的周波数は、3GHz〜30GHzをいうが、本発明では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHz帯をマイクロ波帯と定義する。
【0046】
反射器71は、導電性材料である金属材料で形成され、球面形状の曲面を有するマイクロ波反射面72を有している。そして、反射器71には、マイクロ波の1/4波長以下の口径を有する孔部73が複数形成されている(図示は簡略化している)。また、マイクロ波反射面72の球面形状は、ランプ10の中心部の発光領域21の略中心部が焦点となるように構成されている。このマイクロ波反射面72はマイクロ波を反射させる。また、複数の孔部73は、リフレクタ70の光束反射面70aで反射した光束500bを通過させる。
【0047】
なお、マイクロ波反射面72の形状は放物面形状の曲面を有していても良い。なお、マイクロ波反射面72の形状は収束性の面では、放物面形状の曲面を有することが好ましいが、製造簡易性の面では、球面形状の曲面を有する方が有利である。
【0048】
リフレクタ70は石英ガラスで形成され、内面側には、ランプ10の外面に相対して放物面形状の曲面を有する光束反射面70aが形成されている。光束反射面70aは、マイクロ波を透過し、光束を反射する誘電体多層膜により構成される。また、光束反射面70aの放物面形状は、リフレクタ70の内面側に設置されるランプ10の発光領域21の略中心部が焦点となるように形成されている。なお、光束反射面70aの形状は球面形状の曲面を有していても良い。
【0049】
ここで、リフレクタ70の開放端部には、反射器71の開放端部が係合することにより、リフレクタ70に反射器71が固定される。
【0050】
ランプ10は、発光物質が収容された透明容器20と、一対の導電体31,32とから構成され、導電体31,32それぞれの先端部31a,32aが、透明容器20の封入空間21(発光領域21と表すことがある)内まで入り込んだ状態で透明容器20固定されている。そして、ランプ10は、支持部90によりリフレクタ70の内側底部に固定されている。なお、ランプ10の詳しい構造については、後述する実施例にて図5〜図13を参照して説明する。
【0051】
支持部90は棒状の石英ガラスで形成され、一端はランプ10の透明容器20の凸領域を、導電体31,32(図5も参照する)の長手方向に対して略垂直に接合され、他端はリフレクタ70に支持固定されている。これにより、ランプ10は、リフレクタ70の内面側の所定位置で支持され、内面側に突出した形態でリフレクタ70に固定される。
【0052】
なお、ランプ10の支持構造は図1に示す支持部90を用いる構造に限らずランプ10が支持固定されれば限定されない。例えば、導電体31,32の外側端部をリフレクタ70の所定位置に固定する構造とすることができる。
【0053】
照明ケース80は、マイクロ波が照明装置60の外部へ漏洩することにより、人体や周辺の電子機器等に悪影響が起きることを防止するために設置されている。このため、照明ケース80は、マイクロ波を遮蔽する導電性材料(金属材料)を用いて形成される。
【0054】
また、照明ケース80において、発光部500を構成する反射器71に相対する面側に、略円形状の孔部81が形成されており、孔部81の縁辺は、反射器71の開放端部外面と同様の曲面を有する内面となるように形成されている。これにより、照明ケース80は、孔部81に反射器71の開放端部を係合させて反射器71を固定する。従って、照明装置60は、発光部500の反射器71が照明ケース80から突出した形態となる。また、照明ケース80は、マイクロ波発生部100と発光部500とを収容している。本実施形態では、照明ケース80と反射器71とにより、照明装置60からマイクロ波が漏洩することを防止している。
【0055】
なお、照明ケース80は、マイクロ波の波長の1/4波長以下の口径を有するような、網目状に編んだものや複数の孔を有するように形成されていても良い。また、照明ケース80は、マイクロ波を遮蔽する構成をとることができるのであれば、他の部材を用いても良い。
【0056】
マイクロ波発生部100は、高周波信号を生成しマイクロ波として反射器71へ向けて放射する(マイクロ波発生部100の構成については後述する)。放射されるマイクロ波は、略平面波であり、リフレクタ70の光束反射面70aを透過し、反射器71に進行する。反射器71に到達したマイクロ波は、マイクロ波反射面72により反射される。反射されたマイクロ波は、ランプ10の中心部の発光領域21に収束する。発光領域21に収束されたマイクロ波により、発光領域21において、封入される発光物質が励起(及び電離)されプラズマ発光することにより、発光領域21が発光する。
【0057】
ランプ10の発光領域21が発光することにより、光束が放射される。放射された光束の一部は、リフレクタ70の光束反射面70aに達して反射される。本実施形態では、光束反射面70aで反射された光束500bは、照明光軸L(一点鎖線で図示)に略平行な平行光束となる。そして、反射器71に形成された複数の孔部73を通過し光束が射出される。
【0058】
次に、マイクロ波発生部の構成について図面を参照して説明する。
図2は、マイクロ波発生部の概略構成を示すブロック図である。図2において、マイクロ波発生部100は、高周波信号を出力する固体高周波発振部110と、固体高周波発振部110から出力された高周波信号をマイクロ波として放射する導波部150とから構成されている。
【0059】
固体高周波発振部110は、電源111と、固体高周波発振器としての弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)発振器と、第1増幅器112とを有して構成される。本実施形態では弾性表面波発振器としてダイヤモンドSAW発振器202を採用している。導波部150は、アンテナ151と安全器としてのアイソレータ152とを有して構成される。
【0060】
固体高周波発振部110について詳細に説明する。電源111は、ダイヤモンドSAW発振器202と第1増幅器112とに電力を供給している。ダイヤモンドSAW発振器202の後段は、第1増幅器112の前段に接続されている。そして、ダイヤモンドSAW発振器202から出力された高周波信号は、第1増幅器112で増幅された後に出力される。この第1増幅器112から出力される高周波信号が、固体高周波発振部110から出力される高周波信号となる。本実施形態では、固体高周波発振部110から、ランプ10内に封入される発光物質を励起して発光させる高周波出力レベルに増幅された2.45GHz帯の高周波信号を出力する。
【0061】
次に、導波部150について詳細に説明する。導波部150は、固体高周波発振部110から出力された高周波信号を導波してマイクロ波100aとして放射するものであり、マイクロ波100aを放射させるアンテナ151と反射波対策としてアイソレータ152とを備えている。
【0062】
アンテナ151は、本実施形態では、パッチアンテナとして構成されており、単一指向性を有するマイクロ波を放射する平面アンテナとなっている。このアンテナ151により、略平面波のマイクロ波100aを放射することができる。
【0063】
アイソレータ152は、第1増幅器112の後段で、アンテナ151との間に設置されている。そのため、アンテナ151からマイクロ波100aを放射した結果として、対象物となる反射器71、ランプ10及び照明ケース80などからの反射波が固体高周波発振部110に戻ることを阻止し、第1増幅器112などの故障を防止している。
【0064】
続いて、ダイヤモンドSAW発振器について図面を参照して説明する。
図3は、固体高周波発振器としてのダイヤモンドSAW発振器の概略構成を示すブロック図である。図3において、ダイヤモンドSAW発振器202は、移相回路210、ダイヤモンドSAW共振子310、第2増幅器220および電力分配器230でループ回路240を構成し、電力分配器230の一方の出力側にバッファ回路250を接続した構成としている。
【0065】
移相回路210は、電源111から制御電圧を入力してループ回路240の位相を可変させるものである。これら各ブロックは、一定の特性インピーダンス、具体的には50Ωに全て整合接続されている。なお、ダイヤモンドSAW共振子310は、第2増幅器220が飽和状態となる入力電圧が供給されるように第2増幅器220の入力側に接続している。
【0066】
これにより、ダイヤモンドSAW共振子310を用いてGHz帯での高周波信号をダイレクト発振させることが可能となる。また、整合を保ったまま第2増幅器220の出力パワーを電力分配器230からバッファ回路250を介して外部に出力することができる。
【0067】
また、この回路構成により、ダイヤモンドSAW共振子310に印加する電力を最小限として連続発振状態を継続することが可能となる。また、移相回路210により、高周波信号に周波数変調をかけることが可能となり、ランプ10に対して、マイクロ波周波数を可変・調整することが可能になる。なお、移相回路210は用いなくても良く、その場合には、固体高周波発振器はダイヤモンドSAW共振子310の特性により一意的に決まる周波数で発振する固定発振器となる。
【0068】
次に、ダイヤモンドSAW発振器から出力される信号の特性について図面を参照して説明する。
図4は、ダイヤモンドSAW発振器から出力される信号の周波数と強度との関係を示すグラフである。図4において、横軸は周波数を示し、縦軸は出力信号の強度を示している。
【0069】
ダイヤモンドSAW発振器202から出力される信号は、特定の周波数f1の高周波信号(GHz帯)のみを出力する。また、図4に示すように急峻なダイレクト発振ができる。本実施形態では、特定の周波数f1は、2.45GHz帯の高周波信号を出力する。
【0070】
従って、前述した本発明の照明装置60は、ランプ10に導電体31,32を有し、導電体31,32の先端部31a,32aを、発光物質が封入される封入空間21内に入り込む窪みの内部に挿入している。従って、導電体31,32が電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、マイクロ波の電界成分を導電体の先端部に集中してランプの発光効率を高めることができる。さらに、導電体31,32の先端部31a,32aに挟まれた領域にマイクロ波が集中するため、点光源に近い発光領域が得られるという効果がある。
【0071】
また、導電体31,32それぞれを電気的に独立させていることから、旧来の放電電極を有するランプ、あるいは、内部導電体または外部導電体に直接電界を与えるランプに比べ、ランプ10の長寿命化を実現できる。
【0072】
また、ランプ10は、照明装置60に装着した状態において、電気的に接続しないため、支持構造に制約が少なく、支持構造、配設位置などの自由度が高いという利点がある。
【0073】
また、マイクロ波発生部100にダイヤモンドSAW発振器202を用いることにより、出力される信号は特定の周波数f1の高周波信号(GHz帯)のみを出力し、急峻なダイレクト発振ができることから、瞬時にランプ10を点灯させ、短時間で消灯させることができる。
【0074】
また、ダイヤモンドSAW発振器202は、高周波入射電力により周波数を変えずに励振強度を調整することが可能であることから発光スペクトルを変えずに調光が可能となる利点を有する。
【0075】
さらに、ダイヤモンドSAW共振子310は周波数温度特性が優れており、温度変動に対する周波数変動を抑制することができるので、マイクロ波出力を安定させることができる。従って、点灯時において安定した輝度を維持することができる。
【0076】
また、本発明の照明装置60は、発光効率が高いランプを用いることにより、同じ高周波入射電力であれば高輝度の照明装置を実現できる。つまり、省電力化が図れる。
(ランプの構造)
【0077】
続いて、上述した照明装置60に用いるランプ10の具体的な実施例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
【0078】
図5は、実施例1に係るランプの構造を示す正面図である。図5において、ランプ10は、非導電性材料で形成される透明容器20と、透明容器20の中心部に向かって先端部31a,32aが対向する一対の導電体31,32とから構成されている。
【0079】
透明容器20は、石英ガラスまたは透明セラミックス等により形成される。透明容器20には、マイクロ波により発光する発光物質を充填した封入空間21(発光領域21と表すことがある)が形成されている。そして、透明容器20の外周には窪みとしての溝26が形成されている。このことにより、透明容器20は、溝26によってくびれた略瓢箪状の形状であって、溝26の内側は封入空間21の大部分の球形範囲よりも内側に入り込む深さを有している。
【0080】
導電体31,32は、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い材料が用いられる。具体的にはタングステン合金やステンレス合金等が適している。導電体31,32それぞれの先端部31a,32aは溝26の断面形状に略相似形状をしている。なお、導電体31,32は互いに離間し、また、前述したリフレクタ70(図1、参照)とも離間し、電気的に独立している状態(無給電の状態)であるので、本発明のランプ10は、電極を有しない無電極構造である。
【0081】
透明容器20と導電体31,32とは、溝26と先端部31a,32aとの間において、耐熱性を有する接着剤あるいは金属ロウ材を用いて固定することで一体化される。また、ランプ10は、支持部90によってリフレクタ70に固定される。
【0082】
なお、透明容器20は、中空の球体を製造した後に変形可能な温度まで加熱し、溝26の断面形状(例えば、導電体31,32の先端部31a,32aの形状を有するバンド)にてバンド締めを行うことにより形成することができる。発光物質の封入は、透明容器20に小さな貫通孔(図示せず)を設け、封入空間21の内部に発光物質を封入した後、封止部材にて封止することで行うことができる。
【0083】
また、封入空間21に封入される発光物質としては、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスや、これらのガスと共に水銀、金属ハロゲン化合物等であってもよい。
【0084】
導電体31,32は、マイクロ波を照射したときにマイクロ波の電界成分を集中させるために設けており、電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、マイクロ波の電界成分を導電体31,32(特に先端部)に集中してランプの発光効率を高めるために備えている。従って、先端部31a,32aに挟まれた領域は、より電界が集中するため、発光の強度も高まり、点光源に近い発光となる。
【0085】
また、透明容器20に設けられる窪みは、透明容器20の外周に設けられた溝26であり、導電体31,32をこの溝26に対向して配設することから、導電体の数や配設位置の自由度が高くなるという効果がある。
(実施例2)
【0086】
次に、実施例2に係るランプの構造について説明する。実施例2は、実施例1に比べ窪みの形状が異なることを特徴としている。実施例1と共通部分には同じ符号を附している。
図6は、実施例2に係るランプの構造を示す正面図である。図6において、透明容器20の外周には、ほぼ対向する位置に二つの窪みとしての凹部25a,25bが形成されている。
【0087】
導電体31,32それぞれの先端部31a,32aは凹部25a,25bの断面形状に略相似形状をしている。なお、導電体31,32は互いに離間し、また、前述したリフレクタ70とも離間し、電気的に独立した状態(無給電の状態)であるので、本発明のランプ10は、電極を有しない無電極構造である。
【0088】
透明容器20と導電体31,32とは、凹部25a,25bと先端部31a,32aとの間において、耐熱性を有する接着剤あるいは金属ロウ材を用いて固定することで一体化される。また、ランプ10は、支持部90によってリフレクタ70に固定される。
【0089】
凹部25a,25bは、中空の球体を製造した後に変形可能な温度まで加熱し、導電体31,32それぞれの先端部31a,32aの断面形状を有する成形治具を押圧して成形することができる。発光物質の封入は、透明容器20に小さな貫通孔(図示せず)を設け、内部に発光物質を封入し封止部材にて封止することで行うことができる。
【0090】
実施例2によれば、透明容器20に設けられる窪みが凹部25a,25bであり、この窪みを凹部にすることで、上述した窪みを溝26にしたときと同様な効果が得られる他、導電体31,32の先端部31a,32aの位置が規制しやすなり、また、透明容器20の表面全体の任意の位置に複数の窪みを形成することができるという効果もある。
(実施例3)
【0091】
次に、実施例3に係るランプの構成について説明する。実施例3は、実施例1における溝26を有する構造を基本とし、実施例1に比べ導電体の数を3本設けたことに特徴を有している。なお、導電体の数は2本(実施例1)または3本に限らず、導電体それぞれが互いに接触しない範囲であれば限定されない。実施例1と共通部分には同じ符号を附している。
図7は、実施例3に係るランプの構造を示す平面図である。図7において、3本の導電体31,32,33は、封入空間21の中央部に向かってほぼ等間隔にて配設されている。
【0092】
導電体31,32,33それぞれの先端部31a,32a,33aは溝26の断面形状に略相似形状をしている。なお、導電体31,32,33は互いに離間し、また、前述したリフレクタ70とも離間する長さであって、相互に電気的に浮いている状態(無給電の状態)である。透明容器20と導電体31,32,33の接合方法は、実施例1と同じ方法を採用できる。
【0093】
なお、図示は省略するが、実施例2による窪みとしての凹部を設ける構造であっても3本以上の導電体を設けることができる。このような凹部を設ける構造では、透明容器20の全外周面の任意の位置に凹部を形成することができる。このような構造では、複数の導電体は、封入空間21の略中心から放射状に配設することがより好ましい。
【0094】
このように、導電体の数を多く設けることにより、マイクロ波の電界をより集中することができ、発光効率を高めることができる。
(実施例4)
【0095】
次に、実施例4に係るランプの構成について説明する。実施例4は、導電体を絶縁性材料にて封止していることを特徴としている。この構造は、前述した実施例1〜実施例3の導電体にも適合することができるが、ここでは、実施例1の溝と2本の導電体を有する構造を例示して説明する。なお、実施例1と共通部分には同じ符号を附している。
図8は、実施例4に係るランプの構造を示す正面図である。図8において、先端部31a,32aが対向する導電体31,32それぞれは、絶縁性材料からなる絶縁体22,23によって全周囲を覆われている。
【0096】
絶縁体22,23の先端部22a,23aの断面形状は、溝26の断面形状と略相似形状をしている。また、導電体31,32の先端部31a,32aは、溝26の内部(つまり、封入空間21の他の球形部よりも内側)に入り込んでいる。
【0097】
絶縁体22,23の材料としては、透明容器20と同じ石英ガラスや透明セラミックスが好ましいが、耐熱性がすぐれ、熱膨張率が透明容器20または導電体31,32に近く、導電体31,32との密着性がよい絶縁性材料であればよく、特に限定されない。
【0098】
また、導電体31,32の先端部31a,32aの近傍には絶縁体22,23を設けず、金属部分を露出させ、この金属部分を透明容器20に接合する構造としてもよい。このようにすれば、先端部31a,32a間の距離を絶縁体の厚さ分だけ近づけることができる。
【0099】
このように、導電体31,32の全表面を絶縁体22,23で絶縁することにより複数の導電体を用いる場合において、それぞれの導電体間のショート、照明装置60(特に、リフレクタ70)とのショートを防止することができる。
(実施例5)
【0100】
続いて、実施例5について図面を参照して説明する。実施例5は、導電体の周囲に外部導電体としてのコイルを巻回していることに特徴を有している。なお、実施例5の構造は、前述した実施例1〜実施例3にも応用できるが、ここでは、前述した実施例4(図8、参照)にコイルをさらに設ける構造を例示し、異なる個所を中心に説明する。
図9は、実施例5に係るランプの構造を示す正面図である。図9において、導電体31,32を含む絶縁体22,23の外周には、外部導電体としてのコイル41,42が巻回されている。
【0101】
図9では、コイル41,42それぞれは、導電体31,32の概ね長手方向範囲に巻回されている。また、本実施例ではコイル41,42の材質としてはCuを採用するが、導電性材料で且つ耐熱性が高い材料であればCuに限らない。
なお、図9ではコイル41,42の巻数を4巻きとしているが、巻数は4巻きに限らずもっと多くても少なくてもよい。
【0102】
また、コイル41とコイル42の巻数は同じでなくてもよく、どちらか一方のみの片巻き構成としてもよい。さらに、巻き方向を図9に示す方向とは逆巻きとしてもよく、コイル41とコイル42とをそれぞれ逆方向に巻く構成としてもよい。
【0103】
この際、導電体31,32は、マイクロ波を照射したときにマイクロ波の電界成分を集中させるために設けており、外部導電体(つまり、コイル41,42)は電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、マイクロ波の電界成分を導電体31,32に集中してランプの発光効率を高めるために備えている。
【0104】
また、コイル41,42は、概ね導電体31,32の長手方向の範囲にあれば、透明容器20側や透明容器20から離間した外側端部方向に偏った位置に配設しても、一方を内側に他方を外側に配設してもよい。また、このようにコイル41,42を配設する場合においても、左右の巻数は同じでなくてもよく、どちらか一方のみの片巻き構成としてもよい。
【0105】
また、コイル41とコイル42とを透明容器20の位置で連続した一つのコイルとするする構造も採用できる。
【0106】
さらに、コイル41とコイル42とを連続し、透明容器20及び導電体31,32の外周を覆うように巻回するように構成してもよく、この場合、コイルの巻き外径は、全体を同じ巻き外径としても、透明容器20と導電体31,32とで巻き外径を変えてもよい。
【0107】
なお、コイル41,42の巻回方法としては、導電体(絶縁体含む)31,32それぞれにコイル41,42を巻回した後、透明容器20に接合しても、導電体(絶縁体含む)31,32を透明容器20に接合した後、コイル41,42を巻回する方法としてもよい。
【0108】
また、実施例5で説明したコイル41,42のコイル線断面形状は、円形、正方形、扁平な四角形、三角形、六角形、台形や楕円形としてもよい。
【0109】
また、本実施例では、導電体31,32を覆う絶縁体22,23の外周にコイル41,42を巻回して、コイル41,42と導電体31,32とのショートを防止しているが、コイル41,42が、耐熱性を有する絶縁性材料で被覆されていれば、導電体31,32に直接コイル41,42を巻回する構造としてもよい。
【0110】
このように、外部導電体としてコイル41,42を用いることにより、コイル41,42は電磁界中に置かれたアンテナと等価の役割を有し、マイクロ波の電界成分を導電体31,32に集中してランプの発光効率をより高めることができる。また、コイルは、断面形状、断面積、巻き数など自在に設定することが可能であり、製造しやすく材質も適宜選択することができる。
(実施例6)
【0111】
次に、本発明の実施例6について図面を参照して説明する。実施例5の変形例であって、実施例5による絶縁体22,23を透明容器20と一体で形成していることに特徴を有している。
図10は、実施例6に係るランプの構造を示す正面図である。図10において、透明容器20には、対向する一対の細管部35,36が突設されている。この細管部35,36それぞれには、導電体31,32を挿入する穴35a,36aが穿設されている。そして、穴35a,36aそれぞれは、導電体31,32の先端部31a,32aが、透明容器20の内側まで達することができる深さ位置で封止されており、この封止位置まで導電体31,32が挿入される。
【0112】
つまり、透明容器20は、前述した実施例2(図6、参照)に設けられた凹部25a,25bと同じように封入空間21の中央部方向に突出した部位が形成され、凹部25a,25bに相当する部分に導電体31,32の先端部31a,32aが入り込む形態をなしている。そして、細管部35,36の外周には、コイル41,42が巻回される。
【0113】
なお、導電体31,32を穴35a,36aに挿入した後、外側端部35b,36bを封止してもよい。
また、導電体31,32を細管部35,36にインサート成形する構造としてもよい。
【0114】
また、実施例6における細管部35,36を透明容器20と一体形成する構造は、前述した実施例4(図8、参照)のコイルを有しない構造にも応用可能である。
【0115】
従って、実施例6の構造では、導電体31,32を透明容器20に一体に形成された細管部35,36に挿入しているため、透明容器20と導電体31,32を接合して一体化する構造よりも、構造を簡単にすることができる。
(実施例7)
【0116】
続いて、本発明の実施例7について図面を参照して説明する。実施例7は、前述した絶縁体として絶縁性材料からなる筒状部材を用いたことに特徴を有している。ここでは、実施例1(図5、参照)のランプに設けられる導電体に筒状部材を装着し、さらに、コイルを巻回した構造を例示している。
図11は、実施例7に係るランプの構造を示す正面図である。図11において、棒状の導電体31,32には、絶縁性材料からなる筒状部材27,28が挿着されている。導電体31,32と筒状部材27,28の貫通孔27a,28aとは、遊嵌の関係であり、筒状部材27,28を挿着した後、耐熱性を有する接着剤にて固定する。
【0117】
なお、導電体31,32を透明容器20に接合した後、筒状部材27,28を挿着しコイル41,42を巻回してもよく、コイル41,42を巻回した筒状部材27,28を導電体31,32に挿着してもよい。あるいは、導電体31,32と筒部材27,28とコイル41,42を一体化してから透明容器20に接合する工程としてもよい。
【0118】
また、本実施例の筒状部材27,28を用いる構造は、透明容器20に窪みとして凹部を有する構造にも適合できる。さらに、コイルを有しない構造にも応用できる。
【0119】
上述したように、導電体31,32に筒状部材27,28にを挿入することで、前述した実施例5(図9、参照)のように導電体31,32を絶縁性材料で封止する構造と同等な効果を有し、そのうえ筒状部材27,28は形状が単純で容易に製造でき、導電体31,32に筒状部材27,28を挿着することも容易である。
(実施例8)
【0120】
次に、本発明の実施例8について図面を参照して説明する。実施例8は、前述したコイルに代えて側面部にスリットを有する筒形状の外部導電体を用いることを特徴としている。ここでは、前述した実施例4(図8、参照)のランプにおいて、外部導電体を付加した構造を例示している。
図12は、実施例8に係るランプの構造を示す正面図である。図12において、導電体31,32を覆う絶縁体22,23には、金属(具体的にはCu)からなる筒状部材の外部導電体51,52が挿着されている。外部導電体51には複数のスリット状の開口部53が相互に間挿するように開設され、外部導電体52にも複数のスリット状の開口部54が相互に間挿するように開設されている。図12では、外部導電体51,52は共に導電体31,32それぞれの長手方向を覆う範囲にわたって配設されている。この外部導電体51,52は、前述したコイルと同様な機能を有する。
【0121】
なお、外部導電体51,52は、図12では、それぞれ同じ形状で透明容器20に対して対称に配設される場合を例示しているが、左右の形状を変えてもよく、どちらか一方のみの構成としてもよい。
また、開口部53,54の数や大きさ、形状も任意に組み合わせて構成してもよい。
【0122】
このようにすれば、外部導電体としてスリット状の開口部53,54を有する筒状の外部導電体51,52を用いることにより、前述した実施例5(図9、参照)のようにコイル41,42を用いる構造と同等な効果が得られる。
また、外部導電体をコイルにすること、スリットを有する筒状部材にすることにより外部導電体を軽量化することができる。
(実施例9)
【0123】
続いて、本発明の実施例9について図面を参照して説明する。実施例9は、透明容器20に支持柱を設けていることを特徴とし、前述した実施例1〜実施8に記載のランプそれぞれに適合できるが、ここでは、実施例5(図9、参照)に記載のランプに支持柱を設けた構造を例示して説明する。従って、支持柱以外の部位は実施例5に準じ、同じ符号を附して説明する。
図13は、実施例9に係るランプの構造を示す正面図である。ランプ10は、透明容器20と、絶縁体22,23に封止された導電体31,32と、外部導電体としてのコイル41,42とを有して構成されている。
【0124】
透明容器20には、図13に示す位置に導電体31,32に対して略垂直方向に支持柱29が突設されている。この支持柱29は、図1に記載される支持部90に相当し、照明装置60にランプ10を支持固定する機能を有する。従って、支持柱29の端部は、リフレクタ70の内側底部に固定される。
(実施例9の変形例)
【0125】
続いて、実施例9の変形例について図13を参照して説明する。なお、この変形例は、図13において二点鎖線で表している。支持柱29には、透明容器20の封入空間21の内外を連通する発光物質封入孔としての貫通孔29aが設けられている。この貫通孔29aは、封入空間21に発光物質を注入する際の注入孔であって、封入空間21内に発光物質を注入した後、封止部材24を用いて密封封止される。
【0126】
上述した実施例9及び変形例によれば、透明容器20に支持柱29を設けており、この支持柱29を照明装置60(つまり、リフレクタ70の底部)に固定することで、ランプ10の照明装置60への固定を容易に行うことができる。
【0127】
また、この支持柱29に、透明容器20の封入空間21に連通する貫通孔29aを設けることにより、発光物質の注入及び封止を容易に行えるという効果がある。
(プロジェクタ)
【0128】
続いて、前述した照明装置を適用したプロジェクタについて図面を参照して説明する。
図14は、本発明のプロジェクタの概略構成を示すブロック図である。図14において、プロジェクタ400は、前述した照明装置60と光学系410とから構成されている。
光学系410は、照明光学系460と、光変調部470と、色合成光学系480と、投写部490とを有して構成されている。また、照明装置60は、マイクロ波発生部100と発光部500とを有して構成される。
【0129】
次に、プロジェクタ400の動作について説明する。マイクロ波発生部100からはマイクロ波を放射し、発光部500は、マイクロ波発生部100から放射されたマイクロ波により発光する。また、照明光学系460は、照明装置60から射出された光束の照度を均一化し、各色光に分離する。光変調部470は、照明光学系460で分離された各色光の光束に対して画像情報に応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系480は、照明光学系460で色分離され光変調部470で変調された各色光の光学像を合成し、投写部490にて光学像を投写する。なお、照明装置60は、マイクロ波発生部100と発光部500とを照明ケース80(図1、参照)によりマイクロ波を遮蔽すると共にユニット化されている。
【0130】
本発明のプロジェクタ400は、前述した照明装置60を搭載しているために、ランプ点灯タイミングが早く、しかも高輝度で立ち上がるため、従来の放電式ランプを用いる照明装置を搭載するプロジェクタよりもスイッチ入力してから所定の輝度にて映像を投写できるまでの待ち時間を格段に短縮することができる。
【0131】
また、消灯にかかる時間も短くでき、点灯及び消灯を短時間の内に繰り返すことが可能となり、利便性を向上させるという効果がある。
【0132】
さらに、搭載されるランプ10はマイクロ波無電極ランプであり、従来の放電式ランプを用いる照明装置を備えたプロジェクタと比較して、照明装置60の長寿命化を実現し、照明装置交換の煩わしさを軽減し、経済的効果を向上させることができる。
【0133】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施の形態では、ランプ10は、照明装置60に対して支持部90または支持柱29を介して固定した例を示したが、導電体31,32を絶縁材を介して直接リフレクタ70に固定する構造としてもよい。
【0134】
また、前述した実施例1〜実施例9では、透明容器20と導電体31,32を直接または絶縁体22,23を介して接合して一体化する例をあげ説明したが、透明容器20と導電体31,32とをそれぞれ単独系とし、照明装置60に装着する際に接合する構造としてもよい。
【0135】
また、前述した実施の形態で説明したマイクロ波無電極ランプ及び照明装置は、プロジェクタの光源として適用した例を示しているが、プロジェクタとしては、フロントプロジェクタに限らずリアプロジェクタに適用できる。また、小型軽量の照明装置は、他の光学機器に適用しても良く、航空、船舶、車輌などの照明機器や、屋内照明機器などへも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明に係る照明装置の概略構造を示す模式図。
【図2】本発明に係るマイクロ波発生部の概略構成を示すブロック図。
【図3】本発明に係るダイヤモンドSAW発振器の概略構成を示すブロック図。
【図4】本発明に係るダイヤモンドSAW発振器から出力される信号の周波数と強度との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例1に係るランプの構造を示す正面図。
【図6】本発明の実施例2に係るランプの構造を示す正面図。
【図7】本発明の実施例3に係るランプの構造を示す平面図。
【図8】本発明の実施例4に係るランプの構造を示す正面図。
【図9】本発明の実施例5に係るランプの構造を示す正面図。
【図10】本発明の実施例6に係るランプの構造を示す正面図。
【図11】本発明の実施例7に係るランプの構造を示す正面図。
【図12】本発明の実施例8に係るランプの構造を示す正面図。
【図13】本発明の実施例9及び変形例に係るランプの構造を示す正面図。
【図14】本発明のプロジェクタの概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0137】
10…マイクロ波無電極ランプ(ランプ)、20…透明容器、21…封入空間(発光領域)、22,23…絶縁体、26…窪みとしての溝、31,32…導電体、31a,32a…導電体の先端部、41,42…外部導電体としてのコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質にマイクロ波を照射して発光するマイクロ波無電極ランプであって、
非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、
前記窪みの内部に先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、
を備えていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記窪みが、前記透明容器の外周に設けられた溝であることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記窪みが、複数の凹部であることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記導電体が、絶縁性材料によって被覆されていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記導電体が、絶縁性材料からなる筒状部材に挿入されていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記透明容器が、該透明容器の外周から突設される細管部を有し、
前記細管部が、前記透明容器との接続部において、前記窪みに相当する位置を封止した穴を有し、前記穴に前記導電体が挿入されていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記透明容器が、該透明容器の外周から突設され、前記透明容器を照明装置に固定する支持柱を備えていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記支持柱が、前記透明容器の封入空間に連通する発光物質封入孔を備えていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記導電体の長手方向周囲に、前記導電体とは離間して配設された外部導電体がさらに備えられていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記外部導電体が、該外部導電体の長手方向周囲に巻回される導電性材料からなるコイルであることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項11】
請求項9に記載のマイクロ波無電極ランプにおいて、
前記外部導電体が、前記導電体の外周に挿着される筒状部材であり、側面にスリット状の開口部を有していることを特徴とするマイクロ波無電極ランプ。
【請求項12】
非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、
前記窪みに先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、
を備えていることを特徴とするマイクロ波無電極ランプと、
前記マイクロ波無電極ランプにマイクロ波を照射するマイクロ波発生部と、
が備えられていることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
請求項12に記載の照明装置において、
前記マイクロ波発生部が、弾性表面波共振子を含む固体高周波発振部と導波部を備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
非導電性材料からなり、内部に発光物質が封入される封入空間を有し、外周部から前記封入空間に入り込む窪みが設けられた透明容器と、前記窪みに先端部が挿入され、それぞれが電気的に独立した複数の導電体と、を備えるマイクロ波無電極ランプと、前記マイクロ波無電極ランプにマイクロ波を照射するマイクロ波発生部と、が備えられる照明装置と、
前記照明装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、
前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、
が備えられていることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−146849(P2008−146849A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329227(P2006−329227)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】